【実施例1】
【0034】
まず、実施例1について説明する。
図1は、実施例1による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図15に示した通信システムにおいて、無線基地局に設けられた無線通信装置の構成と移動局に設けられた無線通信装置の構成とは同一である。この無線通信装置1−1は、無線基地局に設けられているものとして説明する。
図1において、この無線通信装置1−1は、信号処理部2−1、送受信高周波部3−1及び送受信アンテナ4を備えている。信号処理部2−1は、A/D(Analog/Digital:アナログ/デジタル)変換部10、直交復調部11、フレーム同期検出部12、AFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)部13、PHY(PHYsical layer:物理層)ヘッダ復調・解析部14、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)復調部15、デマッピング部16、復号部17、受信データ保持部18、フレーム長・処理遅延検出部19、適応変調制御部20、送信タイミング算出部21、送信タイミング制御部22、送信データ保持部23、符号化部24、マッピング部25、OFDM変調部26、GI(Guard Interval:ガードインターバル)付加部27、TDDフレーム生成部28、直交変調部29及びD/A(Digital/Analog:デジタル/アナログ)変換部30を備えている。送受信高周波部3−1は、送受信切替部40、受信高周波部41及び送信高周波部42を備えている。
【0035】
ここで、送受信高周波部3−1から受信信号を入力してフレーム同期検出部12にてフレーム同期を検出するまでの処理を行う、信号処理部2−1のA/D変換部10、直交復調部11及びフレーム同期検出部12により、受信処理部が構成される。また、送信データに対し符号化を施してからD/A変換し、送信信号を送受信高周波部3−1に出力するまでの処理を行う、符号化部24からD/A変換部30までの送信系統により、送信処理部が構成される。後述する実施例2,3についても同様である。尚、
図1において、実線の矢印は送受信信号を示し、点線の矢印は制御信号等を示す。
【0036】
〔受信処理〕
まず、実施例1において、移動局から送信された信号を受信する処理について説明する。無線基地局の無線通信装置1−1は、送信処理を行っているときを除いて、基本的に信号受信の待ち受け状態である。
【0037】
図2は、TDDサブフレームの構成を示す図である。このTDDサブフレームは、移動局から送信される信号の構成例を示しており、複数のOFDMシンボルの先頭に既知信号であるプリアンブルが付加されており、このプリアンブルに加え、PHYヘッダ、PHYペイロード及びPHYトレーラにより構成される。
【0038】
図3は、
図2に示したTDDサブフレームの先頭に付加されたプリアンブル信号の波形を示す図である。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸はプリアンブル信号の振幅を示す。移動局から送信されるTDDサブフレームのプリアンブル信号は、
図3に示すように、所定周期にて規則的な振幅を有する時間波形になっている。
【0039】
図1に示す無線基地局の無線通信装置1−1において、送受信高周波部3−1は、TDDサブフレームに対し高周波の周波数変換を行うと共に、送受信アンテナ4を介したTDDサブフレームの送受信の切り替えを行う。送受信高周波部3−1の送受信切替部40は、送信を行っているときを除き、RFスイッチにより送受信アンテナ4と受信高周波部41とを接続して受信待ちの状態とし、送受信アンテナ4を介して、移動局から送信されたTDDサブフレームの信号(受信信号)を受信する。受信高周波部41は、送受信切替部40から受信信号を入力し、入力した受信信号の無線周波数を、デジタル信号処理が可能なIF(Intermediate Frequency:中間周波数)帯の信号に変換する。尚、受信高周波部41の電源は、後述する送信高周波部42と異なり、常にONの状態になっている。
【0040】
信号処理部2−1のA/D変換部10は、送受信高周波部3−1の受信高周波部41からIF信号を入力し、アナログのIF信号をデジタルのIF信号に変換する。直交復調部11は、A/D変換部10からデジタルのIF信号を入力し、デジタル直交復調を施す。フレーム同期検出部12は、直交復調部11からデジタル直交復調された信号(TDDサブフレームの信号)を入力し、TDDサブフレームの先頭を検出する。
【0041】
図4は、フレーム同期検出部12においてフレーム先頭を検出するための移動相関値を示す図である。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は移動相関値を示す。フレーム同期検出部12は、入力した信号(受信信号)と既知のプリアンブルとの間の移動相関処理を時間領域にて行い、
図4に示す移動相関値を算出する。そして、フレーム同期検出部12は、時間領域の移動相関値から相関ピークを検出し、検出した相関ピークの時間位置からTDDサブフレームの先頭を検出する。フレーム同期検出部12は、フレーム先頭を検出すると、TDDサブフレームの先頭の時間位置を示すフレーム同期検出タイミングパルスを生成し、検出した相関ピークの複素信号値をAFC部13に出力し、フレーム同期検出タイミングパルスを送信タイミング算出部21に出力する。
【0042】
図1に戻って、AFC部13は、フレーム同期検出部12から検出した相関ピークの複素信号値を入力し、周波数偏差に対応する複素信号値の位相情報を用いて移動局と無線基地局との間の周波数偏差を補正する。PHYヘッダ復調・解析部14は、AFC部13から周波数偏差が補正されたTDDサブフレームの信号を入力し、プリアンブルに続くPHYヘッダを復調する。そして、PHYヘッダ復調・解析部14は、復調後のPHYヘッダを解析して受信信号の信号形式(変調方式、符号化率等)を抽出し、受信信号の信号形式を示す符号化及び変調方式の情報をOFDM復調部15及び適応変調制御部20に出力する。また、PHYヘッダ復調・解析部14は、復調したPHYヘッダをフレーム長・処理遅延検出部19に出力する。
【0043】
OFDM復調部15は、AFC部13からTDDサブフレームの信号を入力すると共に、PHYヘッダ復調・解析部14から受信信号の符号化及び変調方式の情報を入力し、TDDサブフレームのPHYヘッダに続くPHYペイロードに格納されたデータを復調する。デマッピング部16は、OFDM復調部15から復調されたデータを入力し、デマッピングを行う。復号部17は、デマッピング部16からデマッピングされたデータを入力し、復号(誤り訂正)を行い、復号したデータを受信データとして受信データ保持部18に保持する。受信データ保持部18に保持された受信データは、上位層へ出力される。
【0044】
フレーム長・処理遅延検出部19は、PHYヘッダ復調・解析部14から復調されたPHYヘッダを入力すると共に、適応変調制御部20から、当該無線基地局の無線通信装置1−1から送信する次のデータの(次の送信信号の)符号化及び変調方式の情報を入力する。そして、フレーム長・処理遅延検出部19は、入力したPHYヘッダから受信フレーム長(受信サブフレーム長)を検出(抽出)し、入力した次の送信信号の符号化及び変調方式に基づいて、送信系統における処理遅延の時間を検出(設定)する。そして、フレーム長・処理遅延検出部19は、受信フレーム長及び送信系統における処理遅延の時間(送信信号の符号化・変調処理時間)を送信タイミング算出部21に出力する。例えば、送信信号の符号化・変調処理時間は、テーブルを用いて設定される。
【0045】
図5は、フレーム長・処理遅延検出部19に備えたテーブルの例を示す図である。このテーブルには、送信信号の符号化及び変調方式の種類と、遅延時間(送信信号の符号化・変調処理時間)とが対応付けて格納されている。送信系統の処理時間は、送信信号の符号化及び変調方式の種類によって異なり、各方式の組み合わせ毎の時間として事前に算出される。その算出結果が当該テーブルに格納されている。例えば、フレーム長・処理遅延検出部19は、
図5に示すテーブルを用いて、入力した次の送信信号の符号化及び変調方式に対応する遅延時間を、符号化・変調処理時間として設定する。尚、送信フレーム長(送信サブフレーム長)は予め設定され固定であるものとする。
【0046】
図1に戻って、適応変調制御部20は、PHYヘッダ復調・解析部14から受信信号の符号化及び変調方式の情報を入力し、この受信信号の符号化及び変調方式を、当該無線基地局の無線通信装置1−1が次に送信するデータの符号化及び変調方式に設定する。ここで、移動局から受信した受信信号の符号化及び変調方式の情報は、移動局が、過去に無線基地局から受信した信号の品質情報に基づいて決定したものであり、移動局は、無線基地局から受信した信号の品質情報に基づいて、最適な符号化及び変調方式を決定し、TDDサブフレームのPHYヘッダに当該符号化及び変調方式を格納して無線基地局へ送信する適応変調制御を行っているものとする。
【0047】
適応変調制御部20は、設定した次の送信信号の符号化及び変調方式の情報を、フレーム長・処理遅延検出部19、符号化部24、マッピング部25及びOFDM変調部26に出力する。これにより、適応変調制御部20は、送信系統の符号化部24、マッピング部25及びOFDM変調部26を制御することができる。
【0048】
尚、TDD方式を用いる場合は、移動局から無線基地局への上り回線と、無線基地局から移動局への下り回線との伝搬路が共通であるため、移動局から受信した信号の品質を無線基地局で観測するようにしてもよい。この場合、無線基地局に設けられた無線通信装置1−1の適応変調制御部20は、その観測した品質情報に基づいて、送信信号の符号化及び変調方式を決定する。
【0049】
送信タイミング算出部21は、フレーム同期検出部12からTDDサブフレームの先頭の時間位置を示すフレーム同期検出タイミングパルスを入力すると共に、フレーム長・処理遅延検出部19から受信フレーム長及び送信信号の符号化・変調処理時間を入力する。そして、送信タイミング算出部21は、受信フレーム長及び送信信号の符号化・変調処理時間等に基づいて、フレーム同期検出タイミングから送信タイミングまでの間の時間を示す送信タイミング調整時間を、後述する数式(1)を用いて算出し、フレーム同期検出タイミングパルス、送信タイミング調整時間及び送信信号の符号化・変調処理時間を送信タイミング制御部22に出力する。
【0050】
送信タイミング制御部22は、送信タイミング算出部21からフレーム同期検出タイミングパルス、送信タイミング調整時間及び送信信号の符号化・変調処理時間を入力し、フレーム同期検出タイミングパルスの時点から送信タイミング調整時間の経過後のタイミングにて、送信タイミング信号を生成し、生成した送信タイミング信号を送信データ保持部23に出力する。また、送信タイミング制御部22は、送信タイミング信号の時点から送信信号の符号化・変調処理時間の経過後のタイミングにて、切替タイミング信号を生成し、生成した切替タイミング信号を送受信切替部40及び送信高周波部42に出力する。この切替タイミング信号は、送受信高周波部3−1の送信高周波部42の電源をONし、送受信切替部40のRFスイッチを受信高周波部41から送信高周波部42へ切り替えるタイミングを示す信号であり、移動局から送信されたTDDサブフレームの受信が完了するタイミングを示す信号でもある。
【0051】
送信タイミング信号と切替タイミング信号とを出力するタイミングが異なるのは、送信のための符号化及び変調方式の処理を開始するタイミングと、送受信高周波部3−1の送信高周波部42の電源をONし、送受信切替部40のRFスイッチを受信高周波部41から送信高周波部42へ切り替えるタイミングとが異なるからである。これにより、送信信号がD/A変換部30にてD/A変換されると同時に、送信高周波部42の電源がONとなり、送受信切替部40において送受信アンテナ4と送信高周波部42とが接続される。そして、送信信号(TDDサブフレームの信号)は、無線信号として送受信アンテナ4から出力される。
【0052】
送信高周波部42が送受信切替部40及び送受信アンテナ4を介して送信信号を出力した後、送受信切替部40は、直ちに送受信アンテナ4と受信高周波部41とを接続し、送信高周波部42の電源がOFFになる。これにより、無線通信装置1−1は、移動局からの信号受信の待ち受け状態となる。
【0053】
〔送信処理〕
次に、実施例1において、無線基地局から信号を送信する処理について説明する。送信データ保持部23は、上位層から送信データを入力してバッファに保持し、送信タイミング制御部22から送信タイミング信号を入力すると、入力したタイミングにて、バッファから送信データを読み出して符号化部24に出力する。
【0054】
符号化部24は、適応変調制御部20から符号化及び変調方式の情報を入力すると共に、送信データ保持部23から送信データを入力し、入力した情報が示す符号化方式で送信データを符号化する。符号化された送信データは、移動局の復号部において誤り訂正処理が施される。マッピング部25は、適応変調制御部20から符号化及び変調方式の情報を入力すると共に、符号化部24から符号化されたデータを入力し、入力した情報が示す変調方式に基づいて、入力したデータの1ビットまたは複数ビットを1つのサブキャリアに割り当てるため、入力したデータを複素平面上の1つの信号点に割り当てる(マッピングする)。OFDM変調部26は、適応変調制御部20から符号化及び変調方式の情報を入力すると共に、マッピング部25からマッピングされたデータを入力し、入力した情報が示す変調方式に基づいて、入力したデータのサブキャリア毎の複素信号値をFFT演算により時間領域の信号に変換する。GI付加部27は、OFDM変調部26から時間領域の信号を入力し、入力した時間領域の信号にGIを付加する。TDDフレーム生成部28は、GI付加部27によりGIが付加された時間領域の信号を入力し、複数のOFDMシンボルを1つのTDDサブフレームとして生成する。直交変調部29は、TDDフレーム生成部28により生成されたTDDサブフレームをデジタル直交変調する。D/A変換部30は、直交変調部29によりデジタル直交変調されたデジタルの信号をアナログの信号に変換する。D/A変換部30により変換された送信信号は、送受信高周波部3−1の送信高周波部42に出力される。
【0055】
送信高周波部42及び送受信切替部40は、送信タイミング制御部22から切替タイミング信号を入力し、その入力した時点にて、それぞれ送信高周波部42の電源をONし、送受信切替部40においてRFスイッチにより送受信アンテナ4と送信高周波部42とを接続する。送信高周波部42は、D/A変換部30から送信信号を入力し、入力した送信信号のIF帯を無線周波数帯に変換して増幅し、送受信切替部40及び送受信アンテナ4を介して、送信信号(TDDサブフレームの信号)として出力する。その後、送受信切替部40は、送受信アンテナ4と受信高周波部41とを接続し、送信高周波部42の電源がOFFになり、無線通信装置1−1は、移動局からの信号受信の待ち受け状態となる。
【0056】
〔送信タイミング制御〕
次に、送信タイミング制御について説明する。
図6は、送信タイミング制御の処理を示すフローチャートであり、
図7は、送信タイミング制御を説明するためのタイミングチャートである。
図6のフローチャートには、送信タイミング制御のための主な処理のみが示されている。
【0057】
図6において、無線通信装置1−1は、移動局からTDDサブフレームを受信し(ステップS601)、フレーム同期検出部12は、TDDサブフレームのフレーム先頭を検出し、フレーム同期検出タイミングパルスを生成する(ステップS602)。
【0058】
図7において、MSの送信信号(a)は、移動局であるMSから送信されるTDDサブフレームであり、BSの受信信号(b)は、移動局から所定長離れた無線基地局であるBSの送受信アンテナ4を介して受信するTDDサブフレームである。伝搬遅延時間Δτ
1は、移動局が信号の送信を開始してから、無線基地局がその信号の受信を開始するまでの間の時間である。つまり、無線基地局は、移動局が信号の送信を開始してから伝搬遅延時間Δτ
1経過後に、その信号の受信を開始する。伝搬遅延時間Δτ
1は、移動局と無線基地局との間の距離に依存する時間である。
【0059】
フレーム同期検出タイミングパルス(c)は、フレーム同期検出部12によりTDDサブフレームのフレーム先頭を検出したタイミングを示す信号である。処理遅延時間Δτ
2は、
図1に示した信号処理部2−1のA/D変換部10、直交復調部11及びフレーム同期検出部12における処理時間である。フレーム同期検出部12がフレーム先頭を検出するのは、信号を受信したときから同期検出までの処理遅延時間Δτ
2だけ経過後のタイミングである。尚、処理遅延時間Δτ
2は、無線通信装置1−1の回路設計の段階で把握することが可能である。
【0060】
図6に戻って、PHYヘッダ復調・解析部14は、TDDサブフレームのPHYヘッダから、受信信号の符号化及び変調方式を抽出し(ステップS603)、適応変調制御部20は、受信信号の符号化及び変調方式を、送信信号の符号化及び変調方式に設定する(ステップS604)。そして、フレーム長・処理遅延検出部19は、TDDサブフレームのPHYヘッダから受信フレーム長を抽出し、送信信号の符号化及び変調方式から送信系統の遅延時間(送信信号の符号化・変調処理時間)を設定する(ステップS605)。そして、送信タイミング算出部21は、後述する数式(1)を用いて、送信タイミング調整時間を算出する(ステップS606)。そして、送信タイミング制御部22は、フレーム同期検出タイミングパルスの時点から送信タイミング調整時間の経過後に、送信タイミング信号を生成して出力すると共に、送信タイミング信号の時点から送信信号の符号化・変調処理時間の経過後に、切替タイミング信号を生成して出力する(ステップS607)。
【0061】
図7に戻って、BSの送信タイミング信号(変調前)(d)は、送信タイミング制御部22により生成される信号であり、送信のための符号化及び変調方式の処理を開始するタイミングを示す信号である。送信タイミング調整時間Δτ
3は、フレーム同期検出タイミングから当該送信タイミングまでの間の時間であり、後述する送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5も考慮して、送信タイミング算出部21により、後述する(f)のタイミングで送信信号が送受信アンテナ4から送信されるように、後述する数式(1)を用いて事前に算出される。
【0062】
切替タイミング信号(e)は、送信タイミング制御部22により生成される信号であり、送信のための符号化及び変調方式の処理を開始してから、
図1に示した信号処理部2−1の符号化部24からD/A変換部30までの送信系統による処理遅延の時間経過後の時点のタイミングを示す信号である。言い換えると、符号化部24からD/A変換部30までの送信系統にて生成した送信信号を、送受信高周波部3−1の送信高周波部42にて周波数変換及び増幅した後、送受信アンテナ4から出力するために、送信高周波部42の電源をONし、送受信切替部40のRFスイッチを切り替えるための指示のタイミングを示す信号である。これは、移動局からの信号の受信完了とほぼ同じタイミングである。ここで、送信高周波部42の電源のON/OFFは、無線基地局で信号を受信している間に、送信信号が増幅されて、受信側の受信高周波部41の回路へ回り込んで干渉することを防ぐことを目的とするものであり、主に、送信高周波部42に備えた図示しない電力増幅器を起動し停止させる。
【0063】
符号化・変調処理時間Δτ
4は、符号化部24からD/A変換部30までの送信系統にて符号化及び変調方式の処理のために要する時間であり、無線通信装置1−1の回路設計の段階で把握することが可能である。また、後述するBSの送信信号(f)のタイミングにて、送受信アンテナ4から送信信号が出力されるように、符号化部24からD/A変換部30までの送信系統にて先行して符号化・変調処理が開始される。
【0064】
図6に戻って、送信系統の符号化部24〜D/A変換部30は、送信タイミング信号の時点にて、送信信号の符号化及び変調方式に従って処理を行う(ステップS608)。そして、切替タイミング信号の時点にて、送信高周波部42は電源をONし、送受信切替部40は送受信アンテナ4と送信高周波部42とを接続する(ステップS609)。そして、無線通信装置1−1は、無線基地局からTDDサブフレームを送信する(ステップS610)。
【0065】
図7に戻って、BSの送信信号(f)は、無線基地局であるBSの送受信アンテナ4を介して送信されるTDDサブフレームである。実際の無線通信装置1−1では、送信高周波部42の電源ONから安定動作するまでの起動時間と、送受信切替部40のRFスイッチを、送受信アンテナ4において受信アンテナから送信アンテナに切り替えるための遷移時間は有限である。両者の時間で大きい方を送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5とすると、信号受信完了の時点から送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5だけ経過したタイミングにて、BSの送信信号(f)が送受信アンテナ4を介して出力される。
【0066】
MSの受信信号(g)は、無線基地局から所定長離れた移動局であるMSにて受信するTDDサブフレームである。伝搬遅延時間Δτ
1は、無線基地局が信号の送信を開始してから、移動局がその信号の受信を開始するまでの間の時間であり、前述した伝搬遅延時間Δτ
1と同じ時間である。つまり、移動局は、無線基地局が信号の送信を開始してから伝搬遅延時間Δτ
1経過後に、その信号の受信を開始する。
【0067】
尚、移動局では、前述した無線基地局と同様の処理が行われ、再び移動局から無線基地局へ信号が送信され、上記処理が繰り返される。
【0068】
〔送信タイミング調整時間Δτ
3〕
前述のとおり、送信タイミング算出部21は、フレーム同期検出タイミングパルス、受信フレーム長及び送信信号の符号化・変調処理時間等に基づいて、送信のための符号化及び変調方式の処理を開始する最適な送信タイミングを求め、フレーム同期検出タイミングから送信処理を開始する送信タイミング信号を出力するまでの間の時間を示す送信タイミング調整時間Δτ
3を算出する。
【0069】
具体的には、以下の式により、送信タイミング調整時間Δτ
3を算出する。
(数1)
Δτ
3=T
UL−Δτ
2−Δτ
4+Δτ
5 ・・・(1)
ここで、T
ULは、移動局から無線基地局へ送信される信号のTDDサブフレーム長であり、フレーム長・処理遅延検出部19により検出される受信フレーム長に相当する。Δτ
2は、信号を受信したときから同期検出までの処理遅延時間であり、予め設定される。Δτ
4は、符号化部24からD/A変換部30までの送信系統にて符号化及び変調方式の処理のために要する時間であり、フレーム長・処理遅延検出部19により検出される送信系統の遅延時間(送信信号の符号化・変調処理時間)に相当する。Δτ
5は、予め設定される送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間であり、送信高周波部42の電源ONから安定動作するまでの起動時間と、送受信切替部40のRFスイッチを、送受信アンテナ4において受信アンテナから送信アンテナに切り替えるための遷移時間とを比較した場合に、時間の大きい方である。
【0070】
尚、フレーム長Tを送信信号の周期と定義すると、次式で表わされる。
(数2)
T=T
UL+T
DL+2Δτ
1+2Δτ
5 ・・・(2)
T
DLは、無線基地局から移動局へ送信される信号のTDDサブフレーム長である。従来のTDD方式では、一般にフレーム長は固定であるが、実施例1では、伝搬遅延時間Δτ
1に合わせてガードタイムが適応的に可変するから、前記数式(2)従ってフレーム長Tは増減する。
【0071】
図8は、実施例1による無線通信装置1−1がTDD方式を用いた場合の送受信タイミングチャートである。ここで、従来のガードタイムに相当する時間は、伝搬遅延時間Δτ
1に送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5を加えた時間である。したがって、ガードタイムは固定長ではなく、移動局と無線基地局との間の距離に依存する伝搬遅延時間Δτ
1、及び予め設定される送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5によって決定される。すなわち、送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5は予め設定されるから、ガードタイムは、移動局と無線基地局との間の距離を示す送受信間距離に依存する伝搬遅延時間Δτ
1に応じて可変となる。
【0072】
図8(a)は、
図16(a)と同様に、移動局(MS)と無線基地局(BS)との間の送受信間距離が極めて短く、伝搬遅延時間がほぼ0とみなせる場合の送受信タイミングチャートである。伝搬遅延時間がほぼ0であるため、移動局が信号の送信を開始すると、無線基地局は、その信号の受信を直ちに開始する。そして、無線基地局は、信号の受信の完了を待って、信号の送信を開始する。この場合、送受信信号は干渉することなく、通信することが可能であり、固定のガードタイムが不要なため、時間利用効率が従来に比べて高くなる。
【0073】
図8(b)(c)は、送受信間距離による伝搬遅延時間Δτ
1が、
図16(b)(c)に示した固定長のガードタイムのそれぞれ20%及び80%となる場合の送受信タイミングチャートである。無線基地局は、信号の送信を完了すると、信号受信の待ち受け状態となるが、実際に信号を受信し始めるのは、移動局が送信を開始してから伝搬遅延時間Δτ
1だけ経過した後である。無線基地局は、信号の受信の完了を待って、信号の送信を開始する。いずれの場合も、送受信信号は干渉することなく、通信することが可能であり、無線基地局と移動局との間の送受信間距離に応じてガードタイムが適応的に可変するため、時間利用効率は従来に比べて高くなる。
【0074】
図8(d)は、送受信間距離による伝搬遅延時間Δτ
1が、
図16(d)に示した固定長のガードタイムを超過する場合の送受信タイミングチャートである。従来技術では、GPS等を利用した時刻情報の共有により、決められたタイムスロットで信号を送信する必要があり、伝搬距離による遅延を吸収する固定長のガードタイムが付加されていたため、固定長のガードタイムで制限される伝送距離を超える通信は原理的に不可能であった。これに対し、実施例1では、GPS等を利用して時刻情報を共有する必要はなく、無線基地局は、受信信号の完了と共に、直ちに信号を送信するから、ガードタイムは、送受信間距離に依存する伝搬遅延時間Δτ
1に応じて、必要最小限となるよう適応的に可変することになる。そのため、通信可能エリアの制約を受けることなく、高い時間利用効率でTDD方式の通信を実現することができる。
【0075】
以上のように、実施例1の無線通信装置1−1によれば、無線基地局と移動局との間で時刻情報を共有することなく、受信信号のみを用いて送受信間距離に応じた必要最小限のガードタイムとなるように、
送信タイミングの制御を行い、ガードタイムを適応的に可変させ、信号の受信が完了した後、直ちに信号の送信を開始するようにした。具体的には、フレーム同期検出部12は、TDDサブフレームのフレーム先頭を検出してフレーム同期検出タイミングパルスを生成し、PHYヘッダ復調・解析部14は、TDDサブフレームのPHYヘッダから受信信号の符号化及び変調方式を抽出し、適応変調制御部20は、受信信号の符号化及び変調方式を送信信号の符号化及び変調方式に設定し、フレーム長・処理遅延検出部19は、TDDサブフレームのPHYヘッダから受信フレーム長を検出(抽出)し、送信信号の符号化及び変調方式から送信系統の遅延時間(送信信号の符号化・変調処理時間)を検出(設定)し、送信タイミング算出部21は、前述の数式(1)を用いて送信タイミング調整時間を算出し、送信タイミング制御部22は、フレーム同期検出タイミングパルスの時点から送信タイミング調整時間の経過後に、送信タイミング信号を生成して出力すると共に、送信タイミング信号の時点から送信系統の遅延時間(送信信号の符号化・変調処理時間)の経過後に、切替タイミング信号を生成して出力するようにした。そして、送信系統の符号化部24〜D/A変換部30は、送信タイミング信号の時点にて、送信信号の符号化及び変調方式に従って処理を行い、切替タイミング信号の時点にて、送信高周波部42は電源をONし、送受信切替部40は送受信アンテナ4と送信高周波部42とを接続するようにした。これにより、移動局から送信されたTDDサブフレームの受信が完了した後、直ちに無線基地局からTDDサブフレームが送信される。したがって、通信可能エリアの制約を受けることがなく、小さいオーバーヘッドで高い時間利用効率にてTDD方式の通信を実現することが可能となる。
【実施例2】
【0076】
次に、実施例2について説明する。実施例1では、無線通信装置1−1に備えたクロックだけを用いて送信タイミング制御を行っていることから、当該クロックと移動局のクロックとの間で同期していない場合には、受信特性が大きく劣化してしまう可能性がある。これに対し、実施例2は、前述のとおり、移動局のクロックに同期したクロックを再生する機能を備えたものである。これにより、QPSK等に比べて変調多値数の大きい256QAM等においても、無線通信装置間のクロック偏差によって受信特性が大きく劣化するという問題が生じることがなく、確実に通信を行うことが可能となる。
【0077】
図9は、実施例2による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図15に示した通信システムにおいて、無線基地局に設けられた無線通信装置の構成と移動局に設けられた無線通信装置の構成とは同一である。この無線通信装置1−2は、実施例1と同様に、無線基地局に設けられているものとして説明する。
図9において、この無線通信装置1−2は、信号処理部2−2、送受信高周波部3−2及び送受信アンテナ4を備えている。信号処理部2−2は、A/D変換部10、直交復調部11、フレーム同期検出部12、シンボル同期検出部31、AFC部32、PHYヘッダ復調・解析部14、OFDM復調部15、デマッピング部16、復号部17、受信データ保持部18、フレーム長・シンボル数・処理遅延検出部33、クロック再生制御部34、クロック再生部35、適応変調制御部20、送信タイミング算出部21、送信タイミング制御部22、送信データ保持部23、符号化部24、マッピング部25、OFDM変調部26、GI付加部27、TDDフレーム生成部28、直交変調部29及びD/A変換部30を備えている。送受信高周波部3−2は、送受信切替部40、受信高周波部41及び送信高周波部42を備えている。尚、
図9において、実線の矢印は送受信信号を示し、点線の矢印は制御信号等を示す。
【0078】
図1に示した実施例1の無線通信装置1−1と
図9に示す実施例2の無線通信装置1−2とを比較すると、無線通信装置1−2は、無線通信装置1−1のAFC部13及びフレーム長・処理遅延検出部19に代えて、新たなAFC部32及びフレーム長・シンボル数・処理遅延検出部33をそれぞれ備え、さらに、シンボル同期検出部31、クロック再生制御部34及びクロック再生部35を備えている。無線通信装置1−2は、クロック再生部35により再生したクロック(移動局に同期したクロック)を用いることにより、無線通信装置1−1に比べて送信タイミング制御の精度を向上させる。尚、
図9において、
図1と共通する部分には
図1と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0079】
シンボル同期検出部31は、直交復調部11からデジタル直交復調された信号を入力し、TDDサブフレームにおけるシンボル先頭を検出する。
【0080】
図10は、TDDサブフレームの構成と移動相関値を説明する図である。
図10に示すように、TDDサブフレームのプリアンブル以降の信号は、シンボルの末尾部分をその前方にコピーしたGIを持つOFDM信号である。シンボル同期検出部31は、入力した信号(受信信号)に対し、GI幅の内積演算による移動相関処理を行い、移動相関値を算出する。そして、シンボル同期検出部31は、移動相関値から相関ピークを検出し、検出した相関ピークの時間位置からTDDサブフレームにおける各シンボルのシンボル先頭を検出する。シンボル同期検出部31は、シンボル先頭を検出すると、シンボル先頭を示す1シンボル周期のシンボル同期検出タイミングパルスを生成し、検出したシンボル先頭の複素信号値をAFC部32に出力し、シンボル同期検出タイミングパルスをクロック再生部35に出力する。
【0081】
図9に戻って、AFC部32は、フレーム同期検出部12から検出した相関ピーク(フレーム同期)の複素信号値を入力すると共に、シンボル同期検出部31から検出したシンボル先頭の複素信号値を入力し、周波数偏差に対応する複素信号値の位相情報を用いて移動局と無線基地局との間の周波数偏差を補正する。
【0082】
フレーム長・シンボル数・処理遅延検出部33は、実施例1のフレーム長・処理遅延検出部19の処理に加え、PHYヘッダ復調・解析部14から入力したPHYヘッダからシンボル数(1TDDサブフレームのシンボル数)を検出(抽出)し、検出したシンボル数をクロック再生制御部34に出力する。
【0083】
クロック再生制御部34は、フレーム長・シンボル数・処理遅延検出部33からシンボル数を入力し、シンボル数に基づいて、シンボル同期検出部31により生成されたシンボル同期検出タイミングパルスのエンドのタイミング(TDDサブフレームにおける最終のシンボルのシンボル同期検出タイミングパルスが生成されたタイミング)を検出し、そのタイミングにて出力ロック信号を生成してクロック再生部35に出力する。
【0084】
クロック再生部35は、シンボル同期検出部31からシンボル同期検出タイミングパルスを入力し、移動局のクロックに同期したクロックを再生する。また、クロック再生部35は、クロック再生制御部34から出力ロック信号を入力し、そのタイミングにて、再生していたクロックの出力をロックし、再生クロックの出力状態を維持する。この場合、クロック再生部35は、シンボル同期検出部31からシンボル同期検出タイミングパルスを再び入力すると、再生クロックの出力状態を維持しているロックを解除し、改めてクロックを再生する。クロック再生部35により再生されたクロックは、送信タイミング制御部22等の構成部にて用いられる。これにより、送信タイミング制御は、移動局に同期したクロックを用いて実現される。
【0085】
図11は、クロック再生部35の構成を示すブロック図である。このクロック再生部35は、PLL(Phase Locked Loop:位相同期)回路により構成され、シンボルクロック再生部50、位相比較器51、ループフィルタ52、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)部53及び分周部54を備えている。
【0086】
シンボルクロック再生部50は、シンボル同期検出部31からシンボル同期検出タイミングパルスを入力し、シンボル同期検出タイミングパルスからシンボルクロック(例えば、周波数:fsym=17.752kHzのクロック)を再生する。
【0087】
位相比較器51は、シンボルクロック再生部50からシンボルクロックを、クロック再生制御部34から出力ロック信号を、分周部54から、ループフィルタ52、VCO部53及び分周部54により生成されたループ信号(再生クロックを1/Nに分周した信号)をそれぞれ入力する。そして、位相比較器51は、入力したシンボルクロックとループ信号との間の位相を比較して位相誤差を算出し、位相誤差の極性が正である場合、ループフィルタ52を介してVCO部53により出力される再生クロックの周波数を増加させるための信号を、ループフィルタ52に出力する。一方、位相比較器51は、位相誤差の極性が負である場合、ループフィルタ52を介してVCO部53により出力される再生クロックの周波数を減ずるための信号を、ループフィルタ52に出力する。また、位相比較器51は、出力ロック信号を入力したときに、ループフィルタ52への出力信号をロック(ループフィルタ52への出力信号を維持)し、その後、シンボルクロック再生部50からシンボルクロックを入力すると、位相誤差の算出を再開し、出力信号のロックを解除する。VCO部53のクロック周波数は、fs=81.80926MHzであり、分周部54による分周の定数は、N=4608(4×1152)である。
【0088】
位相比較器51は、このような再生クロックの周波数を増減するための処理を繰り返し、位相誤差が0になった場合、ロック状態となり、そのときのシンボル同期検出タイミングパルスに同期した再生クロックを、受信信号に同期したクロックとして出力する。これにより、クロック再生部35は、移動局に同期したクロックを再生することができる。
【0089】
ここで、受信信号は、TDDサブフレーム単位のバースト信号であり、連続信号ではない。このため、無線通信装置1−2は、次のTDDサブフレームを受信するまでの間、一定期間無信号の受信状態となる。この受信状態では、シンボル同期検出部31からシンボル同期検出タイミングパルスが出力されなくなり、クロック再生部35のシンボルクロック再生部50からもシンボルクロックが出力されなくなるため、クロック再生部35は、ロック状態が外れて、正常なクロック再生を行うことができない。
【0090】
そこで、クロック再生部35は、TDDサブフレームの受信が完了するときに、再生し出力していたクロックの出力状態を維持する。これにより、TDDサブフレームを受信していない無信号状態の期間中であっても、クロック再生部35は、移動局のクロックに同期したクロックを再生するから、正常なクロック再生を継続することが可能となる。
【0091】
具体的には、フレーム長・シンボル数・処理遅延検出部33は、前述のとおり、1TDDサブフレームのシンボル数を検出し、クロック再生制御部34は、フレーム長・シンボル数・処理遅延検出部33から入力したシンボル数に基づいて、シンボル同期検出部31により生成されたシンボル同期検出タイミングパルスのエンドのタイミング(TDDサブフレームにおける最終のシンボルのシンボル同期検出タイミングパルスが生成されたタイミング)を検出し、そのタイミングにて出力ロック信号をクロック再生部35に出力する。位相比較器51は、クロック再生制御部34から出力ロック信号を入力すると、そのタイミング(TDDサブフレームにおける最終のシンボルのタイミング)にて、位相比較器51の出力をロックする。このように、位相比較器51の出力信号をロックするか否かは、クロック再生制御部34から出力される、シンボル数に基づいた出力ロック信号によって制御される。
【0092】
図9に戻って、送信タイミング制御部22は、送信タイミング算出部21からフレーム同期検出タイミングパルス、送信タイミング調整時間及び符号化・変調処理時間を入力し、クロック再生部35により再生されたクロックを用いて、フレーム同期検出タイミングの時点から送信タイミング調整時間の経過後のタイミングにて、送信タイミング信号を生成し、生成した送信タイミング信号を送信データ保持部23に出力する。また、送信タイミング制御部22は、クロック再生部35により再生されたクロックを用いて、送信タイミング信号の出力タイミングの時点から符号化・変調処理時間の経過後のタイミングにて、切替タイミング信号を生成し、生成した切替タイミング信号を送受信切替部40及び送信高周波部42に出力する。
【0093】
以上のように、実施例2の無線通信装置1−2によれば、実施例1の無線通信装置1−1と同様に、時刻情報を共有することなく、受信信号のみを用いて送受信間距離に応じた必要最小限のガードタイムとなるように、
送信タイミングの制御を行い、ガードタイムを適応的に可変させ、信号の受信が完了した後、直ちに信号の送信を開始するようにした。また、シンボル同期検出部31は、1シンボル周期のシンボル同期検出タイミングパルスを生成し、フレーム長・シンボル数・処理遅延検出部33は、1TDDサブフレームのシンボル数を検出し、クロック再生制御部34は、1TDDサブフレームの最終のシンボルのシンボル同期検出タイミングパルスのタイミングにて、出力ロック信号を生成し、クロック再生部35は、シンボル同期検出タイミングパルスの位相に合致するクロックを再生するようにした。これにより、クロック再生部35により再生したクロックは、移動局に同期したクロックになるから、送信タイミング制御部22により再生クロックを用いて生成される送信タイミング信号及び切替タイミング信号は、移動局のクロックに同期した信号となり、無線通信装置1−2は、移動局のクロックに同期したタイミングで、送信データを送信することが可能となる。したがって、実施例1の効果に加え、精度の高い送信タイミング制御を実現することができ、移動局からの信号の受信完了を待ってから移動局へ信号を送信する処理を、確実に行うことが可能となる。
【実施例3】
【0094】
次に、実施例3について説明する。実施例1,2は、1つの無線基地局と1つの移動局との間で通信を行う場合の例であるが、実施例3は、前述のとおり、1つの無線基地局と2つの移動局との間で同時に通信を行う場合に、無線基地局において送信タイミングの制御を行うものである。
【0095】
図12は、無線基地局と移動局とが1対2で対向した通信システムを示す概略図である。この通信システムは、1つの無線基地局と2つの移動局MS−1,MS−2とを備えて構成される。無線基地局は、第1の移動局MS−1と第2の移動局MS−2との間で同時に通信を行うため、各移動局MS−1,MS−2に向けた送受信アンテナを個別に備えている。この通信システムでは、無線基地局と第1の移動局MS−1との間の送受信間距離の方が、第2の移動局MS−2との間の送受信間距離よりも短いものとする。
【0096】
図13は、実施例3による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図12に示した通信システムにおいて、
図13に示す無線通信装置1−3は、無線基地局に設けられており、移動局MS−1,MS−2に対する送信タイミング制御を行う。この無線通信装置1−3は、実施例1の無線通信装置1−1の構成を基本としており、信号処理部2−3、送受信高周波部3−3、第1の移動局MS−1用送受信アンテナ4−1及び第2の移動局MS−2用送受信アンテナ4−2を備えている。信号処理部2−3は、A/D変換部10、直交復調部11、フレーム同期検出部12、AFC部13、PHYヘッダ復調・解析部38、OFDM復調部15、デマッピング部16、復号部17、受信データ保持部18、フレーム長・処理遅延検出部19、適応変調制御部20、送信タイミング算出部21、送信タイミング制御部22、送信データ保持部23、符号化部24、マッピング部25、OFDM変調部26、GI付加部27、TDDフレーム生成部28、直交変調部29、D/A変換部30、移動局選択部36及びアンテナ切替制御部37を備えている。送受信高周波部3−3は、送受信切替部40、受信高周波部41、送信高周波部42及びアンテナ切替部43を備えている。尚、
図13において、実線の矢印は送受信信号を示し、点線の矢印は制御信号等を示す。
【0097】
図1に示した実施例1の無線通信装置1−1と
図13に示す実施例3の無線通信装置1−3とを比較すると、無線通信装置1−3は、無線通信装置1−1に備えたPHYヘッダ復調・解析部14の代わりにPHYヘッダ復調・解析部38を備え、さらに、信号処理部2−3に移動局選択部36及びアンテナ切替制御部37を備えると共に、送受信高周波部3−3にアンテナ切替部43を備えている。尚、
図13において、
図1と共通する部分には
図1と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0098】
移動局から送信されるTDDサブフレームのPHYヘッダには、当該TDDサブフレームの送信元である移動局の移動局識別番号に加え、無線基地局からTDDサブフレームが次に送信されるべき送信先である移動局の移動局識別番号が含まれているものとする。例えば、
図12の通信システムでは、無線基地局及び移動局MS−1,MS−2は、当該無線基地局と通信を行っている移動局MS−1,MS−2の移動局識別番号を保持している。例えば、無線基地局の無線通信装置1−3が、移動局MS−1,MS−2からTDDサブフレームを受信したときに、PHYヘッダに格納されている送信元である移動局MS−1,MS−2の移動局識別番号を抽出し、通信を行っている移動局MS−1,MS−2の移動局識別番号を保持する。そして、無線通信装置1−3は、通信を行っている移動局MS−1,MS−2の移動局識別番号をPHYヘッダに格納し、TDDサブフレームを送信する。移動局MS−1,MS−2は、無線通信装置1−3から送信されたTDDサブフレームのPHYヘッダから、通信を行っている移動局MS−1,MS−2の移動局識別番号を抽出して保持する。これにより、無線基地局及び移動局MS−1,MS−2は、当該無線基地局と通信を行っている移動局MS−1,MS−2の移動局識別番号を保持することができる。
【0099】
移動局は、所定の処理により、無線基地局と通信を行っている移動局のうち、いずれか1つの移動局を選択し、選択した移動局の移動局識別番号を、無線基地局からTDDサブフレームが次に送信されるべき送信先の移動局の移動局識別番号としてPHYヘッダに格納し、TDDサブフレームを無線基地局へ送信する。例えば、無線基地局と通信を行っている移動局が自らの移動局のみの場合、当該移動局は、自らの移動局を選択し、自らの移動局の移動局識別番号をPHYヘッダに格納し、TDDサブフレームを無線基地局へ送信する。また、
図12の通信システムのように、無線基地局と通信を行っている移動局が自らを含め2つの移動局の場合、移動局は、他の移動局を選択し、他の移動局の移動局識別番号をPHYヘッダに格納し、TDDサブフレームを無線基地局へ送信する。
【0100】
無線通信装置1−3のPHYヘッダ復調・解析部38は、実施例1,2のPHYヘッダ復調・解析部14の処理に加え、PHYヘッダを解析し、無線基地局からTDDサブフレームが次に送信されるべき送信先の移動局の移動局識別番号を抽出し、抽出した移動局識別番号を移動局選択部36に出力する。また、PHYヘッダ復調・解析部38は、PHYヘッダを解析し、受信したTDDサブフレームのPHYヘッダに格納されている送信元である移動局の移動局識別番号を抽出する。これにより、無線通信装置1−3は、当該無線基地局と通信を行っている移動局の移動局識別番号を保持することができる。また、無線通信装置1−3は、保持している、当該無線基地局と通信を行っている移動局の移動局識別番号をPHYヘッダに格納し、TDDサブフレームを送信する。
【0101】
送信タイミング制御部22は、実施例1,2の処理に加え、さらに、送信タイミング信号の時点から符号化・変調処理時間の経過後のタイミングにて生成した切替タイミング信号を、アンテナ切替制御部37に出力する。つまり、送信タイミング制御部22は、送信タイミング信号を送信データ保持部23に出力し、切替タイミング信号を送受信切替部40及び送信高周波部42に出力することに加え、切替タイミング信号をアンテナ切替制御部37に出力する。
【0102】
移動局選択部36は、PHYヘッダ復調・解析部38から、次に送信されるべき送信先の移動局の移動局識別番号を入力し、入力した移動局識別番号の移動局を次の送信先の移動局として選択し、次の送信先である移動局の移動局識別番号をアンテナ切替制御部37に出力する。
【0103】
アンテナ切替制御部37は、移動局選択部36から、次の送信先である移動局の移動局識別番号を入力し、送信タイミング制御部22から切替タイミング信号を入力する。そして、アンテナ切替制御部37は、入力した切替タイミング信号の時点で、当該切替タイミング信号と共に、入力した次の送信先である移動局の移動局識別番号をアンテナ切替部43に出力する。
【0104】
アンテナ切替部43は、アンテナ切替制御部37から切替タイミング信号及び次の送信先である移動局の移動局識別番号を入力し、次の送信先である移動局の移動局識別番号に基づいてRFスイッチを切り替え、例えば、
図12の通信システムにおいて、移動局MS−1用送受信アンテナ4−1及び移動局MS−2用送受信アンテナ4−2のうちのいずれかのアンテナと送受信切替部40とを接続する。
【0105】
これにより、移動局から送信されたTDDサブフレームに含まれる、無線基地局からTDDサブフレームが次に送信されるべき送信先の移動局の移動局識別番号に従って、当該移動局識別番号の移動局が次の送信先の移動局として選択され、無線基地局の無線通信装置1−3からTDDサブフレームが当該移動局へ送信される。
【0106】
図12に示した通信システムの場合、移動局MS−1,MS−2は、例えば、無線基地局と通信を行っている移動局MS−1,MS−2のうち他の移動局を選択し、選択した移動局の移動局識別番号をPHYヘッダに格納し、TDDサブフレームを無線基地局へ送信する。これにより、無線基地局は、移動局MS−1,MS−2との間の通信を、交互に繰り返して行うことができる。
【0107】
また、無線基地局と通信を行っている移動局が3以上存在する場合、各移動局は、無線基地局と通信を行っている3以上の移動局のうち、自らの移動局識別番号よりも次に大きい移動局識別番号の移動局を選択し、自らの移動局識別番号が最も大きいときに、最も小さい移動局識別番号の移動局を選択する。これにより、無線基地局は、3以上の移動局との間の通信を、順番に繰り返して行うことができる。
【0108】
図14は、実施例3による無線通信装置がTDD方式を用いた場合の送受信タイミングチャートである。この送受信タイミングチャートは、
図12に示したような1つの無線基地局BSと2つの移動局MS−1,MS−2とを備えた通信システムを前提にしている。また、無線基地局BSと移動局MS−1との間の伝搬遅延時間をΔτ
1-1、無線基地局BSと移動局MS−2との間の伝搬遅延時間をΔτ
1-2とし、無線基地局BSが移動局MS−1,MS−2に対して時分割で交互に通信する場合を示している。
【0109】
無線基地局BSが移動局MS−1へ信号を送信し、信号の送信が完了すると、移動局MS−1からの信号の待ち受け状態となる。移動局MS−1は、伝搬遅延時間Δτ
1-1経過後に信号の受信を開始し、信号の受信を完了した後に、無線基地局BSへ信号の送信を開始する。無線基地局BSは、伝搬遅延時間Δτ
1-1経過後に信号の受信を開始し、信号の受信を完了した後に、移動局MS−2へ信号の送信を開始する。無線基地局BSは、信号の送信が完了すると、移動局MS−2からの信号の待ち受け状態となる。移動局MS−2は、伝搬遅延時間Δτ
1-2経過後に信号の受信を開始し、信号の受信を完了した後に、無線基地局BSへ信号の送信を開始する。無線基地局BSは、伝搬遅延時間Δτ
1-2経過後に信号の受信を開始し、信号の受信を完了した後に、移動局MS−1へ信号を送信する。このように、無線基地局BSは、移動局MS−1,MS−2に対し、信号の受信を完了するのを待って交互に通信を行う。このように、無線基地局、移動局MS−1,MS−2の送受信信号は干渉することなく、通信が可能であり、無線基地局と移動局MS−1,MS−2との間の送受信間距離に応じてガードタイムが適応的に可変するため、時間利用効率は従来に比べて高くなる。
【0110】
以上のように、実施例3の無線通信装置1−3によれば、実施例1,2の無線通信装置1−1,1−2と同様に、時刻情報を共有することなく、受信信号のみを用いて送受信間距離に応じた必要最小限のガードタイムとなるように、
送信タイミングの制御を行い、ガードタイムを適応的に可変させ、信号の受信が完了した後、直ちに信号の送信を開始するようにした。これにより、実施例1,2と同様の効果を奏する。
【0111】
また、PHYヘッダ復調・解析部38は、受信したTDDサブフレームのPHYヘッダを解析し、無線基地局からTDDサブフレームが次に送信されるべき送信先の移動局の移動局識別番号を抽出し、移動局選択部36は、PHYヘッダ復調・解析部38により抽出された移動局識別番号の移動局を次の送信先の移動局として選択し、アンテナ切替制御部37は、送信タイミング制御部22から入力した切替タイミング信号と共に、移動局選択部36により選択された送信先の移動局の移動局識別番号をアンテナ切替部43に出力するようにした。そして、アンテナ切替部43は、アンテナ切替制御部37からの切替タイミング信号を入力した時点で、アンテナ切替制御部37から入力した送信先の移動局の移動局識別番号に従って、送信先の移動局への送信が可能となるように、RFスイッチによりアンテナを切り替えるようにした。これにより、次に通信する移動局を事前に(送信する前に)決定するようにしたから、実施例1の送信タイミング制御を用いて、複数の移動局と効率的に通信することが可能となり、伝搬距離の制約を受けることなく、常に最大の時間利用効率でTDD方式の通信を実現することが可能となる。
【0112】
尚、前述の無線通信装置1−3は、実施例1による無線通信装置1−1の構成を基本としているが、この構成の代わりに、実施例2による無線通信装置1−2の構成を基本とするようにしてもよい。これにより、実施例2による精度の高い送信タイミング制御にて、複数の移動局と効率的に通信することが可能となる。
【0113】
また、他の例として、無線通信装置1−3は、当該無線基地局と通信を行っている移動局の移動局識別番号を保持して管理し、受信したTDDサブフレームの送信元である移動局の移動局識別番号に基づいて、次の送信先の移動局を選択するようにしてもよい。この場合、移動局は、PHYヘッダに、無線基地局からTDDサブフレームが次に送信されるべき送信先である移動局の移動局識別番号を格納する必要がない。具体的には、無線通信装置1−3のPHYヘッダ復調・解析部38は、PHYヘッダを解析し、受信したTDDサブフレームの送信元である移動局の移動局識別番号を抽出して移動局選択部36に出力する。移動局選択部36は、PHYヘッダ復調・解析部38から、受信したTDDサブフレームの送信元である移動局の移動局識別番号を入力する。そして、PHYヘッダ復調・解析部38は、当該無線基地局と通信を行っている複数の移動局の移動局識別番号のうち、例えば、入力した移動局識別番号の移動局とは異なる移動局を送信先の移動局として選択する。このようにして、TDDサブフレームは、移動局選択部36により選択された送信先の移動局へ送信される。
【0114】
この場合、移動局選択部36は、例えば、無線基地局と通信を行っている移動局が1つの場合、当該移動局を送信先の移動局として選択する。また、無線基地局と通信を行っている移動局が複数の場合、複数の移動局を順番に送信先の移動局として選択する。これにより、無線基地局は、複数の移動局との間の通信を、順番に繰り返して行うことができる。
【0115】
本発明の実施形態による無線通信装置1−1,1−2,1−3のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。無線通信装置1−1,1−2,1−3は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。無線通信装置1−1に備えた信号処理部2−1及び送受信高周波部3−1の各機能、無線通信装置1−2に備えた信号処理部2−2及び送受信高周波部3−2の各機能、及び無線通信装置1−3に備えた信号処理部2−3及び送受信高周波部3−3の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【0116】
以上、実施例1,2,3を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1,2,3に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、実施例1,2,3による無線通信装置1−1,1−2,1−3の構成は一例であり、本発明はこの構成に限定されるものではなく、信号の待ち受け状態において信号を受信し、信号の受信が完了するのを待って、送受信信号が干渉することなく、送信先へ信号を送信する構成であればよい。