(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記起動周波数は、駆動周波数と、その駆動モードの次の高次の振動モードの共振周波数との間の周波数と限定されるため、あまり高い周波数とすることができない。したがって、起動時において、十分に高い周波数から開始されないため、振動子20が急に振動を開始して突発音が発生する場合がある。
近年、動画撮影用のカメラに振動アクチュエータが用いられる場合が多く、この場合、動画撮影時等にこの突発音が録音されてしまう。特に、動画撮影時は、ウォブリング動作が行われ、電源が頻繁にON−OFFされるために、この異音の発生がさらに顕在化する。
【0005】
本発明の課題は、静音化された振動アクチュエータの駆動装置、駆動方法及び光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、位相差を変更可能な2つの駆動信号が入力される電気機械エネルギー変換素子を有する振動部と、前記電気機械エネルギー変換素子の振動により前記振動部に生じた駆動力によって、前記振動部に対して相対移動する相対移動部と、前記相対移動部が停止状態となる位相差に保持した状態で、駆動に用いる駆動周波数よりも高い起動周波数で、前記2つの駆動信号を前記電気機械エネルギー変換素子に入力し、前記2つの駆動信号の周波数を、前記起動周波数から漸次減少させ前記駆動周波数になったときに、前記位相差を、前記相対移動部が前記振動部に対して相対移動可能な位相差にする制御部とを備えたこと、を特徴とする振動アクチュエータの駆動装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータの駆動装置であって、前記起動周波数は、前記駆動周波数を含む振動モードの次の高次の振動モードの共振周波数以上の周波数であること、を特徴とする振動アクチュエータの駆動装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータの駆動装置であって、前記相対移動部が停止状態を保持する位相差は、0度又は180度の±15度であること、を特徴とする振動アクチュエータの駆動装置である。
請求項4に記載の発明は、位相差を変更可能な2つの駆動信号が入力される電気機械エネルギー変換素子を有する振動部と、前記電気機械エネルギー変換素子の振動により前記振動部に生じた駆動力によって、前記振動部に対して相対移動する相対移動部と、を備える振動アクチュエータの駆動方法であって、前記振動アクチュエータの起動時に、互いの位相差を前記相対移動部が停止状態を保つ位相差に保持した状態、かつ、前記振動アクチュエータの駆動に用いる駆動周波数よりも高い起動周波数で、前記2つの駆動信号を前記電気機械エネルギー変換素子に入力し、前記2つの駆動信号の周波数を、前記起動周波数から漸次減少させ前記駆動周波数になった際に、前記位相差を、前記相対移動部が前記振動部に対して相対移動可能な位相差にすること、を特徴とする振動アクチュエータの駆動方法である。
請求項5に記載の発明は、請求項1から3の駆動装置を備える光学機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、静音化された振動アクチュエータの駆動装置、駆動方法及び光学機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態の駆動装置で駆動される振動アクチュエータ100を備えるレンズ鏡筒1を含むカメラ2を説明する図である。
本実施形態においてレンズ鏡筒1はカメラ2の本体に対して着脱可能であるが、これに限定されず、着脱不能なものであっても良い。
【0011】
本実施形態のカメラ2は、レンズ鏡筒1内に撮像光学系(レンズ)3を備える。
またカメラ2の本体内に、撮像素子4と、AFE(Analog front end)回路5と、画像処理部6と、音声検出部7と、バッファメモリ8と、記録インターフェイス9と、モニタ10と、操作部材11と、メモリ12と、CPU13とから構成され、外部機器のPC14との接続が可能となっている。
【0012】
撮像光学系3は、複数の光学レンズにより構成され、被写体像を撮像素子4の受光面に結像させる。
図1では光学レンズ系を簡略化して、単レンズとして符号3で示している。
また、光学レンズ群の内、AF用の光学レンズは、振動アクチュエータ100の駆動により駆動される。
【0013】
操作部材11または画像の状況により撮像素子4への露光時間(シャッタースピード)が決定される。
撮像素子4は、受光面に受光素子が二次元的に配列されたCMOSイメージセンサなどによって構成される。撮像素子4は、撮像光学系3を通過した光束による被写体像を光電変換してアナログ画像信号を生成する。アナログ画像信号は、AFE回路5に入力される。
【0014】
AFE回路5は、アナログ画像信号に対するゲイン調整(ISO感度に応じて信号増幅)行う。具体的には、CPU13からの感度設定指示に応じて、撮像感度を所定範囲内で変更する。AFE回路5は、さらに、内蔵するA/D変換回路によってアナログ処理後の画像信号をデジタルデータに変換する。そのデジタルデータは、画像処理部6に入力される。
【0015】
画像処理部6は、デジタル画像データに対して、各種の画像処理を行う。
メモリ12は、画像処理部6による画像処理の前工程や後工程での画像データを一時的に記録する。
音声検出部7は、マイクと信号増幅部105から構成され、主に動画撮影時に被写体方向からの音声を検出して取り込み、そのデータをCPU13へ伝達する。
【0016】
記録インターフェイス9は、不図示のコネクタを有し、該コネクタに記録媒体15が接続され、接続された記録媒体15に対して、データの書き込みや、記録媒体からのデータの読み込みを行う。
モニタ10は、液晶パネルによって構成され、CPU13からの指示に応じて画像や操作メニューなどを表示する。
操作部材11は、モードダイヤル、十字キー、決定ボタンやレリーズボタンを示し、各操作に応じた操作信号をCPU13へ送出する。静止画撮影や動画撮影の設定は、該操作部材11により設定される。
【0017】
CPU13は、不図示のROMに格納されたプログラムを実行することによってカメラ2が行う動作を統括的に制御する。例えば、AF(オートフォーカス)動作制御、AE(自動露出)動作制御、オートホワイトバランス制御などを行う。
メモリ12は、画像処理した一連の画像データを記録する。
この様な構成のカメラ2において、本発明は、動画に対応した画像を取り込む。
【0018】
図2は、実施形態の振動アクチュエータ100および振動波アクチュエータの駆動装置101を説明するブロック図である。駆動装置101は、発振部102、移相部104、増幅部105、検出部106及びそれらを制御する制御部103を備える。
【0019】
発振部102は、制御部103の指令により所望の周波数の駆動信号を発生する。
移相部104は、制御部103の指令により、該発振部102で発生した駆動信号を所望の位相の異なる2つの駆動信号に分ける。
増幅部105は、移相部104によって分けられた2つの駆動信号をそれぞれ所望の電圧に昇圧する。
増幅部105からの駆動信号は、振動アクチュエータ100に伝達され、この駆動信号の印加により、振動アクチュエータ100の、後述する振動子20に進行波が発生し、移動子28が駆動される。
【0020】
回転検出部106は、光学式エンコーダや磁気エンコ−ダ等により構成され、移動子28の駆動によって駆動された駆動物の位置や速度を検出し、検出値を電気信号として制御部103に伝達する。
制御部103は、レンズ鏡筒1内またはカメラ本体のCPU13からの駆動指令を基に振動アクチュエータ100の駆動および振動波アクチュエータの動作を制御する。制御部103は、回転検出部106からの検出信号を受け、その値を基に、位置情報と速度情報を得て、目標位置に位置決めされるように振動アクチュエータ100発振部102の周波数や位相差等を制御する。
【0021】
図3は、本発明の実施形態の駆動装置で駆動される振動アクチュエータ100を備えるレンズ鏡筒1を説明する図であり、リング状の振動アクチュエータ100をレンズ鏡筒1に組み込んだ状態の図である。
【0022】
振動子20は、電気エネルギを機械エネルギに変換する圧電素子や電歪素子等を例とした電気機械エネルギ変換素子(以下、圧電体と称する)21と、圧電素子21を接合した弾性体22とから構成されている。振動子20には、本実施形態において一例として9波の進行波が発生する。
【0023】
弾性体22は、共振先鋭度が大きな金属材料から成り、形状は、円環形状である。弾性体22の、圧電素子21が接合される反対面には溝が切ってあり、突起部分(溝がない箇所)の先端面が駆動面22aとなり移動子28に加圧接触される。溝を切る理由は、進行波の中立面をできる限り圧電素子21側に近づけ、これにより駆動面22aの進行波の振幅を増幅させるためである。
【0024】
圧電素子21は、円周方向に沿って2つの相(A相、B相)に分かれており、各相においては、1/2波長毎に分極が交互となった要素が並べられていて、A相とB相との間には1/4波長分間隔が空くようにしてある。
【0025】
圧電素子21の下には、不織布23、加圧板24、加圧部材25が配置されている。
不織布23は、例えばフェルトで、圧電素子21の下に配置されていて、振動子20の振動を加圧板24や加圧部材25に伝えないようにしてある。
【0026】
加圧板24は、加圧部材25の加圧を受けるようにされている。
加圧部材25は、加圧板24の下に配置され、加圧力を発生させるものである。本実施形態では、加圧部材25を皿バネとしたが、皿バネでなくともコイルバネやウェーブバネでも良い。
加圧部材25は、押さえ環26に保持され、押さえ環26は固定部材27に固定されている。
【0027】
移動子28は、アルミニウムといった軽金属からなり、摺動面の表面には耐摩耗性向上のための摺動材料が設けられている。
移動子28の上には、移動子28の縦方向の振動を吸収するために、ゴムの様な振動吸収部材29が配置され、その上には出力伝達部材30が配置されている。
【0028】
出力伝達部材30は、固定部材27に設けられたベアリング31により、加圧方向と径方向とが規制され、これにより移動子28の加圧方向と径方向とが規制されている。
出力伝達部材30は、突起部32があり、そこからカム環33に接続されたフォークがかん合しており、出力伝達部材30の回転とともに、カム環33が回転される。
【0029】
カム環33には、キー溝34がカム環33に斜めに切られており、AF環35に設けられた固定ピン36が、キー溝34にかん合している。
そして、カム環33が回転駆動することにより、光軸方向に直進方向にAF環35が駆動され、所望の位置に停止できる様にされている。
固定部材27は、押さえ環26がネジにより取り付けられ、これを取り付けることで、出力伝達部材30から移動子28、振動子20、加圧部材25までが一つのモータユニットとして構成可能となる。
【0030】
図2の移相部104は、発振部102より発生された駆動信号を、互いに位相が異なるA相とB相の駆動信号に分離する。このA相とB相の駆動信号は、圧電素子21のそれぞれの電極に印加されるものである。
A相とB相の駆動信号の間に位相差が存在する場合、圧電素子21で励起された振動により弾性体22の駆動面22aで発生する波は、進行波となり、移動子28を回転させる。
【0031】
図4は、A相とB相との間の位相差と、移動子28の回転速度との関係を示す図である。
図示するように、A相とB相との位相差が±90度のときは、移動子28の回転速度は最も速くなる。そして位相差が0(又は180度)の近くになると、駆動面22aで発生する波が、進行波でなく定在波となり、移動子28の回転は停止する。
【0032】
図5は、駆動信号の周波数と、振動アクチュエータ100のインピーダンスの関係を示す図である。図中fsで示す部分は、レンズを駆動する際に用いる駆動周波数である。
振動アクチュエータ100の駆動時においては、振動アクチュエータ100を低速から開始するのが好ましいため、圧電素子21に印加する駆動信号の周波数は、駆動周波数より高い周波数(以下、起動周波数という)から開始して、徐々に駆動周波数へ下げていくのが一般的である。
【0033】
この起動周波数について説明容易のため、まず、本実施形態に対する比較形態について説明する。比較形態では、振動アクチュエータ100を駆動する際に、圧電素子21に印加するA相とB相との駆動信号の位相差を、例えば90度に固定されている。
この場合、起動周波数は、駆動周波数fsと、その駆動周波数fsが含まれる振動モード(駆動モード)の次の高次の振動モードの共振周波数f3との間の周波数f1から開始して、徐々に駆動周波数fsまで下げていく。
【0034】
このように、f1を、振動モードの次の高次の振動モードの共振周波数f3よりも高い周波数は用いない理由は、駆動信号の周波数が共振周波数f3を越える際に、振動アクチュエータ100のインピーダンスが増加して動作の制御が困難となるからである。
【0035】
しかし、この比較形態の場合、電源がONになると同時に、位相差が90度で起動周波数f1のA相とB相とが圧電素子21に印加される。起動周波数f1は、f3をより小さいので、十分に高い周波数とすることができず、振動アクチュエータ100の振動子20が急に大きな振動を開始して、突発音が発生する可能性がある。
【0036】
そこで、本実施形態では、駆動振動モードの次の高次の振動モードの共振周波数f3を超えた周波数f2から、圧電素子21への電力印加を開始する。
本実施形態においても、駆動周波数fsまで周波数を下げる際に共振周波数f3を超えなくてはならない。
共振周波数f3を越える際に、移動子28が駆動していると、上述したように振動アクチュエータ100の動作が不安定になる可能性がある。
【0037】
そこで、本実施形態では、駆動周波数fsに到達するまではA相とB相との間の位相差を0または180度にする。ただし、0度、180度は厳密な値ではなく、移動子28が回転しない範囲であれば、例えば±5度程度までは許容範囲である。
そして、振動周波数が駆動周波数fsに到達したら、A相とB相との位相差を約90度にする。位相差が90度になると、移動子28は回転を始め、振動アクチュエータ100によるレンズ駆動が可能となる。
【0038】
本実施形態によると、振動周波数が駆動周波数fsに到達するまでは、振動子20の駆動面22aには、進行波ではなく定在波が生じるので、移動子28に回転力は伝達されない。したがって、振動アクチュエータ100は停止しているので、動作に不具合を生じることがない。一方、振動子20の振動は、小さい振動から開始されるので、突発音の可能性が低い。
【0039】
図6は、本実施形態による振動アクチュエータ100によるレンズ駆動の例を示した図である。
はまず、振動アクチュエータ100への電圧供給が開始された時点t1において、位相差は0であるため、レンズは停止したままである。したがって、レンズがいきなり駆動し始めて突発音が発生することがない。
そして、駆動信号の周波数を減少させていき、共振周波数f3を越えて駆動周波数fsに入ったt2で、A相とB相との間に位相差を生じさせる。本実施形態では約90度である。なお、90度が効率が良いが、これに限定されるものではない。
そして、レンズ3が所望の位置に到達した時点t3で位相差を約0度とする。これによりレンズ3は停止する。
再度レンズ3の駆動の必要が生じた時点t4で、またA相とB相との間に位相差を生じさせる。この際、時刻t2からt3の間の移動と逆向きにレンズ3を駆動させる場合は位相差をマイナス90度にする。
【0040】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)従来、振動アクチュエータ100の起動時には、電源電圧をゆっくり投入したり、駆動周波数よりも少し高い周波数で起動していた。しかし、それでも電源ON時の突発音はなくならなかった。動画撮影中などは、アクチュエータONするたびに突発音が発生していた。また、異音発生を抑えたくとも、従来は、起動時の周波数を次のモードの共振点前までしか広げていなかった。
しかし、本発明では、起動時の周波数を次の駆動モードまで広げ、十分振動が小さい状態から起動させることにより、起動時の突発音の発生が低減される。
(2)電源ON時の駆動信号の位相差を0又は180度とすることで、振動子20が振動を開始しても、移動子28が動きだす事がなく、駆動信号の振動周波数が共振周波数を超える際の不具合も生じない。
【0041】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、レンズ鏡筒1はカメラ2の本体に対して着脱可能であるが、これに限定されず、着脱不能であっても良い。
(2)また、本実施形態で振動アクチュエータ100はレンズを内部に搭載する円環型を例に説明したが、これに限定されず、レンズ保持筒の外部において、保持筒の軸線と別の軸線周りに回転する小型なものであってもよい。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。