【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0045】
<セルロースアシレートフィルム001の作製>
<<セルロースアシレートの調製>>
全置換度2.97(内訳:アセチル置換度0.45、プロピオニル置換度2.52)のセルロースアシレートを調製した。触媒としての硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)とカルボン酸無水物との混合物を−20℃に冷却してからパルプ由来のセルロースに添加し、40℃でアシル化を行った。この時、カルボン酸無水物の種類及びその量を調整することで、アシル基の種類及びその置換比を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行って全置換度を調整した。
【0046】
<<セルロースアシレート溶液の調製>>
1)セルロースアシレート
調製したセルロースアシレートを120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、30質量部を溶媒と混合させた。
2)溶媒
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81/15/4質量部)を溶媒として用いた。なお、これらの溶媒の含水率は、いずれも0.2質量%以下であった。
3)添加剤
全ての溶液調製に際し、トリメチロールプロパントリアセテート0.9質量部を添加した。また、全ての溶液調製に際し、二酸化ケイ素微粒子(粒径20nm、約0.25質量部)を添加した。
また、下記UV吸収剤Aを前記セルロースアシレート100質量部に対し、1.2質量%添加し、下記Rth低減剤Bを前記セルロースアシレート100質量部に対し、11質量%入れた。
得られたセルロースアシレートフィルム001のRe(550)は−1nm、Rth(550)は−1nmであり、光学的に等方的なフィルムが得られた。
【0047】
【化1】
【0048】
【化2】
【0049】
4)膨潤、溶解
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環するステンレス製溶解タンクに、上記溶媒、添加剤を投入して撹拌、分散させながら、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×10
4kgf/m/sec
2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸及び中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×10
4kgf/m/sec
2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
【0050】
5)ろ過
上記で得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、更に絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
【0051】
<<セルロースアシレートフィルムの作製>>
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは15m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、更に140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートフィルム001を得た(膜厚81μm)。得られたセルロースアシレートフィルムのReは−1nm、Rthは−1nmであった。
【0052】
<製法1:第3の位相差層の作製>
以下の方法に従って、2ドメイン(2D)の液晶層を用いた実施例および比較例の液晶表示装置に用いた第3の位相差層用フィルムを作製した。
<<アルカリ鹸化処理>>
セルロースアシレートフィルム001を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m
2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m
2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0053】
アルカリ溶液組成
───────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤SF−1:C
14H
29O(CH
2CH
2O)
20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
───────────────────────────────────
【0054】
<<配向膜の形成>>
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアセテートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。
配向膜塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、BASF製) 0.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0055】
変性ポリビニルアルコール
【化3】
【0056】
<<ディスコティック液晶化合物を含む光学異方性層の形成>>
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は時計回りに45°の方向とした。
【0057】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液(A)を上記作製した配向膜上にワイヤーバーを用いて塗布した。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、80℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し光学異方性層を形成し、光学フィルムを得た。光学異方性層の膜厚は2.0μmであった。
【0058】
光学異方性層塗布液(A)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、BASF製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 1質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.4質量部
メチルエチルケトン 252質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0059】
【化4】
【0060】
【化5】
【0061】
【化6】
【0062】
作製した光学フィルムの評価結果を以下に示す。なお、遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と平行であった。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。また、Re(550)およびRth(550)が下記表の値となるように光学異方性層の膜厚を調整して、それぞれの第3の位相差層用フィルムを作製した。
【0063】
<製法2:第2位相差層のディスコティック液晶化合物層を有するフィルム)の作製>
以下の方法に従って、本願実施例および比較例で用いた第2の位相差層用のフィルムを作製した。
上記で得られたセルロースアシレートフィルム001について、上記第3の位相差層の作製と同様にアルカリ鹸化処理を行った。
【0064】
<<配向膜の形成>>
特開2008−40309号公報の段落0195に記載の方法と同様の方法で、セルロースアシレートフィルム001上に光学異方性層の膜厚を調整して、第2の位相差層用のフィルムを作製した。膜厚は、ワイヤーバーの番手を変更することにより調整した。
【0065】
<<ディスコティック液晶化合物を含む光学異方性層の形成>>
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は時計回りに0°の方向とした。
【0066】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液(C)を上記作製した配向膜上に#2.7のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/分とした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、100℃の温風で30秒、更に120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にて紫外線照射により液晶化合物の配向を固定化し光学異方性層を形成し、光学フィルム(負のC−プレート)を得た。Re及びRthを測定した。
【0067】
光学異方性層塗布液(C)の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶性化合物 91質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、BASF社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
メチルエチルケトン 195質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0068】
ディスコティック液晶性化合物
【化7】
また、Rth(550)が下記表の値となるようにワイヤーバーの番手を換えて光学異方性層の膜厚を調整して、それぞれの第2の位相差層用フィルムを作製した。
【0069】
<製法3:第1位相差層の作製(棒状液晶化合物層を有するフィルム)の作製>
以下の方法に従って、2ドメイン(2D)の液晶層を用いた実施例および比較例の液晶表示装置に用いた第1の位相差層用フィルムを作製した。
上記で作製したセルロースアシレートフィルム001の表面をアルカリ溶液でケン化後、このフィルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m
2塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にセルロースアシレートフィルム001の長手方向に対して、45°方向にラビング処理を施して配向膜を形成した。
【0070】
配向膜塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0071】
【化8】
【0072】
次に、下記の組成の光学異方性層塗布液を、ワイヤーバーで塗布した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶性化合物 1.8g
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 0.2g
光重合開始剤(イルガキュアー907、BASF社製) 0.06g
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.02g
メチルエチルケトン 3.9g
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0073】
これを125℃の恒温槽中で3分間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。次に、120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間紫外線照射し棒状液晶性化合物を架橋した。紫外線硬化時の温度を80℃として、光学異方性層を得た。光学異方性層の厚さは、2.0μmであった。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学フィルム(+A−プレート)を製作した。
【0074】
【化9】
また、Re(550)およびRth(550)が下記表の値となるように光学異方性層の膜厚を調整して、それぞれの第1の位相差層用フィルムを作製した。
【0075】
<製法4:第3位相差層(パターンリターダー)の作製>
以下の方法に従って、4ドメイン(4D)の液晶層を用いた実施例および比較例の液晶表示装置に用いた第3の位相差層用フィルムを作製した。
<<アルカリ鹸化処理>>
セルロースアシレートフィルム001を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m
2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m
2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテート透明支持体を作製した。
【0076】
(アルカリ溶液組成)
・水酸化カリウム 4.7質量部
・水 15.8質量部
・イソプロパノール 63.7質量部
・界面活性剤 SF−1:C
14H
29O(CH
2CH
2O)
20H 1.0質量部
・プロピレングリコール 14.8質量部
【0077】
<<ラビング配向膜の形成>>
上記作製した支持体の、鹸化処理を施した面に、下記の組成のラビング配向膜塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。次に、透過部の横ストライプ幅100μm、遮蔽部の横ストライプ幅300μmのストライプマスクをラビング配向膜上に配置し、室温空気下にて、UV−C領域における照度2.5mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を4秒間照射して、光酸発生剤を分解し酸性化合物を発生させることにより第1の位相差層用配向層を形成した。その後に、500rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付透明支持体を作製した。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであった。
【0078】
配向膜形成用塗布液の組成
・配向膜用ポリマー材料(ポリビニルアルコールPVA103、クラレ社製)
3.9質量部
・光酸発生剤S−2 0.1質量部
・メタノール 36質量部
・水 60質量部
【0079】
【化10】
【0080】
<<パターン光学異方性層の形成>>
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液とし、バーコーターを用いて塗布量8ml/m
2で塗布した。次いで、膜面温度110℃で2分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、100℃まで冷却し空気下にて20mW/cm
2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を20秒間照射して、その配向状態を固定化することによりパターン光学異方性層を形成した。マスク露光部分(第1の位相差層)は、ラビング方向に対し遅相軸方向が平行にディスコティック液晶(DLC)が垂直配向しており、未露光部分(第2の位相差層)は直交に垂直配向していた。なお、光学異方性層の膜厚は、1.6μmであった。
【0081】
光学異方性層用組成
・ディスコティック液晶E−1 100質量部
・配向膜界面配向剤(II−1) 3.0質量部
・空気界面配向剤(P−1) 0.4質量部
・光重合開始剤(イルガキュア907、BASF社製)3.0質量部
・増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬社製) 1.0質量部
・メチルエチルケトン 400質量部
【0082】
【化11】
【0083】
形成されたパターン光学フィルムの第1の位相差層及び第2の位相差層をそれぞれTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、ION−TOF社製TOF−SIMS V)により分析したところ、第1の位相差層と第2の位相差層では、対応する配向層中における光酸発生剤S−2の存在比(モル比)が8対92であり、第1の位相差層ではS−2がほとんど分解していることがわかった。また、光学異方性層においては、第1の位相差層の空気界面に、II−1のカチオン及び光酸発生剤S−2から発生した酸HBF
4のアニオンBF
4-が存在していることが確認された。第2の位相差層の空気界面には、これらのイオンはほとんど観測されず、II−1のカチオン及びBr−が配向膜界面近傍に存在していることがわかった。空気界面におけるそれぞれのイオンの存在比は、II−1のカチオンは93対7、BF
4-は90対10であった。このことから、第2の位相差層中、配向膜界面配向剤(II−1)は配向膜界面に偏在しているが、第1の位相差層では偏在性が減少し、空気界面にも拡散していること、及び第1の位相差層においては、発生した酸HBF
4とII−1がアニオン交換することによってII−1カチオンの拡散が促進されていることが理解できる。
また、Re(550)およびRth(550)が下記表の値となるように光学異方性層の膜厚を調整して、それぞれの第3の位相差層用フィルムを作製した。
【0084】
<製法5:第1位相差層(パターンリターダー)の作製>
以下の方法に従って、4ドメイン(4D)の液晶層を用いた実施例および比較例の液晶表示装置に用いた第1の位相差層用フィルムを作製した。
上記第3位相差層(パターンリターダー)の作製と同様に行って形成した配向膜の表面に、光学異方性層を特表2012−517024号公報の実施例に記載された方法を利用し、棒状液晶(RLC)としてBASF社製のLC242を用いて第1及び第2位相差層を有すように形成した。
また、Re(550)およびRth(550)が下記表の値となるように光学異方性層の膜厚を調整して、それぞれの第1の位相差層用フィルムを作製した。
【0085】
<第4位相差層(光学補償フィルム)(2層積層型)の作製>
特開2012−8548号公報の段落0137に記載のフィルム1の作製に関して、TD方向の延伸倍率、MD方向の延伸倍率を調整することによって、Re(550)およびRth(550)が表の値になるよう作製した。このフィルム上に、下記組成の棒状液晶組成物塗布液(液晶化合物1:液晶化合物2=80:20の混合液)を1.8g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gの混合液を塗布して垂直配向させ、窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度190mW/cm
2、照射量300mJ/cm
2の紫外線を照射し塗布層を硬化させた層を形成することにより、表記載の第4の位相差層を作製した。
【0086】
液晶化合物1
【化12】
液晶化合物2
【化13】
【0087】
<第4の位相層の(光学補償フィルム)(1層積層型)の作製>
(1)ドープ調製
・セルロースアシレート溶液C
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、さらに90℃で約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液C
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート(置換度−ベンゾイル基:0.86、アセチル基:1.76)
100.0質量部
ジクロロメタン 462.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0088】
(2)流延製膜
ドープを金属製のバンド流延機を用いて流延し、乾燥させた後、剥ぎ取りドラムによりフィルムをバンドから剥ぎ取った。この様にして、未延伸フィルムを作製した。
【0089】
(3)延伸
上記にて製造した未延伸フィルムについて、(ガラス転移点Tg−延伸温度)=−5℃でフィルム搬送方向(MD)に固定端一軸延伸にてテンターゾーンで10%延伸した。次に、同温度で、幅方向(TD)に固定端一軸延伸にてテンターゾーンで65%延伸した。この様にして二軸延伸処理して、セルロースアシレートフィルムを作製した。なお、延伸および乾燥後の膜厚が60μmになるように、流延膜厚を調整した。
【0090】
光学特性を測定し、Reが275nm、Rthが0nmであることが確認できた。
本位相差層を実施例1と実施例2の第4の位相差膜の代わりに用い、その他は実施例1と実施例2と全く同じように液晶表示装置を作製し、新たに実施例13、実施例14とした。
【0091】
<液晶表示装置の作製>
<<偏光膜>>
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて厚み20μmの偏光膜を作製した。
【0092】
ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、下記表に示す層構成となるように、偏光子の片側に第1位相差層、第3位相差層および第4位相差層のいずれかを鹸化処理貼りあわせた。70℃で10分以上乾燥し、他方の表面に鹸化処理を行った市販のセルロースアセテートフィルム(富士フイルム製、TD80)を同様に貼合して積層体を得た。この様にして、偏光板を作製した。
【0093】
<<VAモード液晶セルの作製>>
基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のレターデーション(即ち、液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を液晶層の厚さdを調整して下記表に示す値とした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。この様にしてVAモード液晶セルを作製した。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】
【0101】
【表9】
【0102】
【表10】
【0103】
【表11】
【0104】
【表12】
【0105】
【表13】
【0106】
【表14】
【0107】
【表15】
【0108】
【表16】
【0109】
上記表において、2Dは液晶セルの画素が2ドメインであることを、4Dは4ドメインであることを、8Dは8ドメインであることをそれぞれ示している。
また、遅相軸および吸収軸は、第1の偏光膜を0°とし、視認側から見たときに、反時計回りを正の方向とした角度である。
【0110】
<評価>
得られた液晶表示装置について、測定機“EZ−Contrast XL88”(ELDIM社製)を用いて、以下の通り評価した。
【0111】
<<白とび>>
正面のγカーブを2.2に設定(100×(各信号値/信号値の最大値)の2.2乗が、各信号値の規格化輝度(白を100としたときの値)となるように設定する。)し、信号値128での輝度と白表示での輝度を測定した。次に、正面と上下左右方向(方位角0°、90°、180°、270°)4方位の極角60°における、これらの比(信号値128輝度/白輝度)を算出した。さらに、正面の比と上下左右方向の比の平均値との差を算出し、以下の区分に従って評価した。
A:差が0以上、0.05未満
B:差が0.05以上、0.10未満
C:差が0.10以上、0.15未満
D:差が0.15以上
【0112】
<<色味付き>>
白輝度の色味において、正面と右方向(方位角0°)の極角60°における差をΔu’v’を下記式を用いて算出し、以下の区分に従って評価した。
(Δu’v’ = √(u’_右 - u’_正面)^2 + (v’_右 - v’_正面)^2)
A:Δu’v’が0.005未満
B:Δu’v’が0.005以上、0.01未満
C:Δu’v’が0.01以上
【0113】
<<視野角コントラスト>>
白表示での輝度及び黒表示での輝度を測定し、斜め方向(方位角45°、135°、225°、315°)4方位の極角60°におけるコントラスト比(白輝度/黒輝度)の平均値を算出し、以下の区分に従って評価した。
A:コントラスト比の平均値が10以上
B:コントラスト比の平均値が5以上、10未満
C:コントラスト比の平均値が5未満
【0114】
<<バックライト(BL)光の利用効率>>
白表示での輝度およびバックライトのみ輝度を測定し、その比(白輝度/バックライト輝度)を算出した。次に、比較例1との比(実施例もしくは比較例の比/比較例1の比)算出し、以下の区分に従って評価した。
A:比が105以上
B:比が102.5以上、105未満
C:比が100以上、102.5未満
【0115】
<<正面コントラスト(CR)>>
白表示での輝度及び黒表示での輝度を測定し、正面におけるコントラスト比(白輝度/黒輝度)を算出した。次に、比較例1の正面コントラストとの比(実施例もしくは比較例の正面コントラスト/比較例1の正面コントラスト)を算出し、以下の区分に従って評価した。
A:比が98以上
B:比が90以上、98未満
C:比が90未満
【0116】
これらの結果を下記表に示す。
【表17】
【0117】
上記表から明らかなとおり、本発明の液晶表示装置では、白とびが抑制され、かつ、色味付きが抑止された。また、BL光仮利用効率も向上した。さらに、正面コントラストおよび視野角コントラストにも優れていた。
一方、比較例の液晶表示装置では、白とびの抑制と色味付きの抑制の両立が困難であった。さらに、BL利用効率が低かったり、正面コントラストや視野角コントラストに劣っていることが分かった。