(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
着用者の肌対向面側に位置する液透過性の表面シートと、着用者の非肌対向面側に位置する液不透過性の裏面シートと、これら両シートの間に位置する吸収体とを含む、吸収性物品であって、
前記表面シートは、コットン及び熱可塑性樹脂繊維から構成される第1繊維層と、疎水性の熱可塑性樹脂繊維から構成される第2繊維層とを含む、少なくとも2層の繊維層からなる不織布であり、
前記不織布は、前記肌対向面側の面であって前記第2繊維層により形成される第1面と、前記非肌対向面側の面であって前記吸収体と対向する第2面とを有し、前記不織布は、前記第1面の方向に向けて突出する複数の凸部と、隣り合う前記凸部の間に設けられ、前記第2面の方向に向けて窪む複数の凹部とを備えていて、
前記凸部は、前記不織布の第2面が面する空隙部を有し、
前記不織布は、少なくとも前記凸部において弱酸性を呈する、
前記吸収性物品。
前記吸収性物品は、前記裏面シートの前記非肌対向面側に裏面フィルムを有し、該裏面フィルムは、前記裏面シートよりも低い通気度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
前記凸部は、前記不織布の前記第1面において第1方向に延設され且つ前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で設けられ、前記凹部は、前記第1方向に延設され且つ前記第2方向において隣り合う前記凸部の間に設けられていて、
前記凹部は、前記凸部の頂部における前記第1面側の位置よりも前記第2面側に位置する第1底部を備えた第1凹部と、前記第1凹部内において前記第1方向に不連続に設けられた、前記第1底部から前記第2面の方向に向けて窪む複数の第2凹部とを有し、
前記第2凹部は、前記第1底部から前記第2面側の方向に延設された周壁部と、前記周壁部の前記第2面側の端部にその端部を塞ぐように設けられた、前記不織布の中で最も高い繊維密度を有する第2底部とを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
前記凸部は、前記不織布の前記第1面において第1方向に延設され且つ前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で設けられていて、前記凸部は、前記吸収体の前記第1方向における少なくとも一方の端縁まで又は前記少なくとも一方の端縁を超えて延設されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された吸収性物品のように、吸収体の上面に保水性の高いコットン不織布が表面シートとして設けられていると、吸収体に吸収された尿などの排泄液が蒸発等により湿気として吸収体から放出されたときに、吸収体の上面に設けられたコットン不織布に吸収・保持されてしまうため、着用者に濡れた状態を知覚させたり、蒸れなどを感じさせたりして、不快感を生じさせる虞があった。
また、着用者の肌(皮膚)が尿などの排泄液やその湿気によって濡れた状態に保たれると、着用者の皮膚がふやけてしまい、化学的刺激や物理的刺激に対する耐性を維持し難くなる(すなわち、皮膚の各種刺激に対する防御機能が低下する)。そして、このようなふやけた状態の皮膚が、尿などの排泄液に由来するアンモニア成分によってアルカリ性に変化したり(すなわち、化学的刺激を受けたり)、表面シートとの摩擦等によって物理的刺激を受けたりすると、皮膚がこれらの刺激に耐えきれずに、かぶれ(皮膚炎)などを引き起こす虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、表面シートとしてコットンを含む不織布を使用した吸収性物品において、着用者に濡れた状態を知覚させたり、蒸れなどを感じさせたりして、着用者に不快感を生じさせるようなことが起こり難く、皮膚のかぶれも引き起こし難い吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様(態様1)は、着用者の肌対向面側に位置する液透過性の表面シートと、着用者の非肌対向面側に位置する液不透過性の裏面シートと、これら両シートの間に位置する吸収体とを含む吸収性物品であって、前記表面シートは、コットン及び熱可塑性樹脂繊維から構成される第1繊維層と、疎水性の熱可塑性樹脂繊維から構成される第2繊維層とを含む、少なくとも2層の繊維層からなる不織布であり、前記不織布は、前記肌対向面側の面であって前記第2繊維層により形成される第1面と、前記非肌対向面側の面であって前記吸収体と対向する第2面とを有し、前記不織布は、前記第1面の方向に向けて突出する複数の凸部と、隣り合う前記凸部の間に設けられ、前記第2面の方向に向けて窪む複数の凹部とを備えていて、前記凸部は、前記不織布の第2面が面する空隙部を有し、前記不織布は、少なくとも前記凸部において弱酸性を呈する、前記吸収性物品である。
【0008】
この態様1の吸収性物品によれば、表面シートが、コットン及び熱可塑性樹脂繊維から構成される第1繊維層と、疎水性の熱可塑性樹脂繊維から構成される第2繊維層とを含む、少なくとも2層の繊維層からなる不織布であり、該不織布は、第1面側に突出する複数の凸部と第2面側に窪む複数の凹部とを備えていて、前記凸部は、前記不織布の第2面が面する空隙部を有しているので、吸収体に吸収された着用者の尿などの排泄液が、蒸発等によって湿気として吸収体から放出されたとしても、当該湿気を、前記第1繊維層のコットンにおいて吸収・保持するとともに、前記空隙部において湿気の状態で留めるため(すなわち、空隙部を高湿状態とするため)、前記空隙部内の湿気(気相)と前記吸収体に吸収・保持されている排泄液(液相)との間で気液平衡のような状態が形成され、前記吸収体からこれ以上の湿気が放出されるのを抑制することができる。
さらに、前記不織布は、着用者の肌対向面となる第1面が前記第2繊維層により形成されているので、前記第1繊維層のコットンに吸収・保持された尿などの排泄液を、着用者の肌に接触し難くすることができる上、着用者の肌(皮膚)がふやけるようなことも生じ難くなっている。
また、仮に、尿などの排泄液(吸収体から放出される湿気を含む。)が前記第2繊維層を透過して着用者の肌に接触したとしても、前記不織布は、着用者の肌が触れ易い少なくとも前記凸部において弱酸性を呈するものであるため、着用者の肌がアルカリ性に変化し難く(すなわち、着用者の肌に化学的刺激を与え難く)、皮膚のかぶれ(皮膚炎)を引き起こし難くなっている。
以上より、態様1の吸収性物品は、着用者に濡れた状態を知覚させたり、蒸れなどを感じさせたりして、着用者に不快感を生じさせるようなことが起こり難く、皮膚のかぶれも引き起こし難くなっている。
【0009】
本発明の別の態様(態様2)の吸収性物品は、前記態様1の吸収性物品において、前記裏面シートが通気性を有している。
【0010】
この態様2の吸収性物品によれば、液不透過性の裏面シートが通気性を有しているので、吸収体から非肌対向面側に放出される湿気を、裏面シートを介して放出させることができ、吸収性物品内に或いは吸収性物品と着用者の肌との間に留まる湿気の量を低減することができる。
したがって、態様2の吸収性物品は、着用者に蒸れなどをより感じ難くさせることができる上、着用者の肌が湿気によってふやけるようなこともより生じ難くなり、結果的に、皮膚のかぶれもより引き起こし難くなる。
【0011】
本発明の更に別の態様(態様3)の吸収性物品は、前記態様1又は2の吸収性物品において、前記第1繊維層に、コットンによる繊維塊を含んでいる。
【0012】
この態様3の吸収性物品によれば、前記不織布の第2面(非肌対向面)側に配置された第1繊維層に、コットンによる繊維塊を含んでいるので、前記吸収体から放出された湿気(排泄液)を、上記第1繊維層内のコットンによる繊維塊において集中的に(スポット的に)吸収・保持し、前記第1繊維層の面方向において湿気を吸収・保持した部分の面積を小さくする(スポット的にする)ことができるため、前記第1繊維層の第1面側から放出される湿気の量を最小限に抑えることができる。その結果、前記吸収体から放出された湿気を前記凸部の空隙部に効果的に封じ込めることができる上、着用者の肌がふやけるようなこともより生じ難くすることができる。
【0013】
本発明の更に別の態様(態様4)の吸収性物品は、態様1〜3のいずれかの吸収性物品において、前記吸収性物品が、前記裏面シートの前記非肌対向面側に裏面フィルムを有していて、該裏面フィルムは、前記裏面シートよりも低い通気度を有している。
【0014】
この態様4の吸収性物品によれば、裏面シートの非肌対向面側に、該裏面シートよりも通気度の低い裏面フィルムを有していることによって、裏面シートから裏面フィルムにかけて通気度が低くなるという通気度勾配が形成されるため、吸収体から非肌対向面側(すなわち、裏面シート側)へ放出された湿気が、前記裏面シートを介して前記裏面フィルムへと引き込まれ易く、更には吸収性物品の外部へと抜け易くなる。その結果、吸収体から肌対向面側(すなわち、裏面シートとは反対側)に放出される湿気の量を低減することができ、着用者に蒸れなどをより感じ難くさせることができる上、着用者の肌が湿気によってふやけるようなことも、より生じ難くなり、結果的に、皮膚のかぶれもより引き起こし難くなる。
【0015】
本発明の更に別の態様(態様5)の吸収性物品は、前記態様1〜4のいずれかの吸収性物品において、前記凸部が、前記不織布の前記第1面において第1方向に延設され且つ前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で設けられ、前記凹部が、前記第1方向に延設され且つ前記第2方向において隣り合う前記凸部の間に設けられていて、さらに、前記凹部は、前記凸部の頂部における前記第1面側の位置よりも前記第2面側に位置する第1底部を備えた第1凹部と、前記第1凹部内において前記第1方向に不連続に設けられた、前記第1底部から前記第2面の方向に向けて窪む複数の第2凹部と、を有し、前記第2凹部は、前記第1底部から前記第2面側の方向に延設された周壁部と、前記周壁部の前記第2面側の端部にその端部を塞ぐように設けられた、前記不織布の中で最も高い繊維密度を有する第2底部とを備えている。
【0016】
この態様5の吸収性物品は、表面シートを構成する不織布において、隣り合う凸部の間に位置する前記第2凹部の第2底部における繊維密度が前記不織布の中で最も高くなるように構成されていて、前記不織布の厚さ方向において、相対的に繊維密度の低い凸部から繊維密度の最も高い第2凹部の第2底部にかけて密度勾配が存在する構造を有しているため、前記不織布の第1面に供給された尿などの排泄液が、前記凸部から前記第2凹部の第2底部へとスポット的に引き込まれ易く、表面シートとして優れた吸収性能(特に、吸収速度や液移行性等)を発揮させることができるとともに、前記吸収体から放出された湿気が、前記不織布の第2面側から第1面側へ向かって移行し難くなる。その結果、吸収体から放出された湿気を前記凸部の空隙部に効果的に封じ込めることができ、着用者に蒸れなどをより一層感じ難くさせることができる上、着用者の肌が湿気によってふやけるようなことも、より一層生じ難くなり、結果的に、皮膚のかぶれもより一層引き起こし難くなる。
また、繊維層中に含まれるコットンの量が多くなると、コットンの剛性によって繊維層の柔軟性が低下してしまい、当該繊維層を含む積層不織布のクッション性や肌触り、身体形状への追従性などが損なわれる虞があるが、本態様5の吸収性物品によれば、着用者の肌に触れ易い前記凸部及び前記第1凹部の繊維密度が相対的に低いこと、着用者の肌に最も触れ易い部分が接触面積の小さい前記凸部の頂部であること、並びに、不織布の第1面側から掛かる厚さ方向の応力を、前記第1凹部が前記第2面側に撓むことによって緩衝することができることから、表面シートがコットンを含む不織布から構成されていても、十分に柔軟性を確保することができる。
【0017】
本発明の更に別の態様(態様6)の吸収性物品は、前記態様5の吸収性物品において、前記第2凹部の前記第2方向におけるピッチが2.0mm以下である。
【0018】
この態様6の吸収性物品によれば、第2凹部の第2方向におけるピッチが2.0mm以下であることにより、前記不織布の第1面に供給された尿などの排泄液が、隣り合う凸部の間に配設された第2凹部の第2底部へとスポット的により引き込まれ易くなるため、上記態様5の吸収性物品によって奏される効果をより一層発揮させることができる。さらに、本態様6の吸収性物品においては、第1繊維層内のコットンが、前記第2凹部の第2底部に保持され易くなるため、前記第2底部において繊維層の分裂等を生じ難くすることができ、不織布(表面シート)を強度の優れたものとすることができる。
【0019】
本発明の更に別の態様(態様7)の吸収性物品は、前記態様1〜6のいずれかの吸収性物品において、前記凸部が、前記不織布の前記第1面の第1方向に延設され且つ前記第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で設けられていて、前記凸部は、前記吸収体の前記第1方向における少なくとも一方の端縁まで又は前記少なくとも一方の端縁を超えて延設されている。
【0020】
この態様7の吸収性物品によれば、吸収体の肌対向面側から放出される湿気だけではなく、吸収体の第1方向における端縁(側面)から放出される湿気に対しても、前記凸部の空隙部に封じ込めることができるため、着用者に蒸れなどをより一層感じ難くさせることができる上、着用者の肌が湿気によってふやけるようなことも、より一層生じ難くなり、結果的に、皮膚のかぶれもより一層引き起こし難くなる。
【0021】
本発明の更に別の態様(態様8)の吸収性物品は、前記態様1〜7のいずれかの吸収性物品において、前記吸収体が、前記非肌対向面側の面に圧搾部を有している。
【0022】
この態様8の吸収性物品は、吸収体の非肌対向面側の面に圧搾部を有していて、吸収体に吸収された排泄液が、前記圧搾部に溜まり易くなる一方、吸収体の肌対向面側の面には残り難くなるため、前記吸収体から肌対向面側に放出される湿気の量を低減することができ、着用者に蒸れなどをより一層感じ難くさせることができる上、着用者の肌が湿気によってふやけるようなことも、より一層生じ難くなり、結果的に、皮膚のかぶれもより一層引き起こし難くなる。
【0023】
本発明の更に別の態様(態様9)の吸収性物品は、前記態様8の吸収性物品において、当該吸収性物品が、互いに直交する長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、前記圧搾部が、前記吸収体の非肌対向面側の面において前記長手方向及び/又は前記幅方向に延びる線状圧搾部として設けられていて、前記吸収体は、肌対向面側の面において互いに離間する複数の点状圧搾部を有している。
【0024】
この態様9の吸収性物品は、前記吸収体の非肌対向面側の面において前記長手方向及び/又は前記幅方向に延びる線状圧搾部を有していて、吸収体に吸収された排泄液が、前記長手方向及び/又は前記幅方向に延びる線状圧搾部に沿って拡散した状態で溜まり易くなる一方、吸収体の肌対向面側の面には残り難くなるため、吸収体から肌対向面側に放出される湿気の量を低減することができ、着用者に蒸れをより一層感じ難くさせることができる。
また、吸収体の肌対向面側の面において複数の点状圧搾部を有していること、すなわち、繊維密度が高く毛細管現象を利用した吸液部として機能する前記点状圧搾部を有していることによって、尿などの排泄液が吸収体内へとスポット的に吸収され易くなるとともに、前記点状圧搾部を介して肌対向面側へ放出され難くなるため、吸収体から肌対向面側に放出される湿気の量を低減することができ、着用者に蒸れをより一層感じ難くさせることができる。
さらに、着用者の肌が湿気によってふやけるようなこともより一層生じ難くなり、結果的に、皮膚のかぶれもより一層引き起こし難くなる。
【0025】
本発明の更に別の態様(態様10)の吸収性物品は、前記態様1〜9のいずれかの吸収性物品において、当該吸収性物品が、互いに直交する長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、前記表面シートが、平面視にて、前記吸収性物品の長手方向軸線を含み且つ前記長手方向に延びる中央領域と、前記中央領域の前記長手方向の両側部に位置し且つ前記長手方向に延びる一対の外側領域とを有していて、前記吸収性物品は、前記不織布の前記凹部の第2面側の部分において前記吸収体と接合する接合部を有し、前記接合部は、前記不織布と前記吸収体との間において前記長手方向に延び且つ前記幅方向に複数本並ぶように配置されていて、前記接合部は、前記幅方向に隣り合う接合部同士の間隔が前記表面シートの前記幅方向における中央領域内に存在する接合部同士の間隔よりも前記表面シートの外側領域内に存在する接合部同士の間隔の方が大きくなるように配置されている。
【0026】
この態様10の吸収性物品は、尿などの排泄液が供給される表面シートの前記中央領域内に存在する接合部のピッチが、前記外側領域に存在する接合部よりも密になるように配置されているため、排泄液の吸収に大きく関与する中央領域において表面シートと吸収体とを強固に接合することができるとともに、当該中央領域において前記凸部の空隙部を、前記外側領域よりも緻密に且つ多く形成することができるため、吸収体から肌対向面側に放出される湿気を保持する前記空隙部を、より確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、表面シートとしてコットンを含む不織布を使用した吸収性物品において、着用者に濡れた状態を知覚させたり、蒸れなどを感じさせたりして、着用者に不快感を生じさせるようなことが起こり難く、皮膚のかぶれも引き起こし難い吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、展開して平坦に広げた状態の吸収性物品を、表面シート側から厚さ方向に見ることを単に「平面視」という。さらに、本明細書において、「肌対向面側」とは、吸収性物品の着用者が吸収性物品を着用したときに、吸収性物品の厚さ方向において相対的に着用者の肌に近い側のことを意味し、また、「非肌対向面側」とは、吸収性物品の着用者が吸収性物品を着用したときに、吸収性物品の厚さ方向において相対的に着用者の肌から遠い側のことを意味する。
【0030】
図1、
図2、
図4〜
図7は、本発明の一実施形態に係る使い捨ておむつ1(吸収性物品)を模式的に示す図である。使い捨ておむつ1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有していて、着用者の肌対向面側に位置し且つ後述する特定の凹凸構造を有する液透過性の表面シート2と、着用者の非肌対向面側に位置する液不透過性の裏面シート3と、これら両シートの間に位置する吸収体4とを基本構成として備えている。
なお、使い捨ておむつ1は、
図1及び
図2に示すように、一対の側部シートからなる一対の防漏壁部5、5と、着用者の大腿部に当接する左右の脚周り部をそれぞれ長手方向Lに伸縮させるためのゴム等からなる伸縮部材6と、着用時に使い捨ておむつの腹部領域と背側領域を連結するため連結テープ7とを更に備えていて、裏面シート3の非肌対向面側には、外装シート(不図示)が設けられている。
【0031】
本実施形態において裏面シート3は、使い捨ておむつ1における着用者の非肌対向面側(
図2における吸収体4の下面側)に設けられていて、着用者から排出された排泄液の透過を防止し、排泄液が肌着や衣服等に漏れ出るのを防止するものである。かかる裏面シートは、吸収性物品の裏面シートとして用い得る諸特性(例えば、液不透過性や通気性、柔軟性等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、通気性を有するポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルム、該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体などの公知の液不透過性シート部材を用いることができる。中でも、裏面シートは、排泄液等の液体を透過しないものの、所定の通気性を有していることが好ましい。裏面シートがこのような通気性を有していると、吸収体から非肌対向面側に放出される湿気を、裏面シートを介して放出させることができ、吸収性物品内に或いは吸収性物品と着用者の肌との間に留まる湿気の量を低減することができる。
なお、本実施形態において裏面シート3は、表面シート2との間に吸収体4を挟んだ状態で、前記表面シート2とその周縁部分において相互に接合されている。
【0032】
本実施形態において吸収体4は、表面シート2を透過してきた尿などの排泄液を吸収して保持するものであり、かかる排泄液を吸収及び保持し得る吸収性材料を含有したものを用いている。この吸収体4は、
図1に示すように、平面視にて、使い捨ておむつ1の長手方向Lに沿う方向に長く形成されていて、長手方向Lの略中央部分が幅方向の内方側に窪んだ略砂時計形の外形形状を有し、表面シート2及び裏面シート3よりも小さい面積を有するように形成されている。また、吸収体4は、表面シート側(すなわち、肌対向面側)の面及び裏面シート側(すなわち、着用者の非肌対向面側)の面がいずれも略平坦状に形成されており、吸収体4の全体に亘って略一定の厚さを有している。なお、本発明において、吸収体の構造は上述の態様のものに限定されず、吸収体は、例えば、長方形、長円形等の任意の外形形状を有していてもよく、部分的に異なる厚さを有していてもよい。
【0033】
本発明において、吸収体は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、当分野において公知の任意の吸収体を用いることができる。そのような吸収体としては、例えば、パルプ等の吸水性繊維及び高吸収性ポリマーの少なくとも一方を含む吸収性材料を、少なくとも1枚のティッシュ等の液透過性被覆シートによって覆ったものなどが挙げられる。
【0034】
また、吸収体の厚みや坪量等は、特に制限されず、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体が備えるべき特性(例えば、吸収性、強度、軽量性等)に応じて適宜調整することができる。例えば、吸収体の厚みは、通常0.1〜15mmの範囲内であり、好ましくは1〜10mmの範囲内、更に好ましくは2〜5mmの範囲内であり、吸収体の坪量は、通常20〜1000g/m
2の範囲内であり、好ましくは50〜800g/m
2の範囲内、更に好ましくは100〜500g/m
2の範囲内である。なお、本発明において吸収体の厚みや坪量等は、吸収体全体に亘って一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。
【0035】
なお、本実施形態において吸収体4は、表面シート側の面において表面シート2(
図2における吸収体4の上面側)と、裏面シート側の面において裏面シート3(
図2における吸収体4の下面側)と、それぞれホットメルト型接着剤等の接着剤で接合されている。
【0036】
本実施形態において表面シート2は、使い捨ておむつ1の厚さ方向Tの肌対向面側に配設され(具体的には、吸収体4の肌対向面側に配設され)、着用者の肌面に直に接触し得る液透過性シート部材によって構成されている。この表面シート2は、着用者から排出される尿などの排泄液を素早く吸収或いは透過させて、吸収体4に向けて移行させることができる。なお、表面シート2は、
図1に示すように、使い捨ておむつ1の長手方向Lに沿う方向の全域に亘って長く形成されている。
【0037】
そして、本実施形態においては、天然素材による安心感や吸収性の向上等の観点から、表面シート2として、コットン203及び熱可塑性樹脂繊維204から構成され且つ表面シート2の第2面2b(下面)を形成する第1繊維層201と、前記第1繊維層201の上面側の面に隣接し、表面シート2の第1面2a(上面)を形成する繊維層であって、疎水性の熱可塑性樹脂繊維205から構成される第2繊維層202とを含む、2層の繊維積層体200からなる不織布を用いている。かかる不織布は、
図3に示すように、前記第1面2aの方向に向けて突出する複数の凸部11と、隣り合う前記凸部11の間に設けられ且つ前記第2面2bの方向に向けて窪む複数の凹部12とを備えた凹凸構造を有しており、さらに、前記凸部11は、前記不織布の第2面2bが面する空隙部14を有している。
また、この不織布は、後述するように、着用者の肌が触れ易い少なくとも前記凸部11において弱酸性を呈するように構成されている(なお、本実施形態においては、上述の凸部11及び凹部12を含む前記不織布の第1面2aの全面において弱酸性を呈するように、第2繊維層202を構成する熱可塑性樹脂繊維205が後述する弱酸性化剤によって被覆されている)。
【0038】
表面シート2がこのような凹凸構造を有する不織布によって構成されていると、吸収体4に吸収された着用者の尿などの排泄液が蒸発等によって湿気として吸収体4から放出されたとしても、当該湿気を、第1繊維層201のコットン203において吸収及び保持することができるとともに、上述の空隙部14において湿気の状態で留めることができるため(すなわち、空隙部14を高湿状態にすることにより、湿気を留めることができるため)、前記空隙部14内の湿気(気相)と吸収体4に吸収・保持されている排泄液(液相)との間で気液平衡のような状態が形成され、吸収体4からこれ以上の湿気が放出されるのを抑制することができる。
さらに、表面シート2を構成する不織布は、着用者の肌対向面となる第1面2aが前記第2繊維層202により形成されているので、第1繊維層201のコットン203に吸収・保持された尿などの排泄液を、着用者の肌に接触し難くすることができる上、着用者の肌(皮膚)がふやけるようなことも生じ難くなっている。また、仮に、尿などの排泄液(吸収体から放出される湿気を含む。)が第2繊維層202を透過して着用者の肌に接触し得たとしても、上述の不織布が、着用者の肌が触れ易い前記凸部11において弱酸性を呈するものであるため、着用者の肌がアルカリ性に変化し難く、皮膚のかぶれ(皮膚炎)を引き起こし難くなっている。
したがって、本実施形態に係る使い捨ておむつ1は、上述の特定の表面シート2を備えていることにより、着用者に濡れた状態を知覚させたり、蒸れなどを感じさせたりして、着用者に不快感を生じさせるようなことが起こり難く、皮膚のかぶれも引き起こし難くなっている。
【0039】
なお、本明細書において、「弱酸性を呈する」とは、以下の弱酸性評価法に従って不織布表面を評価したときに、或いは市販のpH測定器を用いて不織布表面のpHを測定したときに、「弱酸性」(pH=3.0〜6.0)を示すことを意味する。
<弱酸性評価法>
(1)ブロモチモールブルー溶液(BTB溶液)を中性緩衝液により希釈して、弱酸性評価用のpH指示薬を調製する。
(2)測定する不織布の表面に、上記pH指示薬を1滴スポイトで滴下するか、或いは霧吹きで噴霧する。
(3)上記pH指示薬が付着した不織布の表面を、ガラス棒で軽く押さえて、不織布を構成する繊維と上記pH指示薬とを馴染ませる。
(4)上記pH指示薬を付着させてから10秒経過後の不織布の表面の色を目視にて確認し、予め作製しておいた各pH毎の色見本と色を対比することにより、上記不織布の表面のpHを判定する。上記不織布の表面のpHが3.0〜6.0を呈する場合を、「弱酸性」とする。
なお、上述の各pH毎の色見本は、次のようにして作製する。
(i) 予めpHが判明している複数種類(例えば、pHが1.0ずつ又は0.5ずつ異なる等のpHの異なる複数種類)の溶液(例えば、異なるpHを有する複数種類のpH緩衝溶液又は該pH緩衝溶液の希釈溶液等)を、色見本用標準液として用意する。
(ii) 用意したそれぞれ色見本用標準液に、上記pH指示薬を適量滴下して呈色させることにより、各pH毎の色見本を作製する。
【0040】
以下、本発明の吸収性物品の表面シートを構成する不織布(繊維積層体)の第1繊維層について説明する。
本発明において、表面シートを構成する不織布の第1繊維層は、実質的にコットン及び熱可塑性樹脂繊維から構成される。この第1繊維層に含まれるコットンは、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、例えば、繊度が1.0〜15dtexの範囲内であり、繊維長が5〜40mmの範囲内であるコットンなどを用いることができる。中でも、繊維長が20mm以上のコットンは、第1繊維層を後述する第2繊維層と積層した際に(すなわち、繊維積層体を形成した際に)、コットン繊維の一部が第2繊維層の内部に入り込み易く、不織布の液透過性を向上させることができるため、好適に用いることができる。また、繊維長が20mm以上のコットンと、繊維長が10mm以下のコットンとを混合した混合コットンは、繊維長が20mm以上のコットンにより不織布の液透過性を向上させつつ、繊維長が10mm以下のコットンにより不織布の嵩を増大させることができるため、特に好ましく用いることができる。
【0041】
第1繊維層におけるコットンの含有量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されないが、吸水性や保水性、柔軟性などの点から、例えば、1〜70質量%の範囲内であり、好ましくは2〜30質量%の範囲内である。また、第1繊維層に含まれるコットンは、当該第1繊維層内において、コットンの繊維塊を含んでいることが好ましく、特に、コットンの繊維塊が熱可塑性樹脂繊維の集合体からなるマトリックス中に分散していることが好ましい。表面シートの第2面側(非肌対向面側)に配置される第1繊維層に、このようなコットンの繊維塊を含んでいると、吸収体に吸収・保持された尿などの排泄液が吸収体から湿気として放出されたときに、当該湿気を、第1繊維層内のコットンの繊維塊において集中的に(スポット的に)吸収・保持し、第1繊維層の面方向において湿気を吸収・保持した部分の面積を小さくする(スポット的にする)ことができるため、第1繊維層の第1面側から更に放出される湿気の量を最小限に抑えることができる。その結果、吸収体から放出された湿気を、前記不織布の凸部の空隙部に効果的に封じ込めることができる。
【0042】
また、第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維は、熱可塑性樹脂からなる繊維であれば特に制限されず、かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂、6−ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の樹脂が挙げられ、これらの樹脂は単独で使用しても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。
また、このような熱可塑性樹脂からなる繊維の構造は、特に制限されず、例えば、芯鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y字形、C字形等の異形断面繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維などが挙げられ、これらの繊維は単独で使用しても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
【0043】
熱可塑性樹脂繊維の繊度は、特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性、肌触り、液透過性などの点から、通常1.1〜8.8dtexの範囲内であり、好ましくは1.5〜4.6dtexの範囲内である。また、第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維の繊度は、後述する第2繊維層に含まれる疎水性の熱可塑性樹脂繊維の繊維径(繊度)よりも細いことが好ましい。第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維が、第2繊維層に含まれる疎水性の熱可塑性樹脂繊維よりも細い繊維径(繊度)を有していると、第1繊維層に含まれる繊維径の細い熱可塑性樹脂繊維が、同じ第1繊維層に含まれるコットンや第2繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と絡み合い易く、コットンと熱可塑性樹脂繊維との解離に伴う繊維層の分裂や各繊維層間の層間剥離等が生じ難くなるため、不織布が構成成分としてコットンを含むものであっても、不織布として優れた強度を保持することができる。
【0044】
また、第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性、液透過性等の点から、通常20〜100mmの範囲内であり、好ましくは35〜65mmの範囲内である。なお、熱可塑性樹脂繊維は、親水化処理が施されていてもよく、このような親水化処理としては、例えば、界面活性剤や親水剤等を利用した処理(例えば、繊維内部への界面活性剤の練り込み、繊維表面への界面活性剤の塗布等)などが挙げられる。
【0045】
第1繊維層における熱可塑性樹脂繊維の含有量は、特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性などの点から、例えば、30〜99質量%の範囲内であり、好ましくは70〜98質量%の範囲内である。
【0046】
また、第1繊維層は、上述のとおり、実質的にコットン及び熱可塑性樹脂繊維から構成されるが、本発明の効果を阻害しない範囲内においては、前記コットン及び熱可塑性樹脂繊維以外の繊維や任意の添加剤などを含んでいてもよい。
【0047】
次に、本発明の吸収性物品の表面シートを構成する不織布(繊維積層体)の第2繊維層について説明する。
本発明において、表面シートを構成する不織布の第2繊維層は、実質的に疎水性の熱可塑性樹脂繊維から構成される。かかる疎水性の熱可塑性樹脂繊維は、疎水性を有するものであれば特に制限されず、任意の熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。表面シートの肌対向面(第1面)を形成する第2繊維層が疎水性の熱可塑性樹脂繊維によって構成されていると、かかる第2繊維層は排泄液やその湿気を吸収・保持し難いため、着用者に濡れた状態を知覚させたりして、不快感を生じさせるようなことが起こり難い。
ここで、本明細書における「疎水性」とは、水となじみ難い或いは水分を保持し難い性質を意味し、例えば、イオン交換水との接触角が80°〜100°程度となるものをいう。なお、イオン交換水との接触角は、特開2005−324010号公報における「初期接触角の測定」に記載された方法により測定することができる。
また、繊維積層体が第1繊維層と第2繊維層の2層の繊維層からなる場合、第2繊維層を構成する疎水性の熱可塑性樹脂繊維は、繊維同士の絡み合いのし易さなどの点から、第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と同様の繊維(すなわち、第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と同様の材質からなり、同様の繊維長を有する繊維など)を用いることが好ましい。
なお、第2繊維層は、上述のとおり、実質的に疎水性の熱可塑性樹脂繊維から構成されるが、本発明の効果を阻害しない範囲内においては、前記熱可塑性樹脂繊維以外の繊維や任意の添加剤などを含んでいてもよい。
【0048】
そして、本発明において、表面シートを構成する不織布の第2繊維層は、着用者の肌が触れ易い少なくとも上述の凸部において弱酸性を呈するように構成されている。かかる第2繊維層を、弱酸性を呈するように構成する手段は特に制限されないが、例えば、第2繊維層に弱酸性化剤を付着させる方法などが挙げられ、具体的には、第2繊維層形成用の繊維(すなわち、疎水性の熱可塑性樹脂繊維)を浸漬法等により弱酸性化剤で被覆した後に、該繊維を用いて第2繊維層を形成する方法、第2繊維層を形成した後に、該第2繊維層の肌対向面側の表面(すなわち、少なくとも上述の凸部を含む表面)に弱酸性化剤を塗工する方法などが挙げられる。
【0049】
本発明において、第2繊維層に用い得る弱酸性化剤としては、第2繊維層の肌対向面側の表面(すなわち、第1面)を弱酸性化し得るものであれば特に制限されず、例えば、脂肪酸等の有機酸、植物由来油脂等の油類などが挙げられる。上記有機酸としては、コハク酸、乳酸等の飽和脂肪酸;フマル酸、オレイン酸、ウンデシレン酸等の不飽和脂肪酸などの脂肪酸が挙げられ、また、上記油類としては、ヤシ油、パーム核油、パーム油等の飽和脂肪酸を主成分とする植物由来油脂;ヒマシ油、トール油、オリーブ油等の不飽和脂肪酸を主成分とする植物由来油脂などが挙げられる。なお、上述の脂肪酸は、当該脂肪酸のナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩を適量含むものであってもよい。
これらの中でも、酸化分解し難く、着用者から排出される排泄液の温度で作用し易いという点から、融点が40℃以下の不飽和脂肪酸又は油類を用いることが好ましく、さらに、融点が30℃以下の不飽和脂肪酸又は油類を用いることがより好ましい。
なお、上述の有機酸及び油類は、それぞれ単独で用いても、2種類以上を併用してもよく、また、任意の添加剤(例えば、酸化防止剤、エモリエント剤、着色剤、香料等)を含んでいてもよい。
また、上述の有機酸及び油類以外の弱酸性化剤としては、例えば、特開2014−109078号公報や特開2014−231666号公報に開示されている透水性付与剤などが挙げられる。この透水性付与剤は、不織布に耐久性のある透水性も付与することができるため、好適に用いることができる。
【0050】
また、弱酸性化剤を不織布(具体的には、第2繊維層)に付着させる位置は、少なくとも上述の凸部において弱酸性を呈するような位置であれば特に制限されず、上述の凸部のみに付着させても、凸部及び凹部の両方に付着させても、凸部及び凹部を含む不織布の全面に付着させてもよい。上述の凸部は、凹部と比べて尿などの排泄液との接触時間が短いため、このような凸部に弱酸性化剤が付着していると、少なくとも凸部においては、弱酸性化剤が排泄液とともに流れて表面シートから流出してしまうようなことが起こり難く、弱酸性化剤による作用効果(すなわち、着用者の肌をアルカリ性に変化し難くし(換言すれば、着用者の肌を弱酸性に保持し易くし)、皮膚のかぶれを引き起こし難くするという作用効果)を長期間に亘って着実に発揮することができる。このような作用効果は、尿などの排泄液が繰り返し供給されるような場合に、特に有利である。
【0051】
不織布の肌対向面側の表面に弱酸性化剤を塗工する場合、その塗工方法は、特に制限されず、例えば、吐出ノズルを備えた押出装置;スパイラルコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ディップコーター等の非接触式のコーター;接触式のコーターなどの任意の塗工装置を用いることができる。
【0052】
なお、本発明において表面シートを構成する不織布は、本発明の効果を奏し得るものであれば上述の実施形態のような2層の繊維積層体に限定されず、上記第1繊維層及び第2繊維層を含む3層以上の繊維層からなる繊維積層体であってもよい。本発明のように、吸収性物品の着用者の肌が当接する表面シートの第1面が、コットンや親水性繊維等を含まない第2繊維層により形成されていると、第1繊維層のコットンに吸収・保持された尿などの排泄液が、着用者の肌に接触し難くなるため、着用者に濡れた状態を知覚させたりして、着用者に不快感を生じさせるようなことが起こり難くなる上、着用者の肌(皮膚)がふやけるようなことも生じ難くなる(結果的に、皮膚のかぶれも引き起こし難くなる)。さらに、表面シートの第1面がコットンを含まない繊維層で形成されていると、コットンによる肌触りの悪化や柔軟性の低下なども防ぐことができるため、表面シートとして優れた肌触りや柔軟性を確保することができる。
【0053】
また、表面シートを構成する不織布が、3層以上の繊維層からなる繊維積層体である場合、上記第1繊維層及び第2繊維層以外のその他の繊維層は、特に制限されず、例えば、羊毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、熱可塑性樹脂繊維等の合成樹脂繊維などからなる繊維層が挙げられる。上記その他の繊維層は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、任意の添加剤などを含んでいてもよい。
なお、表面シートを構成する不織布が、3層以上の繊維層からなる繊維積層体によって構成された態様については、後述する本発明の別の実施形態において詳述する。
【0054】
表面シートを構成する上記不織布において、各繊維層の坪量は、特に制限されないが、不織布の強度や柔軟性、吸収性などの点から、それぞれ、例えば、1〜60g/m
2の範囲内であり、好ましくは10〜30g/m
2の範囲内である。不織布全体としての坪量も、特に制限されないが、通常は10〜100g/m
2の範囲内であり、好ましくは15〜75g/m
2の範囲内であり、更に好ましくは20〜50g/m
2の範囲内である。さらに、上記不織布の厚みも、特に制限されないが、通常は0.1〜5mmの範囲内であり、好ましくは0.5〜3mmの範囲内、更に好ましくは0.8〜2mmの範囲内である。
【0055】
本発明において、上述の凹凸構造を賦形する前の不織布(すなわち、繊維積層体)を製造する手段は、特に限定されず、例えば、上述の各繊維層を形成するための繊維(すなわち、第1繊維層を形成するためのコットン及び熱可塑性樹脂繊維、第2繊維層を形成するための熱可塑性樹脂繊維(弱酸性化剤によって被覆されたものを含む。)など)を用いて、各繊維層に対応するウェブ(フリース)をそれぞれ形成し、各ウェブ内及びウェブ間の繊維同士を物理的又は化学的に結合させる方法などが挙げられる。
【0056】
具体的には、以下の手順に従って、上述の第1繊維層及び第2繊維層を含む2層の繊維積層体を製造することができる。
(1)シート状部材を一の方向に搬送する搬送装置と、該搬送装置の上方において搬送方向の上流側に配置された第1段のカーディング装置と、前記搬送装置の上方において搬送方向の下流側(すなわち、第1段のカーディング装置よりも下流側)に配置された第2段のカーディング装置と、該第2段のカーディング装置の下流側に配置されたエアスルー方式の加熱装置とを備えた製造装置を用意する。
(2)前記第1段のカーディング装置に、第2繊維層を形成するための熱可塑性樹脂繊維を供給し、前記カーディング装置内の回転ロールのピンによって前記熱可塑性樹脂繊維を開繊して、前記第2繊維層に対応するウェブを前記搬送装置の搬送面上に形成する。
(3)前記搬送装置の搬送面上に形成された前記第2繊維層に対応するウェブを、搬送方向の下流側に搬送しながら、前記第2段のカーディング装置に、第1繊維層を形成するためのコットンと熱可塑性樹脂繊維を供給し、前記カーディング装置内の回転ロールのピンによって各繊維を開繊して、前記第1繊維層に対応するウェブを、搬送中の前記第2繊維層に対応するウェブ上に形成する。
(4)前記第2繊維層に対応するウェブ上に前記第1繊維層に対応するウェブが積層した積層ウェブを、前記エアスルー方式の加熱装置に搬送し、該加熱装置内で、各ウェブ内及びウェブ間の繊維同士を交絡させ、任意に前記熱可塑性樹脂繊維同士を熱融着させるとともにコットンを熱可塑性樹脂繊維の表面に融着固定させることにより、前記第1繊維層と前記第2繊維層とが積層した2層の繊維積層体を製造することができる。
【0057】
なお、3層以上の繊維層からなる繊維積層体を製造する場合は、カーディング装置を3段以上配置した製造装置を用いて、上記手順と同様にして製造することができる。
【0058】
各繊維層に対応するウェブの形成方法は、上述の方法に限定されず、例えば、湿式法などを採用してもよい。また、ウェブの結合方法も、上述の方法に限定されず、例えば、水流交絡法やニードルパンチ法などを採用してもよい。
【0059】
このようにして製造された繊維積層体は、任意の凹凸賦形加工方法(例えば、特許第5829349号公報や特許第5829326号公報等に開示される凹凸賦形方法)によって、後述する特定の凹凸構造が付与され、本発明の吸収性物品の表面シートに用い得る凹凸構造を備えた不織布が得られる。
【0060】
次に、表面シートの凹凸構造について、上述の実施形態に係る使い捨ておむつ1を用いて更に詳細に説明する。
【0061】
本実施形態に係る使い捨ておむつ1において、表面シート2は、
図3〜
図7に示すように、吸収体4とは反対側に位置する第1面2aと、この第1面2aとは反対側である吸収体側の第2面2bとを有し、さらに、表面シート2は、長手方向Lに延設され且つ幅方向Wに所定間隔で並ぶように形成された、第1面2aの方向に向けて突出する複数の凸部11と、隣り合う凸部11の間において長手方向Lに延設された、第2面2bの方向に向けて窪む複数の凹部12とを備えた凹凸構造を有している。そして、表面シート2は、前記凸部11の第2面側に、表面シート2(不織布)の第2面2bが面する空隙部14を有している。
さらに、凹部12は、
図3〜
図7に示すように、凸部11の頂部13における第1面2aの位置よりも吸収体4側に位置する第1底部22を備えた第1凹部21と、この第1凹部21内において長手方向Lに不連続に設けられ、第1底部22に開口する窪み状に形成された複数の第2凹部26とを有している。この第2凹部26は、第1底部22から吸収体側(すなわち、第2面側の方向)に向かって延設された周壁部27と、この周壁部27の吸収体4側の端部において該端部を塞ぐように設けられた、表面シート2の中で最も繊維密度が高い第2底部28とを備えている。
【0062】
そして、本実施形態において表面シート2は、凸部11の頂部13における第2面2bが吸収体4に接合されておらず、凹部12における第2凹部26の第2底部28が、吸収体4の表面シート側の部分(本実施形態においては、吸収体4の表面シート側の面)に接着剤の層8により接合されている。また、本実施形態においては、第1凹部21の第1底部22の第2面2bの一部も、
図5〜
図7に示すように、吸収体4の表面シート側の部分に前記接着剤の層8によって接合されている。一方、凸部11については、頂部13を含め、第2面2bの部分は吸収体4に接合されていない。
【0063】
表面シート2は、
図3、
図5及び
図6に示すように、凸部11をなす第1面2aの領域及び第2面2bの領域が、第2面2bから第1面2aへ向かう方向(すなわち、吸収体4とは反対側に向かう方向)に凸となる形状に湾曲した構成となっている。一方、凹部12の第1凹部21は、その第1凹部21をなす第1面2aの領域及び第2面2bの領域が、第1面2a側から第2面2b側へ向かう方向(すなわち、吸収体4に向かう方向)に向けて凸となる形状に湾曲した構成となっている。したがって、表面シート2は、幅方向Wにおいて、凹凸が交互に繰り返される略波形の断面形状を有している。
【0064】
上記したように、凸部11は、前記第1面2aにおいて、長手方向L(すなわち、表面シート2の長手方向)に延設されているとともに、幅方向Wに所定間隔で複数列配設されている。本実施形態においては、各凸部11は、いずれも長手方向Lに向けて連続的且つ他の凸部11と相互に平行となるように延設されている。
また、本実施形態においては、凸部11は、吸収体の前記長手方向(第1方向)における両方の端縁を超えて延設されているが、本発明においては、このような態様に限定されず、凸部は、吸収体の前記第1方向における少なくとも一方の端縁まで又は一方の端縁を超えて延設されていてもよい。凸部がこのように延設されていると、吸収体の肌対向面側から放出される湿気だけではなく、吸収体の長手方向(第1方向)における端縁(側面)から放出される湿気に対しても、上述の凸部の第2面側の空隙部に封じ込めることができるため、着用者に蒸れなどをより一層感じさせ難くすることができる。
【0065】
本発明において、隣り合う凸部の間の間隔は、特に制限されないが、0.25〜5mmの範囲内であることが好ましく、0.5〜3mmの範囲内であることがより好ましく、0.75〜2mmの範囲内であることが更に好ましい。ここで、「隣り合う凸部の間の間隔」とは、各凸部における表面シートの幅方向の略中央位置(実質的に凸部の頂部)の間の距離を指す。隣り合う凸部の間の間隔の距離が0.25mm以上であると、不織布の凹凸構造が微細になり過ぎず、不織布の凸部と着用者の肌との接触面積を十分に減らすことができるため、不織布の表面(第1面)の肌触りが良好になる。一方、隣り合う凸部の間の間隔の距離が5mm以下であると、上述の凹凸構造を生かした柔軟な肌触りが得られ易くなる。
【0066】
さらに、本発明において、凸部の高さ(すなわち、第1凹部の第1底部における第1面から凸部の頂部までの距離)は、特に制限されないが、0.25〜5mmの範囲内であることが好ましく、0.5〜3mmの範囲内であることがより好ましく、0.75〜2mmの範囲内であることが更に好ましい。この凸部の高さが0.25mm以上であると、凸部の突出が小さくなり過ぎず、上述の凹凸構造を生かした柔軟な肌触りが得られ易くなる。一方、凸部の高さが5mm以下であると、凸部の突出が大きくなり過ぎず、鋭利な構造にならないため、柔軟な肌触りが得られ易くなる。
【0067】
また、上述の実施形態において、凸部11の頂部13における第2面2bと吸収体4の表面シート側の面との間の距離は、
図5に示すように、第1底部22の第1面2aにおいて最も吸収体4に近い部分と吸収体4の表面シート側の面との間の距離よりも小さくなっている。すなわち、凸部11の頂部13は、全体として第1底部22の第1面2aよりも、表面シート2から離れた位置(
図5においては、上方側)に配設された態様となっている。これにより、凸部11の第2面2bと吸収体4の表面シート側の面との間に、空隙部14としての空間を安定的に形成することができる上、表面シート2の凸部11に対して着用者からの外力、特に、着用者の肌との摩擦等に伴う幅方向のせん断力が加わったときに、その外力の方向や大きさに応じて凸部11が変形又は潰れることによりその外力を緩衝することができる。その結果、吸収体4から放出される湿気をより安定的に抑制することができるとともに、表面シート2と着用者の肌との擦れにより発生する表面シート2の張力を低減し、表面シート2と吸収体4との剥離をより確実に抑えることができる。
なお、上述の実施形態においては、凸部11の頂部13における第2面2bと吸収体4の表面シート側の面との間の距離が、第1底部22の第1面2aにおいて最も吸収体4に近い部分と吸収体4の表面シート側の面との間の距離よりも小さくなっているが、本発明においては、表面シートと吸収体との剥離を安定的に抑止できれば、凸部の頂部における第2面と吸収体の表面シート側の面との間の距離と、第1底部の第1面において最も吸収体に近い部分と吸収体の表面シート側の面との間の距離との関係は、必ずしもこのような関係を満たしていなくてもよい。
【0068】
本実施形態において、第1凹部21は、幅方向において凸部11と一体に形成されている。また、この第1凹部21の第1底部22は、その最大部分厚さが表面シート2において最も厚くなっていて、当該第1底部22は、全体として弾性に優れた部分となっている。なお、表面シート2に形成されている複数の第1凹部21は、いずれも相互に平行であり且つ同幅に形成されている。また、本実施形態においては、第1凹部21の第1底部22の第2面2bは、少なくとも第1底部22において最も表面シート側に位置する部分及びその近傍の部分が、吸収体4の表面シート側の面に接合されている。
【0069】
また、第2凹部26は、
図3に示すように、平面視にて略矩形状の開口を有していて、全体として表面シート2の吸収体4側に向かって突出して、略直方体状の内部空間を備えている。この第2凹部26は、凹部12の長手方向(すなわち、第1凹部21の長手方向)において一定の間隔で配設されていて、各第2凹部26は、他の第2凹部26とは相互に独立して形成されている。
【0070】
第2凹部26の第1底部22から吸収体側に向かって延設された周壁部27は、表面シート2の長手方向に沿うように形成された一対の第1周壁部29、29と、表面シート2の幅方向に沿うように形成された一対の第2周壁部30、30とを備えていて、一対の第1周壁部29、29同士は、相互に向かい合う位置に配設され、一対の第2周壁部30、30同士も、相互に向かい合う位置に配設されている。
【0071】
さらに、一対の第1周壁部29、29の各々には、
図3、
図5及び
図6に示すように、第1凹部21の内部空間から第2面2bに通じる孔部31が形成されている。本実施形態においては、孔部31は、一対の第1周壁部29、29の各々に1つずつ設けられており(すなわち、1つの第1凹部21には、2つの孔部31が設けられており)、それらの孔部31は、第1周壁部29において、厚さ方向Tの第2底部28寄りの位置に形成されている。一方、一対の第2周壁部30、30には、孔部31に相当するものは存在せず、各第2周壁部30は、吸収体4側に位置する端部の全部が第2底部28と直接的に連結されている。
【0072】
なお、本発明において、表面シートが上述の第2凹部を備えることは、必須の構成要件ではないものの、表面シートは、上述のような第2凹部を備えた特定の凹凸構造を有していることが好ましい。表面シートがこのような特定の凹凸構造を有していると、凹部の底(より具体的には、第1凹部の第1底部)が着用者の肌に接触する機会を極力減らすことができるとともに、仮に、上述の第1底部が着用者の肌に触れたとしても、その接触面積を極力小さくすることができる。すなわち、上述の特定の凹凸構造を有する表面シートは、凸部、次いで第1凹部の第1底部の順に着用者の肌に触れ易くなっている(すなわち、吸収体に接合されておらず且つ表面シートの中では最も柔軟性の高い凸部が、上述の第1底部よりも着用者の肌に触れ易くなっている)ことに加えて、さらに、着用者の肌に触れる接触面積の少ない方が柔軟性を感じ易いということを考慮して、上述の第2凹部が形成されている(すなわち、第1凹部が存在しない部分が形成されている)ため、第1凹部の第1底部において着用者の肌に接する部分が少なく、着用者がより柔軟性を感じ易くなっている。なお、上述の第2凹部は、第1凹部の第1底部に形成されているため、着用者の肌に触れる機会が少なく、該第2凹部に接触することによる違和感や異物感が生じ難くなっている。
【0073】
さらに、上述の特定の凹凸構造を有する表面シートは、当該表面シートの第1面側から掛かる厚さ方向の応力を、上述の第1凹部が第2面側に撓むことによって緩衝することができるため、表面シートを構成する不織布がコットンを含むものであっても、十分に柔軟性を確保することができる。
【0074】
また、第2凹部の深さ(すなわち、第1凹部の第1底部における第1面(上面)から第2凹部の第2底部における第1面までの距離)は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されないが、0.05〜2mmの範囲内であることが好ましく、0.075〜1.5mmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜1mmの範囲内であることが更に好ましい。かかる第2凹部の深さが0.05mm以上であると、後述する第2底部の剛性が確保し易く、不織布の厚さ方向の強度を十分に確保することができる。一方、かかる第2凹部の深さが2mm以下であると、吸収性物品の他の構成部材(例えば、吸収体や不織布、フィルム等)と貼り合わせる際に、厚さ方向の強度を確保し易い上、圧縮した際には、着用者が剛直感を感じ難くなる。
【0075】
また、第2凹部の深さと上述の凸部の高さとの関係は、第2凹部の深さが、凸部の高さの10〜80%の範囲内であることが好ましく、15〜70%の範囲内であることがより好ましく、20〜60%の範囲内であることが更に好ましい。かかる第2凹部の深さが凸部の高さの10%以上であると、第2凹部の周壁部における孔部の形成スペースを十分に確保することができるため、孔部が不十分な形で形成されたり或いは形成されなかったりするようなことが起こり難く、上述の優れた柔軟性が得られ易くなる。一方、第2凹部の深さが凸部の高さの80%以下であると、孔部が過度に大きく形成されてしまうようなことが起こり難いため、第2凹部の周壁部の強度が低下して毛羽立ち易くなるようなことが起こり難く、不織布の良好な肌触りを確保し易くなる。
【0076】
本発明において、第2凹部の第1方向(長手方向)の長さは、特に制限されないが、0.25〜5mmの範囲内であることが好ましく、0.5〜3mmの範囲内であることがより好ましく、0.75〜2mmの範囲内であることが更に好ましい。かかる第2凹部の第1方向の長さが0.25mm以上であると、第2凹部として一定のサイズを確保することができるため、当該第2凹部によって奏される上述の作用効果を十分に発揮することができる。一方、かかる第2凹部の第1方向の長さが5mm以下であると、第2凹部が第1方向に長くなり過ぎず、平坦な不織布や凹部が存在しない不織布等と比べて、より柔軟な肌触りが得られ易くなる。
【0077】
一方、第2凹部の第2方向(幅方向)の長さは、特に制限されないが、0.25〜5mmの範囲内であることが好ましく、0.5〜3mmの範囲内であることがより好ましく、0.75〜2mmの範囲内であることが更に好ましい。第2凹部の第2方向の長さが0.25mm以上であると、第2凹部として一定のサイズを確保することができるため、当該第2凹部によって奏される上述の作用効果を十分に発揮することができる。一方、第2凹部の第2方向の長さが5mm以下であると、第2凹部が大きくなり過ぎず、着用者の肌が不織布に接触した際に、違和感や異物感が生じ難くなる。
【0078】
また、第2凹部の第2方向におけるピッチ(すなわち、第2方向において隣り合う第2凹部同士の距離)は、特に制限されないが、2.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。かかるピッチが2.0mm以下であると、不織布を構成する第1繊維層内のコットンが、第2凹部の第2底部に保持され易くなるため、かかる第2底部において、第1繊維層内のコットンと熱可塑性樹脂繊維が解離することによる繊維層の分裂や各繊維層間の層間剥離などをより一層生じ難くすることができる。さらに、かかるピッチが2.0mm以下であることにより、不織布の第1面に供給された尿などの排泄液が、隣り合う凸部の間に配設された第2凹部の第2底部へとスポット的に引き込まれ易くなるため、表面シートとしてより一層優れた吸収性能(特に、吸収速度や液移行性等)を発揮することができるとともに、吸収体から放出された湿気が、前記不織布の第2面側から第1面側へ向かって更に移行し難くなる。その結果、吸収体から放出された湿気を上述の凸部の空隙部に効果的に封じ込めることができ、着用者に蒸れなどをより一層感じ難くさせることができる。
【0079】
さらに、上述の実施形態のように、第2凹部の一対の第1周壁部の各々に孔部が設けられていると、孔部が設けられている凹部と隣り合う凸部の繊維の引張力を解放して、凸部全体或いは凸部を形成する繊維が移動する自由度を向上させることができるため、凸部の柔軟性、より具体的には凸部における表面シートの厚さ方向の柔軟性と、表面シートの長手方向(第1方向)や幅方向(特に幅方向)に肌を滑らせた際の柔軟性とが向上し、滑らかな感触の肌触りを得ることができる。これにより、凸部において、優れた硬軟感(厚さ方向への優れた柔らかさ)と、長手方向及び幅方向への優れた粗滑感(表面シートの表面(特に幅方向)の優れた滑らかさ)とが付与され、表面シート全体として優れた硬軟感及び粗滑感を確保することができるとともに、柔軟な肌触りを得ることができる。さらに、表面シートの第1面が滑らかになることによって、着用者の肌と擦れた際の摩擦等による物理的刺激を低減することができるため、かかる物理的刺激に起因する肌のかぶれも引き起こし難くすることができる。
【0080】
また、上述の実施形態のように、第2周壁部に孔部が設けられていないと、表面シートの長手方向(すなわち、凸部や凹部が延びている方向)に肌を滑らせた際に、第2凹部による段差が肌に引っ掛かり難くなるため、表面シートの長手方向への滑らかさを確保することができる。すなわち、上述の孔部が設けられていない第2周壁部は、第1底部及び第2底部と連続して継ぎ目なく一体に形成されているため、表面シートの長手方向に肌を滑らせた際に、肌が第2凹部による第1底部の段差を感じ難く、凸部や凹部に沿って滑らかに移動し易い。これにより、凸部の柔軟性や繊維の柔軟性を生かしつつ、表面シートの長手方向への滑らかさを確保することでき、更には、上述の物理的刺激に起因する肌のかぶれも、より引き起こし難くすることができる。
【0081】
さらに、上述の実施形態のように、孔部が第1周壁部の第2底部寄りの位置に設けられていると、孔部が肌の触れ易い凸部や第1底部から離れた位置に存在することとなるため、孔部が着用者の肌に触れる機会を低減することができ、着用者に違和感や異物感を生じ難くすることができる。これにより、不織布の平面方向に肌を滑らせた際の滑らかさを、より安定的に確保することができる上、上述の物理的刺激に起因する肌のかぶれも、より安定的に引き起こし難くすることができる。
【0082】
なお、上述の実施形態において、孔部31は、
図7に示すように、表面シート2に含まれている熱可塑性樹脂繊維を溶融することなく、その熱可塑性樹脂繊維を破断することにより形成されており、かかる孔部31の周縁には、表面シート2を構成する不織布に含まれる熱可塑性樹脂繊維のうち、孔部31によって破断された破断繊維の破断端部が含まれている。この破断繊維の破断端部は、熱可塑性樹脂繊維を長手方向に引っ張ったり、物理的に切断したりして破断することによって形成された端部であり、熱可塑性樹脂繊維を溶融して破断した端部のように、繊維の端部が溶けて丸くなって繊維径が大きくなっているようなものではなく、繊維が千切れたことによって先細りになった態様或いは繊維径の変化がほとんど生じていない態様となっている。これにより、仮に、着用者の肌が孔部31の周縁に触れたとしても、溶融により硬化した熱可塑性樹脂繊維が存在しないため、ごわつきや繊維の引っ掛かりによる違和感が生じ難く、表面シート2の硬さや粗さも感じ難くなっている。
【0083】
また、
図7に示すように、孔部31の内部空間には、熱可塑性樹脂繊維のうちの一部の繊維が架け渡されている一方、一部の破断繊維については、その破断端部が孔部31の内部空間に延出している。すなわち、孔部31の内部空間は、その内部空間内に架け渡された熱可塑性樹脂繊維と、一部の延出した熱可塑性樹脂繊維(破断繊維の破断端部)とが混在しており、完全に開放された空間とはなっていない。これにより、仮に、着用者の肌が孔部31に触れたとしても、内部空間内の熱可塑性樹脂繊維が、孔部31と、第2凹部26の第1周壁部29や第2底部28との間の段差を低減して感触の違いを生じ難くするため、着用者の肌が触れた際の違和感を生じ難くすることができる。
なお、かかる孔部の内部空間の開孔率(孔部が形成された周壁部(第1周壁部)の面積に対する、孔部の開口面積の比率)は、1〜50%の範囲内であることが好ましく、1.5〜35%の範囲内であることがより好ましく、2.5〜20%の範囲内であることが更に好ましい。かかる開孔率が1%以上であると、凸部や凸部内の繊維に十分な自由度を付与することができるため、凸部の柔軟性を良好にすることができる。一方、かかる開孔率が50%以下であると、孔部の設けられた第1周壁部の強度を確保し易い上、孔部の周縁の境目が触感上認識し難くなる。ただし、かかる開孔率は、吸収性物品の種類や用途等に応じて上記の範囲以外であってもよく、任意に設定することができる。
【0084】
なお、上述の実施形態においては、表面シート2が、第2凹部26の一対の第1周壁部29、29の各々に、第2面2bに通じる孔部31を備えているが、本発明においては、凸部の柔軟性を確保することができれば、前記周壁部には孔部が形成されていなくてもよい。
【0085】
また、上述の実施形態において第2底部28は、表面シート2を構成する不織布が第1面2aから第2面2bの方向に向かって圧縮されることにより形成されたものであるため、上述のように表面シート2の中で最も繊維密度が高く、且つ剛性も最も大きくなっている。すなわち、かかる表面シート2を構成する不織布は、その厚さ方向において、相対的に繊維密度の低い凸部から繊維密度の最も高い第2凹部の第2底部にかけて密度勾配が存在するため、不織布の第1面に供給された尿などの排泄液が、上述の凸部から第2凹部の第2底部へとスポット的に引き込まれ易く、表面シートとして優れた吸収性能(特に、吸収速度や液移行性等)を発揮することができるとともに、吸収体から放出された湿気が、不織布の第2面側から第1面側へ向かって移行し難くなる。その結果、吸収体から放出された湿気を上述の凸部の空隙部に効果的に封じ込めることができ、着用者に蒸れなどをより一層感じ難くさせることができる。
【0086】
また、この第2底部28の第1面2a(すなわち、第2凹部の内部側の面)及び第2面2b(すなわち、吸収体側の面)は、全体として略平坦状に形成されており、さらに、第2底部28の第2面2bは、吸収体4の表面シート側の面に接触している。第2底部28の第2面2bがこのように略平坦状に形成されていると、第2底部28と吸収体4との接触面積を可及的に大きくすることができるため、かかる第2底部28の第2面2bは、吸収体4の表面シート側の面に対して、可能な限り大きな接合領域を確保することができる。これにより、表面シート2は吸収体4から剥離し難くなる上、表面シート2と吸収体4との間の排泄液の移行をよりスムーズに行うことができる。特に、本実施形態においては、吸収体4の表面シート側の面も略平坦状に形成されているため、上述の第2底部28の第2面2bは、吸収体4の表面シート側の面と面接触した状態で相互に接合されている。
したがって、表面シート2は、吸収体4と安定的且つ強固に接合することができるため、相互に剥離し難く、また、表面シート2と吸収体4との間の排泄液の移行もスムーズに行うことができる。
なお、上述の実施形態においては、第2底部28の第2面2bが略平坦状に形成されているが、本発明においては、第2底部における接合強度や液移行性を十分に確保することができれば、第2底部の第2面は、必ずしも略平坦状に形成されていなくてもよい。さらに、上述の実施形態においては、第1底部22の一部が、吸収体4の表面シート側の面に接合されているが、本発明においては、表面シートと吸収体が安定的に接合されていれば、第1底部は、必ずしも吸収体に接合されていなくてもよい。なお、この場合であっても、第2底部は吸収体に接合されていることが好ましい。
【0087】
また、上述の実施形態において、第2凹部26は、
図4に示すように、平面視にて千鳥状の配置形態で前記表面シート2に配置されている。そして、表面シート2は、
図5に示すように、第2凹部26と、該第2凹部26に幅方向において隣り合う他の第2凹部26との間に、少なくとも2つの凸部11が位置した構成となっている。すなわち、表面シート2は、幅方向において、隣り合う第2凹部26同士の間に、凸部11、第1凹部21及び凸部11がこの順でそれぞれ配置されている。
表面シート2をこのように構成すると、当該表面シート2が吸収体4から剥離するのをより安定的に防ぐことができ、凸部の柔軟性も維持し易くなる。すなわち、表面シート2は、第2凹部26が吸収体4に接合されていることによって、幅方向に張力が発生する可能性があるが、隣り合う第2底部28、28の間に、第2底部28よりも繊維密度が低くて該第2底部28よりも変形し易い第1底部22が配置されているため、かかる第1底部22の変形によって上述の張力を吸収することができる。これにより、凸部11の幅方向の自由度が阻害され難くなるため、かかる凸部11の柔軟性を安定的に維持することができる。
なお、上述の実施形態においては、表面シート2が、第2凹部26と、その第2凹部26に幅方向において隣り合う他の第2凹部26との間に、少なくとも2つの凸部11が位置した構成を有しているが、本発明においては、このような構成に限定されず、幅方向に隣り合う第2凹部間の凸部の数は、任意に設定することができる。
【0088】
さらに、表面シート2は、
図4及び
図6に示すように、凹部12の第1凹部21と、その凹部12と隣り合う他の凹部12の第1凹部21とが相互に隣り合う構造が、幅方向の全幅に亘って連続する部分を有している。すなわち、表面シート2は、幅方向の全幅に亘って、第1凹部21、凸部11及び第1凹部21がこの順で繰り返し配置された部分を有しており、かかる部分には第2凹部26が存在しない。これは、表面シート2において、第2凹部26が千鳥状に配置されているとともに、長手方向における第2凹部26の配置間隔が、その第2凹部26の長手方向の大きさよりも、広く設定されているためである。
表面シート2がこのような部分を有していると、第1凹部21における第1底部22の変形し易さを利用して、凸部11に、より高い柔軟性を付与することができる。すなわち、表面シート2が、隣り合う凸部11同士の間に、吸収体4に接合された第2凹部26が存在しない部分を有していると、かかる第2凹部26の第2底部28よりも繊維密度が低く、該第2底部28に比べて変形し易い第1底部22が、上述の凸部11を着用者の動きに合わせて肌に追従させ易くすることができるため、かかる凸部11をより安定的に肌にフィットさせることができる。さらに、第1底部22の柔軟性を利用して、凸部11も、より柔軟に変形することができるため、表面シート2全体として、より一層高い柔軟性を確保することができる。
なお、上述の実施形態においては、表面シート2は、凹部12の第1凹部21と、その凹部12と隣り合う他の凹部12の第1凹部21とが相互に隣り合う構造が、幅方向の全幅に亘って連続する部分を有しているが、本発明においては、表面シートは、このような部分を有していなくてもよい。
【0089】
本発明において、表面シートの凹凸構造は、本発明の効果を奏し得るものであれば上述の実施形態に限定されず、任意の凹凸構造を採用することができる。
また、表面シートに用いる不織布の積層構成や吸収体の構成等についても、本発明の効果を奏し得るものであれば上述の実施形態の構成に限定されず、所望の特性や用途等に応じて任意の構成を採用することができる。
【0090】
以下、本発明の別の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と異なる構成以外の構成(例えば、表面シートが、凹凸構造を有し、かかる凹凸構造の少なくとも凸部において弱酸性を呈するという構成等)は、基本的に上述の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
本発明の別の実施形態においては、吸収性物品の表面シートとして用いられる不織布が、3層の繊維層からなる繊維積層体である。かかる繊維積層体(不織布)は、不織布の肌対向面(第1面)を形成する第2繊維層(肌対向面側繊維層)と、該第2繊維層の非肌対向面側の面に隣接する、熱可塑性樹脂繊維を含み且つコットンを含まない第3繊維層(中間層)と、該第3繊維層の非肌対向面側の面に隣接する、コットンを含む第1繊維層(非肌対向面側繊維層)とによって構成されている。
表面シートとして用いられる不織布がこのように構成されていると、表面シートの肌対向面を形成する第2繊維層とコットンを含む第1繊維層との間に、中間層として第3繊維層が介在して、第2繊維層と第1繊維層とが隔離されるため、非肌対向面側に位置する第1繊維層のコットンに吸収・保持された尿などの排泄液が肌対向面側に位置する第2繊維層に、ひいては着用者の肌に更に伝わり難くすることができる。これにより、着用者に濡れた状態を知覚させたりして、不快感を生じさせるようなことがより起こり難くなり、さらに、着用者の肌が排泄液(吸収体から放出される湿気を含む。)によってふやけるようなことも、より生じ難くなる(結果的に、皮膚のかぶれもより引き起こし難くなる)。
【0092】
この別の実施形態における3層の繊維積層体の具体的な構成としては、例えば、以下のような構成が挙げられる。
[肌対向面側繊維層](第2繊維層)
弱酸性化剤によって被覆された、繊度2.8dtex、繊維長45mm及び坪量10g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維
[中間層](第3繊維層)
繊度2.8dtex、繊維長45mm及び坪量10g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維
[非肌対向面側繊維層](第1繊維層)
繊度2.2dtex、繊維長44mm及び坪量8g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維と、繊度1,7dtex、繊維長45mm及び坪量1g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維、並びに坪量1g/m
2のコットンの混合物
【0093】
また、本発明の更に別の実施形態においては、吸収性物品の表面シートとして用いられる不織布が、3層の繊維層からなる繊維積層体であって、かかる繊維積層体(不織布)が、不織布の肌対向面(第1面)を形成する第2繊維層(肌対向面側繊維層)と、該第2繊維層の非肌対向面側の面に隣接する、コットンを含む第1繊維層(中間層)と、該第1繊維層の非肌対向面側の面に隣接する、熱可塑性樹脂繊維を含み且つコットンを含まない第3繊維層(非肌対向面側繊維層)とによって構成されている。
表面シートとして用いられる不織布がこのように構成されていると、コットンを含む第1繊維層と不織布の凹凸構造における凸部の第2面側(非肌対向面側)の空隙部との間に、第3繊維層が介在する構造となるため、かかる第3繊維層の非肌対向面側に配置された吸収体から放出される湿気を封じ込める領域(すなわち、空隙部及び第3繊維層によって構成される領域)を、より広く確保することができる(このとき、第3繊維層は、吸収体から放出される湿気を封じ込める補助空間として機能する)。その結果、吸収体から放出された湿気を、第1繊維層よりも非肌対向面側の領域において効果的に封じ込めることができ、着用者に蒸れなどをより一層感じ難くさせることができる上、着用者の肌が排泄液(吸収体から放出される湿気を含む。)によってふやけるようなことも、より生じ難くなる(結果的に、皮膚のかぶれもより引き起こし難くなる)。
【0094】
この別の実施形態における3層の繊維積層体の具体的な構成としては、例えば、以下のような構成が挙げられる。
[肌対向面側繊維層](第2繊維層)
弱酸性化剤によって被覆された、繊度2.8dtex、繊維長45mm及び坪量10g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維
[中間層](第1繊維層)
繊度2.2dtex、繊維長44mm及び坪量8g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維と、繊度1,7dtex、繊維長45mm及び坪量1g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維、並びに坪量1g/m
2のコットンの混合物
[非肌対向面側繊維層](第3繊維層)
繊度2.8dtex、繊維長45mm及び坪量10g/m
2のPET/PE芯鞘型複合繊維
【0095】
なお、上述の各別の実施形態において、第3繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維は、特に制限されず、第1繊維層又は第2繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維と同様のものを用いることができる。さらに、これらの別の実施形態においては、各繊維層は、熱可塑性樹脂繊維の坪量が同一であり、また、上述の第2繊維層及び第3繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維が、それぞれ第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維よりも大きい繊維径(繊度)を有していることが好ましい。不織布(繊維積層体)がこのような構成を備えていると、第1繊維層に含まれる熱可塑性樹脂繊維の繊維量(繊維本数)が、必然的に上述の第2繊維層及び第3繊維層よりも多くなるため、コットンを含む第1繊維層の強度をより一層向上させることができる。また、このような不織布は、第1繊維層の熱可塑性樹脂繊維が、第2繊維層又は第3繊維層の熱可塑性樹脂繊維と絡み合い易くなるため、不織布を構成する繊維層が比較的剛性の高いコットンを含むような場合であっても、各繊維層間の層間剥離が生じ難くなる。
【0096】
また、本発明の更に別の実施形態においては、吸収性物品が、裏面シートの非肌対向面側(すなわち、吸収体とは反対側)に裏面フィルムを有していて、該裏面フィルムは、前記裏面シートよりも低い通気度を有している。裏面シートの非肌対向面側に、このような通気度の低い裏面フィルムを有していると、裏面シートから裏面フィルムにかけて通気度が低くなるという通気度勾配が形成されるため、吸収体から非肌対向面側(すなわち、裏面シート側)へ向けて放出された湿気が、裏面シートを介して裏面フィルムへと引き込まれ易くなり、更には吸収性物品の外部へと抜け易くなる。これにより、吸収体から肌対向面側に(すなわち、裏面シートとは反対側に)放出される湿気の量を低減させることができるため、着用者に蒸れなどをより感じ難くさせることができ、さらに、着用者の肌が排泄液(吸収体から放出される湿気を含む。)によってふやけるようなことも、より生じ難くなる(結果的に、皮膚のかぶれもより引き起こし難くなる)。
【0097】
また、本発明の更に別の実施形態においては、吸収体が、該吸収体の非肌対向面側の面に圧搾部を有している。吸収体が非肌対向面側の面に圧搾部を有していると、吸収体に吸収・保持された排泄液が、吸収体の非肌対向面側の面における圧搾部に溜まり易くなる一方、吸収体の肌対向面側の面には残り難くなるため、かかる吸収体から肌対向面側に(すなわち、表面シート側に)放出される湿気の量を低減させることができ、着用者に蒸れなどをより一層感じ難くさせることができる上、着用者の肌が排泄液によってふやけるようなことも、より一層生じ難くなる(結果的に、皮膚のかぶれもより一層引き起こし難くなる)。
【0098】
また、本発明の更に別の実施形態においては、吸収体が、該吸収体の非肌対向面側の面において吸収性物品の長手方向及び/又は幅方向に延びる線状圧搾部を有し、さらに、肌対向面側の面において互いに離間する複数の点状圧搾部を有している。吸収体が非肌対向面側の面にこのような線状圧搾部を有していると、吸収体に吸収・保持された排泄液が、吸収体の非肌対向面側の面において、前記長手方向及び/又は前記幅方向に延びる線状圧搾部に沿って拡散した状態で溜まり易くなる一方、吸収体の肌対向面側の面には残り難くなるため、吸収体から肌対向面側に(すなわち、表面シート側に)放出される湿気の量を低減させることができ、着用者に蒸れをより一層感じ難くさせることができる。加えて、吸収体が肌対向面側の面に上記のような複数の点状圧搾部を有していると、かかる点状圧搾部は、繊維密度が高く毛細管現象により吸液部として機能するため、尿などの排泄液が吸収体内へとスポット的に吸収され易くなるとともに、かかる点状圧搾部を介して肌対向面側へ(すなわち、表面シート側へ)放出され難くなり、結果的に、吸収体から肌対向面側に放出される湿気の量を低減することができ、着用者に蒸れなどをより一層感じ難くさせることができる。さらに、着用者の肌が湿気によってふやけるようなことも、より一層生じ難くなり、結果的に、皮膚のかぶれもより一層引き起こし難くなる。
【0099】
また、本発明の更に別の実施形態においては、表面シートが、平面視にて、吸収性物品の長手方向軸線(すなわち、長手方向に延びる幅方向の中央軸線)を含み且つ前記長手方向に延びる中央領域と、当該中央領域に対して前記長手方向の両側部に位置し且つ前記長手方向に延びる一対の外側領域とを有するとともに、吸収性物品が、前記表面シートの凹部の第2面において吸収体と接合する接合部を有し、かかる接合部は、表面シートと吸収体との間において前記長手方向に延び且つ前記幅方向に複数本並ぶように配置され、且つ、表面シートの前記外側領域において前記幅方向に隣り合う接合部同士の間隔が表面シートの前記中央領域において前記幅方向に隣り合う接合部同士の間隔よりも大きくなるように配置されている。表面シートと吸収体とを接合する接合部がこのように配置された吸収性物品は、尿などの排泄液が供給される表面シートにおいて、前記中央領域に存在する接合部のピッチが、前記外側領域に存在する接合部よりも密になるように配置されているため、排泄液の吸収に大きく関与する前記中央領域において、表面シートと吸収体とを強固に接合することができるとともに、表面シートの凸部における空隙部を前記外側領域よりも緻密に且つ多く形成することができるため、吸収体から肌対向面側に(すなわち、表面シート側に)放出される湿気を保持するための空隙部を、より確実に確保することができる。
【0100】
なお、本発明の吸収性物品は、上述の各実施形態に限定されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。
また、本発明は、上述の実施形態のテープ型の使い捨ておむつのほかに、例えば、パンツ型の使い捨ておむつや生理用ナプキン、パンティライナー、(軽)失禁パッド等の様々な吸収性物品に適用することができる。なお、本発明を生理用ナプキン等の吸収性物品に適用する場合は、表面シートと吸収体の接合手段として両者を一体化するエンボス加工などを施してもよい。このようなエンボス加工を施すことにより、表面シートと吸収体の接合を強固にすることができる上、表面シートと吸収体との間における繊維密度を高めて、表面シートから吸収体への経血等の排泄液の引き込み性などを向上させることができる。
なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【課題】本発明は、表面シートとしてコットンを含む不織布を使用した吸収性物品において、着用者に濡れた状態を知覚させたり、蒸れなどを感じさせたりして、着用者に不快感を生じさせるようなことが起こり難く、皮膚のかぶれも引き起こし難い吸収性物品を提供するものである。
【解決手段】本発明の吸収性物品は、表面シート(2)が、コットン及び熱可塑性樹脂繊維から構成される第1繊維層(201)と、疎水性の熱可塑性樹脂繊維から構成される第2繊維層(202)とを含む、少なくとも2層の繊維層からなる不織布であり、前記不織布は、第1面(2a)の方向に向けて突出する複数の凸部(11)と、隣り合う前記凸部(11)の間に設けられ、第2面(2b)の方向に向けて窪む複数の凹部(12)と、を備え、前記凸部(11)は、前記第2面(2b)が面する空隙部(14)を有し、前記不織布は、少なくとも前記凸部(11)において弱酸性を呈するものである。