特許第6000011号(P6000011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6000011-銅微粒子分散体、及び導電材料 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000011
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】銅微粒子分散体、及び導電材料
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20160915BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20160915BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20160915BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20160915BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   B22F9/00 B
   H01B1/22 Z
   H01B5/14 B
   H05K1/09 D
   H05K3/12 610B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-170025(P2012-170025)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28994(P2014-28994A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161322
【弁理士】
【氏名又は名称】白坂 一
(74)【代理人】
【識別番号】100120570
【弁理士】
【氏名又は名称】中 敦士
(72)【発明者】
【氏名】山田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英道
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−138286(JP,A)
【文献】 特開2012−138349(JP,A)
【文献】 特開2012−094510(JP,A)
【文献】 特開2011−219862(JP,A)
【文献】 特開2003−166006(JP,A)
【文献】 特開2006−024672(JP,A)
【文献】 特開2009−218497(JP,A)
【文献】 特開2004−337840(JP,A)
【文献】 特開2011−183280(JP,A)
【文献】 特開2002−012620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00〜9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである銅微粒子(P)とポリオール溶媒(S)からなる銅微粒子分散体(D)であって、
銅微粒子分散体(D)を昇温速度10℃/minで加熱した際の昇温還元(TPR)スペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にあることを特徴とする、
銅微粒子分散体。
【請求項2】
前記銅微粒子分散体(D)を昇温速度10℃/minで加熱した際の昇温還元(TPR)スペクトル測定におけるピーク温度(T1(℃))からポリオール溶媒(S)の沸点(T2(℃))を引いた差(T1−T2(℃))が、ポリオール溶媒(S)の沸点(T2(℃))に対する値([(T1−T2)/T2]×100)で、−40%〜+15%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の銅微粒子分散体。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである銅微粒子(P)とポリオール溶媒(S)からなり、
昇温速度10℃/minで加熱した際の昇温還元(TPR)スペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲であり、
かつ、ピーク温度(T1(℃))からポリオール溶媒(S)の沸点(T2℃)を引いた差(T1−T2(℃))が、ポリオール溶媒(S)の沸点(T2(℃))にする値([(T1−T2)/T2]×100)で、−40%〜+15%の範囲である、
銅微粒子分散体(D)焼成体からなる、導電材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅微粒子分散体、及び該銅微粒子分散体を焼結して得られる導電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属微粒子を含有するインクを使用して、配線パターンをインクジェットプリンタ法により形成し、焼成して配線を形成する技術が注目され、該インクを基材上にパターニング後、加熱焼成して導電性に優れる焼結体を得ることが可能な金属等の微粒子が分散しているインクが提案されている。しかしながら、インクを焼成して焼結体を形成する際に、250℃、又は300℃以上の高温で焼成されているので、インクをパターニングする基材の材料に耐熱性が要求されて使用する材料が制約される問題点があった。また、比較的低温で焼成すると、インク中の分散溶液、添加剤等が充分に蒸発、分解されずに不純物として残存する結果、焼結体の導電性が不十分になるという問題点があった。
【0003】
ポリオールを含む金属微粒子分散液を乾燥後に焼成して金属薄膜又は金属細線を得る方法として以下の特許文献が公開されている。特許文献1には、ジエチレングリコールに分散させた酸化第一銅を含む分散液をスライドガラス上に塗布後、水素ガスをフローさせ、300℃で1時間還元焼成し、銅被膜を得たことが開示されている。特許文献2には、1次粒径が100nm以下である金属酸化物微粒子を含むインクジェット用インクをインクジェット法により基板上に塗布した後、水素ガス雰囲気下、350℃で1時間の熱処理を施して、酸化第一銅の還元を行い、金属配線のパターンを得たことが開示されている。
特許文献3には、ジエチレングリコール中に懸濁された、2次粒子の平均粒径500nmの酢酸銅を濃度が30重量%になるように濃縮し、さらに超音波処理を施して、導電性インクとした後、スライドガラス上に塗布して、還元雰囲気下、350℃で1h加熱して銅薄膜を得たことが記載されている。
【0004】
特許文献4には、銅微粒子を得る方法として、核生成のためのパラジウムイオンを添加すると共に、分散剤としてポリエチレンイミンを添加してポリエチレングリコール又はエチレングリコール溶液中でパラジウムを含有する粒径50nm以下の銅微粒子を形成し、ついでこの銅微粒子分散液を用いて、基板上にパターン印刷を行うために、4%H−N気流中において250℃で3時間の熱処理を行うことによって、微細な銅の導電膜を形成したことが記載されている。また、特許文献5では、複合酸化物の排気ガス浄化触媒の助触媒としての酸化還元能が、昇温還元スペクトル(Temperature Programmed Reduction Spectra)を測定することにより推測されている。昇温還元スペクトルは、試料に対して水素ガスなどの還元ガスを流しながら試料を一定速度で昇温していき、各温度で還元に使用された還元ガスの量を測定することにより得られる。そのため、昇温還元スペクトルは、測定物質の還元能の温度依存性を表すスペクトルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−164876号公報
【特許文献2】特開2004−277627号公報
【特許文献3】特開2004−323568公報
【特許文献4】特開2005−330552号公報
【特許文献5】国際公開第2005/085137号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2をはじめ、特許文献3及び特許文献4における従来の製造方法では、250〜350℃に近い比較的高温で熱処理をするか、又は熱処理のときに水素ガス等の還元性ガス雰囲気下で行わなければ導電性の金属を得ることができないという問題点があった。また、特許文献5に開示の方法は、複合酸化物の排気ガス浄化触媒の助触媒の、より低温において排気ガス浄化触媒の助触媒としての作用を調べるためのものである。
本発明は上記問題点を解決して、銅微粒子とポリオール溶媒からなる銅微粒子分散体を焼成して導電性の焼結体を得る際に、ポリオール溶媒が加熱分解されて、比較的低温での焼成でも銅微粒子の還元、焼結を効率よく促進させることが可能な銅微粒子分散体、及び該銅微粒子分散体を焼結して得られた導電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
銅微粒子を焼結する際に、銅微粒子の活性は銅微粒子表面の酸化度や付着有機物量、あるいは比表面積など様々な要因によりその活性度が決まるため、金属微粒子の活性度を便宜的な尺度で規定することは困難であった。今回、単一の指標により粒子の活性を規定する方法として、昇温還元スペクトルのピーク半値幅を用いることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)ないし(3)に記載する発明を要旨とする。
(1)一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである銅微粒子(P)とポリオール溶媒(S)からなる銅微粒子分散体(D)であって、
銅微粒子分散体(D)を昇温速度10℃/minで加熱した際の昇温還元(TPR)スペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にあることを特徴とする、
銅微粒子分散体(以下、第一の態様ということがある)。
(2)前記銅微粒子分散体(D)を昇温速度10℃/minで加熱した際の昇温還元(TPR)スペクトル測定におけるピーク温度(T1(℃))からポリオール溶媒(S)の沸点(T2(℃))を引いた差(T1−T2(℃))が、ポリオール溶媒(S)の沸点(T2(℃))に対する値([(T1−T2)/T2]×100)で、−40%〜+15%の範囲であることを特徴とする、前記(1)に記載の銅微粒子分銅微粒子分散体。
(3)前記請求項1又は2に記載の、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである銅微粒子(P)とポリオール溶媒(S)からなり、
昇温速度10℃/minで加熱した際の昇温還元(TPR)スペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲であり、
かつ、ピーク温度(T1(℃))からポリオール溶媒(S)の沸点(T2℃)を引いた差(T1−T2(℃))が、ポリオール溶媒(S)の沸点(T2(℃))にする値([(T1−T2)/T2]×100)で、−40%〜+15%の範囲である、
銅微粒子分散体(D)焼成体からなる、導電材料(以下、第二の態様ということがある)。
【発明の効果】
【0009】
銅微粒子(P)とポリオール溶媒(S)からなる銅微粒子分散体(D)において、銅微粒子(P)の昇温還元スペクトル(以下、TPRスペクトルということがある)測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にあることで、焼成時のポリオール溶媒(S)の分解が適切な速度で進行し、水素ラジカルが十分生成して銅微粒子表面を活性化し、銅微粒子間の焼結が促進されて緻密度の高い焼結構造となり、焼結体は良好な導電性を示す。また、TPRスペクトルのピーク温度(T(℃))からポリオール溶媒(S)の沸点(T(℃))を引いた差(T−T(℃))が、ポリオール溶媒(S)の沸点(T(℃))に対する値([(T−T)/T]×100)で、−40%〜+15%の範囲であることで、焼成工程においてポリオールの分解がより十分に進行し、残存ポリオール溶媒(S)が銅微粒子間の焼結を阻害することなく、焼結が十分に進行する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例で得られたTPRスペクトルの測定チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の〔1〕銅微粒子分散体(第一の態様)、及び〔2〕導電材料(第一の態様)について説明する。
〔1〕銅微粒子分散体(第一の態様)
本発明の第一の態様である「銅微粒子分散体」は、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである銅微粒子(P)とポリオール溶媒(S)からなる銅微粒子分散体(D)であって、
銅微粒子分散体(D)を昇温速度10℃/minで加熱した際の昇温還元(TPR)スペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にあることを特徴とする。
【0012】
(1)銅微粒子(P)
銅微粒子(P)は、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmの微粒子である。
銅微粒子(P)の一次粒子の平均粒子径が1nm以上であると銅微粒子分散体中での分散性を向上でき、また、150nm以下であると液滴の吐出等により基板上に微細なパターンを形成することが可能になる。ここで、一次粒子の平均粒子径とは、二次粒子を構成する個々の金属微粒子の一次粒子の直径であり、一次粒子の数平均粒子径を意味する。該一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。
平均一次粒子径が1〜150nmである金属微粒子(P)の製造方法としては、特に制限はなく、例えば湿式化学還元法、アトマイズ法、めっき法、プラズマCVD法、MOCVD法等の方法を用いることができる。具体的には、銅イオンが存在する電解水溶液から、電解還元又は無電解還元により銅微粒子(P)を製造することが可能であり、例えば、特開2008−231564号公報に開示された方法を採用することができる。上記還元で得られる銅微粒子の一次粒子の平均粒子径の制御は、使用する銅イオンの濃度、有機分散剤、アルカリ金属イオンの種類、かく拌速度、温度、時間、pH等の調整により行うことが可能である。上記公報に開示された製造方法を採用する際に、銅イオンの還元反応終了後に還元反応水溶液にクロロホルム等の凝集剤を添加して回収することができる。
銅微粒子(P)は特に限定されるものではないが、合金、及び銅の酸化物も含まれる。
【0013】
(2)ポリオール溶媒(S)
銅微粒子分散体(D)に含有されるポリオール溶媒(S)は、銅微粒子分散体(D)を塗布又はパターニング後の加熱、焼結の際に、加熱分解されて水素ラジカルを発生し、銅微粒子表面活性化を促進させる作用を発揮する。
尚、銅微粒子分散体(D)には有機溶媒として、ポリオール溶媒(S)に更にアミド基を有する化合物(A1)、分子中に1の水酸基を有するアルコール類(A2)、アミン化合物(A3)、ケトン化合物及び/又はアルデヒド化合物(A4)等を含有させた混合溶媒(A)として使用することができる。
【0014】
(イ)ポリオール溶媒(S)
ポリオール溶媒(S)としては、常圧での沸点が100℃以上、かつ分子中に2以上の水酸基を有するアルコール類である、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トレイトール、エリトリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセルアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクトース、イソマルトース、グルコヘプトース、ヘプトース、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロースの中から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
【0015】
(ロ)アミド基を有する化合物(A1)
アミド基を有する化合物(A1)とは、主にアミンとカルボン酸の脱水縮合反応で生成される[−C(=O)−N=]結合を有する化合物であり、アミド基を有する化合物からなる有機溶媒(A1)としては、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミドの中から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
混合溶媒(A)中にアミド基を有する化合物(A1)が含まれていると、銅微粒子分散体(D)中で銅微粒子(P)の分散性を向上する作用の他に、焼結の際にポリオール溶媒(S)が熱分解して生成されるケトン化合物、アルデヒド化合物等、及び他の有機溶媒として添加されるケトン化合物及び/又はアルデヒド化合物(A4)と、共沸し易い性質を有しているので、150〜200℃程度の比較的低温の焼結温度でもケトン化合物、及びアルデヒド化合物は容易に除去される。これにより、焼結体中の有機物残留量が少なくなるので焼結した銅微粒子(P)間の接合強度が向上すると共に電気抵抗と接触抵抗を低くすることができる。
【0016】
(ハ)アルコール(A2)
アルコール(A2)として、炭素数4〜10の脂肪族系アルコールを挙げることができる。
(ニ)アミン化合物(A3)
アミン化合物(A3)は、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びアルカノールアミンの中から選択される1種又は2種以上の有機溶媒である。このようなアミン化合物からなる有機溶媒(A3)としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、モノ−n−オクチルアミン、モノ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリイソノニルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルココナットアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、及び2−(2−アミノエトキシ)エタノールの中から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
【0017】
銅微粒子分散体(D)中にアミン化合物(A3)が存在することにより該銅微粒子分散体(D)中の銅微粒子(P)表面は活性化されるが、さらに銅微粒子分散体(D)を金属基材上に塗布(又はパターン化)することによってアミン化合物(A3)が金属基材にも配位して、該金属基材表面の吸着層が除去されて、該金属基材表面が活性化される効果が発揮される。尚、前述の通り、銅微粒子分散体(D)中に含まれるポリオール溶媒(S)が、100〜150℃程度の温度で予備加熱されることにより、銅微粒子(P)表面及び金属基材表面で分解し、水素ラジカルを形成し、配位したアミン化合物を脱離させる
【0018】
(ホ)アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物(A4)
アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物(A4)としては、エタナール、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、ジプロピルケトン、ヒドロキシアセトン、2−ヒドロキシプロパナール、2−ヒドロキシプロパナール、アセチルメチルカービノール、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシブタナール、2−ヒドロキシ−2−プロパナール、4−ヒドロキシブチルアルデヒド、及び乳酸エチルの中から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
銅微粒子分散体(D)の分散溶媒として、混合溶媒(A)にアルデヒド及び/又はケトン(A4)を共存させることで、ポリオール溶媒(S)等の分解に伴う水素ラジカル形成・銅微粒子表面活性化を促進させ、さらに、ポリオール溶媒(S)等の分解の際、低沸点の物質への分解を促進させる。これにより、通常の不活性雰囲気下における200℃以下の低温での熱処理において、粒子間の焼結が促進され、より低温で低耐熱性樹脂基板上への高導電性の導電パターンが形成可能となる。
【0019】
(3)銅微粒子分散体(D)
銅微粒子分散体(D)における銅微粒子(P)の割合は、10〜85質量%、ポリオール溶媒(S)又は混合溶媒(A)の割合が90〜15質量%(質量%の合計は100質量%)であることが好ましい。
銅微粒子(P)濃度が前記範囲の下限未満では、加熱による焼結の機械的強度が低くなるという不都合を生じる場合があり、また、所望の厚さの導電パターンを形成するために、銅微粒子分散体(D)の吐出を多数回繰り返すことが必要となる。一方、前記範囲の上限を超えると銅微粒子分散体(D)の粘度が高くなりペースト状物の形成、又はパターニングが困難になるおそれがある。銅微粒子分散体(D)には、銅微粒子(P)と有機分散剤の他に、以下に記載する添加剤を配合することができる。
【0020】
(イ)分散剤
銅微粒子(P)の活性は銅微粒子表面の酸化度や付着有機物量、あるいは比表面積など様々な要因によりその活性度が決まるため、銅微粒子分散体(D)には高分子分散剤等の分散剤を添加することが好ましい。該分散剤は、銅微粒子(P)の少なくとも表面の一部を覆うように存在して、銅微粒子(P)の凝集を防止して分散性を良好に維持する作用を有する。
分散剤は粒子表面を覆うように存在するので、分散剤量が多いと銅微粒子(P)の活性が低くなり、TPR半値幅は大きくなる傾向にあり、一方、分散剤量が少ないと粒子活性が高くなり、TPR半値幅は小さくなる傾向にある。
分散剤の添加量は、銅粒子分散体(D)中の銅微粒子(P)100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜2質量部がより好ましい。分散剤の添加量が0.01質量部未満では凝集を抑制する効果が十分に得られない場合があり、一方、前記5質量部を超える場合には、分散性に不都合がなくとも、銅粒子分散体(D)をパターニング後、乾燥・焼成時に、過剰の分散剤が、銅微粒子(P)の焼結を阻害して、焼結金属の緻密さが低下する場合があると共に、分散剤の焼成残渣が、導電膜又は導電回路中に残存して、導電性を低下させるおそれがある。
【0021】
上記分散剤は上記分散作用を奏するものであれば、特に制限されるものではない。前記分散剤としては、その化学構造にもよるが分子量が100〜100,000程度の、銅微粒子(P)を良好に分散させることが可能なもので、かつ炭素原子、水素原子、酸素原子、及び窒素原子から選択された2種以上の原子からなる化合物(高分子化合物も含む)の分散剤が好ましい。上記高分子分散剤として好ましいのは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、及びゼラチンの中から選択される1種又は2種以上である。
上記した、表面が分散剤で覆われた銅微粒子(P)を混合溶媒(A)に分散させることにより、微粒子の凝集サイズが小さく、かつ、比較的凝集サイズの大きさが揃った銅微粒子分散体を得ることが出来る。尚、分散剤として分子中にカルボニル基を有する高分子分散剤を使用すると、更に、二次粒子の微粒子の粒子径が小さく、かつ、大きさの揃った銅微粒子分散体を生成することができる。
【0022】
(5)昇温還元スペクトル測定におけるピーク半値幅
銅微粒子分散体(D)を基板等に塗布又はパターニング後に焼結する際に、銅微粒子(P)表面の活性は該銅微粒子表面の酸化度や付着有機物量、あるいは比表面積など様々な要因によりその活性度が決まるため、銅微粒子の活性度を便宜的な尺度で評価することは困難であったが、本発明において、該活性度をTPRスペクトル測定を利用して得られる該スペクトルのピーク半値幅から評価できることを見出した。
【0023】
(イ)TPRペクトルについて
昇温速度10℃/minで加熱した際のTPRペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にある銅微粒子分散体(D)は、加熱、焼成により導電性に優れた焼結体を得ることが可能になる。
TPRペクトルのピーク半値幅が5〜75℃の範囲内にある銅微粒子(P)及びポリオール溶媒(S)が含まれる銅微粒子分散体(D)を加熱焼成すると、銅の触媒作用により該ポリオールが分解して水素ラジカルを生成して銅微粒子表面を活性化し、銅微粒子間の焼結が促進されて緻密度の高い焼結構造となる。そのため、焼結体は良好な導電性を示す。
本発明者は鋭意検討の結果、ポリオール溶媒(S)の分解速度がポリオール溶媒(S)の焼結度に大きな影響を与えていることを発見した。その理由は充分には解明されていないが、以下の通りと推測される。銅微粒子(P)間の焼結を進行させるには、粒子間距離が短くなっている必要がある。すなわち、焼結はポリオール溶媒(S)がある程度蒸発して銅の密度が高くなっている状態で進行している。一方、焼結に際して有効に使えるポリオール溶媒(S)の量は限られているため、焼結の進行はポリオール溶媒(S)の分解速度に大きな影響を受けていると考えられる。
【0024】
TPRペクトルの半値幅ピークが銅微粒子の活性と関係していることは、等速加熱水素消費反応モデル式(A. W. Coats and J. P. Redfern., Nature Vol.201,1964,P68)から導くことができる。上記モデル式を展開すると、温度半値幅と反応活性化エネルギーとは比例関係にあり、温度半値幅と反応速度が比例していることがわかる。TPRスペクトルのピーク半値幅に基づいて規定すると、銅微粒子のTPRペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲が好ましい範囲として規定できる。TPRペクトルピーク半値幅が5℃未満であると、ポリオール溶媒(S)の分解速度が速すぎ、粒子間の焼結が十分進行する前に還元溶媒が枯渇してしまい、緻密度の低い焼結構造となり、焼結体の導電性は低い。一方、TPRスペクトルピーク半値幅が75℃を超えると、ポリオール溶媒(S)の分解速度が遅く、水素ラジカル形成が十分になされず、粒子間の焼結が十分に進行せず緻密度の低い焼結構造となり、焼結体の導電性は低い。
銅微粒子(P)とポリオール溶媒(S)からなる銅微粒子分散体(D)において、銅微粒子(P)のTPRペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にあることで、焼成時のポリオール溶媒(S)の分解が適切な速度で進行し、水素ラジカルが十分生成して銅微粒子表面を活性化し、銅微粒子間の焼結が促進されて緻密度の高い焼結構造となり、焼結体は良好な導電性を示すことになる。
【0025】
(ロ)TPRペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にある銅微粒子
TPRペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にある銅微粒子(P)は、加熱、焼成する際に銅微粒子の表面活性が適度に高い状態のものであるが、銅微粒子(P)の活性は、粒子表面の酸化程度、分散剤付着量、あるいは銅微粒子の比表面積など様々な要因により決まるため、銅微粒子の活性を規定することは容易ではない。
このようなTPRペクトル測定における、銅微粒子(P)のTPRペクトルのピーク半値幅は、後述するように、銅微粒子表面の少なくとも一部を覆う分散剤の付着量、銅微粒子表面の酸化状態等により変動することから、少なくとも、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmの銅微粒子表面の酸化銅の形成を極力抑制させ、かつ銅微粒子表面の少なくとも一部を分散剤で覆って、過剰な分散剤を遠心分離等の操作により除去することで、TPRスペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にある銅微粒子(P)を得ることが可能になる。
以上、TPRペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にある銅微粒子分散体(D)を例示したが、本発明は上記例示に限定されるものではない。
【0026】
(6)銅微粒子分散体(D)の製造方法銅微粒子分散体(D)には、一次粒子の平均粒子径1〜500nmの銅微粒子(P)が分散されているが、更に撹拌して分散性を向上するのが望ましい。銅微粒子分散体(D)の撹拌方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。上記超音波照射時間は、特に制限はなく任意に選択することが可能である。例えば、超音波照射時間を5〜60分間の間で任意に設定すると照射時間が長い方が平均二次凝集サイズは小さくなる傾向にある。更に超音波照射時間を長くすると分散性は一層向上する。
このようにして得られた銅微粒子分散体(D)は、銅微粒子(P)が分散剤に覆われた状態で分散溶液中に分散していることが好ましい。このような分散剤が銅微粒子(P)を分散させるメカニズムは完全に解明されてはいないが、高分子分散剤を使用する場合には、例えば高分子に存在する官能基の非共有電子対を有する原子部分が銅微粒子(P)の表面に吸着して、分子層を形成し、互いに銅微粒子(P)同士の接近をさせない、斥力が発生していることが予想される。
【0027】
〔2〕導電材料(第二の態様)
本発明の第二の態様である「導電材料」は、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである銅微粒子(P)とポリオール溶媒(S)からなり、
昇温速度10℃/minで加熱した際の昇温還元(TPR)スペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲であり、
かつ、ピーク温度(T(℃))からポリオール溶媒(S)の沸点(T℃)を引いた差(T−T(℃))が、ポリオール溶媒(S)の沸点(T(℃))にする値([(T−T)/T]×100)で、−40%〜+15%の範囲である、
銅微粒子分散体(D)を焼成して得られた、導電材料である。
(1)第一の態様に記載の銅微粒子分散体(D)
第一の態様に記載の銅微粒子分散体(D)は、一次粒子の平均粒子径が1〜150nmである銅微粒子(P)とポリオール溶媒(S)からなる銅微粒子分散体(D)であって、
銅微粒子分散体(D)を昇温速度10℃/minで加熱した際の昇温還元スペクトル(TPR)測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲にあることは前述の通りである。
【0028】
(2)TPRスペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲
TPRスペクトル測定におけるピーク半値幅が5〜75℃の範囲については、第一の態様に記載の銅微粒子分散体(D)に記載した通りである。
【0029】
(3)ピーク温度からポリオール溶媒(S)の沸点を引いた差
TPRスペクトル測定におけるピーク温度(T(℃))からポリオール溶媒(S)の沸点(T℃)を引いた差(T−T(℃))が、ポリオール溶媒(S)の沸点(T(℃))にする値([(T−T)/T]×100)で、−40%〜+15%の範囲であることで、焼成工程においてポリオール溶媒(S)分解が十分に進行し、残存ポリオール溶媒(S)が粒子間の焼結を阻害することなく、焼結が十分に進行する。ピーク温度(T(℃))からポリオール溶媒(S)の沸点(T℃)を引いた差(T−T(℃))が、ポリオール溶媒(S)の沸点(T(℃))にする値([(T−T)/T]×100)で、+15%を超えると、焼成工程において粒子が十分な活性状態となる前にポリオール溶媒が枯渇してしまい、粒子間の焼結が十分に進行しない。
一方、前記([(T−T)/T]×100)が−40%〜+15%であると、焼成工程においてポリオール溶媒(S)が焼結体内に残存せず、緻密な焼結体が形成される。
【0030】
混合溶媒(A)中に分子中に1又は2以上の水酸基を有するポリオール溶媒(S)が含有されていると、銅微粒子分散体(D)を導電性インク等に使用するために長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性を向上する作用を有する。また、ポリオール溶媒(S)は、加熱して銅微粒子(P)を焼結させる際に、分解して水素ラジカルを発生し、銅微粒子(P)表面で還元作用を発揮してこれらの表面を活性化して焼結を促進し、銅微粒子(P)の焼結体が酸化を受けるのを抑制して、導電性の高い導電パターンを形成することが可能になる。
【0031】
(4)銅微粒子分散体(D)の利用
本発明の銅微粒子分散体(D)は、インクジェットインク、導電性ペースト等として基材上に塗布又はパターニング後、加熱・焼成することにより、得られる導電パターンは、高導電性・高基板密着性に優れる。従って、配線、電極、バンプ等の形成に有用である。
銅微粒子分散体(D)を塗布又はパターニングする基材には、通常用いられるガラス基材や耐熱性合成樹脂からなる基材等を挙げることができ、その形状としては平板、立体物、フィルム等が挙げられる。耐熱性合成樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、フッ素樹脂等を用いることができる。これらの基材は、銅微粒子分散体(D)のパターニングをする前に、純水や超音波等を用いて塗布面を洗浄することが好ましい。
銅微粒子分散体(D)のパターニング又は塗布方法としては、スピンコート法、インクジェット法、微少液滴塗布法、スプレー塗布法、スポイト滴下、及びピペット滴下から選択された1種又は2種以上が例示できる。
【0032】
基材上に塗布又はパターニングされた銅微粒子分散体(D)の厚みは、該溶液中の銅微粒子(P)の濃度、空隙率、導電膜又は導電回路の厚み等により変わるものであり、一概に決定することはできないが、焼結性、空隙率、機械的強度等を考慮すると基材上の導電性インク等の厚みが、1μm〜3mmの範囲であることが望ましい。また、基材上への銅微粒子分散体(D)のパターニング又は塗布量が3〜100μl/cmであることが好ましい。前記塗布量が3μl/cm未満では沸点に至る以前のより早期に還元剤が蒸発して、粒子表面の還元反応が進行しないで酸化物状態に維持されて、焼結が進行しないおそれがある。一方、前記塗布量が100μl/cmを超えると蒸発速度が抑制されて200℃程度での焼結では導電膜中に還元溶媒が残存して、導電性を阻害するおそれがある。
【0033】
加熱・焼成方法は特に限定されるものではないが、非酸化性ガス雰囲気中で赤外線加熱、温風加熱等により基板を部分的に加熱することが可能である。加熱温度は赤外線センサー等を用いて行うことができる。
本発明の銅微粒子分散体(D)を加熱・焼結して導電パターン等を得る際に、水素ラジカルが発生する特長があるので、有機溶媒(B)による銅微粒子表面活性化・水素ラジカル形成温度はポリオール溶媒(S)の沸点に近い温度で粒子の焼結を促進する必要があるが、ポリオール溶媒(S)の添加により、150〜200℃程度の焼成温度でも高導電性の焼結体を形成することが可能になる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例、比較例により本発明をより具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例、比較例において、使用した原材料、評価方法を以下に記載する。
(1)原材料
(イ)銅微粒子
アルドリッチ(Aldrich)社製、銅微粒子(平均一次粒子径50nm)を使用した。
(ロ)ポリビニルピロリドン
アクロス(Acros)社製、ポリビニルピロリドン(数平均分子量:3500)を使用した。
(ハ)ガラス基板
旭硝子(株)製、ガラス基板(商品名:AN100)を使用した。
【0035】
(3)昇温還元スペクトル(TPR)測定装置
日本ヘベル社製、全自動昇温脱離スペクトル装置(型式:TPD−1−AT 型)を使用した。
(4)導電性の評価方法
JIS D0202−1988に準拠して、配線材料の体積抵抗率を直流四端子法(使用測定機:ケースレー社製、デジタルマルチメータDMM2000型(四端子電気抵抗測定モード))を使用して評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:体積抵抗率が50μΩ・cm未満
○:体積抵抗率が50μΩ・cm以上、1000μΩ・cm未満
×:体積抵抗率が1000μΩ・cm以上
【0036】
[実施例1〜3、比較例1〜2]
(1)ポリビニルピロリドンで覆われた銅微粒子の調製
メタノール(MeOH)中で、ポリビニルピロリドン(PVP)濃度が表1に示すように1、3、5、10wt%となるようにPVPを溶解させて、PVP含有メタノール溶液を調製した。
銅微粒子10gとPVP含有メタノール70mlを試験管に入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収した。上記工程で回収された銅微粒子を真空乾燥処理してメタノール成分を除去し、銅微粒子分散体形成用の銅微粒子を得た。
【0037】
(2)銅微粒子のTPRの測定と評価
実施例1〜3、比較例1〜2において実施した、銅微粒子のTPRスペクトルの測定方法を以下に示す。
銅微粒子分散体からなる試料量10mgを石英管に充填して、該石英管にヘリウム(He)ガスを50ml/minでフローし、200℃で1時間保持し、その20℃まで後冷却した。次に、該石英管に、6容積%の水素を含むアルゴンガスを50ml/minでフローしながら、該石英管を10℃/minの昇温速度で昇温した。
石英管から流出するアルゴンガス中の、ポリオール溶媒(S)の分解により発生した水素ガスの増加分をアルゴンガス中の水素濃度として測定することにより、図1(実施例で測定したTPRスペクトル)に示すような、TPRスペクトルを得た。得られたTPRスペクトルから、TPR半値幅と、TPRピーク温度を表1にまとめて示す。
【0038】
(3)銅微粒子分散体の調製、導電パターンの形成
銅微粒子分散体として、以下の銅微粒子インクと銅微粒子ペーストをそれぞれ調製し、更に導電パターンを形成して、導電性の評価をおこなった。
(イ)銅微粒子分散体の調製
(i)銅微粒子インクの調製と、該インクを用いた導電パターンの形成
銅微粒子20質量部を、エチレングリコール(沸点197℃)80質量部に分散させ、超音波ホモジナイザーを用いて分散溶液中に1時間、超音波振動を与えることで銅微粒子分散体である、銅微粒子インクを調製した。
上記方法で調製した銅微粒子インクを、1kHz〜50kHzでノズル開口50μmのインクジェットヘッドから吐出し、ガラス基板上に、ラインパターン(長さ:1cm、幅100μm)を形成した。このパターンが形成されたガラス基板を、窒素雰囲気中、200℃で1時間熱処理し、導電パターンを形成した。
(ii)銅微粒子ペースト調製、導電パターンの形成
銅微粒子80質量部に対し、グリセリン(沸点290℃)を20質量部添加し、均一になるまで攪拌して、銅微粒子ペーストを調製した。
上記方法で調製した銅微粒子ペーストを、アプリケータを用いてガラス基板上に製膜した後、窒素雰囲気中、200℃で1時間熱処理し、導電パターンを形成した。
【0039】
(ロ)導電性の評価
上記で得られた銅微粒子インクと、銅微粒子ペーストについて上記方法により、導電性の評価を行った。結果をまとめて表1に示す。また、表1には、銅微粒子分散体のTPRスペクトルのピーク温度と、分散溶媒の沸点の差(表1中、溶媒とTPRピーク温度の温度差と記載する)の、該分散溶媒の沸点に対する割合(%)も評価結果として示す。
【0040】
[実施例4〜6、比較例3]
銅微粒子(平均一次粒子径:20nm)を空気雰囲気下にて温度150℃でそれぞれ、表2に示す時間保持して、銅微粒子の酸化処理を行った。
酸化処理した銅微粒子について、実施例1に示したと同様のTPRスペクトルの測定と評価を行った。
表2に、酸化処理時間、及び銅微粒子のTPR半値幅、TPRピーク温度、評価した銅微粒子分散体(銅微粒子インク、又は銅微粒子ペースト)、銅微粒子分散体のTPRスペクトルのピーク温度と分散溶媒の沸点の差(表2中、溶媒とTPRピーク温度の温度差と記載する)、該差の分散溶媒の沸点に対する割合(%)、銅微粒子分散体から作製した導電パターンの評価結果を表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
図1