特許第5997448号(P5997448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997448
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ダイボンダ及びボンディング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   H01L21/52 F
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-18365(P2012-18365)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-157529(P2013-157529A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】515085901
【氏名又は名称】ファスフォードテクノロジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】深澤 信吾
(72)【発明者】
【氏名】大久保 達行
(72)【発明者】
【氏名】栗原 芳弘
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−185941(JP,A)
【文献】 特開2006−114559(JP,A)
【文献】 特開2004−103653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイをピックアップし、前記ダイをワークに実装するボンディングヘッドと、
前記ボンディングヘッドを昇降する昇降駆動軸と、前記ボンディングヘッドを前記昇降する方向とは垂直な水平方向に前記昇降駆動軸を移動させる水平方向駆動軸とを備える2軸駆動軸と、
前記2軸駆動軸を制御する制御部と、
を備え、
前記昇降駆動軸は、
前記ボンディングヘッドを昇降し、前記ボンディングヘッドを介して前記ダイに所定以上の高荷重の接着荷重をかけることできる第1の昇降駆動軸と、
前記第1の昇降駆動軸の先端側に設けられ、前記昇降する方向に昇降可能で、前記ボンディングヘッドを介して前記ダイに前記所定以下の軽荷重の接着荷重をかけることできる第2の昇降駆動軸と、
を有し、
前記第1の昇降駆動軸及び前記第2の昇降駆動軸はリニアモータで構成され、
前記第1の昇降駆動軸と前記ボンディングヘッドとに係止された圧縮バネは、前記第2の昇降駆動軸のリニアモータよりも上方に配置され、
高荷重の前記接着荷重を検出する荷重検出センサは、前記第2の昇降駆動軸のリニアモータよりも上方に配置され、前記ボンディングヘッドの頭部が接触可能な前記第1の昇降駆動軸に設けられることを特徴とするダイボンダ。
【請求項2】
前記第2の昇降駆動軸のリニアモータは、前記ボンディングヘッドを前記圧縮バネに抗して上昇させ、前記荷重検出センサに接触させ、高荷重が前記ボンディングヘッドに伝わるようにすることを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項3】
前記第1の昇降駆動軸のリニアモータは磁石型リニアモータであり、前記第2の昇降駆動軸のリニアモータはボイスコイルモータであることを特徴とする請求項2に記載のダイボンダ。
【請求項4】
前記制御部は、前記接着荷重をかけるときは前記第1の昇降駆動軸の前記リニアモータをトルク制御し、その他ときは前記第1の昇降駆動軸の前記リニアモータを位置制御することを特徴とする請求項2のダイボンダ。
【請求項5】
前記第1の昇降駆動軸は、前記ボンディングヘッドを第1のリニアガイドに沿って昇降する第1の可動部と第1の固定部とを備える第1のリニアモータを駆動軸とし、
前記水平方向駆動軸は、前記ボンディングヘッドを前記水平方向に移動させる第2の可動部と第2の固定部とを備える第2のリニアモータを駆動軸とし、
前記第1の可動部を前記第1のリニアガイドを介して連結し、前記第2の可動部を直接的又は間接的に連結する連結部と、
前記第1の可動部、前記第2の可動部及び前記連結部を一体となって前記水平方向に移動させる第2のリニアガイドと、
前記第1の固定部と前記第2の固定部を前記水平方向に所定の長さで互いに平行に固定する支持体と、
を有することを特徴する請求項2に記載のダイボンダ。
【請求項6】
前記2軸駆動軸に電源を供給する主電源と、
前記主電源の電源喪失時に、前記ボンディングヘッドの落下を防止する昇降軸落下防止手段と、
を有することを特徴とする請求項2に記載のダイボンダ。
【請求項7】
第1の昇降駆動軸でボンディングヘッドを昇降し、ダイをピックアップするピックアップステップと、
前記ボンディングヘッドを降下し、前記ピックアップしたダイをワークに実装する実装ステップと、
前記実装後、前記ボンディングヘッドで前記ダイに荷重をかけて前記ダイを前記ワークに接着をする接着ステップと、
前記荷重が所定以上か以下かを判断する判断ステップと、
を備え、
前記接着ステップは、
前記荷重が所定以上の高荷重の場合に、前記第1の昇降駆動軸で前記高荷重をかける高荷重ステップと、
前記荷重が所定以下の軽荷重の場合に、前記第1の昇降駆動軸の下部に直列に設けられ、前記ボンディングヘッドを昇降可能な第2の昇降駆動軸で、前記軽荷重をかける軽荷重ステップと、
を有し、
前記第1の昇降駆動軸及び前記第2の昇降駆動軸はリニアモータで構成され、
前記第1の昇降駆動軸と前記ボンディングヘッドとに係止された圧縮バネは、前記第2の昇降駆動軸のリニアモータよりも上方に配置され、
高荷重の前記接着荷重を検出する荷重検出センサは、前記第2の昇降駆動軸のリニアモータよりも上方に配置され、前記ボンディングヘッドの頭部が接触可能な前記第1の昇降駆動軸に設けられることを特徴とするボンディング方法。
【請求項8】
前記高荷重ステップは、前記ボンディングヘッドを前記圧縮バネに抗して上昇させ、前記荷重検出センサに接触させ、高荷重が前記ボンディングヘッドに伝わるようにすることを特徴とする請求項7に記載のボンディング方法
【請求項9】
前記ピックアップステップは、前記第2の昇降駆動軸でピックアップ時及び実装時の荷重を制御することを特徴とする請求項に記載のボンディング方法。
【請求項10】
前記高荷重ステップは、第2の昇降駆動軸の荷重を零又はほぼ零にし、前記第1の昇降駆動軸を位置制御からトルク制御に切り換えることを特徴とする請求項に記載のボンディング方法。
【請求項11】
前記軽荷重ステップは、前記荷重をかけている間、前記第1の昇降駆動軸を位置制御することを特徴とする請求項に記載のボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンダ及びボンディング方法に係わり、特に半導体チップ(ダイ)を確実にワークに実装できる信頼性の高いダイボンダ及びボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の一つにダイをリードフレーム、基板などのワークにボンディングするダイボンダがある。ダイボンダでは、ボンディングヘッドがウェハ上で個片に分割されたダイを真空吸着し、その後、高速で上昇し、水平移動し、降してワークに実装する。
【0003】
実装されたダイは、ワーク上に塗布された接着剤又はダイ裏面に貼り付けられた接着テープに接合される。確実に接合するためには、ボンディングヘッドでダイの表面に任意の荷重をかけ、所定の接着強度を得る必要がある。
【0004】
このような、所定の接着強度を得る従来技術としては、特許文献1がある。特許文献1は、そのために、ボンディングヘッドと別に押下げ部材を設け、そのロードセルを有する面をボンディングヘッドに押付けて、ボンディングヘッドの下降速度を漸次低下させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−200379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、荷重の範囲が数十(例えば30)N(ニュートン)の高荷重をかけることができるが、一桁(例えば8)N以下の軽荷重にかけることができない。また、ボンディングヘッド及び押下げ部材の駆動にボールネジを用いたサーボモータ駆動では高速化の限界がある。
【0007】
従って、本発明の第1の目的は、軽荷重から高荷重まで接着荷重が得られるダイボンダ及びボンディング方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、高速に実装できるダイボンダ及びボンディング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ダイをピックアップし、前記ダイをワークに実装するボンディングヘッドと、前記ボンディングを昇降する昇降駆動軸と、前記ボンディングヘッドを前記昇降する方向とは垂直な水平方向に前記昇降駆動軸を移動させる水平方向駆動軸とを備える2軸駆動軸と、前記2軸駆動軸を制御する制御部と備え、前記昇降駆動軸は、前記ボンディングを昇降し、前記ボンディングヘッドを介して前記ダイに所定以上の高荷重の接着荷重をかけることできる第1の昇降駆動軸と、前記第1の昇降駆動軸の先端側に設けられ、前記昇降する方向に昇降可能で、前記ボンディングヘッドを介して前記ダイに前記所定以下の軽荷重の接着荷重をかけることできる第2の昇降駆動軸と、を有することを第1の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、第1の昇降駆動軸でボンディングヘッドを昇降し、ダイをピックアップするピックアップステップと、前記ボンディングヘッドを降下し前記ピックアップしたダイをワークに実装する実装ステップと、前記実装後、前記ボンディングヘッドで前記ダイに荷重をかけて前記ダイを前記ワークに接着をする接着ステップと、を備え、前記荷重が所定以上か以下かを判断する判断ステップと、前記接着ステップは、前記荷重が所定以上の高荷重の場合に、前記第1の昇降駆動軸で前記高荷重をかける高荷重ステップと、前記荷重が所定以下の軽荷重の場合に、前記第1の昇降駆動軸の下部に直列に設けられ、前記ボンディングヘッドを昇降可能な第2の昇降駆動軸で、前記軽荷重をかける軽荷重ステップと、を有することを第2の特徴とする。
さらに、本発明は、前記第1の昇降駆動軸及び前記第2の昇降駆動軸はリニアモータで構成されたことを第3の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記第1の駆動軸のリニアモータは磁石型リニアモータであり、前記第2の駆動軸のリニアモータはボイスコイルモータであることを第4の特徴とする。
さらに、本発明は、前記制御部は、前記接着荷重をかけるときは前記第1の昇降駆動軸の前記リニアモータをトルク制御し、その他ときは前記第1の昇降駆動軸の前記リニアモータを位置制御することを第5の特徴とする。
【0011】
また、本発明は、高荷重の前記接着荷重を検出する荷重検出センサが、前記ボンディングヘッドの頭部が接触可能な前記第1の昇降駆動軸に設けられたことを第6の特徴とする。
さらに、本発明は、前記ピックアップは、前記第2の昇降駆動軸でピックアップ時及び実装時の荷重を制御することを第7の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記高荷重は、第2の昇降駆動軸の荷重を零又はほぼ零にし、前記第1の昇降駆動軸を位置制御からトルク制御に切り換えることを第8の特徴とする。
さらに、本発明は、前記軽荷重ステップは、前記荷重をかけている間、前記第1の昇降駆動軸を位置制御することを第9の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軽荷重から高荷重まで接着荷重が得られるダイボンダ及びボンディング方法を提供できる。
また、本発明によれば、高速に実装できるダイボンダ及びボンディング方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態であるダイボンダを上から見た概念図である。
図2図1に示すZY駆動軸のボンディングヘッドが存在する位置おけるA−A断面図である。
図3図2に示すZY駆動軸をBの方向から見た矢視図である。
図4】所定の位置でボンディングヘッドを昇降できる左右の固定磁石部の構成例を模式的に示す図である。
図5】第1の実施形態における実装処理フローを示す図である。
図6】第2の実施形態のZY駆動軸における軽荷重Z駆動軸の他の実施例を示す図である。
図7】第3の実施形態のZY駆動軸における軽荷重Z駆動軸の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるダイボンダ10を上から見た概念図である。ダイボンダは大別してウェハ供給部1と、ワーク供給・搬送部2と、ダイボンディング部3と、電源部71と、これ等を制御する制御部7とを有する。
【0016】
ウェハ供給部1は、ウェハカセットリフタ11とピックアップ装置12とを有する。ウェハカセットリフタ11はウェハリングが充填されたウェハカセット(図示せず)を有し,順次ウェハリングをピックアップ装置12に供給する。ピックアップ装置12は、所望するダイをウェハリングからピックアップできるように、ウェハリングを移動する。
【0017】
ワーク供給・搬送部2はスタックローダ21と、フレームフィーダ22と、アンローダ23とを有し、ワーク(リードフレーム等の基板)を矢印方向に搬送する。スタックローダ21は、ダイを接着するワークをフレームフィーダ22に供給する。フレームフィーダ22は、ワークをフレームフィーダ22上の2箇所の処理位置を介してアンローダ23に搬送する。アンローダ23は、搬送されたワークを保管する。
ダイボンディング部3はプリフォーム部(ダイペースト塗布装置)31とボンディングヘッド部32とを有する。プリフォーム部31はフレームフィーダ22により搬送されてきたワーク、例えばリードフレームにニードルでダイ接着剤を塗布する。ボンディングヘッド部32は、ウェハを有するピックアップ装置12からダイをピックアップして上昇し、ダイをフレームフィーダ22上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部32はボンディングポイントでダイを下降させ、ダイ接着剤が塗布されたワーク上にダイをボンディングする。
【0018】
ボンディングヘッド部32は、ボンディングヘッド35(図2参照)をZ(高さ)方向に昇降させ、Y方向に移動させるZY駆動軸60と、X方向に移動させX駆動軸70とを有する。ZY駆動軸60は、Y方向、即ちボンディングヘッドをウェハリングホルダ12内のピックアップ位置とボンディングポイントとの間を往復するY駆動軸40と、ダイをウェハからピックアップする又は基板にボンディングするために昇降させるZ駆動軸20とを有する。X駆動軸70は、ZY駆動軸60全体をワークの搬送方向であるX方向に移動させる。X駆動軸70は、サーボモータの回転運動を例えばボールネジで直線運動に変える構成でもよいし、ZY駆動軸60の構成で説明するリニアモータで駆動する構成でもよい。
【0019】
電源部71は、通常の実装処理に使用する主電源72と、場合によっては、後に詳述する昇降軸落下防止に必要な主電源とは異なる別電源73、例えばバッテリーを有する。
【0020】
以下、図を用いて本発明の特徴であるZY駆動軸60の実施形態を説明する。図2図3は第1の実施形態であるZY駆動軸60Aの基本構成を示す図である。図2は、ZY駆動軸60Aのボンディングヘッド35が存在する図1に示す位置おけるA−A断面図である。図3は、図2に示すZY駆動軸60AをBの方向から見た矢視図である。
【0021】
第1の実施形態であるZY駆動軸60Aは、Y駆動軸40と、昇降軸であるZ駆動軸20と、Y駆動軸40のY軸可動部41とZ駆動軸20とのX軸可動部51を連結する連結部61と、処理部であるボンディングヘッド35と、これら全体を支える横L字状の支持体62とを有する。なお、以下の説明を分かり易くするために、支持体62に固定されている部分は斜線で、Y軸可動部41、Z軸可動部51及び連結部61と一体になって移動する部分を白抜きで示している。また、支持体62は上部支持体62aと、側部支持体62bと、下部支持体62cとを有する。
【0022】
Y駆動軸40は、N極とS極の磁石又は電磁石が交互にY方向に多数配列された上下の固定磁石部47u、47dを有する逆コの字状のY軸固定部42と、前記配列方向に少なくとも1組のN極とS極の電磁石を有し、逆コの字状の凹部に挿入され凹部内を移動するY軸可動部41と、Y軸可動部41を支持する連結部61と、連結部61に固定され、下部の支持体62cとの間に設けられたY軸リニアガイド43を備えるY軸ガイド部44とを有する。従って、Y駆動軸40は固定部及び可動部に設けられた磁石の反発力により推進力を得る所謂リニアモータを用いている。本発明では、このリニアモータを磁石型リニアモータという。なお以後、固定磁石部47u、47dの全体を表す、又はu、dの位置を指定しないときは単に47と表す。
【0023】
Y軸固定部42は、Y軸可動部41が所定の範囲移動できるように図1の破線で示すY駆動軸40略全域に亘って設けられている。また、Y軸リニアガイド43は、Y方向に伸びる2つのリニアレール43aとリニアレール上を移動するリニアスライダ43bを有する。
【0024】
Z駆動軸20は、ボンディングヘッド35を昇降させ、高荷重(例えば、8から30N)をダイにかけることができる主Z駆動軸50と、ダイの荷重を支持し、軽荷重(0から8N)をダイにかけることができる軽荷重Z駆動軸90とを有する。さらに、Z駆動軸20は、主電源72の電源喪失時にボンディングヘッドの落下を防止する昇降軸落下防止手段80を有する。
【0025】
主Z駆動軸50は、Y駆動軸40と同様に、N極とS極の磁石又は電磁石が交互にZ方向に多数配列された左右の固定磁石部57h、57m(図4参照、以後、全体又は位置を指定しないときは単に57とする)を有する逆Uの字状のZ軸固定部52を備える磁石型リニアモータである。Z軸固定部52は、その配列方向に少なくとも1組のN極とS極の磁石を上部に有し、逆Uの字状の凹部に挿入され凹部内を移動するZ軸可動部51を有する。また、主Z駆動軸50は、Z軸可動部51と連結部61との間にY軸リニアガイド43と同様な構造を有するZ軸リニアガイド53を有する。Z軸リニアガイド53は、連結部61に固定されZ方向に伸びる2つのリニアレール53aとZ軸可動部51に固定されリニアレール上を移動するリニアスライダ53bを有する。
【0026】
Z軸可動部51は連結部61を介してY軸可動部41と繋がっており、Y軸可動部41がY方向に移動するとZ軸可動部51も共にY方向に移動する。そして移動先の所定の位置でZ軸可動部51(ボンディングヘッド35)が昇降できるようにする必要がある。
【0027】
図4に、所定の位置でボンディングヘッド35を昇降できる左右の固定磁石部57(57h、57m)の構成例を模式的に示す図である。本実施例では、少なくとも、ボンディング領域及びピックアップ領域にY方向に細長いN極、S極を交互に設けている。細長いN極、S極は短く分割して設けてもよい。勿論、Y方向の全域に亘って、Y方向に細長いN極、S極を交互に設けてもよい。
【0028】
一方、軽荷重Z駆動軸90はZ軸可動部51に先端に設けられている。軽荷重Z駆動軸90は、Z軸可動部51に固定された固定板92と、固定板に固定され、ダイに軽荷重をかけるボイスコイルモータ91と、ボンディングヘッド35の先端部のガタつきを抑制するバネ部93と、ボンディングヘッド35の位置を保持するストッパ94とを有する。ボイスコイルモータ91とは、磁場内で電流が流れるコイルと前記磁場を形成する磁石とが、フレミングの左手の法則によって、相対的に直線運動するリニアモータである。
【0029】
バネ部93は、ボンディングヘッド35に固定されたばね支持棒93cと、固定板92に固定されたバネ支持棒92bと、両者に係止された圧縮バネ93aと有する。バネ部93は、圧縮バネ93bのバネ荷重(例えば400g)によって、ボンディングヘッド35をストッパ94に押付けている。
また、固定板92には、ボンディングヘッド35の上部が接触し、ボンディングヘッドのダイへの荷重を検出するロードセル85が設けられている。勿論、荷重検出は、ロードセル以外の荷重検出センサでもよい。
【0030】
ボイスコイルモータ91は、図2に示す矢印方向に、ストッパ94に押付けられているボンディングヘッド35に、最大8Nの荷重をかけることができる。荷重量は、ボイスコイルモータ91の電流値で規定できる。
【0031】
また、ボイスコイルモータ91は、図2の引出し図に示すように、ボンディングヘッド35を圧縮バネ93aに抗して上昇させ、ロードセル85に接触させ、高荷重がボンディングヘッド35に伝わるようにすることができる。
【0032】
上記の構成によって、本実施形態の軽荷重Z駆動軸90は、4つのモードを有する。第1のモードは、上述したようにダイに最大荷重の負荷をかけることができ、初期状態でもある初期状態モードである。本実施形態では最大荷重は8Nである。第2のモードは、上述したボンディングヘッド35をロードセル85に接触させ、主Z駆動軸50で高荷重をかける高荷重モードである。このときは、ボイスコイルモータ91によるダイにかかる荷重は零又はほぼ零である。第3のモードは、ワークにダイを実装するときに、最大荷重8Nの間で、ボイスコイルモータ91の電流量を制御して、ダイに所定の荷重をかける軽荷重モードである。第4のモードは、ウェハからダイをコレット35aで吸着してピックアップするときの吸着するピックアップモードである。ピックアップモードでは、ボンディングヘッド35はストッパ94によって固定され、ピックアップ時又は実装時に過大な荷重がかからないように、ボイスコイルモータ91の電流値を調節する。
【0033】
上記のモードにおいて、初期状態モード及び高荷重モードのボイスコイル部91a位置を、ボイスコイル部91aの可動範囲の両端に設定することで、ボイスコイル部91aの位置をオープン制御で設定できる。勿論、位置センサ設け、ボイスコイル部91aの上記2モードでの位置をフィードバック制御してもよい。
【0034】
一方、ダイに8N以上の高荷重をかけてダイをワークに実装するときは、予め軽荷重Z駆動軸90を高荷重モードにし、その後、主Z駆動軸50をロードセル85の主力に基づいてトルクフィードバック制御する。この主Z駆動軸50のモードをトルク制御モードという。主Z駆動軸50は、トルク制御モード以外の時、例えば、ピックアップ時、ピックアップ位置から実装位置への移動時及び軽荷重モードの実装時等において、位置フィードバック制御する。そのモードを位置制御モードという。
【0035】
昇降軸落下防止手段80は、電源喪失時にプッシュバー81aの突出部が長くなるプッシャソレノイド81と、図1に示す別電源73とを有する。
【0036】
このような構成を有する昇降軸落下防止手段80において、電源喪失時に制御部7は、主電源72の喪失を検知し、コンアデンサ等で電源を維持している間に、プッシャソレノイド81に別電源73を接続し、電源を供給する。その結果、プッシャソレノイド81が作動し、プッシュバー81aが突出し、リニアスライダ53bを支持し、ボンディングヘッド35の基板Pヘの落下を防ぐことができる。
【0037】
昇降軸落下防止手段80は、上記の他、様々手段が考えられる。例えば、バネを利用し電源喪失時にバネを飛び出させて昇降軸の一部を支持するなどがある。
【0038】
次に、第1の実施形態における実装処理フローを、図5を用いて説明する。
まず、主Z駆動軸を位置制御モードにし(S1)、軽荷重Z駆動軸90を初期状態モードにする(S2)。次に、Y駆動軸40によりボンディングヘッド35をウェハ上のダイのピックアップ位置に移動する(S3)。その後、主Z駆動軸50よりボンディングヘッド35をピックアップ位置直前まで降下し停止する(S4)。次に、ピックアップ時にダイに過大な荷重がかからないように軽荷重Z駆動軸90をピックアップモードにし(S5)、主Z駆動軸50でボンディングヘッドをさらに降下させ、ダイをピックアップする(S6)。ピックアップ後、軽荷重Z駆動軸90を初期状態モードに戻す(S7)。
【0039】
次に、Y駆動軸40によりボンディングヘッド35を実装位置に移動する(S8)。その後、主Z駆動軸の位置制御よりボンディングヘッド35を実装位置、例えば100μm直前まで降下する(S9)。次に、ダイに軽荷重又は高荷重をかけるかを判断し(S10)、高荷重をかける高荷重モードの場合はS11に、軽荷重をかける軽荷重モードの場合はS18に行く。
【0040】
高荷重モードでは、まず、主Z駆動軸50で高荷重がかけられるように、軽荷重Z駆動軸を高荷重モードにし、軽荷重Z駆動軸90によるダイへの荷重がほぼ零にする(S11)。その後、主Z駆動軸50の位置制御よりダイを実装位置に装着する(S12)。装着後、主Z駆動軸50が所定荷重を有するトルクモードにし(S13)、所定荷重で所定時間、ダイをワーク又は既にワーク上に実装されたダイに押付け、その途中でダイを吸着から解放する(S14)。押付けることによって、装着されたダイがワーク上に塗布された接着剤又はダイ裏面に貼り付けられた接着テープに確実に接合する。
その後、主Z駆動軸50を位置制御モードに戻し(S15)、主Z駆動軸でボンディングヘッド35をY軸移動レベルまで上昇させ(S16)、その途中で軽荷重Z駆動軸90を初期状態モードに戻す(S17)。
【0041】
一方、軽荷重モードでは、まず、実装時にダイに過大な荷重がかからないように軽荷重Z駆動軸90をピックアップモードにする(S18)。その後、主Z駆動軸50の位置制御よりダイを実装位置に装着する(S19)。装着後、軽荷重Z駆動軸90が所定の軽荷重を有する軽荷重モードにし(S20)、軽荷重モードによりボンディングヘッド35が降下することにより所定時間、ダイをワーク又はダイに押付け、その途中でダイを吸着から解放する(S14)。
その後、軽荷重Z駆動軸をピックアップモードに戻し(S21)、主Z駆動軸でボンディングヘッド35をY軸移動レベルまで上昇させ(S16)、その途中で軽荷重Z駆動軸90を初期状態モードに戻す(S17)。S21は省略してもよい。
【0042】
高荷重モード又は軽荷重モードでの処理が終わると、まだ実装処理すべきダイが存在する場合はS3に戻り、処理を継続する(S22)。
【0043】
以上説明した第1の実施形態のZY駆動軸60Aによれば、主Z駆動軸と軽荷重Z駆動軸とを直列に接続することで、軽荷重から高荷重まで接着荷重が得られるダイボンダ及びボンディング方法を提供することができる。
また、以上説明した第1に実施形態であるZY駆動軸60Aによれば、主Z駆動軸及びY駆動軸に磁石型リニアモータを用いることで、高速に実装できるダイボンダ及びボンディング方法を提供することができる。
【0044】
さらに、以上説明したように本実施形態のZY駆動軸60Aによれば、Z軸固定部52は略全域に設けられているが、重量体であるZ軸固定部52自体は移動しないので、Y方向の移動に対する負荷が大幅に低減され、水平駆動軸のトルクを大きくせず、昇降軸の高速化を実現できる。
さらにまた、以上説明した本実施形態のZY駆動軸60Aによれば、主電源の72の電源喪失時において、昇降軸落下防止手段80を設けることで、磁石型リニアモータの昇降軸を有するボンディングヘッドの落下を防ぐことができる。
【0045】
図6は、第2の実施形態であるZY駆動軸60Bにおける軽荷重Z駆動軸90の他の実施例90Bを示す図である。軽荷重Z駆動軸90B以外の他の構成は第1の実施形態と同じである。図6において基本的には第1の実施形態と同じ構成又は機能を有するものは同一符号を付している。
軽荷重Z駆動軸90Bの第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態ではZ駆動軸としてボイスコイルモータ91を用いたが、主Z駆動軸50と同様に磁石型リニアモータを用いている点である。
【0046】
軽荷重Z駆動軸90Bは、N極とS極の磁石が交互にZ方向に磁石又は電磁石が多数配列された固定磁石部95を固定するZ軸固定部96を有する。軽荷重Z駆動軸90Bは、ボンディングヘッド35に設けられた前記配列方向に少なくとも1組のN極とS極の電磁石を有する。また、ボンディングヘッド35は、安定して昇降するためにリニアガイド97を有する。なお、固定磁石部95とリニアガイド97は、固定板92に固定されている。
【0047】
第2の実施形態において軽荷重Z駆動軸の4つのモードは、第1の実施形態と同様に制御される。
【0048】
図7は、第3の実施形態であるZY駆動軸60Cにおける軽荷重Z駆動軸90の他の実施例90Cを示す図である。第2の実施形態と異なる第1の点は、バネを用いず、ボンディングヘッド35の両側にN極とS極の磁石が交互にZ方向に多数配列された固定磁石部95h、95m(95)を設けた点である。第2の点は、軽荷重Z駆動軸の4つのモードを、第1の実施形態における主Z駆動軸50で説明したリニアモータの位置制御とトルク制御で行う。即ち、初期状態モード、高荷重モード及びピックアップモードは位置制御で行い、軽荷重モードはトルク制御で行う。
その他の点は第2の実施形態のZY駆動軸60Bと基本的に同じである。
【0049】
第2、第3の実施形態においても、基本的には図5に示す処理フロー−に基づき実装処理を行うことができ、第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0050】
以上説明した実施形態においては、第1の目的を達成するとの観点に立てば、Y駆動軸、主Z駆動軸の少なくとも一方に、サーボモータの回転運動を例えばボールネジで直線運動に変える駆動方式を用いてもよい。また、同様に、軽荷重Z駆動軸にも、該直線運動に変える駆動方式を用いてもよい。
【0051】
以上のように本発明の実施形態について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0052】
1:ウェハ供給部 2:ワーク供給・搬送部
3:ダイボンディング部 10:ダイボンダ
20:Z駆動軸 32:ボンディングヘッド部
35:ボンディングヘッド 31:プリフォーム部
40:Y駆動軸 41:Y軸可動部
42:Y軸固定部 43:Y軸リニアガイド
44:Y軸ガイド部 47、47d、47u:固定磁石
50:主Z駆動軸 51:Z軸可動部
52:Z軸固定部 53:Z軸リニアガイド
57、57h、57m:固定磁石部
60、60A、60B、60C:ZY駆動軸
61:連結部 70:X駆動軸
80:昇降軸落下防止手段 85:ロードセル
90、90B、90C:軽荷重Z駆動軸
91:ボイスコイルモータ 93:バネ部
94:ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7