特許第6001684号(P6001684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許60016845−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6001684
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/90 20060101AFI20160923BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20160923BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   C07D233/90 ACSP
   A61K31/4164
   A61P35/00
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-557485(P2014-557485)
(86)(22)【出願日】2014年1月15日
(86)【国際出願番号】JP2014050590
(87)【国際公開番号】WO2014112529
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-4994(P2013-4994)
(32)【優先日】2013年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】田中 智之
(72)【発明者】
【氏名】古関 優
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/083186(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/035168(WO,A1)
【文献】 特開昭57−080328(JP,A)
【文献】 特開昭60−185727(JP,A)
【文献】 特開昭53−032124(JP,A)
【文献】 特開昭58−024569(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047758(WO,A1)
【文献】 芦澤一英,医薬品結晶の分子状態に関する物性評価(12) 塩・結晶形の最適化と結晶化技術,PHARM TECH JAPAN,2002年,Vol.18,No.10,pp.81-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/90
A61K 31/4164
A61P 35/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩。
【請求項2】
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、20.3及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶。
【請求項3】
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、10.1、13.6、14.3、14.7、20.3、27.4、28.0、28.8及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶。
【請求項4】
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、20.3及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶;又は
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、10.1、13.6、14.3、14.7、20.3、27.4、28.0、28.8及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶
を含有する医薬組成物。
【請求項5】
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される13.7、17.0、18.0及び20.1°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶。
【請求項6】
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.0、13.7、14.6、17.0、18.0、20.1、24.4、25.2及び28.1°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶。
【請求項7】
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される13.7、17.0、18.0及び20.1°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶;又は
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.0、13.7、14.6、17.0、18.0、20.1、24.4、25.2及び28.1°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶
を含有する医薬組成物。
【請求項8】
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.3、20.7、20.9及び31.2°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶。
【請求項9】
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.3、20.7、20.9、28.0及び31.2°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶。
【請求項10】
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.3、20.7、20.9及び31.2°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶;又は
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.3、20.7、20.9、28.0及び31.2°の回折角度に回折ピークを有する5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩の結晶
を含有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドの硫酸塩に関する。
【背景技術】
【0002】
5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド(以下、「化合物A」ともいう)は、制癌剤として有用な化合物である(特許文献1)。安定な化合物Aを提供することを目的に、化合物Aを有機スルホン酸塩にすることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−32124号公報
【特許文献2】国際公開第2009/035168号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物Aは酸化され易く、容易に青色に着色するなど、保存安定性が十分とはいえない。一方、医薬の原体は、高純度であること及び品質を保持しながら室温又はそれ以上の温度で安定であること、吸湿性が低いことなどが極めて重要である。
本発明は、青色の着色が抑制され、純度が高く、吸湿性が低く、保存安定性に優れる化合物Aの塩を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意研究を行った結果、化合物Aの硫酸塩は、青色の着色が抑制され、純度が高く、吸湿性が低く、保存安定性に優れることを見出し、これらに基づき本発明を完成させた。前記課題を解決するための具体的手段は、以下の通りである。
【0006】
[1]化合物Aの硫酸塩。
【0007】
[2]粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、20.3及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶。
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、10.1、13.6、14.3、14.7、20.3及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶。
[3]粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、10.1、13.6、14.3、14.7、20.3、27.4、28.0、28.8及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶(以下、「β型結晶」ともいう)。
なお、β型結晶は、上述の、2θで表される5.0、20.3及び29.6°の回折角度の回折ピーク、又は2θで表される5.0、10.1、13.6、14.3、14.7、20.3及び29.6°の回折角度の回折ピークにより、他の結晶形と区別することができる。これらの値はこの結晶性形態における特有な値である。
【0008】
[4]粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、20.3及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶;粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、10.1、13.6、14.3、14.7、20.3及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶;又は粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、10.1、13.6、14.3、14.7、20.3、27.4、28.0、28.8及び29.6°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶を含有する医薬組成物。
【0009】
[5]粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される13.7、17.0、18.0及び20.1°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶。
粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.0、13.7、14.6、17.0、18.0、20.1、24.4及び25.2°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶。
[6]粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.0、13.7、14.6、17.0、18.0、20.1、24.4、25.2及び28.1°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶(以下、「α型結晶」とも言う)。
なお、α型結晶は、上述の、2θで表される13.7、17.0、18.0及び20.1°の回折角度の回折ピーク、又は2θで表される10.0、13.7、14.6、17.0、18.0、20.1、24.4及び25.2°の回折角度の回折ピークにより、他の結晶形と区別することができる。これらの値はこの結晶性形態における特有な値である。
【0010】
[7]粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される13.7、17.0、18.0及び20.1°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶;粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.0、13.7、14.6、17.0、18.0、20.1、24.4及び25.2°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶;又は粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.0、13.7、14.6、17.0、18.0、20.1、24.4、25.2及び28.1°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶を含有する医薬組成物。
【0011】
[8]粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.3、20.7、20.9及び31.2°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶。
[9]粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.3、20.7、20.9、28.0及び31.2°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶(以下、「γ型結晶」ともいう)。
なお、γ型結晶は、上述の、2θで表される10.3、20.7、20.9及び31.2°の回折角度の回折ピークにより、他の結晶形と区別することができる。これらの値はこの結晶性形態における特有な値である。
【0012】
[10]粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.3、20.7、20.9及び31.2°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶;又は粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.3、20.7、20.9、28.0及び31.2°の回折角度に回折ピークを有する化合物Aの硫酸塩の結晶を含有する医薬組成物。
【0013】
[11][5]又は[6]に定義した結晶に硫酸水溶液を加え、10℃〜65℃で懸濁撹拌する工程を含み、好ましくは化合物A又はその水和物1モルに対して硫酸を4モル未満用いる、[2]又は[3]に定義した結晶の、製造方法。
[12]化合物A又はその水和物を、硫酸水溶液に加熱溶解させた後、徐冷して晶析させる工程を含む、[5]又は[6]に定義した結晶の、製造方法。
[13][5]又は[6]に定義した結晶に硫酸水溶液を加え、10℃〜65℃で懸濁撹拌する工程を含み、好ましくは化合物A又はその水和物1モルに対して硫酸を4モル以上用いる、[8]又は[9]に定義した結晶の、製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、青色の着色が抑制され、純度が高く及び/又は吸湿性が低いという優れた性質を有し、保存安定性が高い化合物Aの硫酸塩を提供することができる。
さらに、本発明によれば、青色の着色が抑制され、純度が高く及び/又は吸湿性が低いという優れた性質を有し、保存安定性が高い化合物Aの硫酸塩の結晶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】β型結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法)の一例を示す図である。
図2】β型結晶の粉末X線回折パターンの一例を示す図である。
図3】α型結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法)の一例を示す図である。
図4】α型結晶の粉末X線回折パターンの一例を示す図である。
図5】γ型結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法)の一例を示す図である。
図6】γ型結晶の粉末X線回折パターンの一例を示す図である。
図7】比較例1で得られた化合物Aの結晶の粉末X線回折パターンの一例を示す図である。
図8】60℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後の化合物Aの硫酸塩のα型結晶の状態を示す写真である。
図9】60℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後の化合物Aの硫酸塩のβ型結晶の状態を示す写真である。
図10】60℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した後の化合物Aの結晶の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明について以下に詳述する。本発明において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本発明において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本発明の塩には、無水物や水和物が含まれる。
本発明の結晶には、無水物を含む結晶や水和物を含む結晶及び付着水が付いた結晶が含まれる。
本発明の結晶の粉末X線回折パターンにおいて、ピークを有する回折角度について「2θで表されるX°の回折角度」というときは、特に断らない限り、「2θで表される((X−0.2)〜(X+0.2))°の回折角度」を意味する。
【0017】
本発明の塩及びその結晶は、(1)青色の着色が抑制され、(2)純度が高く、(3)吸湿性が低く、(4)保存安定性に優れるという特徴のいずれか(好ましくはすべて)を有し、医薬の原薬として有用である。
【0018】
<α型結晶の製造方法>
α型結晶は、化合物A又はその水和物を、硫酸水溶液に加熱溶解させた後、徐冷して晶析することによって製造することができる。ここで化合物A又はその水和物は、例えば、特開昭58−24569号公報に記載されている方法又は後述の製造例1に記載の方法により製造することができる。
【0019】
硫酸水溶液に含まれる硫酸の量は、化合物A又はその水和物1モルに対して、0.5〜1.4モルとすることができ、1.0〜1.2モルが好ましい。
【0020】
化合物A又はその水和物を溶解する硫酸水溶液の使用量は特に限定されない。例えば、化合物A又はその水和物に対して20倍量(v/w)〜100倍量(v/w)が好ましく、40倍量(v/w)〜60倍量(v/w)がより好ましい。
【0021】
硫酸水溶液に化合物A又はその水和物を加熱溶解する温度は特に限定されない。例えば、40℃〜60℃とすることができ、50℃〜60℃が好ましく、50℃〜55℃がより好ましい。
【0022】
晶析温度は特に限定されない。例えば、0℃〜40℃とすることができ、0℃〜20℃が好ましく、0℃〜10℃がより好ましい。
【0023】
晶析に要する時間は特に限定されない。例えば、0.5時間〜24時間が好ましく、0.5時間〜6時間がより好ましい。
【0024】
<β型結晶の製造方法>
β型結晶は、例えば、α型結晶に硫酸水溶液を加え、10℃〜65℃で懸濁撹拌することによって製造することができる。また、晶析させることにより、結晶の収率を向上させることができる。
【0025】
硫酸水溶液に含まれる硫酸の量はα型結晶中の化合物A1モルに対して、2〜3モルとすることが好ましい。
【0026】
硫酸水溶液の使用量は特に限定されない。例えば、α型結晶に対して1倍量(v/w)〜50倍量(v/w)が好ましく、5倍量(v/w)〜20倍量(v/w)がより好ましい。
【0027】
懸濁撹拌する時間は特に限定されない。例えば、0.5時間〜5時間が好ましく、2時間〜5時間がより好ましい。
【0028】
晶析に要する時間は特に限定されない。例えば、12時間〜24時間が好ましい。
【0029】
<γ型結晶の製造方法>
γ型結晶は、例えば、α型結晶に硫酸水溶液を加え、10℃〜65℃で懸濁撹拌することによって製造することができる。また、晶析させることにより、結晶の収率を向上させることができる。
【0030】
硫酸水溶液に含まれる硫酸の量はα型結晶中の化合物A1モルに対して、4〜10モルとすることが好ましい。
【0031】
硫酸水溶液の使用量は特に限定されない。例えば、α型結晶に対して5倍量(v/w)〜20倍量(v/w)が好ましく、10倍量(v/w)〜15倍量(v/w)がより好ましい。
【0032】
懸濁撹拌する時間は特に限定されない。例えば、0.5時間〜5時間が好ましく、2時間〜5時間がより好ましい。
【0033】
晶析に要する時間は特に限定されない。例えば、12時間〜24時間が好ましい。
【0034】
α型結晶の製造時には、種晶を用いることが好ましい。これにより結晶形をより均一に制御することができる。
なお、種晶は先に製造した際に得られたものを用いてもよく、晶析した結晶の一部を予め濾取して種晶としてもよい。
【0035】
晶析又は懸濁撹拌によって生成したα、β又はγ型結晶を濾取する温度は特に限定されないが、0〜25℃であることが好ましい。
また、晶析又は懸濁撹拌の操作は空気中あるいは不活性ガス雰囲気下で行うことができるが、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気等を挙げることができる。
【0036】
<医薬組成物>
本発明の医薬組成物は、α、β及びγ型結晶から選ばれる一つ以上の結晶を含む。本発明の医薬組成物は、α、β及び/又はγ型結晶を含むことで保存安定性に優れる。
【0037】
α、β及び/又はγ型結晶を医薬組成物として用いる場合、通常、製剤化に使用される賦形剤、担体及び希釈剤等の製剤補助剤を適宜混合してもよい。これらは、常法に従って、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、粉体製剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、貼付剤、軟膏剤又は注射剤等の形態で、経口又は非経口で投与することができる。また、投与方法、投与量及び投与回数は、患者の年齢、体重及び症状に応じて適宜選択することができる。通常、成人に対しては、経口又は非経口(例えば、注射、点滴及び直腸部位への投与等)投与により、1日、0.01mg/kg〜2000mg/kgを1回から数回に分割して投与すればよい。
【0038】
以下、本発明を製造例、実施例および製剤例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断らない限り、%は質量%である。
下記において使用される略語の意味は以下の通りである。
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
【0039】
粉末X線回折はUltimaIV(株式会社リガク)を用い、以下の条件で測定した。
(測定条件)
対陰極:Cu
管電圧:40kV
管電流:40mA
走査軸:2θ
【0040】
赤外吸収スペクトルは、日本薬局方、一般試験法、赤外吸収スペクトル全反射測定法(ATR法)に従い、Spectrum One(PerkinElmer)を用いて測定した。
【0041】
水分は、カールフィッシャー水分計にて測定した。
【0042】
純度は、HPLC面積%である。なおHPLCの測定は、Prominence(島津製作所)を用い、以下の条件で行った。
(測定条件)
測定波長:210nm
カラム:Hydrosphere C18、内径6.0×長さ250mm、粒子径5μm
カラム温度:40℃
流量:0.8mL/分
移動相A液:水950mL及び0.4mol/Lリン酸−トリエチルアミン緩衝液(pH3)50mL
移動相B液:水50mL、アセトニトリル900mL及び0.4mol/Lリン酸−トリエチルアミン緩衝液(pH3)50mL
移動相は移動相A液と移動相B液の混合物を以下の線勾配で用いた。
【0043】
【表1】
【0044】
(製造例1)
(1)窒素雰囲気下、2−プロパノール600mLに2−アミノマロンアミド(立山化成)30gおよびシュウ酸115mgを加え、82℃に加熱した後、オルトギ酸トリエチル(日宝化学、純度:99.5%)106mLを10分かけて滴下した。次いで、反応混合物を84℃で7時間30分間撹拌した。57℃まで冷却後、反応混合物に水30mLおよび濃塩酸24mLを順次添加した。反応混合物を5℃まで冷却し、結晶を濾取し、アセトン120mLで洗浄し、淡黄色結晶の5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物49gを得た。
(2)窒素雰囲気下、0.45mol/L塩酸240mLに5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド塩酸塩二水和物20.0gを加え、50℃に加熱して溶解させた。この溶液にギ酸ナトリウム14.3gの水40mL溶液を33分かけて滴下した。反応混合物を5℃まで冷却し、結晶を濾取し、アセトン20mLおよび水40mLの混合液で洗浄し、次いでアセトン60mLで洗浄し、淡黄色結晶として5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド3/4水和物12.8gを得た。
【0045】
(実施例1)
5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド3/4水和物1.5gに水30mL及び濃硫酸625μLを加え、50〜55℃に加熱した後、水45mLを追加して溶解させ、同温度で30分間撹拌した。反応液を室温まで徐冷し、結晶の析出を確認した後、氷冷し、結晶を濾取した。水で洗浄し、風乾することにより、α型結晶1.8gを得た。
α型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.0、13.7、14.6、17.0、18.0、20.1、24.4、25.2及び28.1°の回折角度に特徴的なピークを示した。
またα型結晶は、赤外吸収スペクトルにおいて1563cm-1、1504cm-1、1456cm-1、1390cm-1、1050cm-1、863cm-1に特徴的なピークを示した。
α型結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法)を図3に、粉末X線の回折パターンを図4及び表2に示す。
α型結晶の水分は9.1%であった。
【0046】
【表2】
【0047】
(実施例2)
実施例1に記載の方法に従い製造したα型結晶4.0gに1mol/L硫酸水溶液40mLを加え、窒素雰囲気下、室温で2時間45分間撹拌した。反応混合物に1mol/L硫酸水溶液20mLを加えて、一晩放置した後、更に1時間30分間撹拌し、結晶を濾取した。1mol/L硫酸水溶液とアセトンで洗浄し、風乾することにより、β型結晶3.7gを得た。
β型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される5.0、10.1、13.6、14.3、14.7、20.3、27.4、28.0、28.8及び29.6°の回折角度に特徴的なピークを示した。
またβ型結晶は、赤外吸収スペクトルにおいて1560cm-1、1508cm-1、1459cm-1、1059cm-1に特徴的なピークを示した。
β型結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法)を図1に、粉末X線回折のパターンを図2及び表3に示す。
β型結晶の水分は8.1%であった。
【0048】
【表3】
【0049】
(実施例3)
実施例1に記載の方法に従い製造したα型結晶0.5gに2mol/L硫酸水溶液5mLを加え、室温で3時間20分間撹拌した後、さらに濃硫酸1mLを加え、4時間40分間撹拌した。一晩放置後、結晶を濾取した。アセトンで洗浄し、風乾することにより、γ型結晶0.5gを得た。
γ型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θで表される10.3、20.7、20.9、28.0及び31.2°の回折角度に特徴的なピークを示した。
またγ型結晶は、赤外吸収スペクトルにおいて1560cm-1、1503cm-1、1459cm-1、1304cm-1、1061cm-1、892cm-1に特徴的なピークを示した。
γ型結晶の赤外吸収スペクトル(ATR法)を図5に、粉末X線の回折パターンを図6及び表4に示す。
γ型結晶の水分は4.1%であった。
【0050】
【表4】
【0051】
(比較例1)
国際公開第2009/035168号パンフレットの実施例6に記載の方法に準じて、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドを淡黄色粉末として得た。
高速液体クロマトグラフィーによって分析した結果、得られた5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドは、約0.15%の安息香酸を含有していた。
粉末X線回折のパターンを図7及び表5に示す。
【0052】
【表5】
【0053】
(比較例2)
国際公開第2009/035168号パンフレットの実施例3の記載の方法を参考にして、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドのメタンスルホン酸塩を以下のように製造した。
5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド3/4水和物1.4gに水30mL及びメタンスルホン酸1.0gを加え、50℃で加熱溶解した後、同温度で30分間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、トルエンを加え、減圧しながら共沸によって水を留去し、析出した固体を濾取した。酢酸エチルで洗浄し、風乾することにより、5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドのメタンスルホン酸塩1.7gを得た。
5−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−4−カルボキサミドのメタンスルホン酸塩の水分は7.8%であった。
【0054】
(試験例1) 60℃、相対湿度75%条件下での保存安定性試験(1)
試験物質として、実施例1、2及び比較例1で得られた結晶を選択した。
試験物質約0.3gをそれぞれガラス瓶に入れ、60℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した。
試験終了後の実施例1の結晶の状態を図8、実施例2の結晶の状態を図9に示す。また、試験終了後の比較例1の結晶の状態を図10に示す。
【0055】
実施例1及び2で得られた結晶は、比較例1で得られた結晶と比較して、明らかに着色の度合いが小さく、保存安定性に優れていた。
【0056】
(試験例2) 60℃、相対湿度75%条件下での保存安定性試験(2)
試験物質として、実施例1で得られた結晶を選択した。
試験物質約0.3gをガラス瓶に入れ、60℃、相対湿度75%の条件で2週間保存した。試験終了後にHPLCにより純度を測定した。その結果、試験物質の純度は、99.97%であった。
【0057】
実施例1で得られた結晶は、2週間の保存後も純度が高く、保存安定性に優れていた。
また、実施例2得られた結晶も、試験例2と同様にして評価した結果、2週間の保存後も純度が高く、保存安定性に優れていた。
【0058】
(試験例3)60℃、相対湿度75%条件下での保存安定性試験(3)
試験物質として、実施例2及び比較例2で得られた結晶を選択した。
試験物質約0.3gをそれぞれガラス瓶に入れ、60℃、相対湿度75%の条件で2週間保存し、質量を測定した。下式に従って試験物質の質量変化率を測定した。
質量変化率(%)={(A1−A0)/A0}×100
0:試験前の試験物質の質量(g)
1:試験後の試験物質の質量(g)
また、試験物質の外観色の変化を目視で評価した。
結果を表6に示す。
【0059】
【表6】
【0060】
実施例2で得られた結晶は、比較例2で得られた結晶と比較して吸湿性が低く、外観色の変化がなかった。
さらに、これらの結晶を25℃、相対湿度97%の条件で2週間保存した場合、実施例2で得られた結晶は、外観に変化がなく安定であったが、比較例2で得られた結晶は、潮解して、不安定であった。
【0061】
(製剤例1)
本発明の塩及びその結晶を含有する医薬組成物は、例えば、以下のような処方によって製造することができる。
錠剤
(1)実施例2で得られた結晶 221.3mg
(2)乳糖水和物 13.9mg
(3)カルメロースカルシウム 22.4mg
(4)ヒドロキシプロピルセルロース 8.4mg
(5)軽質無水ケイ酸 8.4mg
(6)ステアリン酸マグネシウム 5.6mg
一錠 280mg
(1)、(2)及び(3)を混合し、この混合末に(4)を噴射して造粒した後、(5)及び(6)を添加し、混合して、打錠する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の塩及びその結晶は、(1)青色の着色が抑制され、(2)純度が高く、(3)吸湿性が低く、(4)保存安定性に優れる、という特徴を有し、医薬の原薬として有用である。
図1
図2
図3
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図7
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図10