(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撮影部は、前記分包包装材の上方に配置された薬剤投入部から当該分包包装材内に落下する1分包分毎の前記薬剤を連続撮影する請求項1から7のいずれか1項に記載の薬剤計数装置。
複数の薬剤が分包される分包包装材を撮影可能な位置に設けられた撮影部により、前記分包包装材に分包される1分包分毎の前記薬剤を時間的に連続して撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップで1分包分毎の前記薬剤を連続撮影して得られた複数の画像から前記薬剤を示す薬剤領域を検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出した前記薬剤領域について前記複数の画像間での対応付けを行うことで、前記複数の画像上での前記薬剤の軌跡を求める追跡ステップと、
前記追跡ステップで求めた前記軌跡と前記分包包装材との位置関係に基づき、前記分包包装材の範囲内に終端がある前記軌跡の数を、前記分包包装材に分包される前記薬剤の個数として計数する計数ステップと、
を有する薬剤計数方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分包包装材内の薬剤の個数を正確に計数するためには、全ての薬剤の良好な画像を取得する必要があるが、特許文献1に記載の自動薬剤分包機では、薬剤同士が重なった場合に、良好な薬剤の画像が得られず正確な判定が難しいという問題がある。また、特許文献1に記載の自動薬剤分包機は、例えば、薬剤が分包包装材の外部に落下した場合に薬剤の落下を検出することができない。このため、特許文献1に記載の自動薬剤分包機は、分包包装材内に投入される薬剤の個数の正誤を正確に判定することはできない。
【0007】
また、特許文献2に記載の自動薬剤分包機は、分包包装材内の薬剤の撮影前に、薬剤同士の重なり合いを防止するために分包包装材を揺動しているが、分包包装材内の空間に余裕がない場合には薬剤同士が重なった状態が解消されない。このため、特許文献2に記載の自動薬剤分包機においても、分包包装材内に投入される薬剤の個数を正確に計数することはできないおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、分包包装材内に分包される薬剤の個数を低コストで正確に計数することできる薬剤計数装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するための薬剤計数装置は、複数の薬剤が分包される分包包装材を撮影可能な位置に設けられており、分包包装材に分包される1分包分毎の薬剤を時間的に連続して撮影する撮影部と、撮影部により1分包分毎の薬剤を連続撮影して得られた複数の画像から薬剤を示す薬剤領域を検出する検出部と、検出部が検出した薬剤領域について複数の画像間での対応付けを行うことで、複数の画像上での薬剤の軌跡を求める追跡部と、追跡部が求めた軌跡と分包包装材との位置関係に基づき、分包包装材の範囲内に終端がある軌跡の数を、分包包装材に分包される1分包分毎の薬剤の個数として計数する計数部と、を備える。
【0010】
本発明によれば、分包包装材に分包される直前の薬剤の個数を計数することができる。
【0011】
計数部は、予め定めた一定値以上の長さを有する軌跡の数を薬剤の個数として計数することが好ましい。これにより、分包包装材の外部に落下した薬剤の軌跡を計数部の計数対象から除外することができるので、分包包装材内に分包される薬剤の個数をより正確に計数することができる。
【0012】
計数部は、複数の画像上の軌跡の最大数を薬剤の個数とすることが好ましい。これにより、一部のフレーム(画像)で薬剤同士の重なりによる隠れが発生しても正しく薬剤を計数することが可能となり、薬剤の個数をより正確に計数することができる。
【0013】
分包包装材に分包される1分包分毎の薬剤の調剤情報を取得する第1取得部と、第1取得部が取得した調剤情報に基づき分包包装材に分包される1分包分毎の薬剤の個数を求め、薬剤の個数と計数部の計数結果とを照合する照合部と、照合部の照合結果を表示する第1表示部と、を備えることが好ましい。これにより、分包包装材内の薬剤の個数が調剤情報に記録されている通りであるか否かを容易に確認することができる。
【0014】
照合結果には、照合対象となった分包包装材に分包された1分包を特定する情報が含まれることが好ましい。これにより、例えば照合結果が不一致(NG)であった場合に、該当する分包包装材を容易に判別することができる。
【0015】
計数部は、位置関係に基づき、追跡部が求めた軌跡の終端が分包包装材の範囲外となるか否かを判定し、軌跡の終端が分包包装材の範囲外となると計数部が判定した場合に、分包包装材の外部に薬剤が落下したことを示す警告情報を表示する第2表示部を備えることが好ましい。これにより、分包包装材の外部に薬剤が落下したことを薬剤師等のユーザに知らせることができる。
【0016】
分包包装材の少なくとも位置を示す分包包装材情報を取得する第2取得部を備えており、計数部は、第2取得部が取得した分包包装材情報に基づき、複数の画像上での分包包装材の範囲を判別することにより位置関係を求めることが好ましい。これにより、追跡部が求めた軌跡が分包包装材内の範囲内にあるか否かを判定することができる。
【0017】
撮影部は、分包包装材の上方に配置された薬剤投入部から分包包装材内に落下する1分包分毎の薬剤を連続撮影することが好ましい。これにより、分包包装材に分包される直前の薬剤の画像が得られる。
【0018】
撮影部は、分包包装材を動画撮影してフレーム画像を出力し、薬剤投入部から分包包装材への薬剤の投入が開始されことを示すトリガ信号を、検出部へ出力する信号出力部を備え、検出部は、トリガ信号が入力されてから予め定めた期間内に撮影部が出力した複数のフレーム画像より薬剤領域を検出することが好ましい。これにより、個々の分包包装材に対応する複数の画像を容易に判別することができる。
【0019】
本発明の目的を達成するための薬剤計数方法は、複数の薬剤が分包される分包包装材を撮影可能な位置に設けられた撮影部により、分包包装材に分包される1分包分毎の薬剤を時間的に連続して撮影する撮影ステップと、撮影ステップで1分包分毎の薬剤を連続撮影して得られた複数の画像から薬剤を示す薬剤領域を検出する検出ステップと、検出ステップで検出した薬剤領域について複数の画像間での対応付けを行うことで、複数の画像上での薬剤の軌跡を求める追跡ステップと、追跡ステップで求めた軌跡と分包包装材との位置関係に基づき、分包包装材の範囲内に終端がある軌跡の数を、分包包装材に分包される薬剤の個数として計数する計数ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の薬剤計数装置及び方法は、分包包装材内に分包される薬剤の個数を低コストで正確に計数することできる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[薬剤処方作業の概略]
図1に示すように、病院や調剤薬局などの医療機関で行われる薬剤処方作業9は、大別して、処方箋入力・印刷作業11と、ピッキング作業12と、自動分包作業13とを含む。
【0023】
処方箋入力・印刷作業11では、処方箋に記載されている調剤情報(患者の氏名・年齢、薬剤の薬種(薬剤の名称)・分量・用法・用量など)を、薬剤師がレセプトコンピュータ15に入力する。次いで、薬剤師は、レセプトコンピュータ15を操作して、このレセプトコンピュータ15に接続しているプリンタ16から調剤情報シート(図示せず)を出力する。また、レセプトコンピュータ15は、本発明の薬剤計数装置に相当する自動薬剤分包機25に対して調剤情報20を出力する。
【0024】
ピッキング作業12では、プリンタ16から出力された調剤情報シートに基づき、薬剤師が薬剤棚22から調剤情報に対応する薬剤(錠剤、カプセル等)23をピッキングする。なお、ピッキング作業12には、例えば、レセプトコンピュータ15に入力された調剤情報に基づき薬剤を自動的にピッキングする自動ピッキング装置を用いてもよい。
【0025】
自動分包作業13では、ピッキング作業12でピッキングされた薬剤23を薬剤師が自動薬剤分包機25のトレイ26(
図2参照)に1分包分毎にセットする。そして、自動薬剤分包機25がトレイ26内の1分包分毎の薬剤23を自動的に複数の分包包装材27に分包する。薬剤23が分包された各分包包装材27は、薬剤師により調剤監査された後に、患者に処方される。
【0026】
[自動薬剤分包機の構成]
図2に示すように、自動薬剤分包機25には、分包包装材27の元となる透明(ここでいう「透明」には半透明も含む)な長尺の熱溶着シート30を二つ折りにした状態でロール状に巻き回してなるシートロール31が取り付けられる。熱溶着シート30は二つ折りにされて断面V字形状を有しているので、その長手方向に平行な両側端部のうちの一方の側端部30aが開口し、他方の側端部30bが閉じている。
【0027】
搬送ローラ33は、シートロール31から引き出された熱溶着シート30を挟持して1つの分包包装材27に対応する距離ずつ間欠的に搬送する。これにより、熱溶着シート30は、シートロール31から図中の上方に引き出された後、ガイドローラ34で折り返されてそこから図中の右斜め下方に位置する搬送ローラ33に向けて搬送される。この際に、ガイドローラ34と搬送ローラ33との間に位置する熱溶着シート30は、側端部30aの開口36が上方に向けられた状態で搬送される。
【0028】
トレイ26は、例えば、薬剤23が1分包分毎にセットされる複数の薬室と、各薬室の底部に設けられた開閉自在なシャッタとを備えている。各薬室のシャッタの開閉を制御することにより、各薬室からそれぞれ1分包分の薬剤23を、図示しないシュータ等を介してホッパ38(薬剤投入部)内に投入することができる。このトレイ26は、搬送ローラ33により熱溶着シート30が間欠搬送される毎に、各薬室にセットされている薬剤23を所定の順番で1分包分ずつシュータ等を介してホッパ38内に投入する。なお、トレイ26の構造、及びトレイ26からホッパ38まで薬剤23を案内する経路(シュータ等)は周知技術であるので、ここでは説明は省略する。
【0029】
ホッパ38は、トレイ26の下方の位置で、かつガイドローラ34と搬送ローラ33との間の位置する開口36の上方の位置に配置されている。このホッパ38は、上下方向に長く延び、かつ上下が開口した矩形筒状を有している。また、ホッパ38の下端部側の出口部分は、上端部側の入り口部分よりも幅狭に形成されており、開口36に近接した位置あるいは開口36の内部で開口している。トレイ26から図示しないシュータ等を介してホッパ38の入り口部分に投入された1分包分の薬剤23は、ホッパ38を通ってその出口部分から開口36内に落下する。
【0030】
熱シール装置40は、ホッパ38のシート搬送方向下流側の近傍の位置で熱溶着シート30を挟み込むように配置されている。熱シール装置40は、熱溶着シート30の幅方向に長く延びた幅方向シール部40aと、側端部30aに沿う形状の長手方向シール部40bとを有している。熱シール装置40は、搬送ローラ33により熱溶着シート30が間欠搬送される毎に熱溶着シート30を挟み込んで熱溶着する。幅方向シール部40aによる熱溶着により熱溶着シート30が1分包分毎に区分される。また、長手方向シール部40bによる熱溶着により側端部30aの開口36の被熱溶着部分が封止される。これにより、分包包装材27が熱溶着シート30の長手方向(搬送方向)に沿って連続して形成される。
【0031】
搬送ローラ33により熱溶着シート30を間欠搬送する毎に、ホッパ38からの1分包分毎の薬剤23の落下と、熱シール装置40による熱溶着とが行われることで、分包包装材27の形成及び薬剤23の封入とが連続して行われる。
【0032】
例えば、熱シール装置40により熱溶着が行われると、熱溶着シート30の先端部側から第N(Nは1以上の自然数)番目の分包包装材27の右端部分に対応する位置が幅方向シール部40aにより熱溶着される。また同時に、第N番目の分包包装材27の開口36の一部分に対応する位置が長手方向シール部40bにより熱溶着される。次いで、搬送ローラ33により熱溶着シート30が分包包装材27の距離分だけ間欠搬送された後、ホッパ38から第N番目の分包包装材27に対応する薬剤23が落下する。ホッパ38から落下した薬剤23は、開口36から熱溶着シート30(第N番目の分包包装材27となる部分)の内部に入る。この際に、熱溶着シート30は右斜め下方に下り傾斜となっているため、薬剤23は先に熱溶着された右端部分まで移動してそこに留まる。
【0033】
ホッパ38からの薬剤23の落下後に再び熱シール装置40により熱溶着シート30の熱溶着が行われる。これにより、第N番目の分包包装材27の左端部分に対応する位置及び第N+1番目の分包包装材27の右端部分に対応する位置が幅方向シール部40aにより熱溶着される。また、第N番目の分包包装材27の開口36の残りの部分に対応する位置及び第N+1番目の分包包装材27の開口36の一部分に対応する位置が長手方向シール部40bにより熱溶着される。こうして第N番目の分包包装材27が形成されるとともに、その内部に1分包分の薬剤23が封入される。以下同様にして、第N+1番目以降の分包包装材27の形成とその内部への薬剤23の封入とが行われる。
【0034】
以下、説明の煩雑化を防止するため、右端部分は熱溶着されているが左端部分が熱溶着されていない状態(すなわち、薬剤23の投入直前の状態)の分包包装材27も単に「分包包装材27」という。
【0035】
撮影部42は、ホッパ38の下方に位置する分包包装材27、すなわち、この分包包装材27の内部にホッパ38から落下する1分包分の薬剤23を撮影可能に位置に配置される。この撮影部42は、例えばビデオカメラなどの動画撮影機能を有するものが用いられ、ホッパ38の下方に位置する分包包装材27及びその内部を動画撮影する。これにより、ホッパ38から分包包装材27毎に落下する1分包分毎の薬剤23を時間的に連続して撮影することができる。そして、撮影部42は、動画撮影により取得されたフレーム画像データ44を検出部55に逐次出力する(
図3参照)。
【0036】
図3に示すように、自動薬剤分包機25には、前述の各部の他に分包機制御部46、薬剤投入制御部47、搬送制御部48、熱シール制御部49、表示部(第1表示部)50、表示制御部51、分包包装材位置設定部(第2取得部)52、検出部55、追跡部56、計数部57、照合部58、通信I/F(第1取得部)59などが設けられている。分包機制御部46は、例えばCPUであり、図示しない操作部に入力された入力指示に従って自動薬剤分包機25の各部の動作を統括的に制御する。
【0037】
薬剤投入制御部47は、分包機制御部46の制御の下、トレイ26の各薬室からの薬剤23の投入(具体的には、各薬室のシャッタの開閉)を制御する。薬剤投入制御部47は、搬送ローラ33により熱溶着シート30が間欠搬送される毎に、トレイ26の各薬室にセットされている1分包分毎の薬剤23を所定の順番でホッパ38に投入する。この際に、分包機制御部46は、トレイ26から1分包分の薬剤23が投入される毎に、ホッパ38から分包包装材27への薬剤23の投入が開始されことを示すスタートトリガ信号(トリガ信号)61を検出部55へ出力する。すなわち、分包機制御部46が本発明の信号出力部として機能する。
【0038】
搬送制御部48は、搬送ローラ33を回転駆動するモータ等の駆動機構(図示せず)を備えている。この搬送制御部48は、分包機制御部46の制御の下、搬送ローラ33の回転駆動を制御することで、搬送ローラ33により熱溶着シート30を間欠的に搬送させる。
【0039】
熱シール制御部49は、熱シール装置40による熱溶着シート30の挟持/挟持解除を切り替える切替機構(図示せず)、及び熱シール装置40を加熱させる加熱機構(図示せず)を備えている。熱シール制御部49は、分包機制御部46の制御の下、熱溶着シート30が間欠搬送される毎に熱シール装置40により熱溶着シート30を挟持して加熱することで、熱溶着シート30の被熱溶着部分を熱溶着する。
【0040】
表示部50は、自動薬剤分包機25の操作画面、設定画面、分包作業状況、警告メッセージなどを表示する。
【0041】
表示制御部51は、分包機制御部46の制御の下、表示部50の表示を制御する。また、表示制御部51は、後述の照合部58の照合結果を表示部50に表示させる。
【0042】
分包包装材位置設定部52は、例えば図示しない操作部にてユーザ等により入力もしくは自動検知された分包包装材27の大きさ、あるいは品種名、分包包装材27の大きさに関する自動薬剤分包機25の設定等の情報に基づき、分包包装材27の位置を示す分包包装材情報63を生成して後述の計数部57に設定する。ここで、分包包装材27の位置とは、ホッパ38から落下してくる薬剤23が投入される分包包装材27内の位置範囲であり、予め定められた撮影画像上の基準位置に対する画像上の位置座標などで表される。
【0043】
検出部55には、撮影部42から出力されるフレーム画像データ44が入力される。この検出部55は、分包包装材27内に落下する1分包分の薬剤23を連続撮影して得られたフレーム画像データ44のそれぞれから薬剤23を示す薬剤領域65(
図5参照)を検出する。
【0044】
図4に示すように、検出部55は、スタートトリガ信号61が入力されてから予め定めた期間(時間又はフレーム数)内に撮影部42から出力された複数のフレーム画像データ44を、1つの分包包装材27に対応するフレーム画像データ群GPとして選択する。例えば、検出部55は、第N回目のスタートトリガ信号61が入力されてから予め定めた期間内に撮影部42から出力されたフレーム画像データ44を、第N番目の分包包装材27に対応するフレーム画像データ群GPとして選択する。
【0045】
次いで
図5に示すように、検出部55は、フレーム画像データ群GPを構成する各フレーム画像データ44を解析して、各フレーム画像データ44のそれぞれから薬剤領域65を検出する。例えば、検出部55は、各フレーム画像データ44に対して公知のエッジ抽出処理やセグメンテーション処理を行い、画像内の薬剤23の輪郭を抽出することで、薬剤領域65を検出する。また、調剤情報20により各分包包装材27に分包される薬剤23の薬種は既知であり、薬種毎の薬剤23の外観(形、大きさ、色)も既知である。従って、各種の薬剤23の画像データベースを予め用意しておき、テンプレートマッチング処理等を行うことで、画像内の薬剤領域65を検出してもよい。なお、図中に記載されている「A、B、C、・・・」は、薬剤23の薬種を示している。
【0046】
検出部55は、フレーム画像データ群GPを構成する各フレーム画像データ44内の薬剤領域65を示す薬剤領域情報67(
図3参照)を追跡部56へ出力する。以下、検出部55は、分包機制御部46から新たなスタートトリガ信号61が入力される毎に、フレーム画像データ群GPの選択と、薬剤領域65の検出とを行って、新たな薬剤領域情報67を追跡部56へ出力する。
【0047】
図3、
図6から
図9に示すように、追跡部56は、検出部55から入力される薬剤領域情報67に基づき、フレーム画像データ群GPを構成する各フレーム画像データ44上での薬剤23の軌跡69を求める。なお、
図6から
図9はフレーム画像データ群GPを構成するフレーム画像データ44であって、
図6から
図9に向かうに従って時間的に後の画像となり、
図9がフレーム画像データ群GPの最後のフレーム画像データ44である。また、
図6から
図9では図面の煩雑化を防止するため、薬剤領域65の図示は省略する。
【0048】
最初に追跡部56は、薬剤領域情報67に基づき、フレーム画像データ群GPを構成する各フレーム画像データ44内の各薬剤領域65についてフレーム画像データ44間での対応付け(追跡)を行う。
【0049】
具体的に説明すると、一般的にフレーム番号の近いフレーム画像データ44間では同一の薬剤23に対応する薬剤領域65が似た大きさ、形となる。このため、フレーム画像データ44間において同一の薬剤領域65に対応する信号の関係も似たものになるので、信号の関係が似たものを判別することで、各フレーム画像データ44間での各薬剤領域65の対応付け(追跡)を行うことができる。また、各薬剤23はホッパ38から自由落下するので、分包包装材27の内面に衝突するまでは姿勢(向き)や進行方向が大幅に変わる可能性は低い。従って、例えば、確率分布を用いて各フレーム画像データ44間での各薬剤領域65の対応付け(追跡)を行うことができる。なお、各薬剤領域65の対応付け(追跡)を行う方法は特に限定されず、公知の各種方法を用いることができる。
【0050】
次いで、追跡部56は、各フレーム画像データ44間での各薬剤領域65の対応付け(追跡)を行った結果に基づき、各フレーム画像データ44上での各薬剤23の軌跡69を求めて、その結果を示す軌跡情報71を計数部57へ出力する(
図9参照)。以下、追跡部56は、検出部55から新たな薬剤領域情報67が入力される毎に軌跡情報71を求めて計数部57へ出力する。
【0051】
計数部57は、追跡部56から入力された軌跡情報71と、分包包装材位置設定部52から入力された分包包装材情報63とに基づき、追跡部56が求めた軌跡69と、ホッパ38から落下した薬剤23が投入される分包包装材27との位置関係を比較する。なお、撮影部42から分包包装材27までの距離や、撮影部42の撮影倍率などは既知であるので、分包包装材情報63から各フレーム画像データ44内での分包包装材27の範囲は定まる。従って、軌跡69と分包包装材27との位置関係を比較することができる。そして、計数部57は、各フレーム画像データ44上で分包包装材27の範囲内に終端がある軌跡69の最大数を、この分包包装材27に分包された薬剤23の個数として計数する。軌跡69の最大数を薬剤23の個数とするのは、一部のフレーム画像データ44上で薬剤23同士の重なりによる隠れが発生しても正しく薬剤23を計数するためである。
【0052】
この際に、
図10に示すように計数部57は、軌跡69と分包包装材27との位置関係を比較した結果に基づき、追跡部56が求めた軌跡69の中に分包包装材27の範囲外に終端が達している軌跡69
NG1があるか否かを判定する。分包包装材27は右斜め下方に下り傾斜となるため、分包包装材27内に投入された薬剤23は、先に熱溶着された分包包装材27の右端部分まで移動してそこに留まる。このため、軌跡69の終端が分包包装材27の範囲内にあるか否かに基づいて、薬剤23が分包包装材27内にあるか、あるいは分包包装材27の外部に落下したかを判定することができる。従って、計数部57は、軌跡69の計数を行う際に、その終端が分包包装材27の範囲外に達している軌跡69
NG1は計数の対象とはしない。
【0053】
また、
図11に示すように、計数部57は、追跡部56が求めた個々の軌跡69がそれぞれ予め定めた一定値以上の長さを有するか否かを判定する。例えば2個の薬剤23が分包包装材27内に落下する途中で重なり合うことで一方(ここでは薬種B)が他方(ここでは薬種C)の影に隠れた場合には、薬種Bの薬剤23の軌跡69が一旦途切れてから再度現れることになる。この場合に、計数部57は一旦途切れている薬種Bの薬剤23の軌跡69を「2本」と計数するおそれがある。従って、同一の薬剤23の軌跡69を重複して計数することを防止するため、計数部57は、一定値以上の長さを有さない軌跡69
NG2は計数の対象とはしない。
【0054】
このように計数部57は、軌跡情報71と分包包装材情報63とに基づき、分包包装材27に分包された薬剤23の個数を計数して、その計数結果である計数情報73を照合部58へ出力する。以下、計数部57は、追跡部56から新たな軌跡情報71が入力される毎に、分包包装材27に分包された薬剤23の個数(所定条件を満たす軌跡69の最大数)を計数して、計数情報73を照合部58へ出力する。これにより、各分包包装材27に分包された薬剤23の個数を判別できる。
【0055】
図3に戻って、照合部58は、通信I/F59を介してレセプトコンピュータ15から取得した調剤情報20に基づき、分包包装材27毎に分包される薬剤23の個数を求めて調剤個数情報として記憶している。そして、照合部58は、計数部57から新たな計数情報73が入力される度に、新たな計数情報73と、この計数情報73に対応する分包包装材27の調剤個数情報とを照合して、照合結果75を分包機制御部46へ出力する。なお、この照合結果75には、計数情報73と調剤個数情報とが一致(OK)または不一致(NG)である旨の情報の他に、照合対象となる分包包装材27に分包された1分包分を特定する情報が含まれる。
【0056】
図12に示すように、分包機制御部46は、照合部58から照合結果75が入力される度に、表示制御部51を制御して、この照合結果75(例えば、OKまたはNG)をその照合対象となった分包包装材27に分包された1分包分を識別可能な態様で表示部50に表示させる。
【0057】
[自動薬剤分包機の作用]
次に、
図13を用いて上記構成の自動薬剤分包機25の作用について説明を行う。最初に薬剤師等は、ピッキング作業12にてピッキングした薬剤23を自動薬剤分包機25のトレイ26に1分包分毎にセットする(ステップS1)。次いで、薬剤師等は、自動薬剤分包機25の図示しない操作部等により分包開始操作を行う(ステップS2)。これにより、分包機制御部46は、自動薬剤分包機25の各部を制御して、薬剤23の自動分包を開始する。
【0058】
分包機制御部46の制御の下、撮影部42が動画撮影を開始してフレーム画像データ44を検出部55へ逐次に出力する(ステップS3、撮影ステップ)。また同時に、搬送制御部48が搬送ローラ33の回転駆動を制御して、熱溶着シート30を間欠的に搬送させる(ステップS4)。
【0059】
分包機制御部46は、熱溶着シート30の第1番目の分包包装材27となる領域の右端部分が熱シール装置40まで搬送された場合に、熱シール制御部49を制御して、熱シール装置40により第1番目の分包包装材27の右端部分及び開口36の一部分を熱溶着させる。
【0060】
次いで、搬送ローラ33により熱溶着シート30が1回間欠搬送された後、分包機制御部46は、薬剤投入制御部47を制御して、トレイ26から第1番目(N=1)の分包包装材27に対応する1分包分の薬剤23をホッパ38に投入する(ステップS5,S6)。これにより、1分包分の薬剤23がホッパ38から第1番目の分包包装材27内に自由落下した後、先に熱溶着された右端部分まで移動してそこに留まる。
【0061】
また、分包機制御部46は、薬剤投入制御部47によってトレイ26から1分包分の薬剤23が投入されるタイミングに合わせて、スタートトリガ信号61を検出部55へ出力する(ステップS7)。
【0062】
検出部55は、分包機制御部46からスタートトリガ信号61が入力されてから予め定めた期間内に撮影部42から出力された複数のフレーム画像データ44を、第1番目の分包包装材27に対応するフレーム画像データ群GPとして選択する(ステップS8)。次いで、検出部55は、フレーム画像データ群GPを構成する各フレーム画像データ44を解析して、各フレーム画像データ44のそれぞれから薬剤領域65を検出し、薬剤領域情報67を追跡部56へ出力する(ステップS9、検出ステップ)。
【0063】
追跡部56は、検出部55から入力された薬剤領域情報67に基づき、前述の
図6から
図9に示したように、各フレーム画像データ44間での各薬剤領域65の対応付けを行うことで、各フレーム画像データ44上での各薬剤23の軌跡69を求める(ステップS10、追跡ステップ)。そして、追跡部56は、軌跡情報71を計数部57へ出力する。
【0064】
計数部57は、追跡部56から入力された軌跡情報71と、分包包装材位置設定部52から入力された分包包装材情報63とに基づき、追跡部56が求めた軌跡69と、第1番目の分包包装材27との位置関係を比較する。そして、計数部57は、追跡部56が求めた個々の軌跡69のうち、前述の軌跡69
NG1(
図10参照)や軌跡69
NG2(
図11参照)を除き、終端が第1番目の分包包装材27の範囲内にある軌跡69を計数する(ステップS11、計数ステップ)。
【0065】
終端が第1番目の分包包装材27の範囲外に達している軌跡69
NG1を計数の対象から除くことで、第1番目の分包包装材27の外部に落下した薬剤23の軌跡69を計数部57の計数対象から除外することができる。また、一定値以上の長さを有さない軌跡69
NG2を計数対象から除くことで、同一の薬剤23に対応する軌跡69を重複して計数することが防止される。これにより、第1番目の分包包装材27内に分包される薬剤23の個数をより正確に計数することができる。
【0066】
次いで、計数部57は、計数した軌跡69の最大数を第1番目の分包包装材27に分包された薬剤23の個数として求め、その結果である計数情報73を照合部58へ出力する。計数した軌跡69の最大数を薬剤23の個数とすることにより、一部のフレーム画像データ44上で薬剤23同士の重なりによる隠れが発生しても正しく薬剤23を計数することが可能となる。その結果、分包包装材27内に分包される薬剤23の個数をより正確に計数することができる。
【0067】
照合部58は、計数部57から入力された計数情報73と、通信I/F59により取得した調剤情報20から求めた第1番目の分包包装材27の調剤個数情報とを照合し、照合結果75を分包機制御部46へ出力する(ステップS12)。
【0068】
分包機制御部46は、照合部58から照合結果75が入力された場合に、
図12に示したように、表示制御部51を制御して、第1番目の分包包装材27の照合結果75を表示部50に表示させる(ステップS13)。これにより、薬剤師による調剤監査時などに、照合結果75が不一致となった分包包装材27に分包された1分包分を薬剤師が容易に判別することができる。
【0069】
次いで、分包機制御部46は、熱シール制御部49を制御して熱シール装置40により第1番目の分包包装材27の左端部分及び開口36の残り部分を熱溶着させる(ステップS14)。これにより、第1番目の分包包装材27の三方が熱溶着によりシールされて、第1番目の分包包装材27の内部に1分包分の薬剤23が封入される。なお、この熱溶着処理により、第2番目の分包包装材27の右端部分及び開口36の一部分も同時に熱溶着される。
【0070】
熱シール装置40による熱溶着後、搬送ローラ33により熱溶着シート30が1回間欠搬送される。そして、薬剤23の自動分包を継続する場合(ステップS15でYES、ステップS16)には、前述のステップS6からステップS14までの処理が繰り返し実行される。これにより、第2番目の分包包装材27内への1分包分の薬剤23の投入、第2番目の分包包装材27内の薬剤23の個数の計数、及び照合結果75の表示等が行われる。以下、トレイ26にセットされた全ての薬剤23の分包が終了するまで(ステップS15でNO)、前述の各処理(薬剤23の投入、薬剤23の個数の計数、照合結果表示等)が繰り返し行われる。
【0071】
[自動薬剤分包機の作用効果]
このように本発明の自動薬剤分包機25では、分包包装材27内に落下する1分包分の薬剤23を時間的に連続撮影して得られた各フレーム画像データ44上での薬剤23の軌跡69を計数することにより、分包包装材27に分包される直前の薬剤23の個数を計数することができる。これにより、薬剤23同士の重なりに影響されることなく、正確に薬剤23を計数することができる。従って、分包包装材27内の空間に余裕がない場合などにおいても分包包装材27に分包される薬剤23を正確に計数することができる。また、本発明は、基本的には分包包装材27を撮影可能な位置に撮影部42を設けることにより実現可能であるので、低コストに本発明を実現することができる。
【0072】
[自動薬剤分包機の他実施形態]
上記実施形態の自動薬剤分包機25ではホッパ38から分包包装材27内に落下する1分包分の薬剤23を連続撮影する。この際に、1分包分の薬剤23が一塊となった状態でホッパ38から落下すると、一部の薬剤23の軌跡69を検出することができず、正確な薬剤23の個数の計数を行えない可能性がある。
【0073】
そこで、例えば
図14に示すように、ホッパ38の内面に落下中の薬剤23が衝突する突起80(曲面等でも可)を設けたり、あるいはホッパ38に振動を付与する振動発生器81を取り付けたりしてもよい。これにより、1分包分の薬剤23が一塊となった状態で落下することが抑制されるので、分包包装材27内に分包される薬剤23の個数をより正確に計数することができる。
【0074】
上記実施形態では表示部50に照合結果75を表示させているが、例えば、
図15に示すように、計数部57にて終端が分包包装材27の範囲外に達している軌跡69
NG1(
図10参照)が検出された場合、すなわち、分包包装材27の外部に薬剤23が落下した場合に、その旨を示す警告情報84を表示部(第2表示部)50に表示させてもよい。
【0075】
計数部57は、軌跡情報71と分包包装材情報63とに基づき軌跡69と分包包装材27との位置関係を比較した結果、追跡部56が求めた軌跡69の中に軌跡69
NG1が含まれている場合には、その旨を示す軌跡情報71
NGを分包機制御部46に出力する。この軌跡情報71
NGには、該当する分包包装材27を識別可能な情報が含まれている。
【0076】
分包機制御部46は、計数部57から軌跡情報71
NGが入力された場合に、この軌跡情報71
NGに基づき、該当する分包包装材27(図中では第N番目の分包包装材27)にて薬剤23の外部への落下が発生したことを示す警告情報84を生成する。そして、分包機制御部46は、表示制御部51を制御して警告情報84を表示部50に表示させる。これにより、薬剤23が分包包装材27の外部に落下したことを薬剤師等に知らせることができる。また、この際に、自動薬剤分包機25による自動分包を一時停止させてもよい。
【0077】
上記実施形態では、分包機制御部46から検出部55に入力されるスタートトリガ信号61に基づき、検出部55にてフレーム画像データ群GPの選択(
図4参照)を行っているが、例えばスタートトリガ信号61が入力されてから予め定めた期間内だけ撮影部42による撮影を行うようにしてもよい。この場合には、検出部55にてフレーム画像データ群GPの選択を行う必要がなくなる。
【0078】
上記実施形態では、照合結果75や警告情報84を表示部50(第1表示部、第2表示部)の画面上に表示しているが、例えばスピーカ等の音声表示部を用いて音声表示してもよく、本発明の第1表示部及び第2表示部として各種の表示部を用いてもよい。
【0079】
上記実施形態ではホッパ38から分包包装材27内に薬剤23を投入しているが、分包包装材27内に薬剤23を投入する薬剤投入部はホッパ38に限定されるものではなく、各種の薬剤投入部を用いてよい。
【0080】
上記実施形態では、計数部57が、分包包装材情報63に基づいて軌跡69と分包包装材27との位置関係を比較しているが、例えば、各フレーム画像データ44を解析して分包包装材27を検出することにより、軌跡69と分包包装材27との位置関係を比較してもよい。
【0081】
上記実施形態では、分包包装材27の一面と対向する位置に配置された撮影部4
2により撮影を行っているが、分包包装材27の開口36に対向する位置に撮影部を配置して、薬剤投入方向からの撮影を行ってもよい。この場合には、非透明の分包包装材27を用いることができる。
【0082】
上記実施形態では、各フレーム画像データ44からそれぞれから薬剤領域65を検出することにより各薬剤23の軌跡69を求めているが、追跡の手法によっては全てのフレーム画像データ44から薬剤領域65を検出することなく各薬剤23の軌跡69を求めることができる。
【0083】
上記実施形態では、本発明の薬剤計数装置を備える分包機として
図2等に示した自動薬剤分包機25を例に挙げて説明を行ったが、本発明の薬剤計数装置は薬剤23を分包包装材27に分包する各種の分包機に適用することができる。