(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
切削ブレードを有する切削手段で円板形状の被加工物の表面から該被加工物の外周縁を切削して除去する際に当該被加工物を裏面側から吸引保持する切削装置のチャックテーブルであって、
前記被加工物の外周部を環状の保持面で吸引保持する環状保持部と、
前記環状保持部の内周側で該環状保持部と同心状に配置され、ドレッシングボードを保持面で吸引保持するドレッシングボード保持部と、
前記環状保持部と前記ドレッシングボード保持部とがそれぞれ立設する基台部と、を有し、
前記ドレッシングボード保持部及び前記環状保持部は、それぞれの保持面に開口する吸引口と、一端が前記吸引口に連通するとともに他端が吸引源に接続される吸引路と、を備え、
前記環状保持部と前記ドレッシングボード保持部との間には、排水溝が形成され、
前記排水溝の溝底には、前記基台部の外部に貫通する排出口が配設され、
前記排水溝に流入するドレッシング加工液が前記排出口から排出される切削装置のチャックテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係るチャックテーブルを有する切削装置の構成例を示す図である。
【0012】
図1に示す実施形態1に係る切削装置1は、カセットエレベータ10と、仮置き手段20と、チャックテーブル30と、撮像手段40と、二つの切削手段50a,50bと、二つのY軸移動手段60a,60bと、二つのZ軸移動手段70a,70bと、洗浄・乾燥手段80とを含んで構成されている。切削装置1は、さらに、装置本体2上の門型の柱部3と、図示しないX軸移動手段とを含んで構成されている。切削装置1は、二つの切削手段50a,50bをY軸方向に対向配置したフェイシングデュアルタイプの加工装置である。切削装置1は、被加工物Wを保持したチャックテーブル30と、二つの切削手段50a,50bとを相対移動させることで、被加工物Wにエッジトリミングを施すことができる。また、切削装置1は、チャックテーブル30と一方の切削手段50a、または、チャックテーブル30と他方の切削手段50b、あるいは、チャックテーブル30と両方の切削手段50a,50bとを相対移動させることができる。
【0013】
ここで、被加工物Wは、エッジトリミングされる加工対象であり、特に限定されないが、例えば、シリコン、ヒ化ガリウム(GaAs)等を母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ、セラミック、ガラス、サファイア(Al
2O
3)系の円板状の無機材料基板、金属や樹脂等の円板状の延性材料等、各種加工材料である。また、本実施形態において、被加工物Wは、円板形状である。
【0014】
カセットエレベータ10は、被加工物Wを一枚ずつ収納する収納部がZ軸方向に複数形成されており、一度に複数の被加工物Wを収納することができるカセットがカセット載置面に載置される。カセットエレベータ10は、装置本体2の内部の空間をZ軸方向において昇降自在である。
【0015】
仮置き手段20は、エッジトリミング前後の被加工物Wが一時的に載置される一対のレール21,22を有し、エッジトリミング前後の被加工物Wを仮置きすることができる。一対のレール21,22は、本実施形態においては、Y軸方向に平行に配設されている。
【0016】
チャックテーブル30は、切削手段50a,50bで被加工物Wの表面から該被加工物Wの外周縁を切除して除去する際に、当該被加工物Wを裏面側から吸引保持するものであり、エッジトリミング時に被加工物Wを保持し、フラットドレス時にドレッシングボードDB(
図5に示す)を保持することができる。チャックテーブル30は、装置本体2上のテーブル移動基台4に着脱可能である。テーブル移動基台4は、図示しない回転駆動源によりZ軸回りにチャックテーブル30を回転可能であり、例えば、チャックテーブル30を90度回転や連続回転させる。テーブル移動基台4は、二つの切削手段50a,50bに対してチャックテーブル30をX軸方向に相対移動させる図示しないX軸移動手段(加工送り手段に相当)と、X軸移動手段を覆う蛇腹5とを備えている。X軸移動手段は、X軸ボールねじと、X軸パルスモータと、一対のX軸ガイドレールとを含んで構成されている。X軸ボールねじは、X軸方向に配設され、テーブル移動基台4の下部に設けられた図示しないナットと螺合し、一端にX軸パルスモータが連結されている。一対のX軸ガイドレールは、X軸ボールねじと平行に配設され、テーブル移動基台4をスライド可能に支持している。X軸移動手段は、X軸パルスモータの回転力によりX軸ボールねじを回転駆動し、テーブル移動基台4を一対のX軸ガイドレールによりガイドしつつ装置本体2に対してX軸方向に相対移動させる。蛇腹5は、布などの折り畳み自在な適宜の材料で構成され、テーブル移動基台4の移動に伴って伸縮し、X軸移動手段に切削水やドレッシング加工液L(
図5に示す)が付着するのを防ぐ。なお、切削水やドレッシング加工液Lは、同一の加工液を切削水およびドレッシング加工液Lとしており、本実施形態においては、エッジトリミング時に用いられる加工液を切削水と称し、フラットドレス時に用いられる加工液をドレッシング加工液Lと称している。切削水やドレッシング加工液Lは、例えば、純水等である。
【0017】
撮像手段40は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを用いたカメラ等である。撮像手段40は、チャックテーブル30に保持された被加工物W等を撮像し、被加工物Wに対する切削手段50a,50bのアライメント調整を行うための画像データを生成する。
【0018】
二つの切削手段50a,50bは、Y軸方向に対向配置されている。二つの切削手段50a,50bは、撮像手段40により撮像された被加工物Wの画像データに基づいて、チャックテーブル30に保持された被加工物Wに切削水を供給しながらエッジトリミングを行う。二つの切削手段50a,50bは、二つのY軸移動手段60a,60b(割り出し送り手段に相当)および二つのZ軸移動手段70a,70b(切り込み送り手段に相当)を介して柱部3にそれぞれ支持され、Y軸方向とZ軸方向とにそれぞれ相対移動可能である。一方の切削手段50aは、切削ブレード51aと、スピンドル52aと、スピンドルハウジング53aと、ノズル54aとを含んで構成されている。同様に、他方の切削手段50bは、切削ブレード51bと、スピンドル52bと、スピンドルハウジング53bと、ノズル54bとを含んで構成されている。
【0019】
切削ブレード51a,51bは、極薄のリング形状に形成され、刃先が平坦なエッジトリミング専用の切削砥石である。切削ブレード51a,51bは、スピンドル52a,52bの一端に着脱可能に装着されている。切削ブレード51a,51bは、高速回転することでチャックテーブル30に保持された被加工物Wの周縁部を切削し、エッジトリミングする。スピンドルハウジング53a,53bは、中空筒状に形成され、内挿されたスピンドル52a,52bを回転自在に支持している。ノズル54a,54bは、切削水やドレッシング加工液Lを供給する図示しない加工液供給源に接続され、切削水やドレッシング加工液Lを加工点に向けて噴射する。
【0020】
二つのY軸移動手段60a,60bは、柱部3にそれぞれ設けられている。二つのY軸移動手段60a,60bは、Y軸ボールねじ61a,61bと、Y軸パルスモータ62a,62bと、一対のY軸ガイドレール63,63とを含んで構成されている。Y軸ボールねじ61a,61bは、Y軸方向に配設され、ブレード移動基台6a,6bの内部に設けられた図示しないナットとそれぞれ螺合し、一端にY軸パルスモータ62a,62bがそれぞれ連結されている。一対のY軸ガイドレール63,63は、Y軸ボールねじ61a,61bと平行に配設され、Y軸方向にスライド可能にブレード移動基台6a,6bのそれぞれを支持している。二つのY軸移動手段60a,60bは、Y軸パルスモータ62a,62bの回転力によりY軸ボールねじ61a,61bを回転駆動し、ブレード移動基台6a,6bを一対のY軸ガイドレール63,63によりガイドしつつ装置本体2に対してY軸方向にそれぞれ相対移動させる。ここで、Y軸方向は、本実施形態においては、鉛直方向と直交する切削ブレード51a,51bの回転軸の方向である。
【0021】
二つのZ軸移動手段70a,70bは、ブレード移動基台6a,6bにそれぞれ設けられている。二つのZ軸移動手段70a,70bは、Z軸ボールねじ71a,71bと、Z軸パルスモータ72a,72bと、一対のZ軸ガイドレール73a,73bとを含んで構成されている。Z軸ボールねじ71a,71bは、Z軸方向に配設され、切削手段支持部7a,7bの内部に設けられた図示しないナットとそれぞれ螺合し、一端にZ軸パルスモータ72a,72bがそれぞれ連結されている。一対のZ軸ガイドレール73a,73bは、Z軸ボールねじ71a,71bと平行に配設され、Z軸方向にスライド可能に切削手段支持部7a,7bのそれぞれを支持している。二つのZ軸移動手段70a,70bは、Z軸パルスモータ72a,72bの回転力によりZ軸ボールねじ71a,71bを回転駆動し、切削手段支持部7a,7bを一対のX軸ガイドレール73a,73bによりガイドしつつ装置本体2に対してZ軸方向にそれぞれ相対移動させる。ここで、Z軸方向は、本実施形態においては、鉛直方向である。
【0022】
洗浄・乾燥手段80は、加工後の被加工物Wを保持するスピンナテーブル81と、図示しない洗浄液噴射装置と、図示しない気体噴射装置と、を備える。洗浄・乾燥手段80は、スピンナテーブル81を図示しない回転駆動源により回転させつつ洗浄液噴射装置から加工後の被加工物Wに洗浄液を噴射することで該被加工物Wを洗浄し、洗浄後の被加工物Wに気体噴射装置から気体を噴射することで該被加工物Wを乾燥させる。
【0023】
ここで、
図2および
図3を参照して、実施形態1に係るチャックテーブル30について説明する。
図2は、実施形態1に係るチャックテーブルの構成例を示す図である。
図3は、
図2に示すチャックテーブルの断面図である。
【0024】
図2および
図3に示すように、チャックテーブル30は、例えば、ステンレス鋼等の金属で円盤状に形成されている。チャックテーブル30は、環状保持部31と、ドレッシングボード保持部32と、基台部33とを有している。チャックテーブル30は、環状保持部31とドレッシングボード保持部32との間に排水溝34が形成されている。チャックテーブル30は、環状保持部31で被加工物Wの外周部を吸引保持し、ドレッシングボード保持部32でドレッシングボードDB(
図5に示す)を吸引保持する。
【0025】
ここで、ドレッシングボードDBは、切削ブレード51a,51bが被加工物Wに対して切り込む深さよりも厚い厚手に形成され、中央部が開口した円環板状に形成されている。ドレッシングボードDBは、例えば、切削ブレード51a,51bの砥粒よりも大きい砥粒とフェノール樹脂等のレジンボンドとを混練し、厚手の円環板状に成形した後、焼成して形成されている。砥粒としては、例えば、緑色の炭化ケイ素を含むグリーンカーボン、白色のアルミナを含むホワイトアランダム、アランダム(登録商標)等である。また、ドレッシングボードDBは、砥粒をガラスで固めて厚手の円環板状に成形したものでもよい。
【0026】
環状保持部31は、基台部33から立設されている。環状保持部31は、環状の保持面31aで被加工物Wの外周部を吸引保持する。環状保持部31は、保持面31aに開口する吸引口31bと、吸引路31cとを備える。吸引路31cは、一端が吸引口31bに連通するとともに他端が吸引源91に接続される。また、環状保持部31は、保持面31aに開口する供給口31dと、供給路31eとを備える。供給路31eは、一端が供給口31dに連通するとともに他端が供給源92に接続される。保持面31aには、吸引口31bと供給口31dとにそれぞれ連通する環状溝31fが形成されている。
【0027】
ドレッシングボード保持部32は、環状保持部31の内周側で、環状保持部31と同心状に配置され、基台部33から立設されている。ドレッシングボード保持部32は、保持面32aでドレッシングボードDBを吸引保持する。ドレッシングボード保持部32は、保持面32aに開口する吸引口32b,32cと、吸引路32d,32eとを備える。吸引路32d,32eは、一端が吸引口32b,32cに連通するとともに他端が吸引源91に接続される。また、ドレッシングボード保持部32は、保持面32aに開口する供給口32f,32gと、供給路32h,32iとを備える。供給路32h,32iは、一端が供給口32f,32gに連通するとともに他端が供給源92に接続される。保持面32aには、吸引口32b,32cと供給口32f,32gとにそれぞれ連通する環状溝32j,32kと、環状溝32j,32kのそれぞれに連通する直線状溝32l,32mとが形成されている。また、保持面32aは、環状保持部31の保持面31a以下の高さに形成されており、本実施形態において、環状保持部31の保持面31aよりも低い高さに形成されている。
【0028】
ここで、保持面32aが環状保持部31の保持面31aよりも低い高さに形成されているとは、環状保持部31の保持面31aで被加工物Wの外周部を吸引保持した際、被加工物Wの裏面とドレッシングボード保持部32の保持面32aとが接触せず、被加工物Wの裏面にドレッシング加工液Lやコンタミが付着しない高さに形成されていることをいう。
【0029】
基台部33は、吸引口31b,32b,32cに連通するとともに吸引源91の吸引配管93に接続される吸引路33aと、供給口31d,32f,32gに連通するとともに供給源92の供給配管94に接続される供給路33bとを備える。
【0030】
排水溝34の溝底34aには、基台部33の外部に貫通する排出口34b,34cが配設されており、排水溝34に流入するドレッシング加工液Lが排出口34b,34cから排出される。
【0031】
ここで、
図4を参照して、実施形態1に係るチャックテーブル30を有する切削装置1のエッジトリミングについて説明する。
図4は、実施形態1に係るチャックテーブルを用いたエッジトリミングの説明図である。
【0032】
まず、切削装置1は、オペレータ等の作業員が入力したエッジトリミング条件等に基づいて、加工動作を開始する。この加工動作において、被加工物Wは、図示しない搬出入手段によりカセットエレベータ10から仮置き手段20に搬出され、仮置き手段20の一対のレール21,22上に載置された後、図示しない搬送手段によりチャックテーブル30に搬送され、チャックテーブル30に載置され、X軸移動手段により加工開始位置に移動される。ここで、チャックテーブル30は、吸引源91により保持面31aの吸引口31bに作用する吸引力で、図示しない搬送手段で搬送された被加工物Wの裏面の外周部を環状保持部31の保持面31aで吸引保持する。
【0033】
次に、切削装置1は、切削ブレード51a,51bのうち、一方または両方の切削ブレード51a,51bを被加工物Wの外周に配置し、チャックテーブル30とともに被加工物Wを回転させ、被加工物Wの外周の一部を切削して切除する。
【0034】
次に、エッジトリミングされた被加工物Wは、供給源92により保持面31aの供給口31dに空気等の流体が供給されてチャックテーブル30からの取り外しが促され、図示しない搬送手段によりチャックテーブル30から洗浄・乾燥手段80に搬送され、洗浄・乾燥手段80により洗浄および乾燥された後、図示しない搬送手段により仮置き手段20に搬送され、図示しない搬出入手段により仮置き手段20からカセットエレベータ10に搬入される。
【0035】
ここで、被加工物Wのハンドリングの向上を目的として、サポートプレート上に被加工物Wを接着剤やワックスで固定した場合、あるいは、サポートプレート上に被加工物Wを直接に固定した場合、チャックテーブル30は、環状保持部31の保持面31aでサポートプレートの外周部を吸引保持するので、サポートプレートの裏面にドレッシング加工液Lやコンタミが付着したり、サポートプレートの裏面が傷付いたりすることを抑制することができる。なお、サポートプレートとしては、製品として使用しないウェーハを用いることができる。
【0036】
ここで、
図5を参照して、実施形態1に係るチャックテーブル30を有する切削装置1のフラットドレスについて説明する。
図5は、実施形態1に係るチャックテーブルを用いたフラットドレスの説明図である。なお、二つの切削ブレード51a,51bのそれぞれに対するフラットドレスは同じであるので、ここでは、切削手段51aに対してフラットドレスする場合について説明する。
【0037】
まず、切削装置1は、オペレータ等の作業員からの指示、あるいは、フラットドレスを必要か否かを判断し、フラットドレスを実行すると判断する。なお、フラットドレスが必要であるか否かは、切削手段50aによりエッジトリミングを行った被加工物Wに対する加工距離や摩耗量に基づいて判断することが好ましい。加工距離や摩耗量は、除去加工を行った被加工物Wの枚数、被加工物Wの直径、被加工物Wの円周上の距離、切削ブレード51aの切り込み量、切削ブレード51aの硬度などの少なくとも1つに基づいて判断することが好ましい。
【0038】
次に、切削装置1は、切削ブレード51aに対するフラットドレスを行う必要があると判断すると、フラットドレスを開始する。このフラットドレスにおいて、ドレッシングボードDBは、オペレータ等の作業員によりチャックテーブル30のドレッシングボード保持部32に載置され、X軸移動手段によりフラットドレス開始位置に移動される。ここで、チャックテーブル30は、吸引源91によりドレッシングボード保持部32の保持面32aの吸引口32b,32cに作用する吸引力で、ドレッシングボードDBの裏面の全面を保持面32aで吸引保持する。
【0039】
次に、切削装置1は、切削ブレード51aを、Z軸移動手段70aにより所定切り込み位置まで移動させる。ここで、所定切り込み位置は、切削ブレード51aをY軸方向においてドレッシングボードDBと対向する、すなわちZ軸方向において切削ブレード51aがドレッシングボードDBに接触することができる位置である。また、所定切り込み位置は、ドレッシングボードDBに対する切削ブレード51aの切り込み量であり、切削ブレード51aの偏摩耗度合い、切削ブレード51aに対するフラットドレスの回数、すなわち切削ブレード51aにおいてドレッシングボードDBの表面(研磨面)に対する接触回数(例えば、1回の接触でフラットドレスを行う場合は多くなり、複数回の接触を繰り返すことでフラットドレスを行う場合は少なくなる)などで決定される。
【0040】
次に、切削装置1は、ノズル54aからドレッシング加工液Lを切削ブレード51aに向かって噴射させつつ、回転する切削ブレード51aを所定切り込み位置からY軸移動手段によりY軸方向、ここではドレッシングボードDBの表面(研磨面)と接触する方向に移動させる。切削ブレード51aは、回転しながらY軸方向に移動することで、ドレッシングボードDBの研磨面と接触し、先端がフラットに整形されていく。また、ドレッシング加工液Lは、チャックテーブル30の排水溝34の排出口33b,33cから排出され、テーブル移動基台4の周囲に配設された図示しない排水手段を介して装置本体2の外部に排出される。
【0041】
なお、切削装置1は、切削ブレード51aと研磨面とが非接触となるまで、回転する切削ブレード51aをY軸方向に移動させる。つまり、切削装置1は、回転する切削ブレード51aを少なくとも研磨面の一端から他端まで移動させる。ここで、研磨面の一端から他端とは、ドレッシングボードDBの外周から径方向に対向する外周、ドレッシングボードDBの外周から径方向に対向する開口部、および、ドレッシングボードDBの開口部から径方向に対向する外周が含まれる。つまり、切削ブレード51aは、フラットドレスを行うために、少なくともドレッシングボードDBの直径分あるいは半径分、Y軸方向に移動することとなる。また、切削ブレード51aは、所定切り込み位置では、Z軸方向視において、ドレッシングボードDBの外周近傍、あるいは、ドレッシングボードDBの開口部に位置する。
【0042】
次に、切削装置1は、切削ブレード51aと研磨面とが非接触となった後、チャックテーブル30を回転させる。ここで、回転する切削ブレード51aを接触する研磨面に対してY軸方向に移動させると、研磨面に直線状の切削痕が形成される。研磨面のうち、切削痕が形成された領域(以下、単に「切削痕領域」と称する)は、切削痕が形成されていない領域(以下、単に「非切削痕領域」と称する)に対して切削ブレード51aに対する切削性能が低下するため、再びフラットドレスに用いることは好ましくない。したがって、切削装置1は、再度切削ブレード51aが研磨面と接触する場合において、切削ブレード51aを非切削痕領域で接触させるため、Z軸方向視においてブレード移動経路上に非切削痕領域が対向するように、チャックテーブル30を回転させる。なお、回転角度は、所定値でも良いが、切削痕の幅(切削痕が形成される方向と水平面において直交する方向における長さ)が所定切り込み位置に応じて変化するものであることから、所定切り込み位置に応じて回転角度を決定してもよい。また、非切削痕領域には、一部切削痕領域が含まれていてもよい。例えば、Z軸方向視においてブレード移動経路上のうち、ドレッシングボードDBの開口部側で切削痕領域が含まれていてもよい。この場合は、ドレッシングボードDBの回転角度を小さくすることができ、Z軸方向においてブレード移動経路上に切削痕領域を一部に含まない場合と比較して、ドレッシングボードDBを繰り返しフラットドレスに用いることができる。
【0043】
次に、切削装置1は、回転する切削ブレード51aを接触する研磨面に対してY軸方向に繰り返して移動させ、切削ブレード51aの先端をフラットに整形し、フラットドレスを完了する。この場合、切削装置1は、ドレッシングボード保持部32の保持面32aの供給口32f,32gに対して供給源92から空気等の流体を供給し、チャックテーブル30からのドレッシングボードDBの取り外しを促す。次に、オペレータ等の作業員は、チャックテーブル30からドレッシングボードDBを取り外す。
【0044】
なお、ドレッシングボードDBのハンドリングの向上を目的として、サポートプレート上にドレッシングボードDBを接着剤やワックスで固定した場合、あるいは、サポートプレート上にドレッシングボードDBを直接に固定した場合、チャックテーブル30は、環状保持部31の保持面32aでサポートプレートの外周部を吸引保持するので、サポートプレートの裏面にドレッシング加工液Lやコンタミが付着したり、サポートプレートの裏面が傷付いたりすることを抑制することができる。
【0045】
以上のように、実施形態1に係る切削装置1のチャックテーブル30によれば、被加工物Wの外周部を環状の保持面31aで吸引保持する環状保持部31と、環状保持部31の内周側で該環状保持部31と同心状に配置され、ドレッシングボードDBを保持面32aで吸引保持するドレッシングボード保持部32とを有しているので、エッジトリミングする際には被加工物Wを環状保持部31で保持することができ、フラットドレスする際にはドレッシングボードDBをドレッシングボード保持部32で保持することができるという効果を奏し、ドレッシングボードDBを保持可能なチャックテーブルに変更しなくてもよいという効果を奏する。
【0046】
また、チャックテーブル30は、ドレッシングボード保持部32の保持面32aが環状保持部31の保持面31a以下の高さであって、ドレッシングボード保持部32の保持面32aが環状保持部31の保持面31aよりも低い高さに形成されているので、環状保持部31の環状の保持面31aでサポートプレートの外周部を吸引保持させた際、ドレッシングボード保持部32の保持面32aがサポートプレートよりも低い位置となり、サポートプレートの裏面とドレッシングボード保持部32の保持面32aとを非接触状態とすることができる。つまり、チャックテーブル30は、サポートプレートの裏面とドレッシングボード保持部32の保持面32aとの接触を抑え、サポートプレートの裏面の傷付きを低減することができるので、サポートプレートを再度利用することができる。これにより、再度利用したサポートプレートをチャックテーブル30で吸引保持することができ、再度利用したサポートプレートが被加工物Wの切削加工後の熱処理で破損することを抑えることができる。
【0047】
また、チャックテーブル30は、排出口34b,34cが基台部33の外部に貫通していることから、排水溝34内の気圧を大気圧に保つことができるので、吸引源91により排水溝34内の気圧が大気圧よりも低下することを抑えることができる。これにより、被加工物Wが排水溝34側に吸引され、撓み変形することを抑えることができる。
【0048】
また、チャックテーブル30は、ドレッシングボードや回転機構等を備えたドレス手段をチャックテーブル30の隣接位置に設置しなくてもよいので、切削装置1の装置構成の複雑化や大型化を抑えることができ、切削装置1のコストアップを抑えることもできる。
【0049】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る切削装置1のチャックテーブル30について説明する。実施形態2に係る切削装置1のチャックテーブル30の基本的構成は、実施形態1に係る切削装置1のチャックテーブル30と同様であるので、同一部分の構成の説明は省略する。
図6は、実施形態2に係るチャックテーブルの構成例を示す図である。
【0050】
図6に示すように、チャックテーブル30は、環状保持部31と、ドレッシングボード保持部32と、基台部33とを有する。また、チャックテーブル30は、環状保持部31の保持面31aと、ドレッシングボード保持部32の保持面32aとが面一である。
【0051】
ここで、
図7を参照して、実施形態2に係るチャックテーブル30でドレッシングボードDBが固定されたサポートプレートPを保持し、切削ブレード51aに対してフラットドレスする場合について説明する。
図7は、実施形態2に係るチャックテーブルを用いたフラットドレスの説明図である。
【0052】
まず、切削装置1は、切削ブレード51aに対するフラットドレスを行う必要があると判断すると、フラットドレスを開始する。このフラットドレスにおいて、ドレッシングボードDBは、接着剤やワックス等によりサポートプレートP上に固定されており、オペレータ等の作業員によりチャックテーブル30の環状保持部31とドレッシングボード保持部32とにサポートプレートPが載置され、サポートプレートPが環状保持部31とドレッシングボード保持部32とで吸引保持される。
【0053】
次に、切削装置1は、回転する切削ブレード51aとドレッシングボードDBとの相対位置を変えて、切削ブレード51aとドレッシングボードDBとを接触させ、切削ブレード51aの先端をフラットに整形し、切削ブレード51aに対してフラットドレスを行う。
【0054】
以上のように、実施形態2に係る切削装置1のチャックテーブル30によれば、環状保持部31の保持面31aと、ドレッシングボード保持部32の保持面32aとが面一であるので、サポートプレートP上にドレッシングボードDBを固定したサポートプレートPを用いることができる。これにより、ドレッシングボードDBのハンドリングを向上させることができる。
【0055】
また、サポートプレートPは被加工物Wと同じ大きさの外径の円板形状であるため、被加工物Wと全く同じ搬送手段(例えばベルヌーイ搬送手段)での搬送が可能となる。
【0056】
なお、チャックテーブル30は、ドレッシングボード保持部32にドレッシングボードDBを保持した状態において、環状保持部31の保持面31aよりもドレッシングボードDBの表面が低い高さになるようにしてもよい。これにより、ドレッシングボードDBをドレッシングボード保持部32で保持しつつ、被加工物Wやサポートプレートを環状保持部31で保持することができる。