(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して、説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例による積層板の加工方法を示す側面図である。
図2は、本発明の一実施例による積層板の加工方法を示す平面図である。
【0014】
先ず、
図1を参照して、積層板10について説明する。積層板10は、例えば
図1に示すように基板12、および基板12と剥離可能に結合した補強板14を備える。積層板10は、後述の加工方法で加工された後、製品の製造に用いられる。1つの製品の製造に、複数の積層板10が用いられてもよい。製品としては、例えば表示パネル、太陽電池、薄膜2次電池などの電子デバイスが挙げられる。
【0015】
基板12は、製品の一部となるものであって、基板12上には、製品の製造工程において、製品の種類に応じた機能膜が形成される。機能膜は、複数の層で構成されてもよい。
【0016】
基板12は、例えば、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、金属基板、または半導体基板などである。これらの中でも、ガラス基板が好ましい。ガラス基板は耐薬品性、耐透湿性に優れ、且つ、線膨張係数が小さいからである。基板12の線膨張係数が大きいと、熱処理時に様々な不都合が生じやすく、例えば高温で形成した機能膜を室温まで冷却するときに機能膜のパターンが歪むことがある。
【0017】
ガラス基板のガラスとしては、例えば無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスなどが挙げられる。酸化物系ガラスは、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。ガラス基板のガラスは、製品の種類に応じて選択される。例えば、液晶パネルの場合、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラス(無アルカリガラス)が用いられる。
【0018】
基板12の厚さAは、基板12がガラス基板の場合、例えば0.3mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下、さらに好ましくは0.05mm以下である。また、基板12の厚さAは、基板12がガラス基板の場合、成形性の観点から、好ましくは0.001mm以上である。
【0019】
補強板14は、補強板14と基板12との剥離操作が行われるまで、基板12と結合し、基板12を補強する。補強板14の厚さBは、基板12の厚さAよりも厚くてよい。補強板14は、製品の製造工程の途中で、基板12から剥離され、製品の一部とはならない。
【0020】
補強板14は、熱処理による反りや剥離を防止するため、基板12との熱膨張差の小さいものが好ましい。基板12がガラス基板の場合、補強板14はガラス板を含むものが好ましく、基板12のガラスと、補強板14のガラスとは同種のガラスであることが好ましい。
【0021】
補強板14は、例えば、基板12と剥離可能に結合する剥離膜15、および剥離膜15を介して基板12を支持する支持板16を含む。剥離膜15と基板12とは、その間に作用するファンデルワールス力などにより剥離可能に結合される。剥離膜15は、樹脂膜、無機膜のいずれでもよい。無機膜は、例えば金属酸化物膜でよい。
【0022】
なお、本実施例の補強板14は、剥離膜15および支持板16で構成されるが、支持板16のみで構成され、支持板16(例えばガラス板)と基板12(例えばガラス基板)とが直接結合してもよい。支持板16における基板12との接触面、および、基板12における支持板16との接触面は、互いに結合しやすいように、それぞれ、所定値以下の表面粗さを有してよい。また、少なくとも一方の接触面に表面粗さの異なる領域を設けることによって、支持板16と基板12との界面に結合力の異なる領域が設けられてもよい。剥離操作が容易となる。支持板16における基板12との接触面、および、基板12における支持板16との接触面は、それぞれ、表面の活性を高める処理(例えば洗浄処理)が施されたものであってよい。
【0023】
なお、補強板14は、ガラス板と樹脂膜とを交互に積層したものであってもよく、複数の支持板16、複数の樹脂膜を有してよい。この場合、最外層の樹脂膜が剥離膜となる。
【0024】
支持板16は、剥離膜15を介して、基板12を支持する。支持板16は、例えばガラス板、セラミックス板、樹脂板、半導体板、又は金属板などである。基板12がガラス基板の場合、支持板16はガラス板であることが好ましい。一方、支持板16が樹脂板又は金属板であると、補強板14の撓み変形が容易であるので、補強板14と基板12との剥離が容易である。
【0025】
支持板16と基板12との平均線膨張係数差(絶対値)は、基板12の寸法形状などに応じて適宜設定され、例えば35×10
−7/℃以下であることが好ましい。ここで、「平均線膨張係数」とは、50℃〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数(JIS R 3102)をいう。
【0026】
支持板16の厚さCは、支持板16がガラス板の場合、例えば0.7mm以下である。また、支持板16の厚さCは、支持板16がガラス板の場合、基板12の補強のため、0.4mm以上であることが好ましい。
【0027】
支持板16の外形は、支持板16が剥離膜15の全体を支持できるように、
図1に示すように剥離膜15の外形と同一であるか、剥離膜15の外形よりも大きいことが好ましい。
【0028】
剥離膜15は、剥離膜15と基板12との剥離操作が行われるまで、基板12の位置ずれを防止する。剥離膜15は剥離操作によって基板12から容易に剥離する。剥離操作による基板12の破損を防止できる。
【0029】
剥離膜15は、支持板16との結合力が基板12との結合力よりも相対的に高くなるように形成される。剥離操作によって積層板10が意図しない位置(剥離膜15と支持板16との間)で剥離するのを防止できる。
【0030】
剥離膜15の樹脂は、特に限定されない。例えば、剥離膜15の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂などが挙げられる。いくつかの種類の樹脂を混合して用いることもできる。中でも、耐熱性や剥離性の観点から、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂が好ましい。
【0031】
剥離膜15の厚さDは、特に限定されないが、剥離膜15が樹脂膜の場合、好ましくは1μm〜50μm、より好ましくは4μm〜20μmである。剥離膜15の厚さDを1μm以上とすることで、剥離膜15と基板12との間に気泡や異物が混入した場合に、気泡や異物の厚さを吸収するように剥離膜15が変形できる。一方、剥離膜15の厚さDが50μm以下であると、剥離膜15の形成時間を短縮でき、さらに剥離膜15の樹脂を必要以上に使用しないため経済的である。
【0032】
剥離膜15の外形は、剥離膜15が基板12の全体を支持できるように、
図1に示すように基板12の外形と同一か、基板12の外形よりも大きいことが好ましい。剥離膜15の外形が基板12の外形よりも大きいと、剥離膜15の基板12からはみ出す部分を撓み変形させることで補強板14と基板12との剥離が徐々に行われ、剥離が円滑に行われる。
【0033】
なお、剥離膜15は複数種類の樹脂膜からなっていてもよい。この場合「剥離膜の厚さ」は全ての樹脂膜の合計の厚さを意味する。
【0034】
次に、積層板10の製造方法について説明する。積層板10の製造方法としては、例えば、下記の(1)〜(3)の方法がある。
【0035】
(1)支持板16上に流動性を有する樹脂組成物を塗布し、硬化させて、剥離膜15を形成した後、剥離膜15上に基板12を圧着する。樹脂組成物が硬化する時、樹脂組成物が支持板16と相互作用するので、支持板16と剥離膜15の結合力が、剥離膜15と基板12の結合力よりも高くなりやすい。
【0036】
(2)所定の基材上に流動性を有する樹脂組成物を塗布し、硬化させて剥離膜15を形成した後、剥離膜15を所定の基材から剥離して、フィルムの形態で、基板12と支持板16との間に挟んで圧着する。剥離膜15の圧着後の結合力が、基板12に対して低く、支持板16に対して高い場合に有効である。剥離膜15との接触前に、基板12または支持板16の表面を表面処理して、剥離膜15との圧着後の結合力に差をつけてもよい。
【0037】
(3)基板12と支持板16との間に樹脂組成物を挟んで、硬化させて剥離膜15を形成する。樹脂組成物の硬化後の結合力が、基板12に対して低く、支持板16に対して高い場合に有効である。樹脂組成物との接触前に、基板12または支持板16の表面を表面処理して、樹脂組成物の硬化後の結合力に差をつけてもよい。
【0038】
上記(1)及び(2)の方法における圧着は、クリーン度の高い環境下で実施されてよい。圧着時の周辺の気圧は、大気圧でもよいが、空気の噛み込みを抑制するため、大気圧よりも低い負圧であることが好ましい。圧着の方式としては、ロール式、プレス式などがある。圧着温度は、室温よりも高い温度でもよいが、剥離膜15としての樹脂膜の劣化を防止するため、室温であってよい。
【0039】
剥離膜15となる樹脂組成物は、縮合反応型、付加反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型のいずれの仕組みで硬化するものでもよい。付加反応型の樹脂組成物は、硬化しやすく、剥離性に優れ、耐熱性も高いため、特に好ましい。
【0040】
また、剥離膜15となる樹脂組成物は、溶剤型、エマルジョン型、無溶剤型のいずれの形態で使用されるものでよいが、生産性、環境特性の観点で、無溶剤型が好ましい。また、無溶剤型の樹脂組成物は、硬化時に発泡しうる溶剤を含まないため、欠陥の少ない剥離膜15が得られる。
【0041】
硬化の仕組みが付加反応型であって、使用形態が無溶剤型であるシリコーン樹脂組成物としては、ビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンと、ハイドロシリル基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンとを含むものがある。このシリコーン樹脂組成物は、白金触媒の存在下で加熱硬化され、シリコーン樹脂膜となる。
【0042】
剥離膜15となる樹脂組成物の塗布方法は、例えばスプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法などがある。これらの塗布方法は、樹脂組成物の種類に応じて適宜選択される。
【0043】
剥離膜15となる樹脂組成物の塗工量は、樹脂組成物の種類などに応じて適宜選択される。例えば、上記シリコーン樹脂組成物の場合、好ましくは1g/m
2〜100g/m
2、より好ましくは5g/m
2〜20g/m
2である。
【0044】
剥離膜15となる樹脂組成物の硬化条件は、樹脂組成物の種類などに応じて適宜選択される。例えば、上記シリコーン樹脂組成物として、直鎖状ポリオルガノシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの合計量100質量部に対して、白金系触媒を2質量部配合した場合、大気中で加熱する温度は、50℃〜250℃、好ましくは100℃〜200℃である。また、この場合の反応時間は5分間〜60分間、好ましくは10分間〜30分間とする。樹脂組成物の硬化条件が上記の反応時間の範囲及び反応温度の範囲であれば、シリコーン樹脂の酸化分解が同時に起こらず、低分子量のシリコーン成分が生成せず、補強板と基板との剥離時に基板側に樹脂が残りにくい。
【0045】
次に、製造された積層板の加工方法について
図1および
図2を再度参照して説明する。積層板の加工方法は、
図1および
図2に示すように、積層板10の端部を砥石30で研削する面取り工程を有する。
【0046】
砥石30は円板状であって、砥石30の外周面には環状の研削溝32が形成されている。研削溝32の断面形状は、例えば略台形状であって、略等脚台形状であってよい。砥石30の径方向内方に向かって、研削溝32の溝幅が徐々に狭くなっている。研削溝32の底面と、研削溝32の各側面との境界部は、砥石30の径方向内方に向けて凸の曲面状となっている。
【0047】
面取り工程では、先ず、
図1に示すように、砥石30の中心線に対して積層板10の板厚方向が平行になるように、積層板10をセッティングする。この状態で、砥石30の中心線を中心に砥石30を回転させながら、研削溝32の壁面を積層板10の端部に押し当てて、積層板10の端部を砥石30で研削する。このとき、研削溝32の両側面が積層板10の端部を挟んで削ると共に、研削溝32の底面が積層板10の端部を削る。研削溝32の両側面が積層板10の端部を挟むことで、積層板10と砥石30との位置ずれを防止できる。面取り工程では、
図2に示すように、砥石30と、積層板10とを相対的に移動させ、積層板10の外周の少なくとも一部を研削する。
【0048】
図3は、本発明の一実施例による面取り工程で砥石から基板に作用する力を示す断面図である。
図3に示すように、面取り工程では、砥石30から基板12に力Gが作用する。この力Gは、砥石30の中心線(つまり、積層板10の板厚方向)と垂直な方向に作用する。この力Gのうち、研削溝32の壁面に対して垂直な分力G1によって、基板12の研削面にマイクロクラックが生じうる。基板12と補強板14との界面と、基板12の研削面とのなす角θが小さいほど、マイクロクラックを生じさせうる分力G1が小さい。
【0049】
本実施例では、基板12と補強板14との界面と、基板12の研削面とのなす角θが30°以下となっており、基板12の研削面にマイクロクラックを生じさせうる分力G1が十分に小さく、基板12が欠けにくい。
【0050】
基板12と補強板14との界面は、基板12の研削面に対して斜めになるように、研削溝32の底面ではなく、
図1に示すように、研削溝32の一側面で研削されてよい。この場合、基板12の研削面は、平坦な部分のみで構成される。
【0051】
なお、本実施例では、基板12と補強板14との界面は、研削溝32の一側面で研削されるが、研削溝32の一側面と、研削溝32の底面との曲面状の境界部で研削されてもよい。この場合、基板12の研削面は、平坦な部分と、湾曲した部分とで構成される。この湾曲した部分の接線と、基板12と補強板14との界面とのなす角が、30°以下となっていればよい。
【0052】
また、基板12と補強板14との界面と、基板12の研削面とのなす角θは26°よりも大きい。基板12と補強板14との界面と、基板12の研削面との交わる部分が尖り過ぎていないので、基板12と補強板14とを剥離するため、基板12と補強板14との間に薄い刃を挿入したとき、基板12が欠けにくい。
【0053】
積層板10の砥石30で研削した研削面(以下、単に「積層板10の研削面」という)は、例えば、積層板10の表面および裏面からそれぞれ斜めに延びる傾斜部と、積層板10の表面および裏面に対して垂直な垂直部と、各傾斜部と垂直部との間に形成される曲面部とを有する。
【0054】
加工された積層板10の表面から斜めに延びる傾斜部と、加工された積層板10の裏面から斜めに延びる傾斜部とは、加工された積層板10の表面と裏面との間の中心面に対して対称であってよい。
【0055】
積層板10の研削面の曲面部の断面形状は、砥石30の径方向内方に向けて凸の形状であって、例えば円弧状である。積層板10の研削面の曲面部の曲率半径Rは、例えば0.05mm〜0.20mmである。
【0056】
積層板10の研削面の垂直部は、積層板10の板厚方向における寸法Fが例えば0.05mm〜0.30mmである。
【0057】
ところで、加工された積層板10は、補強板14を下向きにしてステージ上に載せられ、ステージ上に設けられる位置決めブロックと当接されることがある。
【0058】
本実施例では、加工された積層板10の板厚方向視で、基板12よりも外方に補強板14が突出しており、基板12が位置決めブロックと接触しないので、基板12が破損しにくい。補強板14の突出寸法Eは例えば0.05mm〜0.30mmである。
【0059】
次に、加工された積層板10を用いた電子デバイスの製造方法について説明する。電子デバイスの製造方法は、加工された積層板10の基板12上に機能膜を形成する工程と、機能膜を形成した基板12と補強板14とを剥離する工程とを有してよい。
【0060】
機能膜の形成には、リソグラフィ技術やエッチング技術が用いられ、レジスト液が用いられることがある。レジスト液は、加工された積層板10の研削面にまで広がることがある。
【0061】
本実施例の積層板10の研削面は、基板12と補強板14との界面近傍に欠けがないので、レジストの残渣の除去が容易である。残渣は熱処理で発塵源となるので、残渣が少なくなることで、電子デバイスの歩留まりが向上する。
【0062】
基板12と補強板14との剥離は、例えば、基板12と補強板14との間に薄い刃を挿入し、剥離起点となる隙間を形成した後、基板12を平坦に保持しながら、補強板14を剥離起点側から反対側に向けて順次曲げ変形することで行われる。
【0063】
次に、電子デバイスとしての液晶パネルの製造方法について説明する。液晶パネルの製造方法は、例えば、TFT基板作製工程と、CF基板作製工程と、組み立て工程と、剥離工程とを有する。
【0064】
TFT基板作製工程では、加工された積層板10の基板12上に薄膜トランジスタ(TFT)などを形成してTFT基板を作製する。TFT基板の作製には、リソグラフィ技術やエッチング技術が用いられ、レジスト液が用いられる。
【0065】
CT基板作製工程では、加工された別の積層板10の基板12上に透明導電膜やカラーフィルタ(CF)などを形成してCF基板を作製する。CF基板の作製には、リソグラフィ技術が用いられ、レジスト液が用いられる。
【0066】
組み立て工程は、TFT基板とCF基板との間に液晶材を封止する工程を有する。TFT基板とCF基板との間に液晶材を注入する方法としては、減圧注入法または滴下注入法がある。
【0067】
減圧注入法では、例えば、先ず、シール材およびスペーサ材を介してTFT基板とCF基板とを貼り合わせることで、大型パネルを作製する。作製した大型パネルは、複数のセルに切断される。次いで、各セルの内部を真空引きし、各セルの側面に設けられた注入孔から各セルの内部に液晶材を注入した後、注入孔が封止される。続いて、各セルに偏光板を貼り付けることで、液晶パネルが製造される。
【0068】
滴下注入法では、例えば、先ず、TFT基板およびCF基板のいずれか一方に液晶材を滴下し、次いで、シール材およびスペーサ材を介してTFT基板とCF基板とを貼り合わせることで、大型パネルを作製する。作製した大型パネルは、複数のセルに切断される。続いて、各セルに偏光板を貼り付けることで、液晶パネルが製造される。
【0069】
剥離工程では、基板12と補強板14とを剥離する。剥離工程は、TFT基板作製工程およびCF基板作製工程の後であって組み立て工程の前、または、組み立て工程の途中もしくは後で行われてよい。
【0070】
例えば、減圧注入法による組み立て工程の途中で剥離工程が行われる場合、剥離工程は、大型パネルの作製後であって大型パネルの切断前、または、液晶材の封入後であって偏光板の貼り付け前に行われよい。
【0071】
また、適下注入法による組み立て工程の途中で剥離工程が行われる場合、剥離工程は、大型パネルの作製後であって大型パネルの切断前、または、大型パネルの切断後であって偏光板の貼り付け前に行われてもよい。
【0072】
次に、電子デバイスとしての有機ELパネル(OLED)の製造方法について説明する。有機ELパネルの製造方法は、例えば、有機EL素子形成工程と、貼り合わせ工程と、剥離工程とを有する。
【0073】
有機EL素子形成工程では、加工された積層板10の基板12上に有機EL素子を形成する。有機EL素子は、例えば、透明電極層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などからなる。有機EL素子の形成には、フォトリソグラフィ技術が用いられ、レジスト液が用いられる。
【0074】
貼り合わせ工程では、有機EL素子が形成された基板と対向基板とを貼り合わせる。有機EL素子を形成した基板は複数のセルに切断され、各セルと対向基板とが貼り合わされてよい。
【0075】
剥離工程では、基板12と補強板14とを剥離する。剥離工程は、例えば、有機EL素子形成工程の後であって貼り合わせ工程の前、または、貼り合わせ工程の途中もしくは後で行われてよい。
【0076】
次に、電子デバイスとしての太陽電池の製造方法について説明する。太陽電池の製造方法は、太陽電池素子形成工程と、剥離工程とを有する。
【0077】
太陽電池素子形成工程では、加工された積層板10の基板12上に太陽電池素子を形成する。太陽電池素子は、例えば、透明電極層、半導体層などからなる。太陽電池素子の形成には、フォトリソグラフィ技術が用いられ、レジスト液が用いられる。
【0078】
剥離工程では、基板12と補強板14とを剥離する。剥離工程は、例えば、太陽電池素子形成工程の後に行われてよい。
【実施例】
【0079】
[試験例1〜4]
試験例1〜4では、積層板として、支持板上に流動性を有する樹脂組成物を塗布し、硬化させて、剥離膜を形成し、形成した剥離膜上にガラス基板を圧着したものを用意した。試験例1〜4の積層板は、同じ構成とした。
【0080】
支持板のガラス板としては、旭硝子社製の無アルカリガラス板(920mm×730mm×厚さ0.5mm)を用いた。
【0081】
樹脂組成物としては、無溶剤付加反応型シリコーン(信越シリコーン社製、KNS−320A)100質量部と白金系触媒(信越シリコーン社製、CAT−PL−56)2質量部との混合物を用いた。この混合物をダイコータでガラス板上に塗布し220℃で30分熱処理することにより、剥離膜(920mm×730mm×厚さ8μm)を形成した。
【0082】
ガラス基板としては、旭硝子社製の無アルカリガラス板(920mm×730mm×厚さ0.1mm)を用いた。
【0083】
試験例1〜4では、略矩形状の積層板の4辺のそれぞれを表1に示す寸法に砥石で研削し、ガラス基板に欠けが発生したか否かを顕微鏡で調べた。砥石の砥粒としては、平均粒径が30μmのダイヤモンド砥粒を用いた。また、砥石の研削溝の断面形状は略等脚台形とした。ガラス基板の研削面に長さが0.03mm以上の欠けが発生しなかった場合を「○」、ガラス基板の研削面に長さが0.03mm以上0.05mm未満の欠けが発生した場合を「△」、ガラス基板の研削面に長さが0.05mm以上の欠けが発生した場合を「×」とした。
【0084】
次いで、試験例1〜4では、補強板を下向きにして積層板をステージに載せた状態で、ステージ上に設けられる位置決めブロックに対して積層板を100mm/sの速度で衝突させ、ガラス基板の上面と研削面との角部に欠けが発生したか否かを顕微鏡で調べた。位置決めブロックにおける積層板との衝突面は、ステージ上面に対して垂直とした。ガラス基板の上面と研削面との角部に長さが0.03mm以上の欠けが発生しなかった場合を「○」、ガラス基板の上面と研削面との角部に長さが0.03mm以上0.05mm未満の欠けが発生した場合を「△」、ガラス基板の上面と研削面との角部に長さが0.05mm以上の欠けが発生した場合を「×」とした。
【0085】
次いで、試験例1〜4では、ガラス基板と補強板とを剥離し、剥離中にガラス基板が割れるか否かを調べた。剥離試験では、砥石で研削した積層板の4隅のうち、位置決めブロックと衝突させなかった部分の、ガラス基板と補強板との間に薄い刃を挿入して、剥離起点となる隙間を形成し、ガラス基板を平坦に保持しながら、補強板を剥離起点側から反対側に順次曲げ変形させた。剥離中、基板が割れなかった場合を「○」、基板が割れた場合を「×」とした。
【0086】
試験の結果を表1に示す。表1において、Aはガラス基板の厚さ、Bは補強板の厚さ、Cは支持板としてのガラス板の厚さ、Dは剥離膜としてのシリコーン膜の厚さ、θはガラス基板と補強板との界面と、ガラス基板の研削面とのなす角をそれぞれ表す。また、表1において、Rは積層板の研削面の曲面部の曲率半径、Eは加工された積層板の板厚方向視での補強板のガラス基板からの突出寸法、Fは積層板の研削面の垂直部の、積層板の板厚方向における寸法をそれぞれ表す。
【0087】
【表1】
表1に示すように、ガラス基板と補強板との界面と、ガラス基板の研削面とのなす角θが30°以下であれば、研削時の欠けがほとんど発生しない。また、加工された積層板の板厚方向視での補強板のガラス基板からの突出寸法Eが0.05mm以上であれば、位置決め時の欠けがほとんど発生しない。また、ガラス基板と補強板との界面と、ガラス基板の研削面とのなす角θが26°よりも大きければ、剥離時の割れがほとんど発生しない。
【0088】
[試験例5〜8]
試験例5〜8では、ガラス基板として、旭硝子社製の無アルカリガラス板(920mm×730mm×厚さ0.2mm)を用いた以外、試験例1〜4と同様の試験を行った。試験の結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
表2に示すように、ガラス基板と補強板との界面と、ガラス基板の研削面とのなす角θが30°以下であれば、研削時の欠けがほとんど発生しない。また、加工された積層板の板厚方向視での補強板のガラス基板からの突出寸法Eが0.05mm以上であれば、位置決め時の欠けがほとんど発生しない。また、ガラス基板と補強板との界面と、ガラス基板の研削面とのなす角θが26°よりも大きければ、剥離時の割れがほとんど発生しない。
【0090】
以上、積層板の加工方法、加工された積層板の実施例などを説明したが、本発明は上記実施例などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0091】
例えば、上記実施例などでは、積層板10の研削面は、積層板10の表面および裏面からそれぞれ斜めに延びる傾斜部と、積層板10の表面および裏面に対して垂直な垂直部と、各傾斜部と垂直部との間に形成される曲面部とで構成されるが、その構成は多種多様であってよい。例えば、積層板の研削面は、積層板10の表面および裏面からそれぞれ斜めに延びる傾斜部と、2つの傾斜部の間に形成される曲面部とで構成されてもよい。曲面部は例えば円弧面状であって、積層板10の板厚方向視で、傾斜部よりも外方に突出する。
【0092】
また、上記実施例などでは、加工された積層板10の表面から斜めに延びる傾斜部と、加工された積層板10の裏面から斜めに延びる傾斜部とは、加工された積層板10の表面と裏面との間の中心面に対して対称であるが、対称でなくてもよい。