特許第6000942号(P6000942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6000942オキシムエステル化合物及び該化合物を含有する光重合開始剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000942
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】オキシムエステル化合物及び該化合物を含有する光重合開始剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 323/47 20060101AFI20160923BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20160923BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20160923BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   C07C323/47CSP
   C08F2/50
   G03F7/031
   G02B5/20 101
【請求項の数】8
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-507233(P2013-507233)
(86)(22)【出願日】2012年2月7日
(86)【国際出願番号】JP2012052775
(87)【国際公開番号】WO2012132558
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-67406(P2011-67406)
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100143856
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 廣己
(72)【発明者】
【氏名】村田 聖
(72)【発明者】
【氏名】大石 武雄
(72)【発明者】
【氏名】君島 孝一
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−047871(JP,A)
【文献】 特開2007−310317(JP,A)
【文献】 特開2000−080068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 323/47
G02B 5/20
G03F 7/031
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物。
【化1】
(式中、R1、R2及び3は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、
4、OR11又はCOOR11を表し、
11は、アルキル基を表し、
11表わされるアルキル基の水素原子は、更に−O−CO−CR21=CR2223置換されており、
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、又はアルキル基を表し、
11表されるアルキル基のアルキレン部分は、−NR24COO−により1〜5回中断されていてもよく、
24は、水素原子又はアルキル基を表し、
前記アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル又はヘキシルであり、
は、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、
aは、0〜1の整数を表し、
bは、の整数を表。)
【請求項2】
請求項1に記載のオキシムエステル化合物を含有してなる光重合開始剤。
【請求項3】
(A)請求項2に記載の光重合開始剤、及び(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有してなる感光性組成物。
【請求項4】
上記(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の少なくとも一つが、アルカリ現像性を付与する化合物である請求項3に記載の感光性組成物。
【請求項5】
更に(C)無機化合物を含有してなる請求項3又は4に記載の感光性組成物。
【請求項6】
更に(D)色材を含有してなる請求項3〜5の何れか一項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
請求項3〜6の何れか一項に記載の感光性組成物にエネルギー線を照射してなる硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物を用いたカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物に用いられる光重合開始剤として有用な新規なオキシムエステル化合物、該化合物を含有する光重合開始剤、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に該光重合開始剤を含有させてなる感光性組成物、及び該感光性組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性組成物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に光重合開始剤を加えたものであり、エネルギー線(光)を照射することによって重合硬化させることができるため、光硬化性インキ、感光性印刷版、各種フォトレジスト等に用いられている。
【0003】
上記感光性組成物に用いられる光重合開始剤として、特許文献1〜3には、オキシムエステル化合物が提案されている。
しかし、特許文献1〜3に記載のオキシムエステル化合物のうち、感度が満足できるオキシムエステル化合物は、可視光領域の透過率が低く、カラーフィルタで所望する色が得られないという問題(特に、保護膜のような透明性が求められる用途に使用する感光性組成物や、青色の顔料又は色素を用いたカラーフィルタ向けレジストでは、380〜450nmに吸収を持つ化合物が混在すると明度、色純度が低下する)があり、また、可視光領域の透過率が高いオキシムエステル化合物は、感度が十分満足できるものではないという問題があり、両特性を兼ね備える光重合開始剤が求められていた。
また、カラーフィルタ等に用いられる色材を含有する着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物は高感度であることが求められ、レジスト中における光重合開始剤を高濃度にする必要があった。しかし、高濃度の光重合開始剤は、現像性の悪化による残渣の発生や、昇華物によるフォトマスクや加熱炉の汚染等の原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−80068号公報
【特許文献2】特開2001−233842号公報
【特許文献3】特許第3860170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、満足できる感度を有し、且つ可視光領域の透過率が高く、昇華性の低い光重合開始剤がこれまでなかったということである。
【0006】
従って、本発明の目的は、安定性に優れ、低昇華性であり、現像性に優れ、可視光領域の透過率が高く、365nm等の近紫外光を効率よく吸収し活性化される高感度の光重合開始剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討した結果、光重合開始剤として用いる化合物を、樹脂組成物としたときに樹脂等と反応させるか、エネルギー線(光)照射時に樹脂等と反応させると、樹脂等と反応せずに化合物そのままの状態で存在する場合よりも低昇華性となることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物、及び該化合物を含有してなる光重合開始剤を提供するものである。
【0009】
【化1】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、R11、OR11、COOR11、SR11、SO211、CONR1213又はCNを表し、
11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基若しくは炭素原子数2〜20の複素環基である置換基を表し、
11、R12及びR13で表わされる置換基の水素原子は、更にOR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、−NR22−OR23、−NR22CO−OCOR23、−C(=N−OR21)−R22、−C(=N−OCOR21)−R22、CN、ハロゲン原子、−COOR21、−CR21=CR2223、−CO−CR21=CR2223、−O−CO−CR21=CR2223、−N=C=O又はエポキシ基で置換されていてもよく、
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基若しくは炭素原子数2〜20の複素環基である置換基を表し、
21、R22及びR23で表される置換基の水素原子は、更にCN、ハロゲン原子、水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよく、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NR24−、−NR24COO−、−OCONR24−、−SCO−、−COS−、−OCS−又は−CSO−により1〜5回中断されていてもよく、
24は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、R12とR13及びR22とR23はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR3132、CO、NR33又はPR34を表し、
31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基若しくは炭素原子数7〜30のアリールアルキル基である置換基を表し、
31、R32、R33及びR34で表される置換基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R31、R32、R33及びR34で表される置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよく、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよく、
aは、0〜4の整数を表し、
bは、1〜5の整数を表し、
4の少なくとも一つは、−CR21=CR2223、−CO−CR21=CR2223、−O−CO−CR21=CR2223、−N=C=O又はエポキシ基を有する基である。)
【0010】
また、本発明は、上記光重合開始剤、及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有してなる感光性組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記感光性組成物に、アルカリ現像性を付与する化合物を含有させてなるアルカリ現像性感光性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記アルカリ現像性感光性樹脂組成物に、更に色材を含有させてなる着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記感光性組成物、上記アルカリ現像性感光性樹脂組成物又は上記着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物に、エネルギー線を照射してなる硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオキシムエステル化合物は、可視光領域の透過率が高く、365nm(i線)等の輝線に対して効率よくラジカルを発生させ、光重合開始剤として有用なものである。また、本発明のオキシムエステル化合物は、光重合開始剤として樹脂組成物に配合して用いると、重合性基を有する樹脂と反応するため、昇華物が少なく、さらに硬化物の耐熱性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のオキシムエステル化合物及び該化合物を含有する光重合開始剤について詳細に説明する。
【0014】
本発明のオキシムエステル化合物は、上記一般式(1)で表される新規化合物である。該オキシムエステル化合物には、オキシムの二重結合による2つの幾何異性体が存在するが、本発明はこれらを区別するものではない。
即ち、本明細書において、上記一般式(1)、並びに後述する上記一般式(1)で表される化合物の好ましい形態を表す一般式(2)、及び例示化合物No.1〜No.39の化学構造式は、2つの幾何異性体のうちの一方のみを示しているが、本発明のオキシムエステル化合物は、これらの式で示される幾何異性体に限定されず、もう一方の幾何異性体でもよいし、2つの幾何異性体の混合物であってもよい。
【0015】
上記一般式(1)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R34で表される炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(1)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R34で表される炭素原子数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナンスレニル、上記アルキル基で1つ以上置換されたフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アンスリル等が挙げられる。
【0017】
上記一般式(1)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R34で表される炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、α−メチルベンジル、α、α−ジメチルベンジル、フェニルエチル等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24で表される置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、フリル、チエニル、テトラヒドロフリル、ジオキソラニル、ベンゾオキサゾール−2−イル、テトラヒドロピラニル、ピロリジル、イミダゾリジル、ピラゾリジル、チアゾリジル、イソチアゾリジル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、ピペリジル、ピペラジル、モルホリニル等の5〜7員複素環が好ましく挙げられる。
【0019】
上記一般式(1)中、R12とR13、R22とR23が一緒になって形成しうる環及びR31、R32、R33及びR34が隣接するベンゼン環と一緒になって形成しうる環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環が好ましく挙げられる。
【0020】
また、上記一般式(1)中、R11、R12、R13、R21、R22、R23を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0021】
また、R11、R12、R13、R21、R22、R23で表される置換基のアルキレン部分は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NR24−、−NR24COO−、−OCONR24−、−SCO−、−COS−、−OCS−又は−CSO−により1〜5回中断されていてもよく、この時中断する結合基は1種又は2種以上の基でもよく、連続して中断しうる基の場合は2つ以上連続して中断してもよい。また、上記置換基のアルキル部分は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよい。
【0022】
本発明のオキシムエステル化合物の中でも、上記一般式(1)において、Xが硫黄原子又はNR33であり、R33は分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよい炭素原子数1〜20のアルキル基である化合物;下記一般式(2)で表される化合物は、特に感度が高く、また製造が容易であるので好ましい。
【0023】
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4、X及びaは上記一般式(1)と同じであり、R5は上記一般式(1)におけるR4と同じであり、少なくともR5は−CR21=CR2223、−CO−CR21=CR2223、−O−CO−CR21=CR2223、−N=C=O及びエポキシ基から選ばれる構造を少なくとも一つ有する基であり、cは0〜4の整数を表す。)
【0024】
上記一般式(2)で表される化合物の中でも、R5が、−CR21=CR2223、−CO−CR21=CR2223又は−O−CO−CR21=CR2223を有する化合物は、反応性が高く、不飽和二重結合を有する樹脂組成物と組み合わせることで高い耐熱性を発現するため更に好ましく、また、R5が−N=C=O又はエポキシ基を有する化合物は、アルコール、アミン、アミドなどの活性水素を有する樹脂と組み合わせることで高い耐熱性を発現するため同様に更に好ましい。
【0025】
また、本発明の効果をより高く奏させる上で、上記一般式(1)及び(2)中のR1及びR2は、炭素原子数1〜20(特に炭素原子数1〜10、とりわけ炭素原子数1〜4)のアルキル基であることが好ましく、上記一般式(1)及び(2)中のaは0〜1であることが好ましく、上記一般式(1)中のbは1〜2であることが好ましく、上記一般式(2)中のcは0〜1であることが好ましい。
【0026】
本発明の効果を更に高く奏させる上で、上記R3は水素原子であることが好ましい。同様の理由で、上記Xは硫黄原子であることが好ましい。同様の理由で、上記R4は、OR11又はCOOR11であり、且つ該R11が炭素原子数1〜20、特に炭素原子数1〜10、とりわけ炭素原子数1〜6のアルキル基であり、該R11が有する水素原子のうちの少なくとも一つが−OCO−CR21=CR2223に置換されており、該−OCO−CR21=CR2223において、R21が水素原子又はメチル基であり、R22及びR23は水素原子であることが好ましい。この場合において、−OCO−CR21=CR2223は、OR11のR11が有する水素原子を置換している場合には該OR11の酸素原子から最も遠い位置にある炭素原子に結合していることが好ましく、COOR11のR11が有する水素原子を置換している場合には、該COOR11のCOO基から最も遠い位置にある炭素原子に結合していることが好ましい。また、bが1であり、R4は、Xが結合している炭素原子に対してパラ位に結合していることが好ましい。
【0027】
上記一般式(1)で表される本発明のオキシムエステル化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物No.1〜No.39の化合物が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により何等制限を受けるものではない。
【0028】
【化3-1】
【0029】
【化3-2】
【0030】
【化3-3】
【0031】
【化3-4】
【0032】
【化3-5】
【0033】
上記一般式(1)で表される本発明のオキシムエステル化合物は、特に限定されないが、例えば、特開2000−80068号公報に記載の方法に準じて製造できる。方法の一つとして、下記反応式1に従って、以下の方法により製造することができる。まず、ケトン体をルイス酸存在下で(メタ)アクリル酸と反応させることにより、(メタ)アクリレート体を得る。次に、該(メタ)アクリレート体と亜硝酸エステルを塩酸存在下で反応させ、続いて酸無水物又は酸クロリドと反応させて、上記一般式(1)で表される本発明のオキシムエステル化合物を得る。下記反応式1にはXが硫黄原子の場合を記載しているが、Xが酸素原子、セレン原子、CR3132、NR33又はPR34であるものも、上記の方法に準じて製造することができる。
【0034】
【化4】
【0035】
以上説明した本発明の新規オキシムエステル化合物は、光重合開始剤として有用である。
【0036】
本発明の光重合開始剤は、本発明のオキシムエステル化合物を少なくとも一種含有するものであり、特にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の光重合開始剤として有用なものである。本発明の光重合開始剤中における本発明のオキシムエステル化合物の含有量は、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。本発明の光重合開始剤は、本発明のオキシムエステル化合物の他に、他の光重合開始剤を含有してもよい。他の光重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4'−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4'−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4'−イソプロ ピル)ベンゾイルプロパン、4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7−ビス(9'−アクリジニル)ヘプタン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2'−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1−2’−ビイミダゾール、4、4−アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、N−1414、N−1717、N−1919、PZ−408、NCI−831、NCI−930((株)ADEKA社製)、IRGACURE369、IRGACURE907、IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02(BASF社製)、過酸化ベンゾイル、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物等が挙げられる。これらの本発明のオキシムエステル化合物以外の光重合開始剤を使用する場合、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
【化5】
(式中、R1、R2及びR33は、上記一般式(1)と同じであり、Y3は、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、nは0〜5である。)
【0038】
【化6】
(式中、R1、R2及びR33は、上記一般式(1)と同じであり、Y3及びnは上記一般式 (4)と同じであり、R’1及びR’2は、R1及びR2と同じであり、R’33はR33と同じであり、Y’3はY3と同じであり、R8はジオール残基又はジチオール残基を表し、Z5は酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0039】
【化7】
(式中、R1、R2及びR33は、上記一般式(1)と同じであり、Y3及びnは、上記一般式(4)と同じであり、Z6は酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、Aは複素環基を表し、tは0〜5の整数であり、uは0又は1である。)
【0040】
次に、本発明の感光性組成物について詳細に説明する。
本発明の感光性組成物は、必須成分として、(A)本発明の光重合開始剤及び(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有し、任意成分として、(C)無機化合物、(D)色材、溶媒等の成分を組み合わせて含有するものである。
【0041】
本発明の感光性組成物において、(A)本発明の光重合開始剤の含有量は特に限定されるものではないが、本発明の感光性組成物中における本発明のオキシムエステル化合物の含有量が、(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して、好ましくは1〜70質量部、より好ましくは1〜50質量部、最も好ましくは5〜30質量部となるようにする。
【0042】
上記(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、特に限定されず、従来、感光性組成物に用いられているものを用いることができるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等の不飽和脂肪族炭化水素;(メタ)アクリル酸、α―クロルアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、桂皮酸、ソルビン酸、メサコン酸、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレート或いは1個のカルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート等の不飽和多塩基酸;(メタ) アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、下記化合物No.A1〜No.A4、(メタ)アクリル酸メチル、 (メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリ(エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリ[(メタ)アクリロイルエチル]イソシアヌレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の不飽和一塩基酸及び多価アルコール又は多価フェノールのエステル;(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウム等の不飽和多塩基酸の金属塩;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、無水メチルハイミック酸等の不飽和多塩基酸の酸無水物;(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、α−クロロアクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和一塩基酸及び多価アミンのアミド;アクロレイン等の不飽和アルデヒド;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン、シアン化アリル等の不飽和ニトリル;スチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニル安息香酸、ビニルフェノール、ビニルスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルベンジルグリシジルエーテル等の不飽和芳香族化合物;メチルビニルケトン等の不飽和ケトン;ビニルアミン、アリルアミン、N−ビニルピロリドン、ビニルピペリジン等の不飽和アミン化合物;アリルアルコール、クロチルアルコール等のビニルアルコール;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のビニルエーテル;マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類;インデン、1−メチルインデン等のインデン類;1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン類;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ジビニルスクシナート、ジアリルフタラート、トリアリルホスファート、トリアリルイソシアヌラート、ビニルチオエーテル、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、水酸基含有ビニルモノマー及びポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物、水酸基含有ビニルモノマー及びポリエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物が挙げられる。
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
また、(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、アクリル酸エステルの共重合体や、フェノール及び/又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂、多官能エポキシ基を有するポリフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、下記一般式(3)で表されるエポキシ化合物等のエポキシ化合物に、不飽和一塩基酸を作用させ、更に多塩基酸無水物を作用させて得られた樹脂を用いることもできる。これらの中でも、下記一般式(3)で表されるエポキシ化合物等のエポキシ化合物に、不飽和一塩基酸を作用させ、更に多塩基酸無水物を作用させて得られた樹脂が好ましい。また、これらの化合物は、不飽和基を0.2〜1.0当量含有していることが好ましい。
【0048】
【化12】
(式中、X1は直接結合、メチレン基、炭素原子数1〜4のアルキリデン基、炭素原子数3〜20の脂環式炭化水素基、O、S、SO2、SS、SO、CO、OCO又は下記式( イ)、(ロ)若しくは(ハ)で表される置換基を表し、上記アルキリデン基はハロゲン原子で置換されていてもよく、R51、R52、R53及びR54は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、上記アルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基はハロゲン原子で置換されていてもよく、mは0〜10の整数であり、mが0で無いときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
【0049】
【化13】
(式中、Z3は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基若しくは炭素原子数1〜10 のアルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、又は炭素原子数1〜10のアルキル基若しくは炭素原子数1〜10のアルコキシ基により置換されていてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基を示し、Y1は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又はハロゲン原子を示し、上記アルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基はハロゲン原子で置換されていてもよく、dは0〜5の整数である。)
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
(式中、Y2及びZ4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基、又はハロゲン原子を表し、上記アルキル基及びアリールアルキル基中のアルキレン部分は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、Z4は、隣接するZ4同士で環を形成していてもよく、pは0〜4の整数を表し、qは0〜8の整数を表し、rは0〜4の整数を表し、sは0〜4の整数を表し、rとsの数の合計は2〜4の整数である。)
【0052】
上記エポキシ化合物に作用させる上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート・マレート、ヒドロキシエチルアクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルアクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレート等が挙げられる。
【0053】
また、上記不飽和一塩基酸を作用させた後に作用させる上記多塩基酸無水物としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、ビフタル酸無水物、無水マレイン酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、2,2’−3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、無水メチルハイミック酸等が挙げられる。
【0054】
上記エポキシ化合物、上記不飽和一塩基酸及び上記多塩基酸無水物の反応モル比は、以下の通りとすることが好ましい。
即ち、上記エポキシ化合物のエポキシ基1個に対し、上記不飽和一塩基酸のカルボキシル基が0.1〜1.0個で付加させた構造を有するエポキシ付加物において、該エポキシ付加物の水酸基1個に対し、上記多塩基酸無水物の酸無水物構造が0.1〜1.0個となる比率となるようにするのが好ましい。
上記エポキシ化合物、上記不飽和一塩基酸および上記多塩基酸無水物の反応は、常法に従って行なうことができる。
【0055】
上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の中でも、酸価を有する化合物を用いた場合、本発明の感光性組成物にアルカリ現像性を付与することができる。上記酸価を有する化合物を用いる場合、その使用量は(B)成分中で50〜99質量%となるようにすることが好ましい。
また、上記酸価を有する化合物は、更に単官能又は多官能エポキシ化合物を反応させることにより酸価調整してから用いることもできる。上記酸価を有する化合物の酸価を調整することにより、感光性樹脂のアルカリ現像性を改良することができる。上記酸価を有する化合物(即ちアルカリ現像性を付与するエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物)は、固形分の酸価が5〜120mgKOH/gの範囲であることが好ましく、単官能又は多官能エポキシ化合物の使用量は、上記酸価を満たすように選択するのが好ましい。
【0056】
上記単官能エポキシ化合物としては、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、プロパルギルグリシジルエーテル、p−メトキシエチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−メトキシグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、2−メチルクレジルグリシジルエーテル、4−ノニルフェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、p−クミルフェニルグリシジルエーテル、トリチルグリシジルエーテル、2,3−エポキシプロピルメタクリレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、グリシジルブチレート、ビニルシクロヘキサンモノオキシド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、スチレンオキシド、ピネンオキシド、メチルスチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、プロピレンオキシド、下記化合物No.E1、No.E2等が挙げられる。
【0057】
【化16】
【0058】
【化17】
【0059】
上記多官能エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物及びグリシジルエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を用いると、特性の一層良好な(着色)アルカリ現像性感光性樹脂組成物を得ることができるので好ましい。
上記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、上記一般式(3)で表されるエポキシ化合物を用いることができる他、例えば、水添ビスフェノール型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物も用いることができる。
また上記グリシジルエーテル類としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)プロパン、1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)エタン、1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)メタン、1,1,1,1−テトラ(グリシジルオキシメチル)メタン等を用いることができる。
その他、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物;3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ化合物;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルP−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン類;1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ化合物;ジシクロペンタジエンジオキシド等のジオキシド化合物;ナフタレン型エポキシ化合物;トリフェニルメタン型エポキシ化合物;ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物等を用いることもできる。
【0060】
本発明の感光性組成物に含有させることができる上記(C)無機化合物としては、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、シリカ、アルミナ等の金属酸化物;層状粘土鉱物、ミロリブルー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、コバルト系、マンガン系、ガラス粉末(特にガラスフリット)、マイカ、タルク、カオリン、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、水酸化アルミニウム、白金、金、銀、銅等が挙げられる。
これらの中でも、ガラスフリット、酸化チタン、シリカ、層状粘土鉱物、銀等が好ましい。本発明の感光性組成物において、(C)無機化合物の含有量は、(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜1000質量部、より好ましくは10〜800質量部である。尚、これらの無機化合物は1種又は2種以上を使用することができる。
【0061】
これらの無機化合物は、例えば、充填剤、反射防止剤、導電剤、安定剤、難燃剤、機械的強度向上剤、特殊波長吸収剤、撥インク剤等として用いられる。
【0062】
また、本発明の感光性組成物に含有させることができる上記(D)色材としては、顔料、染料、天然色素等が挙げられる。これらの色材は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0063】
上記顔料としては、例えば、ニトロソ化合物;ニトロ化合物;アゾ化合物;ジアゾ化合物;キサンテン化合物;キノリン化合物;アントラキノン化合物;クマリン化合物;フタロシアニン化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;キナクリドン化合物;アンタンスロン化合物;ペリノン化合物;ペリレン化合物;ジケトピロロピロール化合物;チオインジゴ化合物;ジオキサジン化合物;トリフェニルメタン化合物;キノフタロン化合物;ナフタレンテトラカルボン酸;アゾ染料、シアニン染料の金属錯体化合物;レーキ顔料;ファーネス法、チャンネル法又はサーマル法によって得られるカーボンブラック、或いはアセチレンブラック、ケッチェンブラック又はランプブラック等のカーボンブラック;上記カーボンブラックをエポキシ樹脂で調整又は被覆したもの、上記カーボンブラックを予め溶媒中で樹脂で分散処理し、20〜200mg/gの樹脂を吸着させたもの、上記カーボンブラックを酸性又はアルカリ性表面処理したもの、平均粒径が8nm以上でDBP吸油量が90ml/100g以下のカーボンブラック、950℃における揮発分中のCO及びCO2から算出した全酸素量が、表面積100m2当たり9mg以上であるカーボンブラック;黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル、フラーレン;アニリンブラック、ピグメントブラック7、チタンブラック;酸化クロム緑、ミロリブルー、コバルト緑、コバルト青、マンガン系、フェロシアン化物、リン酸塩群青、紺青、ウルトラマリン、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、合成鉄黒、アンバー等の有機又は無機顔料を用いることができる。これらの顔料は単独で、或いは複数を混合して用いることができる。
【0064】
上記顔料としては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185;ピグメントグリ−ン7、10、36;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62、64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、50等が挙げられる。
【0065】
上記染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料スチルベン染料、チアゾール染料、ナフトール染料、キノリン染料、ニトロ染料、インダミン染料、オキサジン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料等の染料等が挙げられ、これらは複数を混合して用いてもよい。
【0066】
本発明の感光性組成物において(D)色材を含有させる場合、その含有量は、(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して、好ましくは50〜350質量部、より好ましくは100〜250質量部である。
【0067】
また、本発明の感光性組成物は、エチレン性不飽和結合を有さず、アルカリ現像性を付与する化合物を含有してもよく、そのような化合物としては、酸価を有することでアルカリ水溶液に可溶な化合物であれば特に限定されないが、代表的なものとしてアルカリ可溶性ノボラック樹脂(以下、単に「ノボラック樹脂」という)が挙げられる。ノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に重縮合して得られる。
【0068】
上記フェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p −クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、ピロガロール、α−ナフトール、ビスフェノールA、ジヒドロキシ安息香酸エステル、没食子酸エステル等が用いられ、これらのフェノール類のうちフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノールおよびビスフェノールAが好ましい。これらのフェノール類は、単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0069】
上記アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド等が用いられ、これらの化合物のうちホルムアルデヒド、アセトアルデヒドおよびベンズアルデヒドが好ましい。これらのアルデヒド類は、単独でまたは2種以上混合して用いられる。アルデヒド類はフェノール類1モル当たり、好ましくは0.7〜3モル、特に好ましくは0.7〜2モルの割合で使用される。
【0070】
上記酸触媒としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、または蟻酸、蓚酸、酢酸等の有機酸が用いられる。これらの酸触媒の使用量は、フェノール類1モル当たり、1×10-4〜5×10-1モルが好ましい。縮合反応においては、通常、反応媒質として水が用いられるが、縮合反応に用いられるフェノール類がアルデヒド類の水溶液に溶解せず、反応初期から不均一系になる場合には、反応媒質として親水性溶媒を使用することもできる。これらの親水性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、またはテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が挙げられる。これらの反応媒質の使用量は、通常、反応原料100質量部当たり、20〜1000質量部である。縮合反応の反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜調整することができるが、通常、10〜200℃、好ましくは70〜150℃である。縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、酸触媒および反応媒質を除去するため、一般的には内温を130〜230℃に上昇させ、減圧下に揮撥分を留去し、次いで熔融したノボラック樹脂をスチール製ベルト等の上に流涎して回収する。
また縮合反応終了後に、前記親水性溶媒に反応混合物を溶解し、水、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の沈殿剤に添加することにより、ノボラック樹脂を析出させ、析出物を分離し、加熱乾燥することにより回収することもできる。
【0071】
上記ノボラック樹脂以外の例としては、ポリヒドロキシスチレンまたはその誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0072】
本発明の感光性組成物には、必要に応じて更に溶媒を加えることができる。該溶媒としては、通常、前記の各成分((A)本発明の光重合開始剤及び(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物等)を溶解又は分散しえる溶媒、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン 、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ−又はn−プロパノール、イソ−又はn−ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート等のエーテルエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒;アニリン;トリエチルアミン;ピリジン;酢酸;アセトニトリル;二硫化炭素;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;N−メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;水等を用いることができ、これらの溶媒は1種で又は2種以上の混合溶媒として使用することができる。
これらの中でも、ケトン類、エーテルエステル系溶媒等、特にプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、シクロヘキサノン等が、感光性組成物において、レジストと光重合開始剤との相溶性がよくなるので好ましい。
本発明の感光性組成物において、溶媒の含有量は、特に制限されず、各成分が均一に分散又は溶解され、また本発明の感光性組成物が各用途に適した液状ないしペースト状を呈する量であればよいが、通常、本発明の感光性組成物中の固形分(溶媒以外の全成分)の量が10〜50質量%となる範囲で溶媒を含有させることが好ましい。
【0073】
本発明の感光性組成物には、(C)無機化合物及び/又は(D)色材を分散させる分散剤を加えることができる。該分散剤としては、(C)無機化合物又は(D)色材を分散、安定化できるものであれば制限されず、市販の分散剤、例えば、ビックケミー社製のBYKシリーズ等を用いることができる。特に、塩基性官能基を有するポリエステル、ポリエーテル、又はポリウレタンからなる高分子分散剤、塩基性官能基として窒素原子を有し、窒素原子を有する官能基がアミン及び/又はその四級塩であり、アミン価が1〜100m gKOH/gのものが好適に用いられる。
【0074】
また、本発明の感光性組成物には、(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と共に、他の有機重合体を用いることによって、硬化物の特性を改善することもできる。該有機重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ウレタン樹脂、ポリカーボネートポリビニルブチラール、セルロースエステル、ポリアクリルアミド、飽和ポリエステル、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中でも、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸−メチルメタクリレート共重合体、エポキシ樹脂が好ましい。
他の有機重合体を使用する場合、その使用量は、(B)エチレン性不飽和結合を有する上記重合性化合物100質量部に対して、好ましくは10〜500質量部である。
【0075】
本発明の感光性組成物には、更に、連鎖移動剤、増感剤、界面活性剤、シランカプリング剤、メラミン化合物等を併用することができる。
【0076】
上記連鎖移動剤又は増感剤としては、一般的に硫黄原子含有化合物が用いられる。例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−[N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3−[N−(2−メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、ドデシル(4−メチルチオ)フェニルエーテル、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、2−メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプト化合物、該メルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2−ヨードエタノール、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸等のヨード化アルキル化合物、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、下記化合物No.C1、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の脂肪族多官能チオール化合物、昭和電工社製カレンズMT BD1、PE1、NR1等が挙げられる。
【0077】
【化18】
【0078】
上記界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素界面活性剤;高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤;高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤;両性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができ、これらは組み合わせて用いてもよい。
【0079】
上記シランカップリング剤としては、例えば信越化学社製シランカップリング剤を用いることができ、その中でも、KBE−9007、KBM−502、KBE−403等の、イソシアネート基、メタクリロイル基又はエポキシ基を有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
【0080】
上記メラミン化合物としては、(ポリ)メチロールメラミン、(ポリ)メチロールグリコールウリル、(ポリ)メチロールベンゾグアナミン、(ポリ)メチロールウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CH2OH基)の全部又は一部(少なくとも2つ)がアルキルエーテル化された化合物等を挙げることができる。
ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基が挙げられ、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果オリゴマー成分が形成されていてもよい。
具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等を用いることができる。
これらの中でも、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン等のアルキルエーテル化されたメラミンが好ましい。
【0081】
また、本発明の感光性組成物には、必要に応じて、p−アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合抑制剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤;消泡剤;レベリング剤;表面調整剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;分散助剤;凝集防止剤;触媒;効果促進剤;架橋剤;増粘剤等の慣用の添加物を加えることができる。
【0082】
本発明の感光性組成物において、(A)本発明の光重合開始剤及び(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物以外の任意成分(但し、(C)無機化合物、(D)色材、及び溶媒は除く)の使用量は、その使用目的に応じて適宜選択され特に制限されないが、好ましくは、(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して合計で50質量部以下とする。
【0083】
本発明の感光性組成物は、エネルギー線を照射して硬化物とすることができる。該硬化物は、用途に応じた適宜な形状として形成される。例えば膜状の硬化物を形成する場合には、本発明の感光性組成物は、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用することができる。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0084】
本発明の感光性組成物を硬化させる際に用いられるエネルギー線の光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストロームから7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができるが、好ましくは、波長300〜450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯等が用いられる。
【0085】
更に、露光光源にレーザー光を用いることにより、マスクを用いずに、コンピューター等のデジタル情報から直接画像を形成するレーザー直接描画法が、生産性のみならず、解 像性や位置精度等の向上も図れることから有用であり、そのレーザー光としては、340〜430nmの波長の光が好適に使用されるが、エキシマーレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー及びYAGレーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いることができる。これらのレーザー光を使用する場合には、好ましくは、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素が加えられる。
【0086】
本発明の感光性組成物は、光硬化性塗料又はワニス;光硬化性接着剤;プリント基板;カラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、デジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示素子におけるカラーフィルタ;CCDイメージセンサのカラーフィルタ;プラズマ表示パネル用の電極材料;粉末コーティング;印刷インク;印刷版;接着剤;歯科用組成物;ゲルコート;電子工学用のフォトレジスト;電気メッキレジスト;エッチングレジスト;ドライフィルム;はんだレジスト;種々の表示用途用のカラーフィルタを製造するための或いはプラズマ表示パネル、電気発光表示装置、及びLCDの製造工程においてそれらの構造を形成するためのレジスト;電気及び電子部品を封入するための組成物;ソルダーレジスト;磁気記録材料;微小機械部品;導波路;光スイッチ;めっき用マスク;エッチングマスク;カラー試験系;ガラス繊維ケーブルコーティング;スクリーン印刷用ステンシル;ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料;ホログラフィ記録用材料;画像記録材料;微細電子回路;脱色材料;画像記録材料のための脱色材料;マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料;印刷配線板用フォトレジスト材料;UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料;プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料又は保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
【0087】
本発明の感光性組成物は、液晶表示パネル用スペーサーを形成する目的及び垂直配向型液晶表示素子用突起を形成する目的で使用することもできる。特に垂直配向型液晶表示素子用の突起とスペーサーを同時に形成するための感光性組成物として有用である。
【0088】
上記の液晶表示パネル用スペーサーは、(1)本発明の感光性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、(2)該塗膜に所定のパターン形状を有するマスクを介してエネルギー線(光)を照射する工程、(3)露光後のベーク工程、(4)露光後の被膜を現像する工程、(5)現像後の該被膜を加熱する工程により好ましく形成される。
【0089】
(D)色材を添加した本発明の感光性組成物は、カラーフィルタにおけるRGB等の各画素を構成するレジストや、各画素の隔壁を形成するブラックマトリクス用レジストとして好適に用いられる。更に、撥インク剤を添加するブラックマトリクス用レジストの場合、プロファイル角が50°以上であるインクジェット方式カラーフィルタ用隔壁に好ましく用いられる。該撥インク剤としては、フッ素系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有する組成物が好適に用いられる。
【0090】
上記インクジェット方式カラーフィルタ用隔壁に用いた場合、本発明の感光性組成物から形成された隔壁が被転写体上を区画し、区画された被転写体上の凹部にインクジェット法により液滴を付与して画像領域を形成する方法により光学素子が製造される。この際、上記液滴が着色剤を含有し、上記画像領域が着色されていることが好ましく、その場合には、上記の製造方法により作製された光学素子は、基板上に複数の着色領域からなる画素群と該画素群の各着色領域を離隔する隔壁を少なくとも有するものとなる。
【0091】
本発明の感光性組成物は、保護膜又は絶縁膜用組成物としても用いることができる。この場合、紫外線吸収剤、アルキル化変性メラミン及び/又はアクリル変性メラミン、分子中にアルコール性水酸基を含有する1又は2官能の(メタ)アクリレートモノマー及び/ 又はシリカゾルを含有することができる。
【0092】
上記保護膜、絶縁膜用の感光性組成物としては、
(A)本発明の光重合開始剤、
(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(重量平均分子量が2,000〜40,000、酸価が50〜200mgKOH/gであるカルボキシル基含有の重合性化合物を含むことが好ましい)、及び
(X)エポキシ化合物
を主成分とする樹脂組成物であって、
(B)成分100重量部に対して、(A)成分が本発明のオキシムエステル化合物量に換算して0.01〜2.0重量部であり、(X)成分が10〜40重量部であるものが好ましい。
【0093】
上記絶縁膜は、剥離可能な支持基材上に絶縁樹脂層が設けられた積層体における該絶縁樹脂層に用いられ、該積層体は、アルカリ水溶液による現像が可能なものであり、絶縁樹脂層の膜厚が10〜100μmであることが好ましい。
【0094】
本発明の感光性組成物は、(C)無機化合物を含有させることで、感光性ペースト組成物として用いることができる。該感光性ペースト組成物は、プラズマディスプレイパネルの隔壁パターン、誘電体パターン、電極パターン及びブラックマトリックスパターン等の焼成物パターンを形成するために用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0096】
〔実施例1〕化合物No.1の製造
<ステップ1>メタクリレート化
1−(4−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニルチオ)フェニル)プロパン−1−オン(以下、ケトン体aともいう)19.8g(65mmol)、メタクリル酸56.2g(653mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物5.0g(26mmol)、BHT1.2g(5.6mmol)及びジクロロエタン121gを含む溶液を10.5時間攪拌還流した。冷却後、酢酸エチルと水を加え油水分離した。有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順序で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、脱溶媒し下記メタクリレート体aを26.3g得た。
【0097】
【化19】
【0098】
<ステップ2>オキシム化
ステップ1で得られたメタクリレート体aの26.0g(70mmol)、濃塩酸7.3g(70mmol)及びジメチルホルムアミド70gを含む溶液を5℃に冷却し、亜硝酸イソブチル10.8g(105mmol)を加え室温で3時間攪拌した。酢酸エチルと水を加え油水分離し、有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順序で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、脱溶媒し、下記オキシム体aを23.8g得た。
【0099】
【化20】
【0100】
<ステップ3>オキシムエステル化
ステップ2で得られたオキシム体aの23.8g(60mmol)、無水酢酸9.1g(90mmol)及び酢酸エチル79gを含む溶液を70℃で4時間攪拌した。冷却後、水を加え油水分離した。有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順序で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、脱溶媒した。得られた粗生成物27.2gをカラムクロマトグラムにより精製し化合物No.1を2.3g得た。得られた化合物が目的物であることは、分析により確認した。分析結果を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
【0101】
〔実施例2〜4〕化合物No.2、化合物No.3、化合物No.4の製造
ケトン体aに代えて対応するケトン体を用い(且つ化合物No.3については、メタクリル酸に代えてアクリル酸を用い)た以外は、実施例1に記載した方法に従って、化合物No.2、化合物No.3及び化合物No.4をそれぞれ製造した。分析結果を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
〔実施例5〕アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1の製造
<ステップ1>アルカリ現像性樹脂〔アルカリ現像性を付与する(B)成分〕の調製
反応容器に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量231、前記一般式(3)で表されるエポキシ化合物)184g、アクリル酸58g、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.26g、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド0.11g及びプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート23gを仕込み、120℃で16時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート35g、ビフタル酸無水物59g及びテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド0.24gを加えて、120℃で4時間攪拌した。更に、テトラヒドロ無水フタル酸20gを加え、120℃で4時間、100℃で3時間、80℃で4時間、60℃で6時間、40℃で11時間攪拌した後、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート90gを加えて、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート溶液として目的物のアルカリ現像性樹脂No.1を得た(Mw=5000、Mn=2100、酸価(固形分)92.7mgKOH/g)。
【0106】
<ステップ2>アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1の調製
アルカリ現像性を付与する(B)成分として<ステップ1>で得られたアルカリ現像性樹脂No.1の14.7g、(B)成分としてジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(アロニックスM−402;東亜合成(株)製)3.0g、界面活性剤FZ−2122(日本ユニカー(株)製)のシクロヘキサノン1%溶液1.8g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート10.0g、並びにシクロヘキサノン20.2gを混合し、(A)成分として実施例1で得られた化合物No.1の0.3gを添加してよく攪拌し、本発明の感光性組成物であるアルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1を得た。
【0107】
〔実施例6〕アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.2の製造
実施例1で得られた化合物No.1を実施例2で得られた化合物No.2に替えた以外は、実施例5の<ステップ2>と同様の手法で、本発明の感光性組成物であるアルカリ現像性感光性樹脂組成物No.2を得た。
【0108】
〔実施例7〕アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.3の製造
実施例1で得られた化合物No.1を実施例3で得られた化合物No.3に替えた以外は、実施例5の<ステップ2>と同様の手法で、本発明の感光性組成物であるアルカリ現像性感光性樹脂組成物No.3を得た。
【0109】
〔比較例1〕アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.4の製造
実施例1で得られた化合物No.1を2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノンに替えた以外は、実施例5の<ステップ2>と同様の手法で、比較品であるアルカリ現像性感光性樹脂組成物No.4を得た。
【0110】
〔比較例2〕アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.5の製造
実施例1で得られた化合物No.1をエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)に替えた以外は、実施例5の<ステップ2>と同様の手法で、比較品であるアルカリ現像性感光性樹脂組成物No.5を得た。
【0111】
<透過性>
得られたアルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1〜No.5の透過性試験を以下のようにして行った。
即ち、ガラス基板上にアルカリ現像性感光性樹脂組成物をスピンコート(500rpmで2秒間、800rpmで6秒間)し、ホットプレートを用いて90℃で90秒間プリベークを行った。次いで、光源として高圧水銀ランプを用いて150mJ/cm2露光した後、オーブンを用いて230℃で30分間ポストベークを行って硬化膜を得た。得られた硬化膜について、吸光光度計を用いて380nmにおける透過率を測定した。結果を〔表4〕に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
表4に記載の通り、本発明のオキシムエステル化合物を光重合開始剤として用いた本発明の感光性組成物は、比較化合物を用いた比較例1及び2の感光性組成物に比べて、透過率が高い。
【0114】
〔実施例8〕導電性組成物No.1の製造
アルカリ現像性を付与する(B)成分として実施例5の<ステップ1>で得られたアルカリ現像性樹脂No.1の14.1g、(B)成分としてジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(アロニックスM−402;東亜合成(株)製)7.1g、界面活性剤BYK−323(ビックケミー・ジャパン(株)製)0.05g、テキサノール(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)11.3g、(A)成分として実施例1で得られた化合物No.1の0.7g、並びに(C)成分としてガラスフリット3.1g及び銀粉63.7gを混合して攪拌後、3本ロールミルにて混練し、本発明の感光性組成物である導電性組成物No.1を得た。
【0115】
〔実施例9〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1の製造
<ステップ1>青色分散液の製造
青色顔料ピグメントブルー15:6の57.6g、分散剤アジスパーPB821(味の素ファインテクノ(株)製)20.0g、分散助剤ソルスパース5000(アビシア(株)製)2.4g、及びプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート320.0gを、500mlポリエチレン製容器に入れ、粒子径0.5mmのジルコニアビーズ350gを使用して、ペイントコンディショナーで10時間振とう後、ジルコニアビーズをろ別して青色分散液を得た。
【0116】
<ステップ2>着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1の製造
(D)成分として<ステップ1>で得られた青色分散液の10.63g、アルカリ現像性を付与する(B)成分として実施例5の<ステップ1>で得られたアルカリ現像性樹脂No.1の2.98g、(B)成分としてジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(アロニックスM−402;東亜合成(株)製)0.31g、(B)成分としてウレタンアクリレートUN3320HS(根上工業(株)製)0.31g、界面活性剤BYK−323(ビックケミー・ジャパン(株)製)のシクロヘキサノン1%溶液0.30g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート4.70g、並びにシクロヘキサノン10.36gを混合し、(A)成分として実施例1で得られた化合物No.1の0.41gを添加して攪拌し、本発明の感光性組成物である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1を得た。
【0117】
〔比較例3〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.2の製造
実施例1で得られた化合物No.1をエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチル ベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)に替えた以外は実施例9の<ステップ2>と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.2を得た。
【0118】
〔比較例4〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.3の製造
実施例1で得られた化合物No.1を2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンに替えた以外は実施例9の<ステップ2>と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.3を得た。
【0119】
〔比較例5〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.4の製造
実施例1で得られた化合物No.1を1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)に替えた以外は実施例9の<ステップ2>と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.4を得た。
【0120】
〔比較例6〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.5の製造
実施例1で得られた化合物No.1を2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノンに替えた以外は実施例9の<ステップ2>と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.5を得た。
【0121】
<透過性>
得られた着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1〜No.3の透過性試験を以下のようにして行った。
ガラス基板上に着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物をスピンコート(500rpm、7秒間)し、ホットプレートを用いて90℃で90秒間プリベークを行った。次いで、光源として高圧水銀ランプを用いて150mJ/cm2露光した後、オーブンを用いて230℃で30分間ポストベークを行って硬化膜を得た。耐熱性試験として、得られた硬化膜を更に260℃で1時間加熱した。耐熱性試験後の硬化膜について、吸光光度計を用いて 420nmにおける透過率を測定した。結果を〔表5〕に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
表5に記載の通り、本発明のオキシムエステル化合物を光重合開始剤として用いた本発明の着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物は、比較化合物を用いた比較例3及び4の着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物に比べて、透過率が高い。
【0124】
<アウトガス性>
得られた着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.1、No.3〜No.5のアウトガス性試験として、以下のようにして硬化物の重量減少率の測定を行った。
即ち、ガラス基板上に着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物をスピンコート(500rpm、7秒間)し、ホットプレートを用いて90℃で90秒間プリベークを行った。次いで、光源として高圧水銀ランプを用いて100mJ/cm2露光して硬化膜を得た。この硬化膜を約3mg削り取り、削り取った硬化膜を試料として用い、TG−DTA(セイコーインスツル(株)製)により、230℃で30分間保持した時の重量減少率を測定した。結果を〔表6〕に示す。
【0125】
【表6】
【0126】
表6から、本発明のオキシムエステル化合物を光重合開始剤として用いた本発明の感光性組成物である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物は、比較化合物を用いた比較例4〜6の着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物に比べて、耐熱性に優れ、アウトガスが少ないことが明らかである。尚、この結果から、光重合開始剤としての本発明のオキシムエステル化合物は樹脂成分と反応し、それによって、本発明のオキシムエステル化合物及び/又は樹脂成分の昇華性が低くなったと推察される。
【0127】
〔実施例10〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.6の製造
(D)成分として実施例9の<ステップ1>で得られた青色分散液の10.63g、アルカリ現像性を付与する(B)成分として実施例5の<ステップ1>で得られたアルカリ現像性樹脂No.1の2.93g、(B)成分としてジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(アロニックスM−402;東亞合成(株)製)0.30g、(B)成分としてウレタンアクリレートUN3320HS(根上工業(株)製)0.30g、増感剤DETX−S(日本化薬(株)製)0.05g、界面活性剤BYK−323(ビック ケミー・ジャパン(株)製)のシクロヘキサノン1%溶液0.30g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート4.72g、並びにシクロヘキサノン10.36gを混合し、(A)成分として実施例1で得られた化合物No.1の0.41gを添加してよく攪拌し、本発明の感光性組成物である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.6を得た。
【0128】
〔比較例7〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.7の製造
実施例1で得られた化合物No.1をエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)に替えた以外は実施例10と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.7を得た。
【0129】
〔比較例8〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.8の製造
実施例1で得られた化合物No.1を2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンに替えた以外は実施例10と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.8を得た。
【0130】
〔比較例9〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.9の製造
実施例1で得られた化合物No.1を1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)に替えた以外は実施例10と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.9を得た。
【0131】
〔比較例10〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.10の製造
実施例1で得られた化合物No.1を2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノンに替えた以外は実施例10と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.10を得た。
【0132】
<フォトリソグラフィー性>
得られた着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.6〜10のフォトリソグラフィー性の評価として、以下の手順における感度、密着性及び残渣について、それぞれ以下の方法により評価を行った。結果を〔表7〕に示す。
ガラス基板上に着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物をスピンコート(500rpm、7秒間)し、ホットプレートを用いて90℃で90秒間プリベークを行った。次いで、光源として高圧水銀ランプを用いてマスクを介して所定量(50、100又は150mJ/cm2)露光した。現像液として2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スピン現像機で45秒間現像後、よく水洗し、次いでオーブンを用いて230℃で30分ポストベークを行い、パターンを定着させた。
【0133】
(感度)
着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物の感度を、次の4段階で評価した。
即ち、形成されたパターンの線幅が、マスク開口線幅を超えた時の露光量が50mJ/cm2であった場合をa、100mJ/cm2であった場合をb、150mJ/cm2であった場合をc、150mJ/cm2でもパターンが形成されなかった場合をdとした。
(密着性)
着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物の密着性を、次の4段階で評価した。
即ち、100mJ/cm2で露光、現像した後に残ったパターンの最も細かいマスク線 幅が3μm以下であった場合をA、3μm超10μm以下であった場合をB、10μm超15μm以下であった場合をC、15μm超であった場合をDとした。
(残渣)
現像後、非露光部のガラス面に残渣が全く観察されなかった場合を○、一面に残渣が観察された場合を×とした。
【0134】
【表7】
【0135】
表7より、本発明のオキシムエステル化合物は、比較例7で用いた化合物と比較して、残渣が確認されないため現像性に優れることが分かる。また、本発明のオキシムエステル化合物を用いると、比較例8〜10で用いた化合物と比較して、感度・密着性に優れる。
【0136】
〔実施例11〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.11の製造
(D)成分として実施例9の<ステップ1>におけるピグメントブルー15:6をカーボンブラックに変更して作製したカーボンブラック分散液の7.06g、アルカリ現像性を付与する(B)成分として実施例5の<ステップ1>で得られたアルカリ現像性樹脂No.1の3.07g、(B)成分としてジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(アロニックスM−402;東亜合成(株)製)0.53g、界面活性剤BYK−323(ビックケミー・ジャパン(株)製)のシクロヘキサノン1%溶液0.30g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート8.16g、並びにシクロヘキサノン10.69gを混合し、(A)成分として実施例1で得られた化合物No.1の0.19gを添加してよく攪拌し、本発明の感光性組成物である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.11を得た。
【0137】
〔実施例12〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.12の製造
実施例1で得られた化合物No.1を実施例2で得られた化合物No.2に替えた以外は実施例11と同様の手法で、本発明の感光性組成物である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.12を得た。
【0138】
〔実施例13〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.13の製造
実施例1で得られた化合物No.1を実施例3で得られた化合物No.3に替えた以外は実施例11と同様の手法で、本発明の感光性組成物である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.13を得た。
【0139】
〔比較例11〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.14の製造
実施例1で得られた化合物No.1をエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチル ベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)に替えた以外は実施例11と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.14を得た。
【0140】
〔比較例12〕着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.15の製造
実施例1で得られた化合物No.1を1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(O−ベンゾイルオキシム)に替えた以外は実施例11と同様の手法で、比較品である着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.15を得た。
【0141】
<フォトリソグラフィー性>
得られた着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物No.11〜15のフォトリソグラフィー性の評価として、以下の手順における感度、密着性及び現像性について、それぞれ以下の方法により評価を行った。結果を〔表8〕に示す。
ガラス基板上に着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物をスピンコート(500rpm、7秒間)し、ホットプレートを用いて90℃で90秒間プリベークを行った。次いで、光源として高圧水銀ランプを用いてマスクを介して所定量(100又は120mJ/cm2)露光した。現像液として2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スピン現像機で45秒間現像後、よく水洗し、次いでオーブンを用いて230℃で30分ポストベークを行い、パターンを定着させた。
【0142】
(感度)
着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物の感度を、次の3段階で評価した。
即ち、形成されたパターンの線幅が、マスク開口線幅を超えた時の露光量が100mJ/cm2であった場合をa、120mJ/cm2であった場合をb、120mJ/cm2でもパターンが形成されなかった場合をcとした。
(密着性)
着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物の密着性を、次の4段階で評価した。
即ち、100mJ/cm2で露光、現像した後に残ったパターンの最も細かいマスク線幅が3μm以下であった場合をA、3μm超5μm以下であった場合をB、5μm超であった場合をCとした。
(現像性)
現像後、非露光部のガラス面に残渣が全く観察されなかった場合を○、一面に残渣が観察された場合を×とした。
【0143】
【表8】
【0144】
表8より、本発明のオキシムエステル化合物を用いると、比較例12で用いた化合物と比較して、感度及び密着性が良好であることが分かる。また、感度及び密着性の良好な比較例11と比べ、本発明のオキシムエステル化合物を用いると現像性に優れることが分かる。
【0145】
以上の結果から、以下のことが分かる。
本発明のオキシムエステル化合物を用いると、比較例2、3、7及び11で用いた化合物と比較して、可視光領域の透過性及び現像性に優れる。
また、本発明のオキシムエステル化合物を用いると、比較例4及び8で用いた化合物と比較して、可視光領域の透過性、耐熱性、感度及び密着性に優れる。
また、本発明のオキシムエステル化合物を用いると、比較例5、9及び12で用いた化合物と比較して、耐熱性、感度及び密着性に優れる。
また、本発明のオキシムエステル化合物を用いると、比較例1、6及び10で用いた化合物と比較して、可視光領域の透過性、耐熱性、感度及び密着性に優れる。
【0146】
以上の通り、本発明のオキシムエステル化合物を用いると、可視光領域の透過性が高く、耐熱性に優れ、フォトリソグラフィー性に優れており、本発明のオキシムエステル化合物は光重合開始剤として有用である。