(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面等を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るシリコンウェーハの製造方法を示す工程フロー図である。
本実施形態に係るシリコンウェーハの製造方法は、
図1に示すように、育成工程(S101)と、切断工程(S102)と、平坦化工程(S103)と、熱処理工程(S104)と、鏡面研磨工程(S105)を備える。
【0015】
育成工程(S101)では、CZ法により窒素ノンドープにてV−リッチ領域からなる酸素濃度が0.8×10
18atoms/cm
3以下であるシリコン単結晶インゴットを育成する。
具体的には、周知の単結晶引上装置を用いて、窒素ノンドープにてシリコン融液の液面に種結晶を接触させて、種結晶と石英ルツボを回転させながら種結晶を引き上げてネック部及び所望の直径まで拡径する拡径部を形成後、所望の直径を維持しながら、結晶の中心軸がV−リッチ領域となるようにV/G値(V:引き上げ速度、G:シリコン融点から1300℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値)を所定値(例えば、0.25〜0.35mm
2/℃・min)に制御して直胴部を形成し、その後、所望の直径から縮径する縮径部を形成し、前記縮径部をシリコン融液から切り離すことで行う。
なお、本発明にいう「窒素ノンドープ」とは、シリコン単結晶インゴットの育成時に、故意に窒素ドープ(例えば、石英ルツボ内へのポリシリコン積載時に窒化膜が形成されたシリコンウェーハ片を同時に積載)を行わないことをいう。
また、前記育成するシリコン単結晶インゴットの酸素濃度の調整は、石英ルツボの回転数や炉内圧力、ヒータ温度などを調整することにより周知の方法で行う。
【0016】
図2は、V/G値と育成されるシリコン単結晶インゴット中の点欠陥分布との関係を模式的に示す概念図である。
図2に示すように、ネック部2を形成した後、シリコン単結晶インゴット1の引き上げ速度V値を拡径部3側から縮径部4側にかけて漸減していくと、V/G値も減少し、これに伴って、シリコン単結晶インゴット1中の欠陥分布も変化する。なお、この場合は、G値はほとんど変化しない。
引き上げ速度V値が大きい、すなわち、V/G値が大きいときは、原子空孔(COP)が多く取り込まれたV−リッチ領域5が形成される。このV−リッチ領域5が消滅する臨界V/G値以下では、まず、酸化熱処理によってOSFがリング状に発生するOSFリング領域6が形成され、次に、空孔と格子間シリコン濃度との均衡により、原子の不足や余分の少ない無欠陥領域7が形成される。V/G値がさらに減少すると、格子間シリコンが多く取り込まれたI−リッチ領域8が形成される。
【0017】
このように本発明では、育成工程(S101)において、V−リッチ領域を含む直胴部からなるシリコン単結晶インゴットを育成するため、直胴部が無欠陥領域からなるシリコン単結晶インゴットを育成するよりも、引き上げ速度Vの高速化を図ることができる。従って、育成効率を低下させることなく、シリコン単結晶インゴットを育成することができる。
また、シリコン単結晶インゴットの育成を窒素ノンドープにて行うため、窒素のas−grown析出核の発生を抑制することができる。従って、窒素を核としたサーマルドナーの発生を抑制することができる。
【0018】
なお、シリコン単結晶インゴットの育成を窒素ドープにて行った場合でも、後述する熱処理工程(S104)においてウェーハの表層部の窒素を外方拡散させることが可能である。しかしながら、この場合であってもウェーハの内部であるバルク部の窒素は、外方拡散されにくいため、当該熱処理後も窒素が前記バルク部に残存する可能性がある。従って、バルク部で窒素のas−grown析出核が発生しやすくなるため、シリコン単結晶インゴットの育成は、窒素ノンドープにて行うことが好ましい。
【0019】
切断工程(S102)では、周知の切断装置(ワイヤソー等)を用いて、前記シリコン単結晶インゴットを切断してV−リッチ領域からなる円板状のウェーハを作製する。
【0020】
平坦化工程(S103)では、周知の平坦化処理(遊離砥粒を用いたラッピング処理、ダイヤモンド等の固定砥粒を用いた研削処理、酸性溶液(弗酸(HF)、硝酸(HNO
3)、酢酸(CH
3COOH)及び水(H
2O)を一定の比率で混合した溶液)又はアルカリ性溶液(水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)溶液)を用いたエッチング処理、コロイダルシリカ等の研磨剤を用いた研磨処理等)により、前記作製したウェーハを平坦化する。
【0021】
平坦化工程(S103)は、具体的には、前記シリコン単結晶インゴットを切断して作製したウェーハの両面をラッピング処理した後、その両面を酸性溶液によりエッチング処理し、更に、少なくとも半導体デバイス形成面となる表面又は両面を鏡面研磨処理することが好ましい。また、前記ラッピング処理後、前記エッチング処理前に、ウェーハの両面を研削する研削処理を加えてもよい。
【0022】
熱処理工程(S104)では、周知の熱処理装置(縦型熱処理装置等)を用いて、前記平坦化したウェーハを、800℃以下に保持された反応室内に投入し、酸素分圧が1%以上8%以下である不活性ガス雰囲気中、1150℃以上1250℃以下の最高到達温度まで昇温した後、前記不活性ガス雰囲気の酸素分圧を5%以上15%以下として、前記最高到達温度で30分以上2時間以下保持する熱処理を行う。
【0023】
図3は、熱処理工程(S104)における熱処理シーケンスの一例を示す概念図である。
熱処理工程(S104)は、例えば、
図3に示すような熱処理シーケンスで行われる。
最初に、周知の縦型熱処理装置の温度T
0(800℃以下)に保持された反応室内に、前記平坦化したウェーハを、例えば、周知の縦型ボードに枚葉で複数枚保持して投入し、酸素分圧が1%以上8%以下である不活性ガス雰囲気(以下、これを第1の不活性ガス雰囲気という)中、最高到達温度T
1(1150℃以上1250℃以下:以下、これを温度T
1と略する)まで昇温速度ΔTuで昇温した後、前記第1の不活性ガス雰囲気中の酸素分圧を5%以上15%以下として(酸素分圧が5%以上15%以下である不活性ガス雰囲気として:以下、これを第2の不活性ガス雰囲気という)、前記温度T
1で時間t1(30分以上2時間以下)保持する。その後、前記温度T
1から前記反応室からのウェーハの取り出し温度(例えば、温度T
0)まで、降温速度ΔTdで降温する。
【0024】
本発明は、このような熱処理工程(S104)を備えているため、熱処理時におけるスリップ転位の発生を抑制することができ、ウェーハの表層部及びバルク部においてもCOPやBMD等の欠陥を低減させることができ、更に、当該熱処理において使用する熱処理部材がシリコンに制限されることがない。
【0025】
前記育成するシリコン単結晶インゴットの酸素濃度が0.8×10
18atoms/cm
3を超える場合は、酸素濃度が高くなるため、後の熱処理工程(S104)において、表層部及びバルク部(特に、バルク部)に存在するCOPの内壁酸化膜を溶解させにくくなる。また、表層部及びバルク部(特に、バルク部)においてシリコン単結晶インゴット育成時に発生しているBMD核をウェーハ内に溶解させにくくなる。従って、表層部及びバルク部(特に、バルク部)においてCOPが残存しやすくなり、かつ、BMDが析出されやすくなるため好ましくない。
前記酸素濃度は、後の熱処理工程(S104)や半導体デバイス形成時の熱処理工程におけるウェーハ強度確保(スリップ転位の発生の抑制)等の観点から、その下限値は、0.2×10
18atoms/cm
3以上であることが好ましい。
【0026】
前記熱処理工程(S104)における反応室内への投入温度が800℃を超える場合には、室温(クリーンルーム:約25℃)からの急激な温度変化によりウェーハにスリップ転位が発生しやすくなるため好ましくない。
前記投入温度は、生産性等の観点からその下限値は、300℃以上であることが好ましい。
【0027】
前記第1の不活性ガス雰囲気における酸素分圧が1%未満である場合には、酸素分圧が低いため、表面に酸化膜が被膜されたSiCで構成された熱処理部材を使用する場合、不活性ガス雰囲気によって酸化膜及びSiCが分解又はエッチングされる。従って、当該熱処理部材の寿命が大きく低下する。また、当該熱処理を行ったウェーハも炭素等の不純物汚染が発生する。
前記酸素分圧が8%を超える場合には、ウェーハ内に雰囲気中の酸素が内方拡散され、ウェーハ内の酸素濃度が高くなり、表層部及びバルク部に存在するCOPの内壁酸化膜を溶解させることが難しくなるため、COPが残存し好ましくない。
前記第1及び第2の不活性ガス雰囲気中の不活性ガスが、窒素ガスである場合には、当該熱処理後、ウェーハの表面に窒化膜が形成される場合があり、当該窒化膜を除去するためにエッチング工程等、新たに増やす必要があり、生産性が低下するため好ましくない。
前記不活性ガスが、水素ガスである場合には、水素と酸素の混合ガス雰囲気となるため、爆発の危険性があり好ましくない。
【0028】
前記最高到達温度が1150℃未満である場合には、温度が低いため、表層部及びバルク部(特に、バルク部)に存在するCOPの内壁酸化膜を溶解させにくくなる。また、表層部及びバルク部(特に、バルク部)においてシリコン単結晶インゴット育成時に発生しているBMD核をウェーハ内に溶解させにくくなる。従って、表層部及びバルク部(特に、バルク部)においてCOPが残存しやすくなり、かつ、BMDが析出されやすくなるため好ましくない。前記最高到達温度が1250℃を超える場合には、高温となるため、当該熱処理においてスリップ転位が発生しやすくなり好ましくない。
【0029】
前記第2の不活性ガス雰囲気における酸素分圧が5%未満である場合には、表層部に注入される格子間シリコン量が低下するため、表層部及びバルク部に存在する内壁酸化膜を溶解させたCOP(ボイド)内に注入される格子間シリコン量が低下し、特に、バルク部において、ボイドが残存しやすくなるため好ましくない。前記酸素分圧が15%を超える場合には、表層部に注入される格子間シリコン量が多くなるが、ウェーハ内に、従来では半導体デバイスで許容されるレベルの積層欠陥の起点となるような汚染、ダメージ、核等が存在している場合には、このようなウィークポイントに、前記注入された余剰の格子間シリコンが集中し、積層欠陥が誘発される場合があるため好ましくない。
【0030】
前記最高到達温度の保持時間が30分未満である場合には、熱処理時間が少ないため、十分に、表層部及びバルク部のCOPやBMDの消滅を図ることが難しい場合がある。前記保持時間が2時間を越える場合には、生産性が低下すると共に、スリップ転位が発生しやすくなり、また、表層部やバルク部でBMD核が成長してBMDが析出されやすくなり、その他、不純物汚染等の他の不具合も発生する場合がある。
前記保持時間は、30分以上1時間以下がより好ましい。
【0031】
図4は、熱処理工程(S104)における熱処理シーケンスの他の一例を示す概念図である。
熱処理工程(S104)は、生産性向上及びスリップ転位の発生の抑制のため、例えば、
図4に示すような熱処理シーケンスで行うことが好ましい。
最初に、周知の縦型熱処理装置の温度T
0(800℃以下)に保持された反応室内に、前記平坦化したウェーハを、例えば、周知の縦型ボードに枚葉で複数枚保持して投入し、前記第1の不活性ガス雰囲気中、前記温度T
1より低温である中間温度T
2までは、比較的高い昇温速度ΔTu
1で昇温し、前記中間温度T
2から前記温度T
1までは、比較的低い昇温速度ΔTu
2で昇温し、更に、前記温度T
1からの降温においても、前記温度T
1から中間温度T
2までは、比較的低い降温速度ΔTd
2で降温し、更に、前記中間温度T
2から前記反応室からの取り出し温度(例えば、温度T
0)までは、比較的高い降温速度ΔTd
1で降温する。
【0032】
なお、ここでいう比較的高い昇温速度ΔTu
1は5℃/分以上15℃/分以下であり、比較的低い昇温速度ΔTu
2は1℃/分以上3℃/分以下であり、比較的低い降温速度ΔTd
2は1℃/分以上3℃/分以下であり、比較的高い降温速度ΔTd
1は5℃/分以上15℃/分以下である。
このように、低温帯(投入又は取り出しする温度T
0から中間温度T
2)では、比較的高い昇温速度ΔTu
1及び降温速度ΔTd
1とすることで、当該熱処理における生産性を向上させることができ、高温帯(中間温度T
2から最高到達温度T
1)では、比較的低い昇温速度ΔTu
2及び降温速度ΔTd
2とすることで、当該熱処理におけるスリップ転位の発生を抑制することができる。
前記中間温度T
2は1000℃であることが好ましい。1000℃を超える温度帯は、ウェーハに対する熱応力が大きくなる場合があるため、少なくとも1000℃以上の温度帯では、昇温速度ΔTu
2及び降温速度ΔTd
2共に1℃/分以上3℃/分以下であることが好ましい。
【0033】
鏡面研磨工程(S105)は、周知の鏡面研磨装置(片面研磨又は両面研磨を含む)を用いて、前記熱処理を行ったウェーハの少なくとも半導体デバイス形成面となる表面を鏡面研磨する。
【0034】
前述したように、熱処理工程(S104)では、昇温時に、酸素分圧が1%以上8%以下である不活性ガス雰囲気及び最高到達温度において酸素分圧が5%以上15%以下である不活性ガス雰囲気にて熱処理を行っている。そのため、昇温時からウェーハ内に酸素が内方拡散されやすくなるため、特に、表層部に存在するCOPの内壁酸化膜が溶解されにくくなり、表層部ではCOPが残存する。
従って、前記熱処理を行ったウェーハの少なくとも半導体デバイス形成面となる表面を鏡面研磨することで、前記COPが残存した表層部を除去することが好ましい。
【0035】
前記鏡面研磨工程(S105)では、前記表面を2μm以上5μm以下除去(研磨取代が2μm以上5μm以下)することが好ましい。
このような研磨取代とすることで、鏡面研磨工程(S105)においてウェーハの平坦度の悪化を抑制しつつ、生産性よく、前記COPが残存した表層部を除去することができる。
【0036】
前記育成されたシリコン単結晶インゴット中の窒素濃度は、6.0×10
13atoms/cm
3以下であることが好ましい。
このような窒素濃度とすることで、確実にサーマルドナーの発生を抑制することができる。
【0037】
前記熱処理工程(S104)における降温時のガス雰囲気は、酸素分圧が1%以上である不活性ガス雰囲気であれば、その酸素分圧は特に限定されない。なお、降温時のガス雰囲気は、作業効率の観点から、
図3及び
図4に示すように、前記第2の不活性ガス雰囲気をそのまま継続することが好ましい。
【0038】
本発明に係るシリコンウェーハの製造方法は、ウェーハの表層部及びバルク部においてCOPやBMD等の欠陥を低減させることができる。従って、本発明で製造されたシリコンウェーハは、特に、ディスクリート素子用として好適に用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定解釈されるものではない。
(試験1)
図1に示す工程フロー図に基づいて、サンプルを作製した。
具体的には、石英ルツボの回転数や炉内圧力を調整してCZ法により窒素ノンドープにてV/G値(V:引き上げ速度、G:シリコン融点から1300℃までの温度範囲における引き上げ軸方向の結晶内温度勾配の平均値)を0.28〜0.32mm
2/℃・minに制御して直胴部がV−リッチ領域からなるN−type、面方位(100)、酸素濃度0.8×10
18atoms/cm
3であるシリコン単結晶インゴットを育成後、該インゴットの直胴部を切断してV−リッチ領域からなる窒素濃度が6.0×10
13/cm
3以下である直径200mmの円板状のスライスウェーハを得た。
この酸素濃度及び窒素濃度は、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて測定したスライスウェーハの半導体デバイス形成面側の表面から深さ1μmまでの平均濃度である(以下同じ)。
【0040】
次に、得られたスライスウェーハに対して、両面(表裏面)のラッピング処理を行い、更に、酸性溶液(弗酸(HF)、硝酸(HNO
3)、酢酸(CH
3COOH)及び水(H
2O)を一定の比率で混合した溶液)によりエッチング処理を行い、最後に、両面の鏡面研磨処理を行った。
次に、鏡面研磨を行ったウェーハを、表面に酸化膜が被膜されたSiCで構成された縦型ボートに枚葉で10枚保持して、周知の縦型熱処理装置の反応室内に投入し、
図4に示す熱処理シーケンスにて、第1の不活性ガス雰囲気及び第2の不活性ガス雰囲気中の酸素分圧をそれぞれ変化させて、熱処理を行った。
【0041】
その他の熱処理条件は下記の通りである。
・T
0:600℃
・T
1:1200℃
・T
2:1000℃
・t
1:60分
・ΔTu
1:5℃/分
・ΔTu
2:1〜3℃/分
・ΔTd
1:5℃/分
・ΔTd
2:1〜3℃/分
【0042】
熱処理を行ったウェーハに対してHF処理を行って、両面の酸化膜を除去した後、ウェーハの両面を再度、鏡面研磨処理した(半導体デバイス形成面となる表面側の研磨取代2μm)。
前記熱処理を行い、かつ、鏡面研磨を行なったウェーハの半導体デバイス形成面となる表面側の表層部の欠陥密度を評価した。更に、表面側の欠陥密度を評価後、該表面の研磨処理を行って表面から深さ10μm、50μm及び100μmにおけるバルク部の欠陥密度を評価した。
前記欠陥密度の評価は、レイテックス社製LSTDスキャナMO601を用いて、各々の測定表面から深さ5μmまでの深さ領域の欠陥数を検出することで行った。
【0043】
また、酸化膜除去後のウェーハに対して、2段階熱処理(780℃で3時間熱処理した後、1000℃で16時間熱処理)を施した後のウェーハ表面、深さ50μm及び100μm(バルク部)におけるBMD密度をIRトモグラフィ(株式会社レイテックス製 MO−411)にて評価した。
また、酸化膜除去後のウェーハの表面における積層欠陥の発生の有無を目視にて評価した。
更に、酸化膜除去後のウェーハに対して、450℃で1時間の低温熱処理を行い、熱処理前後のウェーハの抵抗率の変化(サーマルドナーの発生の有無)を評価した。この評価は、熱処理前後の抵抗率の変化が5%未満である場合は「無」とし、5%を超える場合には「有」とした。
また、酸化膜除去後のウェーハの表面の炭素濃度を、赤外吸収法(IR法)により測定した。
また、酸化膜除去後のウェーハに対して、ウェーハ裏面に発生するスリップ長をX線トポグラフィ(株式会社リガク製 XRT300)にて評価し、10枚におけるスリップ長の平均値を算出した。
表1、2に本試験における試験条件及びその評価結果を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
なお、スリップ長の平均値は、全サンプル共に、3mm未満であり、問題ないレベルであった。
表1、2からわかるように、第1の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が1%以上8%以下であり、第2の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が5%以上15%以下である場合(実施例1
から4、6から8、11及び12)は、表層部及びバルク部の欠陥密度が1.0/cm
2未満であり、BMD密度においても検出限界以下であり、積層欠陥の発生も無く、サーマルドナーの発生もなく、炭素濃度も検出限界以下と良好であることが認められる。
これに対し、第1の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が0%である場合(比較例1から6)は、炭素濃度が高くなる傾向が認められる。また、第2の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が3%である場合(比較例1、7、9、11、13)は、表層部及びバルク部の欠陥密度が高くなる傾向が認められる。また、第2の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が20%である場合(比較例6、8、10、12、18)は、積層欠陥の発生が認められる。更に、第1の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が12%である場合(比較例13から18)は、表層部及びバルク部(特に、深さ10μm)の欠陥密度が高くなる傾向が認められる。
【0047】
(試験2)
育成するシリコン単結晶インゴットの酸素濃度を0.4×10
18atoms/cm
3として、その他は、試験1と同様な条件にて、熱処理を行った。
得られた熱処理後のウェーハに対して、試験1と同様な方法で、欠陥密度、BMD密度、積層欠陥の発生の有無、サーマルドナーの発生の有無、ウェーハの表面の炭素濃度及びスリップ長を評価した。
表3、4に本試験における試験条件及びその評価結果を示す。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
なお、スリップ長の平均値は、全サンプル共に、3mm未満であり、問題ないレベルであった。
表3、4からわかるように、試験1と同様な傾向が確認された。
すなわち、第1の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が1%以上8%以下であり、第2の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が5%以上15%以下である場合(実施例13
から16、18から20、23及び24)は、表層部及びバルク部の欠陥密度が1.0/cm
2未満であり、BMD密度においても検出限界以下であり、積層欠陥の発生も無く、サーマルドナーの発生もなく、炭素濃度も検出限界以下と良好であることが認められる。
これに対し、第1の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が0%である場合(比較例19から24)は、炭素濃度が高くなる傾向が認められる。また、第2の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が3%である場合(比較例19、25、27、29、31)は、表層部及びバルク部の欠陥密度が高くなる傾向が認められる。また、第2の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が20%である場合(比較例24、26、28、30、36)は、積層欠陥の発生が認められる。更に、第1の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が12%である場合(比較例31から36)は、表層部の欠陥密度が高くなる傾向が認められる。
【0051】
(試験3)
育成するシリコン単結晶インゴットの酸素濃度を1.2×10
18atoms/cm
3として、その他は、試験1の実施例1
から4及び6から8と同様な条件にて、熱処理を行った。
得られた熱処理後のウェーハに対して、試験1と同様な方法で、欠陥密度、BMD密度を評価した。
表5に本試験における試験条件及びその評価結果を示す。
【0052】
【表5】
【0053】
表5からわかるように、酸素濃度を1.2×10
18atoms/cm
3とした場合には、第1の不活性ガス雰囲気の酸素分圧が1%である場合(比較例37から40)は、表層部及びバルク部の欠陥密度が共に高くなり、更に、バルク部のBMD密度も高くなることが認められる。更に、第1の不活性ガス雰囲気の酸素分圧を5%とした場合(比較例41から44)でも同様な傾向が認められる。
【0054】
(試験4)
熱処理時の最高到達温度T
1を1300℃として、その他は、試験1の実施例1
から4、6から8、11及び12と同様な条件にて、熱処理を行った。
得られた熱処理後のウェーハに対して、試験1と同様な方法で、スリップ長を評価した。
その結果、酸素分圧が高いためスリップ転位の発生が一番抑制される(酸素は表層部に内方拡散するため)と考えられる実施例
11及び12の条件で、既に、スリップ長が5〜7mmであることが認められたため、その他の試験を中止した。