特許第5999972号(P5999972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5999972-保持テーブル 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5999972
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】保持テーブル
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20160915BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   H01L21/68 P
   H01L21/78 N
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-108397(P2012-108397)
(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公開番号】特開2013-236002(P2013-236002A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳
(72)【発明者】
【氏名】北浦 毅
(72)【発明者】
【氏名】片岡 正道
【審査官】 今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−109249(JP,A)
【文献】 特開平09−066429(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/077911(WO,A1)
【文献】 特開2012−064872(JP,A)
【文献】 特開2008−147591(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0202678(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67−21/687
H01L 21/301
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形板状物の外周をトリミング加工する際板状物を保持するトリミング加工用の保持テーブルであって、
板状物の外周部を保持する環状保持面を有する環状保持部と、
該環状保持部で囲繞される中央凹部と、を備え、
該環状保持部には、該環状保持面に開口する吸引口と、一端が該吸引口に連通するとともに他端が吸引源に接続される吸引路と、該吸引口の外周側の該環状保持面に開口する液体噴出口と、一端が該液体噴出口に連通するとともに他端が液体供給源に接続される液体流路と、が形成されており、
円形板状物のトリミング加工中、該保持テーブルを回転させつつ該液体噴出口から液体を噴出することで切削屑が板状物と該環状保持面に付着することを抑制することを特徴とする保持テーブル。
【請求項2】
前記環状保持部は樹脂から形成されている請求項1記載の保持テーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ等の板状物を保持する保持テーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ウエーハ等の板状物を加工する研削装置や切削装置、レーザー加工装置等の各種加工装置は、例えば、特開平5−23941号公報及び特開2008−140832号公報に開示されるような、板状物を吸引保持する保持面を有する保持テーブル(チャックテーブル)を備えている。
【0003】
板状物が保持テーブルに吸引保持されて各種の加工が施されると、板状物が保持テーブルで吸引保持されることで板状物の被保持面にはコンタミが付着する恐れがある。
【0004】
板状物の被保持面にコンタミが付着すると、付着したコンタミが板状物を搬送する搬送ユニットを汚染したり、加工後の板状物が収容されるカセット内部を汚染してしまう恐れがある。一度汚染された搬送ユニットやカセットでコンタミの付着していない板状物を搬送したり収容したりすると、綺麗な板状物もコンタミによって汚染されてしまう恐れがある。
【0005】
一方、特開2004−107606号公報に開示されるように、被加工物のハンドリングを容易にするため、サポートプレート上に接着剤やワックスを介して板状被加工物を貼着する場合がある。また、特開平5−21763号公報に開示されるように、サポートプレート上に被加工物を直接接合によって貼着する技術も広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−107606号公報
【特許文献2】特開平5−21763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、サポートプレート上に被加工物が貼着された積層被加工物のサポートプレート側を保持テーブルで吸引保持するとサポートプレートに傷がつくことがある。傷がついたサポートプレートを再度使用しようとしても、傷のサイズによっては保持テーブルでの吸引保持ができない恐れがある。
【0008】
また、傷がついたサポートプレートに貼着された被加工物に加熱を伴う処理を施すと、傷を起点にしてサポートプレートが破損し、ウエーハを破損する恐れもある。そこで従来は、一度使用したサポートプレートは廃棄しており、非常に非経済的であるため、サポートプレートの再利用を図ることが要望されていた。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、吸引保持する板状物へのコンタミの付着や傷がつく恐れを低減しうる保持テーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、円形板状物の外周をトリミング加工する際板状物を保持するトリミング加工用の保持テーブルであって、板状物の外周部を保持する環状保持面を有する環状保持部と、該環状保持部で囲繞される中央凹部と、を備え、該環状保持部には、該環状保持面に開口する吸引口と、一端が該吸引口に連通するとともに他端が吸引源に接続される吸引路と、該吸引口の外周側の該環状保持面に開口する液体噴出口と、一端が該液体噴出口に連通するとともに他端が液体供給源に接続される液体流路と、が形成されており、円形板状物のトリミング加工中、該保持テーブルを回転させつつ該液体噴出口から液体を噴出することで切削屑が板状物と該環状保持面に付着することを抑制することを特徴とする保持テーブルが提供される。
【0011】
好ましくは、環状保持部は樹脂から形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保持テーブルでは、環状保持部によってサポートプレートの外周部のみが保持されるため、サポートプレートに傷やコンタミがつく恐れを低減でき、搬送ユニットや収容カセットの汚染を防止できるとともにサポートプレートの再利用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の保持テーブルを具備した切削装置の斜視図である。
図2】本発明実施形態に係る保持テーブルの縦断面図である。
図3】サポートプレートを吸引保持している状態の保持テーブルの縦断面図である。
図4】サポートプレートの貼着されたウエーハの面取り部をトリミング加工している状態の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態に係る保持テーブル(チャックテーブル)18を備えた切削装置2の外観斜視図が示されている。
【0015】
切削装置2の前面側には、オペレーターが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作パネル4が設けられている。装置上部には、オペレーターに対する案内画面や撮像ユニットより撮像された画像が表示されるCRT等の表示ユニット6が設けられている。
【0016】
ウエーハ等の板状被加工物は収容カセット8中に複数枚(例えば25枚)収容される。収容カセット8は上下動可能なカセットエレベーター9上に載置される。収容カセット8の後方には、収容カセット8から切削前の被加工物を搬出するとともに、切削後の被加工物を収容カセット8に搬入する搬出入ユニット10が配設されている。
【0017】
搬出入ユニット10はクランプ11を有しており、クランプ11が被加工物を把持して、収容カセット8に対して被加工物を搬出及び搬入する。搬出入ユニット10はY軸方向に直線移動される。
【0018】
収容カセット8と搬出入ユニット10との間には、搬出入対象の被加工物が一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12には、被加工物をセンタリングする一対の位置決め部材14が配設されている。
【0019】
仮置き領域12の近傍には、被加工物を吸着して搬送する旋回アームを有する搬送ユニット16が配設されており、仮置き領域12に搬出された被加工物は、搬送ユニット16により吸着されて保持テーブル(チャックテーブル)18上に搬送され、保持テーブル18により吸引保持される。
【0020】
保持テーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、保持テーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、被加工物の切削すべき領域を検出をアライメントユニット30が配設されている。
【0021】
アライメントユニット30は、被加工物の表面を撮像する撮像素子及び顕微鏡を有する撮像ユニット32を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によって切削すべき領域を検出することができる。撮像ユニット32によって取得された画像は、表示ユニット6に表示される。
【0022】
アライメントユニット30の左側には、保持テーブル18に保持された被加工物に対して切削加工を施す切削ユニット34が配設されている。切削ユニット34はアライメントユニット30と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0023】
切削ユニット34は、回転可能なスピンドル36の先端に切削ブレード38が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード38は撮像ユニット32のX軸方向の延長線上に位置している。
【0024】
40は切削加工の終了した被加工物を吸着してスピンナ洗浄ユニット42まで搬送する搬送ユニットであり、スピンナ洗浄ユニット42では被加工物がスピン洗浄及びスピン乾燥される。
【0025】
図2を参照すると、本発明実施形態に係る保持テーブル18の縦断面図が示されている。保持テーブル18は、SUS等の金属から形成されたベース(枠体)20と、ベース20上に貼着された被加工物を保持する環状の保持面22aを有する環状保持部22とを含んでいる。保持テーブル18は更に、環状保持部22で囲繞される中央凹部24を有している。
【0026】
好ましくは、環状保持部22は導電性樹脂から形成されている。環状保持部22を導電性樹脂から形成することにより、静電気によってコンタミが環状保持部22に付着するのを防止できる。
【0027】
本実施形態の保持テーブル18は、全体を樹脂から形成するのではなく、ベース20をSUS等の金属から形成し、環状保持部22のみを樹脂から形成することにより、保持テーブル18の剛性を保つことができる。
【0028】
ベース20には、吸引源26に図示しない電磁切替弁を介して選択的に接続される吸引路21と、液体供給源28に図示しない電磁切替弁を介して選択的に接続される流体流路23が形成されている。
【0029】
環状保持部22には、ベース20の吸引路21に接続された環状吸引路25と、流体流路23に接続された環状流体流路27が形成されている。環状保持部22の環状保持面22aには、環状吸引路25に連通した環状吸引口25aと、環状流体流路27に連通した環状の液体噴出口27aとが開口している。
【0030】
環状吸引口25aに変わって、円周方向に離間した複数の吸引口を形成し、環状の液体噴出口27aに変わって、円周方向に離間した複数の液体噴出口を配設するようにしてもよい。
【0031】
図3を参照すると、積層板状物15を保持テーブル18で吸引保持している状態の保持テーブル18の縦断面図が示されている。積層板状物15は、サポートプレート13上に接着剤により板状物11を接着して形成されている。
【0032】
サポートプレート13は、例えばパターンを有しないシリコンウエーハから形成されており、板状物11は例えば表面11aに半導体デバイスを有するシリコンウエーハから形成されている。
【0033】
シリコンウエーハ11aの外周には円弧状の面取り部11cが形成されており、サポートプレート13の外周にも円弧状の面取り部13cが形成されている。サポートプレート13はガラスから形成するようにしてもよい。
【0034】
図4を参照すると、保持テーブル18に吸引保持されたシリコンウエーハ等の板状物11の面取り部11cをトリミング加工している状態の一部断面側面図が示されている。面取り部11cのトリミング加工では、矢印A方向に高速回転する切削ブレード38を面取り部11cを有する板状物11の外周部に所定深さ切り込ませ、保持テーブル18を矢印B方向に低速で回転させることにより、板状物11の外周に形成された面取り部11cを切り落とす。
【0035】
このトリミング加工は、流体噴出口27aから純水等の流体29を噴出しながら実施するのが好ましい。トリミング加工を行うと切削屑が発生するが、この切削屑は噴出する流体29により洗い流されて積層板状物15及び保持テーブル18に付着することが抑制される。
【0036】
図4に示した実施形態では、積層板状物15のトリミング加工をしている状態が示されているが、加工はトリミング加工に限定されるものではなく、板状物11を分割予定ラインに沿って切削する切削加工にも保持テーブル18は使用可能である。また、保持テーブル18をレーザー加工装置の保持テーブルとして利用し、板状物11にレーザー加工を施すようにしてもよい。
【0037】
上述した実施形態の保持テーブル18では、環状保持部22によってサポートプレート13の外周部のみが吸引保持されるため、サポートプレート13に傷やコンタミがつく恐れを低減でき、搬送ユニットや収容カセットの汚染を防止できるとともにサポートプレート13の再利用を図ることができる。
【0038】
更に、本実施形態の保持テーブル18は、サポートプレート13を吸引保持する場合のみでなく、板状物11を直接吸引保持して加工を施す場合にも利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
11 板状物(シリコンウエーハ)
13 サポートプレート
15 積層板状物
18 保持テーブル
20 ベース
21,25 吸引路
22 環状保持部
22a 環状保持面
23,27 液体流路
25a 吸引口
26 吸引源
27a 液体噴出口
28 液体供給源
38 切削ブレード
図1
図2
図3
図4