特許第5997621号(P5997621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5997621インクジェット用記録シート、印刷物、および印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997621
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】インクジェット用記録シート、印刷物、および印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20160915BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20160915BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   B41M5/00 A
   B41M5/00 B
   B41M5/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-14285(P2013-14285)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-144578(P2014-144578A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】野村 達也
(72)【発明者】
【氏名】細田 英正
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆志
(72)【発明者】
【氏名】大賀 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 維成
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−213958(JP,A)
【文献】 特開2012−171307(JP,A)
【文献】 特開2012−148417(JP,A)
【文献】 特開2012−076314(JP,A)
【文献】 特開2012−006242(JP,A)
【文献】 特開2011−005651(JP,A)
【文献】 特開2010−284881(JP,A)
【文献】 特開2010−284880(JP,A)
【文献】 特開2003−166183(JP,A)
【文献】 特開2007−283613(JP,A)
【文献】 特開2012−140491(JP,A)
【文献】 特開2005−029718(JP,A)
【文献】 特開2005−132032(JP,A)
【文献】 特開2012−106384(JP,A)
【文献】 特開2006−219625(JP,A)
【文献】 特開2010−253824(JP,A)
【文献】 特開2007−050620(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0318510(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0321454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
B41M 5/50
B41M 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面にインク受容層とを有し、
前記インク受容層が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂と、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物の少なくともいずれかの架橋剤とを含み、
前記インク受容層に含まれる前記樹脂の質量比率が、前記ポリエステル樹脂:前記ポリウレタン樹脂:前記アクリル樹脂=0.3〜0.7:0.3〜0.7:0〜0.2であり、
前記支持体と前記インク受容層との間に中間層を有し、
前記中間層の厚みが0.3μm以上であり、
前記中間層がポリオレフィン系樹脂を20質量%以上含むことを特徴とするインクジェット用記録シート。
【請求項2】
前記インク受容層に含まれる架橋剤が、樹脂成分に対して3〜30質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用記録シート。
【請求項3】
前記中間層の弾性率が、500MPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット用記録シート。
【請求項4】
前記中間層は、架橋剤を含み、前記架橋剤は、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、およびメラミン系化合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット用記録シート。
【請求項5】
前記中間層がアクリル樹脂を含むことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載のインクジェット用記録シート。
【請求項6】
前記中間層の厚みが、0.3〜5μmである請求項のいずれか1項に記載のインクジェット用記録シート。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット用記録シート上に、インク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程と、
吐出された前記インク組成物に放射線を照射して、前記インク組成物を硬化させる工程と、を含む印刷物の製造方法。
【請求項8】
前記インク組成物が、放射線硬化型インク組成物である、請求項に記載の印刷物の製造方法。
【請求項9】
前記インク組成物が、無溶剤系の放射線硬化型インク組成物である、請求項またはに記載の印刷物の製造方法。
【請求項10】
前記インクジェット記録装置が、ワイドフォーマットインクジェットプリンターシステムを用いる、請求項のいずれか1項に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用記録シート、印刷物、および印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インク吐出口からインク組成物を液滴で吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、被記録媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンターに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び、熱エネルギーによるインク組成物の沸騰現象を利用しインク組成物を液滴吐出する熱インクジェット方式は、高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0003】
最近では、家庭用又はオフィス用の写真印刷や文書印刷に留まらず、インクジェットプリンタを用いた商業用印刷機器や産業用印刷機器の開発が行われるようになってきた。特に、ショーウィンドウ、駅通路、更に、ビルなどの壁に貼り付ける大判の広告の印刷に適した、インク着滴直後にUV照射を行うワイドフォーマットインクジェットプリンターの需要が急速に伸びつつある。このような広告は、長期に渡り初期の発色濃度の維持が求められる。
【0004】
ワイドフォーマットインクジェットプリンタに使用されるインクは、紫外線などの放射線で硬化する放射線硬化型インクを用いるのが一般的である。インクは、有機溶媒を含む非水性インクと有機溶媒を含まない無溶剤型インクとがある。有機溶剤は、記録シート上のインク受容層を形成する樹脂を溶解させるため、インクが染みこみやすく、インクの接着性が得られやすかった。
しかし、有機溶剤を揮発させる工程が必要になる上、有機溶剤(VOC)を取り扱う作業環境上の問題から、無溶剤型の放射線硬化型インクの使用が求められている。無溶剤型の放射線硬化型インクは、インク受容層を溶解させないためインクが染みこみにくい。さらに、放射線硬化型インクと記録媒体との間の接着性の向上が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1では、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ポリエステルウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂からなる記録層により、UV硬化型インクに対する接着を向上させる方法が提案されている。特許文献2では、水性ポリウレタン、多孔質顔料、塩化マグネシウムからなるインク受容層を形成し、ワイドフォーマットインクジェットプリンター、顔料(UV)インクに対する印刷性を向上させる方法が提案されている。また、特許文献3では、ウレタン/アクリルのブレンド、あるいは2種類以上のウレタンのブレンドで形成されるインク受容層を形成し、有機溶剤を含む非水性インクに対する印刷適性を向上させている方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−232738号公報
【特許文献2】特開2002−11942号公報
【特許文献3】特開2010−47015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、ワイドフォーマットインクジェットプリンターにおいては、優れた接着性が得られず、印画後の経時における接着性も不十分であるという問題がある。また、特許文献2に記載されているエポキシ化合物や、特許文献3に記載されているメラミン化合物を架橋剤として用いてインク受領層を形成する方法を本発明者が検討したところ、印刷直後のインク接着性および経時後のインク接着性が良好でないということがわかった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、優れたインク接着性を示すとともに、特に無溶剤型の放射線硬化型インクを使用したワイドフォーマットインクジェットプリンターで印刷した時の、印刷直後のインク接着性や経時後のインク接着性が良好なインクジェット用記録シート、印刷物、および印刷物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、インクジェット用記録シートにおけるインク受容層を、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂と、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物の少なくともいずれかの架橋剤とを含む構成とすることで、インクの染み込み性を向上させるというメカニズムによりインク接着性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
具体的には、以下の解決手段<1>により、好ましくは、<2>〜<12>により、上記課題は解決された。
<1> 支持体と、支持体の少なくとも一方の面にインク受容層とを有し、
インク受容層が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂と、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物の少なくともいずれかの架橋剤とを含むことを特徴とするインクジェット用記録シート。
<2> インク受容層に含まれる架橋剤が、樹脂成分に対して3〜30質量%含有することを特徴とする<1>のインクジェット用記録シート。
<3> 支持体とインク受容層との間に中間層を有し、中間層は、厚みが0.1μm以上であり、且つポリオレフィン系樹脂を10質量%以上有することを特徴とする<1>または<2>のインクジェット用記録シート。
<4> 中間層の弾性率が、500MPa以下であることを特徴とする<3>のインクジェット用記録シート。
<5> 中間層は、架橋剤を含み、架橋剤は、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、およびメラミン系化合物から選択される少なくとも1種であることを特徴とする<3>または<4>のインクジェット用記録シート。
<6> 中間層がアクリル樹脂を含むことを特徴とする<3>〜<5>のいずれかのインクジェット用記録シート。
<7> 中間層の厚みが、0.3〜5μmである<3>〜<6>のいずれかのインクジェット用記録シート。
<8> <1>〜<7>のいずれかのインクジェット用記録シート上に、インク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程と、吐出された前記インク組成物に放射線を照射して、インク組成物を硬化させる工程と、を含む印刷物の製造方法。
<9> インク組成物が、放射線硬化型インク組成物である、<8>の印刷物の製造方法。
<10> インク組成物が、無溶剤系の放射線硬化型インク組成物である、<8>または<9>の印刷物の製造方法。
<11> インクジェット記録装置が、ワイドフォーマットインクジェットプリンターシステムを用いる、<8>〜<10>のいずれかの印刷物の製造方法。
<12> <8>〜<11>のいずれかの印刷物の製造方法により製造された印刷物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射線硬化型インクを使用したワイドフォーマットインクジェットプリンターで印刷した時の、印刷直後のインク接着性や経時後のインク接着性が良好なインクジェット用記録シート、印刷物、および印刷物の製造方法を提供可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のインクジェット用記録シートの一例を示す模式断面図である。
図2】本発明のインクジェット用記録シートの他の一例を示す模式断面図である。
図3】本発明の印刷物の一例を示す模式断面図である。
図4】本発明の印刷物の他の一例を示す模式断面図である。
図5】本発明のインクジェット用記録シートの形状変化の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0014】
インクジェット用記録シート:
本発明のインクジェット用記録シートは、支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面にインク受容層とを有し、前記インク受容層が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂と、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物の少なくともいずれかの架橋剤とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のインクジェット用記録シートは、図1に一例を示すように、支持体1と、支持体1の少なくとも一方の面にインク受容層2とを有し、図3に一例を示すように、インク受容層2上にインク組成物を吐出し、画像層4を形成する。また、図2に一例を示すように、支持体1とインク受容層2との間に中間層3を有していてもよい。
以下、各部材について説明する。
【0016】
<支持体>
支持体は、公知のものを使用することができる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0017】
中でも、支持体は、プラスチックフィルムであることが好ましく、主成分としてポリエステルを含むフィルムであることが好ましく、顔料や可塑剤等の添加剤が含まれていてもよい。ポリエステルは、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が用いられる。中でも、コストや機械的強度の観点から、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。主成分とは、支持体の50質量%以上含まれる成分のことをいう。
【0018】
また、支持体としての機械的強度向上の観点から、延伸処理が施されたものであることが好ましく、特に2軸延伸したものが好ましい。延伸倍率は特に限定されないが、好ましくは1.5倍以上7倍以下の範囲である。延伸倍率が1.5倍よりも小さいと機械的強度が不十分な場合があり、逆に7倍を超えると厚みの均一性に欠ける場合がある。延伸倍率は、より好ましくは2倍以上5倍以下の範囲である。特に好ましい延伸の方向及び倍率は、互いに直交する2方向にそれぞれ2倍以上5倍以下の範囲である。
【0019】
支持体の厚みは、例えば、30μm以上500μm以下の範囲で一定であり、より好ましくは50μm以上300μm以下の範囲で一定である。支持体の厚みが30μm未満であると、腰がなくなり取り扱いにくい場合がある。一方で、支持体の厚みが500μmを超えると、表示装置の小型化や軽量化が図りづらくなる他、コスト的にも不利である。
【0020】
また、支持体の一方面と他方面の少なくともいずれか一方がコロナ放電処理や真空グロー放電処理、火炎処理等の表面処理を施されたものを用いることが好ましい。支持体の一方面および/または他方面は、表面処理により親水化され、水性の各種塗布液の濡れ性を向上させることができる。さらに、カルボキシル基、ヒドロキシ基などの官能基を導入することができる。これにより、支持体の一方面とインク受容層、あるいは中間層との密着力をより高めることができる。
【0021】
<インク受容層>
インク受容層は、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上のバインダー樹脂と、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物の少なくともいずれかの架橋剤とを含む。また、必要に応じて、他の成分を有していてもよい。
【0022】
(バインダー樹脂)
インク受容層に含まれる樹脂は、バインダーとして機能し、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂から選択され、2種以上選択してもよい。
【0023】
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂とは主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリカルボン酸とポリオールの反応で得られる。ポリカルボン酸としては例えばフマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、スルホイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などがあり、ポリオールとしては例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどがある。ポリエステル樹脂およびその原料については、例えば、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(滝山栄一郎著、日刊工業新聞社、昭和63年発行)において記載されており、この記載も本発明に適用することができる。
またポリエステル樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシブチレート(PHB)系、ポリカプロラクトン(PCL)系、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート系、ポリブチレンサクシネート(PBS)系、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)系、ポリブチレンサクシネートカーボネート系、ポリエチレンテレフタレートサクシネート系、ポリブチレンアジペートテレフタレート系、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート系、ポリブチレンアジペートテレフタレート系、ポリエチレンサクシネート(PES)系、ポリグリコール酸(PGA)系、ポリ乳酸(PLA)系、脂肪族ポリエステルのカーボネート共重合体、脂肪族ポリエステルとポリアミドとの共重合体などが挙げられる。ポリエステル樹脂は、ファインテックスES650、ES2200(DIC(株)製)、バイロナールMD1245、MD1400、MD1480(東洋紡(株)製)、ペスレジンA−110、A−124GP、A−520、A−640(高松油脂(株)製)、プラスコートZ561、Z730、Z687、Z592(互応化学(株)製)の市販品としても入手可能である。
【0024】
[ポリウレタン系樹脂]
ポリウレタンは、主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI(トルエンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI(ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)等がある。ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール等がある。また、本発明のイソシアネートとしては、ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用することができる。以上に述べたポリイソシアネート、ポリオール、及び鎖延長処理については、例えば「ポリウレタンハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社、昭和62年発行)において記載されている。ポリウレタン系樹脂は、スーパーフレックス470、210、150HS、エラストロンH−3(第一工業製薬(株)製)、ハイドランAP−20、AP−40F、WLS−210(DIC(株)製)、タケラックW−6061、オレスターUD−350(三井化学(株)製)の市販品としても入手可能である。
【0025】
[アクリル系樹脂]
アクリル樹脂は、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。また、接着性をより向上させるために、ヒドロキシル基、アミノ基を含有することも可能である。炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。アクリル酸エステル共重合体であるジュリマーET−410(東亜合成化学(株)製)やEM−48D(ダイセル化学工業(株)製)が市販品として好ましく用いられる。
【0026】
インク受容層に含まれるバインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂のいずれかが含まれていればよく、他の樹脂を含んでいてもよい。
他の樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0027】
インク受容層に含まれるバインダー樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびアクリル樹脂の少なくともいずれかを含んでいればよく、これらのうち2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合の重量比率(ポリエステル樹脂の質量%:ポリウレタン樹脂の質量%:アクリル樹脂の質量%)としては、0.1〜0.9:0.1〜0.9:0〜0.3が好ましく、0.3〜0.7:0.3〜0.7:0〜0.2がより好ましく、0.4〜0.6:0.4〜0.6:0が特に好ましい。
【0028】
インク受容層に含まれるバインダー樹脂は、インク受容層に含まれる全固形分に対して67〜97質量%であることが好ましく、77〜97質量%であることがより好ましく、87〜97質量%であることが特に好ましい。樹脂が2種以上含む場合は、樹脂の合計量が上記範囲内であればよい。
【0029】
(架橋剤)
インク受容層は、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物の少なくともいずれかの架橋剤を含み、2種以上含んでいてもよい。
【0030】
[オキサゾリン系化合物]
オキサゾリン系化合物は、下記式(1)で示されるオキサゾリン基をもつ化合物である。
【0031】
【化1】
【0032】
オキサゾリン系化合物としては、オキサゾリン基を有する重合体、例えば、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体を、必要に応じその他の重合性不飽和単量体と公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)によって共重合させることにより得られる重合体を挙げることができる。オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等をモノマー単位として含むものが挙げることができる。なお、これらのうちの2種以上を併用してもよい。また、オキサゾリン系化合物は、例えば、エポクロスK−2020E、エポクロスK−2010E、エポクロスK−2020E、エポクロスK−2030E、エポクロスWS−300、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700等の市販品(日本触媒(株)製)としても入手可能である。
【0033】
[カルボジイミド系化合物]
カルボジイミド系化合物は、−N=C=N−で示される官能基をもつ化合物である。ポリカルボジイミドは、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成されるが、この合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能である。ただし、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。合成の原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が使用可能である。
具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられ、また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が使用される。また、カルボジイミド系化合物は、例えば、カルボジライトV−02−L2(日清紡(株)製)等の市販品としても入手可能である。
【0034】
架橋剤は、バインダー(樹脂)成分に対して3質量%以上30質量%以下の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは3質量%以上15質量%以下の範囲で添加することである。架橋剤を前記範囲で添加することで、支持体との接着力がより向上する。架橋剤は、バインダー(樹脂)成分に対して3質量%以上であると、インクのインク受容層への染み込みが良好となり、画像形成直後のインク接着性を高めやすい。架橋剤は、バインダー(樹脂)成分に対して30質量%以下であると、インク受容層の架橋反応が進行し過ぎず、インク受容層の硬度が高くなり過ぎないため、サーモ処理後のインク接着性を高めやすい。なお、添加量が30質量%を超えると、コストもかかりすぎてしまう。
【0035】
(その他)
インク受容層は、バインダー樹脂および架橋剤の他に、必要に応じて界面活性剤、滑り剤、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤、粒子、蒸留水等を含んでいてもよい。
【0036】
界面活性剤としては、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系、フッ素系、シリコーン系の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤については、例えば、「界面活性剤便覧」(西一郎、今井怡知一郎、笠井正蔵編、産業図書(株)、1960年発行)に記載されている。特にアニオン系、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0037】
市販のアニオン系界面活性剤としては、例えば、ラピゾールA−90、ラピゾールA−80、ラピゾールBW−30, 、ラピゾールB−90、ラピゾールC−70(商品名:日本油脂(株)製)、NIKKOL OTP−100(商品名:日光ケミカル(株)製)、コハクールON、コラクールL−40、フォスファノール702(東邦化学)、ビューライトA−5000、ビューライトSSS(三洋化成)等を挙げることができる。
【0038】
市販のノニオン系界面活性剤としては、例えば、ナロアクティーCL−95、HN−100(商品名:三洋化成工業(株)製)、リソレックスBW400(高級アルコール工業)、EMALEX ET−2020(日本エマルジョン株式会社)、ユニルーブ50MB−26、ノニオンIS−4(日油株式会社)等を挙げることができる。
【0039】
市販のフッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0040】
市販のカチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0041】
市販のシリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0042】
滑り剤としては、脂肪族ワックス等が好適に用いられる。
脂肪族ワックスの具体例としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックスを挙げることができる。この中でも、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが特に好ましい。これらは環境負荷の低減が可能であることおよび取扱のし易さから水分散体として用いることも好ましい。市販品としては例えばセロゾール524(中京油脂(株)製)などが挙げられる。
滑り剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0043】
粒子としては、有機または無機微粒子のいずれも使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のポリマー微粒子や、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の無機微粒子を用いることができる。市販品としては例えば、架橋PMMA粒子MR−2G(綜研化学(株)製)、シリカ粒子シーホスターKE−W10(日本触媒(株)製)等が挙げられる。
粒子は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0044】
防腐剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
【0045】
インク受容層の厚みは、例えば、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることが特に好ましい。
中間層を設けるときのインク受容層の厚みは、0.1〜1μmであることが好ましく、0.2〜0.6μmであることがより好ましい。
【0046】
<中間層>
本発明のインクジェット用記録シートは、支持体とインク受容層との間に中間層を有していてもよい。
【0047】
中間層は、支持体とインク受容層とを接着するものである。中間層の弾性率は、大きくとも500MPa、すなわち500MPa以下とすることが好ましい。中間層の弾性率は、より好ましくは10MPa以上500MPa以下の範囲、さらに好ましくは50MPa以上500MPa以下の範囲である。従来の中間層は弾性率が600MPa以上であるのに対し、中間層はこのように非常に低い弾性率をもつ。これにより、支持体やインク受容層が弾性変形する際に、中間層も支持体やインク受容層の形状の変化に追従するように非常にミクロなレベルで伸縮する。例えば、図5の二点破線(A)のように、インク受容層3が支持体1に押しつけられるように近づく方向に変形すると、中間層3は厚みTが小さくなるように縮む。また、変形したインク受容層2が図5の実線(B)のように形状が戻る際には、中間層3は元の厚み及び形状に戻る。このように中間層3は厚みを変化させ、形状を復元する性質をもつ。中間層3に伸縮性をもたせることで、インク受容層2の形状が変化しても、インク受容層2が支持体1から剥がれずに接着した状態が維持され、密着したままとなる。なお、インク受容層2と支持体1とが剥がれるとは、インク受容層2が中間層3から剥がれること、中間層3が内部から破壊すること、中間層3が支持体1から剥がれることの少なくともいずれかひとつを意味する。
【0048】
また、従来の中間層は破断伸度が5%未満であるところに対し、中間層3は、破断伸度が10%以上300%以下の範囲とすることが好ましい。これにより、中間層3は、インク受容層2が弾性変形しても、破断することなくより確実に大きく伸びる。
【0049】
(樹脂)
中間層は、ポリオレフィン系樹脂を少なくとも10質量%含むことが好ましい。10質量%とは、中間層の全質量からその全質量の5%以下を占める添加剤を除く質量を100とするときに、質量割合が少なくとも10、すなわち10以上であることを意味する。ポリオレフィン系樹脂を10質量%以上含むことにより、中間層は上記の弾性率をもつようになる。中間層は、ポリオレフィン系樹脂を10質量%以上90質量%以下の範囲で含むことが好ましく、20質量%以上80質量%以下の範囲で含むことがより好ましい。
【0050】
[ポリオレフィン系樹脂]
ポリオレフィン系樹脂は、ポリエステルとの接着力が弱いことが一般に知られており、従来、ポリエステルからなるインク受容層と支持体とを接着する中間層には主成分として用いられなかった。また、中間層にポリオレフィン系樹脂を用いることは、支持体やインク受容層にポリオレフィンが用いられている場合に限られていた。
しかし、本発明では、支持体と、インク受容層との間に有する中間層において、ポリオレフィンを用いる。このようにポリオレフィンを中間層の主成分とするにも関わらず、インク受容層と支持体とが剥がれないようにするために、中間層の厚みTは、少なくとも0.1μm、すなわち0.1μm以上としている。中間層の厚みが0.1μm以上よりも小さいと、インク受容層と支持体とが剥がれやすくなり、インク吐出量が多い高濃度印字部分では特に剥がれやすい。さらに上記の厚みとすることで、例えばクロスカット試験の際にインク受容層や支持体にクロスカット等で負荷としてかけられた応力が中間層で緩和される。中間層の厚みTは、0.1μmより大きく5.0μm以下の範囲であることが好ましく、0.3μmより大きく5.0μm以下の範囲であることがより好ましく、0.2μm以上4μm以下の範囲であることがさらに好ましい。中間層の厚みTは一定であることが好ましい。
また、中間層を有することで応力が分散されるので、インク受容層がインク組成物を十分に染み込んでいなくても、インク接着性を向上させることができる。
【0051】
さらに、高温高湿下で劣化しにくい樹脂を用いることにより、従来より評価される湿熱経時(例として85℃乾燥下や、65℃、相対湿度95%で100時間から500時間経過)した状態においても、上記の弾性率および破断伸度が維持される。ポリオレフィン系樹脂は、高温高湿下で劣化しにくい樹脂であるので、ポリオレフィン系樹脂を用いることにより、湿熱経時した状態でも上記の弾性率および破断伸度が維持される。
【0052】
ポリオレフィンは、エチレン、ブチレン、プロピレン等のアルケンを重合してなるポリマーであり、またかかる構造を有する共重合体でもよく、これらを総称してポリオレフィン系ポリマーと以下称する。このようなポリオレフィン系ポリマーは具体的には次のいずれかが好ましい。
・エチレン又はポリプロピレンと、アクリルモノマー又はメタクリルモノマーとからなる共重合体
・エチレン又はポリプロピレンと、カルボン酸(無水物を含む)とから成る共重合体
・エチレン又はポリプロピレンと、アクリルモノマー又はメタクリルモノマーと、カルボン酸(無水物を含む)とから成る共重合体
【0053】
ポリオレフィン系ポリマーを構成するアクリルモノマー又はメタクリルモノマーの具体例として好ましくはメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0054】
また、ポリオレフィン系ポリマーを構成するカルボン酸として好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数の種類を混合して用いてもよい。
【0055】
ポリオレフィン系ポリマー中のエチレン又はポリプロピレンは合計で80〜98mol%、より好ましくは85〜95mol%の範囲が好ましい。また、アクリルモノマー又はメタクリルモノマーは合計で0〜20mol%、より好ましくは3〜10mol%の範囲が好ましい。さらにカルボン酸は合計で0〜15mol%、より好ましくは1〜10mol%の範囲が好ましい。モノマー組成をこの範囲にすることで良好な接着性と耐久性を両立することができる。
【0056】
ポリオレフィン系ポリマーの分子量は2000〜200000程度が好ましい。ポリオレフィン系ポリマーは直鎖構造のものでも分岐構造のものでもよい。ポリオレフィン系ポリマーは水系のポリマー分散物(いわゆるラテックス)の形とすることが好ましい。ポリオレフィン系ポリマーについて水系のポリマー分散物を製造する方法については乳化による方法と、乳化分散による方法とがあるが、前者が好ましい。具体的な方法については例えば特許第3699935号明細書に記載の方法を参考にすることができる。
【0057】
ポリオレフィン系ポリマーは、水系のポリマーをラテックスの形態とする場合には、カルボキシル基、水酸基などの水親和性の官能基をもつものであることが好ましい。また、ポリオレフィン系ポリマーをラテックスの形態で使用する場合には、安定性を向上させるために界面活性剤(例:アニオン系やノニオン系界面活性剤)、ポリマー(例:ポリビニルアルコール)等の乳化安定剤を含有させてもよい。さらに、必要に応じてpH調整剤(例:アンモニア、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム等)、防腐剤(例:1,3,5−ヘキサヒドロ−(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール等)、増粘剤(例:ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース等)、造膜助剤(例:ブチルカルビトールアセテート等)等のラテックス添加剤として公知の化合物を添加してもよい。
【0058】
本発明で使用できるポリオレフィン系ポリマーの水系のラテックスは市販されているものもある。市販品の具体例としては、ボンダインHX−8210、HX−8290、TL−8030、LX−4110(以上、住友化学工業(株)製)、アローベースSA−1200、SB−1010、SE−1013N、SE−1200(以上、ユニチカ(株))、Nippol UFN1008(日本ゼオン社製)、等がある。
【0059】
[アクリル樹脂]
また、中間層は、アクリル樹脂を含むことが好ましい。アクリル樹脂は、ポリオレフィンと複合することにより中間層の破断伸度を大きくするためのものである。アクリル樹脂は、ポリオレフィンに対する質量割合が0%以上700%以下の範囲であることが好ましく、5%以上700%以下の範囲がより好ましく、30%以上300%以下の範囲がさらに好ましい。
アクリル樹脂は、インク受容層に含まれるアクリル樹脂と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
【0060】
[ポリエステル樹脂]
中間層は、ポリエステル樹脂を含んでいてもよい。ポリエステル樹脂は、インク受容層に含まれるポリエステル樹脂と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
【0061】
(架橋剤)
中間層は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤は、インク受容層と支持体との接着力をより高めるために用いる。架橋剤は、中間層を形成する際の架橋反応を起こすものであればよく、形成された後の中間層に架橋剤として残存していなくてもよい。すなわち、得られた本発明のインクジェット用記録シート中においては、架橋剤が他の分子を架橋した架橋構造の一部に組み込まれ、既に架橋剤としての反応や作用を終えたものになっていてよい。架橋剤により、中間層における分子同士や分子内での架橋点が増え、これにより、中間層の形状を復元する性質がより確実になったり、インク受容層及び支持体に対する中間層の接着力がより向上する。
【0062】
中間層に含ませる架橋剤としては、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物(C366)が好ましく、これらのうち複数種類が中間層中に含まれていてもよい。架橋剤としては、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物が特に好ましい。カルボジイミド系化合物およびオキサゾリン系化合物は、インク受容層に含ませる架橋剤と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、およびメラミン系化合物の詳細については、後述する。
架橋剤の添加量としては、1〜50質量%含むことが好ましく、3〜30質量%含むことがより好ましく、5〜25質量%含むことがさらに好ましい。
架橋剤の添加量が1質量%未満であると、ポリオレフィン系樹脂を架橋させることが不十分となる場合があり、50質量%を超えると、密着力の観点では特に弊害はないがコストがかかりすぎてしまう。
【0063】
[エポキシ系化合物]
エポキシ系化合物は、分子内にエポキシ基を有する化合物、およびエポキシ基が反応した結果得られる化合物である。分子内にエポキシ基を有する化合物としては、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。エポキシ基を有する水溶性モノマーの具体例としては、例えば、「デナコール−614B」(ソルビトールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量173、商品名、ナガセケムテックス社製)、「デナコール−EX−313」(グリセロールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量141、商品名、ナガセケムテックス社製)、「デナコール−EX−521」(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量168、商品名、ナガセケムテックス社製)、及び「デナコール−EX−830」(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量268、商品名、ナガセケムテックス社製)としても入手可能である。
【0064】
[イソシアネート系化合物]
イソシアネート系化合物は、−N=C=Oの部分構造を持つ化合物である。有機イソシアネート系化合物の例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネートが挙げられ、これらを混合して用いてもよい。具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられ、また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が用いられる。また、イソシアネート系化合物は、例えば、エラストロンH−3(第一工業製薬(株)製)、DP9C214(Baxenden社製)、タケネートXWD−HS30(三井化学(株)製)としても入手可能である。
【0065】
[メラミン系化合物]
メラミン系化合物は、分子内に2つ以上のメチロール基を有する化合物であり、本実施の形態ではこれらの化合物を特に制限なく利用できる。メラミン系化合物の例としては、ヘキサメチロールメラミンが挙げられる。また、市販のメラミン系化合物の例としては、ベッカミンPM−N、ベッカミンJ−101、ベッカミンM−3(DIC(株)製)が挙げられる。
【0066】
(その他)
中間層は、樹脂および架橋剤の他に、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、染料、蛍光増白剤、防腐剤、耐水化剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0067】
インクジェット用記録シートの製造方法:
本発明のインクジェット用記録シートは、その製造方法に特に制限なく作製することが可能であり、例えば、支持体上に、中間層形成用の塗布液と、インク受容層形成用の塗布液とを順に積層されるように逐次塗布あるいは同時重層塗布し、乾燥させて、中間層やインク受容層を形成する工程を設けた製造方法によって好適に作製することができ、必要に応じて、更に他の工程が設けられてもよい。
【0068】
塗布は、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター等により行なうことができる。また、複数の塗布液を乾燥工程を設けずに同時に塗布する同時重層塗布方法による場合は、例えば、スライドビードコーターやスライドカーテンコーター、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター等により行なうことができる。また、例えば、特開2005−14593号公報の段落番号0016〜0037に記載の「Wet−On−Wet法」(WOW法)により行なってもよい。
【0069】
インク受容層の形成に用いられる塗布液の塗布量としては、5〜20g/m2が好ましく、7〜10g/m2がより好ましい。
また、中間層の形成に用いられる塗布液の塗布量としては、5〜20g/m2が好ましく、7〜10g/m2がより好ましい。
【0070】
印刷物の製造方法:
本発明の印刷物の製造方法は、本発明のインクジェット用記録シート上に、インク組成物をインクジェット記録装置により吐出する工程と、吐出された前記インク組成物に紫外線を照射して、前記インク組成物を硬化させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0071】
本発明で使用するインク組成物は、公知のものであれば特に限定されないが、放射線硬化型インク組成物であることが好ましく、本発明のインクジェット用記録シートに吐出後、硬化させるために溶剤を含まない無溶剤系の放射線硬化型インク組成物であることが特に好ましい。
放射線とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線および電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。したがって、本発明では、紫外線硬化型のインク組成物が好ましい。
【0072】
放射線硬化型インク組成物としては、例えば、特開2010−47015号公報、特開平5−214280号公報などの記載を参酌することができ、その内容は本願明細書に取り込まれる。
無溶剤型放射線硬化型インク組成物としては、例えば、特開2004−131725公報、特開2009−299057公報などの記載を参酌することができ、その内容は本願明細書に取り込まれる。
【0073】
本発明の印刷物の製造方法は、上記工程を含むことにより、インクジェット用記録シート上において硬化したインク組成物により画像層が形成され、図3図4に一例を示すように印刷物が形成される。
【0074】
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性放射線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0075】
放射線硬化型インクのようなインクは、吐出されるインクを一定温度にすることが望ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断もしくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0076】
上記のインクジェット記録装置を用いて、インク組成物の吐出はインク組成物を好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明では、インク組成物として、25℃におけるインク粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インクで使用される水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、さらに好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0077】
次に、吐出されたインク組成物に放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程について説明する。
本発明のインクジェット用記録シート上に吐出されたインク組成物は、放射線を照射することによって硬化する。これは、インク組成物に含まれるラジカル重合開始剤が放射線の照射により分解して、ラジカルを発生し、そのラジカルによってラジカル重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物においてラジカル重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が放射線を吸収して励起状態となり、ラジカル重合開始剤と接触することによってラジカル重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0078】
ここで、使用される放射線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
【0079】
また、インク組成物は、低出力の放射線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
【0080】
放射線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、LED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット記録用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を放射線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。さらに一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた放射線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい放射線源はUV−LEDであり、特に好ましくは350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの被記録媒体上での最高照度は10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
【0081】
インク組成物は、このような放射線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、さらに好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明の製造方法に適用することができる。
【0082】
インクジェット記録装置を用いたインクジェット記録装置は、ワイドフォーマットインクジェットプリンターシステムを用いることが好ましく、ワイドフォーマットUVインクジェットプリンターシステムを用いることが好ましい。ワイドフォーマットインクジェットプリンターシステムとは、インクジェット記録装置からインク組成物を吐出したとほぼ同時に放射線を照射させて、吐出されたインク組成物を硬化させるシステムであり、短時間で大型の印刷物を作製することが可能となる。ワイドフォーマットプリンターは、一般的には24インチ(61cm)幅以上の印字が可能なプリンターとして定義されている。44インチ(111.7cm)〜64インチ(162.5cm)幅のプリンターが主流であるが、最大で197インチ(500cm)幅まで印字できるものもある。
ワイドフォーマットUVインクジェットプリンターシステムとしては、LuxelJet UV360GTW/XTWおよびUV550GTW/XTWシリーズ、Acuity LED 1600(いずれも富士フイルム株式会社製)、inca SP320/SP320e/SP320S/SP320W(Inca Digital Printers Limited製)などを用いることができる。
【0083】
本発明の印刷物の製造方法には、インク組成物を含むインクセットを好適に使用することができる。例えば、イエロー色のインク組成物に、シアン色のインク組成物、マゼンタ色のインク組成物、ブラック色の組成物を組み合わせてインクセットとして使用することが例示できる。インク組成物を使用してフルカラー画像を得るためには、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックよりなる4色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることが好ましい。また、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物群と、ライトシアン、ライトマゼンタのインク組成物群と、を組み合わせたインクセットであることがさらに好ましい。なお、「濃色インク組成物」とは、顔料の含有量がインク組成物全体の1重量%を超えているインク組成物を意味する。
なお、本発明の印刷物の製造方法にてカラー画像を得るためには、各色のインク組成物(インクセット)を用い、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。具体的には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインク組成物からなるインクセットを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で本発明のインクジェット用記録シート上に付与することが好ましい。さらに、ライトシアン、ライトマゼンタ色のインク組成物群と、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイト、イエローの濃色インク組成物群と、の計7色が少なくとも含まれるインクセットを使用する場合には、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で本発明のインクジェット用記録シート上に付与することが好ましい。
このように、明度の低いインクから順に重ねることにより、下部のインクまで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
【0084】
印刷物:
本発明の印刷物は、本発明の印刷物の製造方法によって記録されたことを特徴とする。本発明の印刷物は、本発明のインクジェット用記録シート上に画像層4が形成され、図3図4に一例を示す態様となる。本発明の印刷物は、接着性に優れ、高品質の印刷物となる。
画像層4の厚みは、1〜800μmが好ましく、100〜800μmがより好ましく、500〜750μmがさらに好ましい。
印刷物の幅は、特に制限はないがワイドフォーマットインクジェットプリンターシステムで記録されることが好ましく、0.3〜5mが好ましく、0.5〜4mがより好ましく、1〜3mが特に好ましい。なお、本発明のインクジェット用記録シートの好ましい幅も、上述の本発明の印刷物の好ましい幅と同様である。
本発明の印刷物を電飾用印刷物として用いる場合、本発明の印刷物は、画像層やインク受容層の反対側が視認側となるように設置されることが好ましい。即ち、本発明のインクジェット用記録シートのインク受容層上に形成された画像層側に光源を設け、本発明の印刷物を前記支持体側から視認することが好ましい。
印刷面とは反対側の支持体上には、各種機能層を付与することが出来る。例えば、WO09/001629に記載されている耐傷性層や特開平5−186534に記載されている帯電防止性能付きハードコート層、特開平1−46701に記載されている防眩層、特開2001−330708に記載されている反射防止層、さらには特開2011−146659に記載されている耐候性層等が挙げられる。また耐傷性や防眩性等を有する各種フィルムをラミネートすることもできる。印刷面の反対側に上記各種機能層を付与することにより、本発明の印刷物を支持体側から視認する際に特に好ましい形態とすることができる。
【0085】
本発明の印刷物は、電飾看板として用いることができる。電飾看板は、光源と、電飾用印刷物とを有し、電飾用印刷物は、透明性、耐候の優れた2種類のアクリル樹脂などの間に配置されることが好ましい。
本発明の印刷物は、視認側がマット層となるように配置、即ち光源側が易接着層となるように配置することが好ましい。
光源は、特に限定されず、例えば電球、蛍光灯、発光ダイオード(LED)、エレクトロルミネッセンスパネル(ELP)、1本又は複数の冷陰極管(CCFL)、熱陰極蛍光灯(HCFL)等いずれも用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例1〜7、11、12、14および15は参考例である。
【0087】
(実施例1)
Ti化合物を触媒として重縮合した固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載する)樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒーター温度が270〜300℃の設定温度の押し出し機内で溶融させた。溶融させたPETをダイ部より静電印加されたチルロール上に押し出して、帯状の非結晶ベースを得た。得られた非結晶ベースを長手方向に3.3倍に延伸した後、幅方向に対して3.8倍に延伸し、厚さ250μmのフィルム支持体を得た。
【0088】
支持体を搬送速度45m/分で搬送し、両面を955J/m2の条件でコロナ放電処理を行った後、下記の塗布液Aをバーコート法により片面に塗布した。そして、これを145℃で1分乾燥して、支持体の片面にインク受容層が設けられた記録シート(2.1m巾のロール巻き形態)を得た。インク受容層の厚みは、0.9μmであった。
【0089】
塗布液Aの組成は次の通りである。
(塗布液A)
ポリエステル樹脂水溶液 182.0質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 119.8質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 25.0質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 0.7質量部
(綜研化学(株)製 架橋PMMA粒子MR−2G 平均粒子径1μmの水分散物、固形分15%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Aの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0090】
各実施例および比較例では、インクとして、無溶剤型放射線硬化型インク(FUJIFILM Speciality Ink System Limited 製、製品番号 UVIJET KO 021 White、UVIJET KO 004 Black、UVIJET KO 215 Cyan 、UVIJET KO 867 Magenta、UVIJET KO 052 Yellow)を用いた。
印刷機として、「ワイドフォーマットUVインクジェットプレスLuxelJet UV550GTW、富士フイルム製」を使用し、ロールtoロール方式ファインアートモード(波長365〜405nm、印画スピード22m2/hr)でカラー画像を2回印刷することで、約2m巾x1.5mサイズの印刷物を得た。乾燥後の画像層の厚みは、500〜720μmであった。
【0091】
(実施例2)
実施例1の塗布液Aを、下記に示した塗布液Bに変更する以外は実施例1と同様にして、印刷物を得た。
塗布液Bの組成は次の通りである。
(塗布液B)
ポリエステル樹脂水溶液 196.2質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 129.1質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 7.5質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 0.7質量部
(綜研化学(株)製 架橋PMMA粒子MR−2G 平均粒子径1μmの水分散物、固形分15%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Bの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0092】
(実施例3)
実施例1の塗布液Aを、下記に示した塗布液Cに変更する以外は実施例1と同様にして、印刷物を得た。
塗布液Cの組成は次の通りである。
(塗布液C)
ポリエステル樹脂水溶液 141.6質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 93.2質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 75.0質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 0.7質量部
(綜研化学(株)製 架橋PMMA粒子MR−2G 平均粒子径1μmの水分散物、固形分15%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Cの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0093】
(実施例4)
実施例1の塗布液Aを、塗布液Dに変更する以外は実施例1と同様にして、印刷物を得た。
【0094】
塗布液Dの組成は次の通りである。
(塗布液D)
ポリエステル樹脂水溶液 161.7質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 106.5質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
アクリル樹脂水分散液 36.4質量部
(ダイセル化学工業(株)製 EM−48D 固形分27.5%)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 25.0質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 0.7質量部
(綜研化学(株)製 架橋PMMA粒子MR−2G 平均粒子径1μmの水分散物、固形分15%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Dの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0095】
(実施例5)
実施例1の塗布液Aを、塗布液Eに変更する以外は実施例1と同様にして、印刷物を得た。
【0096】
(塗布液E)
塗布液Eの組成は次の通りである。
ポリウレタン樹脂水分散液 186.4質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 75.0質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 0.7質量部
(綜研化学(株)製 架橋PMMA粒子MR−2G 平均粒子径1μmの水分散物、固形分15%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Eの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0097】
(実施例6)
実施例1の塗布液Aを、塗布液Fに変更する以外は実施例1と同様にして、印刷物を得た。
【0098】
塗布液Fの組成は次の通りである。
(塗布液F)
ポリエステル樹脂水溶液 182.0質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 119.8質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
架橋剤(カルボジイミド化合物) 25.0質量部
(日清紡(株)製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 0.7質量部
(綜研化学(株)製 架橋PMMA粒子MR−2G 平均粒子径1μmの水分散物、固形分15%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Fの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0099】
(実施例7)
Ti化合物を触媒として重縮合した固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載する)樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒーター温度が270〜300℃の設定温度の押し出し機内で溶融させた。溶融させたPETをダイ部より静電印加されたチルロール上に押し出して、帯状の非結晶ベースを得た。得られた非結晶ベースを長手方向に3.3倍に延伸した後、空気中でコロナ放電処理を施し、下記の塗布液Gをバーコート法により片面に塗布した。塗布された一軸延伸フィルムをクリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、90℃で乾燥後、引き続き連続的に100℃の加熱ゾーンで幅方向に対して3.8倍に延伸し、更に215℃の加熱ゾーンで熱処理を施し、厚さ250μmの記録シートを得た。インク受容層の厚みは、0.1μmであった。
【0100】
塗布液Gの組成は次の通りである。
(塗布液G)
ポリエステル樹脂水溶液 63.0質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 41.4質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 8.7質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤B 16.0質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 8.0質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 1.2質量部
(日本触媒(株)製 シリカ粒子シーホスターKE−W10 0.15μm、固形分15%)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Gの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0101】
実施例1と同様に、印刷機として「ワイドフォーマットUVインクジェットプレスLuxelJet UV550GTW、富士フイルム製」を使用し、ロールtoロール方式ファインアートモードでカラー画像を2回印刷することで、約2m巾x1.5mサイズの印刷物を得た。
【0102】
(実施例8)
Ti化合物を触媒として重縮合した固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載する)樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒーター温度が270〜300℃の設定温度の押し出し機内で溶融させた。溶融させたPETをダイ部より静電印加されたチルロール上に押し出して、帯状の非結晶ベースを得た。得られた非結晶ベースを長手方向に3.3倍に延伸した後、幅方向に対して3.8倍に延伸し、厚さ250μmのフィルム支持体を得た。
【0103】
支持体を搬送速度45m/分で搬送し、両面を955J/m2の条件でコロナ放電処理を行った後、下記の塗布液Hをバーコート法により片面に塗布した。そして、これを145℃で1分乾燥して、さらに両面を288J/m2の条件でコロナ放電処理を行った後、塗布液Iをバーコート法により片面に塗布した。そして、これを145℃で1分乾燥して、支持体の片面に中間層およびインク受容層が設けられた記録シートを得た。中間層、およびインク受容層の厚みは、各々0.45μmであった。
【0104】
塗布液Hの組成は次の通りである。
(塗布液H)
アクリル酸エステル共重合体 63.4質量部
(東亜合成化学(株)製 ジュリマーET−410 固形分30%)
ポリオレフィン 95.1質量部
(ユニチカ(株)製 アローベースSE−1013N 固形分:20質量%)
架橋剤(カルボジイミド化合物) 31.5質量部
(日清紡(株)製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)
界面活性剤A 16.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 6.9質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
ポリスチレンラテックス水分散液 1.2質量部
(日本ゼオン社製 Nippol UFN1008)
防腐剤 0.8質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Hの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0105】
(塗布液I)
塗布液Iの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水溶液 91.0質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 59.9質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 12.5質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Iの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0106】
実施例1と同様に、印刷機として「ワイドフォーマットUVインクジェットプレスLuxelJet UV550GTW、富士フイルム製」を使用し、ロールtoロール方式ファインアートモードでカラー画像を2回印刷することで、約2m巾x1.5mサイズの印刷物を得た。
【0107】
(実施例9)
実施例8の塗布液Hを、塗布液Jに変更する以外は実施例8と同様にして印刷物を得た。
【0108】
塗布液Jの組成は次の通りである。
(塗布液J)
アクリル酸エステル共重合体 8.5質量部
(東亜合成化学(株)製 ジュリマーET−410 固形分30%)
ポリオレフィン 228.3質量部
(ユニチカ(株)製 アローベースSE−1013N 固形分:20質量%)
架橋剤(カルボジイミド化合物) 6.3質量部
(日清紡(株)製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)
界面活性剤A 16.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 6.9質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
ポリスチレンラテックス水分散液 1.2質量部
(日本ゼオン社製 Nippol UFN1008 固形分20%)
防腐剤 0.8質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Jの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0109】
(実施例10)
実施例8の塗布液Hを、塗布液Kに変更する以外は実施例8と同様にして印刷物を得た。
【0110】
塗布液Kの組成は次の通りである。
(塗布液K)
ポリオレフィン 190.2質量部
(ユニチカ(株)製 アローベースSE−1013N 固形分:20質量%)
架橋剤(カルボジイミド化合物) 31.5 質量部
(日清紡(株)製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)
界面活性剤A 16.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 6.9質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
ポリスチレンラテックス水分散液 1.2質量部
(日本ゼオン社製 Nippol UFN1008 固形分20%)
防腐剤 0.8質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Kの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0111】
(実施例11)
実施例8の塗布液Hを、塗布液Lに変更する以外は実施例8と同様にして印刷物を得た。
【0112】
塗布液Lの組成は次の通りである。
(塗布液L)
アクリル酸エステル共重合体 109.9質量部
(東亜合成化学(株)製 ジュリマーET−410 固形分30%)
ポリオレフィン 25.3質量部
(ユニチカ(株)製 アローベースSE−1013N 固形分:20質量%)
架橋剤(カルボジイミド化合物) 31.5質量部
(日清紡(株)製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)
界面活性剤A 16.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 6.9質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
ポリスチレンラテックス水分散液 1.2質量部
(日本ゼオン社製 Nippol UFN1008 固形分20%)
防腐剤 0.8質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Lの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0113】
(実施例12)
実施例8で中間層の厚みを0.1μmとする以外は実施例8と同様にして印刷物を得た。
【0114】
(実施例13)
実施例8で中間層の厚みを3.0μmとする以外は実施例8と同様にして印刷物を得た。
【0115】
(実施例14)
実施例8の塗布液Hを、塗布液Mに変更する以外は実施例8と同様にして印刷物を得た。
【0116】
塗布液Mの組成は次の通りである。
(塗布液M)
アクリル酸エステル共重合体 126.8質量部
(東亜合成化学(株)製 ジュリマーET−410 固形分30%)
架橋剤(カルボジイミド化合物) 31.5質量部
(日清紡(株)製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)
界面活性剤A 16.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 6.9質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
ポリスチレンラテックス水分散液 1.2質量部
(日本ゼオン社製 Nippol UFN1008 固形分20%)
防腐剤 0.8質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Mの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0117】
(実施例15)
実施例8の塗布液Hを、塗布液Nに変更する以外は実施例8と同様にして印刷物を得た。
【0118】
塗布液Nの組成は次の通りである。
(塗布液N)
アクリル酸エステル共重合体 63.4質量部
(東亜合成化学(株)製 ジュリマーET−410 固形分30%)
ポリエステル水分散体 76.1質量部
(互応化学(株)製 プラスコートZ-687 固形分:25質量%)
架橋剤(カルボジイミド化合物) 31.5質量部
(日清紡(株)製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)
界面活性剤A 16.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 6.9質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
ポリスチレンラテックス水分散液 1.2質量部
(日本ゼオン社製 Nippol UFN1008 固形分20%)
防腐剤 0.8質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Nの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0119】
(比較例1)
実施例1の塗布液Aを、塗布液Oに変更する以外は実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0120】
塗布液Oの組成は次の通りである。
(塗布液O)
ポリエステル樹脂水溶液 202.2質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 133.1質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 0.7質量部
(綜研化学(株)製 架橋PMMA粒子MR−2G 平均粒子径1μmの水分散物、固形分15%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Oの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0121】
(比較例2)
実施例1の塗布液Aを、塗布液Pに変更する以外は実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0122】
塗布液Pの組成は次の通りである。
(塗布液P)
ポリエステル樹脂水溶液 182.0質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 119.8質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
架橋剤(メラミン化合物) 12.5質量部
(DIC(株)製 ベッカミンM−3 固形分80%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 0.7質量部
(綜研化学(株)製 架橋PMMA粒子MR−2G 平均粒子径1μmの水分散物、固形分15%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Pの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0123】
(比較例3)
実施例1の塗布液Aを、塗布液Qに変更する以外は実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0124】
塗布液Qの組成は次の通りである。
(塗布液Q)
ポリエステル樹脂水溶液 182.0質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ592 固形分25%)
ポリウレタン樹脂水分散液 119.8質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38%)
架橋剤(エポキシ化合物) 10.0質量部
(ナガセケムテックス(株)製 デナコールEX−521 固形分100%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 1.8質量部
(中京油脂(株)製 カルナバワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
粒子 0.7質量部
(綜研化学(株)製 架橋PMMA粒子MR−2G 平均粒子径1μmの水分散物、固形分15%)
防腐剤 0.7質量部
(大東化学(株)製、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Qの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0125】
(評価)
上記実施例1〜15、比較例1〜3の印刷物について、以下の評価を行った。
【0126】
[画像形成直後のインク接着性の評価]
カラー画像を印画した直後の印刷物上を片刃カミソリにて縦横それぞれ11本のキズを付け100個の升目を形成した後に、粘着テープ(3M社製600)を貼り付けた。そしてテープの上を消しゴムで擦って完全に付着させた後、水平面に対して90度方向に剥離させ、剥離した升目の数を求めることでインクとの接着強度の強さを下記A〜Eの5段階で以下のように評価した。
A:剥がれなしの場合
B:剥離した升目の数が1以上5未満の場合
C:剥離した升目の数が5以上15未満の場合
D:剥離した升目の数が15以上30未満の場合
E:剥離した升目の数が30以上の場合
なお、上記A〜Cは製品上合格のレベルであり、D〜Eは不合格のレベルである。
【0127】
[サーモ処理後のインク接着性の評価]
カラー画像を印画した印刷物を60℃、相対湿度90%環境下に240時間放置するサーモ処理を実施した。サーモ処理後に接着性の評価を実施した。サーモ処理後の接着性の評価基準は、下記A〜Eの5段階で以下のように評価した。
A:剥がれなしの場合
B:剥離した升目の数が1以上5未満の場合
C:剥離した升目の数が5以上15未満の場合
D:剥離した升目の数が15以上30未満の場合
E:剥離した升目の数が30以上の場合
なお、上記A〜Cは製品上合格のレベルであり、D〜Eは不合格のレベルである。
【0128】
[インク受容層、中間層の厚み]
カラー画像を印画する前の記録シートにおいて、ミクロトーム(Leica社製RM2255)を使用し、断面切削を実施した。得られた断面を走査電子顕微鏡(HITACHI社製S−4700)にて観察することで、各サンプルのインク受容層および中間層の膜厚を測定した。
【0129】
[弾性率と破断伸度の測定(実施例8〜15)]
ATSM D882に基づき、以下のサンプル作製条件で、幅5mm、厚み20μmの各評価サンプルを作製した。この厚み20μmとは、中間層の弾性率及び破断伸度を測定する場合の評価サンプルの厚みである。
【0130】
中間層を形成するために用いた塗布液を、支持体の上に塗布し、中間層を形成した条件と同じ条件で膜を形成し、この膜を支持体から剥がすことにより中間層の評価サンプルを作製した。支持体としては、セラピールHP2(東レ(株)製)を用いた。評価はテンシロンRTM−50 オリエンテック(株)製を用いて、幅5mm、チャック間距離20mm、引っ張り速度5mm/min、室温(23℃ 相対湿度50%)にて引張り特性としての弾性率と破断伸度とを各評価サンプルについて求めた。
【0131】
また、表1において、中間層の「ポリオレフィン」「アクリル」「ポリエステル」「架橋剤」欄の数値は、中間層を構成する全固形量から添加剤を除いた質量を100とするときに、各成分の固形質量を示す。
また、インク受容層の「ポリエステル」「ポリウレタン」「アクリル」「オキサゾリン」「カルボジイミド」「メラミン」「エポキシ」欄の数値は、受容層を構成する全固形量から添加剤を除いた質量を100とするときに、各成分の固形質量を示す。
【0132】
【表1】
【0133】
表から、インク受容層が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびアクリル系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂と、オキサゾリン系化合物およびカルボジイミド系化合物の少なくともいずれかの架橋剤とを含む実施例1〜15は、画像形成直後およびサーモ処理後もインク接着性に優れることがわかった。一方、架橋剤としてオキサゾリン系化合物またはカルボジイミド系化合物を用いていない比較例1〜3は、実施例1〜15よりも画像形成直後およびサーモ処理後のインク接着性が劣ることがわかった。
【符号の説明】
【0134】
1 支持体
2 インク受容層
3 中間層
4 画像層
A 二点破線
B 実線
図1
図2
図3
図4
図5