(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
常温で粘弾性を有する高分子材料からなる粘弾性マトリックス中に圧電体粒子を分散してなる高分子複合圧電体、前記高分子複合圧電体の一方の面に形成された、面積が前記高分子複合圧電体以下である上部薄膜電極、前記上部薄膜電極の表面に形成される、面積が前記上部薄膜電極以上である上部保護層、前記高分子複合圧電体の前記上部薄膜電極の逆面に形成される、面積が前記高分子複合圧電体以下である下部薄膜電極、および、前記下部薄膜電極の表面に形成される、面積が前記下部薄膜電極以上である下部保護層を有する圧電積層体と、
前記上部薄膜電極の一部に積層されて、少なくとも一部が前記高分子複合圧電体の面方向外部に位置する上部電極引出し用金属箔と、
前記下部薄膜電極の一部に積層されて、少なくとも一部が前記高分子複合圧電体の面方向外部に位置する下部電極引出し用金属箔と、
前記上部薄膜電極あるいはさらに上部電極引出し用金属箔と前記高分子複合圧電体との間に、一部が前記高分子複合圧電体の面方向の端部から突出して設けられる絶縁体層と、を有することを特徴とする電気音響変換フィルム。
前記上部電極引出し用金属箔が、折り返されて、前記上部電極引出し部を挟む構成、および、前記下部電極引出し用金属箔が、折り返されて、前記下部電極引出し部を挟む構成の、少なくとも一方の構成を有する請求項3または4に記載の電気音響変換フィルム。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック等の可撓性基板を用いたフレキシブルディスプレイに関する研究が進められている。
かかるフレキシブルディスプレイの基板としては、例えば、特許文献1において透明プラスチックフィルムにガスバリア層や透明導電層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が開示されている。
フレキシブルディスプレイは、従来のガラス基板を用いたディスプレイと比較して、軽量性、薄さ、可撓性等において優位性を持っており、円柱等の曲面に備えることも可能である。また、丸めて収納することが可能であるため、大画面であっても携帯性を損なうことがなく、広告等の掲示用や、PDA(携帯情報端末)等の表示装置として注目されている。
【0003】
このようなフレキシブルディスプレイを、テレビジョン受像機等のように画像と共に音声を再生する画像表示装置兼音声発生装置として使用する場合、音声を発生するための音響装置であるスピーカが必要である。
ここで、従来のスピーカ形状としては、漏斗状のいわゆるコーン型や、球面状のドーム型等が一般的である。しかしながら、これらのスピーカを上述のフレキシブルディスプレイに内蔵しようとすると、フレキシブルディスプレイの長所である軽量性や可撓性を損なう虞れがある。また、スピーカを外付けにした場合、持ち運び等が面倒であり、曲面状の壁に設置することが難しくなり美観を損ねる虞れもある。
【0004】
このような中、軽量性や可撓性を損なうことなくフレキシブルディスプレイに一体化可能なスピーカとして、シート状で可撓性を有する圧電フィルムを採用することが、例えば、特許文献2に開示されている。
圧電フィルムとは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:Poly VinyliDene Fluoride)の一軸延伸フィルムを高電圧で分極処理したもので、印加電圧に応答して伸縮する性質を有している。
【0005】
圧電フィルムをスピーカとして採用するためには、フィルム面に沿った伸縮運動をフィルム面の振動に変換する必要がある。この伸縮運動から振動への変換は、圧電フィルムを湾曲させた状態で保持することにより達成され、これにより、圧電フィルムをスピーカとして機能させることが可能になる。
スピーカ用振動板の最低共振周波数f
0は、下記式で与えられるのは周知である。ここで、sは振動系のスチフネス、mは質量である。
【数1】
このとき、圧電フィルムの湾曲程度すなわち湾曲部の曲率半径が大きくなるほど機械的なスチフネスsが下がるため、最低共振周波数f
0は小さくなる。すなわち、圧電フィルムの曲率半径によってスピーカの音質(音量、周波数特性)が変わることになる。
この問題を解決するため、特許文献2においては、圧電フィルムの湾曲度合いを計測するセンサーを備え、圧電フィルムの湾曲度合いに応じて、音声信号の周波数帯域別に振幅を所定量増減して補正することで安定した音声を出力可能にしている。
【0006】
ところで、圧電フィルムからなるスピーカを一体化した、平面視形状が長方形のフレキシブルディスプレイを、携帯用として新聞や雑誌のように書類感覚で緩く撓めた状態で把持し、画面表示を縦横切り替えて使用する場合、画像表示面は縦方向のみならず横方向にも湾曲できることが好ましい。
ところが、一軸延伸されたPVDFからなる圧電フィルムは、その圧電特性に面内異方性があるため、同じ曲率でも曲げる方向によって音質が大きく異なってしまう。
さらに、PVDFはコーン紙等の一般的なスピーカ用振動板に比べ損失正接が小さいため、共振が強く出やすく、起伏の激しい周波数特性となる。従って、曲率の変化に伴い最低共振周波数f
0が変化した際の音質の変化量も大きくなってしまう。
以上のように、PVDF固有の課題によって、上述の特許文献2に開示された音質補正手段では、安定した音声を再生することが困難であった。
【0007】
一方、圧電特性に面内異方性がない、シート状で可撓性を有する圧電材料としては、高分子マトリックス中に圧電セラミックスを分散させた高分子複合圧電体が挙げられる。
高分子複合圧電体の場合、圧電セラミックスは硬いが高分子マトリックスは柔らかいため、圧電セラミックスの振動が全体に伝わる前にエネルギーが吸収されてしまう可能性がある。これは力学的振動エネルギーの伝達効率といわれるもので、この伝達効率を良くするには、高分子複合圧電体を硬くする必要があり、そのためには圧電セラミックスをマトリックス中に体積分率で少なくとも40〜50%以上入れる必要がある。
【0008】
例えば、非特許文献1には、圧電体であるPZTセラミックスの粉末を溶媒流延または熱間混練によりPVDFと混合させた高分子複合圧電体が、PVDFのしなやかさとPZTセラミックスの高い圧電特性とをある程度両立することが開示されている。
しかしながら、圧電特性、すなわち伝達効率を高めるためにPZTセラミックスの割合を増やすと硬く、脆くなるという機械的欠点が存在する。
【0009】
この問題を解決するため、例えば非特許文献2には、PVDFにフッ素ゴムを添加することで可撓性を維持させる試みが開示されている。
この方法は、可撓性という観点では一定の効果が得られる。しかしながら、一般に、ゴムはヤング率が1〜10MPaと極めて小さいため、添加することで高分子複合圧電体の硬さが低下し、結果として振動エネルギーの伝達効率も低下してしまう。
【0010】
このように、従来の高分子複合圧電体をスピーカ用振動板として用いる場合、可撓性を持たせようとすると、エネルギー効率の低下が避けられず、フレキシブルディスプレー用スピーカとして十分な性能を発揮することができなかった。
【0011】
以上より、フレキシブルディスプレイ用のスピーカとして用いる高分子複合圧電体は、次の用件を具備したものであるのが好ましい。
(i) 可撓性
例えば、携帯用として新聞や雑誌のように書類感覚で緩く撓めた状態で把持する場合、絶えず外部から、数Hz以下の比較的ゆっくりとした、大きな曲げ変形を受けることになる。この時、高分子複合圧電体が硬いと、その分大きな曲げ応力が発生し、高分子マトリックスと圧電体粒子との界面で亀裂が発生し、やがて破壊に繋がる恐れがある。従って、高分子複合圧電体には適度な柔らかさが求められる。また、歪みエネルギーを熱として外部へ拡散できれば応力を緩和することができる。従って、高分子複合圧電体の損失正接が適度に大きいことが求められる。
(ii) 音質
スピーカは、20Hz〜20kHzのオーディオ帯域の周波数で圧電体粒子を振動させ、その振動エネルギーによって振動板(高分子複合圧電体)全体が一体となって振動することで音が再生される。従って、振動エネルギーの伝達効率を高めるために高分子複合圧電体には適度な硬さが求められる。また、スピーカの周波数特性が平滑であれば、曲率の変化に伴い最低共振周波数f
0が変化した際の音質の変化量も小さくなる。従って、高分子複合圧電体の損失正接は適度に大きいことが求められる。
【0012】
以上をまとめると、フレキシブルディスプレイ用のスピーカとして用いる高分子複合圧電体は、20Hz〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことが求められる。また、高分子複合圧電体の損失正接は、20kHz以下の全ての周波数の振動に対して、適度に大きいことが求められる。
【0013】
この要求に応えるために、本発明者らは、常温付近で貯蔵弾性率E’に大きな周波数分散を有すると同時に、損失正接Tanδに極大値を有する粘弾性材料に着目し、これをマトリックス材に適用することを鋭意検討した。その結果、粘弾性材料を用いることで、20Hz〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振舞うことが可能で、さらに20kHz以下の全ての周波数の振動に対して適度な損失正接を有する、高分子複合圧電体からなる電気音響変換フィルムの創案に至った。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の電気音響変換フィルムについて、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0025】
図1に、本発明の電気音響変換フィルム(以下、変換フィルムとする)の一例を概念的に示す。
図1に示す(電気音響)変換フィルム10は、基本的に、圧電積層体12と、絶縁シート14と、上部電極引出し用金属箔16と、下部電極引出し用金属箔18とを有して構成される。
【0026】
このような変換フィルム10は、スピーカ、マイクロフォン、および、ギター等の楽器に用いられるピックアップなどの各種の音響デバイス(音響機器)において、電気信号に応じた振動による音の発生(再生)や、音による振動を電気信号に変換するために利用されるものである。
【0027】
図2(A)に概念的に示すように、変換フィルム10において、圧電積層体12は、圧電性を有するシート状物である圧電体層20と、圧電体層20の一方の面(図示例では上面)に形成される上部薄膜電極24と、上部薄膜電極24の上に形成される上部保護層26と、圧電体層20の上部薄膜電極24と逆面に形成される下部薄膜電極30と、下部薄膜電極30の上(
図2では下面)に形成される下部保護層32とを有して構成される。
【0028】
また、本発明の変換フィルム10において、圧電体層(高分子複合圧電体)20は、
図2(A)に概念的に示すように、常温で粘弾性を有する高分子材料からなる粘弾性マトリックス36中に、圧電体粒子38を均一に分散してなるものである。なお、本明細書において、「常温」とは、0〜50℃程度の温度域を指す。
また、後述するが、圧電体層20は、好ましくは、分極処理されている。
【0029】
前述のように、フレキシブル性を有するスピーカに用いる高分子複合圧電体は、20Hz〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことが求められる。また、高分子複合圧電体の損失正接は、20kHz以下の全ての周波数の振動に対して、適度に大きいことが求められる。
【0030】
一般に、高分子固体は粘弾性緩和機構を有しており、温度上昇あるいは周波数の低下とともに大きなスケールの分子運動が貯蔵弾性率(ヤング率)の低下(緩和)あるいは損失弾性率の極大(吸収)として観測される。その中でも、非晶質領域の分子鎖のミクロブラウン運動によって引き起こされる緩和は、主分散と呼ばれ、非常に大きな緩和現象が見られる。この主分散が起きる温度がガラス転移点(Tg)であり、最も粘弾性緩和機構が顕著に現れる。
高分子複合圧電体(圧電体層20)において、ガラス転移点が常温にある高分子材料、言い換えると、常温で粘弾性を有する高分子材料をマトリックスに用いることで、20Hz〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の遅い振動に対しては柔らかく振舞う高分子複合圧電体が実現する。特に、この振舞いが好適に発現する等の点で、周波数1Hzでのガラス転移温度が常温にある高分子材料を、高分子複合圧電体のマトリックスに用いるのが好ましい。
【0031】
常温で粘弾性を有する高分子材料としては、公知の各種のものが利用可能である。好ましくは、常温において、動的粘弾性試験による周波数1Hzにおける損失正接Tanδの極大値が、0.5以上有る高分子材料を用いる。
これにより、高分子複合圧電体が外力によってゆっくりと曲げられた際に、最大曲げモーメント部における高分子マトリックス/圧電体粒子界面の応力集中が緩和され、高い可撓性が期待できる。
【0032】
また、高分子材料は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において100MPa以上、50℃において10MPa以下であることが好ましい。
これにより、高分子複合圧電体が外力によってゆっくりと曲げられた際に発生する曲げモーメントが低減できると同時に、20Hz〜20kHzの音響振動に対しては硬く振る舞うことができる。
【0033】
また、高分子材料は、比誘電率が25℃において10以上有ると、より好適である。これにより、高分子複合圧電体に電圧を印加した際に、高分子マトリックス中の圧電体粒子にはより高い電界が掛かるため、大きな変形量が期待できる。
しかしながら、その反面、良好な耐湿性の確保等を考慮すると、高分子材料は、比誘電率が25℃において10以下であるのも、好適である。
【0034】
このような条件を満たす高分子材料としては、シアノエチル化ポリビニルアルコール(シアノエチル化PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニリデンクロライドコアクリロニトリル、ポリスチレン−ビニルポリイソプレンブロック共重合体、ポリビニルメチルケトン、および、ポリブチルメタクリレート等が例示される。また、これらの高分子材料としては、ハイブラー5127(クラレ社製)などの市販品も、好適に利用可能である。
なお、これらの高分子材料は、1種のみを用いてもよく、複数種を併用(混合)して用いてもよい。
【0035】
このような常温で粘弾性を有する高分子材料を用いる粘弾性マトリックス36は、必要に応じて、複数の高分子材料を併用してもよい。
すなわち、粘弾性マトリックス36には、誘電特性や機械特性の調節等を目的として、シアノエチル化PVA等の粘弾性材料に加え、必要に応じて、その他の誘電性高分子材料を添加しても良い。
【0036】
添加可能な誘電性高分子材料としては、一例として、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体およびポリフッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系高分子、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシサッカロース、シアノエチルヒドロキシセルロース、シアノエチルヒドロキシプルラン、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルアミロース、シアノエチルポリアクリルアミド、シアノエチルポリアクリレート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルサッカロースおよびシアノエチルソルビトール等のシアノ基あるいはシアノエチル基を有するポリマー、ニトリルゴムやクロロプレンゴム等の合成ゴム等が例示される。
中でも、シアノエチル基を有する高分子材料は、好適に利用される。
なお、圧電体層20の粘弾性マトリックス36において、シアノエチル化PVA等の常温で粘弾性を有する材料に加えて添加される誘電性ポリマーは、1種に限定はされず、複数種を添加してもよい。
また、誘電性ポリマー以外にも、ガラス転移点(Tg)を調節する目的で、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリブテン、イソブチレン、等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、マイカ等の熱硬化性樹脂を添加しても良い。
さらに、粘着性を向上する目的で、ロジンエステル、ロジン、テルペン、テルペンフェノール、石油樹脂等の粘着付与剤を添加しても良い。
【0037】
圧電体層20の粘弾性マトリックス36において、シアノエチル化PVA等の粘弾性材料以外のポリマーを添加する際の添加量には、特に限定は無いが、粘弾性マトリックス36に占める割合で30質量%以下とするのが好ましい。
これにより、粘弾性マトリックス36における粘弾性緩和機構を損なうことなく、添加する高分子材料の特性を発現できるため、高誘電率化、耐熱性の向上、圧電体粒子38や電極層との密着性向上等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0038】
なお、本発明の変換フィルム10において、圧電体層(高分子複合圧電体)のマトリックスとしては、このような粘弾性マトリックス36以外にも、公知の高分子複合圧電体に利用されてる高分子材料が、各種、利用可能である。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シアノエチル化プルラン、ナイロン等が例示される。
【0039】
圧電体粒子38は、ペロブスカイト型あるいはウルツ鉱型の結晶構造を有するセラミックス粒子からなるものである。
圧電体粒子38を構成するセラミックス粒子としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛(PLZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)、および、チタン酸バリウムとビスマスフェライト(BiFe3)との固溶体(BFBT)等が例示される。
【0040】
このような圧電体粒子38の粒径は、変換フィルム10のサイズや用途に応じて、適宜、選択すれば良いが、本発明者の検討によれば、1〜20μmが好ましい。
圧電体粒子38の粒径を上記範囲とすることにより、高い圧電特性とフレキシビリティとを両立できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0041】
図1等においては、圧電体層20中の圧電体粒子38は、粘弾性マトリックス36中に、規則性を持って分散されているが、本発明は、これに限定はされない。
すなわち、圧電体層20中の圧電体粒子38は、好ましくは均一に分散されていれば、粘弾性マトリックス36中に不規則に分散されていてもよい。
【0042】
本発明の変換フィルム10において、圧電体層20(高分子複合圧電体)中における粘弾性マトリックス36と圧電体粒子38との量比は、変換フィルム10のサイズ(面方向の大きさ)や厚さ、変換フィルム10の用途、変換フィルム10に要求される特性等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、本発明者の検討によれば、圧電体層20中における圧電体粒子38の体積分率は、30〜70%が好ましく、特に、50%以上とするのが好ましく、従って、50〜70%とするのが、より好ましい。
粘弾性マトリックス36と圧電体粒子38との量比を上記範囲とすることにより、高い圧電特性とフレキシビリティとを両立できる等の点で好ましい結果を得ることができる。
【0043】
また、本発明の変換フィルム10において、圧電体層20の厚さにも、特に限定はなく、変換フィルム10のサイズ、変換フィルム10の用途、変換フィルム10に要求される特性等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、本発明者の検討によれば、圧電体層20の厚さは10〜200μm、特に、15〜100μmが好ましい。
圧電体層20の厚さを、上記範囲とすることにより、剛性の確保と適度な柔軟性との両立等の点で好ましい結果を得ることができる。
なお、圧電体層20は、分極処理(ポーリング)されているのが好ましいのは、前述のとおりである。分極処理に関しては、後に詳述する。
【0044】
図2(A)に示すように、本発明の変換フィルム10において、圧電積層体12は、このような圧電体層20の一面に上部薄膜電極24を形成し、その上に上部保護層26を形成し、圧電体層20の他方の面に下部薄膜電極30を形成し、その上に下部保護層32を形成してなる構成を有する。
すなわち、圧電積層体12は、圧電体層20を上部薄膜電極24および下部薄膜電極30および16で挟持し、この積層体を、上部保護層26および下部保護層32で挟持してなる構成を有する。
【0045】
変換フィルム10において、上部保護層26および下部保護層32は、圧電体層20に適度な剛性と機械的強度を付与する役目を担っている。すなわち、本発明の変換フィルム10において、粘弾性マトリックス36と圧電体粒子38とからなる圧電体層20(高分子複合圧電体)は、ゆっくりとした曲げ変形に対しては、非常に優れた可撓性を示す一方で、用途によっては、剛性や機械的強度が不足する場合がある。変換フィルム10は、それを補うために上部保護層26および下部保護層32が設けられる。
【0046】
上部保護層26および下部保護層32には、特に限定はなく、各種のシート状物が利用可能であり、一例として、各種の樹脂フィルム(プラスチックフィルム)が好適に例示される。中でも、優れた機械的特性および耐熱性を有するなどの理由により、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、および、環状オレフィン系樹脂が好適に利用される。
【0047】
上部保護層26および下部保護層32の厚さにも、特に、限定は無い。また、上部保護層26および下部保護層32の厚さは、基本的に同じであるが、異なってもよい。
ここで、上部保護層26および下部保護層32の剛性が高過ぎると、圧電体層20の伸縮を拘束するばかりか、可撓性も損なわれるため、機械的強度やシート状物としての良好なハンドリング性が要求される場合を除けば、上部保護層26および下部保護層32は、薄いほど有利である。
なお、上部保護層26および下部保護層32が非常に薄く、ハンドリング性が悪い場合には、剥離可能なセパレータ(支持体)付きの上部保護層26および/または下部保護層32を用いてもよい。このセパレータに関しては、後述する
図3(A)および
図3(E)で例示するシート状物46aおよび46cに関しても、同様である。セパレータとしては、厚さ25〜100μm程度のPETフィルム等が例示される。
このセパレータは、基本的に、上部保護層26および/または下部保護層32を変換フィルム10に貼着したら剥がせば良いが、後述する側面絶縁層60や第2上部保護層64等を設ける場合には、これらを設ける直前に、セパレータを剥がすのが好ましい。
【0048】
本発明者の検討によれば、上部保護層26および下部保護層32の厚さが、圧電体層20の厚さの2倍以下であれば、剛性の確保と適度な柔軟性との両立等の点で好ましい結果を得ることができる。
例えば、圧電体層20の厚さが50μmで上部保護層26および下部保護層32がPETからなる場合、上部保護層26および下部保護層32の厚さは、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、中でも25μm以下とするのが好ましい
【0049】
本発明の変換フィルム10において、圧電体層20と上部保護層26との間には上部薄膜電極24(以下、上部電極24とも言う)が、圧電体層20と下部保護層32との間には下部薄膜電極30(以下、下部電極30とも言う)が、それぞれ形成される。
上部電極24および下部電極30は、変換フィルム10(圧電体層20)に電界を印加するために設けられる。
【0050】
本発明において、上部電極24および下部電極30の形成材料には、特に、限定はなく、各種の導電体が利用可能である。具体的には、炭素、パラジウム、鉄、錫、アルミニウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、クロムおよびモリブデン等や、これらの合金、酸化インジウムスズ等が例示される。中でも、銅、アルミニウム、金、銀、白金、および、酸化インジウムスズのいずれかは、好適に例示される。
【0051】
また、上部電極24および下部電極30の形成方法にも、特に限定はなく、真空蒸着やスパッタリング等の気相堆積法(真空成膜法)やめっきによる成膜や、上記材料で形成された箔を貼着する方法等、公知の方法が、各種、利用可能である。
【0052】
中でも特に、変換フィルム10の可撓性が確保できる等の理由で、真空蒸着によって成膜された銅やアルミニウムの薄膜は、上部電極24および下部電極30として、好適に利用される。その中でも特に、真空蒸着による銅の薄膜は、好適に利用される。
上部電極24および下部電極30の厚さには、特に、限定は無い。また、上部電極24および下部電極30の厚さは、基本的に同じであるが、異なってもよい。
【0053】
ここで、前述の上部保護層26および下部保護層32と同様に、上部電極24および下部電極30の剛性が高過ぎると、圧電体層20の伸縮を拘束するばかりか、可撓性も損なわれる。そのため、上部電極24および下部電極30は、電気抵抗が高くなり過ぎない範囲であれば、薄いほど有利である。
【0054】
ここで、本発明者の検討によれば、上部電極24および下部電極30の厚さとヤング率との積が、上部保護層26および下部保護層32の厚さとヤング率との積を下回れば、可撓性を大きく損なうことがないため、好適である。
例えば、上部保護層26および下部保護層32がPET(ヤング率:約6.2GPa)で、上部電極24および下部電極30が銅(ヤング率:約130GPa)からなる組み合わせの場合、上部保護層26および下部保護層32の厚さが25μmだとすると、上部電極24および下部電極30の厚さは、1.2μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、中でも0.1μm以下とするのが好ましい。
【0055】
また、上部電極24および/または下部電極30は、必ずしも、圧電体層20(上部保護層26および/または下部保護層32)の全面に対応して形成される必要はない。
すなわち、上部電極24および下部電極30の少なくとも一方が、例えば圧電体層20よりも小さく、変換フィルム10の周辺部において、圧電体層20と保護膜とが、直接、接触するような構成でもよい。
後に詳述するが、
図1および
図2(A)〜
図2(C)に示す例においては、下部電極30と下部保護層32とが同じ形状(同サイズ)を有し、下部電極30と圧電体層20とが同じ主面(後述する下部出島部42を除く面)を有し、上部電極24と上部保護層26とが同じ形状(同サイズ)で、かつ、下部電極30よりも一回り小さい。
【0056】
前述のように、本発明の変換フィルム10に用いられる圧電積層体12は、常温で粘弾性を有する粘弾性マトリックス36に圧電体粒子38を分散してなる圧電体層20(高分子複合圧電体)を、上部電極24および下部電極30で挟持し、さらに、この積層体を、上部保護層26および下部保護層32を挟持してなる構成を有する。
このような圧電積層体12は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの損失正接(Tanδ)が0.1以上となる極大値が常温に存在するのが好ましい。
これにより、変換フィルム10が外部から数Hz以下の比較的ゆっくりとした、大きな曲げ変形を受けたとしても、歪みエネルギーを効果的に熱として外部へ拡散できるため、高分子マトリックスと圧電体粒子との界面で亀裂が発生するのを防ぐことができる。
【0057】
圧電積層体12は、動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)が、0℃において10〜30GPa、50℃において1〜10GPaであるのが好ましい。
これにより、常温で変換フィルム10が貯蔵弾性率(E’)に大きな周波数分散を有することができる。すなわち、20Hz〜20kHzの振動に対しては硬く、数Hz以下の振動に対しては柔らかく振る舞うことができる。
【0058】
また、圧電積層体12は、厚さと動的粘弾性測定による周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)との積が、0℃において1.0×10
6〜2.0×10
6(1.0E+06〜2.0E+06)N/m、50℃において1.0×10
5〜1.0×10
6(1.0E+05〜1.0E+06)N/mであるのが好ましい。
これにより、変換フィルム10が可撓性および音響特性を損なわない範囲で、適度な剛性と機械的強度を備えることができる。
【0059】
さらに、圧電積層体12は、動的粘弾性測定から得られたマスターカーブにおいて、25℃、周波数1kHzにおける損失正接(Tanδ)が、0.05以上であるのが好ましい。
これにより、変換フィルム10を用いたスピーカの周波数特性が平滑になり、スピーカの曲率の変化に伴い最低共振周波数f
0が変化した際の音質の変化量も小さくできる。
【0060】
前述のように、本発明の変換フィルム10は、このような圧電積層体12に加え、絶縁シート14、上部電極引出し用金属箔16および下部電極引出し用金属箔18を有する。
絶縁シート14は、例えばポリイミド製のテープなど、絶縁性を有する材料で形成されるシート状物である。また、上部電極引出し用金属箔16および下部電極引出し用金属箔18は、例えば銅箔膜など、導電性を有する金属材料で形成されるシート状物である。
【0061】
前述のように、図示例の変換フィルム10において、上部電極24および上部保護層26は、同形状である。また、上部電極24および上部保護層26には、矩形の主面から面方向に突出して、凸状の上部電極引出し部24aおよび26a(以下、両者をまとめて上部出島部40とも言う)が形成される(
図4(C)参照)。
図2(B)に示すように、上部電極引出し用金属箔(以下、上部金属箔とも言う)16は、この上部出島部40において、上部電極24に積層して設けられる。また、図示例においては、好ましい態様として、上部金属箔16は、上部出島部40の突出方向に折り返されて、上部電極24および上部保護層26を挟み込むように設けられる。
【0062】
また、図示例の変換フィルム10において、下部電極30および下部保護層32は同形状である。また、下部電極30および下部保護層32にも、矩形の主面から面方向に突出して、凸状の下部電極引出し部30aおよび32a(以下、両者をまとめて下部出島部42とも言う)が形成される(
図4(B)参照)。
下部電極引出し用金属箔(以下、下部金属箔とも言う)18は、
図2(C)に概念的に示すように、この下部出島部42の下部電極30に積層される。なお、後に詳述するが、図示例においては、下部金属箔18は、端部が、圧電体層20に挿入されるように設けられる。また、図示例においては、好ましい態様として。下部金属箔18は、下部出島部42の突出方向に折り返されて、下部電極30および下部保護層32を挟み込むように設けられる。
【0063】
さらに、本発明の変換フィルム10においては、上部出島部40の形成位置において、上部電極24と圧電体層20との間には、絶縁シート14(絶縁体層)が挿入される。
この絶縁シート14は、面方向において上部出島部40の突出と直交する方向(
図1縦方向 以下、幅方向とも言う)には、上部出島部40の全域を包含し、上部出島部40の突出方向(以下、長手方向とも言う)には、圧電体層20の端部から突出するように設けられる。
【0064】
本発明の変換フィルム10は、上部電極24および下部電極30に接続して、このような上部金属箔16および下部金属箔18を設けることにより、上部電極24および下部電極30からの電極の引出しを行うと共に、薄膜である両電極および保護層の補強を行い、かつ、ハンダ付けによる配線と接続を可能にしている。さらに、好ましくは、上部金属箔16および下部金属箔18を折り返して、電極および保護層を挟み込むことにより、この電極および保護層の補強を、より好適に行い、かつ、配線を接続するためのハンダ付けを行う面の選択も可能になる。
加えて、このような絶縁シート14を有することにより、前述のような上部出島部40と上部金属箔16とによって、上部電極24を引き出した構成において、上部金属箔16が圧電積層体12の端面に接触しても、上部金属箔16と下部電極30とを絶縁できる。例えば、後述する
図10(F)に示すような筐体への組み込みの際に、上部金属箔16が圧電積層体12の端部を横断しても、上部金属箔16と下部電極30とを絶縁できる。すなわち、このような絶縁シート14を有することにより、上部電極24と下部電極30との絶縁性を確保して、前述のような電極層の引出しを行うことができる。
なお、絶縁シート14(絶縁体層)は、上部電極24および下部電極30の少なくとも一方が、圧電体層20と同じ大きさである場合(薄膜電極からの電極引出し部において、薄膜電極と圧電体層20とが端部を一致する場合)に設けられる。従って、上部電極24および下部電極30が、共に、圧電体層20よりも小さい場合(電極引出し部の端部が、薄膜電極より圧電体層20の方が外方に有る場合)は、絶縁シート14は不要である。この点に関しては、後に
図18を参照して詳述する。
【0065】
さらに、図示例においては、好ましい態様として、上部出島部40および下部出島部42を設け、此処に上部金属箔16および下部金属箔18を積層する。
この構成により、上部金属箔16および下部金属箔18を、圧電積層体12のスピーカとして作用する領域から離間して配置できる。そのため、上部電極24および下部電極30よりも厚い上部金属箔16および下部金属箔18が、圧電体層20の振動を妨害することが無い。
なお、前述のように、下部金属箔18は端部が圧電体層20に挿入された状態となるが、変換フィルム10において、スピーカ等として作用するのは、上部電極24と下部電極30とが対面している領域である。また、上部電極24は下部電極30よりも小さい。従って、この下部金属箔18と圧電体層20とが重なった領域は、スピーカ等として作用しないので、この領域は、変換フィルム10の音響特性に悪影響を与えない。
【0066】
上部出島部40および下部出島部42の幅(面方向において上部出島部40の突出方向と直交する方向
図1縦方向)および長さ(幅方向と直交する方向)は、変換フィルム10を実装する際に、電極を引出し、かつ、外部との導電性が確保できるサイズを、適宜、設定すればよい。
また、上部金属箔16および下部金属箔18のサイズや形状は、図示例の矩形に以外にも、電極の引出しが可能な各種の形状が利用可能である。すなわち、上部金属箔16および下部金属箔18のサイズおよび形状は、上部出島部40および下部出島部42のサイズおよび形状に応じて、上部出島部40および下部出島部42との導電性を確保でき、かつ、実装する際に配線と接続できるサイズおよび形状を、適宜、徹底すればよい。
【0067】
なお、本発明の変換フィルム10においては、上部出島部40および下部出島部42の両方を設けるのが好ましいが、何れか一方のみを設けてもよい。また、何れか一方のみを設ける場合には、上部出島部40のみを設けるのが好ましい。
上部出島部40および下部出島部42の一方のみを設ける場合には、出島部を設けない側は、電極の主面に、直接、金属箔を積層する。
【0068】
上部金属箔16および下部金属箔18は、各種の導電性材料で形成すればよい。具体的には、銅、アルミニウム、金および銀等が好適に例示される。
上部金属箔16および下部金属箔18の取付け方法は、形成材料に応じて、公知のシート状物の取付け方法が、各種、利用可能である。
上部金属箔16および下部金属箔18の厚さは、十分な強度を確保でき、かつ、ハンダ付けが可能な厚さを、形成材料等に応じて、適宜、決定すればよい。具体的には、上部金属箔16および下部金属箔18の厚さは、上部電極24および下部電極30よりも厚いのが好ましく、特に、30〜70μm程度が好ましい。
【0069】
他方、絶縁シート14は、絶縁性を有する各種の材料で形成すればよい。具体的には、PI、PET、PEN、PP等が好適に例示される。中でも、ポリイミドは好ましく利用される。
絶縁シート14の取付け方法は、形成材料に応じて、公知のシート状物の取付け方法が、各種、利用可能である。
【0070】
絶縁シート14の厚さは、絶縁性を確保できる厚さを、材料等に応じて、適宜、設定すればよい。ここで、変換フィルム10の音響特性等を考慮すると、絶縁シート14は、絶縁性が確保できる範囲で、薄い方が好ましい。具体的には、絶縁シート14の厚さは、50μm以下が好ましく、特に、20μm以下が好ましい。
絶縁シート14の長手方向の長さは、上部電極24の主面に至らない範囲で、確実に上部電極24と圧電体層20との間に挿入でき、かつ、圧電体層20の端部から突出量が、圧電積層体12の厚さ以上となる長さとすればよい。
【0071】
なお、図示例においては、好ましい対応として、上部出島部40および下部出島部42(すなわち、上下の電極層からの電極引出し部)は、同じ辺に形成している。
しかしながら、本発明の変換フィルムにおいては、後述するスピーカとして実装する際の構成等に応じて、上部出島部40および下部出島部42を、異なる辺に形成して、電極を引き出すようにしてもよい(
図5(C)参照)。
また、上部出島部40および下部出島部42は、面方向と直交する方向から見た際に、上部出島部40と下部出島部42との少なくとも一部が重なる位置に形成してもよい。
【0072】
また、
図1および
図2(B)に示すように、変換フィルム10においては、上部金属箔16が、圧電体層20と離間している。そのため、この離間する領域は、上部電極24と上部保護層26のみとなり、機械的強度が低い。しかしながら、変換フィルム10は、後述する
図10(F)に示す薄型スピーカ84のように、固定された状態で使用される用途への利用を主たる目的とする。従って、変換フィルム10は、一度、スピーカに組み込まれた後は、通常、上部出島部40(下部出島部42も同じ)は、再度、曲げ延ばし等を行われることは無い。そのため、変換フィルム10は、1回、適正に実装されれば、上部金属箔16と圧電体層20とが離間する部分の強度が低くても、通常、問題にはならない。
しかしながら、変換フィルム10においても、必要に応じて、
図12および
図13に示すように、上部金属箔16の端部を圧電体層20と積層される位置まで延在して、上部金属箔16を絶縁シート14と上部電極24との間に挟み込むことにより、上部電極24からの電極引出し部の強度を向上してもよい。
【0073】
以下、
図3(A)〜
図3(E)および
図4(A)〜
図4(C)に示す概念図を参照して、変換フィルム10の製造方法の一例を説明することにより、本発明の変換フィルム10について、より詳細に説明する。
【0074】
まず、
図3(A)に示すように、下部保護層32の上に下部電極30が形成されたシート状物46aを準備する。
このシート状物46aは、下部保護層32の表面に、真空蒸着、スパッタリング、めっき等によって下部電極30として銅薄膜等を形成して、作製すればよい。あるいは、下部保護層32の上に銅薄膜等が形成された、市販品を利用してもよい。
【0075】
一方で、有機溶媒に、シアノエチル化PVA等の常温で粘弾性を有する高分子材料(以下、粘弾性材料とも言う)を溶解し、さらに、PZT粒子等の圧電体粒子38を添加し、攪拌して分散してなる塗料を調製する。有機溶媒には、特に限定はなく、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等の各種の有機溶媒が利用可能である。
前述のシート状物46aを準備し、かつ、塗料を調製したら、シート状物46aに塗料をキャスティング(塗布)して、有機溶媒を蒸発して乾燥する。これにより、
図3(B)に示すように、下部保護層32の上に下部電極30を有し、下部電極30の上に圧電体層20を形成してなる積層体46bを作製する。
【0076】
この塗料のキャスティング方法には、特に、限定はなく、スライドコータやドクターナイフ等の公知の方法(塗布装置)が、全て、利用可能である。
あるいは、粘弾性材料がシアノエチル化PVAのように加熱溶融可能な物であれば、粘弾性材料を加熱溶融して、これに圧電体粒子38を添加/分散してなる溶融物を作製し、押し出し成形等によって、
図3(A)に示すシート状物の上にシート状に押し出し、冷却することにより、
図3(B)に示すような、下部保護層32の上に下部電極30を有し、下部電極30の上に圧電体層20を形成してなる積層体46bを作製してもよい。
【0077】
なお、前述のように、本発明の変換フィルム10において、粘弾性マトリックス36には、シアノエチル化PVA等の粘弾性材料以外にも、PVDF等の高分子圧電材料を添加しても良い。
粘弾性マトリックス36に、これらの高分子圧電材料を添加する際には、前述の塗料に添加する高分子圧電材料を溶解すればよい。あるいは、前述の加熱溶融した粘弾性材料に、添加する高分子圧電材料を添加して加熱溶融すればよい。
下部保護層32の上に下部電極30を有し、下部電極30の上に圧電体層20を形成してなる積層体46bを作製したら、好ましくは、圧電体層20の分極処理(ポーリング)を行う。
【0078】
圧電体層20の分極処理の方法には、特に限定はなく、公知の方法が利用可能である。好ましい分極処理の方法として、
図3(C)および
図3(D)に示す方法が例示される。
【0079】
この方法では、
図3(C)および
図3(D)に示すように、積層体46bの圧電体層20の上面20aの上に、間隔gを例えば1mm開けて、この上面20aに沿って移動可能な棒状あるいはワイヤー状のコロナ電極50を設ける。そして、このコロナ電極50と下部電極30とを直流電源52に接続する。
さらに、積層体46bを加熱保持する加熱手段、例えば、ホットプレートを用意する。
【0080】
その上で、圧電体層20を、加熱手段によって、例えば、温度100℃に加熱保持した状態で、直流電源52から下部電極30とコロナ電極50との間に、数kV、例えば、6kVの直流電圧を印加してコロナ放電を生じさせる。さらに、間隔gを維持した状態で、圧電体層20の上面20aに沿って、コロナ電極50を移動(走査)して、圧電体層20の分極処理を行う。
【0081】
このようなコロナ放電を利用する分極処理(以下、便宜的に、コロナポーリング処理とも言う)において、コロナ電極50の移動は、公知の棒状物の移動手段を用いればよい。
また、コロナポーリング処理では、コロナ電極50を移動する方法にも、限定はない。すなわち、コロナ電極50を固定し、積層体46bを移動させる移動機構を設け、この積層体46bを移動させて分極処理をしてもよい。この積層体46bの移動も、公知のシート状物の移動手段を用いればよい。
さらに、コロナ電極50の数は、1本に限定はされず、複数本のコロナ電極50を用いて、コロナポーリング処理を行ってもよい。
また、分極処理は、コロナポーリング処理に限定はされず、分極処理を行う対象に、直接、直流電界を印加する、通常の電界ポーリングも利用可能である。但し、この通常の電界ポーリングを行う場合には、分極処理の前に、上部電極24を形成する必要が有る。
なお、この分極処理の前に、圧電体層20の表面を加熱ローラ等を用いて平滑化する、カレンダー処理を施してもよい。このカレンダー処理を施すことで、後述する熱圧着工程がスムーズに行える。
【0082】
このようにして積層体46bの圧電体層20の分極処理を行ったら、
図4(A)に示すように、この積層体46bを、変換フィルム10の形状に応じて切断する。すなわち図示例においては、
図4(A)に示すように、矩形の主面から突出して、矩形の下部出島部42が形成された形に、積層体46bを切断する。
次いで、
図4(B)に示すように、下部出島部42、および、下部出島部42から、若干、内側(積層体46bの中央側)に入った領域において、圧電体層20を除去して、下部電極30(下部電極引出し部30a)を露出する。圧電体シートの除去方法は、一例として、綿棒等に粘弾性マトリックス36を溶解できる溶剤を染み込ませて、圧電体層20を擦ることにより、圧電体層20を溶解、除去する方法が例示される。
さらに、上部出島部40に対応する位置に、絶縁シート14を配置する。
【0083】
一方で、上部保護層26の上に上部電極24が形成されたシート状物46cを、準備する。このシート状物46cは、前述のシート状物46aと同様のものである。
図4(C)に示すように、このシート状物46cを、変換フィルム10の形状に応じて切断する。すなわち図示例においては、
図4(C)に示すように、矩形の主面から突出して、矩形の上部出島部40が形成された形に、シート状物46cを切断する。ここで、シート状物46cは、前述の積層体46bよりも小さくなるように切断する。
【0084】
次いで、
図3(E)および
図4(C)に示すように、上部電極24を圧電体層20に向けて、切断したシート状物46cを、圧電体層20の分極処理を終了した前記積層体46bに積層する。前述のように、シート状物46cは積層体46bよりも小さいので、上部電極24および上部保護層26の全周辺に、圧電体層20の余白が生じるように、シート状物46cを積層体46bに積層する。
さらに、この積層体46bとシート状物46cとの積層体を、上部保護層26と下部保護層32とを挟持するようにして、加熱プレス装置や加熱ローラ対等で熱圧着して、上部出島部40に対応する位置に絶縁シート14を挟持した圧電積層体12を作製する。
あるいは、シート状物46cを積層体46bに積層する際に、シート状物46cに接着剤を塗布して、接着剤によってシート状物46cと積層体46bとを接着して、圧電積層体12を作製してもよい。なお、接着剤は、上部電極24と圧電体層20の形成材料に応じて、両者を接着可能な、各種のものが利用可能である。また、圧電体層20の粘弾性マトリックス36となる材料(すなわちバインダ)も、接着剤として利用可能である。
なお、本例では、積層体46bを所定の形状に切断した後に、所定の形状に切断した上部保護層26の上に上部電極24が形成されたシート状物46cを熱圧着しているが、必ずしも、この順番である必要はない。例えば、所定の形状に切断したシート状物46cを熱圧着した後に、積層体46bを所定の形状に切断してもよい。
【0085】
本発明の変換フィルムにおいて、圧電積層体は、
図4(C)に示す、圧電体層20、下部電極30および下部保護層32が同サイズで、上部電極24および上部保護層26が一回り小さい構成に限定はされない。
例えば、上部電極24および上部保護層26と、圧電体層20と、下部電極30および下部保護層32とが、全て、同じサイズでもよい。あるいは、上部電極24、上部保護層26および圧電体層20が同サイズで、下部電極30あるいはさらに下部保護層32が一回り小さくてもよい。
さらに、上部出島部40および下部出島部42を、圧電積層体の異なる辺に形成してもよいのは前述のとおりである。
【0086】
また、
図4(C)に示すような、下部保護層32および下部電極30と、圧電体層20と、上部電極24および上部保護層26を積層してなり、かつ、上部出島部40および下部出島部42を有する圧電積層体の作製も、各種の作製方法が利用可能である。
【0087】
例えば、
図5(A)〜
図5(C)に概念的に示す圧電積層体の作製方法が例示される。
この作製方法では、上部保護層26の一面に上部電極24を形成し、他面にセパレータ120を貼着してなるシート状物124aを用意する。また、下部保護層32の一面に下部電極30を形成し、他面にセパレータ126を貼着してなるシート状物124b用意する。このシート状物124bの下部電極30の表面に、先と同様にして、圧電体層20を形成する。
さらに、圧電体層20に上部電極24を対面して、先と同様にシート状物124aを圧電体層20に貼着して、
図5(A)に示すような積層体128を作製する。
前述のように、セパレータ120は上部保護層26を、セパレータ126は下部保護層32を、それぞれ、支持するものである。
なお、以下に示す圧電積層体の作製方法において、絶縁シート14を設ける場合には、
図4(B)と同様、上部電極24および上部保護層26を有するシート状物を積層する前に、上部出島部40に対応する位置に絶縁シート14を配置すればよい。
【0088】
ここで、
図5(A)に示すように、シート状物124aおよびシート状物124bは、共に、圧電体層20より大きい(大面積である)。また、積層体128は、両シート状物で圧電体層20を内包するように積層される。
さらに、
図5(A)に示すように、シート状物124aおよびシート状物124bは、セパレータの厚さが異なる以外は同様のもので、1辺の端部は、その辺と同方向に延在して、所定幅の領域に上部電極24および下部電極30が形成されない。積層体128において、シート状物124aおよびシート状物124bは、互いの非電極形成領域を逆にして積層される。
【0089】
次いで、セパレータ120およびセパレータ126を剥離して、例えば
図5(B)に破線bで示すように、セパレータを剥離した積層体128を、作製する圧電積層体の形状に応じて切断する。
この積層体128の切断は、シート状物124aの上部電極24の非形成領域の逆側に上部出島部40を形成し、シート状物124bの下部電極30の非形成領域の逆側に下部出島部42を形成するように、行う。
【0090】
最後に、圧電体層20の不要な領域を除去する。なお、圧電体層20の除去は、先と同様に行えばよい。さらに、上部保護層26および上部電極24の不要な領域を切断し、また、下部保護層32および下部電極30の不要な領域を切断する。
これにより、
図5(C)に示すような、下部保護層32および下部電極30と、圧電体層20と、上部電極24および上部保護層26とを積層してなり、かつ、上部出島部40および下部出島部42を有する圧電積層体を作製する。
【0091】
圧電積層体の作製方法の別の例として、
図6(A)〜
図6(D)に概念的に示す方法が例示される。
この作製方法でも、同様に、上部保護層26の一面に上部電極24を形成し、他面にセパレータ120を貼着してなるシート状物124cを用意する。また、下部保護層32の一面に下部電極30を形成し、他面にセパレータ126を貼着してなるシート状物124dを用意する。このシート状物124dの下部電極30の表面に、先と同様にして、圧電体層20を形成する。
さらに、圧電体層20に上部電極24を対面して、先と同様にシート状物124cを圧電体層20に貼着して、
図6(A)に示すような積層体130を作製する。
この積層体130においては、各シート状物の電極は保護層の全面に形成される。さらに、シート状物124c、圧電体層20およびシート状物124dは、同サイズである。
【0092】
次いで、
図6(B)に示すように、シート状物124cのセパレータ120および上部保護層26、ならびに、シート状物124dのセパレータ126および下部保護層32に、所定間隔の格子状の切れ込みを入れる(
図6(C)参照)。この格子の間隔は、想定する圧電積層体の大きさや形状等に応じて、適宜、設定すればよい。
切れ込みを入れる方法は、シート状物124cおよびシート状物124dの形成材料に応じて、各種の方法が利用可能である。
【0093】
好ましい方法として、レーザを用いる方法が例示される。
本発明者らの検討によれば、炭酸ガスレーザによる波長10.6μmのレーザ光は、樹脂や金属酸化物は全般的に吸収を有し、金属は反射する(吸収を有さない)。また、一般的に、セパレータおよび保護層をPETの樹脂で形成し、電極を銅等の金属で形成する。従って、炭酸ガスレーザによる波長10.6μmのレーザ光によって、シート状物124cおよびシート状物124dを格子状に走査することにより、電極を損傷することなく、アブレーションによってセパレータおよび保護層のみを除去して、シート状物124cおよびシート状物124dに格子状に切れ込みを入れることができる。
【0094】
次いで、セパレータ120およびセパレータ126を剥離して、例えば
図6(C)に破線cで示すように、セパレータを剥離した積層体128を、作製する圧電積層体の形状に応じて切断する。
【0095】
さらに、
図6(D)に示すように、切れ込みに沿って、上部出島部40の上部保護層26を除去して、この位置の上部電極24を露出する。さらに、切れ込みに沿って、下部出島部42の下部保護層32を除去して、この位置の下部電極30を露出する。
これにより、
図6(D)に示すような、下部保護層32および下部電極30と、圧電体層20と、上部電極24および上部保護層26とを積層してなり、かつ、上部出島部40および下部出島部42を有する圧電積層体を作製する。
【0096】
また、圧電積層体の作製方法の別の例として、
図7(A)〜
図7(F)に概念的に示す方法が例示される。
この作製方法でも、
図7(A)の左側に示すように、上部保護層26の一面に上部電極24を形成し、他面にセパレータ120を貼着してなるシート状物124eを用意する。また、下部保護層32の一面に下部電極30を形成し、他面にセパレータ126を貼着してなるシート状物を用意する。さらに、このシート状物の下部電極30の表面に、先と同様にして、圧電体層20を形成して、積層体124fを作製する。
【0097】
次いで、
図7(A)の右側に示すように、上部電極24と圧電体層20とを対面させて、シート状物124eと積層体124fとを積層、接着して、積層体132を作製する。
ここで、この積層体132において、シート状物124e(上部電極24)は、所定の1辺の端部近傍の所定の領域aが、辺の延在方向の全域に渡って、他の領域に比して接着力が弱くなるように、圧電体層20に接着される。
この圧電積層体の作製方法では、領域aに対応して、上部出島部40が形成される。従って、領域aの幅は、想定する上部出島部40の大きさに応じて、適宜、設定すればよいが、2〜100cm程度が好ましい。
【0098】
積層体132において、領域aの接着力を、他の領域よりも弱くする方法は、シート状物124eと積層体124fとの接着方法(すなわち、上部電極24と圧電体層20との接着方法)に応じた、各種の方法が利用可能である。
例えば、接着剤を用いて、シート状物124eと積層体124fとを接着する場合には、領域aには、接着剤を塗布しない方法や接着剤の量を減らす方法が例示される。あるいは、接着剤を用いて、シート状物124eと積層体124fとを接着する場合には、領域aに、使用する接着剤との接着力が弱いフィルムを積層しておき、接着剤が硬化した後、フィルムを除去する方法も、利用可能である。
また、熱圧着によってシート状物124eと積層体124fとを接着する場合には、領域aに対応する領域の温度および/または圧力を低くする方法が例示される。あるいは、熱圧着によってシート状物124eと積層体124fとの接着する場合には、領域aに、上部電極24および圧電体層20との熱圧着力が弱いフィルムを積層しておき、熱圧着後、フィルムを除去する方法も、利用可能である。
【0099】
なお、この積層体132は、いわゆるロール・トゥ・ロール(Roll to Roll)を利用して作製してもよい。
この際に、シート状物124eおよび積層体124fの搬送方向は、接着力が弱い領域aの延在方向(矢印a方向)と一致する。すなわち、ロール・トゥ・ロールを利用する場合には、領域aは、シート状物124eの長手方向に延在して、幅方向の一方の端部に形成される。
また、前述の積層体128や130、さらには、
図3(E)に示す積層体も、ロール・トゥ・ロールを利用して作製してもよい。
【0100】
次いで、
図7(B)〜
図7(C)に示すように、上部電極24および上部保護層26における上部出島部40の位置および形状に応じて、例えば一点鎖線bで示すようにシート状物124eの領域a側を切断し、次いで、セパレータ120を剥離する。
前述のように、領域aは、接着力が弱い。従って、このシート状物124eの切断は、ート状物124eの領域aを持ち上げて、容易に行うことができる。
【0101】
次いで、
図7(D)〜
図7(E)に示すように、下部電極30および下部保護層32における下部出島部42の位置および形状に応じて、例えば一点鎖線dに示すように積層体124fの領域a側を切断する。
前述のように、領域aは、接着力が弱い。従って、この積層体124fの切断も、シート状物124eの領域aを持ち上げて、容易に行うことができる。
【0102】
さらに、
図7(F)に示すように、下部出島部42の下部電極30に積層された圧電体層20を除去して下部電極30を露出し、さらに、セパレータ126を剥離する。圧電体層20の除去は、先と同様に行えばよい。
これにより、
図7(F)に示すような、下部保護層32および下部電極30と、圧電体層20と、上部電極24および上部保護層26とを積層してなり、かつ、上部出島部40および下部出島部42を有する、圧電積層体を作製する。
【0103】
以上の例では、電極を引き出すために、溶剤等を用いて圧電体層20を除去して、上部電極24および/または下部電極30を露出している。
しかしながら、本発明においては、圧電体層20ではなく、電極を引き出すために、上部保護層26および/または下部保護層32を除去することで、上部電極24および/または下部電極30を露出してもよい。上部保護層26および/または下部保護層32の除去方法としては、溶剤による除去や、機械的加工処理が利用可能である。
【0104】
ここで、前述のように、一般的に、保護層はPET等の樹脂で、電極が銅等の金属である。また、炭酸ガスレーザによる波長10.6μmのレーザ光を用いれば、電極を損傷することなく、アブレーションによって保護層のみを除去できる。従って、レーザ光による上部保護層26および/または下部保護層32の除去で、上部電極24および/または下部電極30を露出する方法が、好ましく例示される。
例えば、
図7(E)から
図7(F)に至る工程において、下部出島部42に積層された圧電体層20を除去しないで、セパレータ126を剥離する。次いで、下部出島部42の下部保護層32に炭酸ガスレーザによる波長10.6μmのレーザ光を照射(図中下方から下部出島部42にレーザ光を照射)する。これにより、レーザ光で下部出島部42の保護層32を除去して、下部電極30を露出できる。
【0105】
このようにして圧電積層体12を作製したら、
図1および
図2(B)および
図2(C)に示すように、上部出島部40の上部電極24(上部電極引出し部24a)に上部金属箔16を積層して、必要に応じて折り返して上部電極24および上部保護層26を上部金属箔16で挟持する。
さらに、下部出島部42の下部電極30(下部電極引出し部30a)に下部金属箔18を積層して、必要に応じて折り返して下部電極30および下部保護層32を下部金属箔18で挟持して、
図1および
図2(B)および
図2(C)に示すような、本発明の変換フィルム10を完成する。なお、下部金属箔18は、端部が、先に下部電極30を露出した下部出島部42よりも内側の領域まで至るように、下部出島部42に積層し、あるいはさらに折り返す。
【0106】
図1に示すように、変換フィルム10は、上部保護層26の周辺で圧電体層20が剥き出しになっている。そのため、好ましくは、
図8(A)に概念的に示すように、変換フィルム10に、上部保護層26(上部電極24)の端部および上部保護層26の周辺で圧電体層20を覆って、側面絶縁層60を設けるのが好ましい。
この側面絶縁層60を有することにより、ユーザが上部電極24の端部に接触することに起因する感電等を防止できる。
【0107】
側面絶縁層60は、絶縁性を有する各種の材料で形成すればよく、具体的には、前述の絶縁シート14で例示した材料が好適に例示される。中でも、ポリイミドは好ましく利用される。
側面絶縁層60の取付け方法は、形成材料に応じて、公知のシート状物の取付け方法が、各種、利用可能である。
なお、
図8(A)では、4本の帯状の側面絶縁層60を用いて、上部保護層26および上部保護層26の周辺の圧電体層20を覆っているが、側面絶縁層は、これ以外にも、枠状等の各種の形状が利用可能である。
【0108】
また、後述する
図10(F)等に示されるようなスピーカ等への実装を容易にするために、
図8(B)に概念的に示すように、側面絶縁層60を覆って、かつ、変換フィルム10の外部に突出するように、変換フィルム10の各辺と同方向に延在するシート状のタブ62を設けるのが好ましい。また、タブ62は、上面および下面で変換フィルム10を挟持するように設けてもよい。
これにより、このタブ62を用いてのハンドリングが可能になり、また、実装する際に、変換フィルム10を面方向に引っ張って、シワ等のない適正な状態で、実装することが可能になる。なお、このタブ62は、スピーカ等に実装したら、余分な部分は切断すればよい。
【0109】
タブ62も、絶縁性を有する各種の材料で形成すればよく、具体的には、前述の絶縁シート14で例示した材料が好適に例示され。中でもポリイミドは好ましい。
側面絶縁層60の取付け方法は、形成材料に応じて、公知のシート状物の取付け方法が、各種、利用可能である。さらに、側面絶縁層60と同様、タブ62も、枠状等の各種の形状が利用可能である。
また、タブ62は、図示例のように、変換フィルム10の各辺の全域に延在して設ける構成以外にも、例えば、上部出島部40や下部出島部42のように、部分的に突出する凸部のように設けてもよい。
【0110】
本発明の変換フィルム10は、表面に上部保護層26を有する。しかしながら、前述のように、上部保護層26は薄膜であり、強度的に不十分である場合も有る。
この際には、
図8(C)に示すように、上部保護層26の全面を覆って、第2上部保護層64を設けてもよい。これにより、変換フィルム10の強度を、より向上できる。
【0111】
第2上部保護層64の形成材料は、前述の上部保護層26で例示した物が好適に例示される。特に、PET、PEN、PIおよびPP等の絶縁性材料が、好ましい。
第2上部保護層64の取付けは、形成材料に応じて、公知のシート状物の取付け方法が、各種、利用可能である。
【0112】
なお、第2上部保護層64は、厚すぎると変換フィルム10の可撓性や音響特性に悪影響を与える場合も有る。この点を考慮すると、第2上部保護層64の厚さは、12〜100μmが好ましく、特に、12〜40μmが好ましい。
【0113】
なお、変換フィルム10においては、必要に応じて、下部保護層32の全面を覆って、第2下部保護層を設けてもよい。すなわち、2枚の第2保護層で、変換フィルムを挟むようにしてもよい。
また、後述する
図15のように、第2上部保護層64と上部保護層26との間に、写真や有機ELディスプレイ等を挿入してもよい。
【0114】
図8(A)〜
図8(C)に示す例は、側面絶縁層60と、タブ62と、第2上部保護層64とが、別の部材である。しかしながら、本発明の変換フィルム10は、これ以外にも、各種の構成が利用可能である。
例えば、
図9(A)に概念的に示すように、上部保護層26(上部電極24)の端部および上部保護層26の周辺で圧電体層20を覆い、かつ、変換フィルム10の外部に突出する、側面絶縁層とタブとを兼ねたシート状物68を設けてもよい。このシート状物68は、先のタブ62と同様、変換フィルム10を挟持するように設けてもよい。
あるいは、
図9(B)に概念的に示すように、上部保護層26および上部保護層26の周辺の圧電体層20を被い、かつ、変換フィルム10の外部に突出する、第2上部保護層と、側面絶縁層と、タブとを兼ねたシート状物70を設けてもよい。また、このシート状物70で、変換フィルム10を挟持するようにしてもよい。
【0115】
図10(A)〜
図10(F)に、タブ62を設けた本発明の変換フィルム10を実装する薄型スピーカ、および、その作製方法を、概念的に示す。
【0116】
まず、
図10(A)および
図10(B)に示すように、一面が開放する直方体などの筐体74に、変換フィルム10を指示する支持体76を収納する。支持体76は、筐体74の上部に突出する厚さとする。
この支持体76は、変換フィルム10を支持すると共に、圧電フィルムのどの場所でも一定の機械的バイアスを与えることによって、変換フィルム10の伸縮運動を無駄なく前後運動(フィルムの面に垂直な方向の運動)に変換させるためのものである。支持体76は、一例として、羊毛のフェルト、レーヨンやPETを含んだ羊毛のフェルトなどの不織布、グラスウール等が例示される。
【0117】
次いで、
図10(C)に概念的に示すように、支持体76を全面的に覆うように、支持体76の上に変換フィルム10を載せる。
変換フィルム10を載せたら、
図10(D)に示すように、筐体74に応じた形状を有する押さえ蓋78を上から被せる。ここで、押さえ蓋78は、支持体76の収容部を除く筐体74上面、および、筐体74の外側面(外周面)に当接する形状を有する。これにより、変換フィルム10によって支持体76を押圧し、変換フィルム10に、前述の一定の機械的バイアスが与えられる。
【0118】
この際に、タブ62を引っ張ることで、変換フィルム10にシワが入ること等を防止して、簡易な作業で、綺麗に、変換フィルム10を実装することができる。
また、筐体74からはみ出した余分なタブ62は、切断してもよい。
【0119】
押さえ蓋78を被せたら、
図10(E)に示すように、ネジ80によって筐体74と押さえ蓋78とを固定する。さらに、
図10(F)に示すように、ハンダ82aによって配線82を接続して、本発明の変換フィルム10を実装する薄型スピーカ84とする。
此処で、上部出島部40および下部出島部42は、2回、折り曲げられるが、上部出島部40および下部出島部42は、上部金属箔16および下部金属箔18で補強されているので、断線等の心配はない。また、仮に、この折り曲げで上部電極24や下部電極30が断線しても、上部金属箔16および下部金属箔18で導電性が確保できる。
また、上部金属箔16と圧電体層20とが離間する、上部電極24と上部保護層26のみの領域は、機械的強度が低いが、薄型スピーカ84は、一度、組み立てた後は、変換フィルム10を取り出すことは、稀であるので、問題にならない。
【0120】
このような薄型スピーカ84は、
図11(A)に概念的に示すように、薄型スピーカ84を挿入する挿入部86aを有するスタンド86に装填して、使用してもよい。
あるいは、ネジ80aを、上部金属箔16を貫通する位置、および、下部金属箔18を貫通する位置に、それぞれ、ネジ80aを設ける。その上で、
図11(B)に概念的に示すように、薄型スピーカ84を装填するスタンド90の挿入部90aに、薄型スピーカ84が装填された際に、ネジ80aと係合する係合部90bを設ける。さらに、この係合部90bに、配線92を接続する。
これにより、携帯電話を充電するいわゆるクレードルのように、薄型スピーカ84をスタンド90に装填することで、変換フィルム10と配線92とを電気的に接続できる。
【0121】
図12および
図13に、本発明の変換フィルムの別の態様を概念的に示す。なお、
図13は、
図12のX−X切断線である。
なお、
図12および
図13に示す変換フィルム100は、上部金属箔102が上部電極24と絶縁シート14との間に挿入される以外は、前述の変換フィルム10と同様の構成を有するので、同じ部材には同じ符号を付し、以下の説明は、異なる部位を主に行う。
【0122】
前述のように、変換フィルム10は、上部金属箔16は圧電体層20とは離間しており、上部金属箔16と圧電体層20との間に、上部電極24と上部保護層26のみしかない領域を有している。この上部電極24と上部保護層26のみしかない領域は、機械的強度が低いが、変換フィルム10は、主に、
図10(F)、
図11(A)および
図11(B)等に示す薄型スピーカ84のように、固定された状態で使用される用途に用いられるので、問題にならない。
これに対し、
図12および
図13に示す変換フィルム100は、
図14に概念的に示すような、巻取り型のスピーカに対応するものである。そのため、上部電極24の引出し部に、このような機械的強度が低い部分が有ると、此処で上部電極24が断線して、変換フィルムが作動しなくなってしまう。
【0123】
これに対応して、
図12および
図13に示す変換フィルム100は、上部金属箔102を長尺にして、端部を圧電体層20と積層(重複)される領域まで延在して、上部金属箔16を絶縁シート14と上部電極24との間に挟み込む構成を有する。
これにより、
図1および
図2(B)および
図2(C)に示す変換フィルム100のような、上部電極24からの電極引出し部に、上部電極24および上部保護層26のみの領域を無くして、上部電極24からの電極引出し部の全域を上部金属箔16で補強できる。
そのため、変換フィルム100は、電極の引出し部で、多数回の曲げ延ばしや、多数回の巻回および引き延ばし等を行われても、上部電極24の断線を防止できる。また、仮に、上部電極24からの電極の引出し部で上部電極24が断線しても、上部金属箔102で導電性を確保できる。
【0124】
このような変換フィルム100も、基本的に、前述の変換フィルム10と同様に、
図3(A)〜
図3(E)および
図4(A)〜
図4(C)等に示す方法で作製できる。
ここで、前述のように、変換フィルム100は、上部金属箔102の端部が圧電体層20と積層される位置まで延在して、絶縁シート14と上部電極24とに挟まれる。そのため、この変換フィルム100を作製する際には、
図3(E)に示すように、上部電極24と上部保護層26とを積層したシート状物46cを、下部保護層32、下部電極30および圧電体層20を積層した積層体46bに積層する前に、上部電極24に上部金属箔102を積層しておき、その後、積層体46bとシート状物46cとの積層および熱圧着を行えばよい。
なお、この熱圧着の際に、上部金属箔102の厚さ分、上部出島部40の箇所だけ圧電体層20にめり込む可能性が有る。しかしながら、絶縁シート14が上部金属箔102と圧電体層20との間に必ず挿入されていることで、上部電極24と下部電極30との間でのショート(短絡)を確実に防ぐことができる。
【0125】
前述のように、変換フィルム100は、
図14に示すような巻取り式のスピーカに好適に利用される。
図14に示す例は、写真フィルムのパトローネのようなケース104に、変換フィルム100を巻き取って収容する。このケース104には、円筒状の巻取り軸106が回転自在に軸支される。
また、ケース104から変換フィルム100を出し入れするための出口部104aには、変換フィルム100の出し入れを円滑に行い、かつ、出し入れによる変換フィルム100の損傷を防止するためのガイド部材108が、変換フィルム100を挟持するように設けられる。このガイド部材108は、例えば、フェルト等で形成される。
【0126】
変換フィルム100は、上部出島部40等が形成された側(以下、基端とも言う)の端部が、巻取り軸106に固定される。前述のように、巻取り軸106は円筒状であるので、上部金属箔102および下部金属箔18に接続された配線は、この巻取り軸106から引き出される。
また、変換フィルム100の基端と逆側の端部には、出口部104aよりも大きな取っ手部(図示省略)が設けられ、変換フィルム100が完全にケース104内に入ることを防止する。
【0127】
従って、巻取り軸106を回転することで、変換フィルム100をケース104に収容できる。また、取っ手部を引っ張ることで、変換フィルム100をケース104から引き出すことができる。
この変換フィルム100の基端側の端部近傍は、高い曲率での曲げ延ばしを、多数回、行われる。しかしながら、前述のように、変換フィルム100の上部電極24の引出し部では、上部金属箔102の端部が圧電体層20と積層される位置まで延在して、絶縁シート14と上部電極24とに挟まれるので、電極の引出し部において上部電極24が断線するのを防止できる。
【0128】
このような変換フィルム100を巻取り式のスピーカに実装する際には、基端側は、ケース104から排出されることは無い。すなわち、変換フィルム100では、この基端側の領域は、スピーカ等として作動する必要はない。
そのため、変換フィルム100は、
図12に示すように、基端側の端部と、上部電極24(および上部保護層26)との間隔を長くしている。
【0129】
この変換フィルム100にも、先の例と同様に、側面絶縁層60や第2上部保護層64を設けてもよい。また、側面絶縁層60と第2上部保護層64とを兼ねるシート状物を設けてもよい。さらに、第2上部保護層に加え、第2下部保護層を設け、2つの第2保護層によって、変換フィルム100を挟むようにしてもよい。
なお、巻取り形のスピーカに利用される変換フィルム100では、実装時にシワ延ばし等を行う必要はないので、タブ62は不要である。
【0130】
また、第2上部保護層64を設ける場合には、
図15に概念的に示すように、第2上部保護層64と上部保護層26との間に、写真や薄型の有機ELディスプレイなどのイメージ媒体110を設けてもよい。
これにより、変換フィルム100の意匠性や娯楽性を向上できる。なお、この点に関しては、
図1および
図2に示す変換フィルム10も同様であるのは、前述のとおりである。
【0131】
以上の例では、変換フィルムに、凸状に突出する上部出島部40および下部出島部42を設け、此処から上部電極24および下部電極30からの電極の引出しを行っている。
しかしながら、本発明は、これ以外にも、上部金属箔(上部引出し用金属箔)および下部金属箔(下部引出し用金属箔)を用いて、各種の構成で、上部電極24および下部電極30からの電極の引出しを行うことができる。
【0132】
例えば、
図16(A)に概念的に示す構成が例示される。
この構成では、圧電体層20、上部電極24、上部保護層26、下部電極30および下部保護層32からなる圧電積層体12を作製したら、上部保護層26および下部保護層32の一部を除去して、上部電極24および下部電極30を剥き出しにする。
例えば、上部保護層26および下部保護層32がPETであれば、ヘキサフルオロイソプパノール等を用いて、上部保護層26および下部保護層32を除去できる。また、メカニカルな研削で、上部保護層26および下部保護層32を除去してもよい。
あるいは、前述のように、炭酸ガスレーザによる10.6μmの波長のレーザ光を用いて、上部保護層26および下部保護層32を除去してもよい。レーザ光を用いることにより、上部保護層26および下部保護層32と共に、上部電極24および下部電極30も除去してしまう可能性が低くなり、好ましい。
【0133】
その上で、剥き出しにした上部電極24および下部電極30接続するように、上部金属箔114および下部金属箔116を設け、この金属箔を用いて、上部電極24および下部電極30からの電極の引出しを行う。
この構成によれば、変換フィルム作製の最後の工程で、簡単に、上部金属箔114を設けて上部電極24と接触を図り、また、下部金属箔116を設けて下部電極30との接触を図ることができる。
なお、この
図16(A)に示す構成は、必ずしも上下の電極の両方で行う必要はない。例えば、上部電極24のみを、
図16(A)に示す構成とし、下部電極30は、前述の
図1および
図2(C)や、
図12および
図13に示す構成としてもよい。
【0134】
ここで、前述のように、上部電極24および上部保護層26、ならびに、下部電極30および下部保護層32は、薄膜である。そのため、上部保護層26および下部保護層32を除去する際に、上部電極24および下部電極30も除去してしまう可能性がある。
これを防止するために、
図16(B)に概念的に示すように、圧電積層体12を作製する際に、圧電体層20と上部電極24との間に補助金属箔114aを、圧電体層20と下部電極30との間に補助金属箔116aを、それぞれ設けておき、この位置で、上部電極24および上部金属箔114、下部電極30および下部金属箔116を、それぞれ、接続してもよい。
【0135】
変換フィルム10等と同様、圧電積層体12の端部に上部金属箔および下部金属箔を設けて、上部電極24および下部電極30からの電極の引出しを行ってもよい。
例えば、
図17(A)、および、
図17(A)のb−b線断面図である
図17(B)に概念的に示すように、電極を引き出すための上部出島部および下部出島部を設けずに、絶縁シート14と上部電極24との間に、上部金属箔16を挿入し、圧電体層20と下部電極30との間に、下部金属箔18を挿入した構成でもよい。
【0136】
この構成においては、下部金属箔18は、前述の例と同様、下部保護層32、下部電極30および圧電体層20からなる積層体46bを作製した後、圧電体層20を除去して、此処に下部金属箔18を貼着すればよい。
他方、上部金属箔16は、前述の変換フィルム100と同様、
図3(E)に示すように、積層体46bに、上部電極24と上部保護層26とを積層したシート状物46cを積層する前に、上部電極24に上部金属箔16を積層しておき、その後、積層体46bとシート状物46cとの積層および熱圧着を行えばよい。
【0137】
さらに、以上の例は、上部電極24(上部保護層26)が、下部電極30(下部保護層32)よりも小型で、上部電極24の周辺に圧電体層20の余白が生じるように、上部電極24と圧電体層20とを積層している。
しかしながら、本発明では、上部電極24と下部電極30とが同じ大きさでもよく、あるいは、上部電極24が下部電極30よりも大きくてもよい。
【0138】
例えば、
図18に概念的に示すように、下部電極30をパターンニングすることで下部電極30を下部保護層32よりも小さくし、下部保護層32の上の全面に圧電体層20を設けてもよい。
この場合には、上部電極24が下部電極30と同サイズでも大きくても小さくても、上部電極24からの電極の引出し部である上部金属箔16が下部電極30と接触することは無いので、絶縁シート14(絶縁体層)は、必ずしも設ける必要は無い。但し、この際において、上部電極24が圧電体層20と同じ大きさの場合には、下部電極30からの引出し部に対応して、絶縁シート14のような絶縁体層を設ける必要がある。
このように、上部電極24と下部電極30との大きさの関係によらず、両電極が、共に、圧電体層20よりも小さい場合には、上部および下部の電極を引き出すための絶縁体層を設ける必要は無い。すなわち、
図18に示すような、電極がパターンニングされた保護層を用いることで、保護層が絶縁体層(あるいはさらに、前述のタブ62)を兼ねることができるので、本発明の電気音響変換フィルムの製造作業を簡略化できる。
【0139】
以上、本発明の電気音響変換フィルムについて詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。