(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6002644
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び反射板配置方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20160923BHJP
H01Q 19/185 20060101ALI20160923BHJP
H01Q 5/10 20150101ALI20160923BHJP
【FI】
H01Q15/14 B
H01Q15/14 Z
H01Q19/185
H01Q5/10
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-186649(P2013-186649)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-53660(P2015-53660A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】安藤 篤也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆利
【審査官】
米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−164237(JP,A)
【文献】
特開2011−244136(JP,A)
【文献】
特開2000−091836(JP,A)
【文献】
特開平11−313021(JP,A)
【文献】
特開2007−067784(JP,A)
【文献】
特開昭48−016557(JP,A)
【文献】
特開2011−010191(JP,A)
【文献】
特開平11−112402(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0128169(US,A1)
【文献】
米国特許第06049312(US,A)
【文献】
米国特許第04814785(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00982800(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
H01Q 5/10
H01Q 19/185
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の周波数帯の電磁波を送受信するアンテナ素子と、
前記第1の周波数帯の電磁波を反射し前記第2の周波数帯の電磁波を透過する第1の反射板と、
前記第2の周波数帯の電磁波を反射し前記第1の周波数帯の電磁波を透過する第2の反射板と
を具備し、
前記第1および第2の反射板は、前記アンテナ素子とそれぞれ所定の離間距離をもち、かつ前記アンテナ素子を挟んで板面が互いに平行になるように対向配置される
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ素子は、前記第1および第2の周波数帯で共用される周波数共用アンテナ素子、あるいは前記第1および第2の周波数帯を含む帯域の電磁波を送受信する広帯域アンテナ素子であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1および第2の反射板は、誘電体からなる棒状部材が同一平面上で平行かつ等間隔に配列されてなる複数の反射層が積層され、隣接する反射層の前記棒状部材が直交されているメタマテリアル反射板であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1および第2の反射板は、誘電体基板上に金属箔を周期的に配置、あるいは金属板にスロットを周期的に配置して形成された周波数選択板であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
基地局と端末との無線通信を中継する中継装置であり、前記第1の反射板として、基地局に向かう方向を反射方向とする基地局用反射板と、前記第2の反射板として、端末に向かう方向を反射方向とする端末用反射板とを具備することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
第1および第2の周波数帯の電磁波を送受信するアンテナ素子と、前記第1の周波数帯の電磁波を反射し前記第2の周波数帯の電磁波を透過する第1の反射板と、前記第2の周波数帯の電磁波を反射し前記第1の周波数帯の電磁波を透過する第2の反射板とを具備するアンテナ装置の前記第1および第2の反射板を、前記アンテナ素子とそれぞれ所定の離間距離をもち、かつ前記アンテナ素子を挟んで板面が互いに平行になるように対向配置する反射板配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数帯の電磁波を送受信するアンテナ装置及び該アンテナ装置の反射板配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1には、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信システムにおける基地局と中継装置との間を有線によるバックホール回線で接続することが困難である場合に用いられる無線によるバックホール回線に関する技術が開示されている。上述した技術のように基地局と中継装置とが無線通信によって接続される場合には、基地局と中継装置との間の無線通信に用いられる信号と、中継装置と端末との無線通信に用いられる信号とで、異なる周波数帯の電磁波が用いられる。例えば、下記非特許文献2には、異なる周波数帯の電磁波を送受信可能なものとして、異なる周波数帯の電磁波を送受信可能な1つの周波数共用ダイポールアンテナと、該ダイポールアンテナに対向するように配置された1つの反射器とを備え、該反射器による反射によって各周波数帯の電磁波の指向性を実現する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】丸田一輝,増野淳,大槻暢朗,杉山隆利,“無線ネットワークコーディング試作装置の屋外伝送実験特性,”信学技報,RCS2012−196,2012年12月.
【非特許文献2】丸山珠美,鹿子嶋憲一,“線路結合給電2周波共用コーナリフレクタアンテナ,”信学論,vol.J77−B−II,no.9,pp,459−466,1994年9月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術は、指向性の方向が1つの反射器の反射方向に限定されるものであり、周波数帯毎に異なる方向への指向性を実現することができない。つまり、上記従来技術は、中継装置が基地局との無線通信に使用する周波数帯と、端末との無線通信に使用する周波数帯とで異なる方向への指向性を必要とする場合でも、各周波数帯で異なる方向への指向性を実現できない。
【0005】
一方、周波数帯毎に異なる方向への指向性を実現可能なものとして、異なる周波数帯に対応して設けられたアンテナ素子と、アンテナ素子毎に設けられ、電磁波の反射方向がそれぞれ異なる反射板とを備え、反射方向がそれぞれ異なる反射板によって、周波数帯毎に異なる方向への指向性を実現する装置も考案されている。しかしながら、この装置は、各周波数帯に対応して複数のアンテナ素子を設置する必要があるため、大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数の周波数帯でアンテナ素子を共用することで装置を小型化し、かつ周波数帯毎に異なる方向への指向性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、アンテナ装置に係る第1の解決手段として、複数の周波数帯の電磁波を送受信するアンテナ素子と、前記周波数毎に設けられ、電磁波を反射する反射板とを具備し、前記反射板同士は、反射方向が異なるように配置される、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、アンテナ装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記アンテナ素子は、前記複数の周波数帯で共用される周波数共用アンテナ素子、あるいは前記複数の周波数帯を含む帯域の電磁波を送受信する広帯域アンテナ素子である、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、アンテナ装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記反射板は、誘電体からなる棒状部材が同一平面上で平行かつ等間隔に配列されてなる複数の反射層が積層され、隣接する反射層の前記棒状部材が直交されているメタマテリアル反射板である、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、アンテナ装置に係る第4の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記反射板は、誘電体基板上に金属箔を周期的に配置、あるいは金属板にスロットを周期的に配置して形成された周波数選択板である、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、アンテナ装置に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、基地局と端末との無線通信を中継する中継装置であり、反射板として、基地局に向かう方向を反射方向とする基地局用反射板と、端末に向かう方向を反射方向とする端末用反射板とを具備する、という手段を採用する。
【0012】
また、本発明では、反射板配置方法に係る解決手段として、複数の周波数帯の電磁波を送受信するアンテナ素子と、前記周波数毎に設けられ、電磁波を反射する反射板とを具備するアンテナ装置の前記反射板同士を、反射方向が異なるように配置する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の周波数帯の電磁波を送受信するアンテナ素子と、周波数毎に設けられ、電磁波を反射する反射板とを具備し、反射板同士は、反射方向が異なるように配置されることによって、複数の周波数帯でアンテナ素子を共用することでアンテナ装置を小型化し、かつ反射方向が異なる各反射板を用いて周波数帯毎に異なる方向への指向性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置Aの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置Aによって構成される中継装置Rを備える無線通信システムのシステム構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置Aの上面図である。
【
図4】本発明の一実施形態における第1反射板M1及び第2反射板M2の周期配列パターンを示す図(a)及び周期配列パターンの寸法を示す図(b)である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置Aの水平面内の2GHz帯における放射パターン(a)及び800MHz帯における放射パターン(b)を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置Aの変形例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置Aの変形例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置Aの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るアンテナ装置Aは、
図1に示すように、アンテナ素子E、第1反射板M1及び第2反射板M2を備える。なお、以降においては、図示するように互いに直交するx軸、y軸、z軸の方向を規定して説明する。
【0016】
上記アンテナ装置Aは、例えば、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信システムにおける基地局Bと端末Tとの通信を中継する中継装置Rに搭載される(
図2参照)。
例えば、基地局Bは、セルCL1を形成し、セルCL1内に位置する端末Tあるいは中継装置Rと、所定のデジタル変調方式に基づいて変調した電磁波を送受信することによって、通信するものである。
【0017】
端末Tは、例えば、無線LAN機能が搭載されたパーソナルコンピュータであり、無線LAN機能を用いて、基地局Bと、直接あるいは中継装置Rを介して通信するものである。
中継装置Rは、セルCL2を形成し、基地局Bと、セルCL2内に位置する端末Tとの通信を中継するものであり、基地局Bから受信した電磁波を増幅して端末Tに送信すると共に端末Tから受信した電磁波を増幅して基地局Bに送信する。
【0018】
このような中継装置Rに搭載されるアンテナ装置Aのアンテナ素子Eは、異なる複数の周波数帯の電磁波を大気中へ放射するものである。アンテナ素子Eの給電点E1は、図示しない給電線を介して高周波電源に接続されている。アンテナ素子Eは、上記高周波電源から入力される高周波信号に基づいて電磁波を大気中へ放射する。なおアンテナ素子Eは、大気中を伝搬する異なる複数の周波数帯の電磁波を吸収して受信する受信素子としても機能する。
【0019】
つまり、アンテナ素子Eは、異なる複数の周波数帯の電磁波を送受信するものである。アンテナ素子Eは、例えば、800MHz、2GHzの2つの異なる周波数帯の電磁波を大気中へ放射する。このようなアンテナ素子Eは、例えば、複数の周波数帯で共用される周波数共用アンテナ素子、あるいは複数の周波数帯を含む広範囲な帯域の電磁波を送受信する広帯域アンテナ素子である。
【0020】
また、アンテナ素子Eは、
図1に示すように、±z軸に沿って延在したダイポールアンテナとして図示しているが、このような態様に限定されない。例えば、アンテナ素子Eは、必要に応じてモノポールアンテナ、パッチアンテナ、またはホーンアンテナ等であってもよい。
【0021】
第1反射板M1及び第2反射板M2は、誘電体基板の板面に導体の格子状周期配列パターンが形成された周波数選択板(FSS:Frequency Selective Surface)である。この第1反射板M1及び第2反射板M2は、例えば、板面が導体(金属箔)で皮膜された誘電体基板(プリント基板)の導体被膜部分を、所定の格子状周期配列パターンでパターニングして作製される。第1反射板M1及び第2反射板M2は、導体及び誘電体の格子状周期配列パターンに基づいて定まる特定の周波数帯域に属する電磁波のみを透過し、それ以外の周波数帯の電磁波を反射する特性を有している。
【0022】
第1反射板M1及び第2反射板M2は、それぞれ異なる周期配列パターンが形成されている。このため、第1反射板M1及び第2反射板M2は、互いに異なる特性を有している。つまり、第1反射板M1及び第2反射板M2は、アンテナ素子Eが放射する電磁波のうち、互いに異なる周波数帯の電磁波のみを反射するように構成されている。
【0023】
例えば、第1反射板M1は、アンテナ素子Eが放射する電磁波(2GHz、800MHz)のうち、2GHzの電磁波のみを反射するように構成されている。また、第2反射板M2は、アンテナ素子Eが放射する電磁波のうち、800MHzの電磁波のみを反射するように構成されている。なお、第1反射板M1及び第2反射板M2の周期配列パターン及びその特性の例については後述する。
【0024】
このような第1反射板M1及び第2反射板M2は、
図3に示すように、アンテナ素子Eと、それぞれ一定の離間距離をもち、かつアンテナ素子Eを挟むようにして対向配置される。また、第1反射板M1及び第2反射板M2は、いずれもその板面が互いに平行になるように配置されている。つまり、第1反射板M1及び第2反射板M2は、アンテナ素子Eから所定距離だけ離間されながら、それぞれの板面が平行となって、各板面の法線の向きが一致し、かつアンテナ素子Eを挟むようにして対向配置される。
【0025】
なお、第1反射板M1及び第2反射板M2は、例えば、一辺がそれぞれ異なる正方形をなしている。この第1反射板M1及び第2反射板M2の大きさは、アンテナ装置Aが扱う電磁波の放射特性(ビーム幅)に基づいて決定される。ここでビーム幅とは、アンテナ装置Aの水平面(xy平面)についての半値ビーム幅(水平面内強度分布が半値となる方位間の角度)のことである。
【0026】
上述した構成からなるアンテナ装置Aによれば、アンテナ素子Eから放射される複数の周波数帯の電磁波が、その周波数帯に応じて第1反射板M1及び第2反射板M2のいずれかによる反射の影響を受け、それぞれが所望する指向性を得る仕組みとなっている。
【0027】
次に、このように構成された本アンテナ装置Aの作用について説明する。
例えば、第1反射板M1及び第2反射板M2の周期配列パターンは、
図4(a)に示すように形成されている。なお、
図4(a)において、網掛けされた領域は導体の部分を示しており、それ以外の領域は誘電体の部分を示している。
第1反射板M1の周期配列パターンは、
図4(b)に示すように、各パラメータがd1=115.3mm、a1=82.3mm、w1=11.5mmと設定されている。また、正方形である第1反射板M1の一辺L1は、180.0mmと設定されている。
【0028】
このような第1反射板M1は、2GHzを中心とした周波数帯においては、高い反射特性を有し、一方800MHzを中心とした周波数帯において低い反射特性を有している。つまり、第1反射板M1には、アンテナ素子Eが放射する電磁波(2GHz、800MHz)のうち、最大周波数の2GHzの電磁波のみを反射可能とし、それ以外の周波数である800MHzの電磁波を透過する特性を有するように周期配列パターンが形成されている。
【0029】
ここで、「透過する」とは、第1反射板M1及び第2反射板M2が特定の周波数帯域に属する周波数の電磁波を完全に透過するという意味ではなく、第1反射板M1及び第2反射板M2の反射特性が所定値以下(例えば−10dB以下)であることを表している。
【0030】
一方、第2反射板M2の周期配列パターンは、
図4(b)に示すように、各パラメータがd2=48.1mm、a2=30.9mm、w2=6.6mmと設定されている。また、正方形である第2反射板M2の一辺L2は、375.0mmと設定されている。
【0031】
このような第2反射板M2は、800MHzを中心とした周波数帯においては、高い反射特性を有し、一方2GHzを中心とした周波数帯において低い反射特性を有している。つまり、第2反射板M2には、アンテナ素子Eが放射する周波数(2GHz、800MHz)のうち800MGHzの電磁波のみを反射可能とし、それ以外の周波数である2GHzの電磁波を透過する特性を有するように周期配列パターンが形成されている。
【0032】
このように構成された第1反射板M1及び第2反射板M2は、上述したように、アンテナ素子Eと、それぞれ一定の離間距離をもち、かつアンテナ素子Eを挟むようにして対向配置される。ここで、アンテナ素子Eと第1反射板M1との距離を37.5mmとし、一方アンテナ素子Eと第2反射板M2との距離を93.8mmとする。
【0033】
第1反射板M1及び第2反射板M2が上述したように配置されることで、第1反射板M1によって反射された2GHz帯の電磁波と、第2反射板M2によって反射された800MHz帯の電磁波とを異なる方向への指向性を実現できる。つまり、
図5(a)、(b)に示すよう、2GHz帯の電磁波と800MHz帯の電磁波との逆方向への指向性を実現できる。なお、
図5に示す水平放射特性の水平面は、xy平面(
図1を参照)である。また、
図5は、アンテナ装置Aが配された位置を中心として、その水平面(xy平面)に沿った全方位についての電磁波の放射強度を図示したものである。
【0034】
例えば、2GHz帯の電磁波を基地局Bに送信し、一方800MHz帯の電磁波を端末Tに送信する必要がある場合には、第1反射板M1によって反射された2GHz帯の電磁波が基地局Bに向かう方向への指向性を示すと共に、第2反射板M2によって反射された800MHz帯の電磁波が端末Tに向かう方向への指向性を示すように、第1反射板M1及び第2反射板M2を配置すればよい。
【0035】
この際、第1反射板M1によって反射された2GHz帯の電磁波は、第2反射板M2を透過するので、電磁波の伝送が第2反射板M2によって阻害されてない。また、第2反射板M2によって反射された800MGHz帯の電磁波も、第1反射板M1を透過するので、電磁波の伝送が第1反射板M1によって阻害されてない。
【0036】
このような本実施形態によれば、複数の周波数帯の電磁波を送受信するアンテナ素子Eと、周波数毎に設けられ、電磁波を反射する第1反射板M1及び第2反射板M2とを具備し、第1反射板M1及び第2反射板M2同士は、反射方向が異なるように配置されることによって、複数の周波数帯でアンテナ素子Eを共用することでアンテナ装置Aを小型化し、かつ反射方向が異なる第1反射板M1及び第2反射板M2を用いて周波数帯毎に異なる方向への指向性を実現できる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態では、第1反射板M1及び第2反射板M2が対向配置されているが、本発明はこれに限定されない。つまり、第1反射板M1及び第2反射板M2を対向配置ではなく、基地局Bや端末Tの方向に応じて、例えば、
図7に示すように、第1反射板M1及び第2反射板M2の角度を設定すればよい。
【0038】
(2)上記実施形態では、第1反射板M1及び第2反射板M2として周波数選択板を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、周波数選択板の代わりに、
図7に示すような、誘電体からなる棒状部材が同一平面上で平行かつ等間隔に配列されてなる複数の反射層が積層され、隣接する反射層の棒状部材が直交されているメタマテリアル反射板を、第1反射板M1及び第2反射板M2として用いてもよい。また、周波数選択板として、金属板にスロットを周期的に配置して形成されたものを使用するようにしてもよい。
【0039】
(3)アンテナ装置Aが搭載された中継装置Rは、基地局B及び端末Tのみと信号を送受信しているだけであるため、反射板を2つしか備えていないが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8(a)に示すように、基地局Bに加えて、基地局Cと通信する中継装置Rである場合には、
図8(b)に示すように、3つの反射板M11、M12、M13及び2つのアンテナ素子E11、E12を備える必要がある。
【0040】
上記2つのアンテナ素子E11、E12は、それぞれ基地局Bあるいは基地局Cと通信すると共に、端末Tと通信するためのものである。
反射板M11は、アンテナ素子E11によって放射された端末Tに向けた所定の周波数の電磁波を反射すると共に、アンテナ素子E11によって放射された基地局Bに向けた所定の周波数の電磁波を透過する特性を有するものである。
反射板M12は、アンテナ素子E12によって放射された端末Tに向けた所定の周波数の電磁波を反射すると共に、アンテナ素子E12によって放射された基地局Cに向けた所定の周波数の電磁波を透過する特性を有するものである。
【0041】
反射板M13は、アンテナ素子E11によって放射された基地局Bに向けた所定の周波数及びアンテナ素子E12によって放射された基地局Cに向けた所定の周波数両方の電磁波を反射すると共に、アンテナ素子E11及びアンテナ素子E12によって放射された端末Tに向けた所定の周波数の電磁波を透過する特性を有するものである。上記3つの反射板M11、M12、M13及び2つのアンテナ素子E11、E12を、
図8(b)に示すように配置することによって、基地局B及び端末Tに加え、基地局Bや端末Tと方向の異なる基地局Cと通信することが可能になる。本発明は、電磁波を送受信する対象相手の数に応じて3つ以上の反射板を備えるようにしてもよい。また、本アンテナ装置Aは、中継装置Rに搭載されているが、中継装置R以外の他の装置に搭載されて使用されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
A…アンテナ装置、E、E11、E12…アンテナ素子、M1…第1反射板、M2…第2反射板、B…基地局、T…端末、R…中継装置、E1…給電点、CL1、CL2…セル、M11、M12、M13…反射板