【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射するミラーの表面形態を補正する方法であって、上記ミラーは基板を備える方法により達成される。この場合、本方法は、少なくとも以下のステップ:
・ミラーの表面形態を補正するための層厚変動を有する補正層を施すステップと、
・第1層群を補正層に施すステップであり、第1層群は、上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を含み、作動波長を有する放射線に対する第1層の屈折率は、作動波長を有する放射線の第2層の屈折率よりも大きいステップと
を含み、ミラーの表面形態を補正するための層厚変動を有する補正層を施すステップは、以下のステップ:
・反応ガスを含む雰囲気にミラーを導入するステップと、
・場所依存性層厚変動を有する補正層がミラーの照射面上で成長するように、場所依存性放射エネルギー密度を有する補正放射線をミラーに施すステップと
により行われる。
【0006】
それにより達成されるものとして、実際の反射をもたらす第1層群が、最適な表面形態を有する補正層上に配置される。それにより、ミラーの表面収差をその後補正することが可能である。
【0007】
上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を含む層群であり、作動波長を有する放射線に対する第1層の屈折率が、作動波長を有する放射線の第2層の屈折率よりも大きい層群は、例えば、異なる材料の使用により生じる。したがって、例として、第1層は、作動波長を有する放射線に対する屈折率が第2層に含まれる第2材料の屈折率よりも大きい第1材料を含み得る。
【0008】
上下に交互配置した第1層及び第2層は、第1層及び第2層が上下に交互に配置される層配列を意味すると理解される。これは、第1層及び第2層が相互に接触することを必ずしも含まない。例として、拡散を防止するための補助層を第1層と第2層との間に常に配置することができる。3つ以上の層を含む周期的層配列も可能である。3つ以上の異なる層の周期的層配列の場合も、第1層及び第2層を上下に交互に配置するので、本願において、かかる配置も「上下に交互配置した第1層及び第2層」という用語に包含される。
【0009】
本発明による方法では、補正放射線をミラーに施すプロセスは、場所依存性層厚変動を有する補正層を成長させるプロセスと同時に行う。この方法ステップ中、補正層は、表面に最も近いミラーの層である。第1層群は、補正放射線を用いて補正層の層厚変動をもたらした後に補正層に施す。
【0010】
表面形態を補正する他の方法、例えば、材料除去のためのイオンビームの使用等と比べて、本発明による補正層の成長は、より高い表面品質につながる。これは、対応して成長する補正層の表面粗さが、イオンビームを用いた除去により層厚変動をもたらした補正層の表面粗さよりも大幅に小さいからである。補正層の表面粗さが小さいことで、作動波長を有する放射線に対する第1層群の反射率が向上するので、本発明による方法には、第1層群が、補正層厚変動をもたらすための除去法の使用の場合よりも高い反射率を有するというさらなる利点がある。
【0011】
反応ガスを含む雰囲気へのミラーの導入は、本願における様々な可能性を意味すると理解される。したがって、例として、別個のミラーを補正装置に導入して、続いてそこに反応ガスを通すことができる。しかしながら、代替的に、ミラーを備えた光学装置に反応ガスを通すことにより、ミラーを組み込み状態で補正することも可能である。
【0012】
本方法の特定の構成の場合、ミラーは、補正層を施す前に、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射する反射コーティングを備える。この場合、当該反射コーティングは、上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を含む第2層群を含む。この場合、作動波長を有する放射線に対する第1層の屈折率は、作動波長を有する放射線に対する第2層の屈折率よりも大きい。
【0013】
この構成には、ミラーの光学特性を補正法の前に高精度で測定できるという利点がある。これは、例えば、欧州特許第1306698号明細書に記載されているような干渉測定法により行う。かかる測定は、多くの場合、ミラーの使用条件にできる限り対応する条件下で実行される。これは、特に、測定用の使用光の波長に関係する。特定の作動波長を有する結像光に対するミラーの正確な影響は、この波長を有する光を特に用いて非常に正確に測定できる。異なる波長を有する光を用いた測定の場合、測定波長と作動波長との間の差から起こる不確定性が生じ得る。したがって、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射するミラーも、多くの場合は同じ波長を有する放射線を用いて測定する。反射コーティングにより、このときミラーはこの測定放射線に対して反射効果も有し、適切に測定できる。これには、例えば応力の導入等の表面形態に対する反射コーティングの影響も測定において考慮されるというさらなる利点がある。
【0014】
本発明による方法の一実施形態では、補正放射線は、反応ガスの成分又は化学反応生成物の堆積が生じるように反応ガスの雰囲気と反応して、補正層が堆積により成長するようにする。補正層の成長につながる反応機構に応じて、異なる補正放射線を用いる。この場合、補正放射線は、電磁放射線、イオン放射線、電子放射線、又は化学ラジカルの放射線を含み得る。異なるタイプの放射線の組み合わせも可能である。電磁放射線又は化学ラジカルの放射線等の電気的に中性な放射線には、放射線を非常に小さな領域に集中させることができるという利点がある。結果として、非常に高い空間分解能を有する場所依存性放射エネルギー密度を有する補正放射線をミラーに施すことができる。したがって、高空間分解能を有する補正層の層厚変動も起こる。
【0015】
本方法は、多くの場合、ミラーの一箇所での補正放射線の放射エネルギー密度が高いほどミラーのこの箇所での堆積が多くなるよう構成される。それにより、補正層の層厚変動を特に良好に設定することが可能である。しかしながら、逆の場合も可能であり、その場合、補正放射線が堆積の強度を減らして、ミラーの一箇所での補正放射線の放射エネルギー密度が高いほどミラーのこの箇所での堆積が少なくなるようにする。
【0016】
本方法の特定の実施形態では、成分又は化学反応生成物は、以下の群:炭素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、又はこれら元素ベースの有機化合物、及び無機金属化合物、特に水素化金属化合物に由来する。
【0017】
特定の一実施形態では、補正放射線は、250nm未満の波長を有する電磁放射線であり、照射ミラー面から光電子が放出されて反応ガスの吸着分子の解離をもたらして、補正層が反応ガスの解離生成物の1つの堆積により成長するようにする。250nm未満の波長では、補正放射線の光子エネルギーは5eVよりも大きく、分子の解離をもたらすために十分な運動エネルギーを有する光電子が照射ミラー面から放出されるようになる。
【0018】
かかるプロセスの一例は、炭化水素を含む反応ガスの使用である。この場合、炭化水素分圧は、補正層の十分な成長速度を確保するために10
−12mbarよりも高く選択する。補正放射線により、光電子が照射ミラー面から放出される。当該光電子は、反応ガスからの吸着炭化水素分子の解離をもたらし、その結果として炭素の堆積が起こる。結果として、炭素を含む補正層が成長する。
【0019】
代替的な方法では、補正放射線は、反応ガス中の水素化金属化合物の富化をもたらす水素ラジカルを含むことで、金属堆積が起こり、その結果としてこの金属を含む補正層が成長する。これは、水素ラジカルが最初に犠牲層にわたって伝わることを利用する。犠牲金属の表面において、水素ラジカルが反応して短命水素化金属化合物を形成する。ミラー面において、上記水素化金属化合物が解離することで、ミラー面上に金属堆積を発生させる。
【0020】
本発明による方法の特定の一構成では、補正層をミラーに施す前に、補正層の成長速度を制御するために補助層をミラーに施す。したがって、当該補助層は、ミラーの表面上にあるので、成長プロセスに直接影響を及ぼす。これには、より高速な補正プロセスを達成するために成長速度を速めることができるという利点がある。特に、補正層は、成長プロセス中に触媒効果を有する材料を含み得る。したがって、例として、金属補助層には、電磁放射線の照射時に高収率の光電子をもたらすものがある。これがさらに反応ガスの吸着分子の解離の強化につながることで、補正層の成長速度が速くなる。補助層に典型的な金属は、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、又はイリジウムである。
【0021】
5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射する反射コーティングを備えた既知のミラーは、多くの場合、Si
3N
4等の窒化物、ホウ化物、又は例えばSiC若しくはB
4C等の炭化物を有する。しかしながら、上記コーティングは、気相からの金属の堆積を抑制する。こうした理由で、例えば水素ラジカル及び水素化金属化合物を用いる上記方法におけるような気相からの金属の堆積を容易にするために、最初に金属補助層をミラーに施すことが有利である。
【0022】
場所依存性照明エネルギー密度を有する補正放射線をミラーに施すプロセスは、様々な方法で行うことができる。したがって、例えば、放射電力密度を有する空間的に限られた補正放射線ビームをミラーにわたって案内することにより、ミラーの場所毎に補正放射線ビームの滞留時間が異なる結果として場所依存性放射エネルギー密度が生じる。補正放射線ビームは、特にレーザ放射線ビームであり得る。しかしながら、電子ビーム、イオンビーム、又は他の材料ビーム用の対応のデバイスも当業者には既知である。かかるミラーの走査には、場所依存性放射エネルギー密度を非常に多様に設定できるという利点がある。したがって、異なる場所依存性放射エネルギー密度を異なるミラーに、同じ装置を用いて連続して施すことができる。これにより、本発明による方法を実行するための補正デバイスの柔軟な使用が可能となる。
【0023】
代替的に、場所依存性放射エネルギー密度を大きな面積にわたってミラーに施す。これは、ミラーの場所毎に異なる放射エネルギー密度が同時に存在することを意味する。かかる照射は、例えば回折光学素子(DOE)を用いて達成することができる。適当な形状の回折光学素子を用いて、例として、場所依存性放射エネルギー密度が回折光学素子から特定の距離にあるようにレーザ放射線ビームを拡大することができる。
【0024】
さらに別の実施形態では、大面積場所依存性放射エネルギー密度を、フィルタ素子を用いて発生させることができる。この場合、フィルタ素子の空間的に可変の透過率が放射エネルギー密度を定める。かかるフィルタ素子は、例えば、ミラー面付近に配置されて放射線を透過することができるか、又は代替的に結像光学ユニットを用いてミラー面に結像することができる。
【0025】
回折光学素子のフィルタ素子を備えた実施形態には、補正放射線をより大きな領域に、特に補正対象面全体に同時に施すことができるという利点がある。これにより、本発明による方法をより迅速に実行することが可能となる。
【0026】
本発明による上述の方法を実行する補正デバイスは、本方法に関して説明したのと同じ利点を有する。
【0027】
本発明はさらに、マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影光学ユニットのミラーの表面形態を補正する上述の方法を含む、投影光学ユニットの結像特性を補正する方法に関する。したがって、かかる結像特性を補正する方法は、表面形態を補正する方法に関して上述した利点を有する。
【0028】
本発明はさらに、以下のステップ:
a.投影光学ユニットの波面収差を求めるステップと、
b.投影光学ユニットの波面収差から少なくとも1つのミラーの補正表面形態を計算するステップと、
c.上述の方法に従って少なくとも1つのミラーの表面形態を補正するステップと
を含む、マイクロリソグラフィ投影露光装置の投影光学ユニットの結像特性を補正する方法に関する。かかる結像特性を補正する方法は、表面形態を補正する方法に関してすでに上述した利点を有する。
【0029】
本発明による目的はさらに、5nm〜30nmの範囲の作動波長を有する放射線を反射する、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置で用いる、基板及び反射コーティングを備えたミラーにより達成される。この場合、反射コーティングは、第1層群及び第2層群を含み、第2層群を基板と第1層群との間に配置する。この場合、第1層群及び第2層群はそれぞれ、上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を含み、作動波長を有する放射線に対する第1層の屈折率は、作動波長を有する放射線に対する第2層の屈折率よりも大きい。さらに、ミラーの表面形態を補正するための層厚変動を有する補正層を、第2群と第1群との間に配置し、補正層は、以下の成分:炭素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、又はこれら元素ベースの有機化合物、及び無機金属化合物、特に水素化金属化合物の少なくとも1つを含有する。
【0030】
かかるミラーは、用いる結像光の波長に対応する作動波長を有する放射線を反射するよう働く第2層群をミラー基板に最初に設けることにより得られる。このように構成したミラーを、さらに別のステップにおいて、別個に又は光学系の全測定に関して測定し、作動波長を有する放射線を用いる。得られた測定結果に基づいて、表面補正を求め、ミラーの表面形態を適切に補正するために対応の層厚変動を有する補正層を施す。この補正は、多くの場合にミラーの反射率に悪影響を及ぼすので、さらに別のステップにおいて、第1層群を補正層に施す。
【0031】
したがって、第1層群及び第2層群は、同じ作動波長を反射するよう設計される。
【0032】
通常、第1群は、21個以上の層数を含む。作動波長を有する放射線に対して30%を超えるミラーの反射率が、それにより達成される。この場合、この反射率は、第1層群の方が表面に近い結果として実質的に生じる。第1群の層数及び補正層の層厚は、作動波長を有する反射放射線の最大10%が第2群の層における反射の結果として生じるよう選択する。第2群の層を基板と補正層との間に配置するので、第2群の層間の境界は依然として未補正の表面形態を有する。したがって、上記境界で反射した放射線は、ミラーの使用時に結像に最適に寄与しない。
【0033】
第1層群及び第2層群はいずれも、上下に交互配置した複数の第1層及び第2層を有し、第1層は、作動波長を有する放射線に対する屈折率が第2層に含まれる第2材料の屈折率よりも大きい第1材料を含む。これにより、反射率が表面形態の補正により著しく損なわれていない、補正表面形態を有する本発明によるミラーが得られる。
【0034】
表面形態の補正のための層厚変動は、通常はほぼ作動波長のオーダであり、すなわち13.5nmの波長では、表面形態の層厚変動は0nm〜15nmにある。
【0035】
本発明によるミラーを備えた投影レンズ及びかかる投影レンズを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置は、ミラーに関してすでに上述した利点を有する。
【0036】
本発明を、添付図面を参照してより詳細に説明する。