【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
(調製例1)
<ラクトバシルス・プランタラムの死菌体の調製>
ラクトバシルス・プランタラム(
Lactobacillus plantarum 22A−3株;受託番号:FERM AP−21411)を30℃嫌気的条件下で液体培地を用いて一晩培養した。培養後、遠心分離(条件:4℃、10,000×g、5分間)して、上清を捨て、PBSで3回洗浄することにより培地を取除いた。そして、寒天培地を用いて生菌体数を計測した。遠心分離で回収した菌体にUV殺菌灯を照射し菌を殺したものを、ラクトバシルス・プランタラムの死菌体とした。前記死菌体中における生菌体数を、寒天培地を用いて計測した。前記死菌体は使用するまで−80℃で冷凍保存した。なお、UV処理菌体の生菌数は、1×10
2CFU/mLであり、UV処理前と比較して1×10
9CFU/mL以上の菌数減少が確認された。
【0033】
(調製例2)
<ラクトバシルス・プランタラムの生菌体の調製>
ラクトバシルス・プランタラム(
Lactobacillus plantarum 22A−3株;受託番号:FERM AP−21411)を30℃嫌気的条件下で液体培地を用いて一晩培養した。菌株の菌数と濁度との関係を示す検量線から、培養後の菌数を算出し、遠心分離(条件:4℃、10,000×g、5分間)して、上清を捨て、PBSで3回洗浄することにより培地を取除き、ラクトバシルス・プランタラムの生菌体とした。そして、寒天培地を用いて生菌体数を計測した。前記生菌体は使用するまで−80℃で冷凍保存した。
【0034】
(調製例3)
<ラクトバシルス・プランタラムの細胞壁画分の調製>
ラクトバシルス・プランタラム(
Lactobacillus plantarum 22A−3株;受託番号:FERM AP−21411)を30℃嫌気的条件下で液体培地を用いて3日間培養した。培養後、遠心分離で菌体を回収し、PBSで2回洗浄した。45分間超音波粉砕を行い、自己分解酵素を失活させるため、15分間60℃で静置させた後、遠心分離(条件:4℃、1,000×g、10分間)した。そして、得られた上清を更に遠心分離(条件:4℃、16,000×g、30分間)して、得られた沈殿物を15分間UV照射して、ラクトバシルス・プランタラムの細胞壁画分(CW)とした。前記細胞壁画分は、使用するまで、−80℃で冷凍保存した。
【0035】
(試験例1)
<TNF−α発現抑制作用試験(死菌体使用)>
実際の腸管状態を模したin vitroモデルを構築し、リポ多糖(LPS)を用いて炎症状態を誘導し、ラクトバシルス・プランタラムによって、炎症状態が抑制(TNF−α発現が抑制)されるかを試験した。以下、詳細に説明する。
まず、トランズウェル(12mm Transwell(登録商標)with 0.4μm Pore Polycarbonate Membrane Insert,Sterile(Product #3401)、コーニング社)のアピカル側にヒト由来の腸管上皮細胞(Caco−2)を配置し、バソラテラル側にマウス由来のマクロファージ細胞(RAW264.7)を配置して、実際の腸管状態を模したin vitroモデルを構築した。次に、トランズウェルのアピカル側にサンプル(調製例1の死菌体)を添加して、3時間培養した。培養後、リポ多糖(LPS)を用いて、マクロファージ細胞(RAW264.7)を刺激し、3時間培養して炎症状態を誘導した。そして、マクロファージ細胞(RAW264.7)からのTNF−α発現を、マウス由来の繊維芽細胞(L929細胞)を用いたバイオアッセイ(Tumor Necrosis Factor−α,Mouse,recombinant、和光純薬工業株式会社)により調べた。なお、ポジティブコントロールには、IBD治療薬のブデソニドを用いた。結果を
図1に示す。
【0036】
<結果>
図1より、ラクトバシルス・プランタラムの死菌体を用いると、TNF−αの発現量が有意に抑制されることがわかった。
【0037】
(試験例2−1)
<IL−8mRNA発現抑制作用試験(死菌体使用)>
実際の腸管状態を模したin vitroモデルを構築し、リポ多糖(LPS)を用いて炎症状態を誘導し、ラクトバシルス・プランタラムによって、炎症状態が抑制(IL−8mRNA発現が抑制)されるかを試験した。以下、詳細に説明する。
まず、トランズウェル(12mm Transwell(登録商標)with 0.4μm Pore Polycarbonate Membrane Insert,Sterile (Product #3401)、コーニング社)のアピカル側にヒト由来の腸管上皮細胞(Caco−2)を配置し、バソラテラル側にマウス由来のマクロファージ細胞(RAW264.7)を配置して、実際の腸管状態を模したin vitroモデルを構築した。次に、トランズウェルのアピカル側にサンプル(調製例1の死菌体)を添加して、3時間培養した。培養後、リポ多糖(LPS)を用いて、マクロファージ細胞(RAW264.7)を刺激し、3時間培養して炎症状態を誘導した。そして、腸管上皮細胞(Caco−2)から、キット(セパゾールRNAI Super、ナカライテスク株式会社)を用いてtotal RNAを抽出し、リアルタイムPCR法(PCR装置:Applied Biosystems 2720 Thermal Cycler、アプライドバイオシステムズ社;リアルタイムPCR装置:Applied Biosystems 7500 Fast Real−Time PCR System、アプライドバイオシステムズ社;IL−8プライマー:TaqMan(登録商標)Gene Expression Assay,Hs00174103_m1、アプライドバイオシステムズ社)により、IL−8mRNAの発現量を測定した。なお、ポジティブコントロールには、IBD治療薬のブデソニドを用いた。結果を
図2Aに示す。
【0038】
<結果>
図2Aより、ラクトバシルス・プランタラムの死菌体を用いると、IL−8mRNAの発現量が有意に抑制されることがわかった。
【0039】
(試験例2−2)
<IL−8mRNA発現抑制作用試験(細胞壁画分使用)>
試験例2−1において用いた〔調製例1の死菌体〕を〔調製例3の細胞壁画分〕に変更したこと以外は、試験例2−2と同様に試験した。結果を
図2Bに示す。
【0040】
<結果>
図2Bより、ラクトバシルス・プランタラムの細胞壁画分を用いると、IL−8mRNAの発現量が有意に抑制されることがわかった。
【0041】
(試験例3−1)
<TGF−β1mRNA発現促進作用試験(細胞壁画分使用)>
実際の腸管状態を模したin vitroモデルを構築し、リポ多糖(LPS)を用いて炎症状態を誘導し、ラクトバシルス・プランタラムによって、炎症状態が抑制(TGF−β1mRNA発現が促進)されるかを試験した。以下、詳細に説明する。
まず、トランズウェル(12mm Transwell(登録商標)with 0.4μm Pore Polycarbonate Membrane Insert,Sterile(Product #3401)、コーニング社)のアピカル側にヒト由来の腸管上皮細胞(Caco−2)を配置し、バソラテラル側にマウス由来のマクロファージ細胞(RAW264.7)を配置して、実際の腸管状態を模したin vitroモデルを構築した。次に、トランズウェルのアピカル側にサンプル(調製例3の細胞壁画分)を添加して、3時間培養した。培養後、リポ多糖(LPS)を用いて、マクロファージ細胞(RAW264.7)を刺激し、3時間培養して炎症状態を誘導した。そして、腸管上皮細胞(Caco−2)から、キット(セパゾールRNAI Super、ナカライテスク株式会社)を用いてtotal RNAを抽出し、リアルタイムPCR法(PCR装置:Applied Biosystems 2720 Thermal Cycler、アプライドバイオシステムズ社;リアルタイムPCR装置:Applied Biosystems 7500 Fast Real−Time PCR System、アプライドバイオシステムズ社;TGF−β1プライマー:TaqMan(登録商標)Gene Expression Assay,Hs00998133_m1、アプライドバイオシステムズ社)により、TGF−β1mRNAの発現量を測定した。なお、コントロールは、調製例3の細胞壁画分を使用しなかったものを用いた。結果を
図3Aに示す。
【0042】
<結果>
図3Aより、ラクトバシルス・プランタラムの細胞壁画分を用いると、TGF−β1mRNAの発現量が有意に促進されることがわかった。
【0043】
(試験例3−2)
<TGF−β1mRNA発現促進作用試験(細胞壁画分使用)>
実際の腸管状態を模したin vitroモデルを構築し、ラクトバシルス・プランタラムによるTGF−β1mRNAの発現量の経時的変化をリアルタイムPCR法により試験した。以下、詳細に説明する。
まず、トランズウェル(12mm Transwell(登録商標)with 0.4μm Pore Polycarbonate Membrane Insert,Sterile(Product #3401)、コーニング社)のアピカル側にヒト由来の腸管上皮細胞(Caco−2)を配置し、バソラテラル側にマウス由来のマクロファージ細胞(RAW264.7)を配置して、実際の腸管状態を模したin vitroモデルを構築した。そして、腸管上皮細胞(Caco−2)からtotal RNAを抽出し、リアルタイムPCR法を用いてTGF−β1mRNAの発現量を測定した。次に、トランズウェルのアピカル側で分化させた腸管上皮細胞(Caco−2)に、サンプル(調製例3の細胞壁画分)を添加して、6時間後、9時間後、20時間後に、腸管上皮細胞(Caco−2)から、キット(セパゾールRNAI Super、ナカライテスク株式会社)を用いてtotal RNAを抽出し、リアルタイムPCR法(PCR装置:Applied Biosystems 2720 Thermal Cycler、アプライドバイオシステムズ社;リアルタイムPCR装置:Applied Biosystems 7500 Fast Real−Time PCR System、アプライドバイオシステムズ社;TGF−β1プライマー:TaqMan(登録商標)Gene Expression Assay, Hs00998133_m1、アプライドバイオシステムズ社)により各時間経過後におけるTGF−β1mRNAの発現量の経時的変化を測定した。なお、コントロールは、調製例3の細胞壁画分を使用しなかったものを用いた。結果を
図3B〜
図3Dに示す。
【0044】
<結果>
図3B〜
図3Dより、ラクトバシルス・プランタラムの細胞壁画分を添加すると、TGF−β1mRNAの発現量が経時的に有意に促進されることがわかった。
【0045】
以上より、ラクトバシルス・プランタラム(
Lactobacillus plantarum)が、優れたTNF−α発現抑制作用、IL−8mRNA発現抑制作用、及びTGF−β1mRNA発現促進作用のいずれの作用をも有することがわかった。また、前記ラクトバシルス・プランタラム(
Lactobacillus plantarum)を有効成分とすることにより、自己免疫疾患を抑制できる抗炎症剤として利用できることが示唆された。