特許第5996188号(P5996188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5996188
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】DCブラシレスモータ駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20160101AFI20160908BHJP
【FI】
   H02P6/16
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-280812(P2011-280812)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-132152(P2013-132152A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和男
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第01/039358(WO,A1)
【文献】 米国特許第07109672(US,B1)
【文献】 特開2003−021115(JP,A)
【文献】 特開昭57−116588(JP,A)
【文献】 特開平03−084484(JP,A)
【文献】 特開2010−185737(JP,A)
【文献】 特開2008−301656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホール素子の出力信号に基づいてDCブラシレスモータの回転駆動制御を可能に構成されてなるDCブラシレスモータ駆動回路であって、
外部から入力される信号に応じて前記ホール素子へ断続的に通電可能に構成されてなるバイアス用電源と、
前記ホール素子の出力信号を増幅し、前記DCブラシレスモータのロータ位置に応じた相信号を出力するホールアンプと、
前記ホールアンプの出力信号に基づいてロータ回転に同期し、かつ、そのロータ回転の相信号を逓倍した周波数の信号を、前記バイアス用電源に前記通電電流を断続せしめる信号として出力可能に構成されてなる回転数信号発生器と、を具備し、
前記ホールアンプは、前記回転数信号発生器の出力信号の最大周波数に対して大凡十分の一のカットオフ周波数を有することを特徴とするDCブラシレスモータ駆動回路。
【請求項2】
所定の周波数の信号を出力する発振器と、
前記回転数信号発生器の出力信号を計数し、所定の計数が行われた際に信号出力可能に構成されてなるカウンタと、
前記発振器の出力信号と前記カウンタの出力信号との論理和信号を、前記バイアス用電源に前記通電電流を断続せしめる信号として出力する論理和回路と、
電源電圧が一定値に達した際にアクティブ信号を出力する電源電圧検出器と、を具備し、
前記カウンタは、前記電源電圧検出器から出力されたアクティブ信号によりリセット可能に構成されてなることを特徴とする請求項1記載のDCブラシレスモータ駆動回路。
【請求項3】
ホール素子の出力信号に基づいてDCブラシレスモータの回転駆動制御を可能に構成されてなるDCブラシレスモータ駆動回路であって、
外部から入力される信号に応じて前記ホール素子へ断続的に通電可能に構成されてなるバイアス用電源と、
前記バイアス用電源に前記通電電流を断続せしめる信号を出力する発振器と、
前記ホール素子の出力信号を増幅し、前記DCブラシレスモータのロータ位置に応じた相信号を出力すると共に、前記発振器の出力信号の大凡十分の一のカットオフ周波数を有するホールアンプと、
前記ホールアンプの出力信号に基づいてロータ回転に同期し、かつ、そのロータ回転の相信号を逓倍した周波数の信号を出力可能に構成されてなる回転数信号発生器と、
前記回転数信号発生器の出力信号を計数し、所定の計数が行われた際に信号出力可能に構成されてなるカウンタと、
前記発振器の出力信号と前記カウンタの出力信号との論理和信号を、前記バイアス用電源に前記通電電流を断続せしめる信号として出力する論理和回路と、
電源電圧が一定値に達した際にアクティブ信号を出力する電源電圧検出器と、を具備し、
前記ホールアンプの出力に基づいて前記DCブラシレスモータへ通電可能に構成されてなる一方、
前記カウンタは、前記電源電圧検出器から出力されたアクティブ信号によりリセット可能に構成されてなることを特徴とするDCブラシレスモータ駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCブラシレスモータ駆動回路に係り、特に、消費電力の低減等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来装置としては、例えば、機器冷却用の軸流ファンモータに使用されるDCブラシレスモータ駆動回路などが良く知られており、図5には、その回路構成例の一例が示されており、以下、同図を参照しつつ、かかる従来のDCブラシレスモータ駆動回路について説明する。
図5に示された回路は、ホール素子Hがモータのロータ位置に応じて出力する正弦波電圧信号を増幅するホールアンプAと、このホールアンプAの出力信号に基づいてモータMの巻線へ駆動電流を供給するドライバとを主たる構成要素として構成されたもので、一般にリニア駆動方式と称されているものである。
【0003】
特に、ファンモータなどに多用される単相ブラシレスモータのリニア駆動の場合、ホール素子Hの出力波形が基本的に正弦波であることを利用して、ホールアンプAの利得を計算上電源電圧の数倍程度の十分高い電圧振幅が得られるように設定することで得られる台形波が巻線駆動信号として生成されるようになっている。
巻線駆動信号を台形波とするのは、モータMの巻線に矩形波を印加した場合に発生する突入電流が、モータMのトルク生成には寄与せず、結果的に振動、騒音や発熱などを引き起こす原因となるとされているためである。
【0004】
この回路は、比較的簡易に実現できるため、5Vから12V程度の電源電圧で使用される単相ブラシレスモータに多く適用され、特に、冷却用ファンモータなどに多く用いられている。
かかる回路は、小型化のため半導体集積回路(IC)化されることがほとんどで、モータ巻線を駆動するためのパワーデバイスを含め、それらは数ミリから10数ミリ角のプラスチックモールドパッケージに収められている。
【0005】
ところで、モータ巻線を駆動する電流や電圧は、半導体チップの発熱によって制限される。半導体チップの発熱は、巻線駆動用パワーデバイスのON抵抗による損失が主要要因となり、発生損失は(動作電流の2乗)と(ON抵抗)の積で決まるため、ICチップの設計上、パワーデバイスは大きな面積を有し、その大きさがICの電流能力をほぼ決定するものとなっている。5ミリ角程度のパッケージは、400mw程度の許容損失を持つため、電源電圧が5Vの場合300mA程度、電源電圧が12Vの場合150mA程度が、巻線電流の定格条件であるICが多い。
【0006】
近年、家電や産業用設備などに用いられるモータにおいて、5Vあるいは12Vの従来の軸流ファンモータと同じ大きさで、動作電圧が24Vあるいは48Vと従来より高いものが必要とされることが増える傾向にある。
冷却能力、すなわち、モータの出力は、(巻線印加電圧)と(巻線電流)の積に依存するため、巻線電圧が高くできると駆動電流は減らすことができ、ON抵抗による発熱を減らすことができる。
【0007】
しかしながら、逆に、ブラシレスモータを駆動するのに不可欠なホール素子を駆動するための電源回路、いわゆるホールバイアスの損失が無視できなくなってくる。モータ駆動用としてインジウムアンチモン合金型のホール素子の場合、印加電圧が1.5V程度、動作電流は1〜3mAであるが、ノイズマージンや温度特性を考慮して5mA以上の電流を流すことがある。
例えば、非特許文献1、2にも示されているように、ホールバイアスはICに内蔵することも多い。従来、ホールバイアスはドロッパタイプの固定電圧を出力するものがほとんどであり、その損失は、(動作電圧−出力電圧)と(ホール電流)の積となるため、これを48Vの動作回路に適用すると、3mAの電流でも140mW程度の損失となるため、ICの動作温度範囲の上限付近では、上述した大きさのパッケージの場合、許容損失の二分の一以上を占めてしまうこともある。
【0008】
したがって、ホールバイアスによる損失を低減することが、ICのモータ駆動能力を向上させるために必要とされる。
そのための損失低減方法として、ホールバイアスを断続(チョッピング)する方法が従来から提案、実用化されており、例えば、特許文献1や非特許文献3等において開示されている。なお、非特許文献4で開示されている方法は、ホール素子のほか、ホール信号を受ける回路の電源も同時にチョッピングする方法であるが、この場合においても上述したような効果を期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−318352号公報(第3−4頁、図1図2
【非特許文献1】新日本無線株式会社 製品カタログ NJU7360
【非特許文献2】三洋電機株式会社 製品カタログ LA6583T
【非特許文献3】旭化成エレクトロニクス株式会社 製品カタログ EM−1712
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1、及び、非特許文献3で開示されている方法は、ホール素子の電力消費を抑えるために、そのバイアス回路にスイッチを設け、チョッピング駆動することを主眼としているが、ホール素子をモータのロータ位置検出に用いる場合、別の問題が生ずる。
すなわち、先に述べた単相DCブラシレスモータのリニア駆動の場合、ホール素子のバイアスをチョッピングすると、当然、ホール信号やモータ駆動信号にもチョッピング信号が重畳される。このようなモータ駆動信号のチョッピング信号成分は、先に述べた突入電流同様、モータのトルク生成に寄与しない電流を巻線に流すこととなり、モータの振動、騒音、発熱などの発生、効率の低下を招く原因となる。
【0011】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、ホールバイアス回路による電力消費を抑圧し、かつ、高調波信号が除去でき、リニア駆動に適した駆動信号を供給することのできるDCブラシレスモータ駆動回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るDCブラシレスモータ駆動回路は、
ホール素子の出力信号に基づいてDCブラシレスモータの回転駆動制御を可能に構成されてなるDCブラシレスモータ駆動回路であって、
外部から入力される信号に応じて前記ホール素子へ断続的に通電可能に構成されてなるバイアス用電源と、
前記ホール素子の出力信号を増幅し、前記DCブラシレスモータのロータ位置に応じた相信号を出力するホールアンプと、
前記ホールアンプの出力信号に基づいてロータ回転に同期し、かつ、そのロータ回転の相信号を逓倍した周波数の信号を、前記バイアス用電源に前記通電電流を断続せしめる信号として出力可能に構成されてなる回転数信号発生器と、を具備し、
前記ホールアンプは、前記回転数信号発生器の出力信号の最大周波数に対して大凡十分の一のカットオフ周波数を有してなるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ホールアンプに位相補償機能を備えるよう構成することにより、ホールバイアス回路のチョッピングによって生ずる電力損失を減少させることができ、小型パッケージICの出力電流能力を向上することができるという効果を奏するものである。
特に、回転数信号発生器の出力信号をチョッピングに用いる構成にあっては、簡易な構成とすることができ、IC内の発振器を省略した構成が実現でき、より安価なDCブラシレスモータ駆動回路を提供することができる。
また、ホールアンプの位相補償によって、チョッピングによる高周波ノイズを除去することができるので、チョッピングに起因してモータで生ずる騒音や振動を抑圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態におけるDCブラシレスモータ駆動回路の第1の構成例を示す構成図である。
図2】本発明の実施の形態におけるDCブラシレスモータ駆動回路の第2の構成例を示す構成図である。
図3】本発明の実施の形態におけるDCブラシレスモータ駆動回路の第3の構成例を示す構成図である。
図4図1に示されたDCブラシレスモータ駆動回路の主要部の信号のタイミングを示すタイミング図であって、図4(A)はホールバイアスをチョッピングするチョッピング信号のタイミングを示すタイミング図、図4(B)はDC印加時におけるホール信号のタイミング図、図4(C)はホールバイアスとしてDC印加とした場合のドライブ信号のタイミング図、図4(D)はチョッピングされたホールバイアスを印加した場合のホール信号のタイミング図、図4(E)はチョッピングされたホール信号を用いた場合のドライブ信号のタイミング図である。
図5】従来のDCブラシレスモータ駆動回路の一構成例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるDCブラシレスモータ駆動回路の第1の構成例について図1を参照しつつ説明する。
この第1の構成例におけるDCブラシレスモータ駆動回路は、バイアス用電源(図1においては「POW」と表記)1と、発振器(図1においては「OSC」と表記)2と、ホールアンプ3と、モータ駆動用ドライバ(図1においては「DRV」と表記)4とを有して構成されたものとなっている。
【0016】
バイアス用電源1は、ホール素子(図1においては「H」と表記)5に電流を供給する電源であり、本発明の実施の形態においては、特に、外部から入力される信号に同期して出力電流を断続できるよう構成されたものとなっている。なお、図1においては、この電流の断続機能をスイッチ素子で表している。
発振器2は、上述のバイアス用電源1の電流を断続させる信号を発生するもので、その発振周波数は、一般的なモータの回転数である数千rpmよりも十分高く、かつ、可聴周波数域より上の領域の20乃至60kHz程度に設定されたものとなっている。このようにモータ回転数よりも十分高い周波数とする理由は、モータ回転数とチョッピング周波数が近いと干渉(うなり)を起こしてモータ回転数が変動するため、これを避けるためである。
【0017】
このような影響を確実に避けるためには、発振器2の発振周波数はモータ回転数の10倍以上とすることが望ましい。かかる発振器2の出力信号は、図4(A)に示されたように方形波信号となっている。
そのため、バイアス用電源1が発振器2の出力信号によりONとされた際には、ホール素子5にはバイアス用電源1の規定電圧が印加される一方、バイアス用電源1が発振器2の出力信号によりOFFとされた際には、ホール素子5には0Vが印加されるようになっている。
【0018】
バイアス用電源1の出力段とグランドとの間には、バイアス用電源1側から順に、ホール素子5、及び、バイアス調整用抵抗器5aが直列接続されて設けられており、その出力は、ホールアンプ3に印加されるようになっている。
ホールアンプ3は、演算増幅器11と、帰還抵抗器12と、入力抵抗器13と、コンデンサ14とを有して構成されたものとなっている。
すなわち演算増幅器11の出力端子と、2つの入力端子の一方との間には、帰還抵抗器12が接続されると共に、この一方の入力端子には、入力抵抗器13を介してホール素子5の一方の出力端子が接続されたものとなっている。
【0019】
また、演算増幅器11の他方の入力端子には、ホール素子5の他方の出力端子が接続されている。さらに、ホール素子5と入力抵抗器13の相互の接続点と、演算増幅器11の他方の入力端子との間には、コンデンサ14が接続されている。
このホールアンプ3において、コンデンサ14、入力抵抗器13、及び、帰還抵抗器12は、RC1次フィルタによる位相補償回路を構成するものとなっている。
本発明の実施の形態においては、ホール素子5の出力抵抗との整合性との関係から、入力抵抗器13は100〜数kΩが選択されるため、コンデンサ14は0.1〜1μF程度の値を設定することで、数100Hz〜数kHzのところに極を構成できるものとなっている。
【0020】
モータ駆動用ドライバ4は、ホールアンプ3の出力信号に基づいて、モータ50の巻線に通電する通電電流を生成、出力するよう構成されてなるもので、その回路構成は、基本的に従来同様のものである。
なお、回路各部は、動作に必要な電源電圧を電源51により供給されるものとなっている。
ここで、ホールアンプ3において位相補償回路が必要とされる理由について説明することとする。
まず、従来、ホール素子には、一定のバイアスを印加して使用することが一般的であった。定電圧バイアスを印加した場合、ホール素子に印加された磁界に応じて内部抵抗値が変化するため、モータの位置検出に用いる場合には、ホール素子の出力信号(ホール信号)として、例えば、図4(B)に示されたよう正弦波電圧が出力されるようホール素子が配置されるのは周知の通りである。なお、この場合、モータには、図4(C)に示されたような、いわゆる台形波信号がドライブ信号として印加されるのが通常である。
【0021】
一方、ホール素子5のバイアスを断続させた場合、図4(D)に示されたようにホール素子5の出力にも同様な電圧変化が重畳され、結果として、モータ駆動用ドライバ4の出力は、図4(E)に示されたように、チョッピング周波数を、ホール素子5の出力信号で変調した信号となる。
しかし、その重畳されたチョッピング信号成分の振幅が大きくなると、モータ50の巻線へ印加される電力が減少し、モータ50の回転数を下げる要因となると共に、このようなモータ回転数より高い高周波成分は、モータ50のトルク発生に寄与することはなく、ほとんどが銅損となり、モータ50の動作効率悪化や発熱を招くこととなる。
そのため、定常回転で発生するモータ回転数信号、いわゆるFG(Frequency Generator)信号の概ね10倍以上のカットオフ周波数を有するよう位相補償機能をホールアンプ3に備えることで、チョッピングによるホール信号の高周波成分を除去し、上述のような不都合の解消を図っている。
【0022】
例えば、冷却用の小型軸流ファンの回転数は、1500〜6000rpmの範囲のものが多く、単相ファンで一般に機械的回転数の2倍周期で発生されるFG信号周波数に換算して50〜200Hz程度が多いことから、カットオフ周波数は概ね2kHzより高い値が妥当となる。このことから、先に述べたチョッピング周波数で発生する20乃至60kHzの成分を除去するため、その概ね十分の一となる2乃至6kHz程度のカットオフ周波数を持たせることが妥当となる。
【0023】
なお、位相補償回路の構成としては、図1に示された構成に限定されるものではなく、他に、例えば、ホールアンプを構成する差動アンプにミラー補償をかける方法も採り得る。この場合、ICチップ上に構成可能な数10pFのコンデンサで、上述した本発明の実施の形態における位相補償と同様な効果があるため、IC内蔵が可能となり、構成部品を削減することができる。
なお、図1に示された構成例の場合、ホール素子5へ駆動デューティ40%以下でも安定したモータ動作の確保が可能であった。
48Vの電源のモータ駆動回路へ適用した場合、許容消費電力に生じた余裕から、パワートランジスタの面積の15%程度の削減、あるいは、同サイズのパワートランジスタを使用した場合、許容電流の15%程度の拡大が可能となる。
【0024】
次に、第2の構成例について、図2を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された第1の構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の構成例は、先の図1に示された第1の構成例における発振器2に代えて回転数信号発生器6を設けた構成を有するものである。
回転数信号発生器6は、信号変換器6aと逓倍器6bとを有して構成されたものとなっている。
【0025】
信号変換器6aは、ホールアンプ3のアナログ出力信号(相信号)を、同一繰り返し周期を有する論理信号に変換、出力するよう構成されてなるもので、その出力は逓倍器6bへ入力されるものとなっている。
逓倍器6bは、信号変換器6aを介して入力された繰り返し論理信号を逓倍して所望周波数のチョッピング信号を生成、出力するためのもので、その出力信号は、図1における発振器2同様、バイアス用電源1の出力電流の断続に用いられるものとなっている。
【0026】
小型軸流ファンの駆動回路は、IC化されることがほとんどであり、かつ、多くのICには、回転数信号発生回路が設けられているため、この第2の構成例のような構成を採るには好都合である。
なお、モータ回転とチョッピング周波数の干渉を回避する観点から、先の逓倍器6bでは、入力された回転数信号の少なくとも8倍の逓倍が必要であり、バイアス用電源1のスイッチング損失を考慮すると、20kH〜200kHz程度となるよう逓倍器を設定する。
【0027】
また、図1に示された第1の構成例の発振器2は、例えば、20kHz程度の信号を生成する場合、10数個のフリップフロップ回路と時定数基準となるキャパシタが必要となるが、発振器2に代えて、回転数信号発生器6を用いることで、上述のような構成の発振器2を省くことができ、チップサイズのさらなる縮小化が実現できるものとなっている。
【0028】
次に、第3の構成例について、図3を参照しつつ説明する。
なお、図1、又は、図2に示された各構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の構成例は、特に、モータ起動時における不安定さを回避するための回路を、図1に示された第1の構成例に付加したものである。
すなわち、この第3の構成例は、図1に示された第1の構成例を基本として、さらに、電源電圧/起動検出回路(図3においては「P−DET」と表記)7と、回転数信号発生器6と、カウンタ(図3においては「COUNT」と表記)8と、論理和回路9とが設けられたものとなっている。
【0029】
カウンタ8は、回転数信号発生器6の出力信号を一定数カウントした時点で、論理値Highに対応する信号を出力するよう構成されたものとなっており、この出力信号によって、論理和回路9から発振器2の信号が出力されるようになっている。
例えば、起動後、10回転程度回転した後に、発振器2の出力によりバイアス用電源1がチョッピングされるように機能することとなる。
【0030】
電源電圧/起動検出回路7は、電源51により正常に電源電圧が印加された際に、起動検出信号をモータ駆動用ドライバ4へ出力し、モータ駆動用ドライバ4を動作可能とする一方、電源電圧が設定値以下に低下した場合に、カウンタ8に対してリセット信号を出力するよう構成されてなるものである。
この電源電圧/起動検出回路7を設けることにより、電源電圧が設定値より低下した場合には、カウンタ8をリセットすることで、瞬間的な電源電圧低下による再起動時にも安定した動作が確保されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
ホールバイアス回路の低消費電力化が所望されるブラシレスモータに適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1…バイアス用電源
2…発振器
3…ホールアンプ
4…モータ駆動用ドライバ
5…ホール素子
6…回転数信号発生器
7…電源電圧/起動検出回路
9…論理和回路
図1
図2
図3
図4
図5