【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)亜臨界水反応を行う反応器、該反応器で処理した反応物を排出する反応器出口ライン、該反応器出口ラインからの反応物を回収する受器、上記反応器出口ラインの途中に設置された固液分離器を構成要素として含む装置を使用して、ヘミセルロース、セルロース及びリグニンを主成分とするリグノセルロース系バイオマスから樹脂原料を製造する方法において、反応器出口ラインの固形物による閉塞を回避する方法であって、
該バイオマスを粉砕し、水と混合することで水スラリーとし、該水スラリーを
300℃以上374℃以下の温度で、その温度における飽和水蒸気圧以上の圧力のもと、30分以上連続的に反応処理を行い、反応終了後、上記反応器出口ライン(反応器出口から受器)の温度を200〜250℃の高温に保持する温度制御と該温度での固液分離操作を行うことで、上記反応器出口ラインにおける高温熱水可溶成分の閉塞を回避して、固体としての高分子リグニン成分と高温熱水可溶成分を分離し、該高温熱水可溶成分を100℃以下の低温に冷却することで、ヘミセルロース加水分解物とセルロース加水分解物を低温熱水可溶成分のまま分離して、リグニン誘導体を主成分とした樹脂原料をグリース状で分離することにより、上記反応器出口ラインの固形物による閉塞を回避することを特徴とする上記閉塞回避方法。
(2)水スラリーを300℃
以上330℃以下の温度で上記反応器で処理する、前記(1)に記載の方法。
(3)200〜250℃の高温での固液分離操作が、ろ過、或いは比重差分離による操作である、前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)200〜250℃の高温で分離された高温熱水可溶成分を100℃以下の低温に冷却する方法が、200〜250℃を保持したまま高温高圧回収受器に受け、受器の中で100℃以下の低温に冷却するか、或いは200〜250℃の状態から直接大気圧下へフラッシュして100℃以下の低温に冷却する、前記(1)−(3)のいずれか一項に記載の方法。
(5)水スラリー中の固形物濃度が、最大15%(含水率85%以上)である、前記(1)−(4)のいずれか一項に記載の方法。
(6)前記(1)に記載の方法で使用する装置であって、水スラリーを高圧供給するポンプシステム、亜臨界水反応を行う反応器、該反応器で処理した反応物を排出する反応器出口ライン、該反応器出口ラインからの反応物を回収する受器、上記反応器出口ラインの途中に設置された固液分離器を構成要素として含み、
上記反応器で処理された200〜250℃の高温の高温熱水可溶成分と固体物を上記固液分離器で分離し、高温熱水可溶成分を200〜250℃の高温に保持したまま上記受器に受け、該受器の中で上記高温熱水可溶成分を100℃以下の低温に冷却することにより、樹脂原料をグリース状の固形物として析出させ、低温熱水可溶成分と分離することにより、樹脂原料を回収する一連の操作を実行する機能を具備したことを特徴とする装置。
(7)上記固液分離器が、ろ過器、或いは比重差分離器である、前記(6)に記載の装置。
(8)反応器出口ライン(反応器出口から受器)を200〜250℃の高温に保つ保温加熱手段を有する、前記(6)又は(7)に記載の装置。
(9)保温加熱手段が、熱媒加熱である、前記(8)に記載の装置。
(10)受器内に収容した高温熱水可溶成分を100℃以下の低温に冷却する手段を有する、前記(6)−(9)のいずれか一項に記載の装置。
(11)受器が内部にピストンを有し、ピストンの片側に高温熱水可溶性成分を受入れ、ピストンの反対側に充填されている高圧水を所定の圧力で排出することにより、装置全体の圧力調整を行うとともに、高温熱水可溶性成分を回収する一連の操作を実行する機能を具備した、前記(6)−(10)のいずれか一項に記載の装置。
(12)100℃以下の低温に冷却する手段が、受器の外側に設置された冷却ジャケットである、前記(10)に記載の装置。
(13)受器にあらかじめ不活性ガスを所定の圧力で充填しておき、高温熱水可溶性成分を受入れることによるガス圧力上昇分を所定の圧力で排出することにより、装置全体の圧力調整を行うとともに、高温熱水可溶性成分を回収する一連の操作を実行する機能を具備した、前記(6)−(10)のいずれか一項に記載の装置。
(14)100℃以下の低温に冷却する手段が、受器内に挿入された冷却コイルである、前記(10)に記載の装置。
(15)前記(1)に記載の方法で使用する装置であって、水スラリーを高圧供給するポンプシステム、亜臨界水反応を行う反応器、該反応器で処理した反応物を排出する反応器出口ライン、該反応器出口ラインの途中に設置された固液分離器、該固液分離器からの液状物(高温熱水可溶成分)を直接大気圧下にフラッシュする減圧弁、フラッシュ後の反応物を回収する受器を構成要素として含み、
上記反応器で処理された200〜250℃の高温の高温熱水可溶成分と固体物を上記固液分離器で分離し、高温熱水可溶成分を200〜250℃の状態から直接大気圧まで減圧し、100℃以下の低温に冷却することにより、受器の中で樹脂原料をグリース状の固形物として析出させ、低温熱水可溶成分と分離することにより、樹脂原料を回収する一連の操作を実行する機能を具備したことを特徴とする装置。
(16)上記固液分離器が、ろ過器、或いは比重差分離器である、前記(15)に記載の装置。
(17)反応器出口ライン(反応器出口から受器)を200〜250℃の高温に保つ保温加熱手段を有する、前記(15)又は(16)に記載の装置。
(18)保温加熱手段が、熱媒加熱である、前記(17)に記載の装置。
(19)フラッシュ後の反応物を蒸気と固液混合物に分離するセパレータを有し、蒸気は凝縮器により蒸発凝縮水とし、固液混合物を受器に受け入れる操作工程を実行する機能を具備した、前記(15)−(18)のいずれか一項に記載の装置。
【0021】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、ヘミセルロース、セルロース及びリグニンを主成分とするリグノセルロース系バイオマスから樹脂原料を製造する方法において、反応器出口ラインの固形物による閉塞を回避する方法であって、該バイオマスを粉砕し、水と混合することで水スラリーとし、該水スラリーを
300℃以上374℃以下の温度で、その温度における飽和水蒸気圧以上の圧力のもと、30分以上連続処理を行い、反応終了後、200〜250℃以上で固液分離を行うことにより、固体と高温熱水可溶成分を分離し、該高温熱水可溶成分を100℃以下に温度を低下させることで、低温熱水可溶成分とグリース状の樹脂原料とに分離することにより、上記反応器出口ラインの固形物による閉塞を回避することを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明は、上
記方法で使用する装置であって、水スラリーを高圧供給するポンプシステム、亜臨界水反応を行う反応器、該反応器で処理した反応物を排出する反応器出口ライン、該反応器出口ラインからの反応物を回収する受器、上記反応器出口ラインの途中に設置された固液分離器を構成要素として含み、上記反応器で処理された200〜250℃以上の高温熱水可溶成分と固体物を上記固液分離器で分離し、高温熱水可溶成分を200〜250℃以上を保持したまま上記受器に受け、受器の中で100℃以下に温度を低下させることにより、樹脂原料をグリース状の固形物として析出させ、低温熱水可溶成分と分離することにより、樹脂原料を回収する
一連の操作を実行する機能を具備したことを特徴とするものである。
【0023】
本発明では、リグノセルロース系バイオマスからのリグニン誘導体を主成分とした樹脂原料の高効率製造プロセスを開発するに際して、リグノセルロース系バイオマスの亜臨界水による水熱処理の基礎的条件を確立するために、バッチ試験を行った。試験装置は、内容積200ccの高温高圧オートクレーブ(設計条件:500℃・45MPa)を用いた。
【0024】
試験に供したバイオマス原料は、建築材料加工時に排出される杉木粉(0.5mm以下)とした。反応温度を180〜360℃、反応時間を30分、圧力を反応温度における飽和蒸気圧とし、杉木粉に水を添加し、固形物を10重量%に調整したものを使用して試験を行なった。
【0025】
反応時間経過直後に冷却を開始し、内温が100℃以下となった後に残圧を開放し、処理物を回収した。回収物は、
図1に示す方法で分別及び分析を行い、評価の指標として、固形物残存率、クラーソンリグニン率、アセトン可溶成分率を算出した。
【0026】
ここで、クラーソンリグニンとは、固形物を強酸(72%硫酸)で処理し、ヘミセルロース、セルロースを可溶化し、残った不溶分を酸不溶リグニンとして評価するものであり、アセトン可溶成分は、リグニンが低分子化された誘導体と考えられ、樹脂原料となることが文献(特開2009−84320、227890号公報)に示されている。各収率の定義は、以下の通りである。
【0027】
固形物残存率=処理後固形物(乾燥重量:B)/バイオマス投入量(乾燥重量A)
クラーソンリグニン率=酸不溶成分
量(C)/処理後固形物(B)
アセトン可溶成分率=アセトン可溶成分量(D)/処理後固形物(B)
【0028】
図2に、上記バッチ試験の結果を示した。図より、亜臨界水処理(180〜360℃)において、高温になるほど固形物残存率(
図2−1)は減少し、クラーソンリグニン率(
図2−2)は増加するが、固形物残存率・クラーソンリグニン率とも、ほぼ300℃で飽和傾向を示すことが明らかとなった。
【0029】
300℃以上の処理では、固形物残存率は約50%に減少し、そのほとんどがクラーソンリグニンとして評価されることが分かった。しかしながら、原料(杉木粉)中のクラーソンリグニンは35%であることより、残渣固形物には、リグニンに加え、セルロース由来の炭化物や油化物も含まれていると考えられる。一方、リグニン誘導体(樹脂原料)と考えられるアセトン可溶成分率(
図2−2)は、300℃までは上昇するものの、それ以上の温度では逆に減少した。
【0030】
具体的には、180℃処理では数%の結果が、300℃処理では約40%となり、リグニンの低分子化(リグニン誘導体)が温度の増加とともに進行したが、それ以上の温度では炭化の進行などにより逆にアセトン可溶成分率は低下した。また、アセトン可溶成分には、リグニン誘導体以外にもセルロース由来の油化物が少量含まれていると推測される。
【0031】
更に、樹脂原料収率(
図2−3)を対バイオマス比(=アセトン可溶成分量(D)/バイオマス投入量(A))と、対バイオマス投入中全リグニン比(=アセトン可溶成分量(D)/バイオマス投入量(A)×0.35)の2種類で計算した結果、300℃〜330℃で最大となり、360℃では逆に減少した。
【0032】
300℃処理における樹脂原料収率(対バイオマス比)はほぼ20%となり、これを対バイオマス投入中全リグニン比に換算すると、55%を達成できることが分かった。この結果により、別途行った経済性試算に基づく目標値(50%)を、300℃・9MPa〜330℃・13MPa処理で達成できることが明らかとなった。従って、エネルギー的な観点や要求される装置の耐圧性などから考えて、300℃処理が最適であると判断した。
【0033】
次に、リグノセルロース系バイオマスの種類(木質系/草本系、針葉樹/広葉樹など)、すなわちリグニン含有量やリグニン構造が本処理にどのように影響するかを評価するため、杉(針葉樹)に加え、楓(広葉樹)、竹、稲わら(草本系)を対象に、上述と同様のバッチ試験を行った。ただし、反応条件は、300℃・9MPa・30分とした。
【0034】
表1に、実験結果[亜臨界水処理バッチ試験(リグノセルロース系バイオマスの違い)の結果]を整理して示す。その結果、バイオマスの種類により、リグニン含有量や構造は異なっていると思われるが、固形物残存率は、40〜50%の範囲で大きな違いは見られず、そのクラーソンリグニン率は、いずれも90%以上となった。
【0035】
一方、アセトン可溶成分率は、楓が32%と杉より低い結果であったが、稲わらや竹は逆に48%と、杉より10%程度大きな値を示した。これらの結果を樹脂原料収率に換算すると、楓が14.5%と低いものの、他の3種類(杉、稲わら、竹)は20%程度であり、本処理原理は、多くのバイオマスに適用が可能であると結論した。
【0036】
【表1】
【0037】
上記バッチ試験の結果から、連続処理装置を構築した。
図3に、連続処理装置のブロックフローシートを示す。1はスラリー化装置、2は高圧ポンプシステム、3は反応器、4は熱媒加熱器、5は冷却器、6は冷却塔、7は減圧装置、そして、8はプロダクト貯槽を各々示す。
【0038】
主要装置である反応器の設計条件は、320℃・12MPaとし、最大処理能力20g/分で各機器の容量・能力を決定した。ここでの試験では、既に粉砕された杉原料(0.5mm以下)を入手して用いたため、粉砕装置は設置していないが、この粉砕には、ボールミルなど、一般的な機械粉砕装置を用いることが可能である。ここでは、粉砕された原料に所定量の水を加え、均一なスラリーとするために、スラリー化装置1を設置している。
【0039】
スラリー化装置は、対象物に如何に大きな剪断力を与えるかで、ミル方式、回転式、高圧式、超音波式、石臼式など種々の方式が採用されるが、ここでは、ローターとスクリーンによって構成され、スクリーンと微少なクリアランスを保ちローターが高速回転することにより、処理物がスクリーンスリット部を通過して速度増大され大きな剪断力を得る方式を採用した。
【0040】
高圧ポンプシステム2は、流動性の乏しいスラリーを反応器へ高圧・定量供給する必要があり、特殊なピストンポンプの使用が考えられるが、本連続処理装置は、処理量が最大20g/分と極めて小さいため、市販のポンプシステムは採用できず、専用の高圧ポンプシステムを構築した。
【0041】
具体的には、内部にピストンを有するインジェクションタンク、低圧スラリーポンプ(モーノポンプ)及び高圧水ポンプ(プランジャポンプ)から構成され、低圧スラリーポンプによりインジェクションタンク内にスラリーを充填し、ピストンを介して高圧水ポンプでスラリーを高圧下で定量供給する方式を採用した。
【0042】
反応器3は、縦型上昇流式の高圧容器であり、内部下部にスクリュスクレーパ、上部に2枚羽のJタイプスクレーパを装填している。これは、反応器下部では流動性のほとんどないスラリーが入ってくるため、積極的に上へ押し上げていくスクリュスクレーパを採用し、ある程度温度が高くなり流動性が良くなったスラリーには、熱交換能力と混合効果のあるJタイプスクレーパを用いたものである。
【0043】
スラリーの加熱は、電気式の熱媒加熱器4で行った。通常、実験装置規模の加熱にはニクロム加熱など、電気式加熱の採用が一般的であるが、反応器内部の局部的加熱による焦げ付き(→閉塞)などを避けるために、熱媒加熱方式を採用した。反応終了後の高温高圧プロダクトはコイル(スラリー)/シェル(冷却水)方式の冷却器5で、冷却水は冷却塔6から供給した。冷却後の高圧プロダクトは、通常圧力コントロール弁により所定圧に制御されるが、ここでは、対象物が固形物を大量に含むことと、処理量が極めて少ないことなどを勘案して、内部にピストンを有した減圧装置7を製作して用いた。
【0044】
具体的には、ピストンの上部にプロダクトを受入れ、ピストンの反対側に充満されている高圧水を、ばね式保圧弁(1次圧調整弁)で所定圧に制御した。この方式では、高圧下でプロダクトを受入れ、ピストンが最下部に到達したら、反応器(冷却器)と通ずる弁を閉め、高圧水を上記保圧弁を調整して減圧し、スラリー排出ポンプを稼働してピストンを押し上げながらプロダクトをプロダクト貯槽8へと排出した。本連続処理装置の詳細フローを
図4に示した。
【0045】
この連続処理装置を用いて、始めに、清水により本装置の圧入性能、加熱性能、冷却性能及び減圧性能が計画通りに作動することを確認した後、杉木粉(0.5mm以下)を用いた連続試験に移行した。あらかじめ杉木粉に水を加え、固形物濃度5重量%のスラリーを上記のスラリー化装置で調製した。
【0046】
このスラリーを用いて、反応温度250℃、圧力5MPa、流量20g/分の条件で、連続運転を実施したところ、運転途中で圧力が徐々に上昇し、反応器出口ラインで閉塞が発生した。運転終了後、閉塞部位を特定するために、反応器出口ライン、冷却器、冷却器から減圧装置までのラインを解体したところ、閉塞は冷却器内で発生し、反応器から冷却器までのラインでは閉塞が生じないことが分かった。
【0047】
析出物は、黒色、表面は滑らかで、配管を完全に閉塞したことが分かった。この閉塞物は、バッチ試験で得られる残存固形物とは明らかに異なっており、単に残存固形物が閉塞したのではなく、ある特定の成分のみが析出した可能性を示唆した。
【0048】
反応器出口ラインにおける閉塞を回避するために、温度と固形物析出の関係を検証とするべく、反応器出口から減圧装置受器までの排出ラインの制御温度を変化させ、温度と閉塞、すなわち固形物析出の関係を調べた。その結果、
図5に示されるように、冷却過程における温度を制御して、反応器排出ラインの温度を210℃以上に保った時のみ、配管閉塞・固形物析出が無いことが分かった。
【0049】
次に、
図5のRun−06の処理後固形物を評価するために、反応器から排出ラインを経て減圧装置受器に回収された固形物、すなわち処理後固形物を調べた。その結果、反応器内の被処理物は、未処理スラリーを含み、クラーソンリグニン78%、アセトン可溶成分3%であったのに対し、受器内の処理後固形物は、クラーソンリグニン100%で、アセトン可溶成分は95%であり、処理後固形物は、リグニン誘導体を主成分とした樹脂原料であることが分かった。
【0050】
この結果は、アセトンなどの有機溶媒を使用せずに、樹脂原料を分離できる可能性を示しており、極めて重要である。
図6に、Run−06(
図5)の処理後固形物の評価結果を示した。上述したように、同じ杉木粉を用いたバッチ試験結果では、クラーソンリグニンは97%と高いものの、アセトン可溶成分は38%であったことから、連続処理によるリグニン誘導体の選択的な分離が確認された。これは、アセトン可溶な低分子リグニンであるリグニン誘導体が、210℃以上の亜臨界水に溶解し、選択的に分離回収されていることを示唆するものである。
【0051】
本発明では、リグノセルロース系バイオマスを粉砕し、水と混合することで水スラリーとするが、この場合、水スラリー化方法及び装置は、適宜の手段を使用することができ、その手段は、特に限定されるものではない。本発明は、亜臨界水によるリグノセルロース系バイオマスからリグニン誘導体を主成分とする樹脂原料を高効率に製造する方法及びその装置
において、反応器出口ラインの固形物による閉塞を回避する方法を提供するものである。
【0052】
本発明は、リグノセルロース系バイオマスからリグニン樹脂原料を製造する方法において、リグノセルロース系バイオマスを粉砕し、水と混合することで水スラリーとし、該水スラリーを
300℃以上374℃以下の温度で、その温度における飽和水蒸気圧以上の圧力のもと、30分以上処理を行い、反応終了後、200〜250℃以上で固液分離を行うことを特徴とするものである。
【0053】
本発明では、固体としての高分子リグニン成分を分離し、高温熱水可溶成分としてのヘミセルロース加水分解物、セルロース加水分解物と、樹脂原料となる低分子リグニン誘導体を分けとり、
200〜250℃を保持したまま高温高圧回収受器に受け、受器の中で100℃以下に冷却するか、或いは
200〜250℃の状態から直接大気圧下へフラッシュして100℃以下とする。
【0054】
そして、本発明では、それにより、ヘミセルロース加水分解物とセルロース加水分解物を低温熱水可溶成分のまま分離し、リグニン誘導体を主成分とした樹脂原料をグリース状で分離することにより、反応器出口ラインにおける閉塞を回避して、リグニン誘導体を主成分とした樹脂原料を高効率で製造する方法及びその装置を提供することが可能となり、また、低温熱水可溶成分として回収されたヘミセルロースとセルロースの加水分解物である糖や有機酸を、発酵原料やその他の原料として用いることにより、経済的なリグニン誘導体を主成分とした樹脂原料の連続製造方法を提供することが可能となる。