特許第6008064号(P6008064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6008064エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の製造方法、硬化性樹脂組成物、その硬化物、繊維強化複合材料、及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6008064
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の製造方法、硬化性樹脂組成物、その硬化物、繊維強化複合材料、及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/08 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   C08G59/08
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-515171(P2016-515171)
(86)(22)【出願日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2015074204
(87)【国際公開番号】WO2016035668
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-179064(P2014-179064)
(32)【優先日】2014年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】森永 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】木村 真実
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
(72)【発明者】
【氏名】中村 高光
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−179566(JP,A)
【文献】 特開2000−239349(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第2419301(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノールノボラック樹脂をポリグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂であって、前記フェノールノボラック樹脂が、下記構造式(1−1)〜(1〜3)
【化1】
の何れかで表されるビスフェノールFをGPC測定における面積比率で10〜60%の範囲で含有しており、
ビスフェノールF成分のうち、液体クロマトグラフ測定における前記構造式(1−1)で表される[o,p’]結合体(x1)の含有量が、{[o,p’]結合体(x1)+[o,o’]結合体(x2)+[p,p’]結合体(x3)}に占める面積比率で30〜45%の範囲であり、かつ、
前記構造式(1−2)で表される[o,o’]結合体(x2)の含有量が15〜50%の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂。
【請求項2】
前記フェノールノボラック樹脂中の3核体の含有量が、GPC測定における面積比率で0〜10%の範囲である請求項1記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
フェノールとホルムアルデヒド類とを、フェノール:ホルムアルデヒド類=35:1〜25:1(モル比)の範囲において、酸触媒で反応させた後、過剰のフェノールを蒸留する条件下で反応させて、90%以上がn=0体であるビスフェノールF(A)を得、次いで、得られたビスフェノールF(A)とホルムアルデヒド類とをビスフェノールF(A):ホルムアルデヒド類=1:0.20〜1:0.65(モル比)の条件下で反応させて得られたフェノールノボラック樹脂を、エピハロヒドリンと反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項4】
フェノールとホルムアルデヒド類とを、フェノール:ホルムアルデヒド=35:1〜25:1(モル比)の範囲において、酸触媒0.1〜3.0%の範囲で反応させた後、過剰のフェノールを蒸留する条件下で反応させ、更に薄膜分子蒸留にて蒸留することによって、99%以上がn=0体であるビスフェノールF(B)を得、次いで、得られたビスフェノールF(B)とホルムアルデヒド類とをビスフェノールF(B):ホルムアルデヒド類=1:0.20〜1:0.65(モル比)の条件下で反応させて得られたフェノールノボラック樹脂を、エピハロヒドリンと反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜の何れか一つに記載のエポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化剤が、ジシアンジアミド化合物である請求項記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項又は記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1〜の何れか一つに記載のエポキシ樹脂と、硬化剤と、強化繊維とを含有する繊維強化複合材料。
【請求項9】
請求項記載の繊維強化複合材料を硬化物である成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における耐熱性及び強靭性に優れる硬化性樹脂組成物、その硬化物、繊維強化複合材料及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維複合材料は、軽量でありながら耐熱性や機械強度に優れる特徴が注目され、自動車や航空機の筐体或いは各種部材をはじめ、様々な構造体用途での利用が拡大している。繊維強化複合材料のマトリックス樹脂には、強化繊維への含浸性が高く、かつ、貯蔵安定性に優れること、硬化性が高くありながらもボイド等の発生がないこと、硬化物における耐熱性、機械強度及び破壊靱性に優れることなど様々な要求性能があり、これら各種性能のバランスに優れる樹脂材料の開発が求められている。
【0003】
硬化性が高く、硬化物の耐熱性に優れるエポキシ樹脂として、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が知られている。特にビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂の中でも高分子量化を図ることで、硬化物の耐熱性を向上させうることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方で高分子量化したビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂は、その分子構造内に3次元的な架橋が生じやすく、エポキシ基の反応性が低くなり、この結果、その硬化物における熱履歴後の耐熱性変化が生じやすくなる他、熱線膨張性にも低いものとなってしまうことから、これを改良するものとして、フェノール核の2位、4位、6位が結合している割合を特定範囲としたビスフェノールノボラックのポリグリシジルエーテルを用いてなる硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、このような硬化性組成物は硬化性に優れる反面、分子内反応でエポキシ基が減少してしまい、その硬化物は機械強度が充分ではなく、靱性、所謂破壊靱性が低いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−90215号公報
【特許文献2】特開2013−87212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における耐熱性及び強靭性に優れる硬化性樹脂組成物、その硬化物、それを提供し得るエポキシ樹脂、その製造方法、繊維強化複合材料及び成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、フェノールノボラック樹脂をポリグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂であって、前記フェノールノボラック樹脂が、ビスフェノールFを含有しており、そのビスフェノールFにおける結合体の存在割合を特定の範囲とすることで得られるエポキシ樹脂を用いることにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち本発明は、フェノールノボラック樹脂をポリグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂であって、前記フェノールノボラック樹脂が、下記構造式(1−1)〜(1〜3)
【化1】
の何れかで表されるビスフェノールFを含有しており、
ビスフェノールF成分のうち、液体クロマトグラフ測定における前記構造式(1−1)で表される[o,p’]結合体(x1)の含有量が、{[o,p’]結合体(x1)+[o,o’]結合体(x2)+[p,p’]結合体(x3)}に占める面積比率で30〜45%の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂を提供するものである。
【0010】
更に本発明は、前記エポキシ樹脂の製造方法、これを含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、更には、当該エポキシ樹脂と硬化剤と強化繊維とを含有する繊維強化複合材料、及びこれを硬化させてなる成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化物における耐熱性及び強靭性に優れ、湿熱条件下に晒された場合にもこれら物性の低下がない硬化性樹脂組成物、その硬化物、繊維強化複合材料及び成型品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得られたフェノールノボラック樹脂(2)のGPCチャートである。
図2】実施例1で得られたフェノールノボラック樹脂(2)のHPLCチャートである。
図3】実施例1で得られたエポキシ樹脂(1)のGPCチャートである。
図4】実施例2で得られたフェノールノボラック樹脂(4)のGPCチャートである。
図5】実施例2で得られたフェノールノボラック樹脂(4)のHPLCチャートである。
図6】実施例2で得られたエポキシ樹脂(2)のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、フェノールノボラック樹脂をポリグリシジルエーテル化してなるエポキシ樹脂である。フェノールノボラック樹脂は、フェノールとホルムアルデヒド類と縮合反応で得られるものであり、1分子中におけるフェノール核の核数や、その結合部位が種々異なるものを複数含有する混合物となっていることが通常である。
【0014】
本発明においては、得られる硬化物の耐熱性や強靭性、及び湿熱条件下に晒された時のこれらの物性低下が少ない硬化性樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂について検討した結果、エポキシ樹脂の前駆体であるフェノールノボラック樹脂のその混合物において、2核体の存在及び該2核体における結合部位の相違が、得られる硬化物の物性に大きく影響を与えることを見出したものである。
【0015】
即ち、本発明のエポキシ樹脂の前駆体であるフェノールノボラック樹脂が、下記構造式(1−1)〜(1〜3)
【化2】
の何れかで表されるビスフェノールFを含有しており、当該ビスフェノールF成分のうち、液体クロマトグラフ測定における前記構造式(1−1)で表される[o,p’]結合体(x1)の含有量が、{[o,p’]結合体(x1)+[o,o’]結合体(x2)+[p,p’]結合体(x3)}に占める面積比率で30〜45%の範囲であることを必須とするものであり、このようなエポキシ樹脂を用いることで、得られる硬化物における耐熱性と強靭性との両方に優れる特徴を有する。また、湿熱条件下に晒された場合にも硬化物の耐熱性と強靭性の低下が少なく、これらの物性を高レベルに維持することができる。
【0016】
フェノールとホルムアルデヒド類から種々の方法に基づき、一気に合成されるフェノールノボラック樹脂にも前記構造式(1−1)で表される[o,p’]結合体(x1)、構造式(1−2)で表される[o,o’]結合体(x2)、構造式(1−3)で表される[p,p’]結合体(x3)が含まれる。しかしながら、本発明者らの検討において、これら従来の製造方法で得られる前記構造式(1−1)で表される[o,p’]結合体(x1)の液体クロマトグラフ測定における含有量は、{[o,p’]結合体(x1)+[o,o’]結合体(x2)+[p,p’]結合体(x3)}に対し、面積比率は50%以上であることが分かった。従来の[o,p’]結合体(x1)の含有量が50%以上の範囲である場合、これをグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂は、その硬化物において硬化剤との組み合わせ、及び硬化条件を選択し、耐熱性・弾性率を高くすると強靭性が劣る傾向にあり、強靭性を高くすると耐熱性・弾性率が低下する傾向にある。
【0017】
フェノール核は、通常2位、4位、6位がホルムアルデヒドとの反応点となりうるが、前記構造式(1−1)で表される[o,p’]結合体(x1)の含有量が、{[o,p’]結合体(x1)+[o,o’]結合体(x2)+[p,p’]結合体(x3)}に占める、液体クロマトグラフ測定における面積比率が30〜45%の範囲であると、これをグリシジルエーテル化してなるエポキシ樹脂を用いて硬化物を得ると、高い耐熱性、高い弾性率、高い強靭性を同時に兼備させることが可能であることが分かった。
【0018】
上記の物性兼備発現の理由は定かではないが、強靭性付与には[p,p’]結合体(x3)から誘導される比較的リニア優位な架橋構造が効果的であり、高い耐熱性、高い弾性率には[o,o’]結合体(x2)が効果的なのではないかと推定している。
【0019】
なお、本発明において前記2核体(X)中の各成分の含有量は、下記条件で測定した液体クロマトグラフ(HPLC)チャート図の面積比率から算出される値である。
東ソー株式会社製「Agilent 1220 Infinity LC」、
カラム: 東ソー株式会社製「TSK−GEL ODS−120T」
検出器: VWD
データ処理:東ソー株式会社製「Agilent EZChrom Elite」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 A液:水/アセトニトリル=50/50wt%
B液:アセトニトリル
A液/B液=95/5×15分
→リニアグラジエント(20min)
→0/100×20分
流速 1.0ml/分
測定波長 254nm
【0020】
特に、硬化物における前記性能をより高レベルで発現できる観点、並びに後述する強化繊維を含有する複合材料を調製する際の、強化繊維への含浸性が良好となる観点から、前記フェノールノボラック樹脂中のビスフェノールF成分の含有量が、GPC測定における面積比率で10〜60%の範囲であることがより好ましく、中でも、当該ビスフェノールF成分のうち、前記構造式(1−1)で表される[o,p’]結合体(x1)の含有量が、液体クロマトグラフ測定における面積比率で30〜45%の範囲であり、かつ、前記構造式(1−2)で表される[o,o’]結合体(x2)の含有量が15〜50%の範囲であることがより好ましい。
【0021】
本発明においてエポキシ樹脂中の前記2核体(ビスフェノールF)は、下記条件で測定したGPCのチャート図の面積比率から算出される値である。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0022】
本発明のエポキシ樹脂は、例えば、フェノールとホルムアルデヒド類とを、フェノール:ホルムアルデヒド類=35:1〜25:1(モル比)の範囲において、酸触媒で反応させた後、過剰のフェノールを蒸留する条件下で反応させて、90%以上がn=0体であるビスフェノールF(A)を得、次いで、得られたビスフェノールF(A)とホルムアルデヒド類とをビスフェノールF(A):ホルムアルデヒド類=1:0.20〜1:0.65(モル比)の条件下で反応させて得られたフェノールノボラック樹脂を、エピハロヒドリンと反応させる方法により得ることができる。
【0023】
又は、フェノールとホルムアルデヒド類とを、フェノール:ホルムアルデヒド類=35:1〜25:1(モル比)の範囲において、酸触媒0.1〜3.0%の範囲で反応させた後、過剰のフェノールを蒸留する条件下で反応させ、更に薄膜分子蒸留にて蒸留することによって、99%以上がn=0体であるビスフェノールF(B)を得、次いで、得られたビスフェノールF(B)とホルムアルデヒド類とをビスフェノールF(B):ホルムアルデヒド類=1:0.20〜1:0.65(モル比)の条件下で反応させて得られたフェノールノボラック樹脂を、エピハロヒドリンと反応させる方法により得ることもできる。
【0024】
前記ホルムアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも経済的に有利であることからホルムアルデヒドが好ましい。
【0025】
前記酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。反応後に酸成分が残存しない点から、シュウ酸を用いることが好ましい。
【0026】
酸触媒の使用割合としては、特に限定されないが、反応効率と製造コスト等の観点より、原料全体に対して0.1〜3.0質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0027】
反応温度としても特に限定されないが、反応効率の観点からは、80〜150℃の温度条件下で行うことが好ましい。
【0028】
前述の方法によれば、ビスフェノールF(2核体)を比較的多く含有するフェノールノボラック樹脂を容易に得ることができ、特に本発明で規定する前記構造式(1−1)で表される[o,p’]結合体(x1)の含有率を30〜45%の範囲で得ることができるが、2核体の各種結合体の含有率を調製するために、市販されているビスフェノールFの各種結合体を、得られたフェノールノボラック樹脂に混合して用いてもよい。
【0029】
前述のように、フェノールノボラック樹脂中のビスフェノールF(2核体)、結合部位の異なる2核体の含有量をそれぞれ測定し、必要に応じて市販されているその他のビスフェノールFやフェノールノボラック樹脂を用いてそれらの含有量を本願で規定する、あるいは好ましい範囲に調整した後、これを前駆体としてグリシジルエーテル化反応を行うことで、本願発明のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0030】
前記グリシジルエーテル化工程は、具体的には、前駆体であるフェノールノボラック樹脂中の水酸基1モルに対し、エピハロヒドリンを2〜10モルの範囲で添加し、更に、フェノールノボラック樹脂中の水酸基1モルに対し0.9〜2.0モルの塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。
【0031】
ここで用いるエピハロヒドリンは、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし2種類以上を併用しても良い。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。なお、工業生産を行う際に、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は製造工程で生じる粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリンと、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリンとを併用することが好ましい。
【0032】
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用しても良いし、固形の形態で使用しても構わない。水溶液の形態で使用する場合には、塩基性触媒を反応系中に連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧または常圧条件の下、連続的に水とエピハロヒドリンとを留出させ、これを分液して水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
【0033】
また、前記フェノール樹脂中間体とエピハロヒドリンとの反応は有機溶媒中で行うことにより反応速度が高まり、目的のエポキシ樹脂を効率的に製造することができる。ここで用いる有機溶媒は特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール化合物、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル化合物、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。
【0034】
反応終了後は、反応生成物を水洗した後、加熱減圧条件下で未反応のエピハロヒドリンや併用した有機溶媒を留去する。更に、得られるエポキシ樹脂中の加水分解性ハロゲンを一層低減するために、エポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜3.0質量部となる割合であることが好ましい。反応終了後は生成した塩を濾過又は水洗などにより除去し、加熱減圧条件下で有機溶媒を留去することにより、目的のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0035】
本発明で用いるエポキシ樹脂は、強化繊維への含浸性に優れることから、150℃での溶融粘度が1〜100mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0036】
本発明では、エポキシ樹脂を特定のものとすることにより、従来エポキシ樹脂用硬化剤として知られているものを適宜選択して組み合わせて硬化性樹脂組成物を調製し、これを適宜硬化反応させることで硬化物を得ることができる。
【0037】
ここで使用できる硬化剤としては、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物などの硬化剤を使用できる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、硬化性樹脂組成物の粘度が適当であり、後述する強化繊維への含浸性に優れる点、プリプレグ形態での保存安定性に優れる点、硬化時のボイドの発生が抑えられる点より、ジシアンジアミド化合物を用いることが好ましい。
【0039】
前記ジシアンジアミド化合物は、ジシアンジアミドや、ジシアンジアミド中の官能基、即ち、アミノ基やイミノ基、シアノ基を変性して得られる化合物であり、例えば、o−トリルビグアニド、ジフェニルビグアニド等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0040】
更に本発明の硬化性樹脂組成物は適宜硬化促進剤を含有しても良い。硬化促進剤は、例えば、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;N,N−ジメチル−N’−(3−クロロ−4−メチルフェニル)尿素、N,N−ジメチル−N’−(4−クロロフェニル)尿素、N,N−ジメチル−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N,N−ジメチル−N’−(3,4−ジクロロメチルフェニル)尿素、2,4−(N’,N’−ジメチルウレイド)トルエン、1,4−ビス(N’,N’−ジメチルウレイド)ベンゼンのような尿素誘導体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、これらの添加量は、硬化性樹脂組成物100質量部中0.01〜3質量部の範囲であることが好ましい。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物はエポキシ樹脂成分として前記詳述したエポキシ樹脂以外のその他のエポキシ樹脂を使用してもよい。具体的には、エポキシ樹脂成分の全質量に対して前述のエポキシ樹脂が30質量%以上、好ましくは40質量%以上となる範囲でその他のエポキシ樹脂を併用することができる。
【0042】
前記その他のエポキシ樹脂は種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、強靭性に優れる硬化物が得られることからビスフェノール型のエポキシ樹脂が好ましい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分と硬化剤との配合割合は、硬化性に優れ、耐熱性や強靭性に優れる硬化物が得られることから、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤中の活性水素のモル数が0.6〜1.0当量になる量が好ましい。
【0044】
また本発明の硬化性樹脂組成物は必要に応じて難燃剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0045】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性樹脂組成物中0.1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0046】
本発明の硬化性組成物は、流動性に優れ、硬化物における耐熱性及び強靭性に優れる特徴を活かし様々な用途に用いることが出来る。具体的には、自動車や航空機の筐体或いは各種部材に代表されるCFRP等の繊維強化樹脂成型品、プリント配線基板用積層板、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム、半導体封止材料、ダイアタッチ剤、フリップチップ実装用アンダーフィル材、グラブットプ材、TCP用液状封止材、導電性接着剤、液晶シール材、フレキシブル基板用カバーレイ、レジストインキなどの電子回路基板等に用いられる樹脂材料;光導波路や光学フィルムなどの光学用材料、樹脂注型材料、接着剤、絶縁塗料等のコーティング材料;LED、フォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトカプラー、CCD、EPROM、フォトセンサーなどの様々な光半導体装置等が挙げられ、特に、動車や航空機の筐体或いは各種部材に代表されるCFRP等の繊維強化樹脂成型品用途に好適に用いることが出来る。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物を積層板やフィルム等、通常有機溶剤に希釈して用いる用途に使用する場合には、必要に応じて適宜有機溶剤を配合しても良い。ここで用いる有機溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられ、中でも沸点が100℃以下のものを用いることが好ましい。これら有機溶剤の使用量は目的の用途等にもよるが硬化性樹脂組成物中の有機溶剤量が60質量%以下であることが好ましい。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物を繊維強化複合材料用に用いる場合には、実質有機溶剤を使用しないことが好ましく、有機溶剤を使用する場合には、繊維強化複合材料中の有機溶剤量が5質量%以下であることが好ましい。ここで用いる有機溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられ、中でも沸点が100℃以下のものを用いることが好ましい。
【0049】
本発明の繊維強化複合材料で用いる強化繊維は有撚糸、解撚糸、又は無撚糸などいずれでも良いが、繊維強化プラスチック製部材の成形性と機械強度を両立することから解撚糸や無撚糸が好ましい。さらに、強化繊維の形態は繊維方向を一方向に引き揃えたものや織物が使用でき、織物としては平織りや朱子織りなど、使用する部位や用途に応じて自由に選択することができる。具体的な素材としては、機械強度や耐久性に優れることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でもとりわけ成形品の強度が良好なものとなる点から炭素繊維が好ましく、かかる、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できる。中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られるポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
【0050】
本発明の繊維強化複合材料中の強化繊維の含有量は、破壊靱性及び機械強度に優れる成形物が得られることから、体積含有率が40〜85%の範囲となる量であることが好ましい。
【0051】
本発明の繊維強化複合材料を用いて繊維強化樹脂成形品を製造する方法は、型に繊維骨材を敷き、前記ワニスを多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法、オス型・メス型のいずれかを使用し、強化繊維からなる基材に硬化性組成物を含浸させながら積み重ねて成形、圧力を成形物に作用させることのできるフレキシブルな型をかぶせ、気密シールしたものを真空(減圧)成型する真空バッグ法、あらかじめ強化繊維を含有する繊維強化複合材料をシート状にしたものを金型で圧縮成型するSMCプレス法、繊維を敷き詰めた合わせ型に前記硬化性組成物を注入するRTM法、強化繊維に前記硬化性組成物を含浸させてプリプレグを製造し、これを大型のオートクレーブで焼き固める方法などが挙げられる。
【0052】
このようにして得られた繊維強化樹脂成形品の用途としては、釣竿、ゴルフシャフト、自転車フレームなどのスポーツ用品、自動車、航空機のフレーム又はボディー材、宇宙機部材、風力発電機ブレードなどが挙げられる。とりわけ、自動車部材、航空機部材、宇宙機部材には高度な破壊靱性と機械強度が要求されるため、本発明の繊維強化樹脂成形品はこれらの用途に適する。
【実施例】
【0053】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0054】
本願実施例において3核体(X)中の各成分の含有量は、下記条件で測定した液体クロマトグラフ(HPLC)チャート図の面積比率から算出した。
東ソー株式会社製「Agilent 1220 Infinity LC」、
カラム: 東ソー株式会社製「TSK−GEL ODS−120T」
検出器: VWD
データ処理:東ソー株式会社製「Agilent EZChrom Elite」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 A液:水/アセトニトリル=50/50wt%
B液:アセトニトリル
A液/B液=95/5×15分
→リニアグラジエント(20min)
→0/100×20分
流速 1.0ml/分
測定波長 254nm
【0055】
エポキシ樹脂中の3核体(X)の含有量は、下記条件で測定したGPCのチャート図の面積比率から算出した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0056】
エポキシ樹脂の溶融粘度はASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した。
【0057】
エポキシ樹脂の軟化点はIS K7234に準拠して測定した。
【0058】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、フェノール2820g(30.00モル)、シュウ酸1.4g(0.0156モル)を仕込み、窒素を吹き込みながら80℃に攪拌、昇温した。その後、42%ホルムアルデヒド水溶液71.4g(1.00モル)を60分かけて滴下、その後100℃まで30分かけて昇温しながら攪拌した。100℃到達後3時間反応を継続した。次いで、170℃まで2時間で昇温し、加熱減圧下、水蒸気を吹き込むことによって余剰のフェノールを除去してビスフェノールF(n=0体)を主成分とするフェノールノボラック樹脂(1)197部を得た。得られたビスフェノールF(1)は、水酸基当量100g/当量、2核体含有量が91%(GPC)で、2核体の異性体比率は、液体クロマトグラフ測定における面積%で、[o,p’]結合体(x1):51%、[o,o’]結合体(x2):20%、[p,p’]結合体(x3):29%であった。
【0059】
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、前記で得られたフェノールノボラック樹脂(1)100g(1.00当量)、水30g、シュウ酸0.3g(0.0033モル)を仕込み、100℃に昇温した。その後、42%ホルムアルデヒド22.1g(0.31モル)を60分かけて滴下し、100℃で3時間攪拌して反応させた。次いで、分留管を用いて反応によって生じた縮合水を留去しながら、180℃まで3時間で昇温し、加熱減圧下、水蒸気を吹き込むことによってフェノールノボラック樹脂(2)98gを得た(収率95%)。得られたフェノールノボラック樹脂(2)は、水酸基当量105g/当量、2核体含有量が14%(GPC)で、2核体の異性体比率は[o,p’]結合体(x1):38%、[o,o’]結合体(x2):26%、[p,p’]結合体(x3):36%(HPLC)であった。
【0060】
温度計、滴下ロート、冷却管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、前記で得られたフェノールノボラック樹脂(2)210g(水酸基 2.00当量)、エピクロロヒドリン740g(8.00モル)、n−ブタノール220gを入れ、45℃まで昇温した。そこに、20%水酸化ナトリウム水溶液420g(2.10モル)を3時間かけて滴下し、さらに30分攪拌を続けた後静置した。下層の食塩水を棄却し、エピクロロヒドリンを150℃にて蒸留回収を行った。フラスコ内の粗樹脂にMIBK600gを加え、さらに水158gを加えて、80℃にて水洗を行った。下層の水洗水を棄却した後、脱水、ろ過を経て、MIBKを150℃にて脱溶剤することで、エポキシ樹脂(1)を得た。得られたエポキシ樹脂は、黄色固体、軟化点は68℃、エポキシ当量は186g/当量であった。2核体含有量が12%、3核体含有が5%、4核体含有量が6%(GPC)であった。
【0061】
実施例2
実施例1で得られたフェノールノボラック樹脂(1)を薄膜蒸留装置(伝熱面積:0.1m3)を用い、温度220℃、減圧度0.5torr、フィード量50g/minの条件下で分子蒸留することによって、フェノールノボラック樹脂(3)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂(3)は、水酸基当量100g/当量、2核体含有量が99.6%(GPC)で、2核体の異性体比率は液体クロマトグラフ測定における面積%で、[o,p’]結合体(x1):50%、[o,o’]結合体(x2):20%、[p,p’]結合体(x3):30%であった。
【0062】
実施例1において、フェノールノボラック樹脂(1)の代わりに、前記で得られたフェノールノボラック樹脂(3)を用いる以外は、実施例1と同様にして、フェノールノボラック樹脂(4)を得た(収率95%)。得られたフェノールノボラック樹脂(4)は、水酸基当量105g/当量、2核体含有量が14%(GPC)で、2核体の異性体比率は[o,p’]結合体(x1):41%、[o,o’]結合体(x2):18%、[p,p’]結合体(x3):41%(HPLC)であった。
【0063】
実施例1において、フェノールノボラック樹脂(2)の代わりにフェノールノボラック樹脂(4)を用いる以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(2)を得た。得られたエポキシ樹脂は、黄色固体、軟化点は73℃、エポキシ当量は188g/当量であった。2核体含有量が12%、3核体含有が4%、4核体含有量が6%(GPC)であった。
【0064】
実施例3
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、窒素導入管、撹拌機を取り付けたフラスコに、実施例2で得られたフェノールノボラック樹脂(1)100g(1.00当量)、水30g、シュウ酸0.3g(0.0033モル)を仕込み、100℃に昇温した。その後、42%ホルムアルデヒド11.0gを60分かけて滴下し、100℃で3時間攪拌して反応させた。次いで、分留管を用いて反応によって生じた縮合水を留去しながら、180℃まで3時間で昇温し、加熱減圧下、水蒸気を吹き込むことによってフェノールノボラック樹脂(5)96gを得た(収率95%)。得られたフェノールノボラック樹脂(5)は、水酸基当量102g/当量、2核体含有量が45%(GPC)で、2核体の異性体比率は[o,p’]結合体(x1):44%、[o,o’]結合体(x2):25%、[p,p’]結合体(x3):31%(HPLC)であった。
【0065】
実施例1において、フェノールノボラック樹脂(1)の代わりに、フェノールノボラック樹脂(5)を用いる以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂(3)を得た。得られたエポキシ樹脂は、黄色液体、粘度44万mPa.s、エポキシ当量は176g/eqであった。2核体含有量が38%、3核体含有量が8%、4核体含有量が17%(GPC)であった。
【0066】
比較例1
実施例1で得られたフェノールノボラック樹脂(1)を用いて実施例1と同様にしてグリシジルエーテル化反応を行い、エポキシ樹脂(1’)を得た。
【0067】
比較例2
フェノールノボラック型エポキシ樹脂 EPICLON N−740をそのまま用いた。このエポキシ樹脂を得るための前駆体フェノールノボラック樹脂における、2核体含有量は26%(GPC)で、2核体の異性体比率は[o,p’]結合体(x1):58%、[o,o’]結合体(x2):12%、[p,p’]結合体(x3):30%(HPLC)である。
【0068】
実施例4〜6、比較例3〜4
下記要領で硬化性樹脂組成物を配合し、それらの硬化物について各種評価を行った。配合量及び各種評価試験の結果を表1に示す。なお、表中の各成分の詳細は以下の通りである。
DICY:ジシアンジアミド、三菱化学株式会社製「JERキュアDICY−7」
DCMU:N,N−ジメチル−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素(保土ヶ谷化学株式会社製「DCMU」)
【0069】
<硬化性樹脂組成物の調製>
下記表1に示す割合で各成分を配合し、二軸熱ロールを用いた溶融混練により均一混合して硬化性樹脂組成物を得た。
【0070】
<耐熱性の評価>
硬化性樹脂組成物を幅90mm、長さ110mm、高さ2mmの型枠内に流し込み、150℃で1時間プレス成形し硬化物を得た。これをダイヤモンドカッターにて幅5mm、長さ50mmに切り出し、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「DMS6100」を用いて以下の条件による両持ち曲げによる動的粘弾性を測定した。tanδが最大値となる温度をガラス転移温度(Tg)として評価した。
測定条件
測定温度範囲:室温〜260℃
昇温速度:3℃/分
周波数:1Hz(正弦波)
歪振幅:10μm
【0071】
<曲げ強度及び曲げ弾性率の測定>
硬化性樹脂組成物を幅90mm、長さ110mm、高さ2mmの型枠内に流し込み、150℃で1時間プレス成形し硬化物を得た。JIS K6911に準拠して、硬化物の曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
【0072】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6