(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997697
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物及びそれを使用した硬化体
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20160915BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20160915BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
C08L63/00
C08K3/08
C08K5/1515
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-532594(P2013-532594)
(86)(22)【出願日】2012年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2012072441
(87)【国際公開番号】WO2013035685
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年7月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-193136(P2011-193136)
(32)【優先日】2011年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100125793
【弁理士】
【氏名又は名称】川田 秀美
(72)【発明者】
【氏名】水村 宜司
(72)【発明者】
【氏名】山口 喬
(72)【発明者】
【氏名】長柄 陽子
【審査官】
岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−181482(JP,A)
【文献】
特開2010−278324(JP,A)
【文献】
特開2003−119248(JP,A)
【文献】
特開2007−270130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00−63/10
C08K 3/00−5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物、
(C)フェノール樹脂系硬化剤、
(D)ラジカル重合開始剤、並びに
(E)導電性粒子
を含有することを特徴とする導電性樹脂組成物であって、
前記(B)成分が、ビスフェノール型エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート化合物、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレート化合物、グリシジルアクリレート、及び4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つであり、
導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数が7〜28である、導電性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに(F)(メタ)アクリレート化合物を含有する、請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数及び(F)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数の合計が8〜36である、請求項2記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(G)アミン系硬化触媒を含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分が、液状エポキシ樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレート化合物及び/又はビスフェノール型エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート化合物である、請求項1〜5のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物をBステージ化し、硬化させて得られる、硬化体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載の導電性樹脂組成物を、70〜110℃の温度でBステージ化した後、130〜250℃で硬化させて硬化体を得る、硬化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物及びそれを使用した硬化体に関する。特に、本発明は、熱により、Bステージ化(見かけ上は硬化した半硬化状態)にすることができ、熱により硬化させることができる導電性樹脂組成物及びそれを使用した硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気技術の進歩に伴い、衝突防止センサー、加速度センサー等の各種センサー類、半導体集積回路類等の電気機器の分野において、小型化、軽量化、高機能化が求められている。近年の小型化、軽量化、高機能化の要求に伴い、複雑かつ微細なセンサー類や半導体素子類を正確に製造するために、導電性樹脂組成物を印刷法によって供給・塗布した後、半硬化状態(いわゆるBステージ化)して取り扱い性を向上し、その後に硬化(いわゆるCステージ化)させて、他の電子部品を接着する際に、優れた接着強度を有する導電性樹脂組成物の要求が高まっている。
【0003】
このようなBステージ化が可能な導電性樹脂組成物として、導電性樹脂組成物中に溶剤を含み、溶剤を留去させてBステージ化するタイプの導電性樹脂組成物(特許文献1、2)、光照射等によりBステージ化するタイプの導電性樹脂組成物(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−64331号公報
【特許文献2】特開2007−238942号公報
【特許文献3】特開2007−270130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3の導電性樹脂組成物のように、比較的低温度で溶剤を留去させてBステージ化(半硬化)させる場合や、導電性樹脂組成物を乾燥させてBステージ化(半硬化)させる場合は、十分なタックフリーを実現しつつ、他の部品の仮接着が可能となる十分な感圧タック性が実現できない。ここでタックフリーとは、導電性樹脂組成物が流動性を失った状態でありながら、人の指で触ってもベトつかず、触った指に材料が付着しない状態のことをいう。また、比較的低温度で溶剤を留去させる場合には、環境への負荷を軽減するために揮発等によって留去した溶剤を回収する装置が必要となり、設備コストが増大する。
【0006】
特許文献3の導電性樹脂組成物のように、導電性樹脂組成物中に光開始剤を含み、光照射によってBステージ化(半硬化)させる場合には、光照射するための装置が必要となり、やはり設備コストが増大する。
【0007】
本発明は、溶剤の留去や光照射を行うことなく、設備コストの増大を抑制して、比較的低温度で十分なタックフリー及び感圧タック性を有するようにBステージ化(半硬化)することができ、その後に硬化(Cステージ化)させて、低い比抵抗値を維持しつつ、十分な接着強度を有する硬化体を得ることができる導電性樹脂組成物及びそれを使用した硬化体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、(A)エポキシ樹脂、(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物、(C)フェノール樹脂系硬化剤、(D)ラジカル重合開始剤、並びに(E)導電性粒子を含有する導電性樹脂組成物を用いることによって、溶剤の留去や光照射を行うことなく、比較的低温度でBステージ化(半硬化)することができ、その後に硬化(Cステージ化)させた際に十分な接着強度が得られることを見出した。
【0009】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物、(C)フェノール樹脂系硬化剤、(D)ラジカル重合開始剤、並びに(E)導電性粒子を含有する導電性樹脂組成物に関する。本発明の導電性樹脂組成物は、導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数が7〜28であることが好ましい。ここで導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数は、導電性樹脂組成物中に含まれる全てのグリシジル基のモル数をいう。
本発明は、さらに(F)(メタ)アクリレート化合物を含有する導電性樹脂組成物に関する。本発明の導電性樹脂組成物は、導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数及び(F)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数の合計が8〜36であることが好ましい。ここで(F)(メタ)アクリレート化合物は、(B)成分である(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基の両方を同時に有する化合物は含まない化合物を意味する。
本発明は、さらに(G)アミン系硬化触媒を含有する導電性樹脂組成物に関する。
また、本発明の導電性樹脂組成物は、(A)成分が、液状エポキシ樹脂であることが好ましく、(B)成分が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレート化合物及び/又はビスフェノール型エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0010】
本発明は、上記導電性樹脂組成物をBステージ化し、その後に硬化(Cステージ化)させて得られる、硬化体に関する。
【0011】
本発明は、上記導電性樹脂組成物を、70〜110℃の温度でBステージ化した後、130〜250℃で硬化させて硬化体を得る、硬化体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、比較的低温度で十分なタックフリーを有し、かつ部品を仮接着することができる感圧タック性を有するようにBステージ化(半硬化)することができ、その後に硬化(Cステージ化)させて低い比抵抗値を維持しつつ、十分な接着強度を有する硬化体が得られる導電性樹脂組成物及びそれを使用した硬化体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】導電性樹脂組成物を硬化させた硬化体の比抵抗値の測定方法を示す説明図である。
【
図2】導電性樹脂組成物を硬化させた硬化体の接着強度の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物、(C)フェノール樹脂系硬化剤、(D)ラジカル重合開始剤、並びに(E)導電性粒子を含有する導電性樹脂組成物である。
【0015】
本発明の導電性樹脂組成物は、第一段階の反応として、比較的低温度(例えば70〜110℃)で、導電性樹脂組成物中の(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物と、(D)ラジカル重合開始剤とを反応させることにより、十分なタックフリーを有し、かつ他の部品を仮接着することができる感圧タック性を有するようにBステージ化(半硬化)することができる。本発明によれば、溶剤を留去させて半硬化させる場合や乾燥により半硬化させる場合のように、十分なタックフリーを確保することができないということがなく、留去した溶剤を回収するための装置や光照射するための装置が必要ないので、設備コストの増大を十分に抑制することができる。
【0016】
さらに、本発明の導電性樹脂組成物は、第二段階の反応として、第一段階のBステージ化する反応温度よりも高温(例えば130〜250℃)で、導電性樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂と、(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物と、(C)フェノール系硬化剤とを反応させることにより、これらの樹脂を硬化(Cステージ化)させることができ、導電性粒子同士の接触性が良好となり、低い比抵抗値を維持したまま、優れた接着強度を有する硬化体を得ることができる。
【0017】
〔(A)エポキシ樹脂〕
本発明の導電性樹脂組成物に含まれる(A)エポキシ樹脂は、好ましくは液状エポキシ樹脂を用いることができる。ここで(A)エポキシ樹脂は、(B)成分である(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基の両方を同時に有する化合物を含まないエポキシ樹脂を意味する。
液状エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均分子量が約400以下のもの、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、3−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルネオデカン酸グリシジルエステルのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、p−tert―ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル、ポリテトラメチレンエーテルグリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−フェニルジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなエポキシド化合物等が例示される。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均分子量が約400以下のもの、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。液状エポキシ樹脂は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
導電性樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、導電性樹脂組成物の全体量100質量%に対して、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜12質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。ここで導電性樹脂組成物の全体量100質量%は、導電性樹脂組成物中に後述する(H)溶剤を含む場合には、(H)溶剤を含まない導電性樹脂組成物の全体量100質量%を意味する。導電性樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量が上記範囲内であると、第二段階の反応において、すなわち、硬化(Cステージ化)させる反応において、例えば130〜250℃で、(A)エポキシ樹脂と(C)フェノール系樹脂硬化剤をイオン重合反応させるとともに、(B)成分のグリシジル基と(C)成分のフェノール系樹脂硬化剤をイオン重合反応させて、導電性樹脂組成物を硬化(Cステージ化)させることによって、導電性樹脂組成物に含まれる(E)導電性粒子の接触性が良好となり、低い比抵抗値を維持したまま、優れた接着強度を有する硬化体を得ることができる。
【0019】
〔(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物〕
本発明の導電性樹脂組成物に含まれる(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物は、ビスフェノール型二官能エポキシ樹脂のグリシジル基の一方が(メタ)アクリル酸と反応することによって得られるビスフェノール型エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート化合物及び/又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の一部のグリシジル基と(メタ)アクリル酸と反応することによって得られるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレート化合物、グリシジルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。中でも、(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレート化合物及び/又はビスフェノール型エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート化合物が好ましい。(B)成分の化合物は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、(B)成分としては、(A)成分と(B)成分が予め混合されているものを用いてもよい。本明細書において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の一方又は両方を含む意味に用いる。また、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸の一方又は両方を含む意味に用い、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を含む意味に用いる。
【0020】
本発明の導電性樹脂組成物は、(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物を含有することによって、第一段階の反応、すなわち、Bステージ化(半硬化)させる反応として、比較的低温度(例えば70〜110℃)で、導電性樹脂組成物中の(B)成分の(メタ)アクリロイル基が(D)ラジカル重合開始剤によってラジカル重合反応することにより、導電性樹脂組成物を十分なタックフリー及び感圧タック性を有するように、見かけ上は硬化した半硬化状態、すなわち、Bステージ化状態にさせることができる。さらに、本発明の導電性樹脂組成物は、第二段階の反応、すなわち、硬化(Cステージ化)させる反応として、例えば130〜250℃で、導電性樹脂組成物を硬化(Cステージ化)させることによって、導電性粒子同士の接触性が良好となり、低い比抵抗値を維持したまま、優れた接着強度を得ることができる。
【0021】
(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物は、導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数が、好ましくは7〜28、より好ましくは8〜27、さらに好ましくは9〜26になるように導電性樹脂組成物中に含有させる。ここで導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数は、導電性組成物中に含まれる全てのグリシジル基のモル数をいう。導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数が7未満であると、第一段階の反応として、比較的低温度(例えば70〜110℃)で、十分なタックフリーを有し、かつ部品を仮接着することができる感圧タック性を有するように導電性樹脂組成物をBステージ化(半硬化)しにくくなる。一方、導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数が28を超えると、第一段階の反応として、ラジカル重合反応が進みすぎて、Bステージ化(半硬化)状態において、部品の仮接着が可能となる所望の感圧タック性が得られにくくなる。なお、導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数は下記式(1)によって算出し、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数は下記式(2)によって算出する。
導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数=導電性樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の質量(g)×(A)エポキシ樹脂1モル中のグリシジル基の数/(A)エポキシ樹脂1モルの質量(g)+導電性樹脂組成物中の(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物の質量(g)×(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物1モル中のグリシジル基の数/(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する1モルの質量(g)・・・(1)
(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数=導電性樹脂組成物中の(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する1モルの質量(g)×(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物1モル中の(メタ)アクリロイル基の数/(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物1モルの質量(g)・・・(2)
【0022】
〔(C)フェノール樹脂系硬化剤〕
本発明の導電性樹脂組成物に含まれる(C)フェノール樹脂系硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として通常用いられるフェノール樹脂初期縮合物であればよく、レゾール型でもノボラック型でもよい。(C)フェノール樹脂系硬化剤としては、ビスフェノール樹脂、アリルフェノールノボラック樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂等が挙げられる。(C)フェノール樹脂系硬化剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。中でも、o−アリルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノール樹脂が好ましい。
【0023】
導電性樹脂組成物中の(C)フェノール樹脂系硬化剤の含有量は、導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(C)フェノール樹脂系硬化剤の水酸(OH)基のモル数が、好ましくは0.25〜3.5、より好ましくは0.3〜3、さらに好ましくは0.4〜2.5である。ここで導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数とは、導電性樹脂組成物中に含まれる全てのグリシジル基のモル数をいう。(C)フェノール樹脂系硬化剤の含有量が上記範囲内であると、第二段階の反応において、例えば130〜250℃で、導電性樹脂組成物を硬化させることができ、低い比抵抗値を維持しつつ、優れた接着強度を有する硬化体を得ることができる。なお、(C)成分中の水酸(OH)基のモル数は、下記式(3)によって算出する。
(C)成分中の水酸(OH)基のモル数=導電性樹脂組成物中の(C)フェノール樹脂系硬化剤の質量(g)×(C)フェノール樹脂系硬化剤1モル中の水酸(OH)基の数/(C)フェノール樹脂系硬化剤1モルの質量(g)・・・(3)
【0024】
〔(D)ラジカル重合開始剤〕
導電性樹脂組成物中の(D)ラジカル重合開始剤は、特に制限されないが、過酸化物であることが好ましい。(D)ラジカル重合開始剤が過酸化物である場合には、分解温度が70〜110℃であるものが好ましい。(D)ラジカル重合開始剤である過酸化物としては、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサナート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,2−ジ(4,4−ジ−(ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0025】
導電性樹脂組成物中の(D)ラジカル重合開始剤の含有量は、導電性樹脂組成物中の(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物の含有量に対して、好ましくは0.5〜6質量%、より好ましくは1〜5質量%、さらに好ましくは2〜4質量%である。すなわち、導電性組成物中に含まれる(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物の量を100質量部に対して、(D)ラジカル重合開始剤の含有量が、好ましくは0.5〜6質量部、より好ましくは1〜5質量部、さらに好ましくは2〜4質量部であればよい。(D)ラジカル重合開始剤の含有量が、上記範囲内であると、第一段階の反応において、比較的低温度(例えば70〜110℃)で、十分なタックフリー及び感圧タック性を有するように導電性樹脂組成物をBステージ化(半硬化)することができる。導電性樹脂組成物中の(D)ラジカル重合開始剤の含有量は、導電性樹脂組成物の全体量100質量%に対して、好ましくは0.01〜0.1質量%、より好ましくは0.03〜0.08質量%、さらに好ましくは0.04〜0.07質量%である。ここで導電性樹脂組成物の全体量100質量%は、導電性樹脂組成物中に後述する(H)溶剤を含む場合には、(H)溶剤を含まない導電性樹脂組成物の全体量100質量%を意味する。
【0026】
〔(E)導電性粒子〕
導電性樹脂組成物中の(E)導電性粒子は、特に制限されないが、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)及びこれらの合金等の金属微粉末や金、銀、パラジウムでコーティングされた無機フィラーが挙げられ、好ましくは銀又は銀を含む合金である。これらの形状は、特に限定されず、球状、フレーク状(リン片状)等が挙げられる。導電性粒子は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。導電性粒子は、球状であっても、フレーク状であってもよいが、BET比表面積が、好ましくは0.2〜1.5m
2/g、より好ましくは0.3〜1.2m
2/gであり、タップ密度が、好ましくは1〜8g/cm
3、より好ましくは2〜6g/cm
3のものが好適に使用できる。
【0027】
導電性樹脂組成物中の(E)導電性粒子の含有量は、導電性樹脂組成物の全体量100質量%に対して、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは55〜90質量%、さらに好ましくは60〜85質量%である。ここで導電性樹脂組成物の全体量100質量%は、導電性樹脂組成物中に後述する(H)溶剤を含む場合には、(H)溶剤を含まない導電性樹脂組成物の全体量100質量%を意味する。導電性樹脂組成物中の(E)導電性粒子の含有量が上記範囲内であると、半硬化状態、すなわちBステージ化状態において、タックフリー及び感圧タック性を妨げることなく、硬化時及びその後に導電性粒子同士の接触性が良好となり、低い比抵抗値を維持することができる。
【0028】
〔(F)(メタ)アクリレート化合物〕
本発明の導電性樹脂組成物は、さらに(F)(メタ)アクリレート化合物を含有することが好ましい。導電性樹脂組成物は、さらに(F)(メタ)アクリレート化合物を含有することによって、第一段階の反応において、優れたタックフリーを有するように半硬化(Bステージ化)することができる。ここで(F)(メタ)アクリレート化合物は、(B)成分である(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基の両方を同時に有する化合物は含まない化合物を意味する。なお、(F)成分としては、(A)成分と(B)成分と(F)成分が予め混合されているものを用いてもよい。(F)(メタ)アクリレート化合物として、具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルリン酸エステル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチル−コハク酸、グリセリンジメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチル−フタル酸、γ−ブチロラクトンメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート、エトシキ化シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート又はそれらのアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステル、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
【0029】
(F)(メタ)アクリレート化合物は、導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数及び(F)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数の合計が、好ましくは8〜36、より好ましくは9〜35、さらに好ましくは10〜34になるように導電性樹脂組成物中に含有させる。ここで導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数は、導電性組成物中に含まれる全てのグリシジル基のモル数をいう。導電性樹脂組成物中のグリシジル基のモル数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数及び(F)成分の(メタ)アクリロイル基のモル数の合計が8未満であると、第一段階の反応として、比較的低温度(例えば70〜110℃)で、タックフリーを有するように導電性樹脂組成物をBステージ化(半硬化)することができない場合がある。一方、導電性樹脂組成物中のグリシジル基の数100に対して、(B)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数及び(F)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数の合計が36を超えると、第一段階の反応として、ラジカル重合反応が進みすぎて、Bステージ化(半硬化)状態において、部品の仮接着が可能となる所望の感圧タック性が得られにくくなる。なお、(F)成分中の(メタ)アクリロイル基のモル数は下記式(4)によって算出する。
(F)(メタ)アクリレート化合物中の(メタ)アクリロイル基のモル数=導電性樹脂組成物中の(F)(メタ)アクリレート化合物の質量(g)×(F)(メタ)アクリレート化合物1モル中の(メタ)アクリロイル基の数/(F)(メタ)アクリレート化合物1モルの質量(g)・・・(4)
【0030】
〔(G)アミン系硬化触媒〕
本発明の導電性樹脂組成物は、さらに(G)アミン系硬化触媒を含有することが好ましい。(G)アミン系硬化触媒は、反応開始温度が130℃を超えるものであることが好ましい。導電性樹脂組成物は、さらに(G)アミン系硬化触媒を含有することによって、第二段階の反応において、例えば130〜250℃で、導電性樹脂組成物を硬化させた状態、すなわち、Cステージ化状態にさせることができ、低い比抵抗値を維持したまま、優れた接着強度を有する硬化体を得ることができる。(G)アミン系硬化触媒としては、ジシアンジアミド;アジピン酸ヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド等のカルボン酸ヒドラジド;2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体が挙げられる。アミン系硬化触媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。中でも、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、ジシアンジアミド、アジピン酸ヒドラジドが好ましい。
【0031】
導電性樹脂組成物中の(G)アミン系硬化触媒の含有量は、導電性樹脂組成物中(A)成分と(C)成分の合計含有量に対して、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%、更には好ましくは2〜8質量%である。すなわち、導電性組成物中に含まれる(A)エポキシ樹脂と(C)フェノール樹脂系硬化剤の合計量を100質量部に対して、(G)アミン系硬化触媒の含有量が、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部、更に好ましくは2〜8質量部であればよい。(G)アミン系硬化触媒の含有量が上記範囲内であると、第二段階の反応において、例えば130〜250℃で、導電性樹脂組成物を硬化させることができ、低い比抵抗値を維持しつつ、優れた接着強度を有する硬化体を得ることができる。導電性樹脂組成物中の(G)アミン系硬化触媒の含有量は、導電性樹脂組成物の全体量100質量%に対して、好ましくは0.3〜1.5質量%、より好ましくは0.5〜1.2質量%、さらに好ましくは0.7〜1.0質量%である。ここで導電性樹脂組成物の全体量100質量%は、導電性樹脂組成物中に後述する(H)溶剤を含む場合には、(H)溶剤を含まない導電性樹脂組成物の全体量100質量%を意味する。
【0032】
〔(H)溶剤〕
本発明の導電性樹脂組成物は、さらに(H)溶剤を含有していてもよい。導電性樹脂組成物は、さらに(H)溶剤を含有することによって、基材等に対する導電性樹脂組成物の印刷法による塗布・供給性が良好となる。(H)溶剤としては、例えばジエチルジグリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、グルタル酸ジメチルなどの二塩基酸エステル類、ベンジルアルコール等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましい。
【0033】
導電性樹脂組成物中の(H)溶剤の含有量は、導電性樹脂組成物を印刷法によって均一に塗工・供給できる範囲であれば、特に限定されないが、導電性樹脂組成物の全体量100質量部に対して、(H)溶剤を0〜10質量部を含有することができる。ここで導電性樹脂組成物の全体量100質量部は、(H)溶剤を含まない導電性樹脂組成物の全体量100質量部を意味する。
【0034】
〔(I)シランカップリング剤〕
本発明の導電性樹脂組成物は、上記成分の他に、基材に対する濡れ性や接着性を改善させるために(I)シランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。導電性樹脂組成物中の(I)シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、導電性樹脂組成物の全体量100質量%に対して、好ましくは0.1〜1質量%、より好ましくは0.2〜0.8質量%である。ここで導電性樹脂組成物の全体量100質量%は、(H)溶剤を含まない導電性樹脂組成物の全体量100質量%を意味する。
【0035】
〔(J)スペーサー〕
本発明の導電性樹脂組成物は、上記成分の他に、基材に導電性樹脂組成物を塗布・供給した場合に、一定の膜厚を維持するための(J)スペーサーを含有してもよい。スペーサーは、直径10〜100μmの球状のものであることが好ましく、スペーサーの材料は特に制限されないが、例えばガラス製、アクリル樹脂製、シリカ製、スチレン・ビニルベンゼン共重合体製等のものが挙げられる。導電性樹脂組成物中の(J)スペーサーの含有量は、特に限定されないが、導電性樹脂組成物の全体量100質量%に対して、好ましくは0.1〜1質量%、より好ましくは0.2〜0.8質量%である。ここで導電性樹脂組成物の全体量100質量%は、(H)溶剤を含まない導電性樹脂組成物の全体量100質量%を意味する。
【0036】
本発明の導電性樹脂組成物は、上記成分の他に、巻き込んだ気泡を除去するための消泡剤、着色のための染料や顔料等、被着体への濡れ性を向上させるレべリング剤等を添加することができる。
【0037】
本発明の導電性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、各成分を所定の配合で、流星型攪拌機、ディソルバー、ビーズミル、ライカイ機、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等の混合機に投入し、混合して製造することができる。
【0038】
本発明の導電性樹脂組成物を用いた硬化体は、第一段階の反応として、70〜110℃の温度で導電性樹脂組成物をBステージ化(半硬化)した後、第二段階の反応として、130〜250℃に昇温して導電性樹脂組成物を硬化(Cステージ化)させて得られる硬化体であることが好ましい。導電性樹脂組成物は、第一段階の反応が終了し、第二段階の反応時に、80〜100℃の粘度が50,000Pa・s以下であることが好ましい。更に好ましくは20,000Pa・s以下である。第二段階の反応時のおける80〜100℃の粘度が好ましくは50,000Pa・s以下、更に好ましくは20,000以下であると、本硬化時の被着体への濡れ性が向上し、接着性が向上する。
【0039】
本発明の導電性樹脂組成物は、第一段階の反応として、70〜110℃でBステージ化(半硬化)した際に、タックフリーを実現することができるとともに、他の部品等を仮接着することができる感圧タック性に優れている。さらに、本発明の導電性樹脂組成物は、第二段階の反応として、130〜250℃で硬化(Cステージ化)させた際に、導電性粒子同士の接触性が良好となり、低い比抵抗値を維持したまま、優れた接着強度を有する硬化体を得ることができる。
【0040】
本発明の導電性樹脂組成物は、十分なタックフリーを実現することができるとともに、部品を仮接着することができる感圧タック性に優れた状態でBステージ化することができ、さらに、低い比抵抗値を維持したまま、優れた接着強度を有する硬化体を得ることができるので、半導体ウェハーのAuめっきの代替材料としてAgペーストをウェハーへ予め印刷し、Bステージ化させ、ダインシングを行い、リードフレームにボンディングするダイボンディング剤、各種センサー類のフィルム状アンテナを張り合わせる用途に用いることができる。その他、本発明の導電性樹脂組成物は、LIDやケーシング用の接着剤としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
表1に示す配合割合(表1中、各成分の数値は質量部を示す)で、各組成を25℃で3本ロールミルを用いて混合し、実施例1〜9及び比較例1〜4の導電性樹脂組成物を調製した。これらの導電性樹脂組成物について、70〜110℃でBステージ化(半硬化)した後の指触によるタック性及び感圧タック性を測定し、その後、130〜250℃で硬化(Cステージ化)させた後の比抵抗値及び接着強度を測定した。以下に測定方法を示す。また、結果を表1に示す。
【0043】
以下に、実施例及び比較例で用いた(A)〜(J)成分を示す。
(A)エポキシ樹脂
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量170
ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160
ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量190
1,6へキサンジオールジグリシジルエーテル、エポキシ当量120
(C)フェノール系硬化剤
ビスフェノールF、水酸基当量120
(D)ラジカル重合開始剤
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
(E)導電性粒子
フレーク状銀(Ag)粉、BET比表面積:0.5m
2/g、タップ(Tap)密度:3.7g/cm
3
球状銀(Ag)粉、BET比表面積:1.0m
2/g、タップ(Tap)密度:5.0g/cm
3
(F)エポキシ(メタ)アクリレート
ビスフェノールA型二官能エポキシのジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート当量210
(G)アミン系硬化触媒
2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール
2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール
(H)溶剤
ジエチレングリコールジエチルエーテル
(I)シランカップリング剤
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(オルガノシラン)
(J)スペーサー
スチレン・ビニルベンゼン共重合体製の直径50μmの球状スペーサー
【0044】
実施例において(A)エポキシ樹脂と(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物とを予め混合した混合物、並びに/又は、(A)エポキシ樹脂と(B)(メタ)アクリロイル基及びグリシジル基を有する化合物と(F)(メタ)アクリレート化合物とを予め混合した混合物を用いた。
(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(B)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の部分(メタ)アクリレート化合物の混合物、昭和高分子社製、商品名:SP1504Q、エポキシ当量305、(メタ)アクリレート当量305
(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂56質量%と(B)ビスフェノールA型モノ(メタ)アクリレート38質量%と(F)ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリル酸付加物(Dimethacrylate of bisphenol A diglycidyl ether)6質量%との混合物、エポキシ当量271、(メタ)アクリレート当量271
【0045】
表1に示す配合割合の導電性樹脂組成物について、Bステージ化(半硬化)した後、指触によるタック性、感圧タック性を以下のように測定した。
【0046】
[指触によるタック性]
たて76mm×よこ26mm×厚さ1.3mmのスライドガラスに、表1に示す配合割合の導電性樹脂組成物を120μmの厚さになるように孔版印刷を行い試験片を作製した。孔版は120μm厚さのものを使用した。試験片を90±5℃に保持した送風乾燥機を用いて20分間乾燥させた。Bステージ化した後の導電性樹脂組成物の部分を指で触り、指に導電性樹脂組成物が付着するか否かで評価した。指に導電性樹脂組成物が付着しない場合は「○(タックフリー)」とし、指に導電性樹脂組成物が付着した場合は「×(タックフリーではない)」とした。
【0047】
[感圧タック性]
たて76mm×よこ26mm×厚さ1.3mmのスライドガラスに、表1に示す配合割合の導電性樹脂組成物を120μmの厚さになるように孔版印刷を行い試験片を作製した。孔版は120μm厚さのものを使用した。試験片を90±5℃に保持した送風乾燥機を用いて20分間乾燥させた。この試験片をタック試験機(レスカ社製、商品名:タッキング試験機)を用いて、感圧タック性を測定した。タック力(N)は下記式にて算出した。4つのサンプルの平均値(n=4)を検査値とした。
タック力(N)=実測値(gf)×0.001×9.8
タック力の試験条件
Immersion Speed: 5 mm/min.
Test Speed: 600 mm/min.
Immersion: 250gf
Press Time: 3 sec.
Distance: 5mm
Probe Temp.: 常温
Hot Plate Temp.: 常温
【0048】
表1に示す配合割合の導電性樹脂組成物について、Bステージ化(半硬化)した後、硬化(Cステージ化)させて比抵抗値及び接着強度を以下のように測定した。
【0049】
[比抵抗値]
たて76mm×よこ26mm×厚さ1.3mmのスライドガラスに、
図1に示すように、長さ50mm×幅1mmのパターンで、表1に示す配合割合の導電性樹脂組成物を厚さ120μmとなるように孔版印刷して試験片を作製した(
図1(a)参照)。孔版は120μm厚さのフィルムを用いた。試験片を90±5℃に保持した送風乾燥機を用いて20分間乾燥し冷却して半硬化(Bステージ化)させた。その後、165±5℃に保持された送風乾燥機を用いて50分間、硬化(Cステージ化)させた。硬化後の導電性樹脂組成物の硬化体の両端面に抵抗値X(Ω)を、YHP社製、4261A LCRメーターを用いて測定した。硬化体の厚さZ(μm)を、表面粗さ形状測定機(東京精密社製、型番:サーフコム1500SD2)を用いて測定した。硬化体の厚さZ(μm)は、長さ10mm×幅1mmのパターンの両端から長さ10mmの部分をパターンの上方向から測定した(
図1(b)及び(c)参照、矢印の2箇所)。比抵抗値はρ(Ω・cm)を次式により算出した。5つのサンプルの平均値(n=5)を検査値とした。
ρ(Ω・cm)=(0.1/5.0)×X(Ω)×Z×10
−4(Ω・cm)
【0050】
[接着強度]
たて20mm×よこ20mm×厚さ1.6mmのアルミナ板1に、たて1.5mm×よこ1.5mmのパターンで、表1に示す配合割合の導電性樹脂組成物2を120μmの厚さとなるように孔版印刷して試験片を作製した。孔版は120μm厚さのフィルムを用いた。試験片を90±5℃に保持した送風乾燥機を用いて20分間乾燥し冷却して半硬化(Bステージ化)させた。その後、この試験片のパターン状に印刷された導電性樹脂組成物上に、たて1.5mm×よこ3.0mm×厚さ0.5mmのアルミナ板3を載置し、165±5℃に保持された送風乾燥機を用いて50分間硬化させた。硬化後の導電性樹脂組成物(硬化体)2と、たて1.5mm×よこ3.0mm×厚さ0.5mmのアルミナ板3の接着面を、MODEL−1605HTP型強度試験機(アイコーエンジニアリング社製)を用いて、
図2の太線矢印に示すように側面から突き、接着されたアルミナ板3が剥がれた時の測定値を接着強度(N/mm
2)とした。治具下降速度は12mm/分(細線矢印)で測定した。10つのサンプルの平均値(n=10)を検査値とした。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、実施例1〜9は、第一段階の反応として、90℃±5℃の温度でBステージ化(半硬化)した後にタックフリーが実現できており、感圧タック性も2(N)以上の部品を仮接着することができる良好な数値を示していた。また、実施例1〜9は、第二段階の反応として、165±5℃の温度で硬化した後の硬化体は、比抵抗値が5×10
−4〜30×10
−4(Ω・cm)であり低い比抵抗値を維持しつつ、接着強度も20N/mm
2以上と優れた数値を示していた。一方、比較例1〜3は、Bステージ化(半硬化)した後にタックフリーは実現できているものの、感圧タック性が0.1(N)又は0.2(N)と低く、実施例1〜9の1/10以下であった。また、比較例1〜3は、硬化後の比抵抗値の数値は大きいものの、接着強度が非常に低かった。比較例4は、Bステージ化(半硬化)後の感圧タック性は有するものの、指触によるタック性においてタックフリーを実現することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の導電性樹脂組成物は、比較的低温度で十分なタックフリーを実現することができるとともに、部品を仮接着することができる感圧タック性に優れた状態でBステージ化(半硬化)することができ、その後に硬化(Cステージ化)させて、低い比抵抗値を維持したまま、優れた接着強度を有する硬化体を得ることができるので、リードフレームにボンディングするダイボンディング剤、各種センサー類のフィルム状アンテナを張り合わせる用途に用いることができる。その他、本発明の導電性樹脂組成物は、LIDやケーシング用の接着剤としても好適に用いることができ、産業上有用である。
【0054】
[符号の説明]
1 アルミナ板
2 導電性樹脂組成物
3 アルミナ板