(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5999843
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】リソグラフィ用ペリクルとその製造方法及び管理方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/64 20120101AFI20160915BHJP
G03F 1/62 20120101ALI20160915BHJP
【FI】
G03F1/64
G03F1/62
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-127225(P2013-127225)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-1683(P2015-1683A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159433
【弁理士】
【氏名又は名称】沼澤 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕一
【審査官】
佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−093518(JP,A)
【文献】
特開2011−007934(JP,A)
【文献】
特開2008−256925(JP,A)
【文献】
特開2003−307832(JP,A)
【文献】
特開2005−070191(JP,A)
【文献】
特開2003−222990(JP,A)
【文献】
特開2004−012597(JP,A)
【文献】
特開2011−164259(JP,A)
【文献】
特開2012−230227(JP,A)
【文献】
特開2009−025559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00 − 1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形のペリクルフレームの4つのコーナー部と4つの辺の中央部からなる8カ所の測定部からペリクルフレームの平均仮想平面を作成するとともに、それぞれ8カ所の測定部における高さ方向の歪みを測定し、それぞれ8カ所の測定部における測定値の前記仮想平面から乖離しているペリクルフレームの平坦度が15μm以下に、また、前記矩形のペリクルフレームのそれぞれ4つの辺ごとにほぼ均等間隔に測定カ所を最低5個以上設けて、前記4つの辺ごとの仮想直線を作成するとともに、それぞれ4つの辺ごとの測定カ所の高さ方向の歪みを測定し、前記4つの辺ごとのそれぞれの前記測定カ所における測定値の前記仮想直線から乖離しているペリクルフレーム直線部の平坦度が10μm以下に、それぞれ加工されていることを特徴とするリソグラフィ用ペリクル。
【請求項2】
前記矩形のペリクルフレームの平坦度が5〜15μmであることを特徴とする請求項1に記載のリソグラフィ用ペリクル。
【請求項3】
前記ペリクルフレーム直線部の平坦度が3〜10μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリソグラフィ用ペリクル。
【請求項4】
矩形のペリクルフレームの4つのコーナー部と4つの辺の中央部からなる8カ所の測定部からペリクルフレームの平均仮想平面を作成するとともに、それぞれ8カ所の測定部における高さ方向の歪みを測定し、それぞれ8カ所の測定部における測定値の前記仮想平面から乖離しているペリクルフレームの平坦度を15μm以下に、また、前記矩形のペリクルフレームのそれぞれ4つの辺ごとにほぼ均等間隔に測定カ所を最低5個以上設けて、前記4つの辺ごとの仮想直線を作成するとともに、それぞれ4つの辺ごとの測定カ所の高さ方向の歪みを測定し、前記4つの辺ごとのそれぞれの前記測定カ所における測定値の前記仮想直線から乖離しているペリクルフレーム直線部の平坦度を10μm以下に、それぞれ加工することを特徴とするリソグラフィ用ペリクルの製造方法。
【請求項5】
矩形のペリクルフレームの4つのコーナー部と4つの辺の中央部からなる8カ所の測定部からペリクルフレームの平均仮想平面を作成するとともに、それぞれ8カ所の測定部における高さ方向の歪みを測定し、それぞれ8カ所の測定部における測定値の前記仮想平面から乖離しているペリクルフレームの平坦度を15μm以下に、また、前記矩形のペリクルフレームのそれぞれ4つの辺ごとにほぼ均等間隔に測定カ所を最低5個以上設けて、前記4つの辺ごとの仮想直線を作成するとともに、それぞれ4つの辺ごとの測定カ所の高さ方向の歪みを測定し、前記4つの辺ごとのそれぞれの前記測定カ所における測定値の前記仮想直線から乖離しているペリクルフレーム直線部の平坦度を10μm以下に、それぞれ管理して、リソグラフィ用ペリクルに張り付けるマスク基板の貼付け前・後の歪さ差を20〜40nmの範囲内に抑えることを特徴とするリソグラフィ用ペリクルの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI、超LSIなどの半導体装置又は液晶表示板を製造する際のリソグラフィ用マスクのゴミよけとして使用される
リソグラフィ用ペリクルとその製造方法及び管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI、超LSIなどの半導体製造又は液晶表示板などの製造においては、半導体ウエハー又は液晶用原板に光を照射してパターン作製するが、この場合に用いる露光原版にゴミが付着していると、このゴミが光を吸収したり、光を曲げてしまうために、転写したパターンが変形したり、エッジががさついたものとなるほか、下地が黒く汚れたりして、寸法、品質、外観などが損なわれるという問題があった。なお、本発明において、「露光原版」とは、リソグラフィ用マスク及びレチクルの総称である。
【0003】
これらの作業は、通常クリーンルームで行われているが、このクリーンルーム内でも露光原版を常に清浄に保つことが難しいので、露光原版の表面にゴミよけのための露光用の光をよく通過させるペリクルを貼着する方法が取られている。この場合、ゴミは、露光原版の表面上には直接付着せず、ペリクル膜上に付着するために、リソグラフィ時に焦点を露光原版のパターン上に合わせておけば、ペリクル膜上のゴミは転写に無関係となる。
【0004】
そして、このようなペリクルの基本的な構成は、ペリクルフレーム及びこれに張設されてペリクル膜からなる。このペリクル膜は、露光に用いる光(g線、i線、248nm、193nm等)をよく透過させるニトロセルロース、酢酸セルロース、フッ素系ポリマーなどからなり、ペリクルフレームは、黒色アルマイト処理等を施したA7075、A6061、A5052などのアルミニウム合金、ステンレス、ポリエチレンなどからなる。
【0005】
また、ペリクルフレームの上部には、ペリクル膜の良溶媒が塗布され、ペリクル膜を風乾して接着されるか、又は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂やフッ素樹脂などの接着剤で接着される。さらに、ペリクルフレームの下部には、露光原版を装着するために、ポリブテン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂等からなる粘着層及び粘着層の保護を目的としたレチクル粘着剤保護用ライナーが設けられる。
【0006】
このように構成されたペリクルは、露光原版の表面に形成されたパターン領域を囲むように設置され、露光原版上にゴミが付着するのを防止するために設けられるから、このパターン領域とペリクル外部とはペリクル外部の塵埃がパターン面に付着しないように隔離されている。
【0007】
ところで、近年、LSIのデザインルールは、サブクオーターミクロンへと微細化が進んでおり、それに伴い、露光光源の短波長化が進んでいる、即ち、これまで主流であったKrFエキシマレーザー(248nm)から、ArFエキシマレーザー(193nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)液浸露光などに移行しつつある。
【0008】
このように、露光の短波長化が進んで露光解像度が高くなると、これまで問題とならなかったパターンの歪みや変形までもが歩留まりに影響を及ぼすことが懸念されている。このパターンの歪みや変形は、露光原版自体の歪みや変形に拠るところが大きく、その不具合の主な原因として、ペリクル貼り付け時に伴う歪み変形が挙げられており、ペリクル自体の変形や歪みが露光原版に悪影響を与えることが分かっている。
【0009】
そこで、露光原版に与える影響を少なくする試みがなされており、特許文献1には、ペリクルの接着剤層の表面の平坦度を10μm以下とするリソグラフィ用ペリクルが記載され、また、特許文献2にも、ペリクルの粘着層の表面の平坦度を15μm以下とするリソグラフィ用ペリクルが記載されている。しかし、このようなペリクルの接着剤層などの平坦度を管理しても、その効果の安定性が十分でないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−164259号
【特許文献2】特開2012−230227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、露光原版の変形や歪みを安定して低減することができる平坦度の高い
リソグラフィ用ペリクルとその製造方法及び管理方法を提供することである。
【0012】
従来から、矩形のペリクルフレーム(以下、単に「フレーム」ともいう。)の平坦度を管理して平坦度の高いリソグラフィペリクル(以下、単に「高平坦ペリクル」ともいう。)が製造されているが、本発明者らは、矩形のペリクルフレームの剛性等を考慮して実験を繰り返した結果、同じ程度の平坦度に管理したペリクルフレームのペリクルを作成し、これにマスクを貼り付けても、マスクに与える歪みの影響が異なることを見出した。
【0013】
そして、本発明者らは、さらにその原因について考察を行ったところ、ペリクルフレームのコーナー部分の歪みがフレームの辺部分の歪みと比較して、マスクに与える歪みの影響が軽微であること、また、矩形のペリクルフレームの平坦度が同じ値であっても、4つの辺の直線部の平坦度の値が小さければ、ペリクル貼り付け時のマスクの歪みが小さくなることを知見し、本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、
矩形のペリクルフレームの4つのコーナー部と4つの辺の中央部からなる8カ所の測定部からペリクルフレームの平均仮想平面を作成するとともに、それぞれ8カ所の測定部における高さ方向の歪みを測定し、それぞれ8カ所の測定部における測定値の前記仮想平面から乖離しているペリクルフレームの平坦度が15μm以下に、また、前記矩形のペリクルフレームのそれぞれ4つの辺ごとにほぼ均等間隔に測定カ所を最低5個以上設けて、前記4つの辺ごとの仮想直線を作成するとともに、それぞれ4つの辺ごとの測定カ所の高さ方向の歪みを測定し、前記4つの辺ごとのそれぞれの前記測定カ所における測定値の前記仮想直線から乖離しているペリクルフレーム直線部の平坦度が10μm以下に、それぞれ加工されていることを特徴とするリソグラフィ用ペリクルとその製造方法である。また、本発明は、矩形のペリクルフレームの平坦度を15μm以下に、ペリクルフレーム直線部の平坦度を10μm以下に、それぞれ管理して、リソグラフィ用ペリクルに張り付けるマスク基板の貼付け前・後の歪さ差を20〜40nmの範囲内に抑えることを特徴とするリソグラフィ用ペリクルの管理方法である。
そして、本発明の場合、好ましくは、矩形のペリクルフレームの平坦度は、5〜15μmであり、ペリクルフレーム直線部の平坦度は、3〜10μmである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ペリクルフレームの平坦度とペリクルフレーム直線部の平坦度を管理することで、ペリクル貼り付け時のマスクの歪みを小さく抑えることができる高平坦リソグラフィ用ペリクルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】フレーム形状の平坦度の求め方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について具体的に説明するが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。本発明のリソグラフィ用ペリクルは、矩形のペリクルフレームを2つの異なる規定によって定める平坦度によって管理することを特徴とするものである。
ここで、本発明のフレーム形状の平坦度とは、
図1に示すように、実際のフレーム形状1から仮想平面2を求め、この仮想平面2からの乖離を測定してその範囲のフレーム平坦度と定義するものである。そして、本発明の1つ目の規定のフレーム平坦度とは、フレームの全ての範囲で求めるものであり、また、2つ目の規定のフレーム直線部の平坦度とは、それぞれの直線部の範囲だけで求めるものである。
【0018】
すなわち、1つ目の規定の平坦度とは、矩形のペリクルフレームについて規定する平坦度であり、矩形フレームの4つのコーナー部と4つの辺の中央部からなる8カ所の測定部からペリクルフレームの平均仮想平面を作成し、それぞれ8カ所の測定部が仮想平面からどの程度乖離しているかを測定して求めるペリクルフレームの平坦度である。
【0019】
また、2つ目の規定の平坦度とは、ペリクルフレーム直線部について規定する平坦度であり、矩形のペリクルフレームのコーナー部分を除いた4つの辺に着目して、それぞれ4つの辺ごとにほぼ均等間隔に測定カ所を最低5個以上設けて、高さ方向の歪みを測定し、辺ごとの仮想直線を作成する。そして、辺ごとのそれぞれの測定カ所がこの仮想直線からどの程度乖離しているかを測定して求めるペリクルフレーム直線部の平坦度である。そして、この際に、4つの辺のフレーム直線部の平坦度で最も値の大きなものをそのペリクルフレーム直線部の平坦度と定義するものである。
【0020】
本発明では、このような2つの規定の平坦度を併せて管理することで、ペリクルをマスクに貼り付けた時のマスクの歪みを安定的に小さい値に低減させることができる。特に、ペリクルフレーム直線部の平坦度を管理することで、ペリクル貼り付け時のマスクの歪みに対する効果を安定的かつ飛躍的に高めることができる。
【0021】
本発明のリソグラフィ用ペリクルでは、矩形のペリクルフレームの平坦度を15μm以下に、また、ペリクルフレーム直線部の平坦度を10μm以下にそれぞれ加工して、その平坦度を高くしているが、好ましくは、矩形のペリクルフレームの平坦度を5〜15μmに、ペリクルフレーム直線部の平坦度を3〜10μmにするのがよい。それぞれの下限値を5μm、3μmに設定したのは、ペリクルフレーム量産加工時の精度の限界によるもので、これより小さい値に平坦度を高めても、加工負担が増えるだけで十分なフレームを確保することも厳しく、費用対効果が望めないからである。
【0022】
以上のように、本発明では、ペリクルフレームの平坦度を2つの異なる規定によって上記のように管理するので、ペリクル貼り付け前・後のマスク基板の歪み差(nm)を20〜40nmの範囲内に抑えることができる。
【0023】
本発明のペリクルフレーム平坦度を求める場合は、フレーム端面を測定する必要があるが、この測定は、レーザー測定器を用いて実施することができる。例えば、対象のペリクルフレームを6025(6インチ□の大きさの厚さ0.25インチ)のマスク基板の上に設置して、任意のフレーム端面の高さを測定することができる。
【0024】
また、本発明では、高平坦フレームを用いて作成されたペリクルをマスク基板に貼り付けた後にマスク基板の歪みを測定して、その効果を評価する必要があるが、その評価は、先ず、貼り付けに使用するマスク基板の平坦度をTropel社のFlatMasterで測定し、次に、準備した高平坦ペリクルをこのマスク基板に貼り付けて、貼り付け前と貼り付け後のマスク歪みの差を測定して実施することができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の実施例について具体的に説明するが、実施例及び比較例のマスクは、「露光原版」の例であり、レチクルについても同様に適用できることはいうまでもない。
【0026】
〈実施例1〉
実施例1では、ペリクルフレームとして、フレーム外寸149mm×115mm×3.15mmで、フレーム厚さが2mmであり、その4つのコーナー部分の形状が外R5、内R3の形状に黒色アルマイトを施したフレームを用意した。このフレームのフレーム平坦度が14μmであり、フレーム直線部の平坦度が10μmのフレームを用いて、高平坦ペリクルを作成した。
【0027】
次に、準備したマスクの平坦度をTropel社のFlatMasterで測定したところ、マスクの平坦度は305nmであり、このマスク基板に上記のペリクルを5kg30秒の条件で貼り付けて再びマスク平坦度を測定したところ、貼り付け前後のマスク基板の歪み差は、36nmであった。
った。
【0028】
〈実施例2〉
実施例1と同じ形状のフレームを準備し、このフレーム平坦度とフレーム直線部の平坦度を測定したところ、それぞれ14μmと8μmであった。また、準備した平坦度296nmのマスク基板に実施例1と同様に、5kg30秒でペリクルを貼り付けて再びマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前後のマスク基板の歪み差は、32nmであった。
【0029】
〈実施例3〉
実施例1、2と同じ形状のフレームを準備し、このフレーム平坦度とフレーム直線平坦度を測定したところ、それぞれ15μmと5μmであった。また、準備した平坦度301nmのマスク基板に実施例1、2と同様に、5kg30秒でペリクルを貼り付けて再びマスク基板の平坦度を測定したところ、平坦度は37μmであり、貼り付け前後のマスク基板の歪み差は、29nmであった。
【0030】
〈実施例4〉
実施例1−3と同じ形状のフレームを準備し、このフレーム平坦度とフレーム直線平坦度を測定したところ、それぞれ10μmと10μmであった。また、準備した平坦度311nmのマスク基板に実施例1−3と同様に、5kg30秒でペリクルを貼り付けて再びマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前後のマスク基板の歪み差は、37nmであった。
【0031】
〈実施例5〉
実施例1−4と同じ形状のフレームを準備し、このフレーム平坦度とフレーム直線平坦度を測定したところ、それぞれ10μmと5μmであった。また、準備した平坦度303nmのマスク基板に実施例1−4と同様に、5kg30秒でペリクルを貼り付けて再びマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前後のマスク基板の歪み差は、27nmであった。
【0032】
〈実施例6〉
実施例1−5と同じ形状のフレームを準備し、このフレーム平坦度とフレーム直線平坦度を測定したところ、それぞれ6μmと3μmであった。また、準備した平坦度299nmのマスク基板に実施例1−5と同様に、5kg30秒でペリクルを貼り付けて再びマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前後のマスク基板の歪み差は、24nmであった。
【0033】
〈比較例1〉
実施例1−6と同じ形状のフレームを準備し、このフレーム平坦度とフレーム直線平坦度を測定したところ、それぞれ14μmと14μmであった。また、準備した平坦度307nmのマスク基板に実施例1−6と同様に、5kg30秒でペリクルを貼り付けて再びマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前後のマスク基板の歪み差は、51nmであった。
【0034】
〈比較例2〉
実施例1−6と同じ形状のフレームを準備し、このフレーム平坦度とフレーム直線平坦度を測定したところ、それぞれ19μmと12μmであった。また、準備した平坦度305nmのマスク基板に実施例1−6と同様に、5kg30秒でペリクルを貼り付けて再びマスク基板の平坦度を測定したところ、貼り付け前後のマスク基板の歪み差は、48nmであった。
【0035】
次の表1は、以上の結果をまとめて示したものである。
【表1】
【0036】
実施例1−6の結果から、ペリクルフレームの平坦度よりもペリクルフレーム直線部の平坦度の方が貼り付け時のマスク歪みに対する影響が大きいことが判明した。すなわち、実施例1と実施例2、実施例4と実施例5の結果を比較すると、ペリクルフレームの平坦度が同じ数値の場合に、ペリクルフレーム直線部の平坦度が小さい方が貼り付け前・後のマスク基板の歪み差(nm)が小さくなっている。一方、実施例1と実施例4の結果を比較すると、ペリクルフレーム直線部の平坦度が同じ数値の場合には、ペリクルフレームの平坦度が異なっていても貼り付け前・後のマスク基板の歪み差(nm)はほとんど差異がないことが分かった。この結果から、ペリクルフレーム直線部の平坦度の値を小さくすれば、ペリクル貼り付け時のマスクの歪みを小さく抑えることが可能であることが確認された。
【0037】
この理由としては、矩形のペリクルフレームの剛性を考慮した場合、コーナー部分は剛性が低く比較的容易に変形するために、この部分が多少歪んでいてもペリクル貼り付け時にマスクにかける応力は小さくなる。これに対して、フレーム直線部が歪んでいた場合に、その形状変化を平坦性良く変形しようとすると、コーナー部分の修正と比較して非常に大きな力が必要になるために、フレーム直線部の平坦度の悪いフレームで製造したペリクルをマスクに貼り付けた時に、フレーム直線部の歪んだ部分がマスクに与える応力は非常に大きなものとなって、マスク歪みに対して非常に大きな影響を与えてしまうからと考えられる。
【0038】
したがって、ペリクルフレームの平坦度に加えて、特にペリクルフレーム直線部の平坦度を管理することで、ペリクル貼り付け時にマスクを歪ませることのない高平坦リソグラフィ用ペリクルを得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0039】
1 フレーム形状
2 仮想平面