【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、研磨層および研磨性能の評価は次の方法で実施した。
【0030】
[エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の物性測定]
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の結晶融解熱量は、メトラー社製示差熱量測定装置「TC10A/TC15」を用い、試料パンに試料10mgを秤取して昇温速度10℃/分の条件で20℃から250℃まで測定を行い、約120℃から200℃の間に現れるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の結晶融解に由来する吸熱ピークの熱量を、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の単位質量当たりの値に換算することにより求めた(単位:J/g)。
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の結晶化度は、エー・アンド・デイ社製電子比重計「MD−200S」を用いて、その乾燥状態の密度を測定し、この測定密度、非晶部の理論密度および結晶部の理論密度を用いて下式より計算して求めた。
[結晶化度(%)]=([測定密度]−[非晶部分の理論密度])/([結晶部分の理論密度]−[非晶部分の理論密度])×100
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物のエチレン共重合率およびケン化度は、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物を重ジメチルスルホキシドに溶解させて
1H−NMR測定を行い、ビニルエステル構造に含まれる水素原子のピーク面積およびビニルアルコール構造に含まれる水素原子のピーク面積を測定することにより求めた。
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物中に含まれるアルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量は、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)により測定した。
なお、いずれの測定も、予めエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物を60℃で12時間真空乾燥して水分を除去した後に行った。
【0031】
[研磨層の表面粗さ]
ミツトヨ社製表面粗さ測定器「サーフテストSJ−210」を用い、JIS B0671−2:2002に準拠して、研磨層のRpkおよびRvkを測定し、これらからRpk/Rvkを算出した。
【0032】
[研磨速度および研磨均一性の測定]
研磨前および研磨後の酸化ケイ素膜または銅膜の膜厚をウェハ面内で各49点測定し、各点での研磨速度を求め、これらの研磨速度の平均値を研磨速度とした。この研磨速度は大きいことが好ましい。
研磨均一性は下式により求めた不均一性により評価した。不均一性が小さいほど、研磨パッドは研磨均一性に優れている。
不均一性(%)=(σ/R)×100
(式(1)中、σは49点の研磨速度の標準偏差を表し、Rは49点の研磨速度の平均値を表す。)
酸化ケイ素膜の膜厚は、ナノメトリクス社製膜厚測定装置「Nanospec Model5100」を用いて測定し、銅膜の膜厚は、ナプソン社製膜厚測定装置「RESISTAGE RT−80」を用いて測定した。
【0033】
[スクラッチ測定]
研磨後のウェハ表面を、キーエンス社製レーザー顕微鏡「VK−X200」を使用して倍率1000倍でランダムに20ヶ所を観察して、スクラッチの有無を確認した。
【0034】
[パターンウェハの段差測定]
ミツトヨ社製表面粗さ測定機「SJ−400」を用い、標準スタイラス、測定レンジ 80μm、JIS2001、GAUSSフィルタ、カットオフ値λc 2.5mm、およびカットオフ値λs 8.0μmの設定で測定を行い、断面曲線からパターンウェハの段差を求めた。
【0035】
[酸化ケイ素膜の研磨性能評価]
研磨パッドをエム・エー・ティー社製研磨装置「BC−15」の研磨定盤に貼り付け、アライドマテリアル社製ダイヤモンドドレッサー(ダイヤ番手#100;直径190mm)を用い、純水を150mL/分の速度で流しながらドレッサー回転数140rpm、研磨パッド回転数100rpm、ドレッサー荷重5Nにて60分間研磨パッド表面を研削した(以下「コンディショニング(1)」と称する)。次いで、パッド研磨層の表面粗さ(RpkおよびRvk)を測定した。次に、研磨パッド回転数100rpm、ウェハ回転数99rpm、研磨圧力24kPaの条件において、キャボット社製研磨スラリー「SS25」(砥粒として酸化ケイ素、pH調整剤として水酸化カリウムを含有)100質量部および純水100質量部の混合液を120mL/分の速度で供給しつつ、初期膜厚が1000nmの酸化ケイ素膜(プラズマ化学蒸着により形成されたPETEOS酸化ケイ素膜、モース硬度5)を表面に有する直径4インチのシリコンウェハを60秒間、コンディショニング(1)を行わずに研磨した。その後、コンディショニング(1)を30秒間行った後、ウェハを交換して再度研磨およびコンディショニング(1)を繰り返し、計20枚のウェハを研磨した。20枚目に研磨したウェハについて、研磨速度、研磨均一性およびスクラッチを測定した。また、パッドの使用可能時間を評価するために、上記試験の前後でのパッド溝深さの変化量を測定した。溝深さの変化量が少ないほど、研磨パッドは耐摩耗性に優れ、使用可能時間が長い。さらに、研磨終了後にパッド研磨層の表面粗さ(RpkおよびRvk)を再度測定した。
【0036】
[銅膜の研磨性能評価]
研磨パッドをエム・エー・ティー社製研磨装置「BC−15」の研磨定盤に貼り付け、アライドマテリアル社製ダイヤモンドドレッサー(ダイヤ番手#200;直径190mm)を用い、純水を150mL/分の速度で流しながらドレッサー回転数140rpm、研磨パッド回転数100rpm、ドレッサー荷重5Nにて60分間研磨パッド表面を研削した(以下「コンディショニング(2)」と称する)。次いで、パッド研磨層の表面粗さ(RpkおよびRvk)を測定した。次に、研磨パッド回転数100rpm、ウェハ回転数99rpm、研磨圧力24kPaの条件において、フジミ社製研磨スラリー「PL7101」(砥粒として酸化ケイ素を含有)100質量部および30質量%の過酸化水素水3.5質量部の混合液を200mL/分の速度で供給しつつ、初期膜厚が1500nmの銅膜(電解めっきにより形成された銅膜、モース硬度3)を表面に有する直径4インチのシリコンウェハを60秒間、コンディショニング(2)を行わずに研磨した。その後、コンディショニング(2)を30秒間行った後、ウェハを交換して再度研磨およびコンディショニング(2)を繰り返し、計20枚のウェハを研磨した。20枚目に研磨したウェハについて、研磨速度、研磨均一性およびスクラッチを測定した。また、パッドの使用可能時間を評価するために、上記試験の前後でのパッド溝深さの変化を測定した。溝深さの変化量が少ないほど、研磨パッドは耐摩耗性に優れ、使用可能時間が長い。さらに、研磨終了後にパッド研磨層の表面粗さ(RpkおよびRvk)を再度測定した。
【0037】
[平坦性能評価]
研磨パッド表面を前記コンディショニング(1)の条件により研削した。次に、研磨パッド回転数100rpm、ウェハ回転数99rpm、研磨圧力24kPaの条件において、昭和電工社製研磨スラリー「GPL−C1010」(砥粒として酸化セリウムを含有)5質量部に対して純水95質量部を添加して混合した液を120mL/分の速度で供給しつつ、膜厚が1000nmでパターンのない酸化ケイ素膜(プラズマ化学蒸着により形成されたPETEOS酸化ケイ素膜)を表面に有する直径2インチのシリコンウェハを60秒間、コンディショニング(1)を行わずに研磨した。その後、コンディショニング(1)を30秒間行った後、ウェハを交換して再度研磨およびコンディショニング(1)を繰り返し、計10枚のウェハを研磨した。
【0038】
次いで、線状の凸部と凹部が交互に繰り返し並んだ凹凸パターンのある、SKW社製STI研磨評価用パターンウェハ「SKW3−2」を上記と同条件で1枚研磨した。該パターンウェハは様々なパターンの領域を有するものであり、膜厚および段差の測定対象として凸部幅100μmおよび凹部幅100μmのパターンを選択した。該パターンは、その凸部と凹部の初期段差が600nmであり、パターン凸部がシリコンウェハ上に膜厚15nmの酸化ケイ素膜、その上に膜厚140nmの窒化ケイ素膜、さらにその上に膜厚700nmの酸化ケイ素膜(高密度プラズマ化学蒸着により形成されたHDP酸化ケイ素膜、モース硬度7)を積層した構造であり、パターン凹部はシリコンウェハをエッチングして溝を形成した後に膜厚700nmのHDP酸化ケイ素膜(モース硬度7)を形成した構造である。該パターンウェハの研磨において、研磨によりパターン凸部の窒化ケイ素膜上の酸化ケイ素膜が消失するまでの時間、およびその時点でのパターン凸部と凹部の段差を求めた。パターンウェハの研磨時間が短く、段差が小さいほど、研磨速度および平坦性に優れ好ましい。
【0039】
[参考例1]
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(エチレン共重合率44モル%)の樹脂ペレットを水/メタノール混合溶媒(質量比9/1)に浸漬し、60℃に加温しながら超音波を照射する操作を、溶媒を交換しながら繰り返した後、遠心分離と減圧乾燥により残存溶媒を除去して、樹脂ペレットを精製した。精製した樹脂ペレットを単軸押出成形機に仕込み、T−ダイより押出し、厚さ2mmのシートを成形した後、140℃で8時間熱処理を行い、次いで表面を研削して、厚さ1.8mmの均一なシートを調製した。得られたシート(即ち、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物)の結晶融解熱量は84J/gであった。上記エチレン共重合率におけるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の乾燥状態の測定密度(1.143g/cm
3)、上記エチレン共重合率における非晶部の理論密度(1.106g/cm
3)および結晶部の理論密度(1.150g/cm
3)から計算したその結晶化度は84%であった。また、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物のケン化度は99.7%であり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量は7質量ppmであった。
【0040】
[参考例2]
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(エチレン共重合率48モル%)の樹脂ペレットを水/メタノール混合溶媒(質量比8/2)に浸漬し、60℃に加温しながら超音波を照射する操作を、溶媒を交換しながら繰り返した後、遠心分離と減圧乾燥により残存溶媒を除去して、樹脂ペレットを精製した。精製した樹脂ペレットを単軸押出成形機に仕込み、T−ダイより押出し、厚さ2mmのシートを成形した後、120℃で12時間熱処理を行い、次いで表面を研削して、厚さ1.8mmの均一なシートを調製した。得られたシート(即ち、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物)の結晶融解熱量は81J/gであった。上記エチレン共重合率におけるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の測定密度(1.124g/cm
3)、上記エチレン共重合率における非晶部の理論密度(1.091g/cm
3)および結晶部の理論密度(1.133g/cm
3)から計算したその結晶化度は79%であった。また、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物のケン化度は99.5%であり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量は9質量ppmであった。
【0041】
[参考例3]
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(エチレン共重合率38モル%)の樹脂ペレットを水に浸漬し、80℃に加温しながら超音波を照射する操作を、溶媒を交換しながら繰り返した後、遠心分離と減圧乾燥により残存水を除去して、樹脂ペレットを精製した。精製した樹脂ペレットを単軸押出成形機に仕込み、T−ダイより押出し、厚さ2mmのシートを成形した後、160℃で5時間熱処理を行い、次いで表面を研削して、厚さ1.8mmの均一なシートを調製した。得られたシート(即ち、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物)の結晶融解熱量は94J/gであった。上記エチレン共重合率におけるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の乾燥状態の測定密度(1.167g/cm
3)、上記エチレン共重合率における非晶部の理論密度(1.129g/cm
3)および結晶部の理論密度(1.175g/cm
3)から計算したその結晶化度は83%であった。また、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物のケン化度は99.8%であり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量は6質量ppmであった。
【0042】
[参考例4]
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(エチレン共重合率32モル%)の樹脂ペレットを水に浸漬し、80℃に加温しながら超音波を照射する操作を、溶媒を交換しながら繰り返した後、遠心分離と減圧乾燥により残存水を除去して、樹脂ペレットを精製した。精製した樹脂ペレットを単軸押出成形機に仕込み、T−ダイより押出し、厚さ2mmのシートを成形した後、140℃で5時間熱処理を行い、次いで表面を研削して、厚さ1.8mmの均一なシートを調製した。得られたシート(即ち、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物)の結晶融解熱量は79J/gであった。上記エチレン共重合率におけるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の乾燥状態の測定密度(1.184g/cm
3)、上記エチレン共重合率における非晶部の理論密度(1.152g/cm
3)および結晶部の理論密度(1.200g/cm
3)から計算したその結晶化度は67%であった。また、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物のケン化度は99.7%であり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量は8質量ppmであった。
【0043】
[参考例5]
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(エチレン共重合率27モル%)の樹脂ペレットを水に浸漬し、80℃に加温しながら超音波を照射する操作を、溶媒を交換しながら繰り返した後、遠心分離と減圧乾燥により残存水を除去して、樹脂ペレットを精製した。精製した樹脂ペレットを単軸押出成形機に仕込み、T−ダイより押出し、厚さ2mmのシートを成形した後、160℃で5時間熱処理を行い、次いで表面を研削して、厚さ1.8mmの均一なシートを調製した。得られたシート(即ち、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物)の結晶融解熱量は88J/gであった。上記エチレン共重合率におけるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の乾燥状態の測定密度(1.208g/cm
3)、上記エチレン共重合率における非晶部の理論密度(1.170g/cm
3)および結晶部の理論密度(1.222g/cm
3)から計算したその結晶化度は73%であった。また、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物のケン化度は99.6%であり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量は11質量ppmであった。
【0044】
[参考例6]
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(エチレン共重合率58モル%)の樹脂ペレットを水/メタノール混合溶媒(質量比8/2)に浸漬し、80℃に加温しながら超音波を照射する操作を、溶媒を交換しながら繰り返した後、遠心分離と減圧乾燥により残存水を除去して、樹脂ペレットを精製した。精製した樹脂ペレットを単軸押出成形機に仕込み、T−ダイより押出し、厚さ2mmのシートを成形した後、100℃で24時間熱処理を行い、次いで表面を研削して、厚さ1.8mmの均一なシートを調製した。得られたシート(即ち、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物)の結晶融解熱量は77J/gであった。上記エチレン共重合率におけるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の乾燥状態の測定密度(1.081g/cm
3)、上記エチレン共重合率における非晶部の理論密度(1.052g/cm
3)および結晶部の理論密度(1.090g/cm
3)から計算したその結晶化度は76%であった。また、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物のケン化度は99.5%であり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量は12質量ppmであった。
【0045】
[参考例7]
エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物(エチレン共重合率58モル%)の樹脂ペレット100質量部およびβ−シクロデキストリン(塩水港精糖社製「デキシーパールβ−100」)50質量部の粉末を混合し、ニーダーで混練した後、熱プレスで厚さ2mmのシートを成形した。次いで表面を研削して、厚さ1.8mmの均一なシートを調製した。シートの一部を切断して断面を走査型電子顕微鏡により観察し、異物であるβ−シクロデキストリンの長径を20個以上測定し、その平均値(即ち、平均粒径)を求めたところ、7.5μmであった。エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の結晶融解熱量は48J/gであった。なお、該シートは混合物であるため、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の結晶化度を前記方法により測定できなかったが、一般に結晶化度は結晶融解熱量に比例するため、参考例6と7の結果より結晶化度は47%と推定される。また、β−シクロデキストリンと混練する前に測定したエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物のケン化度は99.2%であり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量は172質量ppmであった。
【0046】
[参考例8]
成型後にシートの熱処理を行わないこと以外は参考例1と同様にして、厚さ1.8mmの均一なシートを得た。得られたシート(即ち、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物)の結晶融解熱量は41J/gであった。上記エチレン共重合率におけるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の乾燥状態の測定密度は1.124g/cm
3であり、上記エチレン共重合率における非晶部の理論密度(1.106g/cm
3)および結晶部の理論密度(1.150g/cm
3)から計算したエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の結晶化度は42%であった。
【0047】
[参考例9]
成型後にシートの熱処理を行わないこと以外は参考例3と同様にして、厚さ1.8mmの均一なシートを得た。得られたシート(即ち、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物)の結晶融解熱量は49J/gであった。上記エチレン共重合率におけるエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の乾燥状態の測定密度は1.151g/cm
3であり、上記エチレン共重合率における非晶部の理論密度(1.129g/cm
3)および結晶部の理論密度(1.175g/cm
3)から計算したエチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物の結晶化度は47%であった。
【0048】
[実施例1]
参考例1で得られたシートの表面に、幅1.0mm、深さ1.0mmの溝を11.0mm間隔で格子状に形成し、直径が38cmの円形状の研磨層を作製した。さらに研磨層の裏面にクッション層として発泡ポリウレタン(厚さ1.5mm、アスカーC硬度60)を貼りあわせて研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により酸化ケイ素膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は210nm/minであり、不均一性は3.6%であり、これらは共に良好であった、スクラッチも確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.01mmと少なく、該パッドは耐摩耗性にも優れていた。研磨前の研磨層のRpkは6.8μm、Rvkは2.4μm、Rpk/Rvkは2.8であり、研磨後の研磨層のRpkは7.1μm、Rvkは2.3μm、Rpk/Rvkは3.1であった。
【0049】
[実施例2]
参考例2で得られたシートの表面に幅1.0mm、深さ0.8mmの溝を6.0mm間隔で同心円状に形成したこと以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により酸化ケイ素膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は221nm/minであり、不均一性は4.6%であり、これらは共に良好であった。スクラッチも確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.01mmと少なく、該パッドは耐摩耗性にも優れていた。研磨前の研磨層のRpkは6.6μm、Rvkは2.5μm、Rpk/Rvkは2.6であり、研磨後の研磨層のRpkは6.7μm、Rvkは2.6μm、Rpk/Rvkは2.6であった。
【0050】
[実施例3]
参考例3で得られたシートを用いること以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により酸化ケイ素膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は203nm/minであり、不均一性は5.9%であり、これらは共に良好であった。スクラッチも確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.02mmと少なく、該パッドは耐摩耗性にも優れていた。研磨前の研磨層のRpkは5.5μm、Rvkは1.4μm、Rpk/Rvkは3.9であり、研磨後の研磨層のRpkは5.6μm、Rvkは1.2μm、Rpk/Rvkは4.7であった。
【0051】
[比較例1]
参考例4で得られたシートを用いること以外は、実施例2と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により酸化ケイ素膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は144nm/minであり、不均一性は12.6%であり、これらは共に劣っていた。スクラッチは確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.04mmとやや多く、該パッドは耐摩耗性がやや劣っていた。研磨前の研磨層のRpkは5.2μm、Rvkは0.6μm、Rpk/Rvkは8.7であり、研磨後の研磨層のRpkは4.8μm、Rvkは0.5μm、Rpk/Rvkは9.6であった。
【0052】
[比較例2]
参考例5で得られたシートを用いること以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により酸化ケイ素膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は91nm/minであり、不均一性は21.4%であり、これらは共に劣っていた。スクラッチは確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.07mmと多く、該パッドは耐摩耗性が劣っていた。研磨前の研磨層のRpkは3.4μm、Rvkは0.3μm、Rpk/Rvkは11.3であり、研磨後の研磨層のRpkは3.2μm、Rvkは0.3μmであり、Rpk/Rvkは10.7であった。
【0053】
[比較例3]
参考例6で得られたシートを用いること以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により酸化ケイ素膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は229nm/minであり、不均一性は7.1%であり、これらは共に良好であった。しかし、研磨後のウェハ表面にスクラッチが確認された。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.01mmと少なく、該パッドは耐摩耗性に優れていた。研磨前の研磨層のRpkは6.8μm、Rvkは2.9μm、Rpk/Rvkは2.3であり、研磨後の研磨層のRpkは6.9μm、Rvkは3.1μm、Rpk/Rvkは2.2であった。
【0054】
[比較例4]
参考例7で得られたシートを用いること以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により酸化ケイ素膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は172nm/minであり、不均一性は9.8%であり、これらは共にやや劣っていた。研磨後のウェハ表面にスクラッチも確認された。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.04mmとやや多く、該パッドは耐摩耗性がやや劣っていた。研磨前の研磨層のRpkは5.1μm、Rvkは6.2μm、Rpk/Rvkは0.82であり、研磨後の研磨層のRpkは4.9μm、Rvkは5.8μm、Rpk/Rvkは0.84であった。
【0055】
[比較例5]
参考例8で得られたシートを用いること以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により酸化ケイ素膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は165nm/minであり、不均一性は11.4%であり、これらは共に劣っていた。スクラッチは確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.04mmとやや多く、該パッドは耐摩耗性がやや劣っていた。研磨前の研磨層のRpkは5.5μm、Rvkは1.3μm、Rpk/Rvkは4.2であり、研磨後の研磨層のRpkは5.3μm、Rvkは1.1μm、Rpk/Rvkは4.8であった。
【0056】
[比較例6]
参考例9で得られたシートを用いること以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により酸化ケイ素膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は138nm/minであり、不均一性は14.2%であり、これらは共に劣っていた。スクラッチは確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.06mmと多く、該パッドは耐摩耗性がやや劣っていた。研磨前の研磨層のRpkは4.6μm、Rvkは0.5μm、Rpk/Rvkは9.2であり、研磨後の研磨層のRpkは4.4μm、Rvkは0.5μm、Rpk/Rvkは8.8であった。
【0057】
[実施例4]
実施例1と同様にして得られたパッド(参考例1で得られたシートから研磨層を作製)を用いて上記方法により銅膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は903nm/minであり、不均一性は3.5%であり、これらは共に良好であった。スクラッチも確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.01mmと少なく、該パッドは耐摩耗性にも優れていた。研磨前の研磨層のRpkは2.5μm、Rvkは0.6μm、Rpk/Rvkは4.2であり、研磨後の研磨層のRpkは2.4μm、Rvkは0.5μm、Rpk/Rvkは4.8であった。
【0058】
[実施例5]
参考例1で得られたシートを用いること以外は、実施例2と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により銅膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は959nm/minであり、不均一性は4.4%であり、これらは共に良好であった。スクラッチも確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.01mmと少なく、該パッドは耐摩耗性にも優れていた。研磨前の研磨層のRpkは2.1μm、Rvkは0.4μm、Rpk/Rvkは5.3であり、研磨後の研磨層のRpkは2.2μm、Rvkは0.4μm、Rpk/Rvkは5.5であった。
【0059】
[実施例6]
実施例3と同様にして得られたパッド(参考例3で得られたシートから研磨層を作製)を用いて上記方法により銅膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は886nm/minであり、不均一性は4.2%であり、これらは共に良好であった。スクラッチも確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.01mmと少なく、該パッドは耐摩耗性にも優れていた。研磨前の研磨層のRpkは2.2μm、Rvkは0.5μm、Rpk/Rvkは4.4であり、研磨後の研磨層のRpkは2.0μm、Rvkは0.4μm、Rpk/Rvkは5.0であった。
【0060】
[実施例7]
参考例3で得られたシートを用いること以外は、実施例2と同様にして研磨パッドを作製した。得られたパッドを用いて上記方法により銅膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は956nm/minであり、不均一性は4.5%であり、これらは共に良好であった。スクラッチも確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.01mmと少なく、該パッドは耐摩耗性にも優れていた。研磨前の研磨層のRpkは2.0μm、Rvkは0.4μm、Rpk/Rvkは5.0であり、研磨後の研磨層のRpkは1.8μm、Rvkは0.4μm、Rpk/Rvkは4.5であった。
【0061】
[比較例7]
比較例2と同様にして得られたパッド(参考例5で得られたシートから研磨層を作製)を用いて上記方法により銅膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は687nm/minであり、不均一性は9.8%であり、これらは共にやや劣っていた。スクラッチは確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.06mmと多く、該パッドは耐摩耗性が劣っていた。研磨前の研磨層のRpkは2.0μm、Rvkは0.2μm、Rpk/Rvkは10.0であり、研磨後の研磨層のRpkは1.6μm、Rvkは0.1μm、Rpk/Rvkは16.0であった。
【0062】
[比較例8]
比較例3と同様にして得られたパッド(参考例6で得られたシートから研磨層を作製)を用いて上記方法により銅膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は972nm/minであり、不均一性は4.9%であり、これらは共に良好であった。しかし、研磨後のウェハ表面にスクラッチが確認された。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.01mmと少なく、該パッドは耐摩耗性に優れていた。研磨前の研磨層のRpkは2.3μm、Rvkは2.5μm、Rpk/Rvkは0.92であり、研磨後の研磨層のRpkは2.3μm、Rvkは2.4μm、Rpk/Rvkは0.96であった。
【0063】
[比較例9]
比較例4と同様にして得られたパッド(参考例7で得られたシートから研磨層を作製)を用いて上記方法により銅膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は863nm/minであり、不均一性は6.1%であり、これらは共に良好であった。しかし、研磨後のウェハ表面にスクラッチが確認された。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.03mmであった。研磨前の研磨層のRpkは2.3μm、Rvkは3.0μm、Rpk/Rvkは0.77であり、研磨後の研磨層のRpkは2.2μm、Rvkは2.7μm、Rpk/Rvkは0.81であった。
【0064】
[比較例10]
比較例6と同様にして得られたパッド(参考例9で得られたシートを用いて研磨層を作製)を用いて上記方法により銅膜の研磨性能を評価した結果、研磨速度は727nm/minであり、不均一性は10.7%であり、これらは共にやや劣っていた。スクラッチは確認されなかった。また、パッド中心から100mmの位置における溝深さの変化量は0.04mmとやや多く、該パッドは耐摩耗性が劣っていた。研磨前の研磨層のRpkは1.9μm、Rvkは0.2μm、Rpk/Rvkは9.5であり、研磨後の研磨層のRpkは1.8μm、Rvkは0.2μm、Rpk/Rvkは9.0であった。
【0065】
参考例1〜9で得られたシートの物性を表1に、実施例1〜7および比較例1〜10の結果を表2に示す。なお、表面粗さは研磨後の測定値を記載した。また、表2には研磨層作製に使用したシートの参考例の番号も記載した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
実施例1〜7で用いた本発明の研磨パッドは、研磨速度、研磨均一性(不均一性)および耐摩耗性(研磨前後での溝深さの変化量)が全て良好であり、これらを用いても被研磨膜にスクラッチが発生しなかった。一方、比較例1〜10で用いた本発明の範囲外の研磨パッドは、研磨速度、研磨均一性、スクラッチ、耐摩耗性の全てが良好なものは無かった。また、比較例3、4、8および9では被研磨膜にスクラッチが発生した。
【0069】
[実施例8]
実施例2と同様にして得られたパッド(参考例2で得られたシートから研磨層を作製)を用いて、上記した方法により平坦性能を評価した結果、パターン凸部の窒化ケイ素膜上の酸化ケイ素膜が消失するまでの研磨時間は165秒であり、その時点でのパターン凸部と凹部の段差は160nmであり、該パッドの研磨速度および平坦性はともに優れていた。
【0070】
[実施例9]
実施例7と同様にして得られたパッド(参考例3で得られたシートから研磨層を作製)を用いて、上記した方法により平坦性能を評価した結果、パターン凸部の窒化ケイ素膜上の酸化ケイ素膜が消失するまでの研磨時間は155秒であり、その時点でのパターン凸部と凹部の段差は150nmであり、該パッドの研磨速度および平坦性はともに優れていた。
【0071】
[比較例11]
比較例2と同様にして得られたパッド(参考例5で得られたシートから研磨層を作製)を用いて、上記した方法により平坦性能を評価した結果、パターン凸部の窒化ケイ素膜上の酸化ケイ素膜が消失するまでの研磨時間は210秒であり、その時点でのパターン凸部と凹部の段差は240nmであり、該パッドの研磨速度および平坦性はともにやや劣っていた。
【0072】
[比較例12]
比較例3と同様にして得られたパッド(参考例6で得られたシートから研磨層を作製)を用いて、上記した方法により平坦性能を評価した結果、パターン凸部の窒化ケイ素膜上の酸化ケイ素膜が消失するまでの研磨時間は270秒であり、研磨速度が劣っておりその時点でのパターン凸部と凹部の段差は240nmであり、該パッドの研磨速度は劣っており、その平坦性はやや劣っていた。
【0073】
[比較例13]
クッション層を下層に有する市販の発泡ポリウレタン研磨パッド(ニッタハース社製「IC1400」)を用いて、上記した方法により平坦性能を評価した結果、パターン凸部の窒化ケイ素膜上の酸化ケイ素膜が消失するまでの研磨時間は330秒であり、その時点でのパターン凸部と凹部の段差は280nmであり、該パッドの研磨速度および平坦性はともに劣っていた。
【0074】
実施例8、9および比較例11〜13の結果を表3に示す。なお表3には、研磨層作製に使用したシートの参考例の番号等も記載する。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例8、9および比較例11〜13の対比から分かるように、本発明の研磨パッドは研磨速度および平坦性にも優れる。