特許第6002705号(P6002705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6002705パターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、及び、電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6002705
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】パターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、及び、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20160923BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20160923BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20160923BHJP
   C07C 311/51 20060101ALI20160923BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   G03F7/004 503A
   G03F7/039 601
   G03F7/038 601
   C07C311/51CSP
   C08F20/18
【請求項の数】9
【全頁数】131
(21)【出願番号】特願2014-30830(P2014-30830)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-194534(P2014-194534A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-41153(P2013-41153)
(32)【優先日】2013年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151194
【弁理士】
【氏名又は名称】尾澤 俊之
(72)【発明者】
【氏名】片岡 祥平
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 明規
(72)【発明者】
【氏名】福原 敏明
(72)【発明者】
【氏名】古谷 創
(72)【発明者】
【氏名】白川 三千紘
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−053688(JP,A)
【文献】 特開2011−248332(JP,A)
【文献】 特開2011−100105(JP,A)
【文献】 特開2009−274963(JP,A)
【文献】 特開2009−191055(JP,A)
【文献】 特開2011−203644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)下記一般式(I−1)で表される化合物(A)と、前記化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)と、前記化合物(A)から発生した酸とは作用せず、前記化合物(B)から発生した酸の作用により有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解度が減少する樹脂(P)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を含む膜を形成する工程、(イ)前記膜を露光する工程、及び、(ウ)有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程を含むパターン形成方法。
【化101】

一般式(I−1)中、
及びR’はそれぞれ独立に1価の有機基を表し、Yは−SO−又は−CO−を表し、Xは対カチオンを表す。
【請求項2】
前記化合物(A)が下記一般式(I−2a)又は(I−2b)で表される、請求項1に記載のパターン形成方法。
【化102】

一般式(I−2a)及び(I−2b)中、
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アルコキシ基を表し、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。
2個のR及びRの内の2つ以上は、互いに連結して環を形成していてもよい。
、R’及びXは一般式(I−1)におけるR、R’及びXと同義である。
【請求項3】
前記化合物(A)が下記一般式(I−3a)又は(I−3b)で表される、請求項2に記載のパターン形成方法。
【化103】

一般式(I−3a)及び(I−3b)中、
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、R及びRで表されるアルキル基又はシクロアルキル基に含まれるCHは、−O−、−C(O)−、−S(O)n−、−S(O)−NR−、−C(O)−NR−、−OC(O)−NR−及びその組み合わせで置き換わっていてもよい。
は、水素原子又は1価の有機基を表し、nは0から2の整数を表す。
2個のR及びRの内の2つ以上は、互いに連結して環を形成していてもよい。
及びXは、一般式(I−2a)におけるR及びXと同義である。
【請求項4】
樹脂(P)が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化104】

一般式(II)中、
Raは、水素原子又はアルキル基を表し、
Rbは、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、2つのRbは互いに結合して環を形成していてもよい。
【請求項5】
下記一般式(I−2a)又は(I−2b)で表される化合物(A)と、前記化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)と、前記化合物(A)から発生した酸とは作用せず、前記化合物(B)から発生した酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する樹脂(P)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化105】

一般式(I−2a)及び(I−2b)中、
及びR’はそれぞれ独立に1価の有機基を表す。
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アルコキシ基を表し、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。
2個のR及びRの内の2つ以上は、互いに連結して環を形成していてもよい。
は対カチオンを表す。
【請求項6】
前記化合物(A)が下記一般式(I−3a)又は(I−3b)で表される、請求項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化106】

一般式(I−3a)及び(I−3b)中、
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、R及びRで表されるアルキル基又はシクロアルキル基に含まれるCHは、−O−、−C(O)−、−S(O)n−、−S(O)−NR−、−C(O)−NR−、−OC(O)−NR−及びその組み合わせで置き換わっていてもよい。
は、水素原子又は1価の有機基を表し、nは0から2の整数を表す。
及びXは、一般式(I−2a)におけるR及びXと同義である。
【請求項7】
樹脂(P)が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有する、請求項5又は6に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化107】

一般式(II)中、
Raは、水素原子又はアルキル基を表し、
Rbは、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、2つのRbは互いに結合して環を形成していてもよい。
【請求項8】
請求項5〜のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、電子デバイスの製造方法、電子デバイス、及び、化合物に関する。より詳細には、本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶及びサーマルヘッド等の回路基板の製造、並びにその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程に好適なパターン形成方法、それに用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、及び、化合物に関する。また、本発明は、前記パターン形成方法を含む電子デバイスの製造方法及び該方法により製造された電子デバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うべく、化学増幅を利用したパターン形成方法が用いられている。例えば、ポジ型の化学増幅法では、まず、露光部に含まれる光酸発生剤が、光照射により分解して酸を発生する。そして、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)過程等において、発生した酸の触媒作用により、感光性組成物に含まれるアルカリ不溶性の基をアルカリ可溶性の基に変化させる。その後、例えばアルカリ溶液を用いて、現像を行う。これにより、露光部を除去して、所望のパターンを得る(例えば、特許文献1、2、3、4など参照)。
上記方法において、アルカリ現像液としては、種々のものが提案されている。例えば、このアルカリ現像液として、2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)の水系アルカリ現像液が汎用的に用いられている。
【0003】
半導体素子の微細化のために、露光光源の短波長化及び投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では、193nmの波長を有するArFエキシマレーザーを光源とする露光機が開発されている。解像力を更に高める技術として、投影レンズと試料との間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)を満たす方法(即ち、液浸法)が提唱されている。また、更に短い波長(13.5nm)の紫外光で露光を行なうEUVリソグラフィーも提唱されている。
【0004】
近年では、有機溶剤を含んだ現像液を用いたパターン形成方法も開発されつつある(例えば、特許文献5〜8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3632410号公報
【特許文献2】特開2011−100105号公報
【特許文献3】特開2009−274963号公報
【特許文献4】特許第5001192号公報
【特許文献5】特開2008−281975号公報
【特許文献6】特開2010−139996号公報
【特許文献7】特開2010−164958号公報
【特許文献8】特開2011−203644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、更に近年では、微細化のニーズが急激に高まっており、例えば、レジスト膜に、特に超微細のパターン(特に、50nm以下のトレンチ幅を有するトレンチパターンや、50nm以下のホール径を有するホールパターン)を形成しようとする場合において、更なる改良が求められている。具体的には、超微細のパターン形成において、線幅ばらつき(以下、ラインウィズスラフネス又はLWRとも称する)が小さく、デフォーカス(以下、DOFとも称する)が高く、露光ラチチュード(以下、ELとも称する)に優れたレジスト組成物の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、超微細のパターン(特に、50nm以下のトレンチ幅を有するトレンチパターンや、50nm以下のホール径を有するホールパターン)の形成において、ラインウィズスラフネス等のラフネス性能、及び、デフォーカス性能が高く、解像力及び露光ラチチュードに優れた、パターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜及び化合物、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法及び電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記目的が達成される。
【0009】
〔1〕
(ア)下記一般式(I−1)で表される化合物(A)と、前記化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)と、前記化合物(A)から発生した酸とは作用せず、前記化合物(B)から発生した酸の作用により有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解度が減少する樹脂(P)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を含む膜を形成する工程、(イ)前記膜を露光する工程、及び、(ウ)有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程を含むパターン形成方法。
【化108】

一般式(I−1)中、
及びR’はそれぞれ独立に1価の有機基を表し、Yは−SO−又は−CO−を表し、Xは対カチオンを表す。
〔2〕
前記化合物(A)が下記一般式(I−2a)又は(I−2b)で表される、上記〔1〕に記載のパターン形成方法。
【化109】

一般式(I−2a)及び(I−2b)中、
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アルコキシ基を表し、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。
2個のR及びRの内の2つ以上は、互いに連結して環を形成していてもよい。
、R’及びXは一般式(I−1)におけるR、R’及びXと同義である。
〔3〕
前記化合物(A)が下記一般式(I−3a)又は(I−3b)で表される、上記〔2〕に記載のパターン形成方法。
【化110】

一般式(I−3a)及び(I−3b)中、
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、R及びRで表されるアルキル基又はシクロアルキル基に含まれるCHは、−O−、−C(O)−、−S(O)n−、−S(O)−NR−、−C(O)−NR−、−OC(O)−NR−及びその組み合わせで置き換わっていてもよい。
は、水素原子又は1価の有機基を表し、nは0から2の整数を表す。
2個のR及びRの内の2つ以上は、互いに連結して環を形成していてもよい。
及びXは、一般式(I−2a)におけるR及びXと同義である。
〔4〕
樹脂(P)が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有する、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化111】

一般式(II)中、
Raは、水素原子又はアルキル基を表し、
Rbは、それぞれ独立に、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、2つのRbは互いに結合して環を形成していてもよい。
〔5〕
下記一般式(I−2a)又は(I−2b)で表される化合物(A)と、前記化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)と、前記化合物(A)から発生した酸とは作用せず、前記化合物(B)から発生した酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する樹脂(P)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化112】

一般式(I−2a)及び(I−2b)中、
及びR’はそれぞれ独立に1価の有機基を表す。
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アルコキシ基を表し、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。
2個のR及びRの内の2つ以上は、互いに連結して環を形成していてもよい。
は対カチオンを表す。
〔6〕
前記化合物(A)が下記一般式(I−3a)又は(I−3b)で表される、〔5〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化113】

一般式(I−3a)及び(I−3b)中、
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、R及びRで表されるアルキル基又はシクロアルキル基に含まれるCHは、−O−、−C(O)−、−S(O)n−、−S(O)−NR−、−C(O)−NR−、−OC(O)−NR−及びその組み合わせで置き換わっていてもよい。
は、水素原子又は1価の有機基を表し、nは0から2の整数を表す。
及びXは、一般式(I−2a)におけるR及びXと同義である。
〔7〕
樹脂(P)が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有する、〔5〕又は〔6〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化114】

一般式(II)中、
Raは、水素原子又はアルキル基を表し、
Rbは、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、2つのRbは互いに結合して環を形成していてもよい。
〔8〕
〔5〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜。
〔9〕
〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
尚、本発明は、上記〔1〕〜〔9〕に係る発明であるが、以下、その他についても参考のため記載した。
〔5
一般式(I−1)で表される化合物(A)と、前記化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)と、前記化合物(A)から発生した酸とは作用せず、前記化合物(B)から発生した酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する樹脂(P)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化115】

一般式(I−1)中、
及びR’はそれぞれ独立に1価の有機基を表し、Yは−SO−又は−CO−を表し、Xは対カチオンを表す。
〔6
前記化合物(A)が下記一般式(I−2a)又は(I−2b)で表される、上記〔5〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化116】

一般式(I−2a)及び(I−2b)中、
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アルコキシ基を表し、Rは、水素原子又は1価の有機基を表す。
2個のR及びRの内の2つ以上は、互いに連結して環を形成していてもよい。
、R’及びXは一般式(I−1)におけるR、R’及びXと同義である。
〔7
前記化合物(A)が下記一般式(I−3a)又は(I−3b)で表される、上記〔6〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化117】

一般式(I−3a)及び(I−3b)中、
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、R及びRで表されるアルキル基又はシクロアルキル基に含まれるCHは、−O−、−C(O)−、−S(O)n−、−S(O)−NR−、−C(O)−NR−、−OC(O)−NR−及びその組み合わせで置き換わっていてもよい。
は、水素原子又は1価の有機基を表し、nは0から2の整数を表す。
及びXは、一般式(I−2a)におけるR及びXと同義である。
〔8
樹脂(P)が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有する、上記〔5〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化118】


一般式(II)中、
Raは、水素原子又はアルキル基を表し、
Rbは、それぞれ独立に、アルキル基、又は、シクロアルキル基を表し、2つのRbは互いに結合して環を形成していてもよい。
〔9
上記〔5〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されるレジスト膜
〔10’
上記〔〕に記載の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイス。
11’
下記一般式(I−3a)で表される化合物。
【化119】


一般式(I−3a)中、
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アルコキシ基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、R及びRで表されるアルキル基又はシクロアルキル基に含まれるCHは、−O−、−C(O)−、−S(O)n−、−S(O)−NR−、−C(O)−NR−、−OC(O)−NR−及びその組み合わせで置き換わっていてもよい。
は、水素原子又は1価の有機基を表し、nは0から2の整数を表す。
は対カチオンを表す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超微細のパターン(特に、50nm以下のトレンチ幅を有するトレンチパターンや、50nm以下のホール径を有するホールパターン)の形成において、ラインウィズスラフネス等のラフネス性能、及び、デフォーカス性能が高く、解像力及び露光ラチチュードに優れた、パターン形成方法、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜及び化合物、並びに、これらを用いた電子デバイスの製造方法及び電子デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書における基及び原子団の表記において、置換又は無置換を明示していない場合は、置換基を有さないものと置換基を有するものの双方が含まれるものとする。例えば、置換又は無置換を明示していない「アルキル基」は、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含することとする。
本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線、イオンビーム等の粒子線等を意味する。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、極紫外線(EUV光)などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も含まれるものとする。
【0012】
本発明のパターン形成方法は、
(ア)下記一般式(I−1)で表される化合物(A)と、前記化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)と、前記化合物(A)から発生した酸とは作用せず、前記化合物(B)から発生した酸の作用により有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解度が減少する樹脂(P)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を含む膜を形成する工程、
(イ)前記膜を露光する工程、及び、
(ウ)有機溶剤を含む現像液を用いて現像してネガ型のパターンを形成する工程を含有する。
【0013】
【化10】

一般式(I−1)中、
及びR’はそれぞれ独立に1価の有機基を表し、Yは−SO−又は−CO−を表し、Xは対カチオンを表す。
【0014】
また、本発明は、上記一般式(I−1)で表される化合物を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物にも関するものでもある。
【0015】
上記の本発明のパターン形成方法、又は、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって、超微細のパターン(例えば、50nm以下のトレンチ幅を有するトレンチパターンや、50nm以下のホール径を有するホールパターン)の形成において、ラインウィズスラフネス等のラフネス性能、デフォーカス性能、及び露光ラチチュードのいずれにも優れる理由は定かではないが以下のように推定される。
まず、化合物(A)は活性光線又は放射線によって分解する前は、酸発生剤(B)から発生する酸と塩交換することにより中和することができ、塩基として作用する。化合物(A)は、活性光線又は放射線によって分解することで塩基として作用できなくなる性質、すなわち光塩基消失剤としての性質を持つ。これにより、露光部と未露光部の中和後の有効酸量のコントラストが向上するため、露光部と未露光部の樹脂(P)の反応コントラストが向上するものと考えられる。その結果、露光部と未露光部の現像液に対する溶解コントラストが向上することにより、ラフネス性能及び露光ラチチュードが改良されると考えられる。また、デフォーカス性能が改良される理由は分かっていないが、有機溶剤を含む現像液を用いてパターンを形成すると、トレンチ形状及びコンタクトホール形状のパターンを形成する際のデフォーカス性能が向上することが分かっている。
【0016】
なお、アルカリ現像液を用いるポジ型の画像形成方法によれば、上記のような超微細なパターンを形成することは難しい傾向となる。これは、ポジ型の画像形成方法でトレンチパターンやホールパターンを形成する場合には、トレンチパターンやホールパターンを形成しようとする領域が露光部となるが、超微細な領域を露光して解像することは、光学上、より困難な傾向となるためである。しかしながら、上記したように、化合物(A)の使用は、露光部と未露光部との樹脂(P)の反応コントラストの向上に寄与するものであり、ポジ型の画像形成方法においても、性能向上し得るものである。よって、本発明は、本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって形成されたレジスト膜を、アルカリ現像液を用いて現像してポジ型のパターンを形成するパターン形成方法を排除するものではない。
【0017】
以下、本発明で使用し得る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」又は「本発明のレジスト組成物」とも称する)について説明する。
また、本発明は以下に説明する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関するものでもある。
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、特にレジスト膜に超微細のパターン(例えば、50nm以下のトレンチ幅を有するトレンチパターンや、50nm以下のホール径を有するホールパターン)を形成する場合においては、ネガ型の現像(露光されると現像液に対して溶解性が減少し、露光部がパターンとして残り、未露光部が除去される現像)に用いられることが好ましい。即ち、本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、有機溶剤を含む現像液を用いた現像に用いられる有機溶剤現像用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物とすることができる。ここで、有機溶剤現像用とは、少なくとも、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程に供される用途を意味する。
【0018】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、典型的にはレジスト組成物であり、ネガ型のレジスト組成物であっても、ポジ型のレジスト組成物であってもよいが、ネガ型のレジスト組成物(即ち、有機溶剤現像用のレジスト組成物)であることが、特に高い効果を得ることができることから好ましい。また本発明に係る組成物は、典型的には化学増幅型のレジスト組成物である。
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、[1]後述する一般式(I−1)で表される化合物(A)と、[2]前記化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)と、[3]化合物(A)から発生した酸とは作用せず、化合物(B)から発生した酸の作用により有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解度が減少する樹脂(P)とを含有する。
本発明に係る組成物が含み得るさらなる成分としては、[4]疎水性樹脂、[5−1]塩基性化合物、[5−2]窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物、[6]溶剤、及び、[7]界面活性剤などが挙げられる。本発明の組成物は、例えば「パターン形成方法」として後述する方法に従って、パターン形成用に使用され得る。
以下、これら各成分について、順に説明する。
【0019】
[1]一般式(I−1)で表される化合物(A)
本発明のパターン形成方法に使用する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、下記一般式(I−1)で表される化合物(以下、「化合物(A)」とも称する)を含有する。ここで、化合物(A)は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生し得るが、化合物(A)から発生した酸は、活性光線又は放射線の照射により化合物(B)から発生する酸より酸強度が低く、樹脂(P)とは作用しない。
【0020】
【化11】
【0021】
一般式(I−1)中、
及びR’はそれぞれ独立に1価の有機基を表し、Yは−SO−又は−CO−を表し、Xは対カチオンを表す。
【0022】
及びR’の1価の有機基としては、好ましくは炭素数1〜30であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができる。
及びR’におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、置換基を有していてもよい。R及びR’におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。R及びR’におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基などを挙げることができる。
及びR’におけるシクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子を有していてもよい。R及びR’におけるシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などを挙げることができる。
及びR’におけるアリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリール基である。R及びR’におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができる。
及びR’におけるアラルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。R及びR’におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基などを挙げることができる。
及びR’におけるアルケニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、R及びR’として挙げたアルキル基の任意の位置に2重結合を有する基が挙げられる。
【0023】
及びR’としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子など)、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、カルボニル基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜10)、アシル基(好ましくは炭素数2〜20)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜10)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20)、アミノアシル基(好ましくは炭素数2〜10)、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、珪素原子を有する基、及び、これらの2種以上を組み合わせてなる基などが挙げられる。アリール基、シクロアルキル基などにおける環状構造については、置換基としては更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を挙げることができる。アミノアシル基については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を挙げることができる。
【0024】
また、R及びR’としてのアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基に含まれるCHは、−O−、−C(O)−、−S(O)n−、−S(O)−NR−、−C(O)−NR−、−OC(O)−NR−及びその組み合わせで置き換わっていてもよい。Rは水素原子又は1価の有機基を表し、nは0から2の整数を表す。
としての有機基の具体例及び好ましい例は、R及びR’の1価の有機基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0025】
で表される対カチオンは、好ましくはオニウムカチオンであり、より好ましくはスルホニウムカチオンもしくはヨードニウムカチオンである。
好ましいスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンとしては、後述する活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(酸発生剤)における、一般式(ZI)及び(ZII)で表わされる化合物(一般式(ZI)の好ましい例として挙げられている一般式(ZI−3)、一般式(ZI−4)なども含む)のスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンを挙げることができる。具体例としても、後掲の酸発生剤(B)の具体例中のスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0026】
化合物(A)は、下記一般式(I−2a)又は(I−2b)で表される化合物であることが好ましい。
【0027】
【化12】
【0028】
一般式(I−2a)及び(I−2b)中、
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は、アルコキシ基を表し、Rは水素原子又は1価の有機基を表す。
2個のR及びRの内の2つ以上は、互いに連結して環を形成していてもよい。
、R’及びXは一般式(I−1)におけるR、R’及びXと同義である。
【0029】
のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、置換基を有していてもよい。Rのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。R及びR’におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐状アルキル基を挙げることができる。
のシクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子を有していてもよい。R及びR’におけるシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などを挙げることができる。
のアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基などを挙げることができる。
【0030】
としてのアルキル基、シクロアルキル基、及びアルコキシ基が有していてもよい置換基の具体例は、R及びR’としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基が有していてもよい置換基の具体例として挙げたものと同様である。
【0031】
は、水素原子、無置換のアルキル基、無置換のシクロアルキル基、又は、無置換のアルコキシ基であることが好ましく、水素原子、又は、無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0032】
としての1価の有機基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(I−1)におけるR及びR’の1価の有機基で記載したものと同様である。
【0033】
2個のR及びRの内の2つ以上が、互いに連結することにより形成されてもよい環としては単環であっても、多環であってもよく、置換基を有していてもよい。このような環としては、炭素数3〜10の単環のシクロアルカン環や炭素数4〜20の多環のシクロアルカン環が挙げられる。環が有していてもよい置換基の具体例は、R及びR’としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基が有していてもよい置換基の具体例として挙げたものと同様である。
【0034】
また、R、R’及びXの具体例及び好ましい例は、上記一般式(I−1)におけるR、R’及びXの具体例及び好ましい例として挙げたものと同様である。
【0035】
化合物(A)は、下記一般式(I−3a)又は(I−3b)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
【化13】
【0037】
一般式(I−3a)及び(I−3b)中、
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子、水酸基、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、R及びRで表されるアルキル基又はシクロアルキル基に含まれるCHは、−O−、−C(O)−、−S(O)n−、−S(O)−NR−、−C(O)−NR−、−OC(O)−NR−及びその組み合わせで置き換わっていてもよい。
は水素原子又は1価の有機基を表し、nは0から2の整数を表す。
2個のR及びRの内の2つ以上は、互いに連結して環を形成していてもよい。
及びXは、一般式(I−2a)におけるR及びXと同義である。
【0038】
一般式(I−3a)及び(I−3b)において、R及びRとしてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、置換基を有していてもよい。R及びRとしてのアルキル基は、好ましくは炭素数1から10のアルキル基であり、アルキル鎖の一部が−O−、−C(O)−、−S(O)n−、−S(O)−NR−、−C(O)−NR−、−OC(O)−NR−及びその組み合わせで置き換わっていてもよい。
及びRにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基を挙げることができる。
【0039】
及びRとしてのシクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子、硫黄原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。
【0040】
2個のR及びRの内の2つ以上が、互いに連結することにより形成されてもよい環としては単環であっても、多環であってもよく、置換基を有していてもよい。このような環としては、炭素数3〜10の単環のシクロアルカン環や炭素数4〜20の多環のシクロアルカン環が挙げられる。
【0041】
及びRとしてのアルキル基及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基、並びに、2個のR及びRの内の2つ以上が、互いに連結することにより形成されてもよい環が有していてもよい置換基の具体例は、R及びR’としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びアルケニル基が有していてもよい置換基の具体例として挙げたものと同様である。
【0042】
また、R及びXの具体例及び好ましい例は、上記一般式(I−2a)におけるR及びXの具体例及び好ましい例として挙げたものと同様である。
【0043】
化合物(A)の含有量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜8質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%である。
【0044】
以下、一般式(I−1)で表される化合物(A)の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
【化14】
【0046】
【化15】
【0047】
【化16】
【0048】
【化17】
【0049】
【化18】
【0050】
【化19】
【0051】
種々の合成方法により化合物(A)のアニオンを合成できるが、一例として、一般式(I−1)におけるYが−SO−である場合における一般的な合成方法を下記に示す(Yが−CO−である場合も下記合成方法に準じることができる)。
【0052】
【化20】
【0053】
[2]化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)
本発明の組成物は、化合物(A)とは異なる、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(B)(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有する。
酸発生剤としては、公知のものであれば特に限定されないが、好ましくは下記一般式(ZI)、(ZII)又は(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0054】
【化21】
【0055】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
【0056】
なお、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくとも1つと、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0057】
は、非求核性アニオン(求核反応を起こす能力が著しく低いアニオン)を表す。
としては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等を挙げられる。
【0058】
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基が挙げられる。
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基を挙げることができる。
【0059】
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。この具体例としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数2〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を有していてもよい。
【0060】
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基を挙げることができる。
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
【0061】
その他のZとしては、例えば、弗素化燐(例えば、PF)、弗素化硼素(例えば、BF)、弗素化アンチモン(例えば、SbF)等を挙げることができる。
としては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。非求核性アニオンとして、より好ましくはパーフロロ脂肪族スルホン酸アニオン(更に好ましくは炭素数4〜8)、フッ素原子を有するベンゼンスルホン酸アニオンである。
【0062】
酸強度の観点からは、発生酸のpKaが−1以下であることが、感度向上のために好ましい。
【0063】
201、R202及びR203の有機基としては、アリール基(炭素数6〜15が好ましい)、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜10が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数3〜15が好ましい)などが挙げられる。
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、3つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの他に、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基も可能である。
【0064】
201、R202及びR203としてのこれらアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
また、R201、R202及びR203から選ばれる2つが、単結合又は連結基を介して結合していてもよい。連結基としてはアルキレン基(炭素数1〜3が好ましい)、−O−,−S−,−CO−,−SO−などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
201、R202及びR203のうち少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0046,0047、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書に式(I−1)〜(I−70)として例示されている化合物、米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に式(IA−1)〜(IA−54)、式(IB−1)〜(IB−24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
【0066】
一般式(ZI)で表される化合物の更に好ましい例として、以下に説明する一般式(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物を挙げることができる。先ず、一般式(ZI-3)で表される化合物について説明する。
【0067】
【化22】
【0068】
上記一般式(ZI−3)中、
は、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又はアルケニル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、RとRが互いに連結して環を形成してもよく、
とRは、互いに連結して環を形成してもよく、
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシカルボニルシクロアルキル基を表し、RとRが互いに連結して環を形成してもよく、この環構造は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケトン基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
は、非求核性アニオンを表す。
【0069】
としてのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐アルキル基を挙げることができる。Rのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基としては、シアノメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0070】
としてのシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。Rのシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。
【0071】
としてのアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、t−ブチルオキシ基、t−アミルオキシ基、n−ブチルオキシ基が挙げられる。Rのアルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。
【0072】
としてのシクロアルコキシ基は、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルコキシ基であり、シクロヘキシルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基などを挙げることができる。Rのシクロアルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。
【0073】
としてのアリール基は、好ましくは炭素数6〜14のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。Rのアリール基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基が挙げられる。置換基がアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はシクロアルコキシ基の場合、上述したRとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びシクロアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
【0074】
としてのアルケニル基は、ビニル基、アリル基が挙げられる。
【0075】
及びRは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、RとRが互いに連結して環を形成してもよい。但し、R及びRのうち少なくとも1つは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。R、Rについてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の具体例及び好ましい例としては、Rについて前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。RとRが互いに連結して環を形成する場合、R及びRに含まれる環の形成に寄与する炭素原子の数の合計は、4〜7であることが好ましく、4又は5であることが特に好ましい。
【0076】
とRは、互いに連結して環を形成してもよい。RとRが互いに連結して環を形成する場合、Rがアリール基(好ましくは置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基)であり、Rが炭素数1〜4のアルキレン基(好ましくはメチレン基又はエチレン基)であることが好ましく、好ましい置換基としては、上述したRとしてのアリール基が有していても良い置換基と同様のものが挙げられる。RとRが互いに連結して環を形成する場合における他の形態として、Rがビニル基であり、Rが炭素数1〜4のアルキレン基であることも好ましい。
【0077】
及びRにより表されるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜15のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等を挙げることができる。
【0078】
及びRにより表されるシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等を挙げることができる。
【0079】
及びRにより表されるアルケニル基は、好ましくは、2〜30のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、及びスチリル基を挙げることができる。
【0080】
及びRにより表されるアリール基としては、例えば、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、フェナンスレニル基、ペナレニル基、フェナントラセニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基等が挙げられる。好ましくは、フェニル基、ナフチル基であり、更に好ましくは、フェニル基である。
【0081】
及びRにより表される2-オキソアルキル基及びアルコキシカルボニルアルキル基のアルキル基部分としては、例えば、先にR及びRとして列挙したものが挙げられる。
【0082】
及びRにより表される2-オキソシクロアルキル基及びアルコキシカルボニルシクロアルキル基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR及びRyとして列挙したものが挙げられる。
【0083】
は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZとして列挙したものが挙げられる。
【0084】
一般式(ZI−3)で表される化合物は、好ましくは、以下の一般式(ZI−3a)又は(ZI−3b)で表される化合物である。
【0085】
【化23】
【0086】
一般式(ZI−3a)及び(ZI−3b)において、R、R及びRは、上記一般式(ZI−3)で定義した通りである。
【0087】
Yは、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、酸素原子又は窒素原子であることが好ましい。m、n、p及びqは整数を意味し、0〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。SとYを連結するアルキレン基は置換基を有してもよく、好ましい置換基としてはアルキル基が挙げられる。
【0088】
は、Yが窒素原子である場合には1価の有機基を表し、Yが酸素原子又は硫黄原子である場合には存在しない。Rは、電子求引性基を含む基であることが好ましく、下記一般式(ZI−3a−1)〜(ZI−3a−4)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。
【0089】
【化24】
【0090】
上記(ZI−3a−1)〜(ZI−3a−3)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、好ましくはアルキル基である。Rについてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の具体例及び好ましい例としては、上記一般式(ZI−3)におけるRについて前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
上記(ZI−3a−1)〜(ZI−3a−4)において、*は一般式(ZI−3a)で表される化合物中のYとしての窒素原子に接続する結合手を表す。
【0091】
Yが窒素原子である場合、Rは、−SO−Rで表される基であることが特に好ましい。Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、好ましくはアルキル基である。Rについてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の具体例及び好ましい例としては、Rについて前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
【0092】
は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZとして列挙したものが挙げられる。
【0093】
一般式(ZI−3)で表される化合物は、特に好ましくは、以下の一般式(ZI−3a’)又は(ZI−3b’)で表される化合物である。
【0094】
【化25】
【0095】
一般式(ZI−3a’)及び(ZI−3b’)において、R、R、R、Y及びRは、上記一般式(ZI−3a)及び(ZI−3b)で定義した通りである。
【0096】
は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZとして列挙したものが挙げられる。
【0097】
一般式(ZI−3)で表される化合物のカチオン部分の具体例を以下に挙げる。
【0098】
【化26】
【0099】
【化27】
【0100】
【化28】
【0101】
【化29】
【0102】
【化30】
【0103】
【化31】
【0104】
【化32】
【0105】
次に、一般式(ZI−4)で表される化合物について説明する。
【0106】
【化33】
【0107】
一般式(ZI−4)中、
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよく、環を構成する原子として、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子などのヘテロ原子を含んでも良い。これらの基は置換基を有してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZと同様の非求核性アニオンを挙げることができる。
【0108】
一般式(ZI−4)において、R13、R14及びR15のアルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましい。
13、R14及びR15のシクロアルキル基としては、単環若しくは多環のシクロアルキル基が挙げられる。
13及びR14のアルコキシ基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましい。
13及びR14のアルコキシカルボニル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数2〜11のものが好ましい。
13及びR14のシクロアルキル基を有する基としては、単環若しくは多環のシクロアルキル基を有する基が挙げられる。これら基は、置換基を更に有していてもよい。
14のアルキルカルボニル基のアルキル基としては、上述したR13〜R15としてのアルキル基と同様の具体例が挙げられる。
14のアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基としては、直鎖状、分岐状、環状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましい。
【0109】
上記各基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0110】
2個のR15が互いに結合して形成してもよい環構造としては、2個のR15が一般式(ZI−4)中の硫黄原子と共に形成する5員又は6員の環、特に好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環又は2,5−ジヒドロチオフェン環)が挙げられ、アリール基又はシクロアルキル基と縮環していてもよい。この2価のR15は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。前記環構造に対する置換基は、複数個存在しても良く、また、それらが互いに結合して環を形成しても良い。
【0111】
一般式(ZI−4)におけるR15としては、メチル基、エチル基、ナフチル基、及び2個のR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基等が好ましく、2個のR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基が特に好ましい。
【0112】
13及びR14が有し得る置換基としては、水酸基、アルコキシ基、又はアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)が好ましい。
lとしては、0又は1が好ましく、1がより好ましい。
rとしては、0〜2が好ましい。
【0113】
以上説明した一般式(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物が有するカチオン構造の具体例としては、上述した、特開2004−233661号公報、特開2003−35948号公報、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書、米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に例示されている化合物等のカチオン構造の他、例えば、特開2011−53360号公報の段落0046、0047、0072〜0077、0107〜0110に例示されている化学構造等におけるカチオン構造、特開2011−53430号公報の段落0135〜0137、0151、0196〜0199に例示されている化学構造等におけるカチオン構造などが挙げられる。
【0114】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基と同様である。
204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZとして列挙したものが挙げられる。
【0115】
また、一般式(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物の他、下記一般式(I’)で表される化合物も酸発生剤として好ましい。下記一般式(I’)で表される化合物を使用することにより、露光光の透過性が向上し、LWR、DOFが良化する。
【0116】
【化34】
【0117】
上記一般式(I’)中、
X’は、酸素原子、硫黄原子又は−N(Rx)−を表す。
’及びR’はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
’〜R’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基又はアリールカルボニルオキシ基を表す。
Rxは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アルケニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アリールカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表す。
’及びR’は互いに連結して環を形成していても良い。また、R’〜R’中のいずれか2つ以上、R’とR’、R’とR’、R’とRx、R’とRxは、それぞれ、互いに連結して環を形成していても良い。
X’は、吸光性(例えば、波長193nmにおける吸光度)を低く抑える観点から、硫黄原子又は−N(Rx)−であることが好ましい。
は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZとして列挙したものが挙げられる。
【0118】
’〜R’、Rxとしてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基を挙げることができる。
【0119】
なお、Rxについての置換基を有するアルキル基としては、シアノメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
’、R’についての置換基を有するアルキル基としては、メトキシエチル基等が挙げられる。
また、特に直鎖又は分岐アルキル基にシクロアルキル基が置換した基(例えば、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、カンファー残基など)なども挙げられる。
【0120】
’〜R’、Rxとしてのシクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。
’〜R’、Rxとしてのアシル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜10のアシル基である。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基等が挙げられる。
Rxとしてのアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。
’〜R’としてのアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などを挙げることができる。
【0121】
’〜R’としてのアルコキシカルボニル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基である。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0122】
’〜R’としてのアルキルカルボニルオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基である。具体的には、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
【0123】
’〜R’、Rxとしてのアリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0124】
’〜R’としてのアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリールオキシ基であり、例えばフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
【0125】
’〜R’、Rxとしてのアリールオキシカルボニル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
’〜R’としてのアリールカルボニルオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜15のアリールカルボニルオキシ基であり、例えばフェニルカルボニルオキシ基、ナフチルカルボニルオキシ基などが挙げられる。
Rxとしてのアリールカルボニル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜15のアリールカルボニル基であり、例えばフェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基などが挙げられる。
【0126】
’〜R’としてのアルキル基、R’〜R’、Rxとしてのシクロアルキル基、R’〜R’、Rxとしてのアシル基、R’〜R’としてのアルコキシ基、R’〜R’としてのアルコキシカルボニル基、R’〜R’としてのアルキルカルボニルオキシ基、R’〜R’、Rxとしてのアリール基、R’〜R’としてのアリールオキシ基、R’〜R’、Rxとしてのアリールオキシカルボニル基、R’〜R’としてのアリールカルボニルオキシ基、Rxとしてのアリールカルボニル基各々が更に有していてもよい置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)等が挙げられる。
’及びR’が互いに結合して形成してもよい環構造としては、2価のR’及びR’(例えば、エチレン基、プロピレン基、1,2−シクロヘキシレン基等)が一般式(I’)中の硫黄原子と共に形成する5員又は6員の環、特に好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)が挙げられる。ただし、酸アニオン発生の分解効率の観点から、R’及びR’は互いに結合して環を形成しないことが好ましい。
【0127】
’〜R ’中のいずれか2つ以上、R’とR’、R’とR’、R’とRx、R’とRxが互いに結合して形成してもよい環構造としては、好ましくは5員又は6員の環、特に好ましくは6員の環が挙げられる。
’、R’としては、アルキル基又はアリール基であることが特に好ましい。
’〜R’の特に好ましい例としては、置換基を有してもよいアルキル基、又は水素原子が挙げられるが、ArFレジスト用途で用いる場合には、193nmの吸収強度の点で水素原子が特に好ましい。
Rxとしては、アルキル基又はアシル基であることが特に好ましい。
【0128】
次に、非求核性アニオンZ-の好ましい構造である一般式(2)及び一般式(2’)について説明する。
まず、一般式(2)で表されるスルホン酸アニオンについて説明する。
【0129】
【化35】
【0130】
上記一般式(2)中、
Xfは、それぞれ独立に、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
Lは、単結合又は2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Aは、環状構造を有する有機基を表す。
xは1〜20の整数を表す。
【0131】
一般式(2)のアニオンについて、更に詳しく説明する。
Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されているアルキル基であり、フッ素原子で置換されているアルキル基におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。また、Xfのフッ素原子で置換されているアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfとして、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、フッ素原子、CF、CHF、C、C、C、C11、C13、C15、C17、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH、CHCHが挙げられ、中でもフッ素原子、CF、CHF、Cが好ましい。特に、全てのXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0132】
Lは、単結合又は2価の連結基を表し、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−N(Ri)−(式中、Riは水素原子又はアルキル基を表す)、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられ、−COO−、−OCO−、−CO−、−SO−、−CON(Ri)−、−SON(Ri)−、−CON(Ri)−アルキレン基−、−N(Ri)CO−アルキレン基−、−COO−アルキレン基−又は−OCO−アルキレン基−であることが好ましく、−COO−、−OCO−、−SO−、−CON(Ri)−又は−SON(Ri)−であることがより好ましい。複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
【0133】
Riについてのアルキル基の具体例及び好ましい例としては、R’〜R’についてのアルキル基として前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
【0134】
Aの環状の有機基としては、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、複素環基(芳香属性を有するものだけでなく、芳香族性を有さないものも含み、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、サルトン環、環状ケトンのような構造も含む。)等が挙げられる。
【0135】
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、ノルボルネン−イル基、トリシクロデカニル基(例えば、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニル基)、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。また、ピペリジン基、デカヒドロキノリン基、デカヒドロイソキノリン基等の窒素原子含有脂環基も好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基、デカヒドロキノリン基、デカヒドロイソキノリン基といった炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性を抑制でき、露光ラチチュード向上の観点から好ましい。
【0136】
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環、アントラセン環が挙げられる。中でも193nmにおける光吸光度の観点から低吸光度のナフタレンが好ましい。
【0137】
複素環基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環が挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環が好ましい。
【0138】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基等が挙げられる。
【0139】
なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であっても良い。
【0140】
xは1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。
【0141】
次に、一般式(2’)で表されるジスルホニルイミド酸アニオンについて説明する。
【0142】
【化36】
【0143】
一般式(2’)中、
Xfは、上記一般式(2)で定義した通りであり、好ましい例も同様である。一般式(2’)において、2つのXfは互いに連結して環構造を形成してもよい。
【0144】
についてのジスルホニルイミド酸アニオンとしては、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンであることが好ましい。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおける2つのアルキル基が互いに連結してアルキレン基(好ましくは炭素数2〜4)を成し、イミド基及び2つのスルホニル基とともに環を形成していてもよい。ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンが形成していてもよい上記の環構造としては、5〜7員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
【0145】
これらのアルキル基、及び2つのアルキル基が互いに連結して成すアルキレン基が有し得る置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
【0146】
としては、下記一般式(B−1)で表されるスルホン酸アニオンも好ましい。
【0147】
【化37】
【0148】
上記一般式(B−1)中、
b1は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基(CF)を表す。
nは0〜4の整数を表す。
nは0〜3の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
b1は単結合、アルキレン基、エーテル結合、エステル結合(−OCO−若しくは−COO−)、スルホン酸エステル結合(−OSO−若しくは−SO−)、又はそれらの組み合わせを表す。
b1はエステル結合(−OCO−若しくは−COO−)又はスルホン酸エステル結合(−OSO−若しくは−SO−)であることが好ましく、エステル結合(−OCO−若しくは−COO−)であることがより好ましい。
b2は炭素数6以上の有機基を表す。
【0149】
b2についての炭素数6以上の有機基としては、嵩高い基であることが好ましく、炭素数6以上の、アルキル基、脂環基、アリール基、複素環基などが挙げられる。
【0150】
b2についての炭素数6以上のアルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数6〜20の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、例えば、直鎖又は分岐ヘキシル基、直鎖又は分岐ヘプチル基、直鎖又は分岐オクチル基などが挙げられる。嵩高さの観点から分岐アルキル基であることが好ましい。
【0151】
b2についての炭素数6以上の脂環基としては、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性の抑制及びMEEF(Mask Error Enhancement Factor)の向上の観点から好ましい。
【0152】
b2についての炭素数6以上のアリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。中でも、193nmにおける光吸光度が比較的低いナフチル基が好ましい。
【0153】
b2についての炭素数6以上の複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよいが、多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、及びジベンゾチオフェン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環、及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。
【0154】
上記Rb2についての炭素数6以上の置換基は、更に置換基を有していてもよい。この更なる置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであっても良く、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、上述の脂環基、アリール基、又は複素環基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であっても良い。
一般式(B−1)で表されるスルホン酸アニオン構造の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0155】
【化38】
【0156】
としては、下記一般式(A−I)で表されるスルホン酸アニオンも好ましい。
【0157】
【化39】
【0158】
一般式(A−I)中、
は、アルキル基、1価の脂環式炭化水素基、アリール基、又は、ヘテロアリール基である。
は、2価の連結基である。
Rfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基である。
及びnは、それぞれ独立して、0又は1である。
【0159】
上記Rで表されるアルキル基は、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
【0160】
また、上記アルキル基は置換基(好ましくはフッ素原子)を有していてもよく、置換基を有するアルキル基としては、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0161】
上記Rで表されるアルキル基は、メチル基、エチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0162】
上記Rで表される1価の脂環式炭化水素基は、炭素数が5以上であることが好ましい。また該1価の脂環式炭化水素基は炭素数が20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。上記1価の脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基であっても、多環の脂環式炭化水素基であってもよい。脂環式炭化水素基の−CH−の一部が、−O−や−C(=O)−と置換されていても良い。
【0163】
単環の脂環式炭化水素基としては、炭素数5〜12のものが好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデカニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクタジエニル基、ピペリジン環基等が挙げられ、特に、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基が好ましい。
【0164】
多環の脂環式炭化水素基としては、炭素数10〜20のものが好ましい。
【0165】
上記Rで表されるアリール基は、炭素数が6以上であることが好ましい。また該アリール基は炭素数が20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。
上記Rで表されるヘテロアリール基は、炭素数が2以上であることが好ましい。また該ヘテロアリール基は炭素数が20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。
上記アリール基、ヘテロアリール基は、単環式アリール基、単環式ヘテロアリール基であっても、多環式アリール基、多環式ヘテロアリール基であってもよい。
【0166】
単環式のアリール基としては、フェニル基等が挙げられる。
多環式のアリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
単環式のヘテロアリール基としては、ピリジル基、チエニル基、フラニル基等が挙げられる。
多環式のヘテロアリール基としては、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。
【0167】
上記Rとしての1価の脂環式炭化水素基、アリール基、及び、ヘテロアリール基は、更に置換基を有していてもよく、このような更なる置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0168】
は、シクロヘキシル基、又は、アダマンチル基であることが特に好ましい。
【0169】
上記Rで表される2価の連結基としては、特に限定されないが、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S―、−SO−、−SO−、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜30のアルキレン基)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜30のシクロアルキレン基)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜30のアルケニレン基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基)、ヘテロアリーレン基(好ましくは炭素数2〜30のヘテロアリーレン基)、及び、これらの2種以上が組み合わされた基を挙げることができる。上記のアルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は、置換基を更に有していても良く、そのような置換基の具体例は、Rとしての1価の脂環式炭化水素基、アリール基、及び、ヘテロアリール基が更に有していてもよい置換基について前述したものと同様である。
【0170】
上記Rで表される2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基が特に好ましい。
【0171】
Rfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基である。このアルキル基の炭素数は、1〜30であることが好ましく、1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Rfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。より具体的には、Rfは、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。
【0172】
は1であることが好ましい。
は1であることが好ましい。
上記一般式(A−I)で表されるスルホン酸アニオンの好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0173】
〔一般式(A−I)で表されるスルホン酸アニオン〕
【0174】
【化40】
【0175】
酸発生剤として、更に、下記一般式(ZV)で表される化合物も挙げられる。
【0176】
【化41】
【0177】
一般式(ZV)中、
208はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
208のアリール基の具体例としては、上記一般式(ZI)におけるR201〜R203としてのアリール基の具体例と同様のものを挙げることができる。
208のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、それぞれ、上記一般式(ZI)におけるR201〜R203としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
【0178】
Aのアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基など)を、Aのアルケニレン基としては、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)を、Aのアリーレン基としては、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)を、それぞれ挙げることができる。
【0179】
また、化合物(B)は、(化合物中に含まれる全フッ素原子の質量の合計)/(化合物中に含まれる全原子の質量の合計)により表されるフッ素含有率が0.30以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましく、0.20以下であることが更に好ましく、0.15以下であることが特に好ましく、0.10以下であることが最も好ましい。
【0180】
酸発生剤の中で、特に好ましい例を以下に挙げる。
【0181】
【化42】
【0182】
【化43】
【0183】
【化44】
【0184】
【化45】
【0185】
【化46】
【0186】
酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
酸発生剤の組成物中の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは3〜25質量%、更に好ましくは5〜20質量%である。
【0187】
[3]化合物(A)から発生した酸とは作用せず、化合物(B)から発生した酸の作用により分解し極性基を生じる基を有する樹脂(P)
本発明の組成物は、化合物(A)から発生した酸とは作用せず、化合物(B)から発生した酸の作用により有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解度が減少する樹脂(P)を含有する。
【0188】
樹脂(P)としては、例えば、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、化合物(B)から発生した酸の作用により分解し、極性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(P)」ともいう)である。
【0189】
ここで、樹脂(P)は、化合物(B)から発生した酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂である。また、樹脂(P)は、化合物(B)から発生した酸の作用により極性が増大して、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂でもある。
【0190】
ここで、樹脂(P)は、上記したように、化合物(A)から発生した酸とは作用しない樹脂である。
「樹脂(P)が、化合物(A)から発生した酸とは作用しない」とは、活性光線性又は放射線の照射により化合物(A)から発生する酸によって、樹脂(P)における酸分解性基が分解されず、有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解度が減少しないことを指す。具体的には、以下の評価を行い、最終的にベーク後の膜厚が30nm未満であれば、「樹脂(P)が、化合物(A)から発生した酸とは作用しない」に該当するものとする。
【0191】
<酸分解性の評価方法>
樹脂(P)10g、化合物(A)2.0gを溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA))に溶解させ固形分濃度3.5質量%のレジスト溶液を得る。これを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、レジスト組成物を調製する。シリコンウエハ上に有機反射防止膜ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い、膜厚100nmの反射防止膜を形成する。その上にレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベーク(PB:Prebake)を行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成する。得られたウエハをArFエキシマレーザースキャナー(ASML社製;PAS5500/1100)を用い、60mJ/cmの露光量で全面露光を行う。その後、100℃で60秒間加熱(PEB:Post Exposure Bake)する。次いで、有機系現像液(酢酸ブチル)30秒間のパドルにより、レジスト膜に有機系現像液(酢酸ブチル)を接触させ、現像液を振り切りながら、リンス液(4-メチル-2-ペンタノール)で30秒間パドルしてリンスする。続いて、4000rpmの回転数で30秒間ウエハを回転させた後に、90℃で60秒間ベークを行う。その後、ベーク後の膜厚を測定する。
【0192】
酸分解性基は、極性基を酸の作用により分解し脱離する基で保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、有機溶剤を含む現像液中で難溶化又は不溶化する基であれば特に限定されないが、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(従来レジストの現像液として用いられている、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、又はアルコール性水酸基等が挙げられる。
【0193】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、フッ素化アルコール基(ヘキサフルオロイソプロパノール基など))は除くものとする。アルコール性水酸基としては、pKaが12以上且つ20以下の水酸基であることが好ましい。
【0194】
好ましい極性基としては、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基が挙げられる。
【0195】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0196】
36〜R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。炭素数は3〜20のものが好ましい。
36〜R39、R01及びR02のアリール基は、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
36〜R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等を挙げることができる。
36とR37とが結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環若しくは多環)であることが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数5の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。
【0197】
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0198】
樹脂(P)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0199】
また、樹脂(P)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、酸によって分解しカルボキシル基を生じる繰り返し単位(AI)(以下、「繰り返し単位(AI)」とも言う。)を有することが好ましく、下記一般式(aI)で表される繰り返し単位を有することがより好ましい。一般式(aI)で表される繰り返し単位は、酸の作用により極性基としてカルボキシル基を発生するものであり、複数のカルボキシル基において、水素結合による高い相互作用を示すため、樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)をより向上できる。その結果、レジストパターンの周囲にCVD法(特に、高温のCVD法)により膜を堆積させても、膜の成長時に熱によりレジストパターンの断面形状における高い矩形性がより損なわれにくく、その結果、プロセスコストの増大をより抑制できる。
【0200】
【化47】
【0201】
一般式(aI)に於いて、
Xaは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx〜Rxは、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx〜Rxの2つが結合して環構造を形成してもよい。
【0202】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基、フェニレン基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH−基、−(CH−基、−(CH−基がより好ましい。Tは、単結合であることがより好ましい。
【0203】
a1のアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
a1のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。
a1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0204】
Rx、Rx及びRxのアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Rx、Rx及びRxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0205】
Rx、Rx及びRxの2つが結合して形成する環構造としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環などの単環のシクロアルカン環、ノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5又は6の単環のシクロアルカン環が特に好ましい。
【0206】
Rx、Rx及びRxは、各々独立に、アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることがより好ましい。
【0207】
上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、シクロアルキル基(炭素数3〜8)、ハロゲン原子、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。なかでも、酸分解前後での有機溶剤を含有する現像液に対する溶解コントラストをより向上させる観点から、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有さない置換基であることがより好ましく(例えば、水酸基で置換されたアルキル基などではないことがより好ましく)、水素原子及び炭素原子のみからなる基であることが更に好ましく、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基であることが特に好ましい。
【0208】
樹脂(P)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、一般式(II)で表される繰り返し単位を有する樹脂であることがより好ましい。
【0209】
【化48】
【0210】
一般式(II)中、
Raは、水素原子又はアルキル基を表し、
Rbは、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、2つのRbは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0211】
Raとしてのアルキル基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(aI)のXaとしてのアルキル基において述べたものを挙げることができる。
Rbとしてのアルキル基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(aI)のRx〜Rxとしてのアルキル基において述べたものを挙げることができる。
Rbとしてのシクロアルキル基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(aI)のRx〜Rxとしてのシクロアルキル基において述べたものを挙げることができる。 2つのRbが互いに結合して形成してもよい環の具体例は、一般式(aI)において、Rx、Rx及びRxの2つが結合して形成する環構造として例示したものと同様である。
【0212】
以下に一般式(aI)又は(II)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
具体例中、Rxは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。Rxa、Rxbはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。Zは、置換基を表し、複数存在する場合、複数のZは互いに同じであっても異なっていてもよい。pは0又は正の整数を表す。Zの具体例及び好ましい例は、Rx〜Rxなどの各基が有し得る置換基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0213】
【化49】
【0214】
【化50】
【0215】
【化51】
【0216】
【化52】
【0217】
下記具体例において、Xaは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【0218】
【化53】
【0219】
また、樹脂(P)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、以下で表されるような、酸の作用により分解し、アルコール性水酸基を生じる繰り返し単位を有していてもよい。
下記具体例中、Xaは、水素原子、CH、CF、又はCHOHを表す。
【0220】
【化54】
【0221】
【化55】
【0222】
酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0223】
樹脂(P)が酸分解性基を有する繰り返し単位を2種以上で含有する場合、2種以上の、酸分解性基を有する繰り返し単位の好ましい組合せを以下に示すが、これに限定されるわけではない。なお、下式において、Rは、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0224】
【化56】
【0225】
樹脂(P)に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(P)の全繰り返し単位に対して、15モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、25モル%以上であることが更に好ましく、40モル%以上であることが特に好ましい。中でも、樹脂(P)が繰り返し単位(AI)を有するとともに、上記繰り返し単位(AI)の樹脂(P)の全繰り返し単位に対する含有量が50モル%以上であることが好ましい。
酸分解性基を有する繰り返し単位の樹脂(P)の全繰り返し単位に対する含有量が50モル%以上であることにより、上記した樹脂(P)のガラス転移温度(Tg)を確実に高くできるため、上記したプロセスコストの増大を抑制できるという効果をより確実なものにできる。
また、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)の全繰り返し単位に対して、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることが好ましく、65モル%以下であることがより好ましい。
【0226】
樹脂(P)は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
【0227】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造又は5〜7員環スルトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は、5〜7員環スルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−21)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1−1)〜(SL1−3)のいずれかで表されるスルトン構造、を有する繰り返し単位を有することがさらに好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)、(LC1−17)であり、特に好ましいラクトン構造は(LC1−4)である。このような特定のラクトン構造を用いることでLER、現像欠陥が良好になる。
【0228】
【化57】
【0229】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。nは、0〜4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0230】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位は、通常、光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
【0231】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(III)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0232】
【化58】
【0233】
上記一般式(III)中、
Aは、エステル結合(−COO−で表される基)又はアミド結合(−CONH−で表される基)を表す。
は、複数個ある場合にはそれぞれ独立にアルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合
【0234】
【化59】
【0235】
又はウレア結合
【0236】
【化60】
【0237】
を表す。ここで、Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
nは、−R−Z−で表される構造の繰り返し数であり、0〜5の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nが0である場合、−R−Z−は存在せず、単結合となる。
は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
【0238】
のアルキレン基、シクロアルキレン基は置換基を有してよい。
Zは好ましくは、エーテル結合、エステル結合であり、特に好ましくはエステル結合である。
【0239】
のアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
のアルキレン基、シクロアルキレン基、Rにおけるアルキル基は、各々置換されていてもよく、置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基が挙げられる。
は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0240】
における好ましい鎖状アルキレン基としては炭素数が1〜10の鎖状のアルキレンが好ましく、より好ましくは炭素数1〜5であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。好ましいシクロアルキレン基としては、炭素数3〜20のシクロアルキレン基であり、例えば、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基等が挙げられる。本発明の効果を発現するためには鎖状アルキレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0241】
で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基は、ラクトン構造又はスルトン構造を有していれば限定されるものではなく、具体例として一般式(LC1−1)〜(LC1−21)及び、(SL1−1)〜(SL1−3)の内のいずれかで表されるラクトン構造又はスルトン構造が挙げられ、これらのうち(LC1−4)で表される構造が特に好ましい。また、(LC1−1)〜(LC1−21)におけるnは2以下のものがより好ましい。
また、Rは無置換のラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基、或いはメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を置換基として有するラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基が好ましく、シアノ基を置換基として有するラクトン構造(シアノラクトン)を有する1価の有機基がより好ましい。
【0242】
以下にラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0243】
【化61】
【0244】
【化62】
【0245】
【化63】
【0246】
本発明の効果を高めるために、2種以上のラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を併用することも可能である。
【0247】
樹脂(P)がラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有する場合、ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、5〜60モル%が好ましく、より好ましくは5〜55モル%、更に好ましくは10〜50モル%である。
【0248】
また、樹脂(P)は、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(A−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0249】
【化64】
【0250】
一般式(A−1)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
は、nが2以上の場合は各々独立して、置換基を表す。
Aは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の−O−C(=O)−O−で表される基と共に単環又は多環構造を形成する原子団を表す。
nは0以上の整数を表す。
【0251】
一般式(A−1)について詳細に説明する。
で表されるアルキル基は、フッ素原子等の置換基を有していてもよい。Rは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
で表される置換基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基である。好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、炭素数1〜5の直鎖状アルキル基;炭素数3〜5の分岐状アルキル基等を挙げることができる。アルキル基はヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい。
nは置換基数を表す0以上の整数である。nは、例えば、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0である。
【0252】
Aにより表される2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はその組み合わせ等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましい。
本発明の一形態において、Aは、単結合、アルキレン基であることが好ましい。
【0253】
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む単環としては、例えば、下記一般式(a)で表される環状炭酸エステルにおいて、n=2〜4である5〜7員環が挙げられ、5員環又は6員環(n=2又は3)であることが好ましく、5員環(n=2)であることがより好ましい。
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む多環としては、例えば、下記一般式
(a)で表される環状炭酸エステルが1又は2以上の他の環構造と共に縮合環を形成している構造や、スピロ環を形成している構造が挙げられる。縮合環又はスピロ環を形成し得る「他の環構造」としては、脂環式炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよいし、複素環であってもよい。
【0254】
【化65】
【0255】
樹脂(P)には、一般式(A−1)で表される繰り返し単位のうちの1種が単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
樹脂(P)において、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(好ましくは、一般式(A−1)で表される繰り返し単位)の含有率は、樹脂(P)を構成する全繰り返し単位に対して、3〜80モル%であることが好ましく、3〜60モル%であることが更に好ましく、3〜30モル%であることが特に好ましく、10〜15モル%であることが最も好ましい。このような含有率とすることによって、レジストとしての現像性、低欠陥性、低LWR、低PEB温度依存性、プロファイル等を向上させることができる。
【0256】
以下に、一般式(A−1)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下の具体例中のRは、一般式(A−1)におけるRと同義である。
【0257】
【化66】
【0258】
樹脂(P)は、水酸基、シアノ基又はカルボニル基を有する繰り返し単位を有していても良い。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基、シアノ基又はカルボニル基を有する繰り返し単位は、水酸基、シアノ基又はカルボニル基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましく、酸分解性基を有さないことが好ましい。
また、水酸基、シアノ基又はカルボニル基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有する繰り返し単位とは異なることが好ましい(すなわち、酸に対して安定な繰り返し単位であることが好ましい)。
水酸基、シアノ基又はカルボニル基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアダマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。
より好ましくは、下記一般式(AIIa)〜(AIIc)のいずれかで表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0259】
【化67】
【0260】
式中、Rは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、又は、トリフルオロメチル基を表す。
Abは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Abにより表される2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はその組み合わせ等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
本発明の一形態において、Abは、単結合、又は、アルキレン基であることが好ましい。
Rpは、水素原子、ヒドロキシル基、又は、ヒドロキシアルキル基を表す。複数のRpは、同一でも異なっていても良いが、複数のRpの内の少なくとも1つは、ヒドロキシル基又はヒドロキシアルキル基を表す。
【0261】
樹脂(P)は、水酸基、シアノ基又はカルボニル基を有する繰り返し単位を含有していても、含有していなくてもよいが、樹脂(P)が水酸基、シアノ基又はカルボニル基を有する繰り返し単位を含有する場合、水酸基、シアノ基又はカルボニル基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1〜40モル%が好ましく、より好ましくは3〜30モル%、更に好ましくは5〜25モル%である。
【0262】
水酸基、シアノ基又はカルボニル基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0263】
【化68】
【0264】
【化69】
【0265】
より好ましくは、下記一般式(AIIIa)又は(AIIIb)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0266】
【化70】
【0267】
上記一般式(AIIIa)及び(AIIIb)中、Acは、単結合、又は2価の連結基を表し、好ましい範囲は、前述の一般式(AIIa)〜(AIIc)のいずれかで表される繰り返し単位におけるAbのものと同様である。
【0268】
一般式(AIIIa)又は(AIIIb)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0269】
【化71】
【0270】
その他、国際公開2011/122336号明細書の〔0011〕以降に記載のモノマー又はこれに対応する繰り返し単位なども適宜使用可能である。
【0271】
樹脂(P)は、酸基を有する繰り返し単位を有してもよい。酸基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビススルホニルイミド基、ナフトール構造、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール基(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。酸基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。酸基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接酸基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖に酸基が結合している繰り返し単位、更には酸基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0272】
樹脂(P)は、酸基を有する繰り返し単位を含有してもしなくても良いが、含有する場合、酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。樹脂(P)が酸基を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(P)における酸基を有する繰り返し単位の含有量は、通常、1モル%以上である。
【0273】
酸基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、RxはH、CH、CHOH又はCFを表す。
【0274】
【化72】
【0275】
【化73】
【0276】
本発明における樹脂(P)は、更に極性基(例えば、前記酸基、ヒドロキシル基、シアノ基)を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。これにより、液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できるとともに、有機溶剤を含む現像液を用いた現像の際に樹脂の溶解性を適切に調整することができる。このような繰り返し単位としては、一般式(IV)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0277】
【化74】
【0278】
一般式(IV)中、Rは少なくとも1つの環状構造を有し、極性基を有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH−O−Ra基を表す。式中、Raは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0279】
が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3〜7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0280】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれる。環集合炭化水素基の例としては、2環式炭化水素環、3環式炭化水素環、4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
【0281】
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5、2、1、02,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0282】
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基などが挙げられる。
【0283】
上記水素原子の置換基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0284】
樹脂(P)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、この繰り返し単位の含有量は、樹脂(P)中の全繰り返し単位に対し、1〜50モル%が好ましく、より好ましくは5〜50モル%であり、更に好ましくは5〜30モル%、特に好ましくは5〜15モル%である。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、又はCFを表す。
【0285】
【化75】
【0286】
樹脂(P)は、レジスト膜の基板への密着性を向上させる基を含む繰り返し単位を含んでいてもよい。レジスト膜の基板への密着性を向上させる基を含む繰り返し単位の例としては、国際公開公報第2014/017144号の段落〔0057〕〜〔0131〕に記載された繰り返し単位を挙げることができる。
【0287】
【化76】
【0288】
本発明の組成物に、KrFエキシマレーザー光、電子線、X線又は波長50nm以下の高エネルギー光線(例えば、EUV)を照射する場合には、この樹脂(P)は、ヒドロキシスチレン繰り返し単位に代表されるような、芳香環を有する単位を有することが好ましい。更に好ましくは、この樹脂(P)は、ヒドロキシスチレンと酸の作用により脱離する基で保護されたヒドロキシスチレンとの共重合体、又は、ヒドロキシスチレンと(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルとの共重合体である。
このような樹脂としては、具体的には、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。
【0289】
【化77】
【0290】
式中、R01、R02及びR03は、各々独立に、例えば、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。Arは、例えば、芳香環基を表す。なお、R03とArとがアルキレン基であり、両者が互いに結合することにより、−C−C−鎖と共に、5員又は6員環を形成していてもよい。
n個のYは、各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Yの少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。
nは、1〜4の整数を表し、1〜2が好ましく、1がより好ましい。
【0291】
01〜R03としてのアルキル基は、例えば、炭素数20以下のアルキル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基又はドデシル基である。より好ましくは、これらアルキル基は、炭素数8以下のアルキル基である。なお、これらアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0292】
アルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R01〜R03におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0293】
シクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の炭素数3〜8の単環のシクロアルキル基が挙げられる。なお、これらシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0294】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子がより好ましい。
【0295】
03がアルキレン基を表す場合、このアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基等の炭素数1〜8のものが挙げられる。
【0296】
Arとしての芳香環基は、炭素数6〜14のものが好ましく、例えば、ベンゼン環、トルエン環及びナフタレン環が挙げられる。なお、これら芳香環基は、置換基を有していてもよい。
酸の作用により脱離する基Yとしては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)、−C(R01)(R02)(OR39)、−C(R01)(R02)−C(=O)−O−C(R36)(R37)(R38)及び−CH(R36)(Ar)により表される基が挙げられる。
【0297】
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
【0298】
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0299】
Arは、アリール基を表す。
【0300】
36〜R39、R01又はR02としてのアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基及びオクチル基が挙げられる。
【0301】
36〜R39、R01、又はR02としてのシクロアルキル基は、単環のシクロアルキル基であってもよく、多環のシクロアルキル基であってもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基及びシクロオクチルが挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピナニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基及びアンドロスタニル基が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0302】
36〜R39、R01、R02、又はArとしてのアリール基は、炭素数6〜10のアリール基であることが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
36〜R39、R01、又はR02としてのアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基であることが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が好ましい。
【0303】
36〜R39、R01、又はR02としてのアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基であることが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びシクロへキセニル基が挙げられる。
【0304】
36とR37とが互いに結合して形成し得る環は、単環型であってもよく、多環型であってもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロへキサン構造、シクロヘプタン構造及びシクロオクタン構造が挙げられる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルカン構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、ノルボルナン構造、ジシクロペンタン構造、トリシクロデカン構造及びテトラシクロドデカン構造が挙げられる。なお、環構造中の炭素原子の一部は、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0305】
上記各基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。これら置換基は、炭素数が8以下であることが好ましい。
【0306】
酸の作用により脱離する基Yとしては、下記一般式(B)で表される構造がより好ましい。
【0307】
【化78】
【0308】
式中、L及びLは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、アルキル基、シクロアルキル基、環状脂肪族基、芳香環基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基又はアルデヒド基を表す。なお、これら環状脂肪族基及び芳香環基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
なお、Q、M、Lの少なくとも2つが互いに結合して、5員又は6員環を形成していてもよい。
【0309】
及びLとしてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
【0310】
及びLとしてのシクロアルキル基は、例えば炭素数3〜15のシクロアルキル基であり、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
【0311】
及びLとしてのアリール基は、例えば炭素数6〜15のアリール基であり、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基及びアントリル基が挙げられる。
【0312】
及びLとしてのアラルキル基は、例えば炭素数6〜20のアラルキル基であり、具体的には、ベンジル基及びフェネチル基が挙げられる。
【0313】
Mとしての2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基又はブテニレン基)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基又はナフチレン基)、−S−、−O−、−CO−、−SO−、−N(R)−、又は、これらの2以上の組み合わせである。ここで、Rは、水素原子又はアルキル基である。Rとしてのアルキル基は、例えば炭素数1〜8のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基が挙げられる。
【0314】
Qとしてのアルキル基及びシクロアルキル基は、上述したL及びLとしての各基と同様である。
【0315】
Qとしての環状脂肪族基又は芳香環基としては、例えば、上述したL及びLとしてのシクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。これらシクロアルキル基及びアリール基は、好ましくは、炭素数3〜15の基である。
【0316】
Qとしてのヘテロ原子を含んだ環状脂肪族基又は芳香環基としては、例えば、チイラン、シクロチオラン、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール及びピロリドン等の複素環構造を有した基が挙げられる。但し、炭素とヘテロ原子とで形成される環、又は、ヘテロ原子のみによって形成される環であれば、これらに限定されない。
【0317】
Q、M及びLの少なくとも2つが互いに結合して形成し得る環構造としては、例えば、これらがプロピレン基又はブチレン基を形成してなる5員又は6員環構造が挙げられる。なお、この5員又は6員環構造は、酸素原子を含有している。
【0318】
一般式(2)におけるL、L、M及びQで表される各基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。これら置換基は、炭素数が8以下であることが好ましい。
【0319】
−(M−Q)で表される基としては、炭素数1〜20の基が好ましく、炭素数1〜10の基がより好ましく、炭素数1〜8が更に好ましい。
【0320】
また、樹脂(P)は、下記一般式(4)により表される繰り返し単位を更に含んでも良い。この場合、樹脂(P)は、化合物(B)と同一の成分となる。このように、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物において、樹脂(P)と化合物(B)とは異なる成分であっても、同一の成分であってもよい。
【0321】
【化79】
【0322】
41は、水素原子又はメチル基を表す。L41は、単結合又は2価の連結基を表す。L42は、2価の連結基を表す。Sは、活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。
【0323】
41は上述したように水素原子又はメチル基であり、水素原子がより好ましい。
【0324】
41及びL42の2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−O−、−SO−、−CO−、−N(R)−、−S−、−CS−及びこれらの2種以上の組み合わせが挙げられ、総炭素数が20以下のものが好ましい。ここで、Rは、アリール基、アルキル基又はシクロアルキルを表す。
【0325】
41及びL42のアルキレン基としては、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、及びドデカニレン基等の炭素数1〜12のものが挙げられる。
41及びL42のシクロアルキレン基としては、好ましくは、シクロペンチレン基及びシクロヘキシレン基等の炭素数5〜8のものが挙げられる。
【0326】
41及びL42のアリーレン基としては、好ましくは、フェニレン基及びナフチレン基等の炭素数6〜14のものが挙げられる。
【0327】
これらアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられ、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)であることが好ましい。
【0328】
Sは活性光線又は放射線の照射により分解して側鎖に酸を発生させる構造部位を表す。Sは、活性光線又は放射線の照射により分解して樹脂の側鎖に酸アニオンを生じる構造部位であることが好ましく、より好ましくは光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の光により酸を発生する化合物が有する構造部位が挙げられ、該構造部位はイオン性構造部位であることが更に好ましい。
【0329】
Sとしては、スルホニウム塩又はヨードニウム塩を含むイオン性構造部位がより好ましい。より具体的には、Sとして、下記一般式(PZI)又は(PZII)で表される基が好ましい。
【0330】
【化80】
【0331】
上記一般式(PZI)において、
201〜R203は、各々独立に、有機基を表す。
201〜R203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
【0332】
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成したものを用いると、露光時の分解物で露光機を汚染することを抑えることが期待でき、好ましい。
【0333】
は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する酸アニオンを示し、非求核性アニオンが好ましい。非求核性アニオンとしては、例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチルアニオン等を挙げることができる。
【0334】
非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が著しく低いアニオンであり、分子内求核反応による経時分解を抑制することができるアニオンである。これにより樹脂の経時安定性が向上し、組成物の経時安定性も向上する。
【0335】
201〜R203の有機基としては、アリール基、アルキル基、シクロアルキル基などが挙げられ、これらの基の具体例及び好ましい例は、上記の化合物(B)において説明した一般式(ZI)におけるR201〜R203について述べたものと同様である。
【0336】
前記一般式(PZII)中、R204、R205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。これらアリール基、アルキル基、シクロアルキル基の具体例及び好ましい例は、上記の化合物(B)において説明した一般式(ZI)におけるR201〜R203について述べたものと同様である。
【0337】
は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する酸アニオンを示し、非求核性アニオンが好ましく、一般式(PZI)に於けるZと同様のものを挙げることができる。
【0338】
本発明の組成物に用いられる樹脂(P)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更に感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
【0339】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0340】
これにより、本発明に係る組成物に用いられる樹脂に要求される性能、特に、
(1)塗布溶剤に対する溶解性、
(2)製膜性(ガラス転移点)、
(3)アルカリ現像性、
(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、
(5)未露光部の基板への密着性、
(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
【0341】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0342】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0343】
本発明の組成物に用いられる樹脂(P)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物のドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更には感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0344】
本発明の組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から本発明の組成物に用いられる樹脂(P)は実質的には芳香環を有さない(具体的には、樹脂中、芳香族基を有する繰り返し単位の比率が好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、理想的には0モル%、すなわち、芳香族基を有さない)ことが好ましく、樹脂(P)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0345】
本発明における樹脂(P)の形態としては、ランダム型、ブロック型、クシ型、スター型のいずれの形態でもよい。樹脂(P)は、例えば、各構造に対応する不飽和モノマーのラジカル、カチオン、又はアニオン重合により合成することができる。また各構造の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより目的とする樹脂を得ることも可能である。
本発明の組成物が、後述する樹脂(D)を含んでいる場合、樹脂(P)は、樹脂(D)との相溶性の観点から、フッ素原子及びケイ素原子を含有しないことが好ましい。
【0346】
本発明の組成物に用いられる樹脂(P)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。
【0347】
本発明における樹脂(P)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明の感光性組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0348】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
【0349】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。
例えば、上記樹脂が難溶或いは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0350】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
【0351】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
【0352】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0353】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0354】
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶或いは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶或いは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶或いは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
また、組成物の調製後に樹脂が凝集することなどを抑制する為に、例えば、特開2009−037108号公報に記載のように、合成された樹脂を溶剤に溶解して溶液とし、その溶液を30℃〜90℃程度で30分〜4時間程度加熱するような工程を加えてもよい。
【0355】
本発明における樹脂(P)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、上記のように7,000以上であり、好ましくは7,000〜200,000であり、より好ましくは7,000〜50,000、更により好ましくは7,000〜40,000、特に好ましくは7,000〜30,000である。重量平均分子量が7000より小さいと、有機系現像液に対する溶解性が高くなりすぎ、精密なパターンを形成できなくなる懸念が生じる。
【0356】
分散度(分子量分布)は、通常1.0〜3.0であり、好ましくは1.0〜2.6、更に好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.4〜2.0の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、かつ、レジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0357】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物において、樹脂(P)の組成物全体中の配合率は、全固形分中30〜99質量%が好ましく、より好ましくは60〜95質量%である。
また、本発明において、樹脂(P)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
以下に樹脂(P)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0358】
【化81】
【0359】
【化82】
【0360】
【化83】
【0361】
【化84】
【0362】
【化85】
【0363】
【化86】
【0364】
【化87】
【0365】
【化88】
【0366】
【化89】
【0367】
上記具体例において、tBuはt−ブチル基を表す。
【0368】
下記具体例の各繰り返し単位の組成比はモル比で示している。
【0369】
【化90】
【0370】
【化91】
【0371】
【化92】
【0372】
【化93】
【0373】
【化94】
【0374】
【化95】
【0375】
【化96】
【0376】
【化97】
【0377】
[4]疎水性樹脂(D)
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、特に液浸露光に適用する際、疎水性樹脂(以下、「疎水性樹脂(D)」又は単に「樹脂(D)」ともいう)を含有してもよい。なお、疎水性樹脂(D)は、前記樹脂(P)とは異なることが好ましい。
これにより、膜表層に疎水性樹脂(D)が偏在化し、液浸媒体が水の場合、水に対するレジスト膜表面の静的/動的な接触角を向上させ、液浸液追随性を向上させることができる。
疎水性樹脂(D)は前述のように界面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
【0378】
疎水性樹脂(D)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含有されたCH部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することがさらに好ましい。
【0379】
疎水性樹脂(D)が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂(D)に於ける上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0380】
疎水性樹脂(D)がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
【0381】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、及びフッ素原子を有するアリール基として、好ましくは、下記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0382】
【化98】
【0383】
一般式(F2)〜(F4)中、
57〜R68は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基(直鎖若しくは分岐)を表す。但し、R57〜R61少なくとも1つ、R62〜R64の少なくとも1つ、及びR65〜R68の少なくとも1つは、それぞれ独立に、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0384】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、−C(CFOH、−C(COH、−C(CF)(CH)OH、−CH(CF)OH等が挙げられ、−C(CFOHが好ましい。
【0385】
フッ素原子を含む部分構造は、主鎖に直接結合しても良く、更に、アルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレイレン結合よりなる群から選択される基、或いはこれらの2つ以上を組み合わせた基を介して主鎖に結合しても良い。
【0386】
以下、フッ素原子を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、Xは、水素原子、−CH、−F又は−CFを表す。Xは、−F又は−CFを表す。
【0387】
【化99】
【0388】
【化100】
【0389】
疎水性樹脂(D)は、珪素原子を含有してもよい。珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、又は環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
アルキルシリル構造、又は環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0390】
【化101】
【0391】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、直鎖若しくは分岐アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)又はシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
〜Lは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される単独或いは2つ以上の組み合わせ(好ましくは総炭素数12以下)が挙げられる。
nは、1〜5の整数を表す。nは、好ましくは、2〜4の整数である。
【0392】
以下、一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、具体例中、Xは、水素原子、−CH、−F又は−CFを表す。
【0393】
【化102】
【0394】
また、上記したように、疎水性樹脂(D)は、側鎖部分にCH部分構造を含むことも好ましい。
ここで、前記樹脂(D)中の側鎖部分が有するCH部分構造(以下、単に「側鎖CH部分構造」ともいう)には、エチル基、プロピル基等が有するCH部分構造を包含するものである。
一方、樹脂(D)の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα−メチル基)は、主鎖の影響により樹脂(D)の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH部分構造に包含されないものとする。
【0395】
より具体的には、樹脂(D)が、例えば、下記一般式(M)で表される繰り返し単位などの、炭素−炭素二重結合を有する重合性部位を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含む場合であって、R11〜R14がCH「そのもの」である場合、そのCHは、本発明における側鎖部分が有するCH部分構造には包含されない。
一方、C−C主鎖から何らかの原子を介して存在するCH部分構造は、本発明におけるCH部分構造に該当するものとする。例えば、R11がエチル基(CHCH)である場合、本発明におけるCH部分構造を「1つ」有するものとする。
【0396】
【化103】
【0397】
上記一般式(M)中、
11〜R14は、各々独立に、側鎖部分を表す。
側鎖部分のR11〜R14としては、水素原子、1価の有機基などが挙げられる。
11〜R14についての1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基などが挙げられ、これらの基は、更に置換基を有していてもよい。
【0398】
疎水性樹脂(D)は、側鎖部分にCH部分構造を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましく、このような繰り返し単位として、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を有していることがより好ましい。
【0399】
以下、一般式(II)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0400】
【化104】
【0401】
上記一般式(II)中、Xb1は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Rは1つ以上のCH部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表す。ここで、酸に対して安定な有機基は、より具体的には、前記樹脂(P)において説明した“酸の作用により分解して極性基を生じる基”を有さない有機基であることが好ましい。
【0402】
b1のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。
b1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0403】
としては、1つ以上のCH部分構造を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基が挙げられる。上記のシクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基は、更に、置換基としてアルキル基を有していても良い。
は、1つ以上のCH部分構造を有する、アルキル基又はアルキル置換シクロアルキル基が好ましい。
としての1つ以上のCH部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH部分構造を2個以上10個以下有することが好ましく、2個以上8個以下有することがより好ましい。
【0404】
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアルキル基としては、炭素数3〜20の分岐のアルキル基が好ましい。
【0405】
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアルケニル基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルケニル基が好ましく、分岐のアルケニル基がより好ましい。
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、好ましくはフェニル基である。
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアラルキル基としては、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0406】
一般式(II)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。尚、本発明はこれに限定されるものではない。
【0407】
【化105】
【0408】
一般式(II)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して、極性基を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
【0409】
以下、一般式(III)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0410】
【化106】
【0411】
上記一般式(III)中、Xb2は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、Rは1つ以上のCH部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表し、nは1から5の整数を表す。
【0412】
b2のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、水素原子である事が好ましい。
b2は、水素原子であることが好ましい。
【0413】
は、酸に対して安定な有機基であるため、より具体的には、記樹脂(P)において説明した“酸の作用により分解して極性基を生じる基”を有さない有機基であることが好ましい。
【0414】
としては、1つ以上のCH部分構造を有する、アルキル基が挙げられる。
としての1つ以上のCH部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH部分構造を1個以上10個以下有することが好ましく、1個以上8個以下有することがより好ましく、1個以上4個以下有することが更に好ましい。
【0415】
に於ける、1つ以上のCH部分構造を有するアルキル基としては、炭素数3〜20の分岐のアルキル基が好ましい。
【0416】
nは1から5の整数を表し、1〜3の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことが更に好ましい。
【0417】
一般式(III)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。尚、本発明はこれに限定されるものではない。
【0418】
【化107】
【0419】
一般式(III)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して、極性基を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
【0420】
樹脂(D)が、側鎖部分にCH部分構造を含む場合であり、更に、特にフッ素原子及び珪素原子を有さない場合、一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)の含有量は、樹脂(D)の全繰り返し単位に対して、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。前記含有量は、樹脂(D)の全繰り返し単位に対して、通常、100モル%以下である。
【0421】
樹脂(D)が、一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を、樹脂(D)の全繰り返し単位に対し、90モル%以上で含有することにより、樹脂(D)の表面自由エネルギーが増加する。その結果として、樹脂(D)がレジスト膜の表面に偏在しにくくなり、水に対するレジスト膜の静的/動的接触角を確実に向上させて、液浸液追随性を向上させることができる。
【0422】
また、疎水性樹脂(D)は、(i)フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合においても、(ii)側鎖部分にCH部分構造を含む場合においても、下記(x)〜(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有していてもよい。これら基は、特に、本発明の組成物をアルカリ現像プロセスに用いる場合に好適に用いられる。
(x)酸基、
(y)ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基、
(z)酸の作用により分解する基
【0423】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましい酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基が挙げられる。
【0424】
酸基(x)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に、直接、酸基が結合している繰り返し単位、或いは、連結基を介して樹脂の主鎖に酸基が結合している繰り返し単位などが挙げられ、更には酸基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入することもでき、いずれの場合も好ましい。酸基(x)を有する繰り返し単位が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有していても良い。
酸基(x)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(D)中の全繰り返し単位に対し、1〜50モル%が好ましく、より好ましくは3〜35モル%、更に好ましくは5〜20モル%である。
【0425】
酸基(x)を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。式中、Rxは水素原子、CH、CF、又は、CHOHを表す。
【0426】
【化108】
【0427】
【化109】
【0428】
ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基(y)としては、ラクトン構造を有する基が特に好ましい。
これらの基を含んだ繰り返し単位は、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等の、樹脂の主鎖に直接この基が結合している繰り返し単位である。或いは、この繰り返し単位は、この基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合している繰り返し単位であってもよい。或いは、この繰り返し単位は、この基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
【0429】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、例えば、先に酸分解性樹脂(P)の項で説明したラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。また、米国特許出願公開第2012/0135348A1号明細書の段落[0725]に開示されている繰り返し単位も好適に用いることができる。
【0430】
ラクトン構造を有する基、酸無水物基、又は酸イミド基を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(D)中の全繰り返し単位を基準として、1〜100モル%であることが好ましく、3〜98モル%であることがより好ましく、5〜95モル%であることが更に好ましい。
【0431】
疎水性樹脂(D)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、樹脂(P)で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位が、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有していても良い。疎水性樹脂(D)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(D)中の全繰り返し単位に対し、1〜80モル%が好ましく、より好ましくは10〜80モル%、更に好ましくは20〜60モル%である。
【0432】
疎水性樹脂(D)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0433】
【化110】
【0434】
一般式(III)に於いて、
c31は、水素原子、アルキル基(フッ素原子等で置換されていても良い)、シアノ基又は−CH−O−Rac基を表す。式中、Racは、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Rc31は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
c32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する基を表す。これら基はフッ素原子、珪素原子を含む基で置換されていても良い。
c3は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0435】
一般式(III)に於ける、Rc32のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
アリール基は、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基がより好ましく、これらは置換基を有していてもよい。
c32は無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
c3の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、エーテル結合、フェニレン基、エステル結合(−COO−で表される基)が好ましい。
一般式(III)により表される繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜100モル%であることが好ましく、10〜90モル%であることがより好ましく、30〜70モル%であることが更に好ましい。
【0436】
疎水性樹脂(D)は、更に、下記一般式(CII−AB)で表される繰り返し単位を有することも好ましい。
【0437】
【化111】
【0438】
式(CII−AB)中、
c11’及びRc12’は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Zc’は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
一般式(CII−AB)により表される繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂中の全繰り返し単位を基準として、1〜100モル%であることが好ましく、10〜90モル%であることがより好ましく、30〜70モル%であることが更に好ましい。
【0439】
以下に一般式(III)、(CII−AB)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH、CHOH、CF又はCNを表す。
【0440】
【化112】
【0441】
疎水性樹脂(D)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、疎水性樹脂(D)の重量平均分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(D)に含まれる全繰り返し単位中10〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
疎水性樹脂(D)が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、疎水性樹脂(D)の重量平均分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(D)に含まれる全繰り返し単位中、10〜100モル%であることが好ましく、20〜100モル%であることがより好ましい。
【0442】
一方、特に樹脂(D)が側鎖部分にCH部分構造を含む場合においては、樹脂(D)が、フッ素原子及び珪素原子を実質的に含有しない形態も好ましく、この場合、具体的には、フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の含有量が、樹脂(D)中の全繰り返し単位に対して5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることが更に好ましく、理想的には0モル%、すなわち、フッ素原子及び珪素原子を含有しない。また、樹脂(D)は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されることが好ましい。より具体的には、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位が、樹脂(D)の全繰り返し単位中95モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましく、理想的には100モル%である。
【0443】
疎水性樹脂(D)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000である。
また、疎水性樹脂(D)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
疎水性樹脂(D)の組成物中の含有量は、本発明の組成物中の全固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜8質量%がより好ましく、0.1〜7質量%が更に好ましい。
【0444】
疎水性樹脂(D)は、樹脂(P)同様、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0.01〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%、0.05〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化のない感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が得られる。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2の範囲である。
【0445】
疎水性樹脂(D)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
反応溶媒、重合開始剤、反応条件(温度、濃度等)、及び、反応後の精製方法は、樹脂(P)で説明した内容と同様であるが、疎水性樹脂(D)の合成においては、反応の濃度が30〜50質量%であることが好ましい。
【0446】
以下に疎水性樹脂(D)の具体例を示す。また、下記表に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0447】
【化113】
【0448】
【化114】
【0449】
【化115】
【0450】
【表1】
【0451】
【化116】
【0452】
【化117】
【0453】
【表2】
【0454】
[5−1]塩基性化合物(N)
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0455】
【化118】
【0456】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
【0457】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
これら一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0458】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0459】
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。これら化合物の例としては、米国特許出願公開第2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。
【0460】
また、下記化合物も塩基性化合物として好ましい。
【0461】
【化119】
【0462】
塩基性化合物としては、上述した化合物のほかに、特開2011−22560号公報〔0180〕〜〔0225〕、特開2012−137735号公報〔0218〕〜〔0219〕、国際公開パンフレットWO2011/158687A1〔0416〕〜〔0438〕に記載されている化合物等を使用することもできる。塩基性化合物は、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物であってもよい。
また、塩基性化合物としては、US2010/0233629A号公報の(A−1)〜(A−44)の化合物や、US2012/0156617A号公報の(A−1)〜(A−23)の化合物のような、活性光線または放射線の照射により分解して、分子中に塩基性構造を有する酸アニオンを発生する化合物も用いることができる。
これらの塩基性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0463】
本発明の組成物は、塩基性化合物を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、塩基性化合物の含有率は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時によるレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0464】
これらの塩基性化合物は下記項目[5−2]に示す低分子化合物(N’)に対し、モル比において、低分子化合物(N’)/塩基性化合物=100/0〜10/90で用いることが好ましく、100/0〜30/70で用いることがより好ましく、100/0〜50/50で用いることが特に好ましい。
なお、ここでの塩基性化合物には、以下に説明する(N’)窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物は含まない。
【0465】
[5−2]窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物
本発明の組成物は、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(以下「化合物(N’)」ともいう)を含有してもよい。
酸の作用により脱離する基としては特に限定されないが、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、ヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、ヘミアミナールエーテル基であることが特に好ましい。
酸の作用により脱離する基を有する化合物(N’)の分子量は、100〜1000が好ましく、100〜700がより好ましく、100〜500が特に好ましい。
化合物(N’)としては、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体が好ましい。
【0466】
化合物(N’)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有しても良い。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d−1)で表すことができる。
【0467】
【化120】
【0468】
一般式(d−1)において、
Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30)、アリール基(好ましくは炭素数3〜30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を表す。Rbは相互に連結して環を形成していてもよい。
【0469】
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0470】
Rbとして好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。より好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基である。
【0471】
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0472】
一般式(d−1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許出願公開第2012/0135348A1号明細書の段落[0466]に開示された構造を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0473】
化合物(N’)は、下記一般式(6)で表される構造を有するものであることが特に好ましい。
【0474】
【化121】
【0475】
一般式(6)において、Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。該複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、前記一般式(d−1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
lは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、l+m=3を満たす。
【0476】
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、Rbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
前記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、上記基で置換されていてもよい)の好ましい例としては、Rbについて前述した好ましい例と同様な基が挙げられる。
また、前記Raが相互に連結して形成する複素環としては、好ましくは炭素数20以下であり、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、ホモピペラジン、4−アザベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、5−アザベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、1,4,7−トリアザシクロノナン、テトラゾール、7−アザインドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、(1S,4S)−(+)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デック−5−エン、インドール、インドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノリン、1,5,9−トリアザシクロドデカン等の複素環式化合物に由来する基、これらの複素環式化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、シクロアルカンに由来する基、芳香族化合物に由来する基、複素環化合物に由来する基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
【0477】
本発明における特に好ましい化合物(N’)を具体的としては、米国特許出願公開第2012/0135348A1号明細書の段落[0475]に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0478】
一般式(6)で表される化合物は、特開2007−298569号公報、特開2009−199021号公報などに基づき合成することができる。
本発明において、低分子化合物(N’)は、一種単独でも又は2種以上を混合しても使用することができる。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物における化合物(N’)の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.001〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%である。
【0479】
[6]溶剤(E)
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有しても良いモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート(プロピレンカーボネートなど)、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
これらの溶剤の具体例は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書[0441]〜[0455]に記載のものを挙げることができる。
【0480】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、水酸基を含有しない溶剤としては前述の例示化合物が適宜選択可能であるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有しても良いモノケトン化合物、環状ラクトン、酢酸アルキルなどが好ましく、これらの内でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)単独溶媒、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。混合溶剤の好ましい具体例としては、PGMEAとケトン系溶剤(シクロヘキサノン、2−ヘプタノンなど)を含む混合溶剤、PGMEAとラクトン系溶剤(γ−ブチロラクトンなど)を含む混合溶剤、PGMEAとPGMEを含む混合溶剤、PGMEA・ケトン系溶剤・ラクトン系溶剤の3種を含む混合溶剤、PGMEA・PGME・ラクトン系溶剤の3種を含む混合溶剤、PGMEA・PGME・ケトン系溶剤の3種を含む混合溶剤、などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0481】
[7]界面活性剤(F)
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、更に界面活性剤を含有してもしなくても良く、含有する場合、フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子とケイ素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0482】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられ、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(DIC(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106、KH−20(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D、222D((株)ネオス製)等である。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0483】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)若しくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
上記に該当する界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(DIC(株)製)、C13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体等を挙げることができる。
【0484】
また、本発明では、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0485】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0486】
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.0005〜1質量%である。
一方、界面活性剤の添加量を、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全量(溶剤を除く)に対して、10ppm以下とすることで、疎水性樹脂の表面偏在性があがり、それにより、レジスト膜表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性を向上させることが出来る。
【0487】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、解像力向上の観点から、膜厚30〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚30〜200nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分濃度は、通常1.0〜10質量%であり、好ましくは、2.0〜5.7質量%、更に好ましくは2.0〜5.3質量%である。固形分濃度を前記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができ、更にはラインウィズスラフネスに優れたレジストパターンを形成することが可能になる。その理由は明らかではないが、恐らく、固形分濃度を10質量%以下、好ましくは5.7質量%以下とすることで、レジスト溶液中での素材、特には光酸発生剤の凝集が抑制され、その結果として、均一なレジスト膜が形成できたものと考えられる。
固形分濃度とは、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の総重量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の重量の重量百分率である。
【0488】
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002−62667号公報のように、循環的な濾過を行ったり、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ったりしてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
【0489】
次に、本発明に係るパターン形成方法について説明する。
本発明のパターン形成方法は、
(i)本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を含む膜(レジスト膜)を形成する工程、
(ii)前記膜に活性光線又は放射線を照射する(前記膜を露光する)工程、及び
(iii)現像液を用いて現像してパターンを形成する工程
を含む。
【0490】
上記工程(ii)における露光は、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後に、(iv)加熱工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のレジスト膜は、上記した本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物から形成されるものであり、より具体的には、基材に、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布することにより形成される膜であることが好ましい。本発明のパターン形成方法に於いて、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物による膜を基板上に形成する工程、膜を露光する工程、及び現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
【0491】
製膜後、露光工程の前に、前加熱工程(PB;Prebake)を含むことも好ましい。
また、露光工程の後かつ現像工程の前に、露光後加熱工程(PEB;Post Exposure Bake)を含むことも好ましい。
加熱温度はPB、PEB共に70〜130℃で行うことが好ましく、80〜120℃で行うことがより好ましい。
加熱時間は30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。
【0492】
本発明における露光装置に用いられる光源波長に制限は無いが、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、電子線等を挙げることができ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、電子線等であり、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザーであることがより好ましい。
【0493】
また、本発明の露光を行う工程においては液浸露光方法を適用することができる。液浸露光方法は、位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0494】
液浸露光を行う場合には、(1)基板上に膜を形成した後、露光する工程の前に、及び/又は(2)液浸液を介して膜に露光する工程の後、膜を加熱する工程の前に、膜の表面を水系の薬液で洗浄する工程を実施してもよい。
【0495】
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
【0496】
水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。この添加剤はウエハー上のレジスト層を溶解させず、かつレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。
このような添加剤としては、例えば、水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。
【0497】
一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0498】
液浸液として用いる水の電気抵抗は、18.3MΩcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(DO)を用いたりしてもよい。
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成したレジスト膜の後退接触角は温度23±3℃、湿度45±5%において70°以上であり、液浸媒体を介して露光する場合に好適であり、75°以上であることが好ましく、75〜85°であることがより好ましい。
【0499】
前記後退接触角が小さすぎると、液浸媒体を介して露光する場合に好適に用いることができず、かつ水残り(ウォーターマーク)欠陥低減の効果を十分に発揮することができない。好ましい後退接触角を実現する為には、前記の疎水性樹脂(D)を前記感活性光線性または放射線性組成物に含ませることが好ましい。あるいは、レジスト膜の上に、疎水性の樹脂組成物によるコーティング層(いわゆる「トップコート」)を形成することにより後退接触角を向上させてもよい。
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があるので、動的な状態に於けるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能がレジストには求められる。
【0500】
本発明において膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiN、SiOやSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、更にはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。更に、必要に応じて、レジスト膜と基板の間に反射防止膜を形成させてもよい。反射防止膜としては、公知の有機系、無機系の反射防止膜を適宜用いることができる。
【0501】
本発明のパターン形成方法における(iii)現像工程は、(iii−1)有機溶剤を含有する現像液を用いて現像する工程であってもよいし、(iii−2)アルカリ現像液を用いて現像する工程であってもよい。また、この工程(iii−1)と(iii−2)を両方含んでもよく、その場合、工程(iii−1)と(iii−2)の順序は特に問わない。
本発明において、一般に、(iii−1)有機溶剤を含有する現像液を用いて現像する工程を行った場合は、ネガ型のパターンが形成され、(iii−2)アルカリ現像液を用いて現像する工程を行った場合は、ポジ型のパターンが形成される。また、工程(iii−1)と(iii−2)の両方を行った場合は、US8227183BのFIG.1〜FIG.11などに説明されているように、光学空間像の周波数の2倍の解像度のパターンを得ることも可能である。
【0502】
本発明のパターン形成方法における、工程(iii−1)有機溶剤を含有する現像液を用いて現像する工程における当該現像液(以下、有機系現像液とも言う)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。これらの溶剤の具体例としては、US2008/0187860Aの0633段落〜0641段落に記載の現像液が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0503】
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましく、とりわけ、エステル系溶剤としての酢酸ブチルまたケトン系溶剤としてのメチルアミルケトン(2−ヘプタノン)を含む現像液が好ましい。
溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0504】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0505】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
また、有機系現像液は、特許第5056974号の0041段落〜0063段落に例示されているような、含窒素化合物を含んでもよい。
【0506】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
【0507】
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は、一例として、好ましくは2mL/sec/mm以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm以下、更に好ましくは1mL/sec/mm以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm以上が好ましい。この詳細については、特開2010−232550号公報の特に0022段落〜0029段落等に記載されている。
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0508】
本発明のパターン形成方法が、(iii−2)アルカリ現像液を用いて現像する工程を有する場合、使用可能なアルカリ現像液は特に限定されないが、一般的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%の水溶液が用いられるが、これ以外の濃度(例えば、より薄い濃度)のものも使用可能である。また、アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0509】
(iii−1)有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。このリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
【0510】
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0511】
(iii−1)有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、より好ましくは、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、更に好ましくは、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、特に好ましくは、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、最も好ましくは、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。
ここで、リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用いることができる。
【0512】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0513】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0514】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0515】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0516】
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0517】
本発明に使用される有機系現像液、アルカリ現像液、および/またはリンス液は、各種微粒子や金属元素などの不純物が少ないことが好ましい。このような不純物が少ない薬液を得るためには、これら薬液をクリーンルーム内で製造し、また、テフロンフィルター、ポリオレフィン系フィルター、イオン交換フィルター等の各種フィルターによるろ過を行うなどして、不純物低減を行うことが好ましい。金属元素は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素濃度がいずれも10ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましい。
【0518】
また、現像液やリンス液の保管容器については、特に限定されず、電子材料用途で用いられている、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂などの容器を適宜使用することができるが、容器から溶出する不純物を低減する為、容器の内壁から薬液へ溶出する成分が少ない容器を選択することも好ましい。このような容器として、容器の内壁がパーフルオロ樹脂である容器(例えば、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム(接液内面;PFA樹脂ライニング)、JFE社製 鋼製ドラム缶(接液内面;燐酸亜鉛皮膜))などが挙げられる。
【0519】
本発明の方法によって得られたパターンは、典型的には、例えば、半導体製造のエッチング工程でのマスクとして利用される。また、特開平3−270227及び特開2013−164509に開示されたような、スペーサープロセスの芯材(コア)として使用できる。更に、DSA(Directed Self-Assembly)におけるガイドパターン形成(例えば、ACS Nano Vol.4 No.8 Page4815-4823参照)にも好適に用いることができる。その他、種々の用途への適用が可能である。
【0520】
本発明は、上記した本発明のネガ型パターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例】
【0521】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
<化合物(A)>
化合物(A)としては先に挙げた化合物(A−1)〜(A−55)から適宜選択して用いた。
【0522】
〔化合物(A)の合成例(1):化合物(A−1)の合成〕
プロパンスルホニルクロライド9.94g(70mmol)とアセトニトリル70mlの混合物を氷冷し、これに28wt%アンモニア水溶液10.5mlを30分かけて滴下した。室温で1時間攪拌した後、酢酸エチル200mlを加え、有機層を1N塩酸水、水、重曹水の順に洗浄し、溶媒を除去し、プロパンスルホンアミド5.0gを得た(収率58%)。
プロパンスルホンアミド5.0g(40.6mmol)、ヘプタフルオロプロパン酸クロライド10.38g(44.6mmol)とアセトニトリル60mlの混合物を氷冷し、これにジアザビシクロウンデセン13.6g(89.3mmol)とアセトニトリル20mlの混合物を内温が15℃以下になるように滴下した。その後室温で1時間攪拌し、1N塩酸水150ml、酢酸エチル150mlを加え分液操作を行い、有機層を得た。得られた有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、溶媒を除去した。得られた固体をヘキサンで洗浄し、下記化合物(A−1a)10.6gを得た(収率82%)。
【0523】
【化122】
【0524】
上記化合物(A−1a)10g(31.4mmol)、トリフェニルスルホニウムブロミド10.8g(31.4mmol)及び重曹5.25g(63mmol)にクロロホルム100ml及び水100mlを加えて溶解し、室温で1時間攪拌した。その後有機層を水で4回洗浄し、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(SiO、酢酸エチル/メタノール=20/1体積比)により精製して、無色オイル状の目的化合物(A−1)15.0gを得た(収率82%)。
【0525】
H−NMR(400MHz in (CDCO):δ(ppm)=0.993(t,J=7.4Hz,3H),1.8−1.9(m,2H),3.23(tt,2H),7.6−7.8(m,15H)19F−NMR(400MHz in (CDCO):δ(ppm)=−126.1(2F),−117.2(2F),−80.7(3F)
【0526】
〔化合物(A)の合成例(2):化合物(A−42)の合成〕
トリフルオロアセトアミド1.70g(15mmol)とヘプタフルオロプロパン酸クロライド3.49g(15mmol)と塩化メチレン30mlの混合物を氷冷し、トリエチルアミン3.04g(30mmol)を内温が10℃以下になるように滴下した。室温で2時間攪拌した後、トリフェニルスルホニウムブロミド5.15g(15mmol)と水30mlを加え、室温で1時間攪拌した。その後有機層を水で3回洗浄し、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(SiO、クロロホルム/メタノール=9/1体積比)により精製して、白色固体の目的化合物(A−42)3.1gを得た(収率36%)。
【0527】
H−NMR(400MHz in (CDCO):δ(ppm)=7.6−7.8(m,15H)19F−NMR(400MHz in (CDCO):δ(ppm)=−126.5(2F),−116.7(2F),−80.7(3F),−74.6(3F)
【0528】
他の化合物Aについても、上記と同様に合成した。
【0529】
[実施例1〜70、比較例1及び2(ArF露光)]
<酸分解性樹脂(P)>
酸分解性樹脂(P)としては、下記樹脂(P−1)〜(P−9)を用いた。
【0530】
【化123】
【0531】
下記表3に、樹脂(P−1)〜(P−9)の重量平均分子量Mw、分散度Mw/Mn、及び各繰り返し単位の組成比(モル比)を示す。表3において、各樹脂における各繰り返し単位の位置関係と、組成比(モル比)の数値の位置関係は対応する。
【0532】
【表3】
【0533】
〔酸分解性樹脂(P)の合成例:樹脂(P−1)の合成〕
窒素気流下、シクロヘキサノン6.44gを3つ口フラスコに入れ、これを85℃に加熱した。このようにして、溶剤1を得た。次に、下記monomer−1(3.33g)、monomer−2(0.59g)、monomer−3(0.42g)、monomer−4(4.42g)、monomer−5(1.97g)、を、シクロヘキサノン(25.75g)に溶解させ、モノマー溶液を調製した。更に、重合開始剤V−601(和光純薬工業製)を、モノマーの合計量に対し4.2mol%加えて溶解させた溶液を、上記溶剤1に対して6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に85℃で2時間反応させた。反応液を放冷後、メタノール270g/水30gの混合溶媒に滴下し、析出した粉体をろ取及び乾燥して、8.6gの樹脂(P−1)を得た。得られた樹脂(P−1)の重量平均分子量は12100であり、分散度(Mw/Mn)は1.62であり、13C−NMRにより測定した組成比(モル比)は31/5/5/45/14であった。
【0534】
【化124】
【0535】
樹脂(P−1)と同様にして、樹脂(P−2)〜(P−9)を合成した。
【0536】
<酸発生剤>
酸発生剤としては、先に挙げた酸発生剤z1〜z106から適宜選択して用いた。
【0537】
<塩基性化合物>
塩基性化合物としては、下記化合物(N−1)〜(N−9)を用いた。
【0538】
【化125】
【0539】
<疎水性樹脂(D)>
疎水性樹脂(D)としては、先に挙げた樹脂(HR−1)〜(HR−65)および(C−1)〜(C−28)から、適宜選択して用いた。
【0540】
<界面活性剤>
界面活性剤として、以下のものを用いた。
W−1: メガファックF176(DIC(株)製;フッ素系)
W−2: メガファックR08(DIC(株)製;フッ素及びシリコン系)
W−3: ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製;シリコン系)
W−4: トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
W−5: KH−20(旭硝子(株)製)
W−6: PolyFox PF−6320(OMNOVA Solutions Inc.製;フッ素系)
【0541】
<溶剤>
溶剤として、以下のものを準備した。
(a群)
SL−1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SL−2: プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート
SL−3: 2−ヘプタノン
(b群)
SL−4: 乳酸エチル
SL−5: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
SL−6: シクロヘキサノン
(c群)
SL−7: γ−ブチロラクトン
SL−8: プロピレンカーボネート
【0542】
<現像液>
現像液として、以下のものを準備した。
SG−1:酢酸ブチル
SG−2:メチルアミルケトン
SG−3:エチル−3−エトキシプロピオネート
SG−4:酢酸ペンチル
SG−5:酢酸イソペンチル
SG−6:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SG−7:シクロヘキサノン
【0543】
<リンス液>
リンス液として、以下のものを用いた。
SR−1:4−メチル−2−ペンタノール
SR−2:1−ヘキサノール
SR−3:酢酸ブチル
SR−4:メチルアミルケトン
SR−5:エチル−3−エトキシプロピオネート
【0544】
(レジスト調製およびパターン形成)
下記表4及び表5に示す成分を同表に示す溶剤に固形分で3.4質量%溶解させ、それぞれを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)を調製した。シリコンウエハ上に有機反射防止膜ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い、膜厚95nmの反射防止膜を形成した。その上にレジスト組成物を塗布し、表6に記載の温度で、60秒間、ベーク(Prebake;PB)を行い、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
得られたウェハを、ArF液浸露光装置(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C−Quad、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.812、XY偏向)を用い、バイナリーマスクを介してパターン露光を行った。液浸液としては超純水を用いた。その後、表6に記載の温度で、60秒間、ベーク(Post Exposure Bake;PEB)を行い、表6に記載の現像液で30秒間現像し、リンス液でリンスした。その後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させることにより、ピッチ128nm、スペース40nmのトレンチのレジストパターンを得た。
【0545】
<評価方法>
(ラインウィズスラフネス;LWR)
得られたピッチ128nm、スペース40nmのトレンチのレジストパターンを測長走査型電子顕微鏡(SEM;日立製作所(株)S−9380II)を使用して観察した。スペースパターンの長手方向2μmの範囲について、等間隔で50点の線幅を測定し、その標準偏差から3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0546】
(露光ラチチュード;EL)
得られたピッチ128nm、スペース40nmのトレンチのレジストパターンを形成する露光量を最適露光量とし、露光量を変化させた際にパターンサイズの±10%を許容する露光量幅を求めた。この値を最適露光量で割って、百分率表示した。値が大きいほど露光量変化による性能変化が小さく、ELが良好であることを示す。
【0547】
(デフォーカス余裕度;DOF)
ピッチ128nm、スペース40nmのトレンチのレジストパターンを形成する露光量、フォーカスをそれぞれ最適露光量、最適フォーカスとし、露光量を最適露光量としたまま、フォーカスを変化(デフォーカス)させた際に、パターンサイズが±10%を許容するフォーカスの幅を求めた。値が大きいほどフォーカス変化による性能変化が小さく、デフォーカス余裕度(DOF)が良好である。
以下の表4及び表5に実施例及び比較例で使用した組成物の組成を、以下の表6に、パターン形成におけるPEおよびPEBの温度条件(℃)、ならびに使用した現像液およびリンス液を、各実施例および比較例について示す。
【0548】
(酸分解性の評価方法)
各実施例における樹脂(P)及び化合物(A)を用いて、上記した<酸分解性の評価方法>に準じて酸分解性評価を行ったが、いずれも30nm未満の膜厚であり、樹脂(P)が分解していない(すなわち、樹脂(P)が、化合物(A)から発生した酸とは作用しない)ことを確認した。それに対し、比較例で用いている酸発生剤(z95)と樹脂(P−1)で同様に酸分解性評価を行ったところ、膜厚は75nmであり酸分解していた(すなわち、樹脂(P)が、化合物(A)から発生した酸と作用していた)。
【0549】
【表4】
【0550】
【表5】
【0551】
【表6】
【0552】
表に示す結果から明らかなように、化合物(A)を含有しない比較例1及び2と比較して、実施例1〜70は、LWR、EL及びDOFが非常に優れたものとなった。
また、化合物(A)として、一般式(I−2a)で表される化合物であって、「Rが、水素原子、無置換のアルキル基、無置換のシクロアルキル基、又は、無置換のアルコキシ基を表す」を満たす化合物を使用した実施例1〜7、12〜26、31〜41、56、58〜63、65及び66は、LWR、及び、ELの結果がより優れるものとなった。
【0553】
また、先に示したレジスト1、7、41、42、51を線幅75nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光し、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥したところ、ポジ型パターンが得られた。
【0554】
[実施例71〜75、比較例3(EUV露光)]
<酸分解性樹脂(P)>
酸分解性樹脂(P)としては、下記樹脂(P−2−1)〜(P−2−5)を用いた。下記樹脂の各繰り返し単位の組成比はモル比で示している。
【0555】
【化126】
【0556】
<合成例3:樹脂(P−2−1)の合成>
ポリ(p−ヒドロキシスチレン)(VP−2500、日本曹達株式会社製)20.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)80.0gに溶解した。この溶液に、2−シクロヘキシルエチルビニルエーテル10.3g及びカンファースルホン酸20mgを加え、室温で2時間撹拌した。84mgのトリエチルアミンを加え、しばらく撹拌した後、反応液を酢酸エチル100mLの入った分液ロートに移した。この有機層を蒸留水50mLで3回洗浄後、有機層をエバポレーターで濃縮した。得られたポリマーをアセトン300mLに溶解した後、ヘキサン3000gに滴下再沈して、沈殿をろ過することで、(P−2−1)を18.3g得た。
【0557】
【化127】
【0558】
樹脂(P−2−1)と同様にして、樹脂(P−2−2)〜(P−2−5)を合成した。
【0559】
<酸発生剤>
酸発生剤としては、下記化合物(Z2−1)〜(Z2−2)を用いた。
【0560】
【化128】
【0561】
上記以外の成分、現像液及びリンス液については、[実施例1〜70、比較例1及び2(ArF露光)]で記載したものを使用した。
【0562】
(1)感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の塗液調製及び塗設
下表7に示す成分を同表に示す溶剤に固形分3.4質量%溶解させ、それぞれを0.05μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)溶液を調製した。
この感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物溶液を、予めヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した6インチSiウェハ上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いて塗布し、100℃、60秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
【0563】
(2)EUV露光及び現像
上記(1)で得られたレジスト膜の塗布されたウェハを、EUV露光装置(Exitech社製 Micro Exposure Tool、NA0.3、Quadrupole、アウターシグマ0.68、インナーシグマ0.36)を用い、露光マスク(ライン/スペース=1/1)を使用して、パターン露光を行った。照射後、ホットプレート上で、110℃で60秒間加熱した後、下表に記載の有機系現像液をパドルして30秒間現像し、下表7に記載のリンス液を用いてリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた後、90℃で60秒間ベークを行なうことにより、線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンのレジストパターンを得た。
【0564】
(3)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9380II)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法で、感度、解像力について評価した。結果を下表7に示す。
【0565】
(3−1)感度
線幅50nmの1:1ラインアンドスペースパターンを解像する時の照射エネルギーを感度(Eop)とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0566】
(3−2)解像力
前記Eopに於いて、分離している1:1ラインアンドスペースパターンの最小線幅を解像力とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
【0567】
(酸分解性の評価方法)
各実施例における樹脂(P)及び化合物(A)を用いて、上記した<酸分解性の評価方法>に準じて酸分解性評価を行ったが、いずれも30nm未満の膜厚であり、樹脂(P)が分解していない(すなわち、樹脂(P)が、化合物(A)から発生した酸とは作用しない)ことを確認した。
【0568】
【表7】
【0569】
表に示す結果から明らかなように、化合物(A)を含有しない比較例3と比較して、実施例71〜75は、解像力が非常に優れたものとなった。
【0570】
また、レジスト1〜3を用い、US8,227,183BのExample7などを参考に、ラインアンドスペースのマスクパターンを露光した後、酢酸ブチル現像とアルカリ現像の両方を行ったところ、マスクパターンの1/2のピッチのパターンを形成することができた。
また、実施例1〜3において、現像液(酢酸ブチル)に、トリn−オクチルアミンを少量加えた以外は同様にして評価を行ったところ、これらにおいても良好なパターン形成を行うことができた。
【0571】
以上、実施例を説明したが、本願発明がこれら実施例のみに限定されるわけではなく、例えば以下のような態様でもパターン形成可能である。
・各実施例における有機溶剤を含有する現像液に、1質量%程度の含窒素塩基性化合物、例えばトリオクチルアミンなどを添加してネガ型現像を行う態様
・各実施例において、ArFエキシマレーザーによる露光をEUV露光に換えた態様、更には、レジスト組成物中の樹脂として、前述の「特に、EUV露光または電子線露光の際に、好適に用いることができる樹脂」として紹介した樹脂(芳香環を有する単位を有する樹脂)を用いた態様、など。
【0572】
なお、実施例で形成されたパターンについては、評価・測定後、剥離液により基板からパターンを剥離した。具体的には、枚様式の処理装置を用いて、ジメチルスルホキシド70質量%、モノエタノールアミン15質量%、ジグリコールアミン15質量%の組成の剥離液を基板上に供給し、レジストパターンを剥離した。