特許第5995296号(P5995296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

特許5995296光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム
<>
  • 特許5995296-光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム 図000002
  • 特許5995296-光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム 図000003
  • 特許5995296-光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム 図000004
  • 特許5995296-光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム 図000005
  • 特許5995296-光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム 図000006
  • 特許5995296-光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム 図000007
  • 特許5995296-光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム 図000008
  • 特許5995296-光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム 図000009
  • 特許5995296-光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5995296
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2507 20130101AFI20160908BHJP
   H04J 14/00 20060101ALI20160908BHJP
   H04J 14/04 20060101ALI20160908BHJP
   H04J 14/06 20060101ALI20160908BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H04B9/00 251
   H04B9/00 F
   G02B6/02 461
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-78930(P2015-78930)
(22)【出願日】2015年4月8日
(62)【分割の表示】特願2011-230380(P2011-230380)の分割
【原出願日】2011年10月20日
(65)【公開番号】特開2015-159584(P2015-159584A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2015年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】高良 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛和
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 扇太
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/038863(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/004836(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/082656(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアを1つのグループにまとめたコアグループ部を複数備え、前記コアグループ部の間のクロストークを遮断されたマルチコア光ファイバを接続され、前記マルチコア光ファイバからチャネル信号を受信するチャネル信号受信部と、
前記コアグループ部毎の前記チャネル信号の間のクロストーク量を非対角要素として含む前記コアグループ部毎の前記チャネル信号についてのチャネル行列、及び前記チャネル信号受信部が受信した前記チャネル信号の電界または強度に基づいて、光送信装置が送信した前記チャネル信号の電界または強度を演算するチャネル信号演算部と、
を備え
前記チャネル行列は、最近接するコアの間については前記非対角要素が有限値であり、最近接しないコアの間については前記非対角要素が0であることを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
複数のコアを1つのグループにまとめた複数のコアグループ部、並びに、前記コアグループ部の間を他のコアを介することなく引き離すことにより、前記コアグループ部の間のクロストークを遮断するクロストーク遮断部を備えるマルチコア光ファイバと、
請求項1に記載の光受信装置と、
を備えることを特徴とする光伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムの大容量化を目指して、シングルコア光ファイバを用いた光伝送システムが研究されているのみならず、マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムが研究されている。マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムでは、コアの間のクロストークが存在するが、コアの間のクロストークを低減する必要がある。
【0003】
従来の第1の光伝送システムの構成を図1に示す(非特許文献1を参照)。光伝送システムは、送信から受信までの順序で、信号1、・・・、nを入力して送信する光送信装置11、複数の送信信号を結合する結合器12、マルチコア光ファイバ13、複数の受信信号を分離する分離器14及び信号1’、・・・、n’を受信して出力する光受信装置15から構成される。光受信装置15は、光信号を電気信号に変換する光電変換部151及び偏波分離や分散補償などの信号処理を行なう信号処理部152から構成される。信号処理部152は、必要がなければ構成から除外してもよい。コア数が増えるほど又は伝送距離が伸びるほど、コアの間のクロストークが増大するため、コア数が制限され又は伝送距離がシングルコア光ファイバを用いた光伝送システムと比べて制限される。
【0004】
一方、コア間クロストークの小さいトレンチ構造を有するマルチコア光ファイバの研究開発が進められている(非特許文献2を参照)。また、従来の第2の光伝送システムの構成を図2に示す(非特許文献3を参照)。光伝送システムは、送信から受信までの順序で、信号1、・・・、nを入力して送信する光送信装置11、複数の送信信号を結合する結合器12、マルチコア光ファイバ13、複数の受信信号を分離する分離器14及び信号1’、・・・、n’を受信して出力する光受信装置15から構成される。光受信装置15は、光信号を電気信号に変換する光電変換部151、クロストーク除去部153及び偏波分離や分散補償などの信号処理を行なう信号処理部152から構成される。信号処理部152は、必要がなければ構成から除外してもよい。
【0005】
クロストーク除去部153は、複数の入力信号を処理して複数の出力信号を生成するMIMO(Multi−Input Multi−Output)技術を用いて、コアの間のクロストークを除去する(非特許文献4を参照)。マルチコア光ファイバ13がn個のコアを有するならば、複数の入力信号及び複数の出力信号はn次のチャネル行列で関連付けられる。つまり、複数の出力信号を示す列ベクトルは、複数の入力信号を示す列ベクトルにn次のチャネル行列を乗算したものとなる。よって、複数の入力信号を示す列ベクトルは、複数の出力信号を示す列ベクトルにn次のチャネル行列の逆行列を乗算したものとなる。このように、n次のチャネル行列が分かれば、複数の出力信号に基づいて、複数の入力信号が分かり、コアの間のクロストークを除去することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】B.Zhu,et al.,“Seven−core multicore fiber transmissions for passive optical network”,OPTICS EXPRESS,Vol.18,No.11,pp.11117−11122,2010.
【非特許文献2】T.Hayashi et al.,“Ultra−low−crosstalk multi−core fiber feasible to ultra−long−haul transmission”,OSA/OFC/NFOEC2011,PDPC2,2011.
【非特許文献3】P.J.Winzer et al.,“MIMO capacities and outage probabilities in spatially multiplexed optical transport systems”,OPTICS EXPRESS,Vol.19,No.17,pp.16680−16696,2011.
【非特許文献4】大鐘武雄 他著、「わかりやすいMIMOシステム技術」、オーム社、2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コア数又はチャネル数が増大すれば、伝送容量は向上するが、クロストーク除去部153において、回路規模や消費電力が増大し、行列演算が複雑になる。それも、コア数又はチャネル数が増大すれば、コア数又はチャネル数の自乗に比例して、行列演算が複雑になる。例えば、チャネル行列の逆行列を求めるために、偏波多重を考慮して、コア数又はチャネル数が4であれば、(4×2)×(4×2)=64回の演算で済むが、コア数又はチャネル数が12であれば、(12×2)×(12×2)=576回の演算が要る。
【0008】
MIMO技術は、無線通信で開発されており、光通信で応用されている。無線通信では、環境の変化に高速に対応するため、チャネル行列を常時更新しているが、光通信では、環境の変化は少ないにも関わらず、チャネル行列を常時更新している。よって、クロストーク除去部153において、無駄に処理負担が増大している。
【0009】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、クロストーク除去の処理負担を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
複数のコアを1つのグループにまとめたコアグループ部を複数備え、コアグループ部の間のクロストークを遮断することとした。
【0011】
具体的には、本発明は、複数のコアを1つのグループにまとめたコアグループ部を複数備え、前記コアグループ部の間のクロストークを遮断されたマルチコア光ファイバを接続され、前記マルチコア光ファイバからチャネル信号を受信するチャネル信号受信部と、前記コアグループ部毎の前記チャネル信号の間のクロストーク量を非対角要素として含む前記コアグループ部毎の前記チャネル信号についてのチャネル行列、及び前記チャネル信号受信部が受信した前記チャネル信号の電界または強度に基づいて、光送信装置が送信した前記チャネル信号の電界または強度を演算するチャネル信号演算部と、を備え、前記チャネル行列は、最近接するコアの間については前記非対角要素が有限値であり、最近接しないコアの間については前記非対角要素が0であることを特徴とする光受信装置である。
【0012】
この構成によれば、全コアをまとめてチャネル行列の演算をするのではなく、コアグループ部毎にチャネル行列の演算をするため、マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、クロストーク除去の処理負担を低減することができる。
【0013】
また、本発明は、複数のコアを1つのグループにまとめた複数のコアグループ部と、前記コアグループ部の間を他のコアを介することなく引き離すことにより、前記コアグループ部の間のクロストークを遮断するクロストーク遮断部と、を備えることを特徴とするマルチコア光ファイバである。
【0014】
この構成によれば、全コアをまとめてチャネル行列の演算をするのではなく、コアグループ部毎にチャネル行列の演算をするため、マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、クロストーク除去の処理負担を低減することができる。
【0015】
また、本発明は、前記クロストーク遮断部の屈折率は、前記コアの周囲に位置するクラッドの屈折率より小さいことを特徴とするマルチコア光ファイバである。
【0016】
この構成によれば、チャネル信号の間のクロストーク量のうち、0としたい部分について、より確実に0とすることができるため、マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、クロストーク除去の処理負担をさらに低減することができる。
【0017】
また、本発明は、上記の光受信装置と、上記のマルチコア光ファイバと、を備えることを特徴とする光伝送システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、クロストーク除去の処理負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の第1の光伝送システムの構成を示す図である。
図2】従来の第2の光伝送システムの構成を示す図である。
図3】実施形態1の光伝送システムの構成を示す図である。
図4】実施形態1のマルチコア光ファイバの断面を示す図である。
図5】実施形態1のマルチコア光ファイバの断面を示す図である。
図6】実施形態1のマルチコア光ファイバの断面を示す図である。
図7】実施形態2の光伝送システムの構成を示す図である。
図8】実施形態2のマルチコア光ファイバの断面を示す図である。
図9】実施形態2のマルチコア光ファイバの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0021】
(実施形態1)
実施形態1の光伝送システムの構成を図3に示す。光伝送システムは、送信から受信までの順序で、信号1、・・・、nを入力して送信する光送信装置11、複数の送信信号を結合する結合器12、マルチコア光ファイバ13、複数の受信信号を分離する分離器14及び信号1’、・・・、n’を受信して出力する光受信装置15から構成される。光受信装置15は、光電変換部151、クロストーク量記憶部154、クロストーク除去部153及び偏波分離や分散補償などの信号処理を行なう信号処理部152から構成される。信号処理部152は、必要がなければ構成から除外してもよい。
【0022】
光電変換部151は、マルチコア光ファイバ13を接続され、マルチコア光ファイバ13からチャネル信号を受信し、チャネル信号受信部に対応する。クロストーク量記憶部154は、チャネル信号の間のクロストーク量を、チャネル信号についてのチャネル行列の非対角要素として、固定して記憶している。クロストーク除去部153は、クロストーク量記憶部154が固定して記憶しているチャネル信号の間のクロストーク量を非対角要素として含むチャネル信号についてのチャネル行列、及び光電変換部151が受信したチャネル信号の電界または強度に基づいて、光送信装置11が送信したチャネル信号の電界または強度を演算し、チャネル信号演算部に対応する。
【0023】
クロストーク量記憶部154は、マルチコア光ファイバ13のうちコア間のクロストークが遮断されていないコアから受信されたチャネル信号の間のクロストーク量を、チャネル信号についてのチャネル行列の有限値である非対角要素として、固定して記憶してもよい。クロストーク量記憶部154は、マルチコア光ファイバ13のうちコア間のクロストークが遮断されているコアから受信されたチャネル信号の間のクロストーク量を、チャネル信号についてのチャネル行列の0である非対角要素として、固定して記憶してもよい。
【0024】
実施形態1のマルチコア光ファイバの断面を図4から図6までに示す。図4に示したマルチコア光ファイバ13は、通常の12芯のマルチコア光ファイバである。図5に示したマルチコア光ファイバ13は、12芯を有しクロストーク遮断部132を有するマルチコア光ファイバである。図6に示したマルチコア光ファイバ13は、12芯を有しクロストーク遮断部132に低屈折率部133を有するマルチコア光ファイバである。図4から図6まででは、12芯のマルチコア光ファイバについて、本発明を適用しているが、任意の芯数のマルチコア光ファイバについて、本発明を適用してもよい。
【0025】
図4に示したマルチコア光ファイバ13では、あるコア131に最近接するコア131は、最大で6芯である。図5に示したマルチコア光ファイバ13では、クロストーク遮断部132は、コア131の間を他のコア131を介することなく引き離すことにより、コア131の間のクロストークを遮断し、あるコア131に最近接するコア131は、最大で3芯に留まる。図6に示したマルチコア光ファイバ13では、低屈折率部133の屈折率は、コア131の周囲に位置するクラッドの屈折率より小さく、クロストーク遮断効果が高く、あるコア131に最近接するコア131は、最大で3芯に留まる。
【0026】
次に、クロストーク除去部153及びクロストーク量記憶部154の処理について説明する。光伝送システムの設置時点から光伝送システムの使用時点まで、環境の変化が少ないため、チャネル信号の間のクロストーク量の変化も少ない。そこで、光受信装置15は、光伝送システムの設置時点で、チャネル信号の間のクロストーク量を測定又は計算で求めておく。そして、クロストーク量記憶部154は、光伝送システムの設置時点で、チャネル信号の間のクロストーク量を、チャネル信号についてのチャネル行列の非対角要素として、固定して記憶しておく。最近接するコア131の間については、チャネル行列の非対角要素を有限値として固定して記憶することができる。最近接しないコア131の間については、チャネル行列の非対角要素を0として固定して記憶することができる。チャネル行列の逆行列を計算して記憶することもできる。
【0027】
クロストーク除去部153は、クロストーク量記憶部154が固定して記憶しているチャネル信号の間のクロストーク量を非対角要素として含むチャネル信号についてのチャネル行列、及び光電変換部151が受信したチャネル信号の電界または強度に基づいて、光送信装置11が送信したチャネル信号の電界または強度を演算する。具体的には、複数の光電変換部151が受信したチャネル信号の電界または強度を示す列ベクトルは、複数の光送信装置11が送信したチャネル信号の電界または強度を示す列ベクトルに、チャネル行列を乗算したものとなる。よって、複数の光送信装置11が送信したチャネル信号の電界または強度を示す列ベクトルは、複数の光電変換部151が受信したチャネル信号の電界または強度を示す列ベクトルに、チャネル行列の逆行列を乗算したものとなる。これにより、クロストーク除去部153は、最近接するコア131の間のクロストークを除去することができる。
【0028】
以上に説明したように、チャネル信号の間のクロストーク量を、常時更新することなく固定して記憶しており、チャネル信号の間のクロストーク量を、一部のみ有限値として他の一部は0とするため、マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、クロストーク除去の処理負担を低減することができる。コア数又はチャネル数が大幅に増大しても、クロストーク除去の処理負担は大幅には増大しない。
【0029】
(実施形態2)
実施形態2の光伝送システムの構成を図7に示す。光伝送システムは、送信から受信までの順序で、信号1、・・・、nを入力して送信する光送信装置11、複数の送信信号を結合する結合器12、マルチコア光ファイバ13、複数の受信信号を分離する分離器14及び信号1’、・・・、n’を受信して出力する光受信装置15から構成される。光受信装置15は、光電変換部151、クロストーク除去部153及び偏波分離や分散補償などの信号処理を行なう信号処理部152から構成される。信号処理部152は、必要がなければ構成から除外してもよい。
【0030】
光電変換部151は、マルチコア光ファイバ13を接続され、マルチコア光ファイバ13からチャネル信号を受信し、チャネル信号受信部に対応する。マルチコア光ファイバ13は、複数のコアを1つのグループにまとめたコアグループ部を複数備え、コアグループ部の間のクロストークを遮断される。クロストーク除去部153は、コアグループ部毎のチャネル信号についてのチャネル行列、及び光電変換部151が受信したチャネル信号の電界または強度に基づいて、光送信装置11が送信したチャネル信号の電界または強度を演算し、チャネル信号演算部に対応する。
【0031】
実施形態2のマルチコア光ファイバの断面を図8から図9までに示す。図8に示したマルチコア光ファイバ13は、3つのコアグループ部134からなる12芯を有し、クロストーク遮断部135を有するマルチコア光ファイバである。図9に示したマルチコア光ファイバ13は、3つのコアグループ部134からなる12芯を有し、クロストーク遮断部135に低屈折率部136を有するマルチコア光ファイバである。図8から図9まででは、12芯のマルチコア光ファイバについて、本発明を適用しているが、任意の芯数のマルチコア光ファイバについて、本発明を適用してもよい。
【0032】
図8に示したマルチコア光ファイバ13では、クロストーク遮断部135は、コアグループ部134の間を他のコア131を介することなく引き離すことにより、コアグループ部134の間のクロストークを遮断し、あるコア131に最近接するコア131は、最大で3芯に留まる。図9に示したマルチコア光ファイバ13では、低屈折率部136の屈折率は、コア131の周囲に位置するクラッドの屈折率より小さく、クロストーク遮断効果が高く、あるコア131に最近接するコア131は、最大で3芯に留まる。
【0033】
次に、クロストーク除去部153の処理について説明する。クロストーク除去部153は、コアグループ部134毎のチャネル信号についてのチャネル行列、及び光電変換部151が受信したチャネル信号の電界または強度に基づいて、光送信装置11が送信したチャネル信号の電界または強度を演算する。具体的には、複数の光電変換部151が受信したコアグループ部134毎のチャネル信号の電界または強度を示す列ベクトルは、複数の光送信装置11が送信したコアグループ部134毎のチャネル信号の電界または強度を示す列ベクトルに、コアグループ部134毎のチャネル行列を乗算したものとなる。よって、複数の光送信装置11が送信したコアグループ部134毎のチャネル信号の電界または強度を示す列ベクトルは、複数の光電変換部151が受信したコアグループ部134毎のチャネル信号の電界または強度を示す列ベクトルに、コアグループ部134毎のチャネル行列の逆行列を乗算したものとなる。これにより、クロストーク除去部153は、最近接するコア131の間のクロストークを除去することができる。
【0034】
図4に示したマルチコア光ファイバ13を用いると、チャネル行列の逆行列を求めるために、偏波多重を考慮して、(12×2)×(12×2)=576回の演算が要る。図8又は図9に示したマルチコア光ファイバ13を用いると、チャネル行列の逆行列を求めるために、偏波多重を考慮して、(4×2)×(4×2)=64回の演算で済む。コアグループ部134毎のチャネル行列を、光伝送システムの設置時点で、測定又は計算で求めて固定して記憶してもよい。クロストーク除去の処理負担をさらに低減することができる。
【0035】
以上に説明したように、全コアをまとめてチャネル行列の演算をするのではなく、コアグループ部毎にチャネル行列の演算をするため、マルチコア光ファイバを用いた光伝送システムにおいて、クロストーク除去の処理負担を低減することができる。コア数又はチャネル数が大幅に増大しても、クロストーク除去の処理負担は大幅には増大しない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る光受信装置、マルチコア光ファイバ及び光伝送システムは、光伝送システムの大容量化を目指すにあたり、コア数又はチャネル数を増大させても、クロストーク除去の処理負担を増大させないことができる。
【符号の説明】
【0037】
11:光送信装置
12:結合器
13:マルチコア光ファイバ
14:分離器
15:光受信装置
131:コア
132:クロストーク遮断部
133:低屈折率部
134:コアグループ部
135:クロストーク遮断部
136:低屈折率部
151:光電変換部
152:信号処理部
153:クロストーク除去部
154:クロストーク量記憶部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9