(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極は、前記凹部から一部が露出される配線層と、前記配線層と電気的に接続され、前記配線層よりも前記静電チャック基板の吸着面側に形成された電極層とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電チャック。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の半導体装置を製造する際に使用される成膜装置(例えば、CVD装置やPVD装置)やプラズマエッチング装置は、基板(例えば、シリコンウエハ)を真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。このようなステージとして、例えば静電チャックが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
静電チャックは、静電チャック(ESC)基板により基板(シリコンウエハ)を吸着保持し、吸着保持された基板が所定の温度となるように温度制御を行う装置である。静電チャックには、クーロン力型静電チャックと、ジャンセン・ラーベック力型静電チャックとがある。クーロン力型静電チャックは、吸着力の電圧印加に対する応答性が良いという利点があるものの、高電圧の印加を必要とし、ESC基板と基板との接触面積が大きくないと十分な吸着力が得られないという欠点がある。これに対し、ジャンセン・ラーベック力型静電チャックは、基板に電流を流す必要があるが、ESC基板と基板との接触面積が小さくても十分な吸着力が得られるという利点がある。
【0004】
図7は、従来の静電チャックの一例を簡略化して示した断面図である。
図7に示すように、静電チャック80は、ベース部材81と、接着層82と、その接着層82を介してベース部材81上に接着されたESC基板83とを有している。ベース部材81の材料としては、例えばアルミニウムが用いられる。また、接着層82の材料としては、例えばシリコーン樹脂が用いられる。
【0005】
ベース部材81は、ESC基板83を支持するための部材である。このベース部材81には、ヒータ84が内蔵されている。ヒータ84は、電圧を印加されることで発熱し、接着層82を介してESC基板83の温度制御を行う。
【0006】
ESC基板83には、電極85が内蔵されている。電極85は、薄膜静電電極である。この電極85は、給電部86を介して静電チャック80の外部に設けられた直流電源87に接続されている。
【0007】
次に、電極85と直流電源87とを電気的に接続する給電部86の構造について説明する。
図8に示すように、給電部86の給電端子86Aの先端部86Bを、上記電極85と電気的に接続された配線層85Aの下面に接触させることで、電極85と直流電源87(
図7参照)とを電気的に接続している。
図8の例では、給電端子86Aの基端部に連設された弾性体86Cの弾性力によって、給電端子86Aの先端部が配線層85Aの下面に接触されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して各実施形態を説明する。なお、添付図面は、特徴を分かりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の樹脂層のハッチングを省略している。
【0014】
(一実施形態)
以下、一実施形態を
図1〜
図6に従って説明する。
静電チャック1は、従来の静電チャック80と同様に、ベース部材10と、接着層20と、その接着層20を介してベース部材10上に接着された静電チャック(ESC)基板30と、ESC基板30に内蔵された電極40と、電極40に電気的に接続された給電部品(コネクタ)50とを有している。
【0015】
ベース部材10は、ESC基板30を支持するための部材である。このベース部材10は、ベースプレート11と、接着層12と、その接着層12を介してベースプレート11上に接着されたヒータプレート13とを有している。
【0016】
ベースプレート11の材料としては、導電性を有する材料を用いることができる。例えばベースプレート11の材料としては、例えばアルミニウムや超硬合金等の金属材料や、その金属材料とセラミックス材との複合材料等を用いることができる。本実施形態では、入手のし易さ、加工のし易さ、熱伝導性が良好であることなどの点から、アルミニウム又はその合金を使用し、その表面にアルマイト処理(絶縁層形成)を施したものを使用している。なお、ベースプレート11の厚さは、例えば35〜40mm程度とすることができる。
【0017】
接着層12は、主としてベースプレート11とヒータプレート13との間の熱伝導を良好に維持するために設けられている。すなわち、ヒータプレート13はESC基板30上の被吸着物(例えば、シリコンウエハ)を加熱するために設けられているが、プラズマ等により被吸着物が急速に加熱された場合にその熱を外部に逃がす必要があり、また、ヒータプレート13からの熱をベースプレート11に伝導しながら被吸着物を加熱する必要がある。このため、接着層12の材料としては、熱伝導率の高い材料を選択するのが好ましく、例えばシリコーン樹脂などを用いることができる。なお、接着層12の厚さは、例えば0.5〜2.0mm程度とすることができる。
【0018】
ヒータプレート13は、金属板14と、金属板14の下面14Aに貼り付けられたフィルム状のヒータ15とを有している。ヒータ15は、電圧を印加されることで発熱し、接着層20を介してESC基板30の温度制御を行う。このヒータ15は、接着層12を介してベースプレート11上に接着されている。金属板14は、均熱板として機能する。このような金属板14の材料としては、例えばアルミニウムやその合金を用いることができる。なお、金属板14の厚さは例えば1.5〜1.8mm程度とすることができ、ヒータ15の厚さは例えば0.1〜0.5mm程度とすることができる。
【0019】
このヒータプレート13は、例えばポリイミド樹脂フィルム上にヒータ電極(金属配線)を所要の形状にパターン形成し、このヒータ電極を挟み込むように別のポリイミド樹脂フィルムを重ね合わせ、熱硬化させて一体化したもの(ヒータ15)を、金属板14に貼り合せることにより製造することができる。上記ヒータ電極の材料としては、導電性を有する材料を用いることができる。ヒータ電極の材料としては、例えばインコネル(登録商標)を用いることができる。インコネル(登録商標)はニッケル(Ni)と約15〜23%のクロム(Cr)を主成分とする耐熱合金であり、鉄(Fe)、コバルト(Co)あるいはモリブデン(Mo)を含有する場合がある。このようなインコネルは、加工性に優れ、熱間・冷間加工が可能で、耐食性にも優れている。
【0020】
接着層20は、主としてヒータプレート13とESC基板30との間の熱伝導を良好に維持するために設けられている。このような接着層20の材料としては、熱伝導率の高い材料を選択するのが好ましく、例えばシリコーン樹脂などを用いることができる。なお、ヒータプレート13の上面とESC基板30の下面との間に形成された接着層20の厚さは、例えば0.05〜0.2mm程度とすることができる。
【0021】
ESC基板30は、被吸着物が吸着保持される吸着面30A(
図1(a)では、上面)を有している。また、ESC基板30には、電極40が内蔵されている。
ESC基板30の材料としては、絶縁性を有する材料を用いることができる。例えばESC基板30の材料としては、例えばアルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素等のセラミックスや、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの有機材料を用いることができる。本実施形態では、入手のし易さ、加工のし易さ、プラズマ等に対する耐性が比較的高いなどの点から、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミックスを使用している。とくに、窒化アルミニウムを使用した場合、その熱伝導率は150〜250W/(m・K)と大きいため、ESC基板30に吸着保持される被吸着物の面内の温度差を小さくする上で好ましい。また、ESC基板30は、吸着面30Aに吸着される被吸着物のサイズ(例えば、直径が300mm)よりも一回り小さく形成されている。これにより、少なくとも上記吸着面30Aの部分がプラズマに晒されないようにしている。このESC基板30の厚さは、例えば2〜10mm程度とすることができる。
【0022】
電極40は、ESC基板30の内部に埋め込まれている。電極40は、上記吸着面30A近傍のESC基板30内部に形成された電極層41と、その電極層41と電気的に接続された第1配線層42と、第1配線層42と電気的に接続された第2配線層43とを有している。電極層41は、静電吸着用の直流電圧が印加される薄膜静電電極である。第1配線層42及び第2配線層43は、電極層41をESC基板30の下層に引き出すための配線層である。これら電極層41、第1配線層42及び第2配線層43の材料としては、ESC基板30の材料がセラミックスであることから、タングステン(W)、モリブデン、銅(Cu)等を好適に用いることができる。例えば所定の厚さに積み重ねたセラミックグリーンシートに厚膜法で電極層41、第1配線層42及び第2配線層43をそれぞれ所要の形状にパターン形成しておき、セラミック材を介在させて一体焼成することにより、所望のESC基板30を作成することができる。ここで、ESC基板30の下面から電極層41の下面までの厚さは、例えば1.8〜9.4mm程度とすることができる。また、電極層41の上面からESC基板30の吸着面30Aまでの厚さは、例えば0.2〜0.6mm程度とすることができる。なお、ESC基板30において、吸着面30Aと反対のESC基板30の下面側に、プラズマ制御用の高周波電力が給電される複数のRF電極層が埋め込まれていてもよい。
【0023】
次に、ESC基板30に内蔵された電極40と、その電極40に直流電圧を印加する直流電源側とを接続するコネクタ50に関連する構造を説明する。
上記ベースプレート11及び接着層12には、それらベースプレート11及び接着層12の厚さ方向に貫通する貫通孔11Xが形成されている。また、ヒータプレート13には、貫通孔11Xと対向する位置に、ヒータ15及び金属板14の厚さ方向に貫通する貫通孔13Xが形成されている。この貫通孔13Xは、貫通孔11Xと連通している。また、貫通孔13Xの開口径は、貫通孔11Xの開口径より小さく形成されている。このため、
図1(b)に示すように、ヒータプレート13は、平面視したときに貫通孔11Xに突出する突出部13Aを有している。この突出部13Aと貫通孔11Xの内側面とによって段差部が形成される。すなわち、ベース部材10には、ベースプレート11とヒータプレート13との境界部分に段差部を有し、ベースプレート11、接着層12、ヒータ15及び金属板14の厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されている。なお、貫通孔11Xは、その平面形状が例えば円形であり、上記貫通孔13Xと連通される部分の貫通孔11Xの直径を例えば4〜5mm程度とすることができる。また、貫通孔13Xは、その平面形状が例えば円形であり、その直径を例えば2〜3mm程度とすることができる。
【0024】
ヒータプレート13には、絶縁性部材60が接着されている。具体的には、ヒータプレート13の突出部13Aに絶縁性部材60が接着剤(図示略)により接着されている。この絶縁性部材60は、貫通孔61Xを有するベース部61と、ベース部61の上面に立設された筒状の第1筒体62と、ベース部61の下面に立設された筒状の第2筒体63とを有している。これらベース部61、第1筒体62及び第2筒体63は一体に形成されている。第1筒体62は、貫通孔61Xと連通し、その貫通孔61Xよりも開口径の大きい開口部62Xを有している。第2筒体63は、貫通孔61Xと連通し、その貫通孔61Xよりも開口径が大きく、且つ上記開口部62Xよりも開口径が大きい開口部63Xを有している。そして、第1筒体62の外側面が上記突出部13Aの内側面に接着され、第1筒体62よりも外周側のベース部61の上面が突出部13Aの下面に接着されている。絶縁性部材60の上面(第1筒体62の上面)は、ヒータプレート13の上面(金属板14の上面)と面一に形成されている。ここで、ベース部61の厚さは、例えば1.7〜1.9mm程度とすることができる。貫通孔61Xは、その平面形状が例えば円形であり、その直径を例えば1.2〜1.5mm程度とすることができる。開口部62Xは、その平面形状が例えば円形であり、その直径を例えば1.6〜1.8mm程度とすることができる。開口部63Xは、その平面形状が例えば円形であり、その直径を例えば2〜3mm程度とすることができる。なお、絶縁性部材60の材料としては、絶縁性を有する材料を用いることができる。例えば絶縁性部材60の材料としては、プラスチック材料などの樹脂材料を用いることができる。
【0025】
また、ESC基板30には、ヒータプレート13の貫通孔13Xと対向する位置に、第2配線層43の下面を露出させるための凹部30Xが形成されている。この凹部30Xは、上記貫通孔13X,11Xと連通している。具体的には、上記絶縁性部材60がヒータプレート13に接着されたときに、凹部30Xは、絶縁性部材60の開口部62X、貫通孔61X及び開口部63Xを通じてベースプレート11の貫通孔11Xと連通している。また、凹部30Xの開口径は、ヒータプレート13の貫通孔13Xの開口径よりも小さく形成され、第1筒体62の開口部62Xの開口径よりも大きく形成されている。なお、凹部30Xの深さは、後述する絶縁性部材70が十分に挿入可能な深さに設定されている。具体的には、凹部30Xの深さは、電極40に印加すべき直流電圧の電圧値と、当該凹部30X内に形成される接着層20の耐電圧特性とに応じて設定されている。例えば凹部30Xの深さは、1.3〜1.5mm程度とすることができる。
【0026】
絶縁性部材60の第1筒体62の開口部62Xから露出するベース部61の上面には、筒状の絶縁性部材70が形成されている。この絶縁性部材70は、開口部62X(貫通孔13X)内を厚さ方向(上方)に延在するように形成され、且つ凹部30X内を厚さ方向(上方)に延在するように形成されている。すなわち、絶縁性部材70は、その先端部分がESC基板30の凹部30Xに挿入されるように設けられている。本例では、絶縁性部材70の先端部は、凹部30Xの厚さ方向の中途位置まで延在している。なお、絶縁性部材70の材料としては、絶縁性を有する材料を用いることができる。例えば絶縁性部材70の材料としては、プラスチック材料などの樹脂材料を用いることができる。
【0027】
上記絶縁性部材70には、厚さ方向に貫通する貫通孔70Xが形成されている。貫通孔70Xは、上記ベース部61の貫通孔61Xと連通している。この貫通孔70Xの開口径は、貫通孔61Xの開口径と略同一に形成されている。そして、この絶縁性部材70は、ヒータプレート13とESC基板30とを接着する接着層20によって絶縁性部材
60に接着されている。
【0028】
この接着層20は、ヒータプレート13とESC基板30との間に形成されるとともに、絶縁性部材60と絶縁性部材70との間に形成されている。具体的には、接着層20は、絶縁性部材70の外側面と第1筒体62の内側面との間に形成されるとともに、図示は省略するが、絶縁性部材70の下面とベース部61の上面との間に形成されている。さらに、接着層20は、凹部30Xの内側面全面を被覆するように形成されるとともに、絶縁性部材70の先端部上面を被覆するように形成されている。なお、絶縁性部材70の先端部上面を被覆する接着層20の内側面は、絶縁性部材70の内側面と略面一に形成されている。
【0029】
上述した貫通孔11X,13X及び凹部30Xには、コネクタ50が挿入されている。具体的には、コネクタ50は、貫通孔11X内、絶縁性部材60の開口部63X内及び貫通孔61X内、絶縁性部材70の貫通孔70X内、ESC基板30の凹部30X内に挿入されている。このコネクタ50は、
図1(a)に示すように、筒状に形成された絶縁性の筒体51と、筒体51内に挿入されたホルダ52と、筒体51内に挿入され、ホルダ52と連設された弾性体53と、筒体51内に一部が挿入され、弾性体53と連設された給電端子54とを有している。なお、弾性体53は、例えばばねである。
【0030】
筒体51は、その基端側にねじ筒51Aを有し、そのねじ筒51Aがベースプレート11の貫通孔11Xの下面側の内面に螺合することにより、ベースプレート11に挿着される。この筒体51の先端部は、上記絶縁性部材60の開口部62Xに挿入されている。この筒体51は、ホルダ52及び弾性体53を全体的に囲むとともに、給電端子54を部分的に囲むように形成されている。この筒体51は、当該筒体51内に挿入されたホルダ52や給電端子54とベースプレート11とを絶縁する役割を果たす。このような筒体51の材料としては、絶縁性を有する材料を用いることができる。例えば筒体51の材料としては、プラスチック材料などの樹脂材料を用いることができる。
【0031】
ホルダ52は、筒体51に接着剤(図示略)により接着されている。このホルダ52には、当該静電チャック1外部の直流電源に電気的に接続される電源コード(図示略)が挿通され、その電源コードが挟持される。この電源コードは給電端子54とも電気的に接続される。また、ホルダ52の先端には弾性体53の基端が連設され、その弾性体53の先端には給電端子54の基端が連設されている。給電端子54の先端は、筒体51から上方に垂直に突出している。そして、給電端子54の先端部は、上記凹部30Xから露出する第2配線層43の下面に接触されている。これにより、第2配線層43が給電端子54及び上記電源コード等を通じて直流電源に電気的に接続され、電極層41と直流電源とが電気的に接続される。なお、本例の給電端子54は、弾性体53によって第2配線層43に向かって弾性的に突出されるため、その第2配線層43に対して給電端子54の先端部が突き当たって圧接される。その結果、各部材の取り付けに伴う寸法誤差に関わらず、第2配線層43に対して給電端子54を確実に電気的に接続することができる。
【0032】
ここで、上記筒体51から突出した給電端子54は、絶縁性部材60,70や接着層20によって囲まれている。換言すると、給電端子54が第2配線層43に接触されたときに、その給電端子54を囲むように絶縁性部材60,70及び接着層20が形成されている。具体的には、
図1(b)に示すように、貫通孔11X内では、筒体51から突出された給電端子54を囲むように絶縁性部材60(第2筒体63)が形成されている。この貫通孔11X内に形成された絶縁性部材60は、給電端子54とベースプレート11とを絶縁する役割を果たす。また、貫通孔13X内では、給電端子54を囲むように絶縁性部材60,70及び接着層20が形成されている。これら貫通孔13X内に形成された絶縁性部材60,70及び接着層20は、給電端子54とヒータプレート13とを絶縁する機能を果たす。すなわち、貫通孔13X内では、給電端子54とヒータプレート13との間に、3つの絶縁体(絶縁性部材60,70及び接着層20)が形成されている。さらに、凹部30X内では、給電端子54を囲むように絶縁性部材70及び接着層20が形成されている。これら凹部30X内に形成された絶縁性部材70及び接着層20は、給電端子54とヒータプレート13(金属板14)とを絶縁する機能を果たす。すなわち、凹部30X内では、給電端子54とヒータプレート13との間に、2つの絶縁体(絶縁性部材70及び接着層20)が形成されている。
【0033】
そして、静電チャック1では、コネクタ50(給電端子54等)を通じて電極40に直流電圧を印加することにより、ESC基板30と被吸着物とに反対の電荷を生じさせ、静電力(クーロン力)で被吸着物をESC基板30の吸着面30Aに吸着保持する。なお、吸着保持力は、電極40に印加される電圧が高いほど強くなる。
【0034】
次に、上記静電チャック1の作用を説明する。
静電チャック1では、電極層41と接続される第2配線層43を露出させるための凹部30XをESC基板30に形成し、その凹部30Xに挿入される絶縁性部材70を形成するとともに、凹部30Xの内側面全面を被覆する接着層20を形成するようにした。これにより、第2配線層43と電気的に接続される給電端子54の先端部分が、絶縁性部材70及び接着層20という2種の絶縁体によって囲まれる。このため、給電端子54の先端部分とヒータプレート13(金属板14)との間における絶縁体の厚みを、給電端子86Aの先端部86Bとベース部材81との間に接着層82のみが存在する場合(
図8参照)よりも厚くすることができる。したがって、給電端子54と金属板14との間の絶縁信頼性を向上させることができる。
【0035】
次に、上記静電チャック1の製造方法を簡単に説明する。
図2(a)に示すように、まず、ベースプレート11とヒータプレート13との間に接着層12を介在させた状態で、ベースプレート11の貫通孔11Xとヒータプレート13の貫通孔13Xとが対向するように、ベースプレート11及びヒータプレート13を位置合わせした状態で両者を重ね合わせる。その後、接着層12をキュア(熱硬化処理)して、その接着層12を介してベースプレート11とヒータプレート13とを接着する。これにより、ベースプレート11及びヒータプレート13からなるベース部材10が形成されるとともに、ベースプレート11及びヒータプレート13を厚さ方向に貫通する貫通孔が形成される。
【0036】
次に、
図2(b)に示す工程では、ベースプレート11の貫通孔11Xの下端側から、表面に接着剤(図示略)を塗布した絶縁性部材60を貫通孔11X内に挿入する。すると、絶縁性部材60のベース部61の上面と第1筒体62の外側面とによって形成される段差部がヒータプレート13の突出部13Aに当接される。そして、上記接着剤をキュアして、その接着剤を介してヒータプレート13と絶縁性部材60とを接着する。
【0037】
続いて、
図3(a)に示す工程では、ベース部材10(金属板14)の上面と絶縁性部材60(第1筒体62)の上面とが面一になるように、ベース部材10及び絶縁性部材60を平坦化する。すなわち、ベース部材10(金属板14)及び絶縁性部材60を上面から研削や研磨することにより、ベース部材10の上面及び絶縁性部材60の上面を平坦化する。なお、研削や研磨としては、タングステン・カーバイトやダイヤモンドのような研削用の刃(工具)を利用して研削を行うバイト研削や化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)等を用いることができる。
【0038】
次いで、
図3(b)に示す工程では、ヒータプレート13の貫通孔13Xの上端側から、絶縁性部材60の第1筒体62の開口部62Xに絶縁性部材70を挿入する。このとき、絶縁性部材70は、開口部62Xから露出する絶縁性部材60のベース部61の上面に載置される。さらに、凹部30Xが絶縁性部材70の貫通孔70Xと対向するように位置合わせしたESC基板30を、接着層20によりベース部材10上に接着する。これにより、絶縁性部材70の先端部分がESC基板30の凹部30X内に挿入される。このとき、接着層20は、ESC基板30の下面と金属板14の上面との間に形成されるとともに、凹部30Xを充填するように形成される。さらに、接着層20は、絶縁性部材70の外側面と絶縁性部材60の第1筒体62の内側面との間に形成される。換言すると、ESC基板30の下面と金属板14の上面との間、凹部30X、及び絶縁性部材70の外側面と絶縁性部材60の内側面との間に接着層20が形成されるように、ベース部材10に対してESC基板30を重ね合わせる。その際にそれらベース部材10とESC基板30との間に形成される接着層20の厚さが調整されている。なお、上記接着層20によって絶縁性部材70が絶縁性部材60に接着される。
【0039】
次に、
図4に示す工程では、先の
図3(b)で形成した接着層20のうち余剰な接着層20、具体的には貫通孔70X内に形成された接着層20、及び貫通孔70Xの上方に形成され、第2配線層43の下面を被覆する接着層20を除去する。これにより、ESC基板30の凹部30X内において、電極層41と電気的に接続される第2配線層43の下面の一部が露出される。
【0040】
また、
図4に示す工程では、ESC基板30を上面から研削又は研磨することにより、ESC基板30の上面を平坦化する。なお、研削や研磨としては、例えばバイト研削やCMPを用いることができる。
【0041】
次に、
図5に示す工程では、ホルダ52と弾性体53と給電端子54とからなる給電部55を筒体51に挿入し、図示しない接着剤により給電部55を筒体51に接着する。具体的には、ホルダ52を上記接着剤により筒体51に接着する。これにより、
図1に示したコネクタ50が製造される。そして、このコネクタ50のねじ筒51Aを貫通孔11Xにねじ込み、ベース部材10にコネクタ50を挿着するとともに、給電端子54の先端部を弾性体53の弾性力によって第2配線層43に接触させる。以上の製造工程により、
図1に示した静電チャック1を製造することができる。
【0042】
(実験結果)
次に、上記説明した構造を有する静電チャック1を、使用環境の厳しい条件で使用し続けた場合の実験結果を
図6に従って説明する。
【0043】
まず、評価用のサンプルを10種類作成した。具体的には、サンプル1〜5は、
図1に示した構造の静電チャック1である。より具体的には、サンプル1〜5は、凹部30Xの深さを1.3mmとし、その凹部30Xにプラスチックからなる絶縁性部材70を挿入し、凹部30Xの内側面全面をシリコーン樹脂からなる接着層20で被覆した静電チャック1である。一方、サンプル6〜10は、比較用のサンプルであり、
図8に示したような従来の静電チャックである。具体的には、サンプル6〜10は、
図1に示した凹部30X及び絶縁性部材70を持たず、給電端子とベース部材との間がシリコーン樹脂からなる接着層のみによって絶縁されている静電チャックである。
【0044】
そして、上記各サンプル1〜10の静電チャックの電極に直流電圧を印加し、その直流電圧の電圧値を0Vから10kVまで徐々に上昇させた場合に、給電端子とベース部材との間で放電が発生するか否かを調べた。その結果を
図6に示す。
【0045】
図6の結果から明らかなように、従来の静電チャック(サンプル6〜10)では、10kVの直流電圧が印加される前に、給電端子とベース部材との間に放電が生じてしまった。これに対し、
図1に示した構造の静電チャック1では、5つのサンプル1〜5の全てにおいて、電極40に10kVの直流電圧を印加した場合であっても、給電端子54と金属板14との間で放電が発生しなかった。このように、サンプル1〜5では、凹部30Xを深く形成し、その凹部30Xに絶縁性部材70及び接着層20という2つの絶縁体を形成したことにより、給電端子54と金属板14との間の絶縁信頼性を向上させることができた。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)電極層41と接続される第2配線層43を露出させるための凹部30XをESC基板30に形成し、その凹部30Xに挿入される絶縁性部材70を形成するとともに、凹部30Xの内側面全面を被覆する接着層20を形成するようにした。これにより、第2配線層43と電気的に接続される給電端子54の先端部分が、絶縁性部材70及び接着層20という2種の絶縁体によって囲まれる。このため、給電端子54の先端部分とヒータプレート13(金属板14)との間における絶縁体の厚みを、給電端子86Aの先端部86Bとベース部材81との間に接着層82のみが存在する場合(
図8参照)よりも厚くすることができる。これにより、給電端子54と金属板14との間の絶縁信頼性を向上させることができる。したがって、給電端子54と金属板14との間で放電が発生することを好適に抑制することができ、静電チャック1の耐久性を向上させることができる。
【0047】
また、給電端子54の先端部分と金属板14との間が、シリコーン樹脂からなる接着層20のみではなく、接着層20と絶縁性部材70とによって絶縁されている。このため、接着層20にボイドが発生した場合であっても、絶縁性部材70によって給電端子54の先端部分と金属板14との間を絶縁することができる。
【0048】
(2)さらに、上記凹部30Xの深さを、電極40に印加すべき直流電圧の電圧値と、当該凹部30X内に形成される接着層20の耐電圧特性とに応じて設定している。例えば電極40に10kV程度の直流電圧を印加する可能性がある場合には、接着層20(ここでは、シリコーン樹脂)の耐電圧特性が12kV/mmであるため、凹部30Xの深さが0.8mm以上に設定される(0.8×12=9.6kV)。本実施形態では、凹部30Xの深さを1mm以上の1.3〜1.5mm程度に設定したため、電極40の10kV程度の直流電圧を印加する場合であっても、給電端子54と金属板14との間で放電が発生することを効果的に抑制することができる。このように、凹部30Xの深さを適宜調整することにより、上述したような放電の発生を効果的に抑制することができるため、電極40に所望の直流電圧を印加しつつも、静電チャック1の耐久性を容易に向上させることができる。
【0049】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、凹部30Xの内側面全面を被覆するように接着層20を形成するようにした。これに限らず、凹部30Xの内側面の一部を被覆するように接着層20を形成するようにしてもよい。この場合であっても、凹部30Xに挿入された給電端子54と金属板14との間を、接着層20と絶縁性部材70という2つの絶縁体によって絶縁することができる。このため、給電端子54と金属板14との間の絶縁信頼性を向上させることができる。
【0050】
・上記実施形態における絶縁性部材70の先端部を、第2配線層43の下面に当接するまで延在させるようにしてもよい。これにより、給電端子54の先端部全体を、絶縁性部材70及び接着層20によって確実に囲むことができる。このため、凹部30Xに挿入された給電端子54全体と金属板14との間を、絶縁性部材70及び接着層20という2つの絶縁体によって絶縁することができる。
【0051】
・上記実施形態における金属板14を省略してもよい。
・上記実施形態におけるヒータ15は、ESC基板30に対して全体に1つのヒータ電極を設けてもよいし、ヒータ電極(ヒータゾーン)を複数に分割してそれぞれ独立させて、発熱させるべくヒータ電極(ヒータゾーン)を任意に選択できるようにしてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、絶縁性部材60上に絶縁性部材70を接着するようにした。これに限らず、例えば絶縁性部材60と絶縁性部材70とを一体に形成し、その一体に形成された絶縁性部材を貫通孔11Xに挿入するようにしてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、弾性体53の弾性力によって、コネクタ50の給電端子54と第2配線層43とを接触させ、それら給電端子54と第2配線層43とを電気的に接続するようにした。これに限らず、例えばコネクタ50の給電端子をはんだ等により第2配線層43に電気的に接続するようにしてもよい。
【0054】
・上記実施形態における静電チャック1は、単極タイプの静電チャックであってもよいし、双極タイプの静電チャックであってもよい。
・上記実施形態における静電チャック1は、クーロン力型静電チャックであってもよいし、ジャンセン・ラーベック力型静電チャックであってもよい。