特許第6000291号(P6000291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000291
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ミラーの表面形態を補正する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20160915BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20160915BHJP
   C23C 16/32 20060101ALI20160915BHJP
   G02B 17/06 20060101ALN20160915BHJP
【FI】
   G03F7/20 503
   G02B5/10 C
   C23C16/32
   !G02B17/06
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-558356(P2013-558356)
(86)(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公表番号】特表2014-511033(P2014-511033A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】EP2012053234
(87)【国際公開番号】WO2012123240
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】102011005543.6
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/452,879
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シッケタンツ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ハインリッヒ エーム
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−321564(JP,A)
【文献】 特開2007−108516(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/043414(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/043398(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20−7/24、9/00−9/02
G02B 5/00−5/08、5/10−5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射するミラー(1、201、301、401)の表面形態を補正する方法であって、前記ミラーは基板(3、203)を備える方法において、少なくとも以下のステップ:
・前記ミラー(1、201、301、401)の表面形態を補正するための層厚変動(21)を有する補正層(13、213)を施すステップと、
・第1層群(19、219)を前記補正層(13、213)に施すステップであり、前記第1層群(19、219)は、上下に交互配置した複数の第1層(9、209)及び第2層(11、211)を含み、前記作動波長を有する放射線に対する前記第1層(9、209)の屈折率は、前記作動波長を有する放射線の前記第2層(11、211)の屈折率よりも大きいステップと
を含み、前記ミラー(1、201、301、401)の表面形態を補正するために前記層厚変動(21)を有する前記補正層(13、213)を施すステップを、以下のステップ:
・反応ガス(15、215)を含む雰囲気に前記ミラー(1、201、301、401)を導入するステップと、
・場所依存性層厚変動(21)を有する補正層(13、213)が前記ミラー(1、201、301、401)の照射面上で成長するように、場所依存性放射エネルギー密度を有する補正放射線(17、217、317)を前記ミラー(1、201、301、401)に施すステップと
により行う方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記ミラーは、前記補正層(13、213)を施す前に、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射する反射コーティングを備え、該反射コーティングは、第2層群(5、205)を含み、該第2層群(5、205)は、上下に交互配置した複数の第1層(9、209)及び第2層(11、211)を含み、
前記作動波長を有する放射線に対する前記第1層(9、209)の屈折率は、前記作動波長を有する放射線に対する前記第2層(11、211)の屈折率よりも大きいことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記補正放射線(17、217、317)は、前記反応ガス(15、215)の成分又は化学反応生成物の堆積が生じるように前記反応ガス(15、215)の雰囲気と反応して、前記補正層(13、213)が堆積により成長するようにすることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記ミラー(1、201、301、401)の一箇所での前記補正放射線(17、217、317)の放射エネルギー密度が高いほど、前記ミラー(1、201、301、401)のこの箇所での堆積が多いことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の方法において、
前記補正放射線(17、217、317)は、電磁放射線、イオン放射線、電子放射線、又は化学ラジカルの放射線を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記成分又は前記化学反応生成物は、以下の群:炭素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、又はこれら元素ベースの有機化合物、及び無機金属化合物に由来することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法において、
前記補正放射線(17、217、317)は、250nm未満の波長を有する電磁放射線であり、照射ミラー面(18、218)から光電子が放出されて前記反応ガス(15、215)の吸着分子の解離をもたらして、前記補正層(13、213)が前記反応ガス(15、215)の解離生成物の1つの堆積により成長するようにすることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法において、
前記補正放射線(17、217、317)は、前記反応ガス(15、215)中の水素化金属化合物の富化をもたらす水素ラジカルを含むことで、金属堆積が起こり、その結果としてこの金属を含む補正層(13、213)が成長することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において、
前記補正放射線(17、217、317)を前記ミラー(1、201、301、401)に施す前に、前記補正層(13、213)の成長速度を制御するために補助層(225)を前記ミラーに施すことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の投影光学ユニット(431)のミラー(1、201、301、401)の表面形態を補正する方法を含む、マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影光学ユニット(431)の結像特性を補正する方法。
【請求項11】
マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影光学ユニット(431)の結像特性を補正する方法であって、以下のステップ:
a.前記投影光学ユニット(431)の波面収差を求めるステップと、
b.前記投影光学ユニット(431)の波面収差から少なくとも1つのミラー(1、201、301、401)の補正表面形態を計算するステップと、
c.請求項1〜9のいずれか1項に従って前記少なくとも1つのミラー(1、201、301、401)の表面形態を補正するステップと
を含む方法。
【請求項12】
5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射する、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置で用いる、基板(3、203)及び反射コーティングを備えたミラー(1、201、301、401)であって、
前記反射コーティングは、第1層群(19、219)及び第2層群(5、205)を含み、
該第2層群(5、205)を前記基板と前記第1層群(19、219)との間に配置し、
該第1層群(19、219)及び前記第2層群(5、205)はそれぞれ、上下に交互配置した複数の第1層(9、209)及び第2層(11、211)を含み、前記作動波長を有する放射線に対する前記第1層(9、209)の屈折率は、前記作動波長を有する放射線に対する前記第2層(11、211)の屈折率よりも大きく、
前記ミラー(1、201、301、401)の表面形態を補正するための層厚変動(21)を有する補正層(13、213)を、前記第2群(5、205)と前記第1群(19、219)との間に配置し、前記補正層(13、213)は、以下の成分:炭素、硫黄、リン、フッ素、又はこれら元素ベースの有機化合物、及び無機金属化合物の少なくとも1つを含有するミラー。
【請求項13】
請求項12に記載のミラーにおいて、
前記第1群(19、219)は、21個よりも多い層数を含むことを特徴とするミラー。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のミラーにおいて、
前記第2層群(5、205)及び前記第1層群(19、219)を同じ作動波長を反射するよう具現したことを特徴とするミラー。
【請求項15】
請求項1214のいずれか1項に記載のミラー(1、201、301、401)を備えたマイクロリソグラフィ露光装置用の投影レンズ(401)。
【請求項16】
請求項15に記載の投影レンズを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置で用いるミラー、マイクロリソグラフィ投影露光装置で用いる投影レンズ、マイクロリソグラフィ投影露光装置、及びミラーの表面形態を補正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ投影露光装置は、フォトリソグラフィ法により微細構造コンポーネントを製造するのに役立つ。この場合、構造担持マスク、いわゆるレチクルを、投影光学ユニットを用いて感光層に結像する。かかる投影光学ユニットを用いて結像できる最小特徴サイズは、用いる結像光の波長によって決まる。用いる結像光の波長が短いほど、投影光学ユニットを用いて結像できる構造が小さい。最近では、193nmの作動波長を有する結像光又は極紫外(EUV)領域の、すなわち5nm〜30nmの作動波長を有する結像光が主に用いられる。193nmの波長を有する結像光を用いる場合、屈折光学素子及び反射光学素子の両方をマイクロリソグラフィ投影露光装置内で採用する。これに対して、5nm〜30nmの範囲の波長を有する結像光を用いる場合、反射光学素子(ミラー)のみを用いる。
【0003】
感光層への構造担持マスクの良好な結像を可能にするために、投影光学ユニットの結像収差をできる限り低減する必要がある。したがって、特に投影光学ユニット内で用いるミラーの表面形態を高精度で確保する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高精度表面形態を有するミラー及びかかるミラーを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射するミラーの表面形態を補正する方法であって、上記ミラーは基板を備える方法により達成される。この場合、本方法は、少なくとも以下のステップ:
・ミラーの表面形態を補正するための層厚変動を有する補正層を施すステップと、
・第1層群を補正層に施すステップであり、第1層群は、上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を含み、作動波長を有する放射線に対する第1層の屈折率は、作動波長を有する放射線の第2層の屈折率よりも大きいステップと
を含み、ミラーの表面形態を補正するための層厚変動を有する補正層を施すステップは、以下のステップ:
・反応ガスを含む雰囲気にミラーを導入するステップと、
・場所依存性層厚変動を有する補正層がミラーの照射面上で成長するように、場所依存性放射エネルギー密度を有する補正放射線をミラーに施すステップと
により行われる。
【0006】
それにより達成されるものとして、実際の反射をもたらす第1層群が、最適な表面形態を有する補正層上に配置される。それにより、ミラーの表面収差をその後補正することが可能である。
【0007】
上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を含む層群であり、作動波長を有する放射線に対する第1層の屈折率が、作動波長を有する放射線の第2層の屈折率よりも大きい層群は、例えば、異なる材料の使用により生じる。したがって、例として、第1層は、作動波長を有する放射線に対する屈折率が第2層に含まれる第2材料の屈折率よりも大きい第1材料を含み得る。
【0008】
上下に交互配置した第1層及び第2層は、第1層及び第2層が上下に交互に配置される層配列を意味すると理解される。これは、第1層及び第2層が相互に接触することを必ずしも含まない。例として、拡散を防止するための補助層を第1層と第2層との間に常に配置することができる。3つ以上の層を含む周期的層配列も可能である。3つ以上の異なる層の周期的層配列の場合も、第1層及び第2層を上下に交互に配置するので、本願において、かかる配置も「上下に交互配置した第1層及び第2層」という用語に包含される。
【0009】
本発明による方法では、補正放射線をミラーに施すプロセスは、場所依存性層厚変動を有する補正層を成長させるプロセスと同時に行う。この方法ステップ中、補正層は、表面に最も近いミラーの層である。第1層群は、補正放射線を用いて補正層の層厚変動をもたらした後に補正層に施す。
【0010】
表面形態を補正する他の方法、例えば、材料除去のためのイオンビームの使用等と比べて、本発明による補正層の成長は、より高い表面品質につながる。これは、対応して成長する補正層の表面粗さが、イオンビームを用いた除去により層厚変動をもたらした補正層の表面粗さよりも大幅に小さいからである。補正層の表面粗さが小さいことで、作動波長を有する放射線に対する第1層群の反射率が向上するので、本発明による方法には、第1層群が、補正層厚変動をもたらすための除去法の使用の場合よりも高い反射率を有するというさらなる利点がある。
【0011】
反応ガスを含む雰囲気へのミラーの導入は、本願における様々な可能性を意味すると理解される。したがって、例として、別個のミラーを補正装置に導入して、続いてそこに反応ガスを通すことができる。しかしながら、代替的に、ミラーを備えた光学装置に反応ガスを通すことにより、ミラーを組み込み状態で補正することも可能である。
【0012】
本方法の特定の構成の場合、ミラーは、補正層を施す前に、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射する反射コーティングを備える。この場合、当該反射コーティングは、上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を含む第2層群を含む。この場合、作動波長を有する放射線に対する第1層の屈折率は、作動波長を有する放射線に対する第2層の屈折率よりも大きい。
【0013】
この構成には、ミラーの光学特性を補正法の前に高精度で測定できるという利点がある。これは、例えば、欧州特許第1306698号明細書に記載されているような干渉測定法により行う。かかる測定は、多くの場合、ミラーの使用条件にできる限り対応する条件下で実行される。これは、特に、測定用の使用光の波長に関係する。特定の作動波長を有する結像光に対するミラーの正確な影響は、この波長を有する光を特に用いて非常に正確に測定できる。異なる波長を有する光を用いた測定の場合、測定波長と作動波長との間の差から起こる不確定性が生じ得る。したがって、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射するミラーも、多くの場合は同じ波長を有する放射線を用いて測定する。反射コーティングにより、このときミラーはこの測定放射線に対して反射効果も有し、適切に測定できる。これには、例えば応力の導入等の表面形態に対する反射コーティングの影響も測定において考慮されるというさらなる利点がある。
【0014】
本発明による方法の一実施形態では、補正放射線は、反応ガスの成分又は化学反応生成物の堆積が生じるように反応ガスの雰囲気と反応して、補正層が堆積により成長するようにする。補正層の成長につながる反応機構に応じて、異なる補正放射線を用いる。この場合、補正放射線は、電磁放射線、イオン放射線、電子放射線、又は化学ラジカルの放射線を含み得る。異なるタイプの放射線の組み合わせも可能である。電磁放射線又は化学ラジカルの放射線等の電気的に中性な放射線には、放射線を非常に小さな領域に集中させることができるという利点がある。結果として、非常に高い空間分解能を有する場所依存性放射エネルギー密度を有する補正放射線をミラーに施すことができる。したがって、高空間分解能を有する補正層の層厚変動も起こる。
【0015】
本方法は、多くの場合、ミラーの一箇所での補正放射線の放射エネルギー密度が高いほどミラーのこの箇所での堆積が多くなるよう構成される。それにより、補正層の層厚変動を特に良好に設定することが可能である。しかしながら、逆の場合も可能であり、その場合、補正放射線が堆積の強度を減らして、ミラーの一箇所での補正放射線の放射エネルギー密度が高いほどミラーのこの箇所での堆積が少なくなるようにする。
【0016】
本方法の特定の実施形態では、成分又は化学反応生成物は、以下の群:炭素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、又はこれら元素ベースの有機化合物、及び無機金属化合物、特に水素化金属化合物に由来する。
【0017】
特定の一実施形態では、補正放射線は、250nm未満の波長を有する電磁放射線であり、照射ミラー面から光電子が放出されて反応ガスの吸着分子の解離をもたらして、補正層が反応ガスの解離生成物の1つの堆積により成長するようにする。250nm未満の波長では、補正放射線の光子エネルギーは5eVよりも大きく、分子の解離をもたらすために十分な運動エネルギーを有する光電子が照射ミラー面から放出されるようになる。
【0018】
かかるプロセスの一例は、炭化水素を含む反応ガスの使用である。この場合、炭化水素分圧は、補正層の十分な成長速度を確保するために10−12mbarよりも高く選択する。補正放射線により、光電子が照射ミラー面から放出される。当該光電子は、反応ガスからの吸着炭化水素分子の解離をもたらし、その結果として炭素の堆積が起こる。結果として、炭素を含む補正層が成長する。
【0019】
代替的な方法では、補正放射線は、反応ガス中の水素化金属化合物の富化をもたらす水素ラジカルを含むことで、金属堆積が起こり、その結果としてこの金属を含む補正層が成長する。これは、水素ラジカルが最初に犠牲層にわたって伝わることを利用する。犠牲金属の表面において、水素ラジカルが反応して短命水素化金属化合物を形成する。ミラー面において、上記水素化金属化合物が解離することで、ミラー面上に金属堆積を発生させる。
【0020】
本発明による方法の特定の一構成では、補正層をミラーに施す前に、補正層の成長速度を制御するために補助層をミラーに施す。したがって、当該補助層は、ミラーの表面上にあるので、成長プロセスに直接影響を及ぼす。これには、より高速な補正プロセスを達成するために成長速度を速めることができるという利点がある。特に、補正層は、成長プロセス中に触媒効果を有する材料を含み得る。したがって、例として、金属補助層には、電磁放射線の照射時に高収率の光電子をもたらすものがある。これがさらに反応ガスの吸着分子の解離の強化につながることで、補正層の成長速度が速くなる。補助層に典型的な金属は、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、又はイリジウムである。
【0021】
5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射する反射コーティングを備えた既知のミラーは、多くの場合、Si等の窒化物、ホウ化物、又は例えばSiC若しくはBC等の炭化物を有する。しかしながら、上記コーティングは、気相からの金属の堆積を抑制する。こうした理由で、例えば水素ラジカル及び水素化金属化合物を用いる上記方法におけるような気相からの金属の堆積を容易にするために、最初に金属補助層をミラーに施すことが有利である。
【0022】
場所依存性照明エネルギー密度を有する補正放射線をミラーに施すプロセスは、様々な方法で行うことができる。したがって、例えば、放射電力密度を有する空間的に限られた補正放射線ビームをミラーにわたって案内することにより、ミラーの場所毎に補正放射線ビームの滞留時間が異なる結果として場所依存性放射エネルギー密度が生じる。補正放射線ビームは、特にレーザ放射線ビームであり得る。しかしながら、電子ビーム、イオンビーム、又は他の材料ビーム用の対応のデバイスも当業者には既知である。かかるミラーの走査には、場所依存性放射エネルギー密度を非常に多様に設定できるという利点がある。したがって、異なる場所依存性放射エネルギー密度を異なるミラーに、同じ装置を用いて連続して施すことができる。これにより、本発明による方法を実行するための補正デバイスの柔軟な使用が可能となる。
【0023】
代替的に、場所依存性放射エネルギー密度を大きな面積にわたってミラーに施す。これは、ミラーの場所毎に異なる放射エネルギー密度が同時に存在することを意味する。かかる照射は、例えば回折光学素子(DOE)を用いて達成することができる。適当な形状の回折光学素子を用いて、例として、場所依存性放射エネルギー密度が回折光学素子から特定の距離にあるようにレーザ放射線ビームを拡大することができる。
【0024】
さらに別の実施形態では、大面積場所依存性放射エネルギー密度を、フィルタ素子を用いて発生させることができる。この場合、フィルタ素子の空間的に可変の透過率が放射エネルギー密度を定める。かかるフィルタ素子は、例えば、ミラー面付近に配置されて放射線を透過することができるか、又は代替的に結像光学ユニットを用いてミラー面に結像することができる。
【0025】
回折光学素子のフィルタ素子を備えた実施形態には、補正放射線をより大きな領域に、特に補正対象面全体に同時に施すことができるという利点がある。これにより、本発明による方法をより迅速に実行することが可能となる。
【0026】
本発明による上述の方法を実行する補正デバイスは、本方法に関して説明したのと同じ利点を有する。
【0027】
本発明はさらに、マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影光学ユニットのミラーの表面形態を補正する上述の方法を含む、投影光学ユニットの結像特性を補正する方法に関する。したがって、かかる結像特性を補正する方法は、表面形態を補正する方法に関して上述した利点を有する。
【0028】
本発明はさらに、以下のステップ:
a.投影光学ユニットの波面収差を求めるステップと、
b.投影光学ユニットの波面収差から少なくとも1つのミラーの補正表面形態を計算するステップと、
c.上述の方法に従って少なくとも1つのミラーの表面形態を補正するステップと
を含む、マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影光学ユニットの結像特性を補正する方法に関する。かかる結像特性を補正する方法は、表面形態を補正する方法に関してすでに上述した利点を有する。
【0029】
本発明による目的はさらに、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射する、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置で用いる、基板及び反射コーティングを備えたミラーにより達成される。この場合、反射コーティングは、第1層群及び第2層群を含み、第2層群を基板と第1層群との間に配置する。この場合、第1層群及び第2層群はそれぞれ、上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を含み、作動波長を有する放射線に対する第1層の屈折率は、作動波長を有する放射線に対する第2層の屈折率よりも大きい。さらに、ミラーの表面形態を補正するための層厚変動を有する補正層を、第2群と第1群との間に配置し、補正層は、以下の成分:炭素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、又はこれら元素ベースの有機化合物、及び無機金属化合物、特に水素化金属化合物の少なくとも1つを含有する。
【0030】
かかるミラーは、用いる結像光の波長に対応する作動波長を有する放射線を反射するよう働く第2層群をミラー基板に最初に設けることにより得られる。このように構成したミラーを、さらに別のステップにおいて、別個に又は光学系の全測定に関して測定し、作動波長を有する放射線を用いる。得られた測定結果に基づいて、表面補正を求め、ミラーの表面形態を適切に補正するために対応の層厚変動を有する補正層を施す。この補正は、多くの場合にミラーの反射率に悪影響を及ぼすので、さらに別のステップにおいて、第1層群を補正層に施す。
【0031】
したがって、第1層群及び第2層群は、同じ作動波長を反射するよう設計される。
【0032】
通常、第1群は、21個以上の層数を含む。作動波長を有する放射線に対して30%を超えるミラーの反射率が、それにより達成される。この場合、この反射率は、第1層群の方が表面に近い結果として実質的に生じる。第1群の層数及び補正層の層厚は、作動波長を有する反射放射線の最大10%が第2群の層における反射の結果として生じるよう選択する。第2群の層を基板と補正層との間に配置するので、第2群の層間の境界は依然として未補正の表面形態を有する。したがって、上記境界で反射した放射線は、ミラーの使用時に結像に最適に寄与しない。
【0033】
第1層群及び第2層群はいずれも、上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を有し、第1層は、作動波長を有する放射線に対する屈折率が第2層に含まれる第2材料の屈折率よりも大きい第1材料を含む。これにより、反射率が表面形態の補正により著しく損なわれていない、補正表面形態を有する本発明によるミラーが得られる。
【0034】
表面形態の補正のための層厚変動は、通常はほぼ作動波長のオーダであり、すなわち13.5nmの波長では、表面形態の層厚変動は0nm〜15nmにある。
【0035】
本発明によるミラーを備えた投影レンズ及びかかる投影レンズを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置は、ミラーに関してすでに上述した利点を有する。
【0036】
本発明を、添付図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】第1実施形態における表面形態を補正する本発明による方法を示す。
図2】さらに別の実施形態における表面形態を補正する本発明による方法を示す。
図3a】場所依存性放射エネルギー密度を発生させる一変形形態を示す。
図3b】場所依存性放射エネルギー密度を発生させる一変形形態を示す。
図3c】場所依存性放射エネルギー密度を発生させる一変形形態を示す。
図4】本発明によるミラーを採用することができる例示的な投影光学ユニットを示す。
図5a】補正対象面の平面図を概略的に示す。
図5b図5aに示す補正対象面の断面を示す。
図6】フローチャートに基づいて、ミラーの表面形態を補正する方法を示す。
図7】フローチャートに基づいて、ミラーの表面形態の補正により投影光学ユニットの結像品質を補正する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に示す物体に1桁又は2桁の数字を設けるように参照符号を選択した。さらに他の図に示す物体は3桁以上の参照符号を有し、最後の2桁は物体を示し、その前の桁は物体が示されている図の番号を示す。したがって、複数の図に示す同一の物体の参照符号は、最後の2桁に関して対応する。例として、参照符号1、201、及び301は、図1図2、及び図3a〜図3cにおいてミラーを示す。
【0039】
図1は、左側のステップAにおいて、マイクロリソグラフィ投影露光装置で用いるミラー1の実施形態を表面形態の補正前の初期状態で示す。ミラー1は、基板3と、第2層群5を含む反射コーティングとを備える。基板3は、例えばSiO(石英)からなり得る。第2層群5は、異なる材料を含む複数の個別層を含む。ミラー1は、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射するよう具現したものである。したがって、第2層群5は、上下に配置した交互の複数の第1層9及び第2層11を含み、作動波長を有する放射線に対する第1層9の屈折率は、作動波長を有する放射線に対する第2層11の屈折率よりも大きい。この場合、これは、第1層9が、作動波長を有する放射線に対する屈折率が第2層11に含まれる第2材料の屈折率よりも大きい第1材料を含むことにより達成される。通常、ケイ素を第1材料として用い、モリブデン又はルテニウムを第2材料として用いる。例えばモリブデン及びベリリウム、ルテニウム及びベリリウム、又はランタン及びBC等の他の材料の組み合わせも可能である。ミラーの良好な反射率を達成するために、第2層群5は、通常は21個以上、特に31個以上の層を含む。図1において、また後続の図においても、より明確にするために、層群は常に数個の個別層によってしか示さない。しかしながら、本発明において、層群は、21個以上の層、特に31個以上の層を有する群と理解される。すでに述べた層に加えて、層群は、拡散を防止するための中間層又は酸化及び腐食を防止するための被覆層も含むことができる。酸化及び腐食を防止するためのルテニウム被覆層を、多くの場合、例えば第2層群5のうち基板から遠い側に施す。かかる補助層の図示は省いてある。
【0040】
ステップAにおいて、反応ガス15を含む雰囲気中にミラー1を置き、補正放射線17をそれに施す。補正放射線17は、場所依存性放射エネルギー密度を有する。これは、図1及び後続の図において異なる長さの矢印で示す。続いて、補正放射線17が反応ガス15の雰囲気と反応して、反応ガスの成分又は化学反応生成物の堆積が起こる。これにより、ステップBにおいて図1の中央領域に示す場所依存性層厚変動21を有する補正層13が得られる。
【0041】
かかるプロセスの一例は、炭化水素、したがって例えば揮発性及び不揮発性炭化水素の混合物を含む反応ガスの使用である。電磁補正放射線17により、光電子が照射ミラー面18から放出される。したがって、波長は光電子の放出に十分なほど短くなければならない。通常、光電子の仕事関数は約5eVであり、これは250nmの光子波長に相当する。仕事関数の正確な値は、ミラー面18における材料に応じて変わる。上記光電子が反応ガスからの吸着炭化水素分子の解離をもたらすことで、炭素の堆積が起こる。したがって、炭素を含む補正層13が成長する。この場合、炭素の成長速度Wは、補正放射線17の局所放射電力密度Iに線形に関連する。揮発性炭化水素で10−10mbar、不揮発性炭化水素で10−12mbarの同時分圧と、13.5nmの法制放射線17の波長とがあるとすると、これにより得られる成長速度は、
【数1】
である。
【0042】
したがって、
の一定の放射電力密度であるとすると、1時間につき厚さ1nmの炭素層が成長する。この線形関係が生じるのは、光電子の数が補正放射線からの光子の数に線形に関連し、成長する炭素原子の数がさらに光電子の数に線形に関係するからである。成長速度と放射電力密度との間の線形関係は、放射電力密度I
となるまで成り立つ。より高い放射電力密度では、分圧が理由でさらに他の炭化水素分子がプロセスに利用可能でないので、成長速度はさらに上昇しない。したがって、この飽和が開始する放射電力密度Iは、炭化水素の分圧に関連する。
【0043】
局所放射エネルギー密度は、局所放射電力密度Iの時間積分として放射電力密度から得られる。
【0044】
代替的な方法では、補正放射線13が反応ガス中の水素化金属化合物の富化をもたらす水素ラジカルを含むことで、金属堆積が起こり、その結果としてこの金属を含む補正層13が成長する。これは、水素ラジカルが最初に犠牲層にわたって伝わることを利用する。犠牲金属の表面において、水素ラジカルが反応して短命水素化金属化合物を形成する。ミラー面18において、上記水素化金属化合物が解離することで、ミラー面上に金属堆積を発生させる。
【0045】
図1の中央におけるステップBにおいて、補正層13の成長後のミラー1を示す。この状態では、ミラー1は、補正処理前にマイクロリソグラフィ投影露光装置内で案内されるビームの目的に適した補正表面形態を有するが、コーティングの反射率も付加的な補正層13により悪影響を受けている。さらに、施した補正層自体も、周囲条件の結果としてリソグラフィ装置の動作中に劣化し得る。これを再度修正するためには、第1層群19を施すことで、ステップCにおいて図1の右側部分のようなミラー1を得る。したがって、このように製造したミラー1は、第2層群5及び第1層群19を有し、第2層群5は基板3と第1層群19との間に配置される。第1層群19も同様に、上下に配置した交互の複数の第1層9及び第2層11を含み、作動波長を有する放射線に対する第1層9の屈折率は、作動波長を有する放射線に対する第2層11の屈折率よりも大きい。第1層群19でも、これは適当な材料の選択により達成される。したがって、第1層は、作動波長を有する放射線に対する屈折率が第2層11に含まれる第2材料の屈折率よりも大きい第1材料を含む。第1層群19は、入射放射線7から第1層群19及び補正層13を通過して第2層群5に達する部分23が、入射放射線の強度の40%未満となるように、21個以上の層を含む。このようにして達成できるのは、未補正の表面形態を有する第2層群5がミラー1の反射率特性に大きな影響を及ぼさないことである。そうでなければ、第2層群5で反射した放射線は、少なくとも部分的な領域において、反射放射線の最適な位相関係が悪影響を受けて反射放射線の強度の低下が生じるような位相関係を有するであろう。
【0046】
図2は、表面形態を補正するための本発明による方法をさらに別の実施形態で示す。ステップA、B、C、D、Eを示す。ステップAは、図1と同様の図でミラー201の初期状態を示す。図1に示す方法とは対照的に、本発明のこの構成では、次のステップBとして、補助層225をミラー201に施す。上記補助層は、補正層213の成長速度を制御することを可能にする。したがって、例として、ステップCにおいてより高速の補正プロセスを達成するために、成長速度を速めることができる。特に、補正層は、成長プロセス中に触媒効果を有する材料を含み得る。したがって、例として、金属補助層225には、電磁補正放射線の照射時に高収率の光電子をもたらすものがある。これがさらに反応ガスの吸着分子の解離の強化につながることで、補正層213の成長速度が速くなる。補助層225に典型的な金属は、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、又はイリジウムである。
【0047】
補助層225の使用は、水素ラジカルを補正放射線127として用いる場合にも有利である。5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射する反射コーティングを備えた既知のミラーは、反射コーティングを酸化及び腐食から保護するために、多くの場合、Si等の窒化物、ホウ化物、又は例えばSiC若しくはBC等の炭化物含む最終コーティングを有する。しかしながら、かかるコーティングは、気相からの金属の堆積を抑制する。こうした理由で、気相からの金属の堆積を容易にするために、金属補助層225をミラー201に最初に施すことが有利である。以下の化学プロセスをこの場合に利用する。水素ラジカルを最初に犠牲金属にわたって伝え、犠牲金属は、例えばスズ、亜鉛、インジウム、又は鉛であり得る。他の犠牲層も同様に考えられる。短命水素化金属化合物がそれから気相中に生じる(例えば、Sn)。ミラー面において、上記水素化化合物が例えば金属補助層225と反応して合金を形成することで、合金を含む補正層213が成長する。例として、犠牲金属としてのスズとルテニウムとを補正層213に与えたプロセスは、以下のようになる。
Sn+水素ラジカル→Sn(ガス状)
Sn(ガス状)+Ru→RuSn+H
【0048】
ステップDにおいて補正層213が成長した後、第1層群219を施すことで、図2のステップEに示すミラーを得る。
【0049】
図1及び図2では、ステップAにおける初期状態のミラー1が第2層群5を含む反射コーティングを有するが、これは補正法に必要ではない。記載の方法の両方を、第2層群を有しないミラーで実行することもできる。
【0050】
図3aは、場所依存性放射エネルギー密度を有する補正放射線317を発生させる実施形態を示す。この目的で、例えばレーザ放射線であり得る空間的に画定された補正放射線ビーム326を、走査ミラー327へ指向させる。走査ミラー327での反射後、補正放射線ビーム326はミラー301の特定の場所に当たる。走査ミラー327を2つの軸328a及び328bを中心に回転させることにより、ミラー301上の補正放射線ビーム326の正確な入射場所を規定することが可能である。補正放射線ビーム326は、ミラー301の入射場所で既知の放射電力密度を有するので、補正放射線ビーム326をミラー301にわたって走査的に案内することにより、ミラー上で任意の所望の場所依存性放射エネルギー密度を発生させることが可能である。この場合、場所依存性放射エネルギー密度は、ミラー301の場所毎に補正放射線ビーム326の滞留時間が異なる結果として生じる。したがって、異なる場所依存性放射エネルギー密度を異なるミラーに、同じ装置を用いて連続して施すことができる。これにより、本発明による方法を実行するための補正デバイスの柔軟な使用が可能となる。走査ミラー327の使用の代わりに、他の既知の走査デバイスを用いることもできる。これは、粒子放射線を補正放射線317として用いる場合に特に重要である。したがって、例として、対応のノズルを走査的に移動させることができる。代替的に、荷電粒子の場合、粒子放射線を検出するために適切に制御される電場及び磁場を用いることも可能である。
【0051】
図3bは、場所依存性放射エネルギー密度を有する補正放射線317を発生させる代替的な実施形態を示す。この実施形態では、レーザ放射線ビーム329を回折光学素子(DOE)330へ指向させる。回折光学素子330は、所定の放出特性を有し、角度依存性放射エネルギー密度を有する拡大補正放射線ビーム317aを発生させる。これを、図3bに異なる長さの矢印で概略的に示す。回折光学素子とミラーとの間の距離の選択によって、且つ/又は図3bにレンズ素子332で概略的に示すさらに別の光学ユニットの使用によって、角度依存性放射エネルギー密度を補正放射線317の場所依存性放射エネルギー密度に変換する。
【0052】
図3cは、場所依存性放射エネルギー密度を有する補正放射線317を発生させるさらに別の実施形態を示す。この実施形態では、補正放射線317の大面積場所依存性放射エネルギー密度を、フィルタ素子を用いて発生させる。初期放射線334は場所依存性がないが、フィルタ素子336の通過後には、フィルタ素子336の透過率が局所的に異なるので場所依存性放射性エネルギー密度が生じる。この場合、透過率は、図3cにおいてビーム方向のフィルタ素子336の厚さで示す。局所的に可変の厚さの代わりに、局所的に異なる透過率を発生させるためにフィルタ素子336に異なる材料を採用することも可能である。かかるフィルタ素子は、ミラー301の表面付近に配置して放射線を透過してもよく、又は代替的に、レンズ332で示す結像光学ユニットを用いてミラー面に結像してもよい。
【0053】
図4は、投影光学ユニット431の例示的な実施形態を示す。投影光学ユニット431を用いて、物体平面435に配置した構造担持マスク433を像平面439の像437に結像する。露光の結果として化学的に変化する感光層を像平面439に配置する。これは、いわゆるリソグラフィプロセスと称する。例示的な本実施形態では、投影光学ユニット431は、構造担持マスク433を像平面439に結像するために用いる6個のミラー401を備える。かかる投影レンズ431は、投影露光ユニットの波面収差が十分に小さい場合にのみ最大限の分解能を達成できるように通常は回折限界がある。回折限界投影光学ユニットの場合、RMS値(二乗平均)が作動波長の1/14未満である必要がある。これを達成するためには、ミラー401の表面形態を非常に精密に設定しなければならない。さらに、ミラー401は同様に、非常に正確に位置決めされなければならない。
【0054】
図示の実施形態のように、光学コンポーネントとしてミラーのみを備えた投影光学ユニットに加えて、本発明は、いわゆる反射屈折投影レンズの場合に採用することもできる。反射屈折投影レンズは、反射光学素子及び屈折光学素子の両方を収容する。このタイプの投影レンズは、結像光が193nm又は248nmの範囲の作動波長を有する場合に通常は用いられる。
【0055】
図5a及び図5bは、例として、ミラーの補正対象表面形態を示す。実際の表面形態と所望の表面形態との間の偏差を、図5aに等高線541を用いて示す。さらに、図5bは、図5aの線543に沿ったこの偏差の高さプロファイルを示す。図示のかかる偏差は、欧州特許第1306698号明細書で説明されているように、例えば干渉測定法を用いて求めることができる。
【0056】
図6は、例としてミラーの表面形態を補正する本発明による方法をフローチャートに基づいて示す。最初に、ステップ651において、実際の表面形態を有するミラーを製造する。このミラーは、このときすでに基板と第2層群を含む反射コーティングとを備えている。その後、ステップ653において、ミラーの実際の表面形態を正確に測定する。例えば欧州特許第1306698号明細書に記載のような干渉測定法をこの目的で通常は用いる。ステップ655において、測定した実際の表面形態を続いて所望の表面形態と比較する。2つの表面形態が所望の公差内で対応する場合、方法を早くも終了させる。公差外にある表面形態のずれがある場合、次にステップ657において表面形態の補正を実施する。この方法ステップ657は、図1図3で説明したステップ、すなわち、表面形態を補正するために場所依存性層厚変動を有する補正層を施すステップと、さらに別の層群を施すステップとを含む。この表面形態の補正後に、ステップ659において実際の表面形態を測定する。ステップ661において、この実際の表面形態を続いて所望の表面形態と再度比較する。方法ステップ663において、実際の表面形態が今度は所望の表面形態に公差内で対応するか否かを判定するために続いて点検を行う。結果が肯定である場合、この時点で方法を終了させる。公差外の偏差が依然として生じている場合、方法をステップ657における表面形態の補正で再度続ける。実際の表面形態と所望の表面形態との間で補正すべき偏差の大きさに応じて、この記載のステップ657、659、661、及び663の補正ループを繰り返し適用する必要があり得る。当該技術分野から既知のようなミラーの表面形態を補正する他の方法とは対照的に、本発明による方法は、層全体を除去する方法ステップを必ずしも含まない。したがって、本方法は、特に迅速且つ費用効果的に実行することができる。しかしながら、例えば反射コーティングの損傷が生じた場合、かかるステップを本方法に補うことも考えられる。
【0057】
図7は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影光学ユニットの結像特性を補正する本発明による方法をフローチャートに基づいて示す。最初のステップ765において、投影光学ユニットに必要な複数N個のミラーを製造する。製造精度の理由から、これらN個のミラーの実際の表面形態は、所望の表面形態からずれ得る。任意のステップ767において、N個のミラーの目下の実際の表面形態を干渉測定法を用いて測定する。所望の表面形態からの実際の表面形態の偏差がそれほど大きくない場合、N個のミラー全部の実際の表面形態の正確な知識が方法の実行に必要とは限らないことが、このさらなる方法から明らかとなる。したがって、ステップ767は、適切な場合は省くことができる。次のステップ769において、投影光学ユニットをN個のミラーから組み立てる。ステップ771において、投影光学ユニットの結像特性を続いて測定する。投影レンズ全体の波面収差をこのステップ771において測定する。これも同様に、干渉測定法を用いて、例えば欧州特許1306698号明細書に記載の方法等により行う。方法ステップ773において、投影光学ユニットの波面収差が十分に小さいか否かを判定するために続いて点検を行う。投影光学ユニットの良好な結像品質のためには、波面収差のRMS値が作動波長の1/14未満である必要がある。波面収差がすでに十分に小さい場合、この時点で方法を終了させる。そうでなければ、投影光学ユニットで補正を実施する必要がある。投影光学ユニット内の個々のミラーの位置を変えることに加えて、投影光学ユニットの1つ又は複数のミラーの表面形態の補正により波面収差の補正を実施することが可能である。この場合、投影光学ユニットのミラー全部の表面形態の補正を実行する必要があるとは限らない。投影光学ユニットの特定の光学設計に応じて、表面形態の補正をミラーのいくつか、特に1つのみで実行すれば十分であり得る。投影光学ユニットの光学設計から、例えば、特定のミラーの表面形態を変更した場合の投影光学ユニットの波面収差の変わり方を求めることが可能である。例えば、第1ミラーの場合には表面形態のごくわずかな変化しか波面収差の補正に必要ないが、異なる第2ミラーの場合には表面形態のはるかに大きな変化が必要であることが分かり得る。さらに、投影光学ユニットの波面収差の特定のプロファイルを、投影光学ユニットの結像ビーム経路内で特定の位置を有するミラーの表面形態の変更を用いるだけで補正できる。こうした理由で、次のステップ775は、表面形態の変更により波面収差の補正をもたらすのに特に適した補正ミラーの適当な選択を行うことを含む。続いてステップ777において、投影光学ユニットの測定波面収差及び光学設計を用いて、この補正ミラーの選択について補正表面形態を計算する。N個のミラー全部の実際の表面形態がステップ767において測定されており、N個のミラー全部の正確な位置が分かっている場合、補正ミラーの表面形態を絶対的に計算することができる。ステップ767における実際の表面形態の測定を省いた場合、補正ミラーの表面形態で必要な相対変化のみを波面収差及び光学設計から求めることができる。両方の場合を、補正表面形態という用語で以下で組み合わせる。したがって、補正表面形態は、補正ミラーの絶対的な表面形態又は補正ミラーの表面形態の必要な相対変化を意味すると理解することができる。ミラー全部の絶対的な実際の表面形態及び位置は、必ずしも十分に正確に分からないので、多くの場合、表面形態で必要な変化のみを計算する方が単純である。したがって、未知である可能性がある実際の表面形態に対する必要な差のみを計算する。ステップ779は、前のステップにおいて選択された1つ又は複数の補正ミラーを取り外すことにある。ステップ779は任意のステップである。本発明によれば、ミラーを備えた投影光学ユニットに反応ガスを通すことにより、組み込み状態でミラーを補正することも可能である。この場合、ステップ779を省くことができる。後続のステップにおいて、続いて補正放射線を組み込んだミラーに施す。次に、ステップ781において、1つ又は複数の補正ミラーの表面形態の補正を、計算した補正表面形態を用いて実行する。この場合、1つ又は複数の補正ミラーの表面形態の補正は、図1図3を参照して説明したような補正法を用いて行う。次のステップ783において、こうして処理した補正ミラーを、取り外し済みである場合は投影光学ユニットに再度組み込む。続いて、投影光学ユニットの結像品質を方法ステップ771において再度求めることができる。その後、方法ステップ773において、十分な結像品質が確保されるよう測定波面収差が十分に小さいか否かを判定するために点検を行う。そうである場合、本発明による方法をこの時点で終了させる。そうでなければ、ステップ775、777、779、781、及び783を含むさらに別の補正ループを実行する。投影光学ユニットの波面収差に関して厳しい要件があるので、記載した補正ループを、十分な結像品質が達成されるまで繰り返し実行しなければならない必要があり得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3a
図3b
図3c
図4
図5a-5b】
図6
図7