(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置指定操作によって指定される前記撮影画像内の画像内座標情報を、前記光ポイント装置による前記光の照射位置を制御するための実座標情報に変換する座標変換部を備えていることを特徴とする請求項1記載の遠隔指示支援システム。
前記車載装置は、前記患者が寝かされる寝台を固定するための寝台固定台に設けられ、前記搬送車両から前記寝台へ伝わる振動を除去する除振装置を有していることを特徴とする請求項1ないし7のうちいずれか1項記載の遠隔指示支援システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、外傷の初期診断を迅速簡易に行うために、超音波診断装置を利用した迅速簡易超音波検査法が行われている。この迅速簡易超音波検査法は、FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)と呼ばれる。FASTは、心膜(心臓を覆う外膜)、左右肋間、モリソン窩(肝臓と右腎臓の間に存在する領域)、ダグラス窩(子宮と直腸の間に存在する腹膜腔の一部)、脾臓周囲の6か所の検査部位に対して超音波検査を実行し、腹部への外傷による大量血胸、腹腔内出血、心タンポナーデ(心臓と心膜の間に液体が大量に貯留することによって心臓の拍動が阻害された状態)などの有無を確認することを目的としており、6か所について液体貯留(出血)の有無を確認することにより、開腹手術の必要性などその後の治療方針を決定するための一次検査として行われる。
【0007】
FASTは、一次検査に利用されるため、患者が受傷後できるだけ早期に行われることが好ましい。そのため、FASTは、救急車などの搬送車両で患者が事故現場から病院に搬送される搬送途中に、救急車内において、救急隊員が車載の超音波診断装置を操作してFASTを行う場合がある。救急隊員がFASTを行う際には、迅速かつ正確にFASTを実行するために、病院にいる医師と携帯電話などで連絡をとり、医師の指示を仰ぎながら行われる場合も多い。
【0008】
特許文献1に記載された遠隔指示支援システムは、携帯電話と比較すると、指示表示部を通じて検査部位の名称などを視覚的に確認できるというメリットがあるため、遠隔指示支援システムを救急車の車内で利用することが考えられる。
【0009】
しかしながら、救急車による患者の平均搬送時間は約30分と短く、搬送中の作業には迅速性が求められる。特許文献1に記載された遠隔指示支援システムは、救急車の車内のように、迅速性が求められる現場で使用するには問題があった。というのも、特許文献1に記載の遠隔指示支援システムは、指示表示部にメッセージを表示するものであるため、救急隊員は指示表示部と患者の体を相互に確認しながら指示を受ける必要がある。また、救急隊員は医師ほど検査に習熟していないため、指示内容が検査部位の名称やプローブの移動方向や移動量を示すメッセージでは、検査部位を直感的に把握しづらいという問題もある。この場合には、医師に逐次確認を求めながら検査を進めていくことになるため、迅速な検査を行いにくい。
【0010】
また、遠隔指示を行う医師は、超音波画像からプローブの現在位置を推測しなければならないが、超音波画像は患者の体内を画像化したものであり、患者の体の外形を表す画像ではないため、超音波画像からプローブの現在位置を把握するのに時間がかかるという問題もあった。特に、FASTのように、検査部位が、臓器の一部の細かな部位である場合には、こうした問題がより顕著となる。
【0011】
本発明は、患者を搬送する搬送車両内で医療機器による検査を行う場合において、検査部位の正確な位置を迅速に遠隔地から指示することが可能な遠隔指示支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の遠隔指示支援システムは、医療機器を操作する操作者に対して、医療機器の操作に関する指示を遠隔地から行う遠隔指示を支援する遠隔指示支援システムにおいて、医療機器が設けられ患者を搬送する搬送車両内に設けられる車載装置と、通信ネットワークを介して車載装置と通信可能に接続された遠隔指示装置とを備え、車載装置は、患者を撮影する撮影部と、撮影部が撮影した撮影画像を遠隔指示装置に送信する撮影画像送信部と、医療機器によって検査を行う検査部位に関する指示を遠隔指示装置から受信する指示受信部と、患者に光を照射して、検査部位をポイントする光ポイント装置であり、指示受信部が受信した指示に基づいて、光の照射位置を変位可能な光ポイント装置とを有し、遠隔指示装置は、撮影画像送信部から受信した撮影画像を表示する撮影画像表示部と、撮影画像内において患者の体の中から検査部位の位置を指定する位置指定操作の入力を受け付ける位置指定受付部と、位置指定受付部が受け付けた位置指定操作に基づいて、指示を生成する指示生成部と、指示生成部で生成した指示を車載装置に送信する指示送信部とを有する。
【0013】
位置指定操作によって指定される撮影画像内の画像内座標情報を、光ポイント装置による光の照射位置を制御するための実座標情報に変換する座標変換部を備えていることが好ましい。
【0014】
光ポイント装置は、レーザ光を照射する照射部と、照射部を変位させる変位機構とを有していることが好ましい。また、撮影部は、患者を撮影する光学カメラであることが好ましい。
【0015】
医療機器は、患者の体に接触させるプローブを有し、プローブからの信号に基づいて超音波画像を生成して表示する超音波診断装置であり、検査部位は、プローブを接触させる部位であることが好ましい。超音波診断装置を用いて、迅速簡易超音波検査法であるFASTを行う際に使用されることがより好ましい。
【0016】
遠隔指示装置は、光ポイント装置による光の照射位置の現在位置を車載装置から受信する現在位置受信部を有しており、撮影画像表示部において現在位置を撮影画像に重畳して表示することが好ましい。
【0017】
車載装置は、患者が寝かされる寝台を固定するための寝台固定台に設けられ、搬送車両から寝台へ伝わる振動を除去する除振装置を有していることが好ましい。撮影部及び光ポイント装置のうち少なくとも一方は、寝台固定台に固定されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、遠隔地において撮影画像内の位置指定により、搬送車両内の光ポイント装置による光の照射位置を制御可能にしたから、搬送車両内の医療機器の操作者に的確に検査位置の指示を与えることができる。そのため、患者を搬送する搬送車両内で医療機器による検査を行う場合において、検査部位の正確な位置を迅速に遠隔地から指示することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「第1実施形態」
本発明の遠隔指示支援システムの第1実施形態について、以下にその詳細を説明する。遠隔指示支援システム10は、
図1に示すように、救急車11に搭載される車載装置12と、病院13などの医療機関に設置される遠隔指示装置14とを備える。車載装置12と遠隔指示装置14は、移動体通信網や無線WAN(Wide Area Network、広域通信網)などの通信ネットワーク16を介して通信可能に接続されている。救急車11には、外傷を負った患者Pの一次検査に使用する超音波診断装置17も搭載されている。救急車11で患者Pを搬送先の病院13に搬送中の車内において、救急隊員Cは、超音波診断装置17を操作して患者Pに対する一次検査として迅速簡易超音波検査法であるFASTを実施する。遠隔指示支援システム10は、超音波診断装置17の操作方法に関して、救急隊員Cが、遠隔の病院13にいる医師Dから操作指示を受けるためのものである。
【0021】
超音波診断装置17は、患者Pの体の検査部位に当てて、超音波画像を生成するための超音波信号を送受信するプローブ18を有している。救急隊員Cは、遠隔指示支援システム10を通じて、プローブ18を当てる検査部位に関する指示を医師Dから受け取る。遠隔指示装置14は、医師Dによって操作され、プローブ18を当てる検査部位に関する指示を車載装置12に送信する。
【0022】
車載装置12は、ストレッチャ21などの寝台上に寝かされた患者Pの体を撮影して撮影画像を出力する撮影部22と、撮影部22が出力した撮影画像を通信ネットワーク16経由で遠隔指示装置14に送信し、かつ、遠隔指示装置14からの操作指示を受信する制御装置23と、患者Pの体に光を照射してプローブ18を当てる検査部位をポイントする光ポイント装置24とを有している。光ポイント装置24は、制御装置23によって制御され、制御装置23が受信した操作指示に基づいて、光の照射位置を変位可能である。撮影部22は、可視光の下で患者Pを撮影する光学カメラであり、撮影画像をデジタルデータとして記録する。撮影部22は、患者Pの体の俯瞰像を撮影できるように、救急車11の車内の天井に固定されている。撮影画像は例えば動画であり、撮影部22により、救急車11内の患者Pの状況をリアルタイムで医師Dに知らせることができる。
【0023】
図2に示すように、超音波診断装置17は、プローブ18と、プローブ18が受信した超音波信号に基づいて患者P内の断層画像である超音波画像を生成するプロセッサ装置26と、プロセッサ装置26で生成した超音波画像を表示するモニタ27と、操作部28とを有する。プロセッサ装置26、モニタ27、操作部28は、例えば、ラック29に収容された状態で、救急車11に搭載される。プローブ18は、可撓性を有する通信ケーブルでプロセッサ装置26と接続されており、通信ケーブルを介してプロセッサ装置26からの制御信号やプロセッサ装置26への超音波信号の通信が行われる。
【0024】
プロセッサ装置26は、車載装置12と無線又は有線で通信可能に接続されている。プロセッサ装置26が生成した超音波画像はモニタ27へ出力されるとともに、車載装置12へも送信される。
【0025】
図3のシェーマ(人体の模式的な解剖図)に示すように、FASTを行う際の検査部位は、心膜(心臓を覆う外膜)R1、左右肋間R2、R3、モリソン窩(肝臓と右腎臓の間に存在する領域)R4、ダグラス窩(子宮と直腸の間に存在する腹膜腔の一部)R5、脾臓周囲R6の6か所である。FASTでは、この6か所の検査部位に順次プローブ18を当てて超音波検査を実行し、腹部への外傷による大量血胸、腹腔内出血、心タンポナーデ(心臓と心膜の間に液体が大量に貯留することによって心臓の拍動が阻害された状態)などの有無を確認する。そして、6か所に関する液体貯留(出血)の所見により、開腹手術の必要性を評価することができる。FASTを適切に行うためには、プローブ18を、FASTの検査部位に正確に当てることが要求される。
【0026】
図4において、光ポイント装置24は、患者Pの体にレーザ光Lを照射して検査部位をポイントすることにより、救急隊員Cにプローブ18を当てる位置を知らせる、いわゆるレーザポインタである。光ポイント装置24によるレーザ光Lの照射位置は、遠隔指示装置14を通じて医師Dによる遠隔操作が可能となっている。医師Dの遠隔操作により、レーザ光の照射位置が検査部位に移動することにより、救急隊員Cに検査部位を順次指示することができる。
【0027】
光ポイント装置24は、レーザ光を照射する照射部31と、照射部31をX軸、Y軸、Z軸の三軸方向に変位させる変位機構32とを有している。照射部31は、半導体素子で構成されるレーザ光源を有する。変位機構32は、ストレッチャ21を固定する寝台固定台33に固定される台座32a、台座32aに設けられZ軸周りに回動自在な支柱32b、及び2本のアーム32c、32dで構成されている。アーム32cとアーム32dは、それぞれの端部がZ軸方向と直交する軸周りに回動自在に取り付けられており、V字形に屈曲可能なアームユニットを構成している。アーム32cの一端は、支柱32bに取り付けられており、アーム32cも支柱32bに対してZ軸と直交する軸方向に回動自在である。アーム32dの先端には照射部31が取り付けられており、照射部31もZ軸と直交する軸方向に回動自在である。
【0028】
変位機構32は、支柱32b、アーム32c、32d及び照射部31の回動により、ストレッチャ21のマット部21a(患者Pが寝かされる部分)の上面と平行なX−Y平面内の任意の位置に照射部31を移動させる。支柱32b、アーム32c、32d及び照射部31は、モータやワイヤなどからなる駆動機構(図示せず)により電動で回動する。照射部31の点灯及び消灯や、変位機構32の動作は、制御装置23によって制御される。変位機構23により、照射部31によるレーザ光Lの照射位置を、マット部21a上に横たわる患者Pの体の任意の位置に移動させることができる。
【0029】
遠隔指示装置14は、CPU(Central Processing Unit、中央(演算)処理装置)、メモリ、通信回路などのハードウェアで構成される、パーソナルコンピュータやワークステーションをベースに、オペレーティングシステムや、遠隔指示用ソフトウエアなどのアプリケーションソフトウエアをインストールしたものである。遠隔指示装置14は、本体部36、2台のディスプレイ37、38、及び操作部39とで構成される。本体部36は、遠隔指示装置14を制御する制御部である。1台のディスプレイ37は、撮影部22から出力される撮影画像41を表示する撮影画像表示部として機能する。もう1台のディスプレイ38は、超音波診断装置17から出力される超音波画像42を表示する。操作部39は、マウスやキーボードなどからなり、本体部36に操作信号を入力する。
【0030】
ディスプレイ37に表示される撮影画像41内には、ポインタ43が表示される。ポインタ43の位置は操作部39によって操作される。ポインタ43の操作により、撮影画像42内の位置を指定する位置指定操作が行われる。具体的には、位置指定操作は、撮影画像41に映し出される患者Pの体の任意の位置にポインタ43を移動して、マウスのクリック操作やキーボードのリターンキーの押下操作などによってポインタ43の位置を確定する操作である。位置指定操作により確定した位置には、例えば三角形のマーク44が表示される。
【0031】
本体部36は、位置指定操作の入力を受け付けて、指定された位置に基づいて、光ポイント装置24の照射部31によるレーザ光の照射位置を移動するための移動指示を生成し、生成した移動指示を通信ネットワーク16経由で車載装置12に送信する。ここで、位置指定操作は、撮影画像41内において患者Pの体の中から検査部位の位置を指定する位置指定操作であり、移動指示は、超音波診断装置17によって検査を行う検査部位に関する指示である。
【0032】
図5において、遠隔指示装置14の本体部36は、GUI(Graphical User Interface)制御部46と通信部47とを有している。GUI制御部46や通信部47は、CPU、メモリ、通信回路などのハードウェアと、オペレーティングシステムや遠隔指示用ソフトウエアとの協働によって実現される。通信部47は、車載装置12から送信される撮影画像41及び超音波画像42を受信して、受信した各画像をGUI制御部46に入力する。また、通信部47は、GUI制御部46から入力される移動指示を車載装置12に通信ネットワーク16を介して送信する。通信部47は、指示送信部として機能する。
【0033】
GUI制御部46は、ディスプレイ37、38にポインタ43や各種の操作コマンドを含む操作画面を表示し、操作画面及び操作部39から、位置指定操作を含むユーザの操作の入力を受け付ける。また、GUI制御部46は、通信部47が受信した撮影画像41や超音波画像42を、それぞれ各ディスプレイ37、38に表示する表示制御部としても機能する。
【0034】
GUI制御部46は、位置指定操作の入力を受け付けると、指定された位置に対応する撮影画像41内の座標(以下、画像内座標という)を特定し、特定した画像内座標によって照射部31の移動先を指定した移動指示を生成する。GUI制御部46は、生成した移動指示を通信部47に入力する。このように、GUI制御部46は、位置指定受付部及び指示生成部として機能する。
【0035】
制御装置23は、光ポイント装置24を制御する第1制御部51、座標変換部52、撮影部22を制御する第2制御部53及び通信部54を有している。第1制御部51は、光ポイント装置24の照射部31の点灯及び消灯を制御する。また、第1制御部51は、遠隔装置14から受信する移動指示に基づいて、変位機構32を作動させて照射部31の照射位置を制御する。
【0036】
具体的には、第1制御部51は、支柱32b、アーム32c、32d及び照射部31を駆動するモータの回転量を検知して、照射部31の現在位置を把握している。現在位置は、X−Y平面内の実座標で表される。実座標は、例えば、マット部21aのX−Y平面における中心位置を基準位置として、基準位置からのX方向及びY方向の変位量で表される。第1制御部51は、座標変換部52から入力される移動指示に基づいて照射部31の照射位置を制御する。遠隔指示装置14から送信時点において移動指示は、移動先が画像内座標で指定されているが、後述するように、座標変換部52によって移動指示に含まれる画像内座標は、実座標に変換されて、第1制御部51に入力される。
【0037】
第2制御部53は、撮影部22の撮影開始及び撮影終了を制御するとともに、撮影部22から撮影画像を受信する。第2制御部53は、撮影画像41を、通信部54を介して遠隔装置14に送信する。通信部54は、撮影画像41と、超音波診断装置17から受信する超音波画像とを遠隔指示装置14に送信する。また、通信部54は、遠隔指示装置14からの移動指示を受信する。このように通信部54は、指示受信部と撮影画像送信部として機能する。また、第2制御部53は、座標変換部52に対して、撮影画像41と撮影部22の撮影倍率(実際の被写体の大きさと撮影画像41内の被写体の大きさの比率)とを入力する。
【0038】
座標変換部52は、撮影画像及び撮影倍率に基づいて、遠隔指示装置14から送信される移動指示に含まれる移動先の指定を、画像内座標から実座標に変換する。そして、実座標で移動先が指定された変換後の移動指示を第1制御部51に入力する。撮影部22の画角の中心位置は、照射部31の基準位置と同様に、マット部21aの中心位置と一致するように設定されている。
【0039】
そのため、
図6に示すように、撮影部22が撮影する撮影画像41の中心位置OPと、マット部21aの中心位置ORとが一致する。そして、撮影倍率が分かれば、撮影画像41内の画像内距離をマット部21a上の実距離に変換することができるので、画像内座標から実座標への変換が可能となる。例えば、照射部31の現在位置が基準位置である中心位置ORにある場合、撮影画像41の中心位置OPと照射部31の照射位置は対応している。遠隔指示装置14において、位置指定操作により、撮影画像41のマーク44で示す位置が照射部31の移動先として指定された場合、マーク44の位置の画像内座標が特定される。座標変換部52は、画像内座標で指定された移動指示を受け取ると、マーク44に対応する画像内座標に基づいて、撮影画像41の中心位置OPに対する移動方向及び移動距離DPを算出する。移動距離DPに対して撮影倍率を乗算すると、マット部21aの実座標上の移動距離DRに変換される。移動距離DR及び移動方向に基づいて、マット部21aの中心位置ORに対する移動先PRの実座標が算出される。
【0040】
なお、本例の画像内座標から実座標への変換方法は、画像内座標に関して、撮影画像41の画面の左上など画面の四隅のいずれかを基準位置とした例を想定している。この場合には、マット部21aにおける実座標の基準位置と画像内座標の基準位置が一致しないため、画像内座標と実座標に基づいていったん移動距離及び移動方向を求めて、座標変換を行っている。しかし、実座標や画像内座標の基準位置の取り方には種々の態様が考えられるので、基準位置の取り方に応じて適切な座標変換方法を採用することができる。例えば、画像内座標が、実座標と同様に、撮影画像41内の中心位置OPを基準位置とするX方向及びY方向の変位量で表される場合には、画像内座標に撮影倍率を乗算するだけで実座標が求められる。
【0041】
以下、上記構成による作用について
図7に示すフローチャートに基づいて説明する。救急車11では、救急隊員Cにより患者Pがマット部21aの上に寝かされた後、救急隊員Cにより車載装置12が起動される(車載装置起動ステップS101)。これにより、制御装置23内の第1制御部51が光ポイント装置24の制御を開始する。また、第2制御部53が撮影部22の制御を開始する。一方、病院13では、医師Dにより遠隔指示装置14が起動される(遠隔指示装置起動ステップS201)。
【0042】
第2制御部53は、撮影部22による患者Pの体の撮影を開始させる(撮影開始ステップS102)。これにより、撮影部22は、撮影画像41の取得を開始する。撮影画像41は、撮影部22から第2制御部53を経由して通信部54へ送信される。通信部54は、通信ネットワーク16を介して、遠隔指示装置14への撮影画像41の送信を開始する(撮影画像送信開始ステップS103)。この後、撮影部22による患者Pの撮影が終了するまで、通信部54は遠隔指示装置14へ撮影画像41を送信し続ける。
【0043】
遠隔指示装置14の通信部47は、送信された撮影画像41の受信を開始する。受信された撮影画像41は、通信部47からGUI制御部46に送信される。GUI制御部46は、ディスプレイ37への撮影画像41の表示を開始する(撮影画像表示開始ステップS202)。この後、撮影画像41の受信が終了するまで、GUI制御部46は、ディスプレイ37への撮影画像41を表示し続ける。また、GUI制御部46は、ディスプレイ37に表示された撮影画像41内にポインタ43を表示させる(ポインタ表示ステップS203)。
【0044】
救急隊員Cに検査部位を指示する必要があると医師Dが判断した場合には、遠隔指示装置14を操作する医師Dにより、位置指定操作が行われる(位置指定操作判定ステップS204のYES)。GUI制御部46は、位置指定操作の入力を受け付ける(位置指定操作入力受付ステップS205)。
【0045】
位置指定操作の入力を受け付けたGUI制御部46は、指定された位置に対応する画像内座標を特定し、特定した画像内座標によって照射部31の移動先を指定した移動指示を生成する(移動指示生成ステップS206)。GUI制御部46は、特定した画像内座標上に三角形のマーク44を表示する。
【0046】
生成された移動指示は、GUI制御部46から通信部47へ送信される。通信部47は、受信した移動指示を、通信ネットワーク16を介して、車載装置12へ送信する(移動指示送信ステップS207)。車載装置12の通信部54は、送信された移動指示の受信を開始する(移動指示受信ステップS104)。受信された移動指示は、通信部54から座標変換部52に送信される。
【0047】
座標変換部52は、移動指示の受信に合わせて、第2制御部53から、撮影画像41と撮影部22の撮影倍率との入力を受ける。座標変換部52は、撮影画像41と撮影倍率とに基づいて、移動指示に含まれる移動先の指定を、画像内座標から実座標に変換する。そして、実座標で移動先が指定された変換後の移動指示を第1制御部51に入力する。第1制御部51は、実座標での移動指示に基づいて、変位機構32を作動して照射部31を移動させる(照射位置移動ステップS105)。その後、第1制御部51は、照射部31にレーザ光を照射させる。
【0048】
これにより、救急隊員Cは、照射部31によりレーザ光の照射されている患者Pの部位にプローブ18を当て、超音波画像を撮影することができる。撮影された超音波画像は、モニタ27に表示され、通信部54に送信される。通信部54は、通信ネットワーク16を介して、遠隔指示装置14へ超音波画像を送信する。この超音波画像は、通信部47からGUI制御部に送られ、ディスプレイ38に表示される。このように、医師の指示に基づいた部位について、超音波検査が行われる。
【0049】
さらに超音波検査をする場合には(検査終了判定ステップS208,S106のNO)、位置指定操作入力受付ステップS205〜移動指示送信ステップS207と、移動指示受信ステップS104〜照射位置移動ステップS105と、超音波検査とが再び行われる。
【0050】
一方、さらに超音波検査をする必要がなくなった場合には(検査終了判定ステップS208,S106のNO)、超音波検査を終了する。第2制御部53は、撮影部22による患者Pの体の撮影を終了させる(撮影終了ステップS107)。また、GUI制御部46は、ディスプレイ37への撮影画像41の表示を終了する(撮影画像表示終了ステップS209)。
【0051】
また、位置指定操作判定ステップS204において、救急隊員Cに検査部位を指示する必要がないと医師Dが判断した場合には(S204のNO)、検査終了判定ステップS208,S106においてYESとなった場合と同様に、撮影終了ステップS107及び撮影画像表示終了ステップS209とが行われる。
【0052】
本発明は、遠隔地である病院13から医師Dが撮影画像41内の位置を指定することにより、救急車11内の光ポイント装置24によるレーザ光の照射位置を制御可能にしたので、救急車11内の救急隊員Cに的確に検査位置の指示を与えることができる。そのため、医師Dは、検査部位の正確な位置を迅速に遠隔地から指示することができる。本発明は、レーザ光により正確な検査位置を指示できるため、超音波検査のように検査位置の範囲が比較的狭い検査をする際には、特に有効に用いられる。
【0053】
また、医師Dの指示はレーザ光の照射により行われるので、救急隊員Cは医師Dの指示を直感的に把握することができる。そのため、本発明は、迅速な検査を要する場合に特に有効に用いられる。多数の箇所(6箇所)を短時間(約30分)で超音波検査することを要するFASTの場合には、本発明は特に有効に用いられる。
【0054】
第1実施形態では、移動指示に含まれる移動先の指定を画像内座標から実座標に変換する座標変換部52は車載装置12に設けられたが、座標変換部は遠隔指示装置14に設けられても構わない。
【0055】
第1実施形態では、ディスプレイ37内の撮影画像41上の位置指定操作によって指定された位置に三角形のマーク44を表示している。これにより、医師Dは、位置指定操作によって指定する位置を確認できるので、位置操作指定がしやすい。また、これに加えて、あるいは代えて、レーザ光の照射位置の現在位置を車載装置12から受信し、撮影画像41に重畳して表示しても構わない。現在位置を表示することにより、医師Dは現在位置を確認できるので、使いやすい。
【0056】
なお、第1実施形態では、撮影部22には可視光を利用する光学カメラを用いたが、光学カメラに代えて赤外線を利用する赤外線カメラを用いてもよい。
【0057】
また、第1実施形態では照射部31にはレーザ光源を有するものを用いたが、これに代えて指向性や収束性のある光を照射する光源を有するものを用いても構わない。また、変位機構32にはアーム状のものを用いたが、照射部31を指定された移動先に移動させることができる様態であれば、どのような様態であっても構わない。例えば、寝台固定台の上部にアクチュエータが備えられたフレームを設け、アクチュエータによって照射部31を移動させるような様態を用いてもよい。
【0058】
「第2実施形態」
本発明の遠隔指示支援システムの別の一例である第2実施形態について、以下にその詳細を説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、
図8に示すように、撮影部固定部61と除振装置62とが新たに設けられている点である。
図8は、第2実施形態のうち車載装置12の一部のみを示したものであり、制御装置23や遠隔指示装置14は省略されている。撮影部固定部61は、撮影部22を寝台固定台33に固定する。除振装置62は、寝台固定台33の下側に設けられている。なお、上述の第1実施形態と同様の構成及び機能をもつものについては同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0059】
除振装置62は、略棒状の計8本のオイルダンパ62a,62b,62cと、寝台固定台33の下側の面に対抗して設けられた略長方形の板62dとからなる。オイルダンパ62aは、寝台固定台33の下側の面に、略垂直に4本固定して設けられている。4本のオイルダンパ62aの他方の端は、いずれも、板62dに固定されている。オイルダンパ62bは、寝台固定台33の下側の面の長手方向に筋交い状に2本設けられている。2本のオイルダンパ62bは、互いにねじれの位置に配される。オイルダンパ62cは、寝台固定台33の下側の面の長手方向に筋交い状に2本設けられている。2本のオイルダンパ62cは、互いにねじれの位置に配される。
【0060】
オイルダンパ62a,62b,62cはいずれも、公知のオイルダンパが用いられる。ここでは、オイルダンパ62a,62b,62cはいずれも、ショックアブソーバにスプリングを支えるスプリングシートを設けた構造を有する。ここで、ショックアブソーバは、伸縮式のシリンダーダンパであり、非圧縮性液体の流体抵抗を利用したオイル式(液体式)である。ショックアブソーバは、伸縮に合わせて動くピストンにより流体が移動することにより、抵抗を発生して減衰力を得る。スプリングは、弾性変形することにより、衝撃を吸収する。これにより、オイルダンパ62a,62b,62cはいずれも、それぞれの設けられた方向に対する衝撃を吸収し、衝撃によって生じる振動を減衰させることができる。
【0061】
オイルダンパ62aは、寝台固定台33の下側の面に略垂直の方向の衝撃を吸収することができる。また、オイルダンパ62b,62cはいずれもオイルダンパ62aに平行でない方向に設けられているため、オイルダンパ62aでは吸収しきれない方向の衝撃を吸収することができる。そのため、除振装置62は、救急車11で発生して寝台固定台33へ伝達される衝撃を確実に吸収することができる。
【0062】
第1及び第2実施形態では、光ポイント装置24とストレッチャ21とは共に寝台固定台33に固定されるため、救急車11の振動により、光ポイント装置24とストレッチャ21との相対位置が変化しないので、好ましい。さらに、第2実施形態では、撮影部22も寝台固定台33に固定されるため、救急車11の振動により、撮影部22とストレッチャ21との相対位置も、撮影部22と光ポイント装置24との相対位置も、変化しないので、より好ましい。
【0063】
なお、第2実施形態では、除振装置62はオイルダンパ62a,62b,62cを備えるものとしたが、これに限ることはなく、救急車11からの衝撃を吸収するものであれば、どのような様態であっても構わない。例えば、オイルダンパに代えて磁気ダンパ(特願2012−205872号公報を参照)を用いることができる。
【0064】
「第3実施形態」
本発明の遠隔指示支援システムの別の一例である第3実施形態について、以下にその詳細を説明する。第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、
図9に示すように、アーム32dの先端には照射部31と撮影部22とが隣接して取り付けられている点である。アーム32dの先端には照射部31と撮影部22とが取付けられているため、アーム32dの移動により、照射部31と撮影部22とは一緒に移動する。また、照射部31と撮影部22とはほぼ同じ位置にあるため、
図10に示すように、撮影部22が撮影する撮影画像の中心位置OPと、照射部31の位置の照射位置とは常に略対応している。
【0065】
第1実施形態と同様に、遠隔指示装置14において、位置指定操作により、撮影画像41のマーク44で示す位置が照射部31の移動先として指定された場合、座標変換部52は、この移動先の指定を画像内座標から実座標に変換する。実座標で移動先が指定された変換後の移動指示に基づいて、第1制御部51は、変位機構32を作動して照射部31を位置PRに移動させる。このとき、第3実施形態では、照射部31の移動と同時に、撮影部22も位置PRの付近に移動する。これにより、撮影画像の中心位置OPもマーク44で示す位置に移動する。想像線で囲まれた領域の部分が新たに撮影画像41aとしてディスプレイ37に表示される。
【0066】
第3実施形態では、照射位置が撮影画像の略中心にくるため、医師Dは、救急隊員Cに対して指示している位置を直感的に確認しやすくなるという利点がある。また、このような構成にすることにより、撮影画像41内にアーム31dが写りこんでしまうなどというように、変位機構32が撮影部22の撮影の邪魔にはならない。そのため、撮影部22は、変位機構32による死角のない患者Pの撮影画像を撮影することができる。これにより、医師Dは、変位機構32により死角となってしまう部分に対しても指示がしやすくなるので、好ましい。
【0067】
本発明は、超音波検査以外の検査、例えばカセッテ型デジタルX線撮影装置を用いたX線撮影による検査に用いることもできる。しかし、本発明では、レーザ光の照射により細かい位置を指定できるので、X線撮影により比較的広範囲の検査を行う場合よりも、超音波により比較的狭い範囲の検査を行う場合の方が、より有効である。また、超音波による検査部位が細かく、緊急を要するときに行われるFASTの場合には、特に本発明は有効である。