(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光電変換素子を含むセンサ部を備えたセンサ基板と、Al(アルミニウム)等の無機反射層との間に例えばCsI(ヨウ化セシウム)等のハロゲン元素を含むシンチレータを配置した構成において、無機反射層とシンチレータとを直接接触させると無機反射層が腐食するおそれがある。このため、シンチレータと無機反射層との間に無機反射層の腐食を防止するための腐食防止層を配置することが好ましい。また、シンチレータは、高い潮解性を有するためシンチレータを防湿層で覆うことが好ましい。
【0009】
しかしながら、上記した腐食防止層や防湿層の中間層の厚さが厚くなるとシンチレータと無機反射層との間の距離が大きくなり、その結果、得られる放射線画像の
鮮鋭度が低下する。また、上記の中間層の平坦性を確保しなければ、無機反射層の平坦性も損なわれることとなり、この場合においても得られる放射線画像の
鮮鋭度は低下する。
【0010】
ここで、CsI等の柱状結晶の集合体からなるシンチレータにおいては、一部の柱状結晶が異常成長を起こし、シンチレータの表面に他の部分よりも突出した突出部が不可避的に生じることが知られている。このように、表面に突出部を有するシンチレータの上に無機反射層を設ける構成において、シンチレータと無機反射層との間に中間層を配置してシンチレータと無機反射層とを非接触としつつシンチレータと無機反射層との距離を制御し、更に無機反射層の平坦性を確保することは容易ではない。
【0011】
例えば、特許文献4には、柱状蛍光体と反射層との間に、処理温度における溶融粘性率が互いに異なる2層のホットメルト層を設けた構成が記載されている。しかしながら、ホットメルト樹脂は、加熱により溶融することから、ホットメルト層の層厚の制御を行うことは困難である。すなわち、特許文献4に記載の構成では、柱状蛍光体と反射層との距離が常に一定となるように安定的に製造することは困難であり、柱状蛍光体と反射層とが接触したり、柱状蛍光体と反射層との距離が目標値よりも大きくなってしまうおそれがある。前者の場合は反射層の腐食が生じ、後者の場合は得られる放射線画像の
鮮鋭度が低下する。
【0012】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、シンチレータと無機反射層とを非接触としつつシンチレータと無機反射層との距離を制御し、且つ無機反射層の平坦性を確保することができる放射線検出装置および放射線検出装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る放射線検出装置は、放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータを支持し、シンチレータにて変換された光に基づいて電荷を生成する複数のセンサ部を有する基板と、シンチレータの上に設けられた熱可塑性樹脂層と、熱可塑性樹脂層の上に設けられた第1の有機層と、第1の有機層の上に設けられた無機反射層と、を備える。熱可塑性樹脂層の溶融開始温度は、第1の有機層の溶融開始温度よりも低い。シンチレータは、熱可塑性樹脂層が設けられている側の面内に突出部を有し、突出部の先端が熱可塑性樹脂層を貫通して第1の有機層に接している。
【0014】
本発明に係る放射線検出装置において、シンチレータが、熱可塑性樹脂層が設けられている側の面内に複数の突出部を有し、複数の突出部のうちの少なくとも一部の先端が熱可塑性樹脂層を貫通して第1の有機層に接していてもよい。
【0015】
本発明に係る放射線検出装置において、シンチレータが、熱可塑性樹脂層が設けられている側の面内に複数の突出部を有し、複数の突出部のうちの少なくとも一部の突出部がつぶされ
た状態となっており、つぶされた
状態の突出部の少なくとも一部の先端が熱可塑性樹脂層を貫通して第1の有機層に接していてもよい。
【0016】
本発明に係る放射線検出装置において、シンチレータが、複数の柱状結晶を含み、突出部は、複数の柱状結晶の平均高さよりも高い少なくとも1つの柱状結晶の先端部を含んで構成されていてもよい。
【0017】
本発明に係る放射線検出装置において、熱可塑性樹脂層は、ホットメルト樹脂を含んで構成されていてもよい。
【0018】
本発明に係る放射線検出装置において、無機反射層の上に第2の有機層が更に設けられていてもよい。
【0019】
本発明に係る放射線検出装置の製造方法は、基板の上にシンチレータを形成する形成工程と、第1の温度で溶融を開始する熱可塑性樹脂層と、第1の温度よりも高い第2の温度で溶融を開始する第1の有機層と、を含む複合層を準備する準備工程と、シンチレータと熱可塑性樹脂層とが接するように複合層をシンチレータの上に配置し、シンチレータの突出部が熱可塑性樹脂層を貫通して第1の有機層に接するように、複合層を第1の温度よりも高く且つ第2の温度よりも低い温度で加熱しつつシンチレータに向けて加圧する加熱加圧工程と、加熱加圧工程の後に、無機反射層を第1の有機層の上に形成する工程と、を含む。
【0020】
本発明に係る放射線検出装置の製造方法は、基板の上にシンチレータを形成する形成工程と、第1の温度で溶融を開始する熱可塑性樹脂層と、熱可塑性樹脂層の上に設けられて第1の温度よりも高い第2の温度で溶融を開始する第1の有機層と、第1の有機層の上に設けられた無機反射層と、を含む複合層を準備する準備工程と、シンチレータと熱可塑性樹脂層とが接するように複合層をシンチレータの上に配置し、シンチレータの突出部が熱可塑性樹脂層を貫通して第1の有機層に接するように、複合層を第1の温度よりも高く且つ第2の温度よりも低い温度で加熱しつつシンチレータに向けて加圧する加熱加圧工程と、を含む。
【0021】
本発明に係る放射線検出装置の製造方法において、準備工程にて無機反射層の上に設けられた第2の有機層を更に含む複合層を準備してもよい。
【0022】
本発明に係る放射線検出装置の製造方法は、基板の上にシンチレータを形成する形成工程と、シンチレータの表面を第1の温度で溶融を開始する熱可塑性樹脂層で被覆する被覆工程と、第1の温度よりも高い第2の温度で溶融を開始する第1の有機層と第1の有機層の上に設けられた無機反射層とを含む層を熱可塑性樹脂層の上に配置し、シンチレータの突出部が熱可塑性樹脂層を貫通して第1の有機層に接するように、熱可塑性樹脂層を第1の温度よりも高く且つ第2の温度よりも低い温度で加熱しつつ第1の有機層をシンチレータに向けて加圧する加熱加圧工程と、を含む。
【0023】
本発明に係る放射線検出装置の製造方法において、加熱加圧工程にて無機反射層の上に設けられた第2の有機層を含む層を熱可塑性樹脂層の上に配置してもよい。
【0024】
本発明に係る放射線検出装置の製造方法は、加熱加圧工程の前に突出部をつぶして突出部の高さを低減させるつぶし加工工程を更に含んでいてもよい。
【0025】
本発明に係る放射線検出装置の製造方法において、つぶし加工工程にて突出部の高さが所定の閾値以下となるように突出部がつぶされてもよい。また、つぶし加工工程にて突出部の高さが熱可塑性樹脂層の厚さ以下となるように突出部がつぶされてもよい。
【0026】
本発明の係る放射線検出装置の製造方法は、加熱加圧工程の前に突出部の高さを測定する測定工程を更に含んでいてもよく、測定工程において測定された突出部の高さが、所定の閾値よりも高い場合につぶし加工工程を実施してもよい。
【0027】
本発明の係る放射線検出装置の製造方法は、加熱加圧工程の前に突出部の高さを測定する測定工程を更に含んでいてもよく、つぶし加工工程は、突出部に押圧力を加える処理を含み、測定工程において測定された突出部の高さに基づいて押圧力が定められてもよい。
【0028】
本発明の係る放射線検出装置の製造方法において、熱可塑性樹脂層は、ホットメルト樹脂を含んで構成されてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、シンチレータと無機反射層とを非接触としつつシンチレータと無機反射層との距離を制御し、且つ無機反射層の平坦性を確保することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、各図面において、同一の構成要素には、同一の参照符号を付与している。
【0032】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る放射線検出装置10の構成を示す斜視図である。放射線検出装置10は、可搬型の電子カセッテの形態を有し、放射線検出パネル30(FPD)と、制御ユニット12と、支持板16と、制御ユニット12および支持板16を収容する筐体14と、を含んで構成されている。
【0033】
筐体14は、例えば、X線の透過性が高く、軽量で耐久性の高い炭素繊維強化樹脂(カーボンファイバー)により構成されたモノコック構造を有する。筐体14の上面は、X線源(図示せず)から出射され、被写体(図示せず)を透過したX線が入射するX線入射面15とされている。筐体14内には、X線入射面15側から順に、放射線検出パネル30、支持板16が配置されている。
【0034】
支持板16は、信号処理等を行う集積回路(IC)チップが搭載された回路基板19(
図2参照)を支持しており、筐体14に固定されている。制御ユニット12は、筐体14内の端部に配置されている。
【0035】
制御ユニット12は、マイクロコンピュータやバッテリ(いずれも図示せず)を含んで構成されている。制御ユニット12を構成するマイクロコンピュータは、有線または無線の通信部(図示せず)を介して、X線源と接続されたコンソール(図示せず)と通信して、放射線検出装置10の動作を制御する。
【0036】
図2は、放射線検出装置10の断面図、
図3は、放射線検出パネル30の平面図である。放射線検出パネル30は、X線を光に変換する蛍光体を含むシンチレータ32と、シンチレータ32から発せられた光に基づいて電荷を生成する、画素に対応する複数のセンサ部36を有するセンサ基板34と、シンチレータ32の表面および側面を覆うように設けられた熱可塑性樹脂層50、有機層52および無機反射層54と、を含んで構成されている。なお、センサ基板34は、本発明におけるシンチレータを支持する基板の一例である。
【0037】
センサ基板34は、X線入射側がポリイミド等からなる接着層18を介して筐体14のX線入射側に貼り付けられている。
【0038】
シンチレータ32は、一例としてCsI(Tl)(タリウム賦活ヨウ化セシウム)を含む柱状結晶の集合体によって構成されている。CsI(Tl)の柱状結晶は、蒸着法によってセンサ基板34上に形成することができる。シンチレータ32として、CsI(Tl)を用いることにより、X線吸収時の発光スペクトルを400nm〜700nmとすることができる。
【0039】
放射線検出装置10は、X線の入射側にセンサ基板34を配置する、いわゆる表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)による撮影方式を採用している。表面読取方式を採用することで、X線の入射側にシンチレータ32を配置する、いわゆる裏面読取方式(PSS:Pentration Side Sampling)を採用した場合と比較して、シンチレータ32における強発光位置とセンサ基板34上のセンサ部36との間の距離を短くすることができ、その結果、放射線画像の解像度を高めることができる。なお、放射線検出装置10は、裏面読取方式を採用するものであってもよい。
【0040】
熱可塑性樹脂層50、有機層52および無機反射層54は、シンチレータ32の上面および側面を覆い且つシンチレータ32の周辺部においてセンサ基板34上をも覆うように設けられている。熱可塑性樹脂層50、有機層52および無機反射層54についての詳細な説明は後述する。
【0041】
支持板16は、シンチレータ32のX線入射側とは反対側に配置されている。支持板16とシンチレータ32との間には、隙間が設けられている。支持板16は、筐体14の側部にビス等で固着されている。支持板16のシンチレータ32とは反対側の下面には、回路基板19が接着剤等を介して固着されている。
【0042】
回路基板19とセンサ基板34とは、フレキシブルプリント基板20にプリントされた配線を介して電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板20は、いわゆるTAB(Tape Automated Bonding)法により、センサ基板34の端部に設けられた外部端子21に接続されている。
【0043】
フレキシブルプリント基板20には、センサ基板34を駆動するためのゲート線駆動部22や、センサ基板34から出力された電荷を電圧信号に変換するチャージアンプ24が集積回路(IC)チップとして搭載されている。回路基板19には、チャージアンプ24により変換された電圧信号に基づいて、画像データを生成する信号処理部26や、画像データを記憶する画像メモリ28が搭載されている。
【0044】
図4は、放射線検出装置10の電気的構成を示す図である。センサ基板34は、ガラス等の絶縁体からなる絶縁性基板40の表面に複数の画素41がマトリクス状に配置されて構成されている。画素41の各々は、シンチレータ32から発せられた光に基づいて電荷を発生させるフォトダイオード等の光電変換素子により構成されるセンサ部36と、センサ部36で生じた電荷を読み出す際にオン状態とされるスイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)42とを含んでいる。
【0045】
センサ基板34は、絶縁性基板40の表面に画素41の配列に沿った一定方向(行方向)に延設されたゲート線43を有する。また、センサ基板34は、絶縁性基板40の表面にゲート線43の伸長方向と交差する方向(列方向)に延設された信号線44を有する。画素41の各々は、ゲート線43と信号線44との各交差部に対応して設けられている。
【0046】
ゲート線43の各々は、フレキシブルプリント基板20を介してゲート線駆動部22に接続されている。また、信号線44の各々は、フレキシブルプリント基板20を介してチャージアンプ24に接続されている。チャージアンプ24の出力端子は、信号処理部26に接続され、信号処理部26には、画像メモリが接続されている。
【0047】
X線源(図示せず)から出射され被写体を透過したX線が放射線検出装置10のX線入射面15から入射すると、シンチレータ32は、X線を吸収して可視光を発する。センサ基板34のセンサ部36は、シンチレータ32から発せられた光を電荷に変換して蓄積する。
【0048】
放射線画像を生成する場合には、ゲート線駆動部22は、ゲート線43を介してゲート信号をTFT42に供給する。TFT42は、ゲート線駆動部22からゲート線43を介して供給されるゲート信号により行単位でオン状態とされる。TFT42がオン状態とされることによりセンサ部36で生成された電荷が電気信号として各信号線44に読み出され、チャージアンプ24に供給される。チャージアンプ24は、信号線44に読み出された電荷を電圧信号に変換し、電圧信号を信号処理部26に供給する。
【0049】
信号処理部26は、サンプルホールド回路(図示せず)を備えており、チャージアンプ24から供給された電圧信号は、サンプルホールド回路で保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にマルチプレクサ(図示せず)、A/D(アナログ/デジタル)変換器(図示せず)が順に接続されている。個々のサンプルホールド回路で保持された電圧信号は、マルチプレクサに順に入力され、A/D変換器によってデジタル信号に変換される。信号処理部26は、A/D変換器によって生成されたデジタル信号と画素41の位置情報とを対応付けたデータを画像データとして生成し、画像データを画像メモリ28に供給する。画像メモリ28は、信号処理部26によって生成された画像データを記憶する記憶媒体である。
【0050】
図5は、放射線検出パネル30の部分的な構成を示す断面図である。シンチレータ32は、一例としてCsI(Tl)を含む柱状結晶60の集合体によって構成されており、センサ基板34上に蒸着法によって形成することができる。なお、本実施形態では、センサ基板34上にシンチレータ32を直接形成する場合を例示しているが、センサ基板34とシンチレータ32との間に、センサ基板34の保護層または平坦化層などが設けられていてもよい。すなわち、本発明において、「シンチレータを支持する基板」とは、シンチレータと基板との間に介在するあらゆる層を含む概念である。また、センサ基板34上にCsI(Tl)の非柱状結晶を形成し、非柱状結晶を基礎として柱状結晶を成長させてもよい。また、シンチレータ32は、CsI(Tl)に限らず、柱状結晶構造を有する他の材料、例えば、CsI(Na)、NaI(TI)、LiI(Eu)、KI(Tl)などで構成されていてもよい。いずれもヤング率は5Mpa程度である。
【0051】
各柱状結晶60は、隣接する柱状結晶60と空気層を介して離間しており、空気層との屈折率差から光ガイド効果を備えている。光ガイド効果により、各柱状結晶60内で発生発した可視光の大部分は、柱状結晶60内を伝搬しセンサ基板34に入射する。シンチレータ32は、一部の柱状結晶が異常成長を起こし、シンチレータ32の表面に他の部位よりも突出した少なくとも1つの突出部62が不可避的に生じる。すなわち、突出部62は、シンチレータ32を構成する複数の柱状結晶60の平均高さよりも高い、少なくとも1つの柱状結晶の先端部を含んで構成される。一方、異常成長を生じることなく形成された柱状結晶の先端部は、高さ位置が略均一とされており、略同一の面内に存在する。突出部62は、異常成長を生じることなく形成された柱状結晶の先端部により特定される基準面Sから突き出した部分である。
【0052】
シンチレータ32の上面および側面は、熱可塑性樹脂層50によって覆われている。熱可塑性樹脂層50は、シンチレータ32を保護する保護層としての機能を有する。シンチレータ32を熱可塑性樹脂層50で覆うことにより、シンチレータ32への水分の浸入を防止して、シンチレータ32の潮解を防止することができる。熱可塑性樹脂層50の材料として、ホットメルト樹脂を好適に用いることができる。ホットメルト樹脂は、室温で固体であり、水や溶剤を含まない100%不揮発性の熱可塑性材料からなる接着性樹脂である。ホットメルト樹脂としては、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・アクリル酸共重合樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体などを好適に用いることができる。ホットメルト樹脂の市販品としては、例えば、ポリエスターSP170(日本合成化学工業株式会社 「ポリエスター」は登録商標)、ヒロダイン7589(ヤスハラケミカル株式会社)、アロンメルトPES−111EE(東亜合成株式会社 「アロンメルト」は登録商標)などを好適に用いることができる。上記各製品の融点、接着温度およびヤング率を表1に示す。
【表1】
【0053】
熱可塑性樹脂層50の上には、有機層52が設けられている。有機層52は、熱可塑性樹脂層50の溶融開始温度(融点)よりも高い溶融開始温度(融点)を有する有機材料(熱可塑性樹脂)により構成されている。ここで、「熱可塑性樹脂層の溶融開始温度(融点)よりも高い溶融開始温度(融点)を有する」とは、熱可塑性樹脂層の溶融開始温度で有機層が溶融していないことを意味する。従って有機層52は、熱可塑性樹脂層50の溶融開始温度(融点)よりも高い溶融開始温度(融点)を有する有機材料(熱可塑性樹脂)の他、融点を持たない有機材料(熱硬化性樹脂)によって構成されていてもよい。有機層52として好適に用いることができる材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PP(ポリプロピレン)、PI(ポリイミド)等が挙げられる。上記の各材料の融点およびヤング率を表2に示す。PET、PEN、PPS、PPは、熱可塑性樹脂層50の溶融開始温度(融点)よりも高い溶融開始温度(融点)を有する有機材料(熱可塑性樹脂)の例である。PIは、融点を有しない有機材料(熱硬化性樹脂)の例である。
【表2】
【0054】
有機層52の上には、無機反射層54が設けられている。無機反射層54は、シンチレータ32で生成された光をセンサ基板34に向けて反射させる機能を有する。無機反射層54を設けることで、シンチレータ32で生成された光の取り出し効率を向上させることができる。無機反射層54は、主として鏡面反射性を有する材料により構成されていることが好ましい。これにより、
鮮鋭度の高い画像を得ることができる。無機反射層54の材料として、例えば、Al、Al合金、Agなどを好適に用いることができる。このように、本実施形態に係る放射線検出装置10は、鏡面反射性を有する材料で反射層が構成されている点において、拡散反射性を有する材料(具体的には、反射性微粒子を含むホットメルト樹脂)で構成された反射層を有する特開2006−52980号公報に記載のものと相違する。無機反射層を鏡面反射性を有する材料で構成することにより、拡散反射性を有する材料で構成した場合と比較して、得られる放射線画像の
鮮鋭度が向上する。
【0055】
このように、本発明の実施形態に係る放射線検出パネル30において、シンチレータ32と、無機反射層54との間に有機層52を設けることで、シンチレータ32と無機反射層54とが接触することを防止することができる。これにより、シンチレータ32が無機反射層54と接触することによる無機反射層54の腐食を防止することができる。すなわち、有機層52は、無機反射層54の保護層として機能する。また、シンチレータ32と、無機反射層54との間に有機層52を設けることで、無機反射層54の平坦性を確保することができる。
【0056】
本実施形態に係る放射線検出パネル30において、シンチレータ32の表面に形成された複数の突出部62のうちの少なくとも一部の先端は、熱可塑性樹脂層50を貫通して有機層52に接している。ここで、「接する」とは、シンチレータ32の突出部62が、有機層52の下面に接している状態および有機層52の上面に凹凸が形成されない程度において有機層52の下面を押し上げている状態を含む。なお、シンチレータ32の表面に形成された複数の突出部62の高さが不均一である場合には、最も高さの高い突出部62の先端が熱可塑性樹脂層50を貫通して有機層52に接することとなる。本実施形態に係る放射線検出パネル30は、シンチレータ32の複数の突出部62のうちの少なくとも一部の先端が熱可塑性樹脂層50を貫通して有機層52に接する構造を有するので、シンチレータ32の基準面Sから無機反射層54までの距離は、突出部62の高さおよび有機層52の層厚に応じて定まる。従って、シンチレータ32と無機反射層54との間の距離を有機層52の層厚によって制御することができる。
【0057】
また、シンチレータ32と無機反射層54との間に配置される層を、無機反射層54の構成材料(Al、Al合金、Agなど)よりもヤング率が小さい有機材料で構成することにより、シンチレータ32との接触等によるクラックの発生を抑制することができる。仮にシンチレータ32と無機反射層54との間の層を無機反射層54の構成材料よりもヤング率の大きい材料で構成した場合には、ヤング率の大きい材料で構成された層がシンチレータ32との接触等によってクラックを生じるおそれがある。一方、シンチレータ32と無機反射層54との間に配置される層を、無機反射層54の構成材料よりもヤング率が小さい有機材料で構成することにより、有機材料の層がシンチレータ32と接触した場合でも、弾性変形を生じることにより破壊を回避できる可能性が高い。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態に係る放射線検出装置によれば、シンチレータと無機反射層とを非接触としつつシンチレータと無機反射層との距離を制御し且つ無機反射層の平坦性を確保することが可能となる。
【0059】
以下に、放射線検出装置10の製造方法について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る放射線検出装置10の製造方法を示す工程フロー図である。
【0060】
工程S10において、センサ部36、ゲート線43および信号線44等が形成されたセンサ基板34上に蒸着法によってシンチレータ32を形成する。以降の説明では、シンチレータ32としてCsI(Tl)を用いる場合を例に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。工程S10における蒸着処理は、例えば、以下の手順で行うことができる。はじめに、センサ基板34を蒸着装置の基板ホルダに配置する。次に、蒸着ボートにCsIとTlIを所定の比率で充填する。次に、蒸着装置のチャンバー内部を一旦排気した後、Arガスを導入して、チャンバー内部を所定の真空度に制御する。次に、基板ホルダに配置されたセンサ基板34を所定の温度に加熱し、回転させるとともに、蒸着ボートを所定の温度で加熱することによりCsIとTlIとを蒸発させる。これにより、センサ基板34上にCsI(Tl)の柱状結晶が形成される。
【0061】
なお、本実施形態では、センサ基板34上に直接シンチレータ32を形成することとしているが、センサ基板34とシンチレータ32との間にセンサ基板34の保護層または平坦化層などを介在させてもよい。また、センサ基板34上にCsI(Tl)の非柱状結晶を形成し、非柱状結晶を基礎として柱状結晶を成長させてもよい。工程S10は、本発明における形成工程の一例である。
【0062】
工程S20において、有機層52の構成部材と、無機反射層54の構成部材とをラミネートする。以降の説明では、有機層52の構成部材としてPETフィルムを用い、無機反射層54の構成部材としてAl箔を用いる場合を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図7は、有機層52の構成部材であるPETフィルムと無機反射層54の構成部材であるAl箔とをラミネートする方法の一例を示す図である。PETフィルムとAl箔とのラミネートは、例えばドライラミネート装置100を用いて行うことができる。
図7に示すように、接着剤塗布部104において、ロール102から供給されるPETフィルム52Aの一方の面に接着剤が塗布される。接着剤が塗布されたPETフィルム52Aは、乾燥器106内に投入され、接着剤に含まれるソルベントが揮発される。無機反射層54を構成するAl箔54Aは、ロール108から供給され、PETフィルム52Aの接着剤が塗布された面に貼り付けられる。PETフィルム52AとAl箔54Aとがラミネートされたラミネートフィルム55Aは、ロール110において回収される。
【0063】
工程S30において、工程S20において作製したラミネートフィルム55Aに、熱可塑性樹脂層50の構成部材をコーティングする。以降の説明では、熱可塑性樹脂層50の構成部材としてホットメルト樹脂を用いる場合を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図8は、ホットメルト樹脂のコーティング方法の一例を示す図である。ホットメルト樹脂のラミネートフィルム55Aへのコーティングは、例えば、コーティング装置120を用いて行うことができる。PETフィルム52AとAl箔54Aとがラミネートされたラミネートフィルム55Aは、ロール122から供給される。タンク124内に収容されたホットメルト樹脂50Aは、ノズル126の先端から吐出され、ラミネートフィルム55AのPETフィルム52A側の面にコーティングされる。ホットメルト樹脂50Aは、冷却ローラ128で冷却され硬化する。ラミネートフィルム55A上にホットメルト樹脂50Aをコーティングすることにより得られた積層フィルム56Aは、切断部129において、所定のサイズに切断される。なお、積層フィルム56Aは、本発明における複合層の一例であり、工程S30および工程S20は、本発明における準備工程の一例である。また、本実施形態に係る製造方法では、積層フィルム56Aを作製する工程S20およびS30を含んでいるが、外部で作製された既製の積層フィルム56Aを用いてもよい。この場合、積層フィルム56Aを作製するための工程S20およびS30を省略することができる。
【0064】
工程S40において、センサ基板34に形成されたシンチレータ32に工程S30で作製した積層フィルム56Aを接着するための加熱加圧処理(熱圧着処理)を行う。
図9(a)および
図9(b)は、加熱加圧処理の方法の一例を示す図である。シンチレータ32に積層フィルム56Aを接着するための加熱加圧処理は、例えば、プレス装置130を用いて行うことができる。プレス装置130は、ステージ132と、スポンジ等の弾性部材136が取り付けられたスライド134と、を含んで構成されている。なお、弾性部材136としては、ゴム等からなるダイアフラムで構成されていてもよい。プレス装置130のステージ132上にシンチレータ32が形成されたセンサ基板34を載置し、さらにシンチレータ32上に積層フィルム56Aを配置する(
図9(a))。その後、プレス装置130の内部空間の温度をホットメルト樹脂50Aの溶融開始温度よりも高く且つPETフィルム52Aの溶融開始温度よりも低い温度で加熱する。これにより、ホットメルト樹脂50Aは溶融する一方、PETフィルム52Aは固体状態を維持する。加熱状態を維持しつつスライド134をステージ132側に降下させることにより、弾性部材136を積層フィルム56Aに当接させ、積層フィルム56Aがシンチレータ32に密着するように、積層フィルム56Aに押圧力を加える(
図9(b))。
【0065】
ホットメルト樹脂50Aは溶融しているので、
図10(a)に示すように、シンチレータ32の表面に形成された複数の突出部62は、加圧によりホットメルト樹脂50A内に侵入する。一方、PETフィルム52Aは、固体状態を維持しているので、
図10(b)に示すように、突出部62の積層フィルム56A内への侵入は、突出部62の先端がPETフィルム52Aに接した段階で停止する。なお、シンチレータ32の表面に形成された複数の突出部62の高さが不均一である場合には、突出部62の積層フィルム56A内への侵入は、最も高さの高い突出部62の先端がPETフィルム52Aに接した段階で停止する。すなわち、PETフィルム52Aは、突出部62の積層フィルム56A内部への侵入を停止させるストッパーとして機能する。加熱加圧処理により、
図9(b)に示すように、積層フィルム56Aは、シンチレータ32の上面および側面と、センサ基板34上のシンチレータ32の周辺部に接着され、シンチレータ32が、積層フィルム56Aによって封止される。
【0066】
なお、積層フィルム56Aに押圧力を加える手段として、ローラを用いてもよい。この場合、積層フィルム56Aに押圧力を印加するローラを積層フィルム56Aの全域に亘り第1の方向に沿って移動させ、更に上記のローラを積層フィルム56Aの全域に亘り第1の方向と直交する第2の方向に沿って移動させる。これにより、積層フィルム56Aとシンチレータ32とが熱圧着される。いずれの場合も減圧下で行うことが好ましい。工程S40は、本発明における加熱加圧工程の一例である。
【0067】
工程S50において、自然冷却によりホットメルト樹脂50Aを硬化させる。これにより、積層フィルム56Aと、シンチレータ32およびセンサ基板34との接着が完了する。
【0068】
このように、本実施形態に係る放射線検出装置10の製造方法によれば、第1の温度で溶融を開始する熱可塑性樹脂層50、第1の温度よりも高い第2の温度で溶融を開始する有機層52および無機反射層54が積層された積層フィルム56Aが作製される。また、積層フィルム56Aをシンチレータ32に接着する際に、積層フィルム56Aが第1の温度よりも高く且つ第2の温度よりも低い温度で加熱され、シンチレータ32に向けて加圧される。すなわち、熱可塑性樹脂層50が溶融し、有機層52が固体を維持した状態で積層フィルム56Aに押圧が加えられる。これにより、シンチレータ32の突出部62の積層フィルム56A内への侵入を突出部62の先端が有機層52に接した段階で停止させることができる。これにより、
図5に示すように、シンチレータ32の突出部62の先端が熱可塑性樹脂層50を貫通して有機層52に接する構造を有する放射線検出パネル30を得ることができる。従って、上記したように、シンチレータ32と無機反射層54とを非接触としつつシンチレータ32と無機反射層54との間の距離を制御することが可能となる。また、シンチレータ32の突出部62の先端が有機層52に接した段階で突出部62の積層フィルム56A内の侵入を停止させることができるので無機反射層54の平坦性を確保することができる。
【0069】
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態に係る放射線検出装置10の製造方法を示す工程フロー図である。
図11において、上記した第1の実施形態に係る工程(
図6参照)と実質的に同じ工程については、同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0070】
第2の実施形態に係る製造方法は、上記第1の実施形態に係る工程フロー(
図6参照)に対して、シンチレータ32の突出部62の高さhを測定する工程(工程S12)およびシンチレータ32の突出部62をつぶして突出部62の高さを低減させるつぶし加工を行う工程(工程S14)が追加される。
【0071】
シンチレータ32の突出部62の高さhを測定する工程(工程S12)は、センサ基板34にシンチレータ32を形成した後、加熱加圧処理(工程S40)の前に実施される。シンチレータ32の突出部62の高さhは、
図12に示すように、異常成長を生じることなく形成されたシンチレータ32の柱状結晶60の先端により特定される基準面Sと突出部62の先端との間の距離としてもよい。突出部62の高さhは、例えば、公知の形状測定レーザ顕微鏡等を用いて測定することができる。工程S12において、シンチレータ32の表面に形成された複数の突出部62の高さhの最大値や平均値等を導出してもよい。工程S12は、本発明における測定工程の一例である。
【0072】
シンチレータ32の突出部62のつぶし加工を行う工程(工程S14)は、工程S12に引き続いて実施される。突出部62のつぶし加工は、突出部62に対して押圧力を加えることにより行うことができる。
図13(a)および
図13(b)は、突出部62のつぶし加工の方法を例示した図である。突出部62のつぶし加工は、例えば、
図13(a)に示すように、シンチレータ32の表面に線状の押圧力を印加するローラ140を当接させ、ローラ140をシンチレータ32の表面全域に亘り移動させることにより行うことができる。また、
図13(b)に示すように、シンチレータ32の表面に面状の押圧力を印加するプレス板142を用いてつぶし加工を行ってもよい。
【0073】
突出部62のつぶし加工を行うことにより、
図14に示すように、突出部62の先端はつぶされて、突出部62の高さhは、つぶし加工前と比較して小さくなる。つぶし加工後における突出部62の高さhは、熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂50A)、有機層(PETフィルム52A)および無機反射層54(Al箔54A)を積層した積層フィルム56Aにおける熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂50A)の厚さ以下となることが好ましく、熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂50A)の厚さ未満とすることが更に好ましい。突出部62の高さhが、積層フィルム56Aにおける熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂50A)の厚さよりも大きい場合には、積層フィルム56Aをシンチレータ32に接着したときに、シンチレータ32と熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂50A)との間または熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂50A)と有機層52(PETフィルム52A)との間に空隙が生じるおそれがある。従って、工程S14において、突出部62の高さhが所定の閾値以下となるようにつぶし加工を行うことが好ましい。例えば、積層フィルム56Aにおける熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂50A)の厚さを閾値として用いてもよい。
【0074】
つぶし加工後における突出部62の高さhを、所定の閾値以下とするために、つぶし加工においてシンチレータ32の表面に加える押圧力を工程S12において取得した突出部62の高さhに応じて設定してもよい。例えば、工程S12において測定された突出部62の高さhの平均値や最大値が高くなる程、シンチレータ32の表面に加える押圧力を大きくしてもよい。また、突出部62の高さhが、所定の閾値以下となるまで、突出部62のつぶし加工(工程S14)と突出部62の高さhの測定(工程S12)を繰り返し実施してもよい。なお、工程S12において測定された突出部62の高さhの平均値や最大値が、所定の閾値よりも高い場合に突出部62のつぶし加工を実施することとしてもよい。また、突出部62の高さhの測定を行うことなく突出部62のつぶし加工を実施してもよい。工程S14は、本発明におけるつぶし加工工程の一例である。
【0075】
工程S40においては、工程S20および工程S30を経ることにより作製された熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂50A)、有機層52(PETフィルム52A)および無機反射層54(54A)を積層した積層フィルム56Aと、つぶし加工が施されたシンチレータ32に対して加熱加圧処理が行われる。
【0076】
図15は、第2の実施形態に係る製造方法によって製造された放射線検出パネル30の部分的な構成を示す断面図である。シンチレータ32の突出部62に対してつぶし加工を施すことにより、つぶされた突出部62の少なくとも一部の先端が熱可塑性樹脂層50を貫通して有機層52に接する。なお、つぶされた複数の突出部62の高さが不均一である場合には、つぶされた複数の突出部62のうち最も高さの高い突出部62の先端が熱可塑性樹脂層50を貫通して有機層52に接する。突出部62につぶし加工を施すことにより、突出部62の高さhを低くすることができるので、シンチレータ32と無機反射層54との間の距離をより小さくすることができ、得られる放射線画像の
鮮鋭度をより高めることができる。また、突出部62につぶし加工を施すことにより、突出部62の高さを制御することができるので、シンチレータ32と無機反射層54との間の距離の製造ばらつきを低減することができる。
【0077】
[第3の実施形態]
図16は、本発明の第3の実施形態に係る放射線検出装置10の製造方法を示す工程フロー図である。
図16において、第1の実施形態に係る工程(
図6参照)および第2の実施形態に係る工程(
図11参照)と実質的に同じ工程については、同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。第3の実施形態に係る製造方法は、熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)および有機層52(PETフィルム)を積層した積層フィルムを作製し、この積層フィルムとシンチレータ32とを接着した後に、有機層52(PETフィルム)上に無機反射層54(Al箔)を接着する点が上記第1および第2の実施形態に係る製造方法と異なる。
【0078】
工程S31において、
図8に示すコーティング装置120等を用いて、有機層52(PETフィルム)に熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)をコーティングして積層フィルムを作製する。なお、本実施形態に係る製造方法では、有機層52(PETフィルム)に熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)をコーティングして積層フィルムを作製することとしているが、外部で作製された既製の積層フィルムを用いてもよい。この場合、積層フィルムを作製するための工程S31を省略することができる。
【0079】
工程S40において、センサ基板34上に形成されたシンチレータ32の上に、工程S31で作製した積層フィルムを配置して、
図10に示すプレス装置等を用いて加熱加圧処理を行う。その後、工程S50において、自然冷却によって熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂50A)を硬化させる。
【0080】
工程S21において、無機反射層54(Al箔)の一方の面に接着剤をコーティングする。その後、工程S54において、シンチレータ32に接着された積層フィルムの有機層52(PETフィルム)の上に無機反射層(Al箔)の接着剤塗布面を当接させ加圧することにより有機層52(PETフィルム)の上に無機反射層(Al箔)を接着する。なお、シンチレータ32の突出部62の高さhを測定する工程(工程S12)およびシンチレータ32の突出部62のつぶし加工を行う工程(工程S14)を省略してもよい。
【0081】
このように、熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)と有機層52(PETフィルム)により構成される積層フィルムをシンチレータ32に接着した後に無機反射層54(Al箔)を有機層52(PETフィルム)上に接着する場合でも、
図5または
図15に示す構造と同じ構造の放射線検出パネル30を得ることができる。
【0082】
[第4の実施形態]
図17は、本発明の第4の実施形態に係る放射線検出装置10の製造方法を示す工程フロー図である。
図17において、第1の実施形態に係る工程(
図6参照)および第2の実施形態に係る工程(
図11参照)と実質的に同じ工程については、同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。第4の実施形態に係る製造方法は、熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)を、有機層52(PETフィルム)と積層した積層フィルムの形態でシンチレータ32上に供給するのではなく、熱可塑性樹脂層50をシンチレータ32上に直接コーティングする工程(工程S33)を含む点において、上記第1〜第3の実施形態に係る製造方法と異なる。
【0083】
すなわち、工程S33において、センサ基板34上に形成されたシンチレータ32に、
図18に示すように、加熱によって溶融した熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)をコーティングする。熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)は、シンチレータ32の上面および側面と、センサ基板34上におけるシンチレータ32の周辺部を覆うようにコーティングされる。工程S33は、本発明における被覆工程の一例である。
【0084】
工程S40において、工程S20において得られる有機層52(PETフィルム)と無機反射層54(Al箔)とをラミネートしたラミネートフィルムを、シンチレータ32上にコーティングされた熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)の上に配置して、
図10に示すプレス装置等を用いて加熱加圧処理を行う。
【0085】
このように、熱可塑性樹脂層(ホットメルト樹脂)を、有機層(PETフィルム)と積層した積層フィルムの形態でシンチレータ32上に供給するのではなく、熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)をシンチレータ32上に直接コーティングする方法によっても
図5または
図15に示す構造と同じ構成の放射線検出パネル30を得ることができる。
【0086】
なお、工程S14におけるシンチレータ32の突出部62のつぶし加工において、突出部62の高さhの平均値または最大値が、予め定められた閾値以下となるようにつぶし加工を実施する場合において、シンチレータ32上にコーティングされる熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)のコーティング厚さのねらい値を閾値として用いてもよい。また、シンチレータ32の突出部62の高さhを測定する工程(工程S12)およびシンチレータ32の突出部62のつぶし加工を行う工程(工程S14)を省略してもよい。
【0087】
[第5の実施形態]
図19は、本発明の第5の実施形態に係る放射線検出パネル30の部分的な構成を示す断面図である。第5の実施形態に係る放射線検出パネル30は、無機反射層54の上に、第2の有機層58を更に含む点において、
図5および
図15に示す放射線検出パネル30と異なる。第2の有機層58は、無機反射層54の上面を保護するための保護層として機能する。第2の有機層58の材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)、Ny(ナイロン)、PC(ポリカーボネート)、CPP(無延伸ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等が挙げられる。また、第2の有機層58は、上記の材料を含む複数の層で構成されていてもよい。このように、無機反射層54の上面を第2の有機層58で覆うことにより、無機反射層54の劣化を防止することができる。
【0088】
図20は、上記した第5の実施形態に係る放射線検出パネル30を備えた放射線検出装置10の製造方法を示す工程フロー図である。
図20において、第1の実施形態に係る工程(
図6参照)および第2の実施形態に係る工程(
図11参照)と実質的に同じ工程については、同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。本実施形態に係る製造方法は、無機反射層54(Al箔)の上面を保護する第2の有機層58を含む積層フィルムを形成する工程(工程S22および工程S32)を含む点において、上記第1〜第4の実施形態に係る工程フローと異なる。
【0089】
すなわち、工程S22において、第1の有機層52(PETフィルム)、無機反射層54(Al箔)および第2の有機層58(例えばPETフィルム)をラミネートする。工程S32において、工程S22にて作製したラミネートフィルムの第1の有機層52(PETフィルム)側に熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)をコーティングすることにより積層フィルムを得る。工程S40において、センサ基板34上に形成されたシンチレータ32の上に、工程S32で作製した積層フィルムを配置して、
図10に示すプレス装置等を用いて加熱加圧処理を行う。その後、工程S50により自然冷却を行うことにより、
図19に示す構造の放射線検出パネル30を得ることができる。
【0090】
なお、本実施形態では、熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)、第1の有機層52(PETフィルム)、無機反射層54(Al箔)および第2の有機層58(PETフィルム)を積層した積層フィルムを作製し、積層フィルムをシンチレータ32に接着しているが、かかる工程フローに限定されるものではない。例えば、第3の実施形態に係る工程フロー(
図16参照)の工程S21において、無機反射層54(Al箔)の上に第2の有機層58(PETフィルム)をラミネートしたラミネートフィルムを作製し、このラミネートフィルムを加熱加圧処理(工程S40)の完了後に第1の有機層52(PETフィルム)に接着してもよい。また、第4の実施形態に係る工程フロー(
図17参照)の工程S20において、第1の有機層52(PETフィルム)、無機反射層54(Al箔)および第2の有機層58(PETフィルム)をラミネートしたラミネートフィルムを作製し、このラミネートフィルムを熱可塑性樹脂層50(ホットメルト樹脂)の上に配置して加熱加圧処理(工程S40)を実施してもよい。
【0091】
[変形例]
上記した各実施形態においては、熱可塑性樹脂層50としてホットメルト樹脂を用いる場合を例示したが、ホットメルト樹脂以外の樹脂を用いることも可能である。ホットメルト樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、PE(ポリエチレン:融点136℃、ヤング率0.2GPa)やPB(ポリブテン:融点125℃ ヤング率0.5GPa)等が挙げられる。ホットメルト樹脂のカテゴリーに属さないこれらの熱可塑性樹脂は、接着剤としての機能を有しないことから、シンチレータ32と熱可塑性樹脂層50との間および熱可塑性樹脂層50と有機層52との間に、それぞれ、接着剤を介在させる必要がある。接着剤としては、例えば、タケラックA626/タケネートA50(三井化学株式会社 「タケラック」、「タケネート」は登録商標)、アドコートTM−569/CAT−RT37−0.8K(東洋モートン株式会社 「アドコート」は登録商標)等を用いることが可能である。
【0092】
図21は、熱可塑性樹脂層50としてホットメルト樹脂以外の樹脂を用いる場合における製造方法を示す工程フロー図である。
図21において、第1の実施形態に係る工程(
図6参照)および第2の実施形態に係る工程(
図11参照)と実質的に同じ工程については、同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0093】
工程S34において、工程S20において作製された有機層52(PETフィルム)および無機反射層54(Al箔)をラミネートしたラミネートフィルムの有機層52(PETフィルム)側の面に接着剤を塗布し、有機層52の上に熱可塑性樹脂層50を接着する。これにより、熱可塑性樹脂層50(例えばPE)、有機層52(PETフィルム)および無機反射層54(Al箔)を含む積層フィルムが得られる。工程S36において、積層フィルムの熱可塑性樹脂層50(PE)上に接着剤をコーティングする。
【0094】
工程S40において、センサ基板34上に形成されたシンチレータ32の上に、接着剤塗布面が当接するように工程S36によって得られた積層フィルムを配置して、
図10に示すプレス装置等を用いて加熱加圧処理を行う。このように、熱可塑性樹脂層50と有機層52との間および熱可塑性樹脂層50とシンチレータ32との間に接着剤を介在させることにより熱可塑性樹脂層50の構成部材としてホットメルト樹脂以外の熱可塑性樹脂を用いることが可能となる。なお、シンチレータ32と熱可塑性樹脂層50との間に介在する接着剤は、シンチレータ32側にコーティングしてもよい。
【0095】
また、第4の実施形態に係る工程フロー(
図17参照)のように、シンチレータ32の上に直接熱可塑性樹脂層50の構成部材をコーティングする場合には、シンチレータ32の表面に接着剤を塗布した後に熱可塑性樹脂層50のコーティングを行い、工程S20において得られる有機層52(PETフィルム)と無機反射層54(Al箔)からなるラミネートフィルムの有機層52(PETフィルム)側に接着剤を塗布してラミネートフィルムを熱可塑性樹脂層50に貼り付け、その後、加熱加圧処理(工程S40)を実施すればよい。
【0096】
以上の説明では、本発明を可搬型の電子カセッテの形態を有する放射線検出装置に適用する場合について説明したがこれに限定されるものではない。例えば立位台や臥位台などに内蔵される据え置き型の放射線検出装置に本発明に適用することも可能である。また、マンモグラフィ装置や歯科用の放射線検出装置に本発明を適用することも可能である。