特許第6000963号(P6000963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000963
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】被覆菓子
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/50 20060101AFI20160923BHJP
   A23G 1/00 20060101ALI20160923BHJP
   A23G 1/30 20060101ALI20160923BHJP
   C08L 93/02 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   A23G3/00 109
   A23G1/00
   C08L93/02
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-537569(P2013-537569)
(86)(22)【出願日】2012年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2012075911
(87)【国際公開番号】WO2013051687
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-222287(P2011-222287)
(32)【優先日】2011年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正
(72)【発明者】
【氏名】平岡 真季
(72)【発明者】
【氏名】高井 真子
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 洋之
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−291142(JP,A)
【文献】 Tetrahedron,1974年,vol.30, no.7,pp.867-874
【文献】 コンバーテック,2002年,vol.30, no.11,pp.41-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−3/56
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/
FROSTI/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性菓子含有センターと該センターを被覆するシェラック含有層とを含んでなる被覆菓子であって、シェラック塗布率が0.1〜10重量%であり、該シェラックが、乾燥重量基準で4.0重量%以下のアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルを含んでなる、被覆菓子
【請求項2】
前記センター少なくとも一つの凸部または凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の被覆菓子。
【請求項3】
凸部の高さまたは凹部の深さが0.3〜5mmである、請求項2に記載の被覆菓子。
【請求項4】
シェラック塗布率が0.3〜5重量%であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の被覆菓子。
【請求項5】
シェラック塗布率が0.5〜3重量%であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の被覆菓子。
【請求項6】
前記センターが砂糖または水飴を含まない、請求項1乃至のいずれか一項に記載の被覆菓子。
【請求項7】
油性菓子含有センターを、シェラック塗布率0.1〜10重量%となるようにシェラック含有層で被覆することを含んでなる、被覆菓子の製造方法であって、該シェラックが、乾燥重量基準で4.0重量%以下のアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルを含んでなる、被覆菓子の製造方法。
【請求項8】
前記センターが少なくとも一つの凸部または凹部を有することを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記センターにおける凸部の高さまたは凹部の深さが0.3〜5mmである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記被覆が、前記センターをシェラック溶液中に浸漬することにより行われる、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記センターが砂糖または水飴を含まない、請求項乃至10のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、2011年10月6日に出願された日本国特許出願2011−222287号に基づく優先権の主張を伴うものであり、かかる先の特許出願における全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、優れた摩耗耐性または耐熱保形性を有する、シェラックで被覆された被覆菓子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来より、表面にシェラックを被覆した商品が知られている。
その被膜の耐熱性、強度、光沢から、手に持ったときの溶け防止、製品どうしのこすれによる表面の削れ防止や外観など製品の品質向上に大いに役立っている。
一般的に、回転釜を用いて凹凸の少ない略球状のチョコレート等をその中で回転させながらシェラック溶液を投入、乾燥することでチョコレート表面に薄層を形成する方法を用いる。
【0004】
またシェラックを被覆する方法としてシェラック溶液を満たした槽にチョコレート等を浸漬する方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、従来のシェラックは、苦味が強いためチョコレートの味に悪影響を及ぼしやすく、そのため、製品の味への影響が少なくなるよう、被覆量を極力少なくする傾向があった。
【0005】
また、従来、油性菓子の表面にシェラックを被覆する前に、予め水飴や砂糖溶液等を油性菓子表面に被覆しておく方法をとる場合がある。これは油性菓子の表面に光沢を付与するには有効な手段であるが、何らかの理由で砂糖溶液を予め被覆しない場合、同等の光沢を付与するにはより多いシェラックを被覆する必要があり、従来のシェラックではその苦味が強くなりすぎ製品として好ましいものができなかった。
【0006】
一方、現在チョコレート製品の形状は嗜好の多様化と共に多岐に渡るようになり、例えば特許文献2に記載の表面に多数の突起を有する油性被覆菓子やレリーフ状のチョコ等表面の凹凸が激しいチョコレート菓子が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−133692号公報
【特許文献2】特開2000−210023号公報
【発明の概要】
【0008】
凹凸の激しいチョコレート等に通常の回転釜を用い通常の方法でシェラックを被覆しようとすると、凸部どうしが過度にぶつかってしまい当該部分をシェラック被膜で十分被覆することが困難である。
そのため流通時等の摩耗で凸部が削れてしまったり、高温時の耐熱保形性を付与することができないなど不具合を生じる。またチョコレート等配合や製法の制限により、意図せず製品表面が微細な粗面となることがあり、従来のシェラック塗布量では製品表面に充分な光沢を得ることが出来なかった。
【0009】
そこで本発明者らは鋭意検討の結果以下の発明をするに至った。
(1)油性菓子からなるセンターと該センターを被覆するシェラックからなる被覆菓子であって、シェラック塗布率が0.1〜10重量%であることを特徴とする被覆菓子。
(2)該センターに少なくとも一つの凸部または凹部を有することを特徴とする(1)に記載の被覆菓子。
(3)使用するシェラックが苦味低減シェラックであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の被覆菓子。
(4)シェラックが、乾燥重量基準で(on a dry weight basis)4.0重量%以下のアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルを含んでなる、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の被覆菓子。
(5)シェラック塗布率が0.3〜5重量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一つに記載の被覆菓子。
(6)シェラック塗布率が0.5〜3重量%であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一つに記載の被覆菓子。
(7)凸部の高さまたは凹部の深さが、0.3〜5mmである、(1)〜(6)のいずれか一つに記載の被覆菓子。
(8)油性菓子が砂糖または水飴を含まない(1)〜(7)のいずれか一つに記載の被覆菓子。
(9)シェラックを被覆する方法がセンターとなる油性菓子をシェラック溶液中に浸漬することであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか一つに記載の複合菓子。
(10)少なくとも一つの凸部または凹部を有する油性菓子を、シェラック塗布率0.1〜10%となるようにシェラックで被覆することを含んでなる、被覆菓子の製造方法。
(11)シェラックが、乾燥重量基準で4.0重量%以下のアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルを含んでなる、(10)に記載の製造方法。
(12)被覆が、上記油性菓子をシェラック溶液中に浸漬することにより行われる、(10)又は(11)に記載の製造方法。
(13)油性菓子における凸部の高さまたは凹部の深さが0.3〜5mmである、(10)〜(12)のいずれか一つに記載の製造方法。
(14)油性菓子が砂糖または水飴を含まない、(10)〜(13)のいずれか一つに記載の製造方法。
【0010】
本発明により、第一の効果として、凹凸を有する形状のセンター全体に、塗布率0.1〜10%の間で、凸部にも十分なシェラックによる被覆をすることで、センターの摩耗耐性や耐熱保形性を向上させることができる。さらにアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルの含量が低減されたシェラックを用いて、シェラックの苦味による品質の劣化を生じさせることなく上記第一の効果を奏することができる。また、本発明によれば、砂糖又は水飴を油性菓子の原料またはコーティングを用いなくても、アレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルの含量が低減されたシェラックを低用量で用いて、顕著な光沢を奏し、かつ菓子本来の風味を保持するのに有利である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、上述の通り、表面側から順に、被覆層、およびセンター(中核物)を含んでなる被覆菓子であって、被覆層がシェラックを含有し、センターが油性菓子を含有し、シェラック塗布率が0.1〜10重量%であることを一つの特徴としている。かかる被覆菓子は、後述する苦味低減シェラックを用いる場合、油性菓子における摩耗耐性または耐熱保形性を顕著に向上させつつ、油性菓子本来の風味を保持する上で特に有利である。
【0012】
以下に本発明について詳細に説明を行う。
本発明においてセンターに用いる油性菓子は、好ましくは油脂含有菓子であり、より好ましくは表面の少なくとも一部が油脂(テンパータイプまたはノンテンパータイプ)で被覆されてなる複合菓子であってもよい。具体的には、本発明の油性菓子は、ホワイトチョコレート、ミルクチョコレートやスイートチョコレート等いずれのチョコレートでもよい。また、本発明の油性菓子は、チョコレート類の表示に関する公正競争規約に定めるチョコレート、準チョコレートに限らず、それらに該当しないテンパータイプ、ノンテンパータイプのファットクリーム等あらゆる種類の油性菓子が該当することができる。本発明の一つの態様によれば、油性菓子は、チョコレート含有菓子であることが好ましい。かかるチョコレート含有菓子としては、チョコレート生地をテンパリング等処理して得られるチョコレート菓子、表面の少なくとも一部がチョコレートで被覆されてなる複合菓子(チョコレートコートされたフライドポテトまたはビスケットなど)などが挙げられる。
【0013】
本発明はセンターに凹凸を有するとより奏功する。少なくとも一つの凸部または凹部を有すればよいが、複数の凹凸があると更に本発明が奏功する。凹凸を有するセンターは任意の形状で構わず、例えば球体、偏球体または長球体の表面に金平糖の様な突起や桑の実様の凹部を有する形状や、スポンジの様な多孔質、コーヒー豆の様に溝状凹部を有する形状、波板形状、レリーフのようにセンター片面もしくは両面に凹凸を有する文字、模様またはデザインもしくはこれらの組み合わせを有する板状でも良い。
【0014】
また、センターには上記油性菓子の他、固形可食物を含有していてもよい。例えば、ビスケット、クッキー、穀物パフ、ナッツ、凍結乾燥果実、ポテトチップスやせんべいその他米菓等が挙げられる。これら固形可食物が含有することでセンターの形状はより複雑な凹凸を有することがあり、本発明が更に奏功する。
【0015】
したがって、一つの好ましい態様によれば、油性菓子は、チョコレート、ファットクリーム、ビスケット、クッキー、穀物パフ、ナッツ、凍結乾燥果実、ポテトチップスおよび米菓またはそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのものである。
【0016】
センター油性菓子の凹凸の高さ又は深さには特に制限はないが、0.3mm以上5mm以下の高さ又は深さを有することが好ましい。また、凹凸の高さ又は深さは、更に好ましくは、0.3mm以上3mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以上3mm以下であり、更に一層好ましくは0.7mm以上3mm以下である。
【0017】
また、本発明の一つの態様によれば、油性菓子は、砂糖または水飴を含まないで製造することが好ましい。また、後述する苦味低減シェラックを用いることには、砂糖等を使用することなしに、食品本来の風味を保持して光沢を付与する上で特に有利である。油性菓子の製造において砂糖または水飴を使用しないことは、コストを低減しまたは生産工程を簡易化する上でも好ましい。
【0018】
本発明において、シェラック(shellac)とは、ラックカイガラムシが分泌する樹脂状物質を精製したものである。シェラックは、天然物であっても市販品であってもよいが、アレウリチン酸-5-ジャラール酸エステル(jalaric acid 5-aleuritate)の含有量が低減させたシェラックを用いることが、シェラックの苦味を低減する上で特に好ましい。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、シェラック中のアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルの含有量は、乾燥重量基準で、シェラック全体に対して、好ましくは4.0重量%以下であり、より好ましくは2.5重量%以下である。ここで、本明細書において「苦味低減シェラック」とは、乾燥重量基準で、アレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルが固形分中4.0重量%以下であるシェラックをさす。
シェラック中のアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルの量は後述する製造例2等に記載の方法により容易に調節することができる。
【0020】
本発明の被覆菓子は、上述のようなシェラックを、油性菓子に対してシェラック塗布率0.1〜10%で適用することにより得ることができる。ここで、シェラック塗布率とは、被覆菓子全体に対するシェラックの乾燥重量を百分率で表したものを意味する。したがって、シェラックの塗布率は、例えば、常法によりセンターにシェラック溶液を塗布後、十分乾燥させて溶媒であるエタノールまたは水を取り除いたときの、製品全体に占めるシェラック不揮発成分の重量を百分率で表したものであってよい。
【0021】
シェラックの塗布率は、センターの大きさ、凹凸の数や大きさ、センターの成形方法の違いによる微細な表面状態によって異なるが、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上である。シェラックの塗布率が0.1重量%より高いことは、センター表面全体に十分シェラックが被覆する上で有利である。
【0022】
また、シェラックの塗布率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。シェラックの塗布率が10%より低いことは、シェラック被膜の硬い食感により製品本来の食感を損なうのを防止する上で有利である。
【0023】
本発明の被覆菓子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知のコーティング装置を用いてシェラック溶液を油性菓子に適用する方法、または油性菓子をシェラック溶液中に浸漬させる方法により製造することができる。
【0024】
本発明のシェラック溶液は、シェラックを含有すれば特に限定されないが、好ましくはシェラックのエタノール溶液または水溶液であり、より好ましくはエタノール溶液である。
【0025】
使用するシェラックの溶液濃度は、特に限定されないが、好ましくは5重量%以上40重量%以下である。ここで、使用するシェラックの溶液濃度とは、シェラック溶液全体に占めるシェラック不揮発成分の重量をさす。溶液濃度を5重量%より高く設定することは、十分なシェラックの塗布量を確保して、塗布と溶媒揮発を何度も繰り返すことを回避し、不必要にエタノールがセンターチョコレート等に接することを防止し、ひいてはチョコレート等の変質またはブルーミングを防止する上で有利である。また、溶液濃度を40重量%以下とすることは、溶液の粘度を低く保ち、製品表面に均一に塗布する上で有利であり、特に凹凸の激しい製品では凹部にシェラック溶液が十分行き渡らせる上で好ましい。
また、シェラックの溶液濃度は、より好ましくは5重量%以30重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以30重量%以下である。
【0026】
シェラック溶液を油性菓子に適用する工程においては、回転釜等の公知のコーティング装置を用いてよい。かかるコーティング条件は、特に限定されず、油性菓子の形状、性質、シェラック溶液の濃度等に応じて適宜調節してよい。かかるコーティング条件は、例えば、20〜30℃で5〜30rpmとしてもよい。
【0027】
また、センター(油性菓子)の形状が複雑な凹凸を有し、従来の回転釜ではセンター表面全体にシェラックを塗布できなかったり、回転釜の中でセンターどうしが衝突することによって破損してしまうような場合や、棒状又は板状など回転釜を用いてシェラックを塗布しようとするとセンターどうしが付着しやすい場合は、シェラック溶液を満たした槽にセンターを浸漬して塗布する方法を用いることが好ましい。
【0028】
かかる浸漬法の具体的な条件は,特に限定されないが、例えば、油性菓子をシェラック溶液に0.5〜30秒間浸漬してもよい。
また、浸漬後、被覆菓子は、乾燥することが好ましい。乾燥条件は、特に限定されず常法を用いてよいが、例えば、15〜40℃の風を適用することにより乾燥してもよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に記載の「%」は、特に記載のない限りに「重量%」を意味する。
【0030】
製造例
油性菓子の製造
カカオマス20重量部、砂糖50重量部、全粉乳20重量部、ココアバター10重量部、レシチン0.5重量部をミキサーにて混合後、チョコレート製造の常法通りレファイナーロールにより粉砕し、粉末チョコレートを得た。
回転釜に直径10mm、一粒あたり重量0.2gの略球状の小麦パフを投入し、24℃、12rpmにて上記粉末チョコレートを回転釜に徐々に投入し、製品一粒あたりの重量が0.45gになるまで小麦パフ表面に粉末チョコレートを被覆した。
得られたチョコレート複合菓子は、チョコレートからなる金平糖様の突起物を有していた。突起物の高さは平均0.7mmであった。
【0031】
苦味低減シェラックの製造
精製セラックGSN(株式会社岐阜セラツク製造所製)10gに酢酸エチル100mLを加え、還流下で30分間撹拌した後室温まで冷却した。1時間静置した後、上清をデカンテーションにて除いた。残った沈殿に、再び酢酸エチル100mLを加え、還流下で30分間撹拌した。室温まで冷却した後1時間静置し、上清をデカンテーションにて除いた。
【0032】
得られた上清を合わせ濃縮、真空乾燥し、3.7gの画分(Fr.1)を得た。また、沈殿を減圧濃縮、真空乾燥し、6.2gの画分(Fr.2)を得た。Fr.1を、できるだけ少量のメタノールに溶解し、コスモシール 75C18−OPN(商品名,ナカライテスク株式会社製)300mLを充填したカラムに負荷した後、メタノール:水=4:1の溶媒にて溶出した。これを減圧濃縮、真空乾燥し、1.3gの画分(Fr.3)を得た。続いてカラムをメタノールにて溶出し、得られた溶出液を減圧濃縮、真空乾燥し、2.4gの画分(Fr.4)を得た。
【0033】
F r.2、Fr.4を一まとめにして、苦味低減シェラック(便宜上シェラックAと称する)を製造した。
【0034】
シェラックAをエタノールにて溶解し、100mg/mLの溶液を作成した。この溶液を便宜上溶液Bと称する。LC/MS-MSを用いてシェラックAにおけるアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルの含有率を測定した所、1.74重量%であることが分かった。
【0035】
苦味評価
上記溶液B(1mL)に4vol%エタノール99mLを加え、シェラックAが1mg/mLの濃度となる5vol%エタノール溶液を作成した。この溶液を便宜上溶液Cと称する。溶液Cに単離したアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルを添加し、アレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルの含有率が2.00重量%となる溶液、2.25重量%となる溶液、2.50重量%となる溶液、2.75重量%となる溶液、2.75重量%となる溶液、3.00重量%を作成した。なお、ここでいう含有量とは、溶液中の含有量ではなく、シェラック単体に換算した場合のアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルの含有量である。
【0036】
作成した各試験溶液0.1mLを評価者の舌の上に垂らし、苦味を感じ始める限界濃度を調べた。評価者(試験官)は20代の女性7名と20〜30代の男性7名とした。
【0037】
シェラック中のアレウリチン酸-5-ジャラール酸エステルの含有量が、2.5重量%の場合、苦味が十分に低減されることが分かった。さらに、2.0重量%であれば苦味の低減がより顕著であることが分かった。
【0038】
製品例1
製造例1で得られたチョコレート複合菓子を別の回転釜に投入し、24℃、12rpmにて溶液濃度25%の苦味低減シェラックのエタノール溶液を投入した。溶媒であるエタノールを揮発させながら、シェラックの塗布率が1.0%となったところでシェラックの投入を終了し、苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
得られた苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は全体が苦味低減シェラックで十分被覆されて光沢を有し、チョコレート部分が露出することなくとても良好な状態であった。
該被膜チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコが溶けて指に付着することもなく、とても良好であった。
【0039】
製品例2
苦味低減シェラックの塗布量が0.5%である以外は製品例1と同様の方法で、苦味低減シェラックの塗布率が0.5%であるシェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
得られた苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は光沢は弱いが全体が苦味低減シェラックで十分被覆されており、チョコレート部分が露出することなくとても良好な状態であった。
該被膜チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコが溶けて指に付着することもなく、とても良好であった。
【0040】
製品例3
苦味低減シェラックの塗布量が0.3%である以外は製品例1と同様の方法で、苦味低減シェラックの塗布率が0.3%であるシェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
得られた苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は、光沢はないが全体が苦味低減シェラックで被覆されており、チョコレート部分が露出することなく良好な状態であった。
該被膜チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコが溶けて指に付着することもほとんどなく、良好であった。
【0041】
製品例4
苦味低減シェラックの塗布量が0.1%である以外は製品例1と同様の方法で、苦味低減シェラックの塗布率が0.1%であるシェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
得られた苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は、凹部にシェラックで被覆されていない部分があるが、やや良好な状態であった。
該被膜チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコが溶けて指に付着することもほとんどなく、やや良好であった。
【0042】
製品例5
投入するシェラックのエタノール溶液が従来品(商品名:精製セラックGSN、株式会社岐阜セラツク製造所製)である以外は製品例2と同じ方法で、シェラックの塗布率が0.5%であるシェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
得られたシェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は光沢は弱いが全体がシェラックで十分被覆されており、チョコレート部分が露出することなく良好な状態であった。
該被膜チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコが溶けて指に付着することもなく、とても良好であった。
【0043】
製品例6
投入するシェラックのエタノール溶液が従来品(商品名:精製セラックGSN、株式会社岐阜セラツク製造所製)である以外は製品例3と同じ方法で、シェラックの塗布率が0.3%であるシェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
得られた苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は、光沢は無いが全体が苦味低減シェラックで被覆されており、チョコレート部分が露出することなくやや良好な状態であった。
【0044】
製品例7
投入するシェラックのエタノール溶液が従来品(商品名:精製セラックGSN、株式会社岐阜セラツク製造所製)である以外は製品例4と同じ方法で、シェラックの塗布率が0.1%であるシェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
得られたシェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は、凹部に被膜されていない部分があるが、やや良好な状態であった。
該被膜チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコが溶けて指に付着することもほとんどなく、やや良好であった。
【0045】
比較例1
投入するシェラックのエタノール溶液が従来品(商品名:精製セラックGSN、株式会社岐阜セラツク製造所製)であることとその投入量以外は製品例4と同じ方法で、シェラックの塗布率が0.05%であるシェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
得られたシェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は、凸部においてもシェラックの被覆がない部分があり、劣った状態であった。
該被膜チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコが溶けて指に付着し、劣ったものだった。
【0046】
摩耗耐性および耐熱保形性
以上の通り、製品例1〜7(塗布率0.1〜1.0重量%)では、チョコが溶けて指に付着することはなく、摩耗耐性および耐熱保形性が確認された。一方、比較例1(塗布率0.05)では、チョコが溶けて指に付着し、耐熱保形性は確認されなかった。
【0047】
試験例1
官能評価
製品例1〜7、比較例1で得たシェラック被覆チョコレート複合菓子の官能評価を、1を最低、5を最高として5段階評価を行った。
苦味低減シェラックを用いた製品例1〜4の製品が、シェラックの苦味の影響が少なく、概ね評価が高かった。
通常のシェラックを用いた製品例5〜7、比較例1の製品は、シェラック塗布率の増加と共に苦味が強く感じられることでチョコレート、パフの風味が抑えられ、評価が下がっていった。
【0048】
【表1】
【0049】
摩耗耐性・耐熱保形性と官能評価の総合評価
上記実験の結果、製品例1〜4(塗布率0.1〜1.0重量%)の苦味低減シェラックを用いた場合では、凹凸を有するチョコレートにおいて、摩耗耐性・耐熱保形性および官能評価がいずれも良好であった。
特に、製品例1〜3(苦味低減シェラック:塗布率0.3〜1.0重量%)では、製品例5および6(精製セラックGSN:塗布率0.3〜0.5重量%)と比較しても官能評価スコアが大幅に高かった。このことは、同レベルの塗布率の製品例2(スコア:3.6)と製品例5(スコア:1.9)、製品例3(スコア:4.0)と製品例6(スコア:2.8)の比較により示される。
以上の結果から、苦味低減シェラックが0.3重量%以上で被覆されたチョコレート複合菓子では、高用量のシェラックを用いているにもかかわらず苦味が抑制され、食品の風味を損なうことなくかつ良好なテクスチャー・外観を保持しうることが確認された。
【0050】
製品例8
縦78mm、横160mm、高さ7mm、上面凹部深さ3mm、凹部平面に更にロゴマーク形状の溝状凹部(深さ0.3mm)を有する重量58gの板チョコレート(商品名:meijiミルクチョコレート、株式会社明治製)を溶液濃度25%の苦味低減シェラックエタノール溶液を満たした槽に1秒間浸漬し、引き上げ、凹部の余剰シェラック溶液を除去し、20℃の冷風にて十分乾燥し、苦味低減シェラック被覆板チョコレートを得た。
得られた苦味低減シェラック被覆板チョコレートのシェラック塗布率は0.6%であった。苦味低減シェラックは製品全体を均一に被覆しており、指で摘んで保持しても指にチョコレートが付着せず良好な状態であった。
得られた苦味低減シェラック被覆板チョコレートを食したところ、チョコレート本来の風味を有し、良好であった。
【0051】
製品例9
使用するシェラックが従来品(商品名:精製シェラックGSN、株式会社岐阜セラツク製造所)である以外は製品例3と同じ方法でシェラック被覆板チョコレートを得た。
得られたシェラック被覆板チョコレートのシェラック塗布率は0.6%であった。
シェラックは製品全体を均一に被覆しており、指で摘んで保持しても指にチョコレートが付着せず良好な状態であった。
得られた苦味低減シェラック被覆板チョコレートを食したところ、製品例8に比べシェラックの苦味が強く、チョコレートの風味が抑えられていた。
【0052】
凹凸を有するチョコレートを用いた製品例8および9(塗布率0.6重量%)では、摩耗耐性・耐熱保形性は良好であった。苦味低減シェラックが0.6重量%以上で被覆された凹凸を有するチョコレートにおいては、高用量のシェラックを用いているにもかかわらず苦味が抑制され、チョコレートの風味が保たれていることが確認された。
【0053】
製品例10
砂糖不使用ビスケットボール
ショートニング15重量部、マルチトール15重量部、脱脂粉乳8重量部、小麦粉60重量部、ベーキングパウダー1重量部、香料1重量部をミキサーボウルに投入し、撹拌混合した後、略球状に成形し、オーブンを使用して180℃、10分間焼成し、一粒あたり重量1gの砂糖不使用ビスケットボールを得た。
カカオマス20重量部、全粉乳20重量部、マルチトール40重量部、ココアバター20重量部、レシチン0.8重量部、香料0.1重量部を使用し、チョコレート製造の常法にて砂糖不使用チョコレート生地を得た。
【0054】
得られた砂糖不使用ビスケットボールを回転釜に投入し、24℃、12rpmにて上記砂糖不使用チョコレート生地を回転釜に徐々に投入し、製品一粒あたりの重量が2.5gになるまで砂糖不使用ビスケットボール表面に砂糖不使用チョコレート生地を被覆し、チョコレート複合菓子を得た。
得られたチョコレート生地を回転釜に投入し、24℃、12rpmにて、溶液濃度30%の苦味低減シェラックのエタノール溶液を投入した。溶媒であるエタノールを揮発させながら、シェラックの塗布率が0.2%となったところでシェラックの投入を終了し、苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
得られた苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は全体が、苦味低減シェラックで十分被覆されて光沢を有し、チョコレートの部分が露出することなくとても良好な状態であった。
【0055】
該苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコレートが溶けて指に付着することもなく、とても良好であった。また、該苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子は、シェラック特有の苦味もなく、パネラーによる美味しいとの評価を得た。
【0056】
製品例11
砂糖不使用ビスケットボール
製品例10の製造工程中で得たチョコレート複合菓子を別の回転釜に投入し、24℃、12rpmにて、従来のシェラックのエタノール溶液(商品名:精製セラックGSN、株式会社岐阜セラツク製造所制)を投入した。溶媒であるエタノールを揮発させながら、シェラックの塗布率が0.2%となったところでシェラックの投入を終了し、砂糖不使用シェラック被服チョコレート複合菓子を得た。
【0057】
得られた砂糖不使用シェラック被覆チョコレート複合菓子の表面は全体がシェラックで十分被覆されて光沢を有し、チョコレートの部分が露出することなくとても良好な状態であった。
また、砂糖不使用シェラック被覆チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコレートが溶けて指に付着することもなく、とても良好であった。
しかし、該砂糖不使用シェラック被覆チョコレート複合菓子を食したところ、上記製品例10の砂糖不使用苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子に比べてシェラック独特の苦味が強く、チョコレートおよびクッキーの風味は劣るものであった。
【0058】
製品例12
砂糖不使用ビスケットボール
砂糖40重量部、水分25%の水飴60重量部を混合し、砂糖を撹拌溶解し、下掛け液を得た。
製品例10の製造工程中で得たチョコレート複合菓子を別の回転釜に投入し、24℃、12rpmにて上記下掛け液を投入した。溶媒である水を蒸発乾燥させながら、下掛け液の塗布率が0.1%となったところで下掛け液の投入を終了した。さらに、従来のシェラックのエタノール溶液(商品名:精製セラックGSN、株式会社岐阜セラツク製造所製)を投入した。溶媒であるエタノールを揮発させながら、シェラックの塗布率が0.1%となったところでシェラックの投入を終了し、砂糖を使用したシェラック被覆チョコレート複合菓子を得た。
該砂糖を使用した苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子を指で摘んで保持したところ、チョコレートが溶けて指に付着することもなく、とても良好であった。また、該苦味低減シェラック被覆チョコレート複合菓子は、シェラック特有の苦味もなく、おいしいものであった。
しかしながら、従来の方法で砂糖を使用した下掛けを行ったため、砂糖不使用とはならなかった。