特許第6000458号(P6000458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6000458ジエンを含む3元系弾性共重合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000458
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ジエンを含む3元系弾性共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/18 20060101AFI20160915BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   C08F210/18
   C08F4/6592
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-527402(P2015-527402)
(86)(22)【出願日】2013年10月14日
(65)【公表番号】特表2015-524872(P2015-524872A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】KR2013009155
(87)【国際公開番号】WO2014208823
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2015年2月16日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0075873
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、スン−チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】コ、チュン−ソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ス−ヨン
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−531503(JP,A)
【文献】 特表2008−527050(JP,A)
【文献】 特表2013−510221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で示される第1遷移金属化合物及び下記の化学式2で示される第2遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、40乃至70重量%のエチレン、20乃至50重量%の炭素数3乃至20のアルファオレフィン及び2乃至20重量%のジエンを含む単量体組成物を連続的に反応器に供給しながら共重合する段階を含む3元系弾性共重合体の製造方法であって、
前記3元系弾性共重合体は、
i)GPCで測定した重量平均分子量が100,000乃至500,000であり、
ii)100℃でゴム加工処理分析器(Rubber Process Analyzer)で測定した0.2rad/sの角振動数でのtanδ値と100.0rad/sの角振動数でのtanδ値の差であるΔtanδが0.5以下である3元系弾性共重合体の製造方法:
【化8】

【化9】

前記化学式1及び2で、
1乃至R13は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素;炭素数1乃至20のアルキルラジカル;炭素数2乃至20のアルケニルラジカル;炭素数6乃至20のアリールラジカル;シリルラジカル;炭素数7乃至20のアルキルアリールラジカル;炭素数7乃至20のアリールアルキルラジカル;またはヒドロカルビルで置換された4族金属のメタロイドラジカルであり;前記R1乃至R13のうちの隣接する相異なる2つのグループは炭素数1乃至20のアルキルまたは炭素数6乃至20のアリールラジカルを含むアルキリジンラジカルによって互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成することができ;
Mは4族遷移金属であり;
1及びQ2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にハロゲンラジカル;炭素数1乃至20のアルキルラジカル;炭素数2乃至20のアルケニルラジカル;炭素数6乃至20のアリールラジカル;炭素数7乃至20のアルキルアリールラジカル;炭素数7乃至20のアリールアルキルラジカル;炭素数1乃至20のアルキルアミドラジカル;炭素数6乃至20のアリールアミドラジカル;または炭素数1乃至20のアルキリデンラジカルである。
【請求項2】
前記第1遷移金属化合物は下記式の化合物からなる群より選択された1種以上である請求項1に記載の3元系弾性共重合体の製造方法:
【化10】

【化11】

上記の式で、R2及びR3は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素またはメチルラジカルであり、Mは4族遷移金属であり、Q1及びQ2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にメチルラジカル、ジメチルイミドラジカルまたは塩素ラジカルである。
【請求項3】
前記第2遷移金属化合物は下記式の化合物からなる群より選択された1種以上である請求項1または2に記載の3元系弾性共重合体の製造方法:
【化12】

【化13】

上記の式で、R2及びR3は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素またはメチルラジカルであり、Mは4族遷移金属であり、Q1及びQ2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にメチルラジカル、ジメチルイミドラジカルまたは塩素ラジカルである。
【請求項4】
触媒組成物は下記の化学式3、化学式4及び化学式5からなる群より選択された1種以上の助触媒化合物をさらに含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の3元系弾性共重合体の製造方法:
[化学式3]
−[Al(R)−O]n
前記化学式3で、
Rは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にハロゲン;炭素数1乃至20の炭化水素;またはハロゲンで置換された炭素数1乃至20の炭化水素であり;nは2以上の整数であり;
[化学式4]
D(R)3
前記化学式4で、Rは前記化学式3で定義された通りであり;Dはアルミニウムまたはボロンであり;
[化学式5]
[L−H]+[ZA4-または[L]+[ZA4-
前記化学式5で、Lは中性または陽イオン性ルイス酸であり;Hは水素原子であり;Zは13族元素であり;Aは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に1以上の水素原子価ハロゲン、炭素数1乃至20の炭化水素、アルコキシまたはフェノキシで置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基または炭素数1乃至20のアルキル基である。
【請求項5】
アルファオレフィンはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンからなる群より選択された1種以上であり、ジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、及び1,4−ヘキサジエンからなる群より選択された1種以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の3元系弾性共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記単量体組成物、第1及び第2遷移金属化合物、及び助触媒化合物を反応器に溶液状態で連続的に供給しながら共重合する請求項4または5に記載の3元系弾性共重合体の製造方法。
【請求項7】
共重合された3元系弾性共重合体を反応器から連続的に排出させながら前記共重合段階を連続進行する請求項6に記載の3元系弾性共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記共重合段階は100乃至170℃の温度で遂行される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の3元系弾性共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン、アルファオレフィン及びジエンの共重合体である3元系弾性共重合体と、その製造方法に関する。より具体的に、本発明は加工性及び弾性(柔軟性)を同時に充足できる長鎖分岐を有する3元系弾性共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン、プロピレンなどのアルファオレフィン、そしてエチリデンノルボルネンなどのジエンの3元系弾性共重合体であるEPDMゴムは主鎖に不飽和結合を有しない分子構造を有し、耐候性、耐化学性及び耐熱性などが一般的な共役ジエンゴムより優れた特性を有する。このような特性により、前記EPDMゴムのような3元系弾性共重合体は各種自動車用部品材料、電線材料、建築及び各種ホース、ガスケット、ベルト、バンパーまたはプラスチックとのブレンドなどの工業用材料などに幅広く使用されている。
【0003】
以前からこのようなEPDMゴムなどの3元系弾性共重合体は主にバナジウム化合物を含む触媒、例えば、バナジウム系チーグラー−ナッタ触媒を用いて3種の単量体を共重合することによって製造されてきた。しかし、このようなバナジウム系触媒は低い触媒活性を示すため過量の触媒を使用する必要があり、これによって共重合体内残留金属含量が高くなる短所がある。これにより、共重合体製造後触媒除去及び脱色過程などが必要であり、樹脂内触媒残留分による耐熱性悪化、異物発生または加硫反応阻害などの問題を招くことがある。また、前記バナジウム化合物を含む触媒を用いた3元系弾性共重合体の製造は低い重合活性と低温重合条件を示すため反応温度調節が容易でなく、プロピレンとジエンなど共単量体吸入量調節が容易でなくて共重合体の分子構造制御が難しかったのが事実である。したがって、バナジウム系触媒を使用する場合、多様な物性の3元系弾性共重合体の製造に限界があった。このような問題点により、最近はバナジウム系チーグラー−ナッタ触媒の代わりにメタロセン系列の4族遷移金属触媒を用いてEPDMゴムなど3元系弾性共重合体を製造する方法が開発されている。
【0004】
このような4族遷移金属触媒はオレフィン重合において高い重合活性を示し、分子量がより高い共重合体の製造を可能にするだけでなく、共重合体の分子量分布及び組成などの調節が容易である。また、多様な共単量体の共重合が可能であるという長所がある。例えば、米国特許第5,229,478号、米国特許第6,545,088号及び韓国登録特許第0488833号などにはシクロペンタジエニル、インデニルまたはフルオレニルなどのリガンドから得られた多様なメタロセン系4族遷移金属触媒を用いて、大きい分子量を有する3元系弾性共重合体を優れた重合活性で得ることができるのが開示されている。
【0005】
しかし、このような従来の4族遷移金属触媒を用いて3種の単量体を共重合する場合、アルファオレフィンの共単量体などに対する高い反応性により共重合体鎖内に各単量体に由来した繰り返し単位の分布が均一でなくなる短所が発生した。その結果、優れた弾性及び柔軟性などを有するEPDMゴムなど3元系弾性共重合体を得にくかったのが事実である。
【0006】
また、米国特許第5,902,867号などにはEPDMの混練加工性及び押出加工性を向上させるために分子量分布を広めポリマーの粘度を低める方法が開示されているが、この場合、架橋ゴム製品内に含まれている低分子量成分によって高分子が加工中に分離され表面特性と低温特性が低下する限界が存在する。
【0007】
よって、優れた加工性、機械的物性及び弾性(柔軟性)を同時に充足できる3元系弾性共重合体及びこれを高い生産性及び収率で製造できる製造方法の開発が継続的に要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国登録特許第5,229,478号
【特許文献2】米国登録特許第6,545,088号
【特許文献3】韓国登録特許第0488833号
【特許文献4】米国登録特許第5,902,867号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明は優れた加工性及び弾性(柔軟性)を同時に充足できる長鎖分岐を有する3元系弾性共重合体を提供するものである。
【0010】
本発明はまた、前記長鎖分岐を有する3元系弾性共重合体を生産性高く製造できる3元系弾性共重合体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、4族遷移金属触媒の存在下に得られた、40乃至70重量%のエチレン、15乃至55重量%の炭素数3乃至20のアルファオレフィン及び0.5乃至20重量%のジエンの共重合体であって、
i)GPCで測定した重量平均分子量が100,000乃至500,000であり、
ii)100℃でゴム加工処理分析器(Rubber Process Analyzer)で測定した0.2rad/sの角振動数でのtanδ値と100.0rad/sの角振動数でのtanδ値の差であるΔtanδが0.5以下である3元系弾性共重合体を提供する。
【0012】
本発明はまた、下記の化学式1で示される第1遷移金属化合物及び下記の化学式2で示される第2遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、40乃至70重量%のエチレン、20乃至50重量%の炭素数3乃至20のアルファオレフィン及び2乃至20重量%のジエンを含む単量体組成物を連続的に反応器に供給しながら共重合する段階を含む前記3元系弾性共重合体の製造方法を提供する:
【0013】
【化1】
【0014】
前記化学式1及び2で、
1乃至R13は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素;炭素数1乃至20のアルキルラジカル;炭素数2乃至20のアルケニルラジカル;炭素数6乃至20のアリールラジカル;シリルラジカル;炭素数7乃至20のアルキルアリールラジカル;炭素数7乃至20のアリールアルキルラジカル;またはヒドロカルビルで置換された4族金属のメタロイドラジカルであり;前記R1乃至R13のうちの隣接する相異なる2つのグループは炭素数1乃至20のアルキルまたは炭素数6乃至20のアリールラジカルを含むアルキリジンラジカルによって互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成することができ;
Mは4族遷移金属であり;
1及びQ2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にハロゲンラジカル;炭素数1乃至20のアルキルラジカル;炭素数2乃至20のアルケニルラジカル;炭素数6乃至20のアリールラジカル;炭素数7乃至20のアルキルアリールラジカル;炭素数7乃至20のアリールアルキルラジカル;炭素数1乃至20のアルキルアミドラジカル;炭素数6乃至20のアリールアミドラジカル;または炭素数1乃至20のアルキリデンラジカルである。
【0015】
以下、発明の具体的な実施形態による3元系弾性共重合体及びその製造方法について詳しく説明する。
【0016】
まず、本明細書で使用される“3元系弾性共重合体”の用語は特別に他の意味が説明されない限り、次のように定義できる。前記“3元系弾性共重合体”はエチレンと、炭素数3乃至20のアルファオレフィンと、ジエンの3種の単量体が共重合された任意の弾性共重合体(例えば、架橋可能なランダム共重合体)を指称することができる。このような“3元系弾性共重合体”の代表的な例としては、エチレン、プロピレン及びジエンの共重合体であるEPDMゴムが挙げられる。但し、このような“3元系弾性共重合体”がただ三つの単量体の共重合体のみを指称するのではなく、前記エチレンと共に、アルファオレフィンの範疇に属する一つ以上の単量体及びジエンの範疇に属する一つ以上の単量体が共重合された任意の弾性共重合体を含むことができるのはもちろんである。例えば、エチレンと、プロピレン及び1−ブテンの2種のアルファオレフィンと、エチリデンノルボルネン及び1,4−ヘキサジエンの2種のジエンが共重合された弾性共重合体も、エチレンと、アルファオレフィンと、ジエンの範疇にそれぞれ属する3種の単量体が共重合されたものであるので、前記“3元系弾性共重合体”の範疇に属することができる。
【0017】
一方、発明の一実施形態によれば、4族遷移金属触媒の存在下に得られた、40乃至70重量%のエチレン、15乃至55重量%の炭素数3乃至20のアルファオレフィン及び0.5乃至20重量%のジエンの共重合体であって、
i)GPCで測定した重量平均分子量が100,000乃至500,000であり、
ii)100℃でゴム加工処理分析器(Rubber Process Analyzer)で測定した0.2rad/sの角振動数でのtanδ値と100.0rad/sの角振動数でのtanδ値の差であるΔtanδが0.5以下である3元系弾性共重合体が提供される。
【0018】
このような一実施形態の3元系弾性共重合体はエチレン、アルファオレフィン及びジエンの3種の単量体が一定の含量範囲で共重合されたものであって、GPCで測定した時、約100,000乃至500,000、あるいは約100,000乃至400,000の比較的大きい重量平均分子量を有する。このような大きい重量平均分子量は4族遷移金属触媒、例えば、メタロセン系列に属する後述の化学式1及び2の第1及び第2遷移金属化合物の優れた活性に起因して達成されるものであって、一実施形態の3元系弾性共重合体がこのような大きい分子量を有することによって、前記3元系弾性共重合体、例えば、EPDMゴムは優秀な機械的物性を示すことができる。
【0019】
そして、前記一実施形態の3元系弾性共重合体は、100℃でゴム加工処理分析器(Rubber Process Analyzer)で測定した0.2rad/sの角振動数でのtanδ値と100.0rad/sの角振動数でのtanδ値の差であるΔtanδが0.5以下を示すことができる。
【0020】
特に、前記3元系弾性共重合体はエチレン、アルファオレフィン及びジエンの3種の単量体が適正な含量範囲で均一に交互分布されており、特定ジエンを含むことによって長鎖分岐を含み、0.2rad/sの角振動数でのtanδ値と100.0rad/sの角振動数でのtanδ値の差が0.5以下を示すことができ、これにより押出加工に適した優秀な機械的物性と共に、より向上した弾性及び柔軟性などを同時に充足することができる。
【0021】
前記一実施形態の3元系弾性共重合体は、例えば、メタロセン系列に属する4族遷移金属触媒特有の優れた生産性及び収率で製造でき、大きい分子量及びこれによる優れた機械的物性を充足しながらも、従来にメタロセン系4族遷移金属触媒で製造されたEPDMゴムが有している問題点を解決して優れた弾性及び柔軟性などを同時に充足することができる。
【0022】
そして、前記3元系弾性共重合体は前記100℃でゴム加工処理分析器(Rubber Process Analyzer)で測定した0.2rad/sの角振動数でのtanδ値が0.45乃至0.8であり得る。0.2rad/sの角振動数で前記範囲の低いtanδを示す弾性共重合体は長鎖分岐を有する重合体であって、加工性に優れ、押出成形に適するが、これとは反対にtanδが0.8を超過して高い値を有する場合、線状構造の重合体であって加工性が低いこともある。
【0023】
一方、前記一実施形態の3元系弾性共重合体で、δ(delta)は一定の角振動数での位相角(phase angle)を示し、刺激に対する反応速度を意味し、Δδ(delta−delta)は角振動数の変化による位相角の変化を示す。そして、前記tanδ及びΔtanδは前記δ及びΔδのタンジェント値を意味し、G”が損失弾性率(loss modulus)であり、G’が貯蔵弾性率(storagemodulus)である時、tanδ=G”/G’で示すことができる。前記各共重合体のtanδはモンサントRPA2000モデルのゴム加工処理分析器(Rubber Process Analyzer)を用いて測定できる。
【0024】
そして、前記Δtanδは低い角振動数でのtanδ値と高い角振動数でのtanδ値の差であって、弾性共重合体の長鎖分岐度及び押出挙動と関連があり得る。より具体的に、前記tanδは粘性に比例する損失弾性率と弾性に比例する貯蔵弾性率の比率を示すので、共重合体が低いtanδ値を有するほど粘性は低く弾性が増加する性質を示すことができる。そして、長鎖分岐度の高い共重合体が損失弾性率は低く貯蔵弾性率が高くて、このような低いtanδ値を示すことができる。したがって、変形を加える間のtanδ値の差であるΔtanδが小さいほど高い弾性を維持する特性を示し、これは共重合体内に長鎖分岐が存在し、優れた加工性と押出成形に適した機械的物性を示すことができるのを意味する。
【0025】
つまり、前記3元系弾性共重合体は4族遷移金属触媒を用いて優れた生産性、収率及び機械的物性を有するように製造され、特定ジエンを含むことによって一定範囲の重量平均分子量とΔtanδ値を有してEPDMゴムに要求されるより優れた加工性、弾性及び柔軟性などを示すことができるので、EPDMゴムなどとして非常に好ましく用いることができる。
【0026】
一方、前記一実施形態の3元系弾性共重合体は2乃至6の分子量分布(PDI)を有し、さらに好ましくは2乃至4の分子量分布を有し得る。前記分子量分布(PDI)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比を意味し(Mw/Mn)、前記分子量分布が2未満であれば長鎖分岐が導入されにくく加工性が低くなることがあり、分子量分布が6を超過すれば加工性は優れているが低分子量の重合体を含むので、低分子量の重合体が加工時に分離され表面特性が低下することがある。
【0027】
そして、前記一実施形態の3元系弾性共重合体はEPDMゴムなどとしての適切な物性充足が可能な密度範囲、例えば、約0.840乃至0.895g/cm3、あるいは約0.850乃至0.890g/cm3の密度を有し得る。
【0028】
また、前記一実施形態の3元系弾性共重合体はEPDMゴムなどとしての適切な物性の充足が可能なムーニー粘度(1+4@125℃)範囲、例えば、約1乃至180、あるいは約5乃至150、あるいは約20乃至130のムーニー粘度を有し得る。
【0029】
また、前記一実施形態の3元系弾性共重合体で、前記アルファオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどの炭素数3乃至20のアルファオレフィンを1種以上使用することができ、これらの中でも炭素数3乃至10のアルファオレフィン、代表的な例としてプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンを適切に使用することができる。
【0030】
また、前記ジエンとしては非共役ジエン系単量体を使用することができる。その具体的な例としては、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−ノナジエン、1,8−デカジエン、1,12−テトラデカジエン、3−メチル−1,4,−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5,−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−メチル−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−エチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソブチリデン−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、または2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエンなどが挙げられ、これらの中で選択されたジエンを1種以上使用することができる。
【0031】
これらジエンの中でも特に、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、または1,4−ヘキサジエンを適切に使用して、前記一実施形態の重量平均分子量とΔtanδを満足する3元系弾性共重合体を製造することができる。一方、従来の3元系弾性共重合体の製造に前記ジエンとして用いられていた5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)またはジシクロペンタジエン(DCPD)は二重結合を2つ含み、前記2つの二重結合が重合反応に参加して架橋された形態の高分子構造を示すので重合過程でゲル粒子が形成されたり、共重合体の分子量調節が難しく重合反応も調節しにくいという限界を有する。
【0032】
一方、発明の他の実施形態によれば、前述の一実施形態の3元系弾性共重合体の製造方法が提供される。このような共重合体の製造方法は下記の化学式1で示される第1遷移金属化合物及び下記の化学式2で示される第2遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、40乃至70重量%のエチレン、20乃至50重量%の炭素数3乃至20のアルファオレフィン及び2乃至20重量%のジエンを含む単量体組成物を連続的に反応器に供給しながら共重合する段階を含むことができる:
【0033】
【化2】
【0034】
前記化学式1及び2で、
1乃至R13は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素;炭素数1乃至20のアルキルラジカル;炭素数2乃至20のアルケニルラジカル;炭素数6乃至20のアリールラジカル;シリルラジカル;炭素数7乃至20のアルキルアリールラジカル;炭素数7乃至20のアリールアルキルラジカル;またはヒドロカルビルで置換された4族金属のメタロイドラジカルであり;前記R1乃至R13のうちの隣接する相異なる2つのグループは炭素数1乃至20のアルキルまたは炭素数6乃至20のアリールラジカルを含むアルキリジンラジカルによって互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成することができ;
Mは4族遷移金属であり;
1及びQ2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にハロゲンラジカル;炭素数1乃至20のアルキルラジカル;炭素数2乃至20のアルケニルラジカル;炭素数6乃至20のアリールラジカル;炭素数7乃至20のアルキルアリールラジカル;炭素数7乃至20のアリールアルキルラジカル;炭素数1乃至20のアルキルアミドラジカル;炭素数6乃至20のアリールアミドラジカル;または炭素数1乃至20のアルキリデンラジカルである。
【0035】
以下の実施例などを通じても確認されるように、一定の含量の単量体、即ち、約40乃至70重量%、あるいは約50乃至70重量%のエチレン、約15乃至55重量%、あるいは約25乃至45重量%の炭素数3乃至20のアルファオレフィン及び約0.5乃至20重量%、あるいは約2乃至10重量%のジエンを使用する一方、このような各単量体を前記化学式1及び2の2種の特定遷移金属触媒の存在下に連続重合工程で製造することにより、前述の大きい分子量範囲及び角振動数0.2rad/sと100.0rad/sでのtanδ値の差が0.5以下を充足する前記一実施形態の3元系弾性共重合体が高い収率及び生産性で得られるのが確認された。
【0036】
これは主に前記2種の特定触媒が有する優れた触媒活性及び共単量体反応性に起因することができる。前記第1及び第2遷移金属化合物の特定触媒は4族遷移金属触媒としての優れた触媒活性を示し、特にアルファオレフィンとジエンなどの共単量体に対して優れた選択性と共重合反応性を示すことができる。さらに、これら2種の特定触媒を用いることによって、ジエンが比較的に高い含量で高分子鎖内に均一に分布しながら共重合が行われるようにすることができる。これは前記化学式1及び2の特定触媒がキノリン系アミドグループによって金属元素の位置周囲が堅固な5角環及び6角環構図で非常に安定的に維持され、これにより構造的に単量体の接近が容易な構造的特性を有しているためである。つまり、前記化学式1及び2の特定触媒は前述の触媒の構造的特性をもとにエチレンとアルファオレフィンが共重合される間に長鎖分岐形態の二重結合を有するマクロマを形成させることができ、これは再び触媒との反応で共重合されて、長鎖分岐を有する3元系弾性共重合体を形成することができる。
【0037】
さらに、このような第1及び第2遷移金属化合物の2種の特定触媒を使用する一方、各単量体を含む単量体組成物を連続的に重合反応器に供給しながら前記共重合を連続工程で行うことによって、前記共単量体、特にジエンは高分子鎖内にさらに均一に分布される。
【0038】
その結果、分子量が高いながらも、各単量体が均一に交互分布され、長鎖分岐度の高い3元系弾性共重合体が生産性及び収率高く製造できる。そして、このように得られた3元系弾性共重合体は分子量に起因した優れた機械的物性と共に、特定角振動数でのtanδ値の差が低く示され、これにより優れた加工性及び柔軟性などを同時に充足できる。
【0039】
付け加えて、各単量体の含量がエチレンの約40乃至70重量%、あるいは約50乃至70重量%、アルファオレフィンの約15乃至55重量%、あるいは約25乃至45重量%及びジエンの約0.5乃至20重量%、あるいは約2乃至10重量%で最適化した範囲に調節されることによって、各単量体の高分子鎖内の分布はさらに均一に交互配列され、これは前記一実施形態の特性を充足する3元系弾性共重合体の効果的製造を可能にする。
【0040】
したがって、他の実施形態の製造方法によれば、前述の一実施形態の3元系弾性共重合体が生産性及び収率高く製造でき、このような3元系弾性共重合体は優秀な機械的物性と、より向上した弾性などを同時に充足する4族遷移金属触媒で製造されたEPDMゴムなどとして非常に好ましく用いることができる。
【0041】
但し、前述の2種の特定触媒を使用しないか、これらのうちの1種の触媒のみを使用するか、前述の各単量体の適切な含量範囲、特にジエンの含量範囲を逸脱する場合などにおいては、最終製造された3元系弾性共重合体が一実施形態の高い分子量範囲や、特定角振動数でのΔtanδ値の範囲などを充足しなくなることもある。
【0042】
一方、前述の他の実施形態の3元系弾性共重合体の製造方法で、前記化学式1及び2で示される第1及び第2遷移金属化合物に対するより具体的な説明は以下の通りである。
【0043】
まず、前記化学式1及び2で、ヒドロカルビルはヒドロカルボンから水素原子を除去した形態の1価作用基を指摘し、例えば、エチルなどのアルキル基や、フェニルなどのアリール基を包括して指摘することができる。
【0044】
また、化学式1及び2で、メタロイドは半金属で金属と非金属の中間的性質を示す元素であって、例えば、砒素、ホウ素、ケイ素またはテルルなどを指称することができる。そして、前記Mは、例えば、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムなどの4族遷移金属元素を指称することができる。
【0045】
これら第1及び第2遷移金属化合物の中で、前記化学式1の第1遷移金属化合物としては、下記式の化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を適切に使用することができる:
【0046】
【化3】
【0047】
上記の式で、R2及びR3は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素またはメチルラジカルであり、Mは4族遷移金属であり、Q1及びQ2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にメチルラジカル、ジメチルイミドラジカルまたは塩素ラジカルである。
【0048】
また、残り化学式2の第2遷移金属化合物としては、下記式の化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を適切に使用することができる:
【0049】
【化4】
【0050】
上記の式で、R2及びR3は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に水素またはメチルラジカルであり、Mは4族遷移金属であり、Q1及びQ2は互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にメチルラジカル、ジメチルイミドラジカルまたは塩素ラジカルである。
【0051】
一方、前記他の実施形態の製造方法で使用される触媒組成物は前述の第1及び第2遷移金属化合物以外に下記の化学式3、化学式4及び化学式5からなる群より選択された1種以上の助触媒化合物をさらに含むことができる:
【0052】
【化5】
【0053】
前記化学式3で、
Rは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的にハロゲン;炭素数1乃至20の炭化水素;またはハロゲンで置換された炭素数1乃至20の炭化水素であり;nは2以上の整数であり;
【0054】
【化6】
【0055】
前記化学式4で、Rは前記化学式3で定義された通りであり;Dはアルミニウムまたはボロンであり;
【0056】
【化7】
【0057】
前記化学式5で、Lは中性または陽イオン性ルイス酸であり;Hは水素原子であり;Zは13族元素であり;Aは互いに同一であるか異なり、それぞれ独立的に1以上の水素原子価ハロゲン、炭素数1乃至20の炭化水素、アルコキシまたはフェノキシで置換または非置換された炭素数6乃至20のアリール基または炭素数1乃至20のアルキル基である。
【0058】
このような助触媒化合物で、前記化学式3で示される化合物の例としてはメチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンまたはブチルアルミノキサンなどが挙げられる。
【0059】
また、前記化学式4で示される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−s−ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロンまたはトリブチルボロンなどが挙げられ、この中でもトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムを適切に使用することができる。
【0060】
そして、前記化学式5で示される化合物はブレンステッド酸である陽イオンと両立可能な非配位結合性陰イオンを含む。適切な陰イオンは大きさが比較的大きく半金属を含む単一配位結合性錯化合物を含有するものである。特に、陰イオン部分に単一ホウ素原子を含有する化合物が幅広く使用されている。このような観点で、前記化学式5で示される化合物としては単一ホウ素原子を含有する配位結合性錯化合物を含む陰イオンを含有した塩を適切に用いることができる。
【0061】
このような化合物の具体的な例としては、トリアルキルアンモニウム塩の場合にはトリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムn−ブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムベンジルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−(t−ブチルジメチルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(4−トリイソプロピルシリル)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムペンタフルオロフェノキシトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、デシルジメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ドデシルジメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラデシルジメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヘキサデシルジメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、オクタデシルジメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、エイコシルジメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジドデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジヘキサデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジエイコシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリドデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリヘキサデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエイコシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、デシルジ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ドデシルジ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、オクタデシルジ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジドデシルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N−メチル−N−ドデシルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはメチルジ(ドデシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが例として挙げられる。
【0062】
また、ジアルキルアンモニウム塩の場合には、ジ−(i−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなが例として挙げられる。
【0063】
そして、カルボニウム塩の場合にはトロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが例として挙げられる。
【0064】
一方、前述の3元系弾性共重合体の製造方法で、前述の第1及び第2遷移金属化合物と、選択的に助触媒化合物を含む触媒組成物は、例えば、前記第1及び第2遷移金属化合物と、前記化学式3または化学式4の助触媒化合物を接触させて混合物を得る段階;及び前記混合物に前記化学式5の助触媒化合物を添加する段階を含む方法で製造できる。
【0065】
また、前記触媒組成物で、前記第1遷移金属化合物:第2遷移金属化合物のモル比は約10:1乃至1:10であり得、前記第1及び第2遷移金属化合物を合わせた全体遷移金属化合物:前記化学式3または化学式4の助触媒化合物のモル比は約1:5乃至1:500であり得、前記全体遷移金属化合物:前記化学式5の助触媒化合物のモル比は約1:1乃至1:10であり得る。
【0066】
そして、前記3元系弾性共重合体の製造方法で、前記触媒組成物は反応溶媒を追加的に含むことができ、前記反応溶媒としてはペンタン、ヘキサンまたはヘプタンなどのような炭化水素系溶媒;ベンゼンまたはトルエンなどのような芳香族系溶媒などが挙げられるが、これにのみ限定されるのではない。
【0067】
また、既に前述したように、前記単量体組成物に含まれるアルファオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−デセン、1−ウンデセンまたは1−ドデセンなどを用いることができ、前記ジエンとしては非共役ジエン系単量体を使用することができる。この中でも、EPDMゴムの製造に通常使用される単量体、例えば、前記アルファオレフィンとしてプロピレンと、前記ジエンとして5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、または1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン系単量体を適切に使用することができる。
【0068】
そして、前述の他の実施形態の共重合体の製造方法で、前記共重合段階は約100乃至170℃の温度、あるいは約100乃至160℃の温度で行うことができる。前記共重合温度が低すぎる場合、3種の単量体が均一に交互分布した3元系弾性共重合体の合成が難しいことがあり、重合反応温度が高すぎる場合、単量体または製造された共重合体が熱分解されることがある。また、このような共重合は溶液重合、特に、連続溶液重合方法で行うことができる。この時、前述の触媒組成物はこのような溶液に溶解された均一系触媒の形態で使用することができる。
【0069】
このような連続溶液重合の進行のために、前述の単量体組成物と、第1及び第2遷移金属化合物、及び選択的に助触媒化合物を含む触媒組成物を反応器に溶液状態で連続的に供給しながら前記共重合段階を行うことができ、共重合された3元系弾性共重合体を反応器から連続的に排出させながら前記共重合段階を連続進行することができる。
【0070】
このような連続溶液重合の進行によって、前記一実施形態の特性を充足する3元系弾性共重合体をより効果的に生産性及び収率高く得ることができる。
【0071】
前述のように、本発明によれば優れた加工性と、より向上した弾性及び柔軟性などを示しEPDMゴムなどとして非常に好ましく使用できる4族遷移金属触媒によって長鎖分岐を有する3元系弾性共重合体が製造される。
【0072】
また、本発明によれば、このような3元系弾性共重合体を生産性及び収率高く製造できる共重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0073】
本発明によって得られた長鎖分岐を有する3元系弾性共重合体は以前に知られたメタロセン系4族遷移金属触媒で製造されたEPDMゴムなどの限界を克服し、優れた弾性及び柔軟性を他の物性と共に充足することができるので、4族遷移金属触媒特有の長所を生かしながらもEPDMゴムなどとして非常に好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】実施例1及び比較例1で製造された3元系弾性共重合体の角振動数による動的粘度グラフである。
図2】実施例1及び比較例1で製造された3元系弾性共重合体の角振動数によるtanδグラフである。
図3】実施例1で製造した共重合体をローター回転数60rpmでガーベイダイ押出させた押出物の表面写真である。
図4】比較例1で製造した共重合体をローター回転数60rpmでガーベイダイ押出させた押出物の表面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は発明を例示するものに過ぎず、発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【0076】
下記の実施例及び比較例は空気と水分の接触を遮断する窒素雰囲気下で標準シュレンク(Schlenk)とグローブボックス(Glove−box)を用いて行われ、反応に使用する有機溶媒は標準方法で精製して使用した。合成されたリガンドと触媒は400MHz核磁気共鳴器(NMR)及びX−ray分光器を用いて確認した。
【0077】
<リガンド及び遷移金属化合物の合成>
下記の実施例で第1及び第2遷移金属化合物としては、それぞれ[(1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−8−イル)テトラメチルシクロペンタジエニル−エタ5,カッパ−N]チタニウムジメチル([(1,2,3,4−Tetrahydroquinolin−8−yl)tetramethylcyclopentadienyl−eta5,kapa−N]titanium dimethyl)及び[(2−メチルインドリン−7−イル)テトラメチルシクロペンタジエニル−エタ5,カッパ−N]チタニウムジメチル([(2−Methylindolin−7−yl)tetramethylcyclopentadienyl−eta5,kapa−N]titanium dimethyl)を用い、助触媒化合物としてはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びトリイソブチルアルミニウムを使用した。前記第1及び第2遷移金属化合物は韓国特許登録第0,976、131号の実施例2及び14と同様な方法で製造して使用しており、前記助触媒化合物はこのような韓国特許登録第0,820,542号の実施例9で使用されたものと同一な助触媒化合物を製造して使用した。
【実施例】
【0078】
<実施例1乃至6> エチレン、プロピレン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンの3元系弾性共重合体の製造
2L圧力反応器を用いて、連続的にエチレン、プロピレン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンの3元共重合反応を行った。前記反応器の下部から重合溶媒としてヘキサンを時間当り6.7kgの供給速度で連続投入し、反応器の上部から連続的に重合溶液を取り出した。
【0079】
第1及び第2遷移金属化合物としては、前述の[(1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−8−イル)テトラメチルシクロペンタジエニル−エタ5,カッパ−N]チタニウムジメチル及び[(2−メチルインドリン−7−イル)テトラメチルシクロペンタジエニル−エタ5,カッパ−N]チタニウムジメチルをヘキサンに溶解された状態で使用し、時間当り24乃至60μmolの速度で反応器に投入した。また、助触媒化合物としては前述のN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートをトルエンに溶解された状態で使用し、時間当り105乃至270μmolの速度で反応器に投入した。また、追加的な助触媒化合物として前述のトリイソブチルアルミニウムをヘキサンに溶解された状態で使用し、時間当り1800乃至3200μmolの速度で反応器に投入した。
【0080】
単量体であるエチレンは時間当り890乃至900g、プロピレンは450乃至550g、そして、5−エチリデン−2−ノルボルネンは時間当り80乃至250gの速度で反応器に連続供給しながら、前記共重合を行った。
【0081】
反応器内の共重合温度は160℃近傍で5−エチリデン−2−ノルボルネンの供給速度を1mL/minから0.5mL/minずつ増加させながら130乃至160℃の間に調節した。
【0082】
前述の条件下に、連続溶液重合で共重合を行って、実施例1乃至6の3元系弾性共重合体を均一な溶液状態で連続製造し、反応器の上部から連続的に排出された重合溶液はエタノール下で重合反応が停止した後、60℃の真空オーブンで減圧乾燥されて実施例1乃至6の共重合体として最終製造された。
【0083】
<比較例1及び2>商用化されたエチレン、プロピレン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンの3元系弾性共重合体
メタロセン触媒で製造された商用化されたEPDMゴムであるDOW4570を比較例1の3元系弾性共重合体とし、DOW4640を比較例2の3元系弾性共重合体とした。
【0084】
前記実施例及び比較例で得られた共重合体で各単量体の含量と、触媒の活性、共重合体の重量平均分子量及び分子量分布(PDI)は下記表1に整理された通りである。この時、各共重合体の重量平均分子量は3つの線状混合されたベッドコラムが装着されたポリマーラボラトリー(Polymer Laboratory)社のPL−GPC220によって測定した。温度160℃で1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒として用いて1.0ml/分の流速で測定した。
【0085】
【表1】
【0086】
<試験例1>動的粘度(dynamic complex viscosity)とtanδの測定
動的粘度(dynamic complex viscosity)とtanδはASTM D6204−01によってゴム加工処理分析器(Rubber Process Analyzer)を用いて測定した。モンサント(Monsanto)社のRPA2000MV2000E装備モデルを使用し、測定サンプルは酸化防止剤(Irganox 1076)で処理した共重合体サンプルをプレスモールドを用いてシートとして製作し、これを100℃で7%変形(strain)及び0.1−210rad/sの周波数範囲で動的粘度(dynamic complex viscosity)とtanδを測定した。実施例及び比較例の各共重合体の角振動数変化に対する動的粘度(dynamic complex viscosity)グラフは図1に示した。そして、実施例及び比較例の各共重合体の角振動数変化に対するtanδ値を下記表2と図2に整理して示した。
【0088】
図1及び図2に示されているように、実施例1と比較例1は角振動数に対する動的粘度の変化形態は類似しているが、実施例1が比較例1に比べて角振動数の変化によるtanδの変化程度が顕著に少なく示されるのを確認することができた。特に、実施例1と比較例1は0.2rad/s角振動数でのtanδ値が非常に大きい差を示されるのを確認することができる。
【0089】
また、前記表2に示されているように、前記実施例1だけでなく、実施例2乃至6も比較例1、2に比べて角振動数の変化によるtanδの変化程度が顕著に少なく示され、特に0.2rad/sと104.7rad/sでのtanδ値の差が0.5以下であって非常に少ないのを確認することができる。
【0090】
これにより、前記結果から、0.2rad/sと104.7rad/sでの高いΔtanδを有する比較例は線状構造であるが、0.5以下の低いΔtanδを示す実施例1乃至6の共重合体は長鎖分岐を有するEPDM構造であるのを類推することができる。
【0091】
また、前記実施例から既存のEPDM重合で長鎖分岐を形成せず加工性が低く示された5−エチリデン−2−ノルボルネンモノマーを前記4族遷移金属触媒及び特定重合システムを適用すれば長鎖分岐を有する3元系弾性共重合体を製造することができるのを確認した。
【0092】
<試験例2>ガーベイ−ダイ押出実験
ASTM2230によるガーベイダイ(Garvey Die)押出方法によって押出加工性を評価した。ガーベイダイ押出テストのためのサンプルは次のように製造した。実施例1、2と比較例1、2で製造された共重合体100重量部に対してパラフィンオイル75重量部、カーボンブラック125重量部、ZnO5重量部、ステアリン酸1重量部を用いてパレル社のバンバリーミキサー1.6Lを用いてローター回転数60rpmで6分間100乃至120℃で混練した。そして、混練された配合物をガーベイダイ押出機を通じてダイ温度105℃でローター回転数45または60rpmに変化させて押出させ、ASTM2230によって表面と周縁特性を評価した。実施例1、2と比較例1、2のガーベイダイ試験結果を表3に示し、実施例1と比較例1の各共重合体のガーベイダイ押出物の表面写真を図3図4に示した。
【0093】
【表3】
【0094】
前記実施例1、2と比較例1、2は類似の組成とムーニー粘度を有するサンプルであって、これに対するガーベイダイ押出試験を行った時、前記表3に示されているように、押出生産とダイ膨張指数は類似しているが、押出物の表面特性は実施例1、2が比較例1、2と比較して顕著に優れているのを確認することができた。
【0095】
また、実施例1と比較例1に対する押出物写真である図3図4から実施例1の表面特性と周縁形態が比較例1に比べてさらに均一で滑らかに示されるのを確認することができた。
【0096】
つまり、前記実施例1及び2の3元系弾性共重合体は特定ジエンを含み本発明で使用する特定の4族遷移金属触媒を用いて長鎖分岐を均一に導入することによって、従来5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)またはジシクロペンタジエン(DCPD)をジエンとして含む共重合体に比べて優れた押出加工性及び表面特性を示すのを確認することができる。
図1
図2
図3
図4