(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明を説明する。
【0009】
本発明の基材は、表面窒素存在比率が、0.1〜1atom%である基材である。
基材の密着性の観点で、基材の表面炭素存在比率が、55〜70atom%であることが好ましく、基材の表面酸素存在比率が、30〜45atom%であることが好ましい。表面窒素存在比率が、0.1〜1atom%であり、表面炭素存在比率が、54.9〜70atom%であり、表面酸素存在比率が、29〜45atom%である基材がより好ましい。ただし、これら表面元素存在比率の和は100を超えない。
表面窒素存在比率、表面炭素存在比率および表面酸素存在比率は、X線光電子分光分析法(XPS)により基材の表面を分析することにより測定することができる。
【0010】
かかる基材は、例えば、真空下または大気圧下、プラズマで基材の表面を処理する方法、基材表面をレーザー処理する方法、基材表面をオゾン処理する方法、基材表面をケン化処理する方法または基材表面を火炎処理する方法により調製することができる。また、水酸基またはその前駆基を有しない材料からなるフィルムを準備し、このフィルム表面にカップリング剤を塗布するプライマー処理する方法や水酸基を有するモノマーや水酸基を有するポリマーを基材表面に付着させた後、放射線、プラズマまたは紫外線を照射して反応させるグラフト重合法により調製することもできる。中でも、真空下や大気圧下で、基材表面をプラズマ処理する方法が好ましい。
【0011】
プラズマで基材の表面処理を行う方法としては、
大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、プラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法、
対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法、および、
低圧条件下で、グロー放電プラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法が挙げられる。
【0012】
中でも、大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、プラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法、または、対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法が好ましい。かかるプラズマによる表面処理は、通常、市販のプラズマ表面処理装置により行われる。
【0013】
特に、窒素および酸素を含む雰囲気下、200mJ/cm
2以下のエネルギーで、基材の表面をプラズマ処理することにより調製される基材が好ましい。基材を表面処理する際の処理エネルギーは、プラズマを発生させる際の電力、電極の放電幅および基材のライン速度から算出することができる。基材の密着性の観点から、基材を120mJ/cm
2以下のエネルギーで処理することが好ましく、100mJ/cm
2以下のエネルギーで処理することがより好ましい。また、基材を30mJ/cm
2以上のエネルギーで処理することが好ましい。
【0014】
窒素および酸素を含む雰囲気中の窒素に対する酸素の体積含有比(酸素:窒素)は、0.01:99.99〜15:85が好ましく、0.05:99.95〜10:90がより好ましく、0.05:99.95〜5:95がさらに好ましく、0.05:99.95〜1:99が特に好ましい。
【0015】
基材には、通常透明基材が用いられる。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透光性を有する基材を意味し、透光性とは、波長380〜780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、ガラスおよび透光性樹脂基材が挙げられ、透光性樹脂基材が好ましい。基材は、通常フィルム状のものが用いられる。
【0016】
透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;セルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルフォン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;およびポリフェニレンオキシドが挙げられる。中でも、トリアセチルセルロースが好ましい。トリアセチルセルロースは、ケン化したトリアセチルセルロースとケン化していないトリアセチルセルロースを含む。基材は、ケン化したトリアセチルセルロースであることが好ましい。
【0017】
本発明の積層体は、上記の表面窒素存在比率が、0.1〜1atom%である基材の表面に、配向膜が設けられている。配向膜は限定されないが、後述の光学異方性層を形成するための組成物の塗布などにより溶解しない程度の溶剤耐性を有することが好ましい。また、溶剤の除去等の加熱処理における耐熱性を有することが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーから形成された配向膜が挙げられ、光配向性ポリマーから形成された配向膜が好ましい。
【0018】
配向膜に配向規制力を付与する方法としては、ラビングによる方法が挙げられる。また、光配向性ポリマーから形成された配向膜の場合は、偏光を照射する方法も挙げられる。
【0019】
光配向性ポリマーとしては、感光性構造を有するポリマーが挙げられる。感光性構造を有する光配向性ポリマーに偏光を照射すると、照射された部分の感光性構造が異性化または架橋が起こり、それによって、光配向性ポリマーが配向し、配向規制力が付与された配向膜が得られる。
【0020】
感光性構造としては、アゾベンゼン構造、マレイミド構造、カルコン構造、桂皮酸構造、1,2−ビニレン構造、1,2−アセチレン構造、スピロピラン構造、スピロベンゾピラン構造およびフルギド構造が挙げられる。2種以上の感光性構造を有するポリマーを組み合わせて用いてもよい。光配向性ポリマーは、1種以上の感光性構造を有する単量体を、脱水、脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合または開環重合させることにより得ることができる。
【0021】
光配向性ポリマーとしては、特許第4450261号、特許第4011652号、特開2010−49230号公報、特許第4404090号、特開2007−156439号公報および特開2007−232934号公報に記載される光配向性ポリマーが挙げられる。
【0022】
光配向性ポリマーとしては、後述の光学異方性層形成時の耐久性の観点から、光照射によって架橋構造を形成するポリマーであることが好ましい。
【0023】
配向膜は、通常、配向性ポリマー(好ましくは光配向性ポリマー)を含む組成物を前記基材の表面窒素存在比率が0.1〜1atom%である面に塗布することにより形成され、該組成物における光配向性ポリマーの含有量は、組成物の総質量に対して、0.1〜30質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましい。
【0024】
光配向性ポリマーを含む組成物は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤は、光配向性ポリマーの種類等により適宜選択できるが、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤が挙げられる。二種以上の溶剤を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
光配向性ポリマーを含む組成物は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、後述する光学異方性層との密着性の向上や該組成物の粘度の調整の観点から、その分子内に炭素−炭素不飽和結合と活性水素反応性基とを有するものが好ましい。”活性水素反応性基”とは、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH
2)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、具体的には、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアナト基、チオイソシアナト基および無水マレイン酸基が挙げられる。添加剤が有する炭素−炭素不飽和結合の個数は、1〜20個が好ましく、1〜10個がより好ましい。添加剤が有する活性水素反応性基の個数は、1〜20個が好ましく、1〜10個がより好ましい。
【0026】
添加剤は、活性水素反応性基を少なくとも2個有するものが好ましく、活性水素反応性基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
添加剤が有する炭素−炭素不飽和結合は、炭素−炭素二重結合であってもよいし、炭素−炭素三重結合であってもよいが、炭素−炭素二重結合が好ましい。ビニル基および/または(メタ)アクリル基を含む添加剤が好ましい。活性水素反応性基が、エポキシ基、グリシジル基およびイソシアネト基からなる群から選ばれる少なくとも1種である添加剤が好ましく、アクリル基とイソシアナト基とを有する添加剤がより好ましい。
【0028】
添加剤の具体例としては、メタクリロキシグリシジルエーテルやアクリロキシグリシジルエーテルなどの、(メタ)アクリル基とエポキシ基とを有する化合物;オキセタンアクリレートやオキセタンメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とオキセタン基とを有する化合物;ラクトンアクリレートやラクトンメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とラクトン基とを有する化合物;ビニルオキサゾリンやイソプロペニルオキサゾリンなどの、ビニル基とオキサゾリン基とを有する化合物;イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート、2イソシアナトエチルメタクリレートなどの、(メタ)アクリル基とイソシアナト基とを有する化合物のオリゴマーが挙げられる。また、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、無水マレイン酸、ビニル無水マレイン酸などの、ビニル基やビニレン基と酸無水物構造とを有する化合物も挙げられる。中でも、メタクリロキシグリシジルエーテル、アクリロキシグリシジルエーテル、イソシアナトメチルアクリレート、イソシアナトメチルメタクリレート、ビニルオキサゾリン、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートおよびこれらのオリゴマーが好ましく、イソシアナトメチルアクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレートおよびそれらのオリゴマーがより好ましい。
【0029】
イソシアナト基を有する添加剤の具体例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
[式(1)中、
nは1〜10の整数を表わし、R
1は、炭素数2〜20の2価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、または、炭素数5〜20の2価の芳香族炭化水素基を表わす。各繰り返し単位にある2つのR
2は、一方が−NH−であり、他方がN−C(=O)−R
3で示される基である。R
3は、水酸基または炭素−炭素不飽和結合を有する基を表わす。ただし、式(1)中のR
3のうち、少なくとも1つのR
3は炭素−炭素不飽和結合を有する基である。]
【0030】
中でも、下記式(2)で表される化合物がより好ましい。
[式(2)中、nは1〜10の整数を表わす。]
式(2)で表される化合物は、Laromer(登録商標)LR−9000(BASF社製)等の市販品をそのまま用いてもよいし、必要に応じて精製した後用いてもよい。
【0031】
光配向性ポリマーを含む組成物中の添加剤の含有量は、該組成物の総質量に対して、0.01〜10質量%の範囲が好ましく、0.02〜5質量%の範囲がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物中の光配向性ポリマーの反応性を低下させることがない。
【0032】
光配向性ポリマーを含む組成物を、前記基材上に塗布し、得られた塗布膜を乾燥する前に、または、乾燥した後、偏光照射することにより、本発明の積層体を作製することができる。基材上への該組成物の塗布方法としては、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAP(キャップ)コーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法、スピンコーティング法およびバーコーターによる塗布方法が挙げられる。中でも、RolltoRoll形式で連続的に基材上に組成物を塗布できる点で、CAPコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法、ダイコーティング法およびバーコーターによる塗布方法が好ましい。
【0033】
基材上の塗布膜を乾燥することにより、塗布膜に含まれる溶剤などの低沸点成分が除去される。
【0034】
乾燥方法としては、自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥およびこれらを組み合わせた方法が挙げられる。乾燥温度は、10〜250℃が好ましく、25〜200℃がより好ましい。乾燥時間は、溶剤の種類にもよるが、5秒間〜60分間が好ましく、10秒間〜30分間がより好ましい。
【0035】
偏光照射は、例えば、特開2006−323060号公報に記載される装置を用いて行うことができる。また、形成された塗布膜上で、所望の複数領域に対応したフォトマスクを介して、当該領域毎に、直線偏光紫外線等の偏光の照射を繰り返し行うことにより、パターン化配向膜を形成することもできる。フォトマスクとしては、通常、石英ガラス、ソーダライムガラスまたはポリエステルなどのフィルム上に、遮光パターンを設けたものが用いられる。遮光パターンで覆われている部分は露光される光が遮断され、覆われていない部分は露光される光が透過される。熱膨張の影響が小さいという点で、石英ガラスが好ましい。光配向性ポリマーの反応性の点で、照射する光は紫外線であることが好ましい。
【0036】
パターン化配向膜を含む積層体は、例えば、下記の方法により作製することができる。
(1)基材上に形成された塗布膜に、第1のパターン領域に対応した空隙部を有する第1のフォトマスクを介して、第1の偏光方向を有する第1の偏光を照射する(第1の偏光照射)。第1の偏光照射によって、上記第1の偏光方向に対応する配向規制力が付与された第1のパターン領域が形成される。
(2)第2のパターン領域に対応した空隙部を有する第2のフォトマスクを介して、上記第1の偏光方向とは異なる偏光方向を有する(例えば、第1の偏光方向に対して垂直な方向)を有する第2の偏光を照射する(第2の偏光照射)。第2の偏光照射によって、上記第2の偏光方向に対応する配向規制力が付与された第2のパターン領域が形成される。
上記(1)および(2)の工程を、1回以上行うことにより、互いに配向規制力の方向が異なる2以上のパターン領域を有するパターン化配向膜を含む積層体が得られる。
【0037】
配向膜の膜厚は、通常10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。
【0038】
本発明の積層体は、高い密着性を有する基材を含むため、配向膜の基材からの剥離が抑制できる。密着性の評価は、JIS−K5600に則った密着性試験で行うことができる。例えば、コーテック株式会社製クロスカットガイドIシリーズ(CCI−1、1mm間隔、25マス用)等の市販の装置を用いて密着性試験を行えばよい。例えば、コーテック株式会社製クロスカットガイドIシリーズ(CCI−1、1mm間隔、25マス用)を用いて、本発明の積層体の密着性試験を行うと、配向膜が基材から剥離せずに保持されるマスは、通常、25マス中9マス以上であり、面積基準で、配向膜の36%以上が基材から剥離しない状態で保持される。
【0039】
”光学フィルム”とは、光を透過し得るものであり、屈折、複屈折等の光学的な機能を有するフィルムを意味する。
【0040】
本発明の光学フィルムは、前記積層体の配向膜上に、光学異方性層が形成されており、位相差性を発現するフィルムである。
【0041】
光学異方性層は、例えば、液晶化合物を配向させることにより形成することができる。光学異方性層の形成には、好ましくは、液晶化合物を含む光学異方層形成用組成物が用いられる。液晶化合物としては、重合性液晶が好ましい。光学異方層形成用組成物は、2種以上の液晶化合物(好ましくは、重合性液晶)を含んでもよい。
【0042】
重合性液晶としては、式(X)で表される基を含む化合物(以下「化合物(X)」という場合がある)が挙げられる。
P
11−B
11−E
11−B
12−A
11−B
13− (X)
[式(X)中、P
11は、重合性基を表わす。
A
11は、2価の脂環式炭化水素基または2価の芳香族炭化水素基を表わす。該2価の脂環式炭化水素基および2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1〜6のアルキル基および該炭素数1〜6アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
B
11は、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NR
16−、−NR
16−CO−、−CO−、−CS−または単結合を表わす。R
16は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表わす。
B
12およびB
13は、それぞれ独立に、−C≡C−、−CH=CH−、−CH
2−CH
2−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR
16−、−NR
16−C(=O)−、−OCH
2−、−OCF
2−、−CH
2O−、−CF
2O−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−または単結合を表わす。
E
11は、炭素数1〜12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1〜5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する−CH
2−は、−O−または−CO−に置き換わっていてもよい。]
【0043】
A
11の芳香族炭化水素基および脂環式炭化水素基の炭素数は、3〜18の範囲であることが好ましく、5〜12の範囲であることがより好ましく、5または6であることが特に好ましい。A
11としては、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、1,4−フェニレン基が好ましい。
【0044】
E
11としては、直鎖状の炭素数1〜12のアルカンジイル基が好ましい。該アルカンジイル基を構成する−CH
2−は、−O−に置き換っていてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、へキサン−1,6−ジイル基、へプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基およびドデカン−1,12−ジイル基等の炭素数1〜12の直鎖状アルカンジイル基;−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−および−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−等が挙げられる。
【0045】
P
11で示される重合性基としては、重合反応性、特に光重合反応性が高いという点で、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易な上、液晶化合物の製造自体も容易であることから、重合性基は、下記の式(P−11)〜式(P−15)で表わされる基であることが好ましい。
[式(P−11)〜(P−15)中、
R
17〜R
21はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基または水素原子を表わす。]
【0046】
式(P−11)〜式(P−15)で表わされる基の具体例としては、下記式(P−16)〜式(P−20)で表わされる基が挙げられる。
【0047】
P
11は、式(P−14)〜式(P−20)で表わされる基であることが好ましく、ビニル基、p−スチルベン基、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
P
11−B
11−で表わされる基が、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。
【0048】
化合物(X)としては、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
P
11-B
11-E
11-B
12-A
11-B
13-A
12-B
14-A
13-B
15-A
14-B
16-E
12-B
17-P
12 (I)
P
11-B
11-E
11-B
12-A
11-B
13-A
12-B
14-A
13-B
15-A
14-F
11 (II)
P
11-B
11-E
11-B
12-A
11-B
13-A
12-B
14-A
13-B
15-E
12-B
17-P
12 (III)
P
11-B
11-E
11-B
12-A
11-B
13-A
12-B
14-A
13-F
11 (IV)
P
11-B
11-E
11-B
12-A
11-B
13-A
12-B
14-E
12-B
17-P
12 (V)
P
11-B
11-E
11-B
12-A
11-B
13-A
12-F
11 (VI)
(式中、
A
12〜A
14はそれぞれ独立に、A
11と同義であり、B
14〜B
16はそれぞれ独立に、B
12と同義であり、B
17は、B
11と同義であり、E
12は、E
11と同義である。
F
11は、水素原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(−SO
3H)、カルボキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わし、該アルキル基およびアルコキシ基を構成する−CH
2−は、−O−に置き換っていてもよい。)
【0049】
重合性液晶の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、特開2010−31223号公報、特開2010−270108号公報、特開2011−6360号公報および特開2011−207765号公報記載の重合性液晶化合物が挙げられる。
【0050】
化合物(X)の具体例としては、下記式(I−1)〜式(I−4)、式(II−1)〜式(II−4)、式(III−1)〜式(III−26)、式(IV−1)〜式(IV−19)、式(V−1)〜式(V−2)および式(VI−1)〜式(VI−6)で表わされる化合物が挙げられる。なお、下記式中、k1およびk2は、それぞれ独立して、2〜12の整数を表わす。これらの化合物(X)は、その合成の容易さ、または、入手の容易さの点で、好ましい。
【0059】
光学異方性層形成用組成物は、上記液晶化合物に加えて、重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、カイラル剤、溶剤等を含んでもよい。液晶化合物が重合性液晶である場合、光学異方性層形成用組成物は重合開始剤を含むことが好ましい。
【0060】
[重合開始剤]
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170(以上、全て株式会社ADEKA製)、TAZ−A、TAZ−PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)およびTAZ−104(三和ケミカル社製)を挙げることができる。
【0061】
光学異方性層形成用組成物中の重合開始剤の含有量は、該光学異方性層形成用組成物に含まれる重合性液晶(好ましくは、化合物(X))100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶の配向を乱すことなく、重合性液晶を重合させることができる。
【0062】
[重合禁止剤]
光学異方性層形成用組成物は、重合性液晶の重合反応をコントロールするために、重合禁止剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類;ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類;ピロガロール類、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤;チオフェノール類;β−ナフチルアミン類およびβ−ナフトール類が挙げられる。
重合禁止剤を用いることにより、形成される光学異方性層の安定性を向上させることができる。光学異方性層形成用組成物における重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶の配向を乱すことなく、重合させることができる。
【0063】
[光増感剤]
光増感剤としては、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセンおよびアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類;フェノチアジン;ルブレンが挙げられる。
光増感剤を用いることにより、重合性液晶の重合を高感度化することができる。光増感剤の含有量は、重合性液晶100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。
【0064】
[レベリング剤]
レベリング剤としては、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系およびパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。具体的には、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22−161A、KF6001(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)、フロリナート(fluorinert)(登録商標)FC−72、同FC−40、同FC−43、同FC−3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)R−08、同R−30、同R−90、同F−410、同F−411、同F−443、同F−445、同F−470、同F−477、同F−479、同F−482、同F−483(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S−381、同S−382、同S−383、同S−393、同SC−101、同SC−105、KH−40、SA−100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100、BYK−352、BYK−353、BYK−361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)が挙げられる。二種以上のレベリング剤を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
レベリング剤を用いることにより、より平滑な光学異方層を形成することができる。また、光学異方層の製造過程で、光学異方性層形成用組成物の流動性を制御したり、光学異方層の架橋密度を調整したりすることができる。レベリング剤の含有量は、重合性液晶100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.1質量部〜10質量部である。
【0066】
[カイラル剤]
カイラル剤としては、公知のカイラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)が挙げられる。
カイラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物としては、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が挙げられる。
具体的には、特開2007−269640号公報、特開2007−269639号公報、特開2007−176870号公報、特開2003−137887号公報、特表2000−515496号公報、特開2007−169178号公報および特表平9−506088号公報に記載されているような化合物が挙げられ、好ましくはBASFジャパン(株)製のpaliocolor(登録商標) LC756である。
カイラル剤を用いる場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは1.0質量部〜25質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物を重合する際に、該重合性液晶化合物の配向を乱すことをより抑制できる。
【0067】
[溶剤]
光学異方性層形成用組成物は、光学異方性層製造の操作性を良好にするために溶剤、特に有機溶剤を含むことが好ましい。有機溶剤としては、重合性液晶化合物等の光学異方性層形成用組成物の構成成分を溶解し得る有機溶剤が好ましく、重合性液晶化合物等の光学異方性層形成用組成物の構成成分を溶解し得る溶剤であって、且つ、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤がより好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノール等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非塩素化脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の非塩素化芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;およびクロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;が挙げられる。二種以上の有機溶剤を組み合わせて用いてもよい。中でも、アルコール溶剤、エステル溶剤、ケトン溶剤、非塩素化脂肪族炭化水素溶剤および非塩素化芳香族炭化水素溶剤が好ましい。
【0068】
光学異方性層形成用組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、固形分100質量部に対して、10質量部〜10000質量部が好ましく、より好ましくは100質量部〜5000質量部である。光学異方性層形成用組成物中の固形分濃度は、好ましくは2質量%〜50質量%であり、より好ましくは5〜50質量%である。”固形分”とは、光学異方性層形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計を意味する。
【0069】
本発明の積層体の配向膜上に、光学異方性層形成用組成物を塗布することにより、未重合フィルムが形成される。未重合フィルムがネマチック相等の液晶相を示す場合、モノドメイン配向による複屈折性を有する。
【0070】
光学異方性層形成用組成物を配向膜上に塗布する方法としては、前記した光配向性ポリマーを含む組成物の塗布方法と同じ方法が挙げられる。中でも、RolltoRoll形式で連続的に配向膜上に光学異方性層形成用組成物を塗布できる点で、CAPコーティング法、インクジェット法、ディップコーティング法、スリットコーティング法、ダイコーティング法およびバーコーターによる塗布方法が好ましい。RolltoRoll形式該組成物を塗布する場合、前記基材上に光配向性ポリマーを含む組成物を塗布して、該基材上に配向膜を形成し、さらに得られた配向膜上に光学異方層を形成することを連続的に実施することもできる。
【0071】
未重合フィルムに含まれる重合性液晶化合物を重合し、硬化させることにより、光学フィルム、特に位相差性を有するフィルムが得られる。かくして得られる光学フィルムは、重合性液晶化合物の配向性が固定化されており、熱による複屈折の変化の影響を受けにくい。
【0072】
重合性液晶化合物を重合させる方法としては、光重合法が好ましい。光重合法によれば、低温で重合を実施できるため、耐熱性の点で、用いる基材の選択幅が広がる。光重合反応は、未重合フィルムに、可視光、紫外光またはレーザー光を照射することにより行われ、紫外光が好ましい。
【0073】
未重合フィルムにそのまま光照射を行ってもよいが、未重合フィルムを乾燥して、該未重合フィルムから溶剤を除去した後、光照射することが好ましい。乾燥(溶剤の除去)は、重合反応と並行して行ってもよいが、重合を行う前に、ほとんどの溶剤を除去しておくことが好ましい。溶剤の除去方法としては、前記の配向膜形成時の乾燥方法と同じ方法が挙げられる。中でも、自然乾燥または加熱乾燥が好ましい。乾燥温度は、0℃〜250℃の範囲が好ましく、50℃〜220℃の範囲がより好ましく、80℃〜170℃の範囲がさらに好ましい。乾燥時間は、10秒間〜60分間が好ましく、より好ましくは30秒間〜30分間である。
【0074】
本発明の光学フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、円偏光または楕円偏光を直線偏光に変換したり、直線偏光の偏光方向を変換したりするために用いられる位相差板として有用である。
【0075】
本発明の光学フィルムは、可視光領域における透明性に優れ、様々な表示装置用部材として使用し得る。本発明の光学フィルムの厚さは、その用途により、あるいは、その位相差値によって適宜調節すればよいが、0.1μm〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.2μm〜5μmであることがさらに好ましい。
【0076】
本発明の光学フィルムを複数枚積層させて用いてもよいし、他のフィルムと組み合わせて用いてもよい。他のフィルムと組み合わせて用いる場合には、視野角補償フィルム、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム、偏光フィルム(偏光板)、円偏光フィルム(円偏光板)、楕円偏光フィルム(楕円偏光板)および輝度向上フィルムとして利用することができる。
【0077】
本発明の光学フィルムは、光学異方層を形成する液晶化合物の配向状態によって光学特性を変化させることができ、VA(vertical alignment)モード、IPS(in-plane switching)モード、OCB(optically compensated bend)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード等の種々の液晶表示装置用の位相差板として使用することができる。
【0078】
本発明の光学フィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率をn
x、面内の遅相軸と直交する方向(進相軸方向)の屈折率をn
y、厚み方向の屈折率をn
zとした場合、以下のように分類できる。
n
x>n
y≒n
zのポジティブAプレート、
n
x≒n
y>n
zのネガティブCプレート、
n
x≒n
y<n
zのポジティブCプレート、
n
x≠n
y≠n
zのポジティブOプレートおよびネガティブOプレート
【0079】
本発明の光学フィルムの位相差値は、用いられる表示装置により、30〜300nmの範囲から適宜選択すればよい。
本発明の光学フィルムを広帯域λ/4板として用いる場合は、Re(549)は113〜163nmの範囲に、好ましくは130〜150nmの範囲に調整すればよい。広帯域λ/2板として用いる場合は、Re(549)は250〜300nmの範囲に、好ましくは265〜285nmの範囲に調整すればよい。位相差値が前記の値であると、広範の波長の光に対して、一様に偏光変換できる傾向がある。”広帯域λ/4板”とは、各波長の光に対して、その1/4の位相差値を発現する位相差フィルムを意味し、”広帯域λ/2板”とは、各波長の光に対して、その1/2の位相差値を発現する位相差フィルムを意味する。
【0080】
光学異方層形成用組成物中の液晶化合物の含有量を調整することにより、光学異方性層の層厚みを調整することができ、所望の位相差を与える光学フィルムが作製できる。得られる光学フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(4)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、Δn(λ)と膜厚dを適宜調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (4)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表わす。)
【0081】
本発明の光学フィルムは、高い密着性を有する基材を含むため、加工時の配向膜の基材からの剥離が抑制できる。密着性の評価は、JIS−K5600に則った密着性試験で行うことができる。例えば、コーテック株式会社製クロスカットガイドIシリーズ(CCI−1、1mm間隔、25マス用)等の市販の装置を用いて密着性試験を行えばよい。例えば、コーテック株式会社製クロスカットガイドIシリーズ(CCI−1、1mm間隔、25マス用)を用いて、本発明の光学フィルムの密着性試験を行うと、光学異方性層および配向膜が基材から剥離せずに保持されるマスは、通常、25マス中9マス以上であり、面積基準で、光学異方性層および配向膜の36%以上が基材から剥離しない状態で保持される。
【0082】
本発明の光学フィルムは、製造プロセスの簡略化およびコストの観点から、配向膜は、配向性ポリマー(好ましくは光配向性ポリマー)と1種の添加剤のみから構成されていることが好ましく、光学異方性層は、重合性液晶と重合開始剤とレベリング剤とから構成されていることが好ましい。
【0083】
本発明の光学フィルムは、偏光板を構成する部材としても有用である。本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムを少なくとも一つ含む。
偏光板の具体例としては、
図1(a)〜
図1(e)で示される偏光板が挙げられる。
図1(a)で示される偏光板4aは、本発明の光学フィルム1と、偏光フィルム層2とが、直接積層された偏光板であり、
図1(b)で示される偏光板4bは、本発明の光学フィルム1と偏光フィルム層2とが、接着剤層3’を介して貼り合わされた偏光板である。
図1(c)で示される偏光板4cは、本発明の光学フィルム1と、本発明の光学フィルム1’とを積層させ、さらに、本発明の光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを積層させた偏光板であり、
図1(d)で示される偏光板4dは、本発明の光学フィルム1と、本発明の光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本発明の光学フィルム1’上に偏光フィルム層2を積層させた偏光板である。
図1(e)で示される偏光板4eは、本発明の光学フィルム1と、本発明の光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本発明の光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを接着剤層3’を介して貼り合せた偏光板である。”接着剤”とは、接着剤および/または粘着剤の総称を意味する。
【0084】
偏光フィルム層2は、偏光機能を有するフィルムであればよく、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、および、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸してヨウ素や二色性色素を吸着させたフィルムが挙げられる。
【0085】
偏光フィルム層2は、必要に応じて、保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびポリフェニレンオキシドフィルムが挙げられる。
【0086】
接着剤層3および接着剤層3’に用いられる接着剤は、透明性が高く、耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。
【0087】
本発明のフラットパネル表示装置は、本発明の光学フィルムを備える。該表示装置としては、本発明の光学フィルムと液晶パネルとが貼り合わされた液晶パネルを備える液晶表示装置、および、本発明の光学フィルムと発光層とが貼り合わされた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう)パネルを備える有機EL表示装置が挙げられる。本発明の光学フィルムを備えたフラットパネル表示装置の実施形態として、液晶表示装置と、有機EL表示装置とについて、簡単に説明する。
【0088】
液晶表示装置としては、
図2(a)および
図2(b)に示す液晶表示装置10aおよび10bが挙げられる。
図2(a)に示す液晶表示装置10aでは、本発明の偏光板4と液晶パネル6とが、接着層5を介して貼り合わされている。
図2(b)に示す液晶表示装置10bでは、本発明の偏光板4が液晶パネル6の一方の面に、本発明の偏光板4’が液晶パネル6の他方の面に、接着層5および接着層5’をそれぞれ介して貼り合わされた構造を有している。これら液晶表示装置では、図示しない電極を用いて、液晶パネルに電圧を印加することにより、液晶分子の配向が変化し、白黒表示が実現できる。
【0089】
有機EL表示装置としては、
図3に示す有機EL表示装置11が挙げられる。有機EL表示装置11では、本発明の偏光板4と、有機ELパネル7とが、接着層5を介して貼り合わされている。有機ELパネル7は、導電性有機化合物からなる少なくとも1つの層である。かかる有機EL表示装置では、図示しない電極を用いて、有機ELパネルに電圧を印加することにより、有機ELパネルが有する発光層に含まれる化合物が発光し、白黒表示が実現できる。
有機EL表示装置11において、偏光板4は、有機EL表示装置11の表面において外光の反射を防止するという観点から、広帯域円偏光板として機能する偏光板であることが好ましい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではない。なお、例中の「%」および「部」は、特記ない限り、質量%および質量部を意味する。
【0091】
[光配向性ポリマーの合成例]
式(Z−a)で示されるモノマーを、Macromol. Chem. Phys. 197,1919-1935 (1996)に記載された方法に従い製造した。
式(Z−a)で示されるモノマー1.5部とメタクリル酸メチル0.1部とをテトラヒドロフラン16部中に溶解させた。得られた溶液を60℃で24時間加熱し、反応を行った。得られた反応混合物を室温まで放冷した後、トルエンとメタノールとの混合溶液中に滴下して、式(Z)で示される共重合体を析出させ、式(Z)で示される共重合体を取り出した。式(Z)で示される共重合体の数平均分子量は33000であった。式(Z)で示される共重合体において、式(Z−a)で示されるモノマーに由来する構造単位の含有率は75mol%であった。
【0092】
【0093】
【0094】
式(Z)で示される共重合体のポリスチレン換算数平均分子量(Mn)の測定は、GPC法を用いて、以下の条件で行った。
装置;HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム;TOSOH TSKgel MultiporeH
XL−M
カラム温度;40℃
溶媒;THF(テトラヒドロフラン)
流速;1.0mL/min
検出器;RI
校正用標準物質;TSK STANDARD POLYSTYRENE F−40、F−4、F−288、A−5000、A−500
【0095】
[組成物の調製]
下記各成分を混合し、得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して、配向膜形成用組成物を調製した。
表2に示す各成分を混合し、得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して、光異方性層形成用組成物を調製した。
【0096】
【表1】
表1において、混合比率は、調製した組成物の全量に対する各成分の含有割合を意味する。
表1におけるLR−9000は、BASFジャパン社製のLaromer(登録商標)LR−9000である。
【0097】
【表2】
表2において、混合比率は、調製した組成物の全量に対する各成分の含有割合を意味する。
表2において、Irg369は、BASFジャパン社製のイルガキュア369であり、BYK361Nは、ビックケミージャパン製のレベリング剤であり、LC242は、下記式で示されるBASF社製の液晶化合物である。
【0098】
[表面元素比率の測定]
積水化学工業株式会社製 常圧プラズマ表面処理装置(ロールダイレクトヘッド型 AP−T04S−R890)を用いて、出力60W(100mJ/cm
2のエネルギーに相当)の条件でプラズマを発生させて、ケン化されたトリアセチルセルロースフィルム表面を処理した。プラズマ処理を施した表面のXPS分析を、Surface Science Instruments社製 S−Probe ESCA Model2803を用いて、下記条件で実施した。プラズマ処理を行なわなかったケン化されたトリアセチルセルロースフィルムと、出力300W(500mJ/cm
2のエネルギーに相当)の条件で表面処理されたケン化されたトリアセチルセルロースフィルムについても、同様にXPS分析を行った。結果を表3に示す。
[測定条件]
照射X線:AlKα
X線スポット径:250x1000μm(楕円形)
中和電子銃使用
【0099】
【表3】
【0100】
実施例1[本発明の光学フィルムの製造例1]
積水化学工業株式会社製 常圧プラズマ表面処理装置(ロールダイレクトヘッド型 AP−T04S−R890)を用いて、窒素と酸素とを含む雰囲気(体積比 窒素:酸素=99.9:0.1)下で、出力60W(100mJ/cm
2のエネルギーに相当)の条件でプラズマを発生させ、ケン化されたトリアセチルセルロースフィルム表面を処理した。プラズマ処理を施した表面に、上記で調製した配向膜形成用組成物を塗布し、乾燥して、厚さ300nmの膜を形成した。続いて、形成した膜の表面に対して垂直方向から、偏光紫外光(偏光UV)照射冶具付きスポットキュア(SP−7、ウシオ電機(株)製)を用いて、照度15mW/cm
2で5分間直線偏光UVを照射し、配向膜を形成した。偏光UVを照射した面に、上記で調製した光異方性層形成用組成物を、バーコーターを用いて塗布し、120℃に加熱し、未重合フィルムを配向膜上に形成した。室温まで冷却した後、ユニキュア(VB―15201BY−A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を、波長365nmにおいて40mW/cm
2の照度で1分間照射することにより、重合を行い、光学フィルムXを作製した。
【0101】
比較例1[比較用光学フィルムの製造例1]
上記実施例1において、プラズマ表面処理を行わなかった以外は、上記実施例1と同じ条件で実施し、比較用光学フィルム1を作製した。
【0102】
比較例2[比較用光学フィルムの製造例2]
上記実施例1において、プラズマ表面処理の条件を300W(500mJ/cm
2のエネルギーに相当)とした以外は、上記実施例1と同じ条件で実施し、比較用光学フィルム2を作製した。
【0103】
[密着性評価]
JIS−K5600に則り、コーテック株式会社製クロスカットガイドIシリーズ(CCI−1、1mm間隔、25マス用)を用いて、上記で作製した光学フィルムX、比較用光学フィルム1および比較用光学フィルム2の剥離耐性を評価した。剥離試験後、剥離せずに保持された配向膜の残存数をカウントした結果を表4に示す。
【0104】
[光学特性の測定]
上記で作製した光学フィルムX、比較用光学フィルム1および比較用光学フィルム2の位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)により測定した。位相差値Re(λ)は、波長(λ)549nmにおいて測定した。結果を表4に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
実施例で作製した光学フィルムは、密着性に優れる傾向が確認できた。