(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記録素子を使用不可から使用可に復帰させた場合に前記記録素子を使用不可から使用可に復帰させたことを告知する、及び、前記記録素子を継続的に使用不可とした場合に前記記録素子を継続的に使用不可としたことを告知する告知部を更に備えた、
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像記録装置。
あらかじめ設定される検査期間内で前記記録素子が、前記検査部による検査で異常ありと判定された回数Kをカウントし、あらかじめ設定された数mにKを乗じた数を前記規定回数Mに設定し、かつ、あらかじめ設定された数nにKを乗じた数を前記規定回数Nに設定する、
請求項13に記載の画像記録方法。
あらかじめ設定される検査期間内で前記記録素子が、前記検査部による検査で異常ありと判定された回数Kをカウントし、あらかじめ設定された数mをK乗した数を前記規定回数Mに設定し、かつ、あらかじめ設定された数nをK乗した数を前記規定回数Nに設定する、
請求項13に記載の画像記録方法。
前記記録素子を使用不可から使用可に復帰させた場合に前記記録素子を使用不可から使用可に復帰させたことを告知し、かつ、前記記録素子を継続的に使用不可とした場合に前記記録素子を継続的に使用不可としたことを告知する、
請求項12から15のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に記録素子の検査は、テストチャートのプリント結果に基づいて行われる。しかし、この検査をプリントジョブの実行中に実施すると、しばしば誤検出が生じる。特に、プリント速度が速くなると、誤検出が顕著になる。
【0008】
特許文献1、2の方法は、誤検出であっても一度異常と認定されると、該当する記録素子が不使用とされ、補完処理が行われるため、必要以上に補完処理が行われてしまうという欠点がある。
【0009】
これに対して特許文献3の方法は、異常が解消されると、通常動作に復帰するため、必要以上に補完処理が行われることはないが、動作が不安定な記録素子があると、補完処理が繰り返しON/OFFされてしまい、動作が安定しないという欠点がある。
【0010】
また、特許文献4の方法は、誤検出には強くなるが、真に補完処理が必要な場合に実施に遅れが生じるという欠点がある。また、不安定な記録素子については、捕捉しきれないという欠点もある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、記録素子の状態を適切に判断して、適切に補完処理を実施できる画像記録装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0013】
(1)プリントヘッドに備えられた記録素子の異常の有無を定期的に検査する検査部と、検査部の検査結果に基づいて、記録素子の使用の可否を判定する判定部と、判定部によって使用不可と判定された記録素子を不使用とし、かつ、不使用とした記録素子による画像欠陥を補完する補完部と、を備えた画像記録装置であって、判定部は、あらかじめ設定される判定期間内において、検査部による検査で異常ありと判定された記録素子を使用不可とし、かつ、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査で異常なしと判定されると、その記録素子を使用可に復帰させる一方、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査から規定回数N回以内の検査で再度異常ありと判定されると、その記録素子を判定期間内において継続的に使用不可とする、画像記録装置。
【0014】
本態様によれば、プリントヘッドに備えられた記録素子の異常の有無が検査部で定期的に検査される。そして、その検査結果に基づいて、記録素子の使用の可否が判定部で判定される。判定部で使用不可と判定されると、該当する記録素子を不使用とし、不使用とされた記録素子による画像欠陥が補完部で補完されて、画像の記録が行われる。
【0015】
判定部は、検査部による検査で異常ありと判定された記録素子を使用不可とする。記録素子を使用不可とすると、補完部で補完処理が行われるので、異常に対して迅速に対応できる。
【0016】
判定部は、使用不可とした記録素子が、直後の検査で異常なしと判定されると、使用可に復帰させる。これにより、誤判定を防止できる。
【0017】
その一方で判定部は、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査からN回以内に再度異常ありと判定されると、その記録素子を以後継続的に使用不可とする。継続的に使用不可とするので、以後、正常と判定される場合であっても、使用不可とされる。これにより、不安定な記録素子の使用を適切に中止できる。
【0018】
なお、真に異常な記録素子は、直後の検査でも異常ありと判定される可能性が高い。この場合、その記録素子は、直後の検査で異常ありと判定された段階で継続的に使用不可とされるが、すでに補完処理が開始されているので、補完処理が遅れることはない。
【0019】
このように、本態様によれば、過去に発生した異常を考慮して、記録素子の使用の可否が判定される。これにより、適切に記録素子の使用の可否を判定できる。また、異常と判定された場合には、すぐに使用不可とし、その後、必要に応じて復帰させる構成としているので、真に画像補完が必要な場合に迅速に対応できる。
【0020】
なお、判定期間は、たとえば、プリントヘッドのメンテナンスを基準にして定めることができる。たとえば、次にプリントヘッドのメンテナンスを実施するまでの期間を判定期間に定めることができる。メンテナンスを実施することにより、記録素子の性能が回復する可能性が高いからである。
【0021】
(2)プリントヘッドに備えられた記録素子の異常の有無を定期的に検査する検査部と、検査部の検査結果に基づいて、記録素子の使用の可否を判定する判定部と、判定部によって使用不可と判定された記録素子を不使用とし、かつ、不使用とした記録素子による画像欠陥を補完する補完部と、を備えた画像記録装置であって、判定部は、あらかじめ設定される判定期間内において、検査部による検査で異常ありと判定された記録素子を使用不可とし、かつ、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査から規定回数M回連続して異常なしと判定されると、その記録素子を使用可に復帰させる一方、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査から規定回数N回以内の検査で再度異常ありと判定されると、その記録素子を判定期間内において継続的に使用不可とする、画像記録装置。
【0022】
本態様によれば、プリントヘッドに備えられた記録素子の異常の有無が検査部で定期的に検査される。そして、その検査結果に基づいて、記録素子の使用の可否が判定部で判定される。判定部で使用不可と判定されると、該当する記録素子を不使用とし、不使用とされた記録素子による画像欠陥が補完部で補完されて、画像の記録が行われる。
【0023】
判定部は、検査部による検査で異常ありと判定された記録素子を使用不可とする。記録素子を使用不可とすると、補完部で補完処理が行われるので、異常に対して迅速に対応できる。
【0024】
判定部は、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査からM回連続して異常なしと判定されると、その記録素子を使用可に復帰させる。これにより、誤判定を防止できる。
【0025】
その一方で判定部は、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査からN回以内に再度異常ありと判定されると、その記録素子を以後継続的に使用不可とする。継続的に使用不可とされるので、以後連続して正常と判定されることがあっても、使用不可とされる。これにより、不安定な記録素子の使用を適切に中止できる。また、連続して異常が発生する場合も既に使用不可とされているので、補完処理が遅れることもない。
【0026】
このように、本態様によれば、過去に発生した異常を考慮して、記録素子の使用の可否が判定される。これにより、適切に記録素子の使用の可否を判定できる。また、異常と判定された場合には、すぐに使用不可とし、その後、必要に応じて復帰させる構成としているので、真に画像補完が必要な場合に迅速に対応できる。
【0027】
判定期間は、たとえば、プリントヘッドのメンテナンスを基準にして定めることができる。たとえば、次にプリントヘッドのメンテナンスを実施するまでの期間を判定期間に定めることができる。メンテナンスを実施することにより、記録素子の性能が回復する可能性が高いからである。
【0028】
(3)あらかじめ設定される検査期間内で記録素子が、検査部による検査で異常ありと判定された回数Kをカウントする異常発生回数カウント部と、異常発生回数カウント部でカウントした回数Kに基づいて、規定回数M及びNを設定する規定回数設定部と、を更に備え、規定回数設定部は、あらかじめ設定された数mにKを乗じた数を規定回数Mに設定し、かつ、あらかじめ設定された数nにKを乗じた数を規定回数Nに設定する、上記(2)の画像記録装置。
【0029】
本態様によれば、記録素子について、検査によって異常と判定された回数Kがカウントされる。そして、その回数Kに基づいて、使用可に復帰させるか否かの判定基準となる規定回数Mが設定される。また、その回数Kに基づいて、継続的に使用不可とするか否かの判定基準となる規定回数Nが設定される。すなわち、本態様によれば、過去の異常の発生履歴に基づいて、規定回数M及びNが設定される。これにより、より適切に復帰の条件を設定できる。
【0030】
(4)あらかじめ設定される検査期間内で記録素子が、検査部による検査で異常ありと判定された回数Kをカウントする異常発生回数カウント部と、異常発生回数カウント部でカウントした回数Kに基づいて、規定回数M及びNを設定する規定回数設定部と、を更に備え、規定回数設定部は、あらかじめ設定された数mをK乗した数を規定回数Mに設定し、かつ、あらかじめ設定された数nをK乗した数を規定回数Nに設定する、上記(2)の画像記録装置。
【0031】
本態様によれば、記録素子について、検査によって異常と判定された回数Kがカウントされる。そして、その回数Kに基づいて、使用可に復帰させるか否かの判定基準となる規定回数Mが設定される。また、その回数Kに基づいて、継続的に使用不可とするか否かの判定基準となる規定回数Nが設定される。すなわち、本態様によれば、過去の異常の発生履歴に基づいて、規定回数M及びNが設定される。これにより、より適切に復帰の条件を設定できる。
【0032】
(5)記録素子を使用不可から使用可に復帰させた場合に記録素子を使用不可から使用可に復帰させたことを告知する、及び、記録素子を継続的に使用不可とした場合に記録素子を継続的に使用不可としたことを告知する告知部を更に備えた、上記(1)から(4)のいずれかの画像記録装置。
【0033】
本態様によれば、記録素子を使用不可から使用可に復帰させたこと、及び、記録素子を継続的に使用不可としたことが告知される。これにより、異常な記録素子があること、及び、不安定な記録素子があることを認識できる。
【0034】
(6)告知部は、メディアにスタンプを押印して告知する、上記(5)の画像記録装置。
【0035】
本態様によれば、記録素子を使用不可から使用可に復帰させたこと、及び、記録素子を継続的に使用不可としたことが、スタンプの押印によって告知される。
【0036】
(7)プリントヘッドが、メディアにシングルパスで画像を記録する、上記(1)から(6)のいずれかの画像記録装置。
【0037】
本態様によれば、シングルパスで画像が記録される。シングルパスで画像を記録する画像記録装置では、画像で高速で記録される。画像が高速で記録されると、検査部による誤検出が発生しやすくなる。しかし、上記(1)から(6)の画像記録装置によれば、誤検出が合った場合であっても適切に記録素子の使用の可否を判定でき、適切に画像補完を実施できる。
【0038】
(8)検査部は、メディアに記録されたテストチャートに基づいて、記録素子の異常の有無を検査する、上記(1)から(7)のいずれかの画像記録装置。
【0039】
本態様によれば、メディアにテストチャートを記録し、記録されたテストチャートに基づいて、記録素子の異常の有無が検査される。
【0040】
(9)テストチャートが、1記録単位ごとに記録される、上記(8)の画像記録装置。
【0041】
本態様によれば、テストチャートが、メディアに対する画像の1記録単位で記録される。なお、ここでいう「1記録単位」とは、メディアに対する画像の記録単位をいい、1回の記録と認識できる単位をいう。したがって、たとえば、枚葉(単票ともいう)のメディア(たとえば、枚葉紙)に画像を記録する場合は、1枚のメディアへの画像の記録が1記録単位となる。この場合、メディアに画像を記録するたびにテストチャートが記録される。また、たとえば、連続するメディア(たとえば、連続紙)に画像を記録する場合は、周期的に記録される画像の単位が1記録単位となる。この場合、周期的に記録される各画像間にテストチャートが記録される。
【0042】
本態様によれば、記録素子に異常が生じた場合、迅速に対応でき、メディアの無駄を防止できる。
【0043】
(10)プリントヘッドは、インクジェットヘッドであり、記録素子としてノズルを備え、検査部は、ノズルの吐出異常の有無を検査する、上記(1)から(9)のいずれかの画像記録装置。
【0044】
本態様によれば、プリントヘッドがインクジェットヘッドで構成され、そのインクジェットヘッドに備えられた各ノズルの吐出異常の有無が検査部で検査される。
【0045】
(11)補完部は、判定部によって使用不可と判定されたノズルを不吐出化し、かつ、不吐出化したノズルによる画像欠陥を補完する、上記(10)の画像記録装置。
【0046】
本態様によれば、使用不可と判定されたノズルが不吐出化されて、補完処理される。補完処理は、たとえば、不吐出化したノズルの近傍ノズルの打滴量を増やして実施する。
【0047】
(12)プリントヘッドに備えられた記録素子の異常の有無を定期的に検査する検査部を備えた画像記録装置の画像記録方法であって、あらかじめ設定される判定期間内において、検査部による検査で異常ありと判定された記録素子を使用不可とし、かつ、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査で異常なしと判定されると、その記録素子を使用可に復帰させる一方、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査から規定回数N回以内の検査で再度異常ありと判定されると、その記録素子を判定期間内において継続的に使用不可とし、かつ、記録素子を使用不可とした場合は、使用不可とした記録素子を不使用とし、かつ、不使用とした記録素子による画像欠陥を補完して画像を記録する、画像記録方法。
【0048】
本態様によれば、プリントヘッドに備えられた記録素子の異常の有無が検査部で定期的に検査される。そして、その検査結果に基づいて、記録素子の使用の可否が判定される。判定の結果、使用不可とされると、該当する記録素子が不使用とされる。そして、不使用とされた記録素子による画像欠陥が補完されて、画像の記録が行われる。
【0049】
判定は、検査部による検査で異常ありと判定された記録素子を使用不可とする。記録素子を使用不可とすると、補完部で補完処理が行われるので、異常に対して迅速に対応できる。
【0050】
また、使用不可とした記録素子が、直後の検査で異常なしと判定されると、使用可に復帰させる。これにより、誤判定を防止できる。
【0051】
その一方で、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査からN回以内に再度異常ありと判定されると、その記録素子を以後継続的に使用不可とする。継続的に使用不可とするので、以後、正常と判定される場合であっても、使用不可とされる。これにより、不安定な記録素子の使用を適切に中止できる。
【0052】
なお、真に異常な記録素子は、直後の検査でも異常ありと判定される可能性が高い。この場合、その記録素子は、直後の検査で異常ありと判定された段階で継続的に使用不可とされるが、すでに補完処理が開始されているので、補完処理が遅れることはない。
【0053】
このように、本態様によれば、過去に発生した異常を考慮して、記録素子の使用の可否が判定される。これにより、適切に記録素子の使用の可否を判定できる。また、異常と判定された場合には、すぐに使用不可とし、その後、必要に応じて復帰させる構成としているので、真に画像補完が必要な場合に迅速に対応できる。
【0054】
なお、判定期間は、たとえば、プリントヘッドのメンテナンスを基準にして定めることができる。たとえば、次にプリントヘッドのメンテナンスを実施するまでの期間を判定期間に定めることができる。メンテナンスを実施することにより、記録素子の性能が回復する可能性が高いからである。
【0055】
(13)プリントヘッドに備えられた記録素子の異常の有無を定期的に検査する検査部を備えた画像記録装置の画像記録方法であって、あらかじめ設定される判定期間内において、検査部による検査で異常ありと判定された記録素子を使用不可とし、かつ、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査から規定回数M回連続して異常なしと判定されると、その記録素子を使用可に復帰させる一方、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査から規定回数N回以内の検査で再度異常ありと判定されると、その記録素子を判定期間内において継続的に使用不可とし、かつ、記録素子を使用不可とした場合は、使用不可とした記録素子を不使用とし、かつ、不使用とした記録素子による画像欠陥を補完して画像を記録する、画像記録方法。
【0056】
本態様によれば、プリントヘッドに備えられた記録素子の異常の有無が検査部で定期的に検査される。そして、その検査結果に基づいて、記録素子の使用の可否が判定される。判定の結果、使用不可とされると、該当する記録素子が不使用とされる。そして、不使用とされた記録素子による画像欠陥が補完されて、画像の記録が行われる。
【0057】
判定は、検査部による検査で異常ありと判定された記録素子を使用不可とする。記録素子を使用不可とすると、補完部で補完処理が行われるので、異常に対して迅速に対応できる。
【0058】
また、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査からM回連続して異常なしと判定されると、その記録素子を使用可に復帰させる。これにより、誤判定を防止できる。
【0059】
その一方で、使用不可とした記録素子が、使用不可とした直後の検査からN回以内に再度異常ありと判定されると、その記録素子を以後継続的に使用不可とする。継続的に使用不可とされるので、以後連続して正常と判定されることがあっても、使用不可とされる。これにより、不安定な記録素子の使用を適切に中止できる。また、連続して異常が発生する場合も既に使用不可とされているので、補完処理が遅れることもない。
【0060】
このように、本態様によれば、過去に発生した異常を考慮して、記録素子の使用の可否が判定される。これにより、適切に記録素子の使用の可否を判定できる。また、異常と判定された場合には、すぐに使用不可とし、その後、必要に応じて復帰させる構成としているので、真に画像補完が必要な場合に迅速に対応できる。
【0061】
判定期間は、たとえば、プリントヘッドのメンテナンスを基準にして定めることができる。たとえば、次にプリントヘッドのメンテナンスを実施するまでの期間を判定期間に定めることができる。メンテナンスを実施することにより、記録素子の性能が回復する可能性が高いからである。
【0062】
(14)あらかじめ設定される検査期間内で記録素子が、検査部による検査で異常ありと判定された回数Kをカウントし、あらかじめ設定された数mにKを乗じた数を規定回数Mに設定し、かつ、あらかじめ設定された数nにKを乗じた数を規定回数Nに設定する、上記(13)の画像記録方法。
【0063】
本態様によれば、記録素子について、検査によって異常と判定された回数Kがカウントされる。そして、その回数Kに基づいて、使用可に復帰させるか否かの判定基準となる規定回数Mが設定される。また、その回数Kに基づいて、継続的に使用不可とするか否かの判定基準となる規定回数Nが設定される。すなわち、本態様によれば、過去の異常の発生履歴に基づいて、規定回数M及びNが設定される。これにより、より適切に復帰の条件を設定できる。
【0064】
(15)あらかじめ設定される検査期間内で記録素子が、検査部による検査で異常ありと判定された回数Kをカウントし、あらかじめ設定された数mをK乗した数を規定回数Mに設定し、かつ、あらかじめ設定された数nをK乗した数を規定回数Nに設定する、上記(13)の画像記録方法。
【0065】
本態様によれば、記録素子について、検査によって異常と判定された回数Kがカウントされる。そして、その回数Kに基づいて、使用可に復帰させるか否かの判定基準となる規定回数Mが設定される。また、その回数Kに基づいて、継続的に使用不可とするか否かの判定基準となる規定回数Nが設定される。すなわち、本態様によれば、過去の異常の発生履歴に基づいて、規定回数M及びNが設定される。これにより、より適切に復帰の条件を設定できる。
【0066】
(16)記録素子を使用不可から使用可に復帰させた場合に記録素子を使用不可から使用可に復帰させたことを告知し、かつ、記録素子を継続的に使用不可とした場合に記録素子を継続的に使用不可としたことを告知する、上記(12)から(15)のいずれかの画像記録方法。
【0067】
本態様によれば、記録素子を使用不可から使用可に復帰させたこと、及び、記録素子を継続的に使用不可としたことが告知される。これにより、異常な記録素子があること、及び、不安定な記録素子があることを認識できる。
【0068】
(17)メディアにスタンプを押印して告知する、上記(15)の画像記録方法。
【0069】
本態様によれば、記録素子を使用不可から使用可に復帰させたこと、及び、記録素子を継続的に使用不可としたことが、スタンプの押印によって告知される。
【0070】
(18)プリントヘッドが、メディアにシングルパスで画像を記録する、上記(12)から(17)のいずれかの画像記録方法。
【0071】
本態様によれば、シングルパスで画像が記録される。シングルパスで画像を記録する画像記録装置では、画像で高速で記録される。画像が高速で記録されると、検査部による誤検出が発生しやすくなる。しかし、上記(12)から(17)の画像記録方法によれば、誤検出が合った場合であっても適切に記録素子の使用の可否を判定でき、適切に画像補完を実施できる。
【0072】
(19)メディアに記録されたテストチャートに基づいて、記録素子の異常の有無を検査する、上記(12)から(18)のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【0073】
本態様によれば、メディアにテストチャートを記録し、記録されたテストチャートに基づいて、記録素子の異常の有無が検査される。
【0074】
(20)テストチャートが、1記録単位ごとに記録される、上記(19)の画像記録方法。
【0075】
本態様によれば、テストチャートが、メディアに対する画像の1記録単位で記録される。したがって、たとえば、枚葉のメディアに画像を記録する場合は、メディアに画像を記録するたびにテストチャートが記録される。また、たとえば、連続するメディアに画像を記録する場合は、各画像間にテストチャートが記録される。本態様によれば、記録素子に異常が生じた場合、迅速に対応でき、メディアの無駄を防止できる。
【0076】
(21)プリントヘッドは、インクジェットヘッドであり、記録素子としてノズルを備え、ノズルの吐出異常の有無を検査する、上記(12)から(20)のいずれかの画像記録方法。
【0077】
本態様によれば、使用不可と判定されたノズルが不吐出化されて、補完処理される。補完処理は、たとえば、不吐出化したノズルの近傍ノズルの打滴量を増やして実施する。
【0078】
(22)ノズルを使用不可とした場合は、使用不可と判定されたノズルを不吐出化し、かつ、不吐出化したノズルによる画像欠陥を補完する、上記(21)の画像記録方法。
【0079】
本態様によれば、使用不可と判定されたノズルが不吐出化されて、補完処理される。補完処理は、たとえば、不吐出化したノズルの近傍ノズルの打滴量を増やして実施する。
【発明の効果】
【0080】
本発明によれば、記録素子の状態を適切に判断して、適切に補完処理を実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0083】
《画像記録装置の全体構成》
図1は、本発明に係る画像記録装置の一例であるインクジェット印刷機の全体構成を示す側面図である。また、
図2は、
図1に示すインクジェット印刷機の平面図である。
【0084】
このインクジェット印刷機1は、メディアである枚葉紙(以下、「用紙」という。)にインクジェット方式で画像を印刷(「記録」と同義)する枚葉式インクジェット印刷機であり、特に汎用の印刷用紙に水性インクを使用してカラー画像を印刷する枚葉式のカラーインクジェット印刷機である。
【0085】
なお、汎用の印刷用紙とは、いわゆるインクジェット専用紙ではなく、オフセット印刷などで使用されている塗工紙(アート紙、コート紙、軽量コート紙、キャスト紙、微塗工紙など)などのセルロースを主体とした用紙をいう。また、水性インクとは、水及び水に可溶な溶媒に染料、顔料などの色材を溶解又は分散させたインクをいう。
【0086】
図1及び
図2に示すように、インクジェット印刷機1は、主として、用紙Pを給紙する給紙部10と、給紙部10から給紙される用紙Pに所定の処理液を塗布する処理液塗布部20と、処理液が塗布された用紙Pを乾燥処理する処理液乾燥部30と、乾燥処理された用紙Pにインクジェット方式で印刷する印刷部40と、印刷された用紙Pを乾燥処理するインク乾燥部50と、乾燥処理された用紙Pを集積する集積部60と、印刷部40に備えられたインクジェットヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部70と、を備えて構成される。
【0087】
〈給紙部〉
給紙部10は、メディアである用紙(枚葉紙)Pを1枚ずつ給紙する。
図1及び
図2に示すように、給紙部10は、主として、給紙装置12と、フィーダボード14と、給紙ドラム16と、を備えて構成される。
【0088】
給紙装置12は、用紙束の状態で所定位置にセットされる用紙Pを上から順に取り出して、1枚ずつ順にフィーダボード14に給紙する。
【0089】
フィーダボード14は、給紙装置12から順次給紙される用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、給紙ドラム16へと移送する。
【0090】
給紙ドラム16は、フィーダボード14から給紙される用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、処理液塗布部20へと移送する。給紙ドラム16は、円筒形状を有し、周面に備えられたグリッパ17で用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き付けて搬送する。
【0091】
〈処理液塗布部〉
処理液塗布部20は、用紙Pに所定の処理液を塗布する。この処理液は、インク中の色材成分を凝集、不溶化ないし増粘させる機能を備えた液体である。このような処理液を用紙Pに塗布することにより、汎用の印刷用紙にインクジェット方式で印刷する場合であっても、高品位な画像を印刷できる。
【0092】
図1及び
図2に示すように、処理液塗布部20は、主として、用紙Pを搬送する処理液塗布ドラム22と、処理液塗布ドラム22によって搬送される用紙Pに処理液を塗布する処理液塗布装置24と、を備えて構成される。
【0093】
処理液塗布ドラム22は、給紙部10の給紙ドラム16から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、処理液乾燥部30へと移送する。処理液塗布ドラム22は、円筒形状を有し、周面に備えられたグリッパ23で用紙Pの搬送方向前側の端部を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き付けて搬送する。
【0094】
処理液塗布装置24は、処理液塗布ドラム22による用紙Pの搬送経路上に設置され、処理液塗布ドラム22によって搬送される用紙Pに処理液をローラ塗布する。すなわち、周面に処理液が付与されたローラ(いわゆる塗布ローラ)を処理液塗布ドラム22によって搬送される用紙Pに接触させて、用紙Pに処理液を塗布する。処理液の塗布方式は、これに限定されるものではなく、この他、インクジェットヘッドを用いて塗布する方式や、スプレーを用いて塗布する方式なども採用できる。
【0095】
処理液塗布部20は、以上のように構成される。用紙Pは、処理液塗布ドラム22で搬送される過程で画像を印刷する面である印刷面に処理液が塗布される。
【0096】
〈処理液乾燥部〉
処理液乾燥部30は、処理液が塗布された用紙Pを乾燥処理する。処理液乾燥部30は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥ドラム32と、処理液乾燥ドラム32によって搬送される用紙Pに温風を吹き当てて、用紙Pを乾燥させる処理液乾燥装置34と、を備えて構成される。
【0097】
処理液乾燥ドラム32は、処理液塗布部20の処理液塗布ドラム22から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、印刷部40へと移送する。処理液乾燥ドラム32は、円筒状に組んだ枠体で構成され、周面に備えられたグリッパ33で用紙Pの搬送方向前側の端部を把持して回転することにより、用紙Pを搬送する。
【0098】
処理液乾燥装置34は、処理液乾燥ドラム32の内部に設置され、処理液乾燥ドラム32によって搬送される用紙Pに向けて温風を送風する。
【0099】
処理液乾燥部30は、以上のように構成される。用紙Pは、処理液乾燥ドラム32によって搬送される過程で処理液が塗布された面に温風が吹き当てられて乾燥処理される。
【0100】
〈印刷部〉
印刷部40は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の4色のインクを用いて用紙Pにカラー画像を印刷する。
図1に示すように、印刷部40は、主として、用紙Pを搬送する印刷ドラム42と、印刷ドラム42によって搬送される用紙Pにカラー印刷するヘッドユニット44と、用紙Pに印刷された画像を読み取るスキャナ48と、を備えて構成される。
【0101】
印刷ドラム42は、処理液乾燥部30の処理液乾燥ドラム32から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、インク乾燥部50へと移送する。印刷ドラム42は、円筒形状を有し、周面に備えられたグリッパ43で用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き付けて搬送する。また、印刷ドラム42は、周面に巻き付けられた用紙Pを周面に吸着させて搬送する。吸着には、負圧が利用される。印刷ドラム42は、周面に多数の吸着穴を有し、この吸着穴を介して内部から吸引することにより、用紙Pを周面に吸い付けて保持する。この他、静電気を利用して用紙Pを周面に保持することもできる。
【0102】
ヘッドユニット44は、印刷ドラム42による用紙Pの搬送経路上に設置され、印刷ドラム42によって搬送される用紙Pにシアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの4色のインクを用いてカラー画像を印刷する。ヘッドユニット44は、シアンのインク滴を吐出するインクジェットヘッド46Cと、マゼンタのインク滴を吐出するインクジェットヘッド46Mと、イエロのインク滴を吐出するインクジェットヘッド46Yと、ブラックのインク滴を吐出するインクジェットヘッド46Kと、を備えて構成される。各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、プリントヘッドの一例であり、印刷ドラム42による用紙Pの搬送経路上に一定の間隔で配置される。各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、図示しないキャリッジに搭載されて、1つのヘッドユニット44を構成する。キャリッジは、印刷部40とメンテナンス部70との間を移動可能に設けられる。
【0103】
各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、印刷ドラム42によって搬送される用紙Pに対してシングルパスで画像の記録が可能なラインヘッドで構成される。各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、先端にノズル面を備え、このノズル面に備えられたノズルから印刷ドラム42によって搬送される用紙Pに向けてインク滴を吐出する。
【0105】
同図に示すように、ノズルNzは、ノズル面NFに一定の間隔をもって一列に配置される。このノズルNzの配列方向Xは、印刷ドラム42による用紙Pの搬送方向Yと直交する方向である。
【0106】
インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、このノズルから用紙Pに向けてインク滴を吐出することにより、用紙Pに画像を描画する。このように、プリントヘッドがインクジェットヘッドで構成される場合、各ノズルがプリントヘッドの記録素子を構成する。
【0107】
スキャナ48は、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kによって用紙Pに印刷された画像を読み取る。したがって、
図1に示すように、スキャナ48は、印刷ドラム42による用紙Pの搬送経路上に設置され、かつ、用紙Pの搬送方向に対してヘッドユニット44の下流側に配置される。
【0108】
印刷部40は、以上のように構成される。用紙Pは、印刷ドラム42によって搬送される過程でヘッドユニット44を構成する各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46KからC、M、Y、Kの各色のインク滴が印刷面に打滴されて、印刷面にカラー画像が印刷される。用紙Pに印刷された画像は、必要に応じてスキャナ48に読み取られる。
【0109】
〈インク乾燥部〉
インク乾燥部50は、印刷部40による印刷直後の用紙Pを乾燥処理する。
図1及び
図2に示すように、インク乾燥部50は、主として、用紙Pを搬送するチェーングリッパ52と、チェーングリッパ52によって搬送される用紙Pの走行をガイドする用紙ガイド54と、チェーングリッパ52によって搬送される用紙Pの印刷面を加熱して乾燥させる加熱乾燥装置56と、を備えて構成される。
【0110】
チェーングリッパ52は、印刷部40の印刷ドラム42から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送し、集積部60へと移送する。チェーングリッパ52は、一定の走行経路に沿って走行する無端状のチェーン52Aを備え、そのチェーン52Aに備えられたグリッパ52Bで用紙Pの先端を把持して、用紙Pを搬送する。用紙Pは、このチェーングリッパ52に搬送されることにより、インク乾燥部50に設定された加熱領域及び非加熱領域を通過して、集積部60へと移送される。なお、加熱領域は、印刷部40から移送されてきた用紙Pが最初に水平に搬送される領域に設定され、非加熱領域は、用紙Pが傾斜して搬送される領域に設定される。
【0111】
用紙ガイド54は、チェーングリッパ52によって搬送される用紙Pの移動をガイドする。用紙ガイド54は、第1ガイドボード54A及び第2ガイドボード54Bを備えて構成される。
【0112】
第1ガイドボード54Aは、加熱領域に配置されるガイドボードであり、中空の平板形状を有する。第1ガイドボード54Aは、上面部分が用紙Pのガイド面とされる。用紙Pは、このガイド面の上を滑りながら搬送される。
【0113】
第1ガイドボード54Aのガイド面には、多数の吸着穴が備えられる。第1ガイドボード54Aは、この吸着穴を介して内部から負圧吸引することにより、用紙Pをガイド面に吸い付けながら、用紙Pの移動をガイドする。
【0114】
第2ガイドボード54Bは、非加熱領域に配置されるガイドボードである。第2ガイドボード54Bの構成は、第1ガイドボード54Aの構成と同じである。すなわち、中空の平板形状を有し、用紙Pをガイド面に吸い付けながら、用紙Pの移動をガイドする。
【0115】
第2ガイドボード54Bには、用紙Pの移動経路の終端位置にスタンプ装置58が備えられる。スタンプ装置58は、スタンプローラを備え、このスタンプローラを用紙Pに接触させて、用紙Pにスタンプを押印する。スタンプローラは、第2ガイドボード54Bのガイド面から出没自在に設けられ、ガイド面から突出させて、ガイド面上を移動する用紙Pにスタンプを押印する。
【0116】
加熱乾燥装置56は、加熱領域に設置され、加熱領域を搬送される用紙Pの印刷面を熱源からの輻射熱で加熱して乾燥させる。加熱乾燥装置56は、熱源としての複数の赤外線ランプ56Aを備えて構成され、チェーングリッパ52の内側に配置される。赤外線ランプ56Aは、加熱領域における用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔で配置される。
【0117】
インク乾燥部50は以上のように構成される。用紙Pは、チェーングリッパ52によって搬送される過程で印刷面を加熱乾燥装置56によって加熱され、乾燥処理される。
【0118】
〈集積部〉
集積部60は、順次排紙される用紙Pを1カ所に集積する。
図1及び
図2に示すように、集積部60は、チェーングリッパ52によってインク乾燥部50から搬送されてくる用紙Pを受け取り、集積する集積装置62を備える。
【0119】
チェーングリッパ52は、所定の集積位置で用紙Pをリリースする。集積装置62は、リリースされた用紙Pを回収し、束状に集積する。
【0120】
〈メンテナンス部〉
メンテナンス部70は、印刷部40に備えられたインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのメンテナンスを行う。メンテナンス部70は、
図2に示すように、主として、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのノズル面をキャップで覆うキャップ装置72と、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのノズル面を払拭してクリーニングするクリーニング装置74と、を備えて構成される。
【0121】
キャップ装置72は、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kごとにキャップ72C、72M、72Y、72Kを備える。各キャップ72C、72M、72Y、72Kは、対応するインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのノズル面を個別に覆う。
【0122】
キャッピングは、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kを所定のキャップ位置に移動させて行われる。上記のように、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、キャリッジに搭載されて、移動可能に設けられている。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、キャリッジを移動させることにより、キャップ位置に移動する。
【0123】
キャリッジは、印刷ドラム42の回転軸に沿って水平移動可能に設けられる。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、このキャリッジの移動によって、キャップ位置と印刷位置との間を移動可能に設けられる。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、印刷位置に位置することにより、印刷ドラム42による用紙Pの搬送経路上に配置される。また、キャップ位置に位置することにより、キャップ72C、72M、72Y、72Kの直上に配置される。
【0124】
キャリッジには、各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kをノズル面に対して垂直な方向に昇降させる昇降機構が備えられる。キャップ位置に位置したインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、この昇降機構によって下降することにより、ノズル面がキャップ72C、72M、72Y、72Kで覆われる。
【0125】
クリーニング装置74は、各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのノズル面を個別にクリーニングするクリーナー74C、74M、74Y、74Kを備える。各クリーナー74C、74M、74Y、74Kは、ノズル面を払拭する払拭部材を備える。払拭部材は、たとえば、ブレードやウェブで構成され、ノズル面に対して進退可能に設けられる。クリーニング装置74は、キャリッジによるインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの移動経路上に配置される。各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、キャリッジによってキャップ位置から印刷位置に移動する過程でノズル面に払拭部材が押圧当接されて、ノズル面が払拭される。
【0126】
メンテナンス部70は、以上のように構成される。上記のように、キャップ装置72によるキャッピングは、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kをキャップ位置に移動させることにより行われる。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、キャップ位置に移動した後、所定位置まで下降することにより、ノズル面がキャップ72C、72M、72Y、72Kで覆われる。キャッピングは、電源オフ時や待機中など、一定時間以上インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの使用を停止する場合に実施される。また、メンテナンスの一つであるパージや予備吐出(フラッシングともいう)などもキャップ装置72で行われる。
【0127】
クリーニング装置74によるノズル面のクリーニングは、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kをキャップ位置から印刷位置に移動させることにより行われる。クリーニング装置74に備えられた各クリーナー74C、74M、74Y、74Kは、キャップ位置から印刷位置に向かって移動するインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのノズル面に払拭部材を押圧当接させて、ノズル面を払拭部材で払拭する。
【0128】
メンテナンスは、あらかじめ設定されたタイミングで自動的に実施される。また、オペレータからの指示に応じて強制的に実施される。自動で行われるメンテナンスは、メンテナンスの種類ごとに実施タイミングが規定される。実施タイミングは、たとえば、前回のメンテナンスからの経過時間や印刷枚数などで規定される。
【0129】
《制御系》
(システム構成)
図4は、インクジェット印刷機のシステム構成を示すブロック図である。
【0130】
同図に示すように、インクジェット印刷機1は、制御部としてコンピュータ100を備える。インクジェット印刷機1の動作は、すべてコンピュータ100で制御される。すなわち、給紙部10からの給紙、給紙された用紙Pの搬送、処理液塗布部20での処理液の塗布、処理液乾燥部30での用紙Pの乾燥、印刷部40での画像の印刷、印刷された画像の読み取り、インク乾燥部50での用紙Pの乾燥、用紙Pの排紙、集積部60での用紙Pの集積等、すべての処理がコンピュータ100による制御の下、実施される。また、メンテナンスについても、コンピュータ100による制御の下、実施される。
【0131】
コンピュータ100は、所定の制御プログラムを実行することによりインクジェット印刷機1の各部を制御する制御部として機能する。
【0132】
コンピュータ100には、外部機器と通信するための通信部102、インクジェット印刷機1を操作するための操作部104、各種情報を表示するための表示部106、各種データを記憶するための記憶部108等が接続される。
【0133】
操作部104は、たとえば、操作ボタンやキーボード、マウス、タッチパネル等で構成することができる。表示部106は、たとえば、液晶ディスプレイなどのディスプレイ装置で構成することができる。記憶部108は、たとえば、ハードディスクドライブなどの記憶装置で構成することができる。コンピュータ100が実行する制御プログラムや制御に必要な各種データ等は記憶部108に格納される。また、印刷ジョブは、通信部102を介してコンピュータ100に取り込まれる。
【0134】
また、コンピュータ100は、所定の画像処理プログラムを実行することにより、画像処理部として機能する。
【0135】
図5は、画像処理部として機能するコンピュータの機能ブロック図である。
【0136】
画像処理部120は、画像データの変換処理を行う。すなわち、印刷ジョブに含まれる印刷対象の画像データをインクジェット印刷機1で取り扱い可能なデータ形式に変換する。具体的には、印刷対象の画像データ(たとえば、RGB形式で表現された画像データ)をシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の各色のドット配置データに変換する。
【0137】
画像処理部120は、CMS(カラーマネージメントシステム)部122と、ガンマ変換部124と、ハーフトーン処理部126と、を備えて構成される。
【0138】
CMS部122は、入力された画像データに対し、色を目的のターゲットに合わせる色合わせ処理を実施し、かつ、使用するインク色であるC、M、Y、Kの4色に分解する処理(3−4変換(RGB−CMYK)や4−4変換(CMYK−CMYK))を実施する。これにより、CMYKの単色階調が得られる。
【0139】
ガンマ変換部124は、CMYKの画像データに対して色毎にキャリブレーション処理を施し、出力特性の調整(ガンマ変換)を行う。
【0140】
ハーフトーン処理部126は、ガンマ変換された各色の色データに対して誤差拡散法やディザマトリクス法を用いてハーフトーン処理を施し、各色のドット配置データを生成する。
【0141】
印刷時、コンピュータ100は、生成されたドット配置データに基づいて各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kからインク滴を吐出させて、用紙Pに画像を印刷する。
【0142】
また、コンピュータ100は、所定の検査プログラムを実行することにより、各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kに備えられたノズルの吐出異常の有無を検査する検査部130として機能する。また、コンピュータ100は、所定の判定プログラムを実行することにより、各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kに備えられたノズルの使用の可否を判定する判定部132として機能する。さらに、コンピュータ100は、所定の画像補完プログラムを実行することにより、使用不可としたノズルによる画像欠陥を補完する補完部134として機能する。
【0143】
図6は、検査部、判定部及び補完部として機能するコンピュータの機能ブロック図である。
【0144】
検査部130は、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kに所定のテストチャートをプリントさせ、そのテストチャートの出力結果に基づいて、記録素子であるノズルの異常の有無、すなわち、吐出異常の有無を検査する。すなわち、各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kに所定のテストチャートを印刷させ、印刷されたテストチャートの画像をスキャナ48に読み取らせ、得られたテストチャートの画像を解析して、ノズルの吐出異常の有無を検査する。
【0145】
図7及び
図8は、テストチャートの一例を示す図である。また、
図9及び
図10は、テストチャートを用いたノズルの検査方法の概念図である。
【0146】
テストチャートTとしては、ノズルNzの異常を検出できるものであればよく、たとえば、
図7に示すように、ノズルチェックパターン(各ノズルからの吐出を階段状に打滴したもの)や、
図8に示すように、等濃度パッチ(均一な濃度になるようなパッチを各ノズルから打滴したもの)等のテストチャートTを利用できる。テストチャートTとして、
図7に示すノズルチェックパターンや
図8に示す等濃度パッチを使用することにより、不吐出、吐出方向不良を検出できる。
【0147】
たとえば、
図7に示すノズルチェックパターンを使用した場合、ノズルが不吐出になると、
図9(A)に示すように、不吐出になったノズル(ここでは、同図の左から3番目のノズルNz3)のパターンがプリントされなくなる。したがって、プリントされていないパターンを検出することにより、不吐出のノズルを検出できる。
【0148】
また、
図7に示すノズルチェックパターンを使用した場合、ノズルに吐出方向不良が生じると、
図9(B)に示すように、吐出方向不良が生じたノズル(ここでは、同図の左から3番目のノズルNz3)のパターンが正規の位置(吐出方向不良が生じていない時にプリントされる位置)からずれてプリントされる。したがって、正規の位置からずれてプリントされたパターンを検出することにより、吐出方向不良が生じているノズルを検出できる。
【0149】
また、たとえば、
図8に示すパッチを使用した場合、ノズルが不吐出になると、
図10(A)に示すように、不吐出になったノズル(ここでは、同図の左から3番目のノズルNz3)の部分が欠けてパッチがプリントされる。したがって、プリントされたパッチの欠けた部分を検出することにより、不吐出のノズルを検出できる。
【0150】
また、
図8に示すパッチを使用した場合、ノズルに吐出方向不良が生じると、
図10(B)に示すように、吐出方向不良が生じたノズルの近傍の濃度が変化する(同図に示す例では、左から3番目のノズルNz3の吐出方向が右側(4番目のノズルNz4側)にずれている例が示されている。)。したがって、プリントされたパッチの濃度が変化している部分を検出することにより、吐出方向不良が生じているノズルを検出できる。
【0151】
このように、所定のテストチャートTをプリントすることにより、ノズルの不吐出、吐出方向不良を検出できる。なお、ノズルNzの異常は、これらに限らず、吐出するインクの体積の変化や速度の変化を異常として検出することもできる。
【0152】
検査部130は、1印刷単位(記録単位)ごとにテストチャートを印刷して、ノズルの異常の有無を検査する。ここで、「1印刷単位」とは、メディアに対する印刷の単位をいい、1回の印刷と認識できる単位をいう。本実施の形態のインクジェット印刷機1では、枚葉紙に印刷するので、1枚の用紙への印刷が1印刷単位となる。この場合、1枚印刷するたびにテストチャートが印刷される。したがって、1枚印刷するたびにインクジェットヘッドを検査できる。
【0153】
また、テストチャートは、すべてのノズルを使用して印刷される。したがって、1枚印刷するたびにインクジェットヘッドに備えられているすべてのノズルを検査できる。
【0154】
図11は、テストチャートの印刷例を示す図である。
【0155】
図11に示すように、テストチャートTは、印刷対象の画像Gと共に1枚の用紙Pに記録される。すなわち、印刷対象の画像Gは、用紙Pの全面に印刷されるのではなく、搬送方向Yの後端部分に余白をもって印刷され、その余白にテストチャートが印刷される。
【0156】
印刷対象の画像Gを印刷する領域を画像印刷領域GAとし、テストチャートTを印刷する領域をテストチャート印刷領域TAとすると、テストチャート印刷領域TAは、用紙Pの搬送方向Yの後端部分に一定の幅をもって形成される。画像印刷領域GAは、用紙Pの印刷面からテストチャート印刷領域TAを除いた領域として設定される。
【0157】
検査は、一度にすべてのインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kを対象に実施することもできるが、本実施の形態では、4つあるインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの検査を順番に実施する。すなわち、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの順番でインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kを検査する。
【0158】
図12は、検査の順番の概念図である。
【0159】
図12に示すように、テストチャートTを印刷するインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kを順番に切り替えることにより、4つあるインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kを順番に検査する。すなわち、最初にシアンのインクジェットヘッド46Cでテストチャート印刷領域TAにテストチャートTcを印刷し、次に、マゼンタのインクジェットヘッド46Mでテストチャート印刷領域TAにテストチャートTmを印刷し、次に、イエロのインクジェットヘッド46Yでテストチャート印刷領域TAにテストチャートTyを印刷し、次に、ブラックのインクジェットヘッド46Kでテストチャート印刷領域TAにテストチャートTKを印刷する。これにより、検査対象が順番に切り替わり、各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kが順番に一定の周期で検査される。
【0160】
なお、一度にすべてのインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの検査を実施する場合は、1枚の用紙Pにすべてのインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46KのテストチャートTc、Tm、Ty、Tkを印刷する。
【0161】
図13は、一度にすべてのインクジェットヘッドの検査を実施する場合のテストチャートの印刷例を示す図である。
【0162】
同図に示すように、一度にすべてのインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの検査を実施する場合は、テストチャート印刷領域TAにすべてのインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46KのテストチャートTc、Tm、Ty、Tkを印刷する。すなわち、用紙Pの搬送方向Yに沿ってテストチャート印刷領域TAにテストチャートTc、Tm、Ty、Tkを順番に印刷する。
【0163】
なお、検査結果は、コンピュータ100に内蔵するメモリ(たとえば、RAM(Random Access Memory:ランダム−アクセスが可能な読み出しと書き込みができる記憶装置。))に格納される。メモリは、検査結果記憶部136として機能する。
【0164】
ここで、検査結果は、すべてのノズルについての正常/異常の検査結果を記録する構成としてもよいし、また、異常が検出されたノズルについての情報のみを記録する構成としてもよい。たとえば、異常が検出されたノズルの番号のみ記録する構成としてもよい。
【0165】
判定部132は、検査部130の検査結果を取得し、各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのノズルの使用の可否を判定する。この際、次のように判定する。
【0166】
すなわち、判定部132は、検査部130による検査で異常ありと判定されたノズルを使用不可とする。また、判定部132は、使用不可としたノズルが、直後の検査で異常なしと判定されると、使用可に復帰させる。その一方で判定部132は、使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査からN回以内に再度異常ありと判定されると、そのノズルを以後継続的に使用不可とする。このように、判定部132は、過去に発生した異常を考慮して、ノズルの使用の可否が判定する。
【0167】
なお、判定部132による判定方法については、後に更に詳述する。
【0168】
補完部134は、判定部132による判定結果に基づいて、所要の補完処理を実施する。すなわち、判定部132によって使用不可と判定されたノズルを不使用とし、その補完処理を実施する。ここで、不使用にするとは、ノズルからの吐出を停止すること、すなわち、不吐出化することを意味する。
【0169】
シングルパスで印刷する場合において、不吐出のノズルが存在すると、印刷される画像に画像欠陥として「スジ」が発生する。このスジは、画像の品質を著しく低下させる。補完処理は、この画像欠陥としてのスジの視認性を低減させるための処理であり、不吐出補正とも呼ばれる。
【0171】
同図において、(A−1)は、不吐出のノズルが存在しないときのドット配置を模式的に示した図、(A−2)は、不吐出のノズルが存在しないときの印刷画像の視覚的な見え方を模式的に示した図、(B−1)は、不吐出のノズルが存在するときのドット配置を模式的に示した図、(B−2)は、不吐出のノズルが存在するときの印刷画像の視覚的な見え方を模式的に示した図、(C−1)は、補完処理したときのドット配置を模式的に示した図、(C−2)は、補完処理したときの印刷画像の視覚的な見え方を模式的に示した図である。
【0172】
図14(D)に示すように、不吐出ノズルが発生すると、その不吐出ノズルの対応描画領域にスジ(メディアの地色のスジ)が発生する。
【0173】
上記のように、補完処理は、そのスジの視認性を低減させる処理である。この処理は、
図14(C−1)に示すように、不吐出のノズルに近接するノズル(不吐出補正ノズル)による描画を濃くすることによって実現される。不吐出補正ノズルによる描画を濃くする方法としては、たとえば、出力画像を走査する方法や、吐出信号を強めて吐出ドット径を強めに矯正する方法等が知られている。
【0174】
図14(C−2)に示すように、補完処理を行うことによって、スジの視認性が低減され、画質が改善される。
【0175】
《印刷方法》
本実施の形態のインクジェット印刷機1による印刷の処理は、次のように実施される。すなわち、画像記録方法としての印刷方法は次のように実施される。
【0176】
〈全体の印刷の流れ〉
インクジェット印刷機1による印刷は、(a)給紙、(b)処理液の塗布、(c)乾燥、(d)印刷、(e)乾燥、(f)排紙、(g)集積の順で行われる。コンピュータは、印刷ジョブに従って印刷を実施する。
【0177】
印刷が開始されると、給紙部10から給紙が開始される。給紙部10から給紙された用紙Pは、まず、処理液塗布部20に搬送される。そして、その処理液塗布部20の処理液塗布ドラム22によって搬送される過程で印刷面に処理液が塗布される。
【0178】
処理液が塗布された用紙Pは、次に、処理液乾燥部30に搬送される。そして、その処理液乾燥部30の処理液乾燥ドラム32によって搬送される過程で印刷面に温風が吹き当てられて乾燥処理される。
【0179】
乾燥処理された用紙Pは、次に、印刷部40に搬送される。そして、その印刷部40の印刷ドラム42によって搬送される過程で各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kから各色のインク滴が吐出されて、印刷面にカラー画像が印刷される。
【0180】
画像が印刷された用紙Pは、次に、インク乾燥部50に搬送される。そして、そのインク乾燥部50のチェーングリッパ52によって搬送される過程で印刷面に熱が当てられて、加熱乾燥される。
【0181】
加熱乾燥された用紙Pは、そのままチェーングリッパ52によって集積部60まで搬送され、集積部60に排紙されて、束状に集積される。
【0182】
〈印刷中の検査〉
本実施の形態のインクジェット印刷機1では、印刷対象の画像Gと共にテストチャートTが印刷される(
図11参照)。用紙Pに印刷されたテストチャートTは、印刷部40の印刷ドラム42によって搬送される過程でスキャナ48に読み取られる。読み取られたテストチャートTの画像データは、検査部130に加えられ、検査に供される。
【0183】
テストチャートTは、
図11に示すように、1枚ごとに印刷される。したがって、検査は1枚印刷するたびに行われる。すなわち、本実施の形態のインクジェット印刷機1では、印刷中、常にインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの検査が行われる。
【0184】
また、テストチャートTは、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kが順番に切り替えられて印刷される。すなわち、
図12に示すように、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの順でテストチャートTを印刷するインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kが順番に切り替えられて印刷される。したがって、本実施の形態のインクジェット印刷機1では、4つあるインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kが順番に検査される。
【0185】
検査の結果に基づいて、各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kに備えられているノズルの使用の可否が判定される。判定の結果、使用不可とされると、使用不可とされたノズルが不使用とされる。すなわち、不吐出化される。そして、不吐出化によって生じる画像欠陥の補完処理が実施される。補完処理は、次に、印刷される用紙Pに反映される。
【0186】
《使用可否の判定方法》
〈第1の実施の形態〉
上記のように、本実施の形態のインクジェット印刷機1では、各インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kに備えられているノズルの異常の有無が定期的に検査される。そして、その検査結果に基づいて、ノズルの使用の可否が判定され、使用不可と判定されると、該当するノズルが不吐出化されて、必要な補完処理が行われる。ここで、判定部132による判定は、次のように行われる。
【0187】
判定部132は、検査部130による検査の結果、異常ありと判定されたノズルを使用不可とする。ノズルを使用不可とすると、補完部134で補完処理が行われるので、異常に対して迅速に対応できる。
【0188】
また、判定部132は、使用不可としたノズルが、直後の検査で異常なしと判定されると、使用可に復帰させる。直後の検査とは、使用不可の判定を行った時の検査の次に行われる検査をいう。本実施の形態のインクジェット印刷機1では、4つあるインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kが順番に検査されるので、直後の検査とは、使用不可の判定を行った時の検査の4枚後の検査となる。この4枚後の検査で異常なしと判定されると、判定部132は、使用可に復帰させる。これにより、誤判定を防止できる。
【0189】
その一方で判定部132は、使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査からN回以内の検査で再度異常ありと判定されると、そのノズルを以後継続的に使用不可とする。回数Nは、規定の回数(規定回数N)であり、あらかじめ設定される。
【0190】
直後の検査からN回以内の検査であるので、直後の検査も含まれる。したがって、直後の検査で再度異常ありと判定されると、当該ノズルは、以後継続的に使用不可とされる。この場合、当該ノズルは、真に異常なノズルである可能性が高いが、すでに補完処理が開始されているので、補完処理が遅れることはない。
【0191】
また、直後の検査からN回以内の検査であるので、直後に異常なしと判定されて使用可に復帰させた場合であっても、N回以内に再度異常ありと判定されると、以後継続的に使用不可とされる。これにより、不安定なノズルの使用を適切に中止できる。
【0192】
また、直後の検査からN回以内の検査であるので、N+1回目以降の検査は含まれない。N+1回目以降の検査で異常ありと判定されると、当該ノズルは使用不可とされるが、継続的に使用不可とされることはない。この場合、直後の検査で再度異常なしと判定されると、使用可に復帰される。また、直後の検査からN回以内の検査で再度異常ありと判定されると、以後継続的に使用不可とされる。すなわち、N回を超えて正常と判定されると、過去に検出された異常の履歴がクリアされる。換言すれば、一度検査で異常と判定されても、その後連続してN回正常と判定されると、過去に異常はなかったものとして取り扱われ、過去に異常が発生していないノズルと同様に扱われる。
【0193】
このように、本実施の形態の判定方法によれば、過去に発生した異常を考慮して、ノズルの使用の可否が判定される。これにより、適切にノズルの使用の可否を判定できる。また、異常と判定された場合には、すぐに使用不可とし、その後、必要に応じて復帰させる構成としているので、真に画像補完が必要な場合に迅速に対応できる。
【0194】
なお、継続的に使用不可とする場合、その期間は、あらかじめ定めた期間内に限るものとする。この期間は、判定期間として、あらかじめ設定される。たとえば、メンテナンスからメンテナンスまでの間の期間を判定期間として定めることができる。メンテナンスを実施することにより、ノズルの性能が回復する可能性が高いからである。
【0195】
メンテナンスからメンテナンスまでの間の期間を判定期間として規定した場合、継続的に使用不可とされると、次のメンテナンスまで継続的に使用不可とされる。また、この場合、メンテナンスを実施すると、すべてのノズルが使用可に復帰する。
【0196】
判定期間は、この他、印刷ジョブや印刷する画像の切り替わりを基準にして定めることができる。たとえば、印刷ジョブを基準とする場合、1つの印刷ジョブの開始から終了までを1つの判定期間とすることができる。また、印刷する画像の切り替わりを基準とする場合は、印刷する画像が切り替わるまでを1つの判定期間とすることができる。異常の発生は、用紙依存性があるので、印刷ジョブや印刷する画像の切り替わりを基準にして判定期間を定めることにより、適切な判定ができる。
【0197】
なお、各回の検査結果は、検査結果記憶部136として機能するコンピュータ100のメモリに格納される。判定部132は、このメモリに記録された検査結果の情報を参照して、判定処理を実施する。メモリに格納された検査結果の情報は、必要に応じて消去することが好ましい。たとえば、1回の判定期間が終了するたびに消去する。
【0198】
規定回数Nは、任意に設定できるが(たとえば、N=10)、実験などを通じて最適な数値に設定することが好ましい。最適な規定回数Nは、検知成功の確率や、停止可能なノズルの数、不安定なノズルの許容数、画像欠陥の許容度などに依存するため、装置ごとやユーザの要求レベルに応じて最適な数値に設定することが好ましい。
【0199】
〈第2の実施の形態〉
本実施の形態では、判定部132による判定が、次のように行われる。
【0200】
判定部132は、検査部130による検査結果に基づいて、異常ありと判定されたノズルを使用不可とする。ノズルを使用不可とすると、補完部134で補完処理が行われるので、異常に対して迅速に対応できる。
【0201】
判定部132は、使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査からM回連続して異常なしと判定されると、そのノズルを使用可に復帰させる。これにより、誤判定を防止できる。なお、回数Mは規定の回数(規定回数M)であり、あらかじめ設定される。
【0202】
その一方で判定部132は、使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査からN回以内の検査で再度異常ありと判定されると、そのノズルを以後継続的に使用不可とする。これにより、不安定なノズルの使用を適切に中止できる。なお、回数Nは、規定の回数(規定回数N)であり、あらかじめ設定される。この規定回数Nは、規定回数Mよりも大きな値に設定される。
【0203】
直後の検査からN回以内の検査であるので、直後の検査も含まれる。したがって、直後の検査で再度異常ありと判定されると、当該ノズルは、以後継続的に使用不可とされる。この場合、当該ノズルは、真に異常なノズルである可能性が高いが、すでに補完処理が開始されているので、補完処理が遅れることはない。
【0204】
また、直後の検査からN回以内の検査であるので、使用可に復帰させた場合であっても、N回以内に再度異常ありと判定されると、以後継続的に使用不可とされる。これにより、不安定なノズルの使用を適切に中止できる。
【0205】
また、直後の検査からN回以内の検査であるので、N+1回目以降の検査は含まれない。N+1回目以降の検査で異常ありと判定されると、当該ノズルは使用不可とされるが、継続的に使用不可とされることはない。この場合、直後の検査で再度異常なしと判定されると、使用可に復帰される。また、直後の検査からN回以内の検査で再度異常ありと判定されると、以後継続的に使用不可とされる。すなわち、N回を超えて正常と判定されると、過去に検出された異常の履歴がクリアされる。換言すれば、一度検査で異常と判定されても、その後、M回を超えて、連続N回正常と判定されると、過去に異常はなかったものとして取り扱われ、過去に異常が発生していないノズルと同様に扱われる。
【0206】
このように、本実施の形態の判定方法によれば、過去に発生した異常を考慮して、ノズルの使用の可否が判定される。これにより、適切にノズルの使用の可否を判定できる。また、異常と判定された場合には、すぐに使用不可とし、その後、必要に応じて復帰させる構成としているので、真に画像補完が必要な場合に迅速に対応できる。
【0207】
ノズルを継続的に使用不可とする期間、すなわち、判定期間は、上記第1の実施の形態と同様にメンテナンスを基準にして定めることができる。すなわち、たとえば、次のメンテナンスまでを1つの判定期間に定めることができる。この他、印刷ジョブや印刷する画像の切り替わりを基準にして判定期間を定めることができる。
【0208】
また、上記第1の実施の形態と同様に、各回の検査結果は、コンピュータ100に内蔵するメモリ(検査結果記憶部136)に格納される。判定部132は、このメモリに記録された検査結果の情報を参照して、判定処理を実施する。
【0209】
規定回数N及びMは、任意に設定できるが(たとえば、M=5、N=10)、実験などを通じて最適な回数に設定することが好ましい。最適な規定回数N及びMは、検知成功の確率や、停止可能なノズルの数、不安定なノズルの許容数、画像欠陥の許容度などに依存するため、装置ごとやユーザの要求レベルに応じて最適な数値に設定することが好ましい。
【0210】
〈第3の実施の形態〉
上記第2の実施の形態では、検査の結果、異常ありと判定されたノズルを使用不可としている。そして、使用不可としたノズルが、直後の検査からM回連続して異常なしと判定されると、使用可に復帰させ、直後の検査からN回以内の検査で再度異常ありと判定されると、継続的に使用不可とする構成としている。
【0211】
ここで、規定回数N及び規定回数Mについては、一例として次のように設定できる。すなわち、各ノズルについて、検査によって異常と判定された回数Kをカウントし、その回数Kに基づいて規定回数M及び規定回数Nを設定する。この処理は、コンピュータ100が所定のプログラムを実行することにより行われる。すなわち、コンピュータ100は、所定のプログラムを実行することにより、各ノズルが異常ありと判定された回数Kをカウントする異常発生回数カウント部140として機能する。また、所定の制御プログラムを実行することにより、異常発生回数カウント部140でカウントされた回数Kに基づいて、規定回数M及びNを設定する規定回数設定部142として機能する。
【0212】
図15は、異常発生回数カウント部及び規定回数設定部として機能するコンピュータの機能ブロック図である。
【0213】
異常発生回数カウント部140は、検査部130の検査結果を取得し、各ノズルについて、あらかじめ定められた検査期間内で異常と判定された回数をカウントする。
【0214】
ここで、検査期間は、任意に設定できる。一例として、装置の電源オンからオフまでを1つの検査期間として定めることができる。この他、印刷枚数単位、時間単位、日単位、週単位、月単位で検査期間を設定できる。
【0215】
規定回数設定部142は、異常発生回数カウント部140でカウントされた回数Kに基づいて、規定回数M及び規定回数Nを設定する。具体的には、あらかじめ設定された数mにKを乗じた数を規定回数Mに設定し、かつ、あらかじめ設定された数nにKを乗じた数を規定回数Nに設定する。なお、数nは数mよりも大きい値に設定される。たとえば、mが5、nが10の場合、規定回数Mは5Kに設定され、規定回数Nは10Kに設定される(M<N(5K<10K))。
【0216】
このように、規定回数M及び規定回数Nを設定することにより、過去の履歴を生かして、規定回数M及び規定回数Nを設定でき、より適切にノズルの使用の可否を判定できる。
【0217】
〈第4の実施の形態〉
上記第3の実施の形態では、規定回数M及び規定回数Nを設定する際、あらかじめ設定された数mにKを乗じた数を規定回数Mに設定し、かつ、あらかじめ設定された数nにKを乗じた数を規定回数Nに設定する構成としている。
【0218】
本実施の形態では、規定回数N及び規定回数Mを次のように設定する。すなわち、あらかじめ定められた検査期間内でノズルが異常ありと判定された回数Kをカウントし、あらかじめ設定された数mをK乗した数を規定回数Mに設定する。また、あらかじめ設定された数nをK乗した数を規定回数Nに設定する。なお、数nは数mよりも大きい値に設定される。たとえば、mが5、nが10の場合、規定回数Mは5^Kに設定され(記号「^」は、累乗の演算記号)、規定回数Nは10^Kに設定される(M<N(5K<10K))。
【0219】
このように、規定回数M及び規定回数Nを設定することにより、上記第3の実施の形態と同様に、過去の履歴を生かして、規定回数M及び規定回数Nを設定でき、より適切にノズルの使用の可否を判定できる。
【0220】
《その他の実施の形態》
〈異常の告知〉
上記各実施の形態の判定方法は、所定の告知機能と組み合わせることにより、より有用性を向上できる。たとえば、使用不可としたノズルを使用可に復帰させた場合、及び、ノズルを継続的に使用不可とした場合に、その事実をオペレータに告知する。これにより、補完処理が行われた事実をオペレータが認識でき、効率よく印刷物のチェックができる。
【0221】
たとえば、使用可に復帰した後、継続的に使用不可とされた場合、当該ノズルは、不安定なノズルといえるので、使用不可としたノズルを使用可に復帰させた場合、及び、ノズルを継続的に使用不可とした場合に、その事実をオペレータに告知することにより、不安定なノズルが存在することをオペレータに認識させることができる。
【0222】
また、たとえば、使用可に復帰せずに継続的に使用不可とされた場合、当該ノズルは、真に異常なノズルといえるので、ノズルを継続的に使用不可とした事実だけをオペレータに告知することにより、真に異常なノズルが存在することをオペレータに認識させることができる。
【0223】
また、たとえば、使用可に復帰したあと、正常に動作し続けた場合、当該ノズルに対する異常の検知は、誤検出といえるので、使用可に復帰させた事実のみをオペレータに告知することにより、誤検出があったことをオペレータに認識させることができる。
【0224】
告知は、たとえば、コンピュータ100に接続された表示部106を利用して行うことができる。すなわち、使用不可としたノズルを使用可に復帰させた場合、及び、ノズルを継続的に使用不可とした場合に、その事実を表示部106の表示画面に表示させて、オペレータに告知する。この場合、コンピュータ100と表示部106とが協働して告知部として機能する。
【0225】
また、告知は、スタンプ装置58を利用して行うこともできる。この場合、たとえば、不安定なノズルに対しては、ノズルを使用可に復帰させた時の用紙、及び、ノズルを継続的に使用不可とした時の用紙Pにスタンプを押印する。また、真に異常なノズルに対しては、ノズルを継続的に使用不可とした時の用紙Pにだけスタンプを押印する。また、誤検出が疑われる場合は、ノズルを使用可に復帰させた時の用紙Pにだけスタンプを押印する。これにより、スタンプの押印状況からノズルの異常の発生状況等を把握できる。なお、この場合、スタンプ装置58が告知部として機能する。
【0226】
〈連続紙に印刷する場合〉
上記実施の形態では、枚葉紙に印刷する場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。本発明は、連続紙に印刷する場合にも同様に適用できる。
【0227】
図16は、連続紙に印刷する場合のテストチャートの印刷例を示す図である。
【0228】
連続紙に印刷する場合、周期的に記録される画像Gの単位が1つの印刷単位となる。この場合、周期的に記録される各画像Gの間にテストチャートが記録される。なお、同図に示す例では、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの4つのインクジェットヘッドを順番に検査する場合を例に示している。この場合、シアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの順でテストチャートTc、Tm、Ty、Tkが印刷される。一度にすべてのインクジェットヘッドの検査を行う場合は、各画像Gの間にすべてのインクジェットヘッドのテストチャートが印刷される。
【0229】
〈検査の実施タイミング〉
上記実施の形態では、印刷対象画像と共にテストチャートを印刷して、1枚印刷するたびに検査を実施しているが、検査を実施するタイミングは、これに限定されるものではない。数枚の間隔を開けて検査を実施することもできる。たとえば、一枚おきに検査する構成とすることもできる。
【0230】
また、テストチャートは、印刷対象画像とは別に印刷する構成とすることもできる。すなわち、印刷対象画像とは、別の用紙にテストチャートを印刷する構成とすることもできる。
【0231】
〈画像の読み取り〉
上記実施の形態のインクジェット印刷機1では、印刷ドラム42による用紙Pの搬送経路上にスキャナ48を設置して、印刷の画像を読み取る構成としているが、画像の読み取り手段であるスキャナの設置箇所は、この位置に限定されるものではない。たとえば、チェーングリッパ52による用紙Pの搬送経路上に設置して、加熱乾燥後の画像を読み取る構成とすることもできる。
【0232】
なお、印刷直後の画像を読み取ることにより、判定部132による判定結果を素早く反映させることができる。また、プリントヘッドであるインクジェットヘッドと同じ搬送手段の搬送経路上にスキャナを設置することにより、読み取り精度を向上でき、延いては検査精度を向上できる。
【0233】
〈画像記録装置の他の例〉
本発明は、記録素子がライン状又はマトリクス状に配列されたプリントヘッドの検査方法として有効に機能する。したがって、インクジェット方式以外のプリントヘッドであっても、記録素子がライン状又はマトリクス状に配列されたものであれば、その検査方法及び検査装置として有効に機能する。たとえば、記録素子としての発熱素子がライン状又はマトリクス状に配列されたサーマル方式のプリントヘッドの検査方法及び検査装置としても有効に機能する。
【0234】
また、ラインヘッドに限らず、シリアルヘッドを検査する場合についても、同様に適用することができる。
【0235】
また、記録素子は、ライン状に限らずマトリクス状に配列されていてもよい。
【実施例】
【0236】
本発明の効果を確認するため、シミュレーションによる先行技術との比較検証を行った。
【0237】
図17〜
図23は、シミュレーションによる比較検証の結果を示す表である。同図において、「枚目」の項目は、印刷開始からの処理枚数を示している。「検査」の項目は、検査結果を示しており、「OK」は正常との検査結果、「NG」は異常との検査結果を示している。「判定」の項目は、判定結果を示しており、「E」は使用可(Enable)の検査結果、「D」は使用不可(Disable)の検査結果を示している。「補完」の項目は、補完処理の実施結果を示しており、「ON」は補完処理を実施したこと、「OFF」は補完処理を実施していないことを示している。「画像欠陥」の項目は、画像欠陥(ここではスジ)の有無の結果を示しており、「NG」は画像欠陥あり、「OK」は画像欠陥なし(許容レベル以下)を示している。
【0238】
なお、補完処理は、判定の結果、使用不可と判定された直後の印刷から実施されるものとしている。また、比較を容易にするため、特定のノズルにのみ着目した結果を示している。
【0239】
《比較例1》
図17は、特許文献1、2に記載された判定方法でノズルの使用の可否を判定した場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示す表である。同図(A)は、真に異常なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(B)は、不安定なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(C)は、誤検出が疑われる場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。
【0240】
特許文献1、2の判定方法では、検査で一度異常と判定されると、以後継続的に使用不可とされる。
【0241】
図17(A)に示すように、検査で異常と判定されると、すぐに補完処理が行われるので、真に異常なノズルに対して反応が早いという利点がある。
【0242】
また、
図17(B)に示すように、一度異常と判定されると、以後継続的に使用不可とされるので、不安定なノズルに対して強いという利点もある。
【0243】
その一方で、
図17(C)に示すように、誤検出の場合も以後使用不可とされるので、誤検出に弱いという欠点がある。
【0244】
特許文献1、2の判定方法の場合、正常なノズルを異常と判断してしまう確率を0.3%とすると(3σ)、100枚印刷して、用紙ごとに検査したとき、少なくとも1回以上異常と判定される確率は約30%となる。総ノズル数が10000個と仮定すると、3000個を超えるノズルが使用不可とされて補完対象になってしまい、補正能力を超えて画像欠陥(スジ)が発生する。
【0245】
《比較例2》
図18は、特許文献4に記載された判定方法でノズルの使用の可否を判定した場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示す表である。同図(A)は、真に異常なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(B)は、不安定なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(C)は、誤検出が疑われる場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。
【0246】
特許文献4の判定方法では、2回連続して異常と判定されると、ノズルは使用不可とされる。
【0247】
2回連続して異常と判定されると、ノズルは使用不可とされるので、
図18(C)に示すように、誤検出に強いという利点がある。
【0248】
その反面、2回連続して異常と判定されないと、ノズルは使用不可とされないので、
図18(A)に示すように、真に異常なノズルに対して反応が遅れるという欠点がある。
【0249】
また、
図18(B)に示すように、不安定なノズルを捉えにくいという欠点もある。
【0250】
すなわち、2回連続検知の場合は、誤検出(ノイズ)に対しては強くなるが、補完処理が実施されるまでの損失紙が増えてしまうという欠点がある。また、不安定なノズルが2回連続して検知できないと、捕捉できないという欠点がある。
【0251】
《比較例3》
図19は、特許文献3に記載された判定方法でノズルの使用の可否を判定した場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示す表である。同図(A)は、真に異常なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(B)は、不安定なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(C)は、誤検出が疑われる場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。
【0252】
特許文献3の判定方法では、検査で異常と判定されると、ノズルは使用不可とされるが、その後の検査で正常と判定されると使用可に戻される。
【0253】
異常と判定されると、ノズルは使用不可とされるので、
図19(A)に示すように、真に異常なノズルに対して反応が早いという利点がある。
【0254】
また、異常と判定されても、その後の検査で正常と判定されると使用可に戻されるので、
図19(C)に示すように、誤検出に強いという利点がある。
【0255】
その一方で、不安定なノズルに対しては、
図19(B)に示すように、不安定なノズルが開放されてしまうため、弱いという欠点がある。
【0256】
すなわち、特許文献4の判定方法は、不安定なノズルに対して弱く、メンテナンスが入るまで不安定な状態が続いてしまうため、この方法で運用していくのは難しいという欠点がある。
【0257】
《実施例1》
図20は、第1の実施の形態の判定方法でノズルの使用の可否を判定した場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示す表である。同図(A)は、真に異常なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(B)は、不安定なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(C)は、誤検出が疑われる場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。
【0258】
なお、本例では、規定回数Nを10としている。この場合、検査で異常ありと判定されると、当該ノズルが使用不可とされる。そして、使用不可としたノズルが、直後の検査で異常なしと判定されると、使用可に戻される。一方、使用不可としたノズルが、直後の検査から10回以内の検査で再度異常ありと判定されると、継続的に使用不可とされる。
【0259】
〈真に異常なノズルに対して〉
図20(A)に示すように、本実施例の場合、検査で異常ありと判定されると、直ぐに使用不可とされて補完処理が行われる。このため、真に異常なノズルに対して、素早く対応できる。
【0260】
真に異常なノズルの場合、検査では連続して異常と判定される。
図20(A)に示すように、最初の異常検知で使用不可とされるので(同図に示す例で3枚目)、真に異常なノズルに対して素早く反応できる。
【0261】
〈不安定なノズルに対して〉
図20(B)に示すように、本実施例の場合、使用不可としたノズルが、直後の検査から10回以内の検査で再度異常ありと判定されると、継続的に使用不可とされる。このため、不安定なノズルがあっても、その使用を止めることができる。
【0262】
図20(B)に示す例では、3枚目の検査で異常(NG)と判定されて使用不可(D)とされ、4枚目の検査で正常(OK)と判定されて使用可(E)に復帰しているが、その後の5枚目の検査で再度異常(NG)と判定されているので、継続的に使用不可(D)とされている。このため、6枚目、8枚目、10枚目の検査で正常(OK)と判定されても、継続的に使用不可(D)とされている。
【0263】
このように、一定期間内に再度異常と判定された場合に継続的に使用不可とすることにより、不安定なノズルの使用を止めることができ、安定した運用が可能になる。
【0264】
なお、継続して使用不可とする条件は、10回以内の検査で異常と判定された場合であるので、10回を超えた検査で異常と判定されても、当該ノズルが継続的に使用不可とされることはない。この場合、10回を超えて検出された異常を基準として、再び継続的な使用の可否が判定される。
【0265】
〈誤検出が疑われる場合に対して〉
図20(C)に示すように、本実施例の場合、直後の検査で異常なしと判定されると、使用可に戻される。検査で異常ありと判定された場合であっても、その直後の検査で異常なしと判定されると、誤検出の可能性がある。この場合、使用可に戻すことにより、補完処理を停止でき、不必要な補完処理が行われるのを防止できる。
【0266】
このように、本実施例によれば、真に異常なノズルにも、不安定なノズルにも、また、誤検出が疑われる場合にも、望ましい対応をすることができる。
【0267】
なお、本実施例でスタンプを利用した告知を実施する場合、真に異常なノズルが発生した場合は、3枚目の用紙にスタンプを押印する。また、不安定なノズルが発生した場合は、3枚目と5枚目にスタンプを押印する。また、誤検出と疑われる場合は、5枚目にスタンプを押印する。
【0268】
《実施例2》
図21は、第2の実施の形態の判定方法でノズルの使用の可否を判定した場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示す表である。同図(A)は、真に異常なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(B)は、不安定なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(C)は、誤検出が疑われる場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。
【0269】
なお、本例では、規定回数Mを5、規定回数Nを10としている。この場合、検査で異常ありと判定されると、ノズルは使用不可とされる。そして、その使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査から5回連続して異常なしと判定されると、使用可に戻される。一方、使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査から10回以内の検査で再度異常ありと判定されると、継続的に使用不可とされる。
【0270】
〈真に異常なノズルに対して〉
図21(A)に示すように、本実施例の場合、検査で異常ありと判定されると、直ぐに使用不可とされて補完処理が行われるため、真に異常なノズルに対して、素早く対応できる。
【0271】
真に異常なノズルの場合、検査では連続して異常と判定される。
図21(A)に示すように、最初の異常検知で使用不可とされるので(同図に示す例で3枚目)、真に異常なノズルに対して素早く反応できる。
【0272】
〈不安定なノズルに対して〉
図21(B)に示すように、本実施例の場合、使用不可としたノズルが、直後の検査から10回以内の検査で再度異常ありと判定されると、継続的に使用不可とされるので、不安定なノズルがあっても、その使用を止めることができる。これにより、安定した運用が可能になる。
【0273】
図21(B)に示す例では、3枚目の検査で異常(NG)と判定されて使用不可(D)とされた後、4枚目の検査で異常なし(OK)と判定されているが、その後の5枚目の検査で再び異常あり(NG)と判定されているので、継続的に使用不可(D)とされている。
【0274】
なお、使用可に復帰させる条件が、使用不可とした直後の検査から5回連続して異常なしと判定されることであるので、本例の場合、4枚目の検査で異常なし(OK)と判定されても、4枚目の時点で使用可には復帰しない。
【0275】
また、本例において、継続して使用不可とする条件は、10回以内の検査で異常と判定された場合であるので、10回を超えた検査で異常と判定されても、当該ノズルが継続的に使用不可とされることはない。この場合、10回を超えて検出された異常を基準として、再び継続的な使用の可否が判定される。
【0276】
〈誤検出が疑われる場合に対して〉
図21(C)に示すように、本実施例の場合、異常ありと判定された直後の検査から連続して5回異常なしと判定されると、使用可に戻される。検査で異常ありと判定された場合であっても、その後の連続して異常なしと判定されると、誤検出の可能性がある。この場合、使用可に戻すことにより、補完処理を停止でき、不必要な補完処理が行われるのを防止できる。
【0277】
図21(C)に示す例では、3枚目の検査で異常(NG)と判定されて使用不可(D)とされたが、その後、連続して5回異常なし(OK)と判定されているので、8枚目の検査後、使用可(E)に復帰させている。
【0278】
このように、本実施例によれば、真に異常なノズルにも、不安定なノズルにも、また、誤検出が疑われる場合にも、望ましい対応をすることができる。
【0279】
また、本実施例の場合、使用可に戻す条件が、上記実施例1よりも厳しくなるので、不安定なノズルに対してより強い判定が可能になる。
【0280】
《実施例3》
図22は、第3の実施の形態の判定方法でノズルの使用の可否を判定した場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示す表である。同図(A)は、真に異常なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(B)は、不安定なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(C)は、誤検出が疑われる場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。
【0281】
なお、本例では、数mを5とし、数nを10としている。また、検査期間内において、すでに2回異常が検出されているものとしている(K=2)。
【0282】
この場合、検査で異常ありと判定されると、ノズルは使用不可とされる。そして、その使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査から10(規定回数M=m×K=5×2)回連続して異常なしと判定されると、使用可に戻される。一方、使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査から20(規定回数N=n×K=10×2)回以内の検査で再度異常ありと判定されると、継続的に使用不可とされる。
【0283】
なお、図は30枚目からの状況を示している。上記のように、30枚の時点で規定回数Mは、m×K=5×2=10回に設定されており、規定回数Nは、n×K=10×2=20回に設定されている。
【0284】
〈真に異常なノズルに対して〉
図22(A)に示すように、本実施例の場合、検査で異常ありと判定されると、直ぐに使用不可とされて補完処理が行われるため、真に異常なノズルに対して、素早く対応できる。
【0285】
〈不安定なノズルに対して〉
図22(B)に示すように、本実施例の場合、使用不可としたノズルが、直後の検査から20(=n×K=10×2)回以内の検査で再度異常ありと判定されると、継続的に使用不可とされるので、不安定なノズルがあっても、その使用を止めることができる。これにより、安定した運用が可能になる。
【0286】
図22(B)に示す例では、32枚目の検査で異常(NG)と判定されて使用不可(D)とされた後、33枚目の検査で異常なし(OK)と判定されているが、その後の34枚目の検査で再び異常あり(NG)と判定されているので、継続的に使用不可(D)とされている。
【0287】
なお、使用可に復帰させる条件が、使用不可とした直後の検査から10回連続して異常なしと判定されることであるので、本例の場合、33枚目の検査で異常なし(OK)と判定されても、33枚目の時点で使用可には復帰しない。
【0288】
また、本例において、継続して使用不可とする条件は、20回以内の検査で異常と判定された場合であるので、20回を超えた検査で異常と判定されても、当該ノズルが継続的に使用不可とされることはない。この場合、20回を超えて検出された異常を基準として、再び継続的な使用の可否が判定される。
【0289】
〈誤検出が疑われる場合に対して〉
図22(C)に示すように、本実施例の場合、異常ありと判定された直後の検査から連続して10(=m×K=5×2)回異常なしと判定されると、使用可に戻される。検査で異常ありと判定された場合であっても、その後の連続して異常なしと判定されると、誤検出の可能性がある。この場合、使用可に戻すことにより、補完処理を停止でき、不必要な補完処理が行われるのを防止できる。
【0290】
図22(C)に示す例では、32枚目の検査で異常(NG)と判定されて使用不可(D)とされたが、その後、連続して10回異常なし(OK)と判定されているので、42枚目の検査後、使用可(E)に復帰させている。
【0291】
このように、本実施例によれば、真に異常なノズルにも、不安定なノズルにも、また、誤検出が疑われる場合にも、望ましい対応をすることができる。
【0292】
また、本実施例の場合、使用可に戻す条件が、上記実施例1及び2よりも厳しくなるので、不安定なノズルに対してより強い判定が可能になる。また、過去の履歴を考慮して、規定回数M及びNが設定されるので、より適切な判定が可能になる。
【0293】
《実施例4》
図23は、第4の実施の形態の判定方法でノズルの使用の可否を判定した場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示す表である。同図(A)は、真に異常なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(B)は、不安定なノズルが存在する場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。同図(C)は、誤検出が疑われる場合の補完処理の実施状況及び画像欠陥の発生状況を示している。
【0294】
なお、本例では、数mを5とし、数nを10としている。また、検査期間内において、すでに2回異常が検出されているものとしている(K=2)。
【0295】
この場合、検査で異常ありと判定されると、ノズルは使用不可とされる。そして、その使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査から25(規定回数M=m^K=5^2)回連続して異常なしと判定されると、使用可に戻される。一方、使用不可としたノズルが、使用不可とした直後の検査から100(規定回数N=n^K=10^2)回以内の検査で再度異常ありと判定されると、継続的に使用不可とされる。
【0296】
なお、図は30枚目からの状況を示している。上記のように、30枚の時点で規定回数Mは、m^K=5^2=25回に設定されており、規定回数Nは、n^K=10^2=100回に設定されている。
【0297】
〈真に異常なノズルに対して〉
図23(A)に示すように、本実施例の場合、検査で異常ありと判定されると、直ぐに使用不可とされて補完処理が行われるため、真に異常なノズルに対して、素早く対応できる。
【0298】
〈不安定なノズルに対して〉
図23(B)に示すように、本実施例の場合、使用不可としたノズルが、直後の検査から100(=n^K=100)回以内の検査で再度異常ありと判定されると、継続的に使用不可とされるので、不安定なノズルがあっても、その使用を止めることができる。これにより、安定した運用が可能になる。
【0299】
図23(B)に示す例では、32枚目の検査で異常(NG)と判定されて使用不可(D)とされた後、33枚目の検査で異常なし(OK)と判定されているが、その後の34枚目の検査で再び異常あり(NG)と判定されているので、継続的に使用不可(D)とされている。
【0300】
なお、使用可に復帰させる条件が、使用不可とした直後の検査から25回連続して異常なしと判定されることであるので、本例の場合、33枚目の検査で異常なし(OK)と判定されても、33枚目の時点で使用可には復帰しない。
【0301】
また、本例において、継続して使用不可とする条件は、100回以内の検査で異常と判定された場合であるので、100回を超えた検査で異常と判定されても、当該ノズルが継続的に使用不可とされることはない。この場合、100回を超えて検出された異常を基準として、再び継続的な使用の可否が判定される。
【0302】
〈誤検出が疑われる場合に対して〉
図23(C)に示すように、本実施例の場合、異常ありと判定された直後の検査から連続して25(=m^K=5^2)回異常なしと判定されると、使用可に戻される。検査で異常ありと判定された場合であっても、その後の連続して異常なしと判定されると、誤検出の可能性がある。この場合、使用可に戻すことにより、補完処理を停止でき、不必要な補完処理が行われるのを防止できる。
【0303】
図23(C)に示す例では、32枚目の検査で異常(NG)と判定されて使用不可(D)とされたが、その後、連続して25回異常なし(OK)と判定されているので、57枚目の検査後、使用可(E)に復帰させている。
【0304】
このように、本実施例によれば、真に異常なノズルにも、不安定なノズルにも、また、誤検出が疑われる場合にも、望ましい対応をすることができる。
【0305】
また、本実施例の場合、使用可に戻す条件が、上記実施例1及び2よりも厳しくなるので、不安定なノズルに対してより強い判定が可能になる。また、過去の履歴を考慮して、規定回数M及びNが設定されるので、より適切な判定が可能になる。
【0306】
以上のように、本発明によれば、真に異常なノズルにも、不安定なノズルにも、また、誤検出が疑われる場合にも、望ましい対応をすることができる。