(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の導電型の半導体基板の少なくとも一方の主面である第一主面にテクスチャを形成し、該第一主面における基板の外縁領域をテクスチャを有さない平坦部として、上記半導体基板の第一主面に第二の導電型の拡散源を含む拡散剤を塗布し、この拡散剤を塗布した半導体基板を2枚一組とし、この2枚の半導体基板の第一主面同士を向き合わせて重ね合わせた状態で熱処理して該拡散剤を拡散させて第二の導電型拡散層を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
上記半導体基板の他方の主面である第二主面に第一の導電型の拡散源を別途供給し、上記熱処理により第一の導電型拡散層を同時に形成するものであることを特徴とする請求項1記載の太陽電池の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から単結晶シリコンや多結晶シリコンの半導体基板を用いた高効率の太陽電池セルが種々検討されている。このような太陽電池セルは、
図1に示すように、半導体基板900の受光面において集電電極としてフィンガー電極102と呼ばれる数百〜数十μm幅の電極を多数有し、また太陽電池セルを連結するための集電電極としてのバスバー電極101を数本有するのが一般的である。
【0003】
また、この太陽電池セルの断面構造として、
図2に示すように、半導体基板900の受光面側には基板の導電型と反対の導電型の拡散層であるエミッタ層103が設けられ、この上にフィンガー電極102が設けられる。なお、受光領域には反射損失を低減する目的で反射防止膜104が設けられることが多い。また、受光面の反対面側(裏面)にも集電用の電極105が形成され、電極以外の部分は半導体基板900の導電型と同じ導電型の拡散層106が形成され、その表面にはパッシベーション膜107が形成される。
【0004】
上記エミッタ層103及び裏面側拡散層106の形成方法としては、熱拡散法が広く用いられる。即ち、半導体基板900を熱処理炉に入れ、P型拡散層形成のためには、B、Al、Ga、In等を拡散源とし、N型拡散層形成のためにはP、As、Sb等を拡散源として、拡散源毎に所定の温度及び時間で滞留させて半導体基板900の表面から熱拡散させることで、拡散層を形成する。
【0005】
なお、半導体基板への拡散源の供給方法として、リンの供給源としてのオキシ塩化リンやホウ素の供給源としての三臭化ホウ素を用いる気相拡散法が一般的であるが、拡散源を純水や溶剤に溶解しておき、これを予め半導体基板上に塗布しておいてから熱処理する方法(塗布拡散法)が簡便であり、例えば特開平10−154823号公報(特許文献1)、特開平10−173208号公報(特許文献2)、特開2004−221149号公報(特許文献3)、特開2006−156646号公報(特許文献4)、特開2010−056465号公報(特許文献5)、特開2011−253868号公報(特許文献6)、特開2011−019051号公報(特許文献7)、特開2012−019052号公報(特許文献8)に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記塗布拡散法は簡便であるが、半導体基板の両面に異種の拡散源を塗布し両面同時に拡散させようとすると、蒸気圧の高い拡散源は拡散炉内で容易に飛散し、所望の面とは反対の面に回り込んでしまい(オートドープ現象)、この現象により太陽電池特性が低下してしまうという問題があった。このとき、特開平10−173208号公報(特許文献2)で開示されているように、2枚の半導体基板の同じ導電型の拡散源の塗布面を外側に向けその裏面同士を向かい合わせて重ね合わせることで外側の塗布面から裏面側へのオートドープを回避しようとしても、熱による基板の膨張やテクスチャの存在などのために基板同士を完全に密着させることはできず、基板の裏面の外周部(基板外縁領域)に少なからず回り込みが発生し、太陽電池特性が低下する問題があった。また、2枚の半導体基板それぞれの拡散剤を塗布した面同士を向かい合わせて重ね合わせ、それらの外側の面に気相拡散法により拡散層を形成する場合にも、気相拡散法の拡散源が拡散剤塗布面側の外周部(基板外縁領域)に少なからず回り込み、太陽電池特性が低下する問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、拡散熱処理時の基板外縁領域のオートドープを抑制し、変換効率を向上させる太陽電池の製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題の原因を調べる中で、塗布拡散法において微細な凹凸からなるテクスチャ構造を有する半導体基板に拡散剤を塗布した場合、テクスチャ構造の凸部分が拡散剤で被覆されておらず、この状態で2枚の半導体基板のこの拡散剤塗布面(例えば、受光面)同士を向かい合わせて重ね合わせた後に表裏同時に拡散層を形成する拡散熱処理を行うと、テクスチャ構造によって基板同士が完全に密着していないことから上記拡散剤塗布面とは反対側の面(即ち、裏面)用の拡散源が受光面における基板外縁領域に回り込み、更に受光面のテクスチャ構造の拡散剤で被覆されていない凸部分から裏面用の拡散源が拡散し、太陽電池特性が低下してしまうことを把握し、この知見を基に問題解決を図るべく鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の太陽電池の製造方
法を提供する。
〔1〕 第一の導電型の半導体基板の少なくとも一方の主面である第一主面にテクスチャを形成し、該第一主面における基板の外縁領域をテクスチャを有さない平坦部として、上記半導体基板の第一主面に第二の導電型の拡散源を含む拡散剤を塗布し、
この拡散剤を塗布した半導体基板を2枚一組とし、この2枚の半導体基板の第一主面同士を向き合わせて重ね合わせた状態で熱処理して該拡散剤を拡散させて第二の導電型拡散層を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
〔2〕 上記半導体基板の他方の主面である第二主面に第一の導電型の拡散源を別途供給し、上記熱処理により第一の導電型拡散層を同時に形成するものであることを特徴とする〔1〕記載の太陽電池の製造方法。
〔
3〕 上記半導体基板の導電型がN型であることを特徴とする〔1〕
又は〔2〕記載の太陽電池の製造方法。
〔
4〕 上記半導体基板の第一主面において該基板の外縁から7mm以内の領域をテクスチャを有さない平坦部とすることを特徴とする〔1〕〜〔
3〕のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体基板の第一主面における基板の外縁領域にテクスチャを有さない平坦部を設けたので、少なくとも第一主面の基板外縁領域は塗布により拡散剤で被覆されることとなり、拡散処理時に半導体基板の外縁側から第一主面の基板外縁領域に侵入してくる異なる導電型の拡散源が半導体基板に拡散することを防ぐことができ、太陽電池の変換効率を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る太陽電池の製造方法について説明する。
本発明に係る太陽電池の製造方法は、第一の導電型の半導体基板の少なくとも一方の主面である第一主面にテクスチャを形成し、該第一主面における基板の外縁領域をテクスチャを有さない平坦部として、上記半導体基板の第一主面に第二の導電型の拡散源を含む拡散剤を塗布し、熱処理して該拡散剤を拡散させて第二の導電型拡散層を形成することを特徴とする。例えば、本発明の太陽電池の製造方法は、第一の導電型の半導体基板の少なくとも一方の主面である第一主面にテクスチャを形成し、該第一主面における基板の外縁領域をテクスチャを有さない平坦部とする工程と、上記半導体基板の第一主面に第二の導電型拡散層を形成するための第二の導電型の拡散源を含む拡散剤を塗布する工程と、上記半導体基板の他方の主面である第二主面に第一の導電型の拡散源を気相又は塗布により供給する気相拡散法又は塗布拡散法によって拡散層を形成すると共に上記第一主面の拡散剤を拡散させて第二の導電型拡散層を形成する拡散熱処理工程とを有することを特徴とするものである。
【0014】
以下、
図3、
図4を用いて本発明の太陽電池の製造方法を具体的に説明する。
[シリコン基板の準備]
高純度シリコンにリンあるいは砒素、アンチモンのようなV族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}N型シリコン基板表面のスライスダメージを、濃度5〜60質量%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリもしくはふっ酸と硝酸の混酸などを用いてエッチングする。単結晶シリコン基板は、CZ法、FZ法のいずれの方法によって作製されてもよい。基板は必ずしも単結晶シリコンである必要はなく、多結晶シリコンや化合物半導体でも構わない。また、シリコン基板の形状も特に限定されず、矩形、円形のいずれでもよい。ここでは、N型単結晶シリコン基板を用いる場合を説明する。
【0015】
[テクスチャ形成工程]
引き続き、シリコン基板100の少なくとも受光面(第一主面)表面にテクスチャ100aと呼ばれる微小な凹凸形成を行う(
図3(a))。テクスチャ100aは太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャ100aは、シリコン基板100を加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10質量%、温度60〜100℃)中に10〜30分間程度浸漬することで形成される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。テクスチャ形成は、表面のエッチングを行っていることになるため、前記ダメージエッチングの代用とすることも可能である。
なお、
図3(a)に示すように、シリコン基板100の両面にテクスチャ100aを形成してもよい。
図3においては、シリコン基板100の上向きの面を受光面(第一主面)、下向きの面を裏面(第二主面)としている。
【0016】
[テクスチャ形成面の平坦部形成工程]
次に、シリコン基板100のテクスチャ形成面における基板外縁領域のテクスチャ100aを除去してテクスチャを有さない平坦部100bとする(
図3(b))。テクスチャ100aの除去方法としては、アルカリやふっ酸と硝酸の混酸にシリコン基板100の外縁領域のみを浸漬、もしくはこれらの薬品を含ませたポーラス状の物体(例えばスポンジ)にシリコン基板100の外縁領域を接触させることで、外縁領域のみのテクスチャがエッチングされ除去される。又は、シリコン基板100を複数枚重ねた状態で四フッ化炭素などのプラズマ雰囲気中に曝すことで、重ね合わせたシリコン基板100間の隙間からプラズマを侵入させてその外縁領域のみをエッチングしてテクスチャを除去するようにしてもよい。テクスチャ100aが除去されることにより、シリコン基板100のテクスチャ形成面における外縁領域は平坦な状態となる。なお、ここでいう平坦な状態とは、テクスチャのような微細な凹凸がなく、後述する拡散剤の塗布によってシリコン基板100の表面が部分的に露出することなく拡散剤で被覆可能な程度に平滑な状態を意味する。
【0017】
平坦部100bの基板外縁からの幅Wは1mm以上7mm以下であることが好ましく、
3mm以上6mm以下であることがより好ましい。平坦部100bの幅Wが1mm未満では後述する拡散熱処理の際に裏面側から裏面用の拡散源が回り込んで受光面の基板外縁からテクスチャ100aの領域にまで侵入して太陽電池特性を劣化させるおそれがあり、7mm超ではテクスチャ100aによる反射率低減効果が阻害されるおそれがある。
以上の工程の後、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中でシリコン基板100を洗浄する。
【0018】
[拡散剤塗布工程]
次いで、シリコン基板100の第一主面に、シリコン基板100の導電型と逆の導電型(第二の導電型)となる拡散源を含む拡散剤、例えば予めホウ酸を純水に溶解しておいた拡散剤を塗布し乾燥させることで、拡散剤塗布層(拡散源)103aを形成する(
図3(c))。拡散剤の塗布量は拡散層103を形成するために必要な量であるが、シリコン基板100の第一主面はテクスチャ100aを有するため、
図3(c)の如く拡散剤塗布層103aはテクスチャ100aの凹凸を完全に被覆できず、テクスチャ100aの凹部付近を被覆し、凸部の先端は被覆されずに露出した状態となる。また、平坦部100bは拡散剤塗布層103aで完全に被覆される。
【0019】
[拡散熱処理工程]
次に、シリコン基板100を950〜1,050℃で10〜40分間の熱処理を施すことで、第一主面上にホウ素の拡散層103を形成する(
図3(d))。この拡散層103のシート抵抗は30〜100Ωとするのが好適である。また、この拡散熱処理時に雰囲気ガスとして第一の導電型の拡散源を供給するガス、例えばオキシ塩化リンを導入することで、シリコン基板100の第二主面にN型拡散層106を同時に形成することができる(
図3(d))。
【0020】
ここで、上述のように、シリコン基板100の第一主面ではテクスチャ100aの凹凸部分が完全には拡散剤塗布層103aで被覆されておらず、凸部先端が露出した状態にあるため、熱処理時にシリコン基板100を単体で配置しておくと、第一主面にもリンが拡散してしまうため、
図4に示すように、2枚のシリコン基板100の拡散剤塗布層103aを形成した第一主面同士を向かい合わせて重ね合わせた状態で上記拡散熱処理を施すとよい。
【0021】
しかしながら、この方法を用いても、シリコン基板100面同士を完全に密着させることはできないため、拡散源としてのリンがシリコン基板100の外縁から第一主面における基板外縁領域に数mmほど侵入してしまう。この場合、従来のシリコン基板では第一主面全面にテクスチャが形成されていることから第一主面の基板外縁領域でリンが拡散してしまい、太陽電池特性を低下させる問題が発生する。これに対して、本発明ではシリコン基板100の第一主面における基板外縁領域をテクスチャ100aを有しない平坦部100bとしており、この平坦部100b表面が完全に拡散剤塗布層(ホウ素拡散源)103aで覆われているため、拡散熱処理時に第一主面の基板外縁領域付近にリンが侵入してきても、拡散剤塗布層103aがリンのシリコン基板100表面に到達することを防止してくれるため、第一主面の基板外縁領域へのリン拡散が防止され、太陽電池の変換効率を向上させることが可能となる。
【0022】
図5は、本発明のシリコン基板100と従来のシリコン基板において上記のようにして両面に拡散層を形成した場合のホウ素拡散層形成面(第一主面)のシート抵抗を直流四探針法で測定した結果である。ここでは、幅156mmのシリコン基板を幅方向に横断するように探針を走査して測定しており、横軸は基板内位置を示す。
図5に示すように、従来のシリコン基板を用いた場合(
図5の点線)、シリコン基板両端側の領域でシート抵抗が極端に低くなっている。これは、拡散熱処理時にリンが第一主面の基板外縁領域に回り込み、拡散(オートドープ)することによってP型に反転できず、シリコン基板の抵抗が測定されていることを示している。この低抵抗領域は基板外縁から最大7mm入った領域に渡って確認される。一方、基板外縁領域のテクスチャを除去した本発明のシリコン基板の場合(
図5の実線)、低抵抗領域は認められない。上述のように、シリコン基板100の第一主面における基板外縁領域が平坦となることでその領域が拡散剤塗布層で完全に覆われ、リンの回り込み(オートドープ)がブロックされたためと考えられる。
【0023】
このようにリン汚染防止の観点からは、シリコン基板100の第一主面におけるテクスチャの除去範囲(平坦部100bの幅W)は広いほど効果が期待できるが、一方で、太陽電池の反射率が上昇してしまうという弊害もある。従って、基板外縁領域のテクスチャの除去範囲は7mm程度あれば十分である。これ以上除去すると、拡散源回り込み防止効果よりも太陽電池の反対率上昇の影響が大きくなり、変換効率はかえって低下してしまうおそれがある。
【0024】
なお、裏面側のN型の拡散源としては、オキシ塩化リンを用いた気相拡散法の他、リンやアンチモン等を含有する材料をスピン塗布したり、印刷したりする方法等、いずれの方法を用いても同じ効果が得られる。
拡散熱処理が終わったら、シリコン基板100表面に形成されたガラスをふっ酸などで除去する。
【0025】
[反射防止膜形成工程]
次いで、シリコン基板100の受光面に反射防止膜104を形成する(
図3(e))。反射防止膜104の形成にはプラズマCVD装置を用いSiNx膜を厚さ約100nmで製膜する。このとき、同時に裏面側にパッシベーション膜107としてSiNx膜を形成するとよい。なお、反応ガスとして、モノシラン(SiH
4)及びアンモニア(NH
3)を混合して用いることが多いが、NH
3の代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧カの調整、反応ガスの希釈、更には基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。
【0026】
[電極形成工程]
次いで、シリコン基板100の表裏面の反射防止膜104、パッシベーション膜107上にフィンガー電極102を含む受光面電極、裏面電極105をスクリーン印刷法で形成する。即ち、上記基板の表裏面に、Ag粉末とガラスフリットを有機物バインダと混合したAgペーストを印刷し乾燥し、電極印刷の後、熱処理によりSiNx膜の反射防止膜104、パッシベーション膜107にAg粉末を貫通させ(ファイアースルー)、フィンガー電極102、裏面電極105とシリコン基板(拡散層103、106)とを導通させる(
図3(f))。焼成は、通常700〜800℃の温度で5〜30分間処理することで行われる。裏面電極105及び受光面電極の焼成は一度に行ってもよいし、各面の印刷後それぞれに焼成することも可能である。
【0027】
以上、導電型がN型のシリコン基板の場合を例にとって説明したが、基板の導電型がP型の場合でも、上記の拡散層に関するP型とN型の条件を入れ替えるようにすれば、本発明の製造方法が適用可能である。
また、上記では反射防止膜形成工程以降、受光面と裏面とを区別しているが、受光面と裏面を上記と逆にしても何ら問題なく、例えば
図3においてシリコン基板100の上向きの面、下向きの面のいずれをも受光面としてよい。即ち、
図3(e)、(f)においてシリコン基板100の上向きの面を裏面、下向きの面を受光面とし、符号104、102をそれぞれ裏面パッシベーション膜、裏面電極、符号107、105をそれぞれ反射防止膜、受光面電極として使用しても問題ない。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1、比較例1]
本発明の太陽電池の製造方法の有効性を確認するため、従来の製造方法で太陽電池を作製し、それぞれの太陽電池特性の比較を行った。
まず、拡散厚さ200μm、比抵抗1Ω・cmの、リンドープ{100}N型アズカットシリコン基板16枚に対し、熱濃水酸化カリウム水溶液によりダメージ層を除去後、72℃の水酸化カリウム/2−プロパノール水溶液中に浸漬し、基板両面にテクスチャ形成を行った。
このうち、8枚のシリコン基板に対してのみ、シリコン基板を重ね合わせた状態で四フッ化炭素と酸素の混合プラズマ中に30分間曝すことで、シリコン基板の表裏面の基板外縁領域のみテクスチャを除去した。顕微鏡観察の結果、基板外縁から1mm入ったところまでの領域のテクスチャが除去されているのが確認された。これらの基板を用いたものを実施例1とし、このテクスチャ除去を行っていないものを比較例1とする。
引き続き、75℃に加熱した塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行い乾燥させた。
次に、シリコン基板の第一主面(受光面)に5質量%ホウ酸水溶液を3mL滴下し、10秒間で500回転させた後、200℃のホットプレートで乾燥させることで、ホウ素源(拡散剤塗布層)を形成した。
次いで、2枚のシリコン基板の第一主面同士を向かい合わせて重ね合わせた状態で、オキシ塩化リン雰囲気下980℃で40分間熱処理し、第一主面(受光面)にはホウ素の拡散層を形成し、第二主面(裏面)にはリンの拡散層を形成した。直流四探針法で測定した結果、シート抵抗は40Ωとなった。
この後、シリコン基板を濃度12質量%のふっ酸水溶液に浸漬することで表面のガラスを除去した。
以上の処理の後、プラズマCVD装置を用いてSiNx膜を、受光面反射防止膜及び裏面パッシベーション膜として全試料両面に形成した。
次に、表裏面それぞれに電極層としてAgペーストを印刷して乾燥し、780℃の空気雰囲気下で焼成して電極を形成し、太陽電池を完成させた。
以上のようにして得られた太陽電池セルをスペクトルAM(エアマス)1.5グローバルの擬似太陽光を照射して電流電圧測定機で電気特性(短絡電流、開放電圧、形状因子、光電変換効率)を測定した。各項目の平均値を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
本発明の製造方法によって作製した太陽電池は、リンの受光面への回り込み(オートドープ)が回避され並列抵抗が上昇し、形状因子が向上している。また、受光面の不要なリン拡散層が低減するため、開放電圧も向上している。
【0032】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。