特許第6009078号(P6009078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009078
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ポリアルキレンカーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/34 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   C08G64/34
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-525388(P2015-525388)
(86)(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公表番号】特表2015-523454(P2015-523454A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】KR2014004727
(87)【国際公開番号】WO2014193144
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2015年1月30日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0059876
(32)【優先日】2013年5月27日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0063539
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン−チョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、テク−チュン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ユン−キ
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−500867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で示される触媒及び溶媒存在下に、
エポキシド化合物と連続若しくは非連続投入される二酸化炭素を溶液重合する段階;を含み、
前記溶媒は、エチレンジクロライド、ベンゼン及びヘキサンからなる群より選択される、ポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【化5】

(上記の式において、
Qは、ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、またはリン原子を含むか若しくは含まない炭素数1乃至20のアルキレン、炭素数3乃至20のシクロアルキレン、炭素数6乃至30のアリーレン、または炭素数1乃至20のジオキシラジカルであり、
1乃至R7は、それぞれ独立して若しくは同時に、水素;またはハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリン原子のうちの一つ以上を含むか若しくは含まない炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数7乃至20のアリールアルキル基であり、
8乃至R13は、それぞれ独立して、水素または炭素数1乃至20のアルキル基であり、
nは、1乃至10の整数であり、
Xは、−Cl、−NO3または−OAcである)
【請求項2】
前記溶媒は、エポキシド化合物対比1:0.1乃至1:20の重量比で使用する請求項1に記載のポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記化学式1において、R1、R3、R5及びR7は、それぞれ独立して、水素または炭素数1乃至20のアルキル基であり、R2、R4及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1乃至20のアルキル基であり、Qは炭素数3乃至20のシクロアルキレンであり、nは1乃至10の整数であり、Xは−Cl、−NO3または−OAcである請求項1に記載のポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記化学式1において、R1、R3、R5及びR7は、それぞれ独立して、水素であり、R2、R4及びR6は、それぞれ独立して、t−ブチル基であり、Qは炭素数3乃至20のシクロアルキレンである請求項3に記載のポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記二酸化炭素は、エポキシド化合物対比0.5:1乃至10:1の重量比率で投入される、請求項1に記載のポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記溶液重合は、50乃至100℃の温度で30分乃至9時間行なう請求項1に記載のポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記溶液重合する段階で、
(n−Bu)4NY(ここで、Y=ClまたはOAc)、[PPN]Cl、[PPN]Br及び[PPN]N3からなる群より選択されるアンモニウム塩を助触媒として追加的に含む請求項1に記載のポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記エポキシド化合物は、ハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数2乃至20のアルキレンオキシド;ハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数4乃至20のシクロアルキレンオキシド;及びハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数8乃至20のスチレンオキシド;からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載のポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【請求項9】
前記エポキシド化合物は、ハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数2乃至20のアルキレンオキシドを含み、カーボネート結合選択度(carbonate linkage selectivity)が99%以上である、請求項1に記載のポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【請求項10】
重量平均分子量が1000乃至50万であるポリエチレンカーボネートを含む、請求項1に記載のポリアルキレンカーボネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシド化合物と二酸化炭素を溶液重合する段階を含むポリアルキレンカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンカーボネートは包装材またはコーティング材などとして使用されるのに有用な高分子材料である。ポリアルキレンカーボネートはエポキシ化合物と二酸化炭素から製造する方法が知られているが、前記方法は有毒な化合物であるホスゲンを使用しないという点と空気中で二酸化炭素を得ることができるという点で環境に優しい価値が高い。よって、多くの研究者らがエポキシ化合物と二酸化炭素からポリアルキレンカーボネートを製造するために多様な形態の触媒を開発してきた。
【0003】
2000年以後にこのような触媒開発分野で相当な進展が成された。そのうちの代表的なものは(Salen)Co化合物または(Salen)Cr化合物[H2Salen=N,N’−bis(3,5−dialkylsalicylidene)−1,2−cyclohexanediamine)]と[R4N]ClまたはPPNCl(bis(triphenylphoshine)iminium chloride)のようなオニウム塩(onium salt)またはアミンまたはホスフィンのような塩基(base)を混用して使用する二成分(binary)触媒系の開発である。(Salen)Co化合物の二成分(binary)触媒系に対して、エポキシドがルイス酸基を有する金属センターに配位して活性化され、これをオニウム塩(onium salt)またはバルキーアミン塩基(bulky amine base)に由来したカーボネート陰イオンが求核性攻撃するメカニズムが提案されたことがある。
【0004】
一方、中国特許公開公報第101412809号(特許文献1)では一つまたは二つの立体的に大きい中性の有機塩基グループ(TBD)を含むサレン類型のCo錯化合物触媒の合成方法とこれを用いてエポキシド化合物及び二酸化炭素を共重合してポリアルキレンカーボネートを製造する方法を開示している。
【0005】
しかし、上記方法の場合はバルク重合を用いた共重合についてのみ言及されている。バルク重合の場合、触媒活性が優れているが、重合完了後にエポキシドの自家重合副反応制御、反応器クリーニング及び高分子内部の金属残渣除去のような後処理工程が難しい問題があるためスケールアップ(scaleup)が容易でない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第101412809号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、中性のシングルサイト触媒を有する特定のコバルト錯化合物存在下に溶液重合を用いてエポキシド化合物及び二酸化炭素の二元共重合体を製造することにより、高い選択度を維持しながら同時に反応物の安定性及び重合度を調節することができ、特にバルク重合を行なった場合に比べて重合後の後処理工程が有利なポリアルキレンカーボネートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、下記の化学式1で示される触媒及び溶媒存在下に、エポキシド化合物と連続若しくは非連続投入される二酸化炭素を溶液重合する段階;を含み、
前記溶媒は、エチレンジクロライド、ベンゼン及びヘキサンからなる群より選択される、ポリアルキレンカーボネートの製造方法を提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
(上記の式において、
Qは、ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、またはリン原子を含むか若しくは含まない炭素数1乃至20のアルキレン、炭素数3乃至20のシクロアルキレン、炭素数6乃至30のアリーレン、または炭素数1乃至20のジオキシラジカルであり、
1乃至R7は、それぞれ独立して若しくは同時に、水素;またはハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリン原子のうちの一つ以上を含むか若しくは含まない炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数7乃至20のアリールアルキル基であり、
8乃至R13は、それぞれ独立して、水素または炭素数1乃至20のアルキル基であり、
nは、1乃至10の整数であり、
Xは、−Cl、−NO3または−OAcである)
前記溶媒は、エポキシド化合物対比1:0.1乃至1:20の重量比で使用することが好ましい。
【0011】
前記化学式1において、R1、R3、R5及びR7は、それぞれ独立して、水素または炭素数1乃至20のアルキル基であり、R2、R4及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1乃至20のアルキル基であり、Qは炭素数3乃至20のシクロアルキレンであり、nは1乃至10の整数であり、Xは−Cl、−NO3または−OAcであり得る。
【0012】
また、前記化学式1において、R1、R3、R5及びR7は、それぞれ独立して、水素であり、R2、R4及びR6は、それぞれ独立して、t−ブチル基であり、Qは炭素数3乃至20のシクロアルキレンであり得る。前記二酸化炭素は、エポキシド化合物対比0.5:1乃至10:1の重量比率で投入することができる。
【0013】
前記溶液重合は、50乃至100℃の温度で30分乃至9時間行なうことが好ましい。
【0014】
さらに、本発明では必要によって、前記溶液重合する段階で、(n−Bu)4NY(ここで、Y=ClまたはOAc)、[PPN]Cl、[PPN]Br及び[PPN]N3からなる群より選択されるアンモニウム塩を助触媒として追加的に含むことができる。
【0015】
また、本発明で、前記エポキシド化合物は、ハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数2乃至20のアルキレンオキシド;ハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数4乃至20のシクロアルキレンオキシド;及びハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数8乃至20のスチレンオキシド;からなる群より選択することができる。前記エポキシド化合物は、ハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数2乃至20のアルキレンオキシドを含み、カーボネート結合選択度(carbonate linkage selectivity)が99%以上であることが好ましい。
【0016】
また、本発明で、前記ポリアルキレンカーボネートを1000乃至50万の重量平均分子量を有するポリエチレンカーボネートを含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、エポキシド化合物と二酸化炭素を用いたポリアルキレンカーボネート製造時に中性シングルサイト触媒を有する特定のコバルト錯化合物を触媒として用いて、また、溶液中で共重合を行うことによって、既存のバルク重合に比べて安定性に優れ、また、重合度を調節することができる。また、本発明の方法は、重合完了後にエポキシド化合物の濃度及び粘度を下降させ自家重合制御、反応器クリーニング、及び高分子内部の金属残渣を除去することが容易であるので、後処理工程でバルク重合より有利な効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1によって得られた高分子の1HNMRスペクトル結果である。
図2】実施例2によって得られた高分子の1HNMRスペクトル結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は通常的または辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者はその自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に立脚して本発明の技術的な思想に合致する意味と概念に解釈されなければならない。
【0020】
発明の実施形態によって、本発明によれば、下記の化学式1で示される触媒及び溶媒存在下に、エポキシド化合物と連続若しくは非連続投入される二酸化炭素を溶液重合する段階;を含み、前記溶媒は、エチレンジクロライド、ベンゼン及びヘキサンからなる群より選択される、ポリアルキレンカーボネートの製造方法が提供される。
【0021】
【化2】
【0022】
(上記の式において、
Qは、ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、またはリン原子を含むか若しくは含まない炭素数1乃至20のアルキレン、炭素数3乃至20のシクロアルキレン、炭素数6乃至30のアリーレン、または炭素数1乃至20のジオキシラジカルであり、
1乃至R7は、それぞれ独立して若しくは同時に、水素;またはハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリン原子のうちの一つ以上を含むか若しくは含まない炭素数1乃至20のアルキル基、炭素数2乃至20のアルケニル基、炭素数7乃至20のアルキルアリール基、または炭素数7乃至20のアリールアルキル基であり、
8乃至R13は、それぞれ独立して、水素または炭素数1乃至20のアルキル基であり、
nは、1乃至10の整数であり、
Xは、−Cl、−NO3または−OAcである)
本発明は、エポキシド化合物と二酸化炭素を用いたポリアルキレンカーボネートの製造方法で、特定の溶媒と触媒を用いた溶液重合方法を提供する特徴がある。
【0023】
即ち、既存にはポリアルキレンカーボネート製造時に主にバルク重合を使用するので、反応時間が長いか副反応が多く発生するので、重合完了後の後処理工程が必須なものとして要求される。しかし、本発明は、重合完了後にエポキシド化合物の自家重合制御、反応器から高分子除去及び、高分子内部の金属残渣を除去することが容易であるので、後処理工程でバルク重合より有利な効果がある。
【0024】
そして、本発明の方法は、触媒の重合活性が既存のバルク重合を行なう場合より1/3水準ではあるが、優れた熱安定性を確保し、重合度調節が容易である。
【0025】
特に、本発明は、高いカーボネート結合(carbonate linkage)は維持しながら、反応後の溶液のTSCを低くして溶液の粘度を相対的に低い状態に維持することによって、高分子溶液の後段工程への移送が容易である。また、本発明によれば、高分子から触媒残渣を除去するなどの追加工程を容易に行なうことができる。
【0026】
このような一実施形態による溶液重合方法で、本発明は候補群の溶媒を直接重合スクリーニング(screening)する方法によって特定の溶媒を導出した。このような特定の溶媒としては、前述のエチレンジクロライド、ベンゼン及びヘキサンからなる群より選択されるものを使用することが好ましい。
【0027】
前記エチレンジクロライドは、ポリアルキレンカーボネートに対して溶解性(soluble)を有するので、重合完了後にポリカーボネートが溶媒中に含まれるので、移送が円滑に行われる。したがって、本発明は溶液中に含まれている状態で最終重合体の移送が可能であるので、既存のバルク重合で製造されるポリアルキレンカーボネートの移動性が低い問題を改善することができる。
【0028】
また、ヘキサンはポリアルキレンカーボネートに対して不溶性(insoluble)であるが、溶液重合が行われるので、重合完了後にろ過を通じてヘキサンを除去する工程で簡単に最終重合体を得ることができる。
【0029】
ここで、溶液重合時に他の溶媒を用いる場合、触媒の不活性化(deactivation)を促進し重合反応が全く行われないので、エポキシド化合物と二酸化炭素の二元共重合体を含むポリアルキレンカーボネートを製造することができない。
【0030】
前記溶媒は、エポキシド化合物対比1:0.1乃至1:20の重量比で使用することが好ましい。この時、その比率が1:0.1未満で過度に少なければ、重合の進行に従ってTSC及び粘度(viscosity)が急激に上昇し重合反応が均一に行われないため反応器のモータに機械的な過負荷がかかることがあるので、溶液重合の効果を得にくいこともある。また、その比率が1:20を超過すれば、収率(yield)及び分子量が減る問題がある。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態において、前記化学式1の触媒は中性シングルサイトを有するコバルト錯化合物であって、ポリアルキレンカーボネートの共重合時に既存の触媒として使用する錯化合物より高い反応性と選択性を示すことができる。
【0032】
このような化学式1の錯化合物において、Xは−NO3または−OAcであることがさらに好ましい。
【0033】
また、前記化学式1において、R1、R3、R5及びR7は、それぞれ独立して、水素または炭素数1乃至20のアルキル基、或いはより好ましく、水素または炭素数1乃至10のアルキル基であり得、R2、R4及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1乃至20のアルキル基であり得、或いはより好ましく、炭素数1乃至10のアルキル基であり得る。最も好ましく、R1、R3、R5及びR7は、それぞれ独立して、水素であり得、R2、R4及びR6は、それぞれ独立して、t−ブチル基であり得る。
【0034】
また、前記化学式1において、nは1乃至10の整数であり得、より好ましく、2乃至5の整数であり得る。
【0035】
前記化学式1において、Qは炭素数3乃至20のシクロアルキレンであり得、より好ましく、1,2−シクロヘキシレン基であり得る。
【0036】
したがって、本発明の錯化合物は、好ましい実施形態によって下記の化学式1−1の構造を有し得る。
【0037】
【化3】
【0038】
(上記の式において、Xは−NO3または−OAcである)
また、前記触媒はエポキシド化合物対比1:500乃至100000のモル比で使用することができ、より好ましくは、1:10000乃至1:60000のモル比で使用することができる。この時、その比率が触媒対比1:500未満であれば、触媒の使用量が多いため重合後に触媒の除去が容易でなく、重合された後に触媒残渣がバックバイティング(back biting)を誘導するなどの問題がある。また、その比率が触媒対比1:100000を超過すれば、触媒の濃度が低いため反応時間が長くかかり、最終収率(yield)が低い問題がある。
【0039】
また、本発明で、前記エポキシド化合物は、ハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数2乃至20のアルキレンオキシド;ハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数4乃至20のシクロアルキレンオキシド;及びハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数8乃至20のスチレンオキシド;からなる群より選択された1種以上であり得る。より好ましく、前記エポキシド化合物は、ハロゲンまたは炭素数1乃至5のアルキル基で置換若しくは非置換された炭素数2乃至20のアルキレンオキシドを含み、カーボネート結合選択度(carbonate linkage selectivity)が99%以上であり得る。
【0040】
また、前記エポキシド化合物の具体的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、ペンテンオキシド、ヘキセンオキシド、オクテンオキシド、デセンオキシド、ドデセンオキシド、テトラデセンオキシド、ヘキサデセンオキシド、オクタデセンオキシド、ブタジエンモノオキシド、1,2−エポキシ−7−オクテン、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、アルファ−ピネンオキシド、2,3−エポキシノルボルネン、リモネンオキシド、ジエルドリン、2,3−エポキシプロピルベンゼン、スチレンオキシド、フェニルプロピレンオキシド、スチルベンオキシド、クロロスチルベンオキシド、ジクロロスチルベンオキシド、1,2−エポキシ−3−フェノキシプロパン、ベンジルオキシメチルオキシラン、グリシジル−メチルフェニルエーテル、クロロフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル、エポキシプロピルメトキシフェニルエーテル、ビフェニルグリシジルエーテル、グリシジルナフチルエーテルなどがある。好ましく、前記エポキシド化合物はエチレンオキシドを使用する。
【0041】
また、前記溶液重合する段階で(n−Bu)4NY(ここで、Y=ClまたはOAc)、[PPN]Cl、[PPN]Br及び[PPN]N3からなる群より選択されるアンモニウム塩を助触媒として追加的に含むことができる。
【0042】
また、本発明の一実施形態によるポリアルキレンカーボネートの製造方法で、ポリアルキレンカーボネート重合方法としては回分式重合法、半回分式重合法、または連続式重合法が使用可能である。
【0043】
また前記二酸化炭素はエポキシド化合物対比0.5:1乃至10:1の重量比率で投入することができる。
【0044】
また、ポリアルキレンカーボネートを製造する溶液重合において、二酸化炭素の圧力は常圧から100気圧であり得、好ましくは2乃至50気圧であり得る。
【0045】
前記二酸化炭素は反応中に連続若しくは非連続で投入することができるが、連続投入されることが好ましく、このような場合、重合反応器はセミバッチ型(semi−batch type)または閉鎖型バッチシステム(closed batch system)を用いることが良い。前記重合で二酸化炭素を連続投入時、反応圧力は5乃至50bar、或いは10乃至40barであり得る。
【0046】
一方、前記溶液重合は50乃至100℃の温度で行なうことができる。また、前記エポキシド化合物、好ましくエチレンオキシドの自家重合温度が90℃であるので、自家重合によるポリアルキレングリコールなどの副産物含量を減らすためには、60乃至80度の温度で溶液重合を行うことがさらに好ましい。
【0047】
また、既存に知られた実験では重合に要求される時間を20時間以上と明示しているが、このような場合、重合反応時間が過度に長くかかるため好ましくなく、高温で長時間を反応時(例えば、20時間)、媒体(medium)上でバックバイティング(back biting)によってサイクリックカーボネートが形成され、得られた高分子の分子量がむしろ減少する余地が高い。
【0048】
しかし、本発明では溶液重合時、前述の溶媒と触媒の組み合わせで、重合反応を6時間以下、より好ましく30分乃至9時間、最も好ましく3乃至5時間行う。即ち、本発明は短い重合時間でも既存と同等水準のエポキシド化合物の転換率を示すことができ、副産物の生成も減少させることができる。
【0049】
このような本発明の一実施形態によって製造されたポリアルキレンカーボネートはエチレンオキシドと二酸化炭素の二元共重合体であって、1000乃至50万の重量平均分子量を有するポリエチレンカーボネートを含むことができる。また、本発明によれば、ポリアルキレンカーボネートのTOFは300乃至1500(mol/mol−cat.hr)であって、単位時間当り単位活性点当り反応した分子数が多いためポリアルキレンカーボネート製造のための十分な活性を示すことができる。
【0050】
以下、本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。但し、これら実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されると解釈されないというべきである。
【実施例】
【0051】
[実施例1乃至2及び比較例1乃至6]
化学式1−1のコバルト触媒及び溶媒を用いてエチレンオキシドと連続投入される二酸化炭素の溶液重合を通じてポリエチレンカーボネートを製造した。実施例1乃至2の重合条件と結果は下記表1に示した。また、実施例1及び2の方法で製造されたポリエチレンカーボネートの1H NMRスペクトル結果はそれぞれ図1及び2に示した。また、比較例1乃至6の重合条件と結果は表2に示した。
【0052】
【化4】
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
上記表1及び2を通じて、本発明の場合、中性シングルサイトを有する触媒と共に溶媒として1,2−EDCまたはヘキサンを用いて溶液重合を行なう場合、EO/CO2の共重合が起こるのが確認された。したがって、前記1,2−EDCまたはヘキサンは触媒自体に不活性化(deactivation)効果が非常に少ないながら、それぞれポリアルキレンカーボネート、特にポリエチレンカーボネートに対して溶解性若しくは非溶解性を有するものであって、ポリアルキレンカーボネートを溶液重合を通じて製造時に十分に溶媒(solvent)として利用可能であるのを確認することができる。
【0056】
また、図1及び2に示されたように、実施例1及び2はエチレンオキシドと二酸化炭素の交互共重合がよく行なわれてポリエチレンカーボネートが製造されるのを確認することができる。また、溶液重合時にもポルリアルキルレングリコール及びサイクリックカーボネートなどの付加ピークがポリアルキレンカーボネート結合対比1%未満の極少量であると確認された。
【0057】
反面、比較例1乃至6の溶媒を用いる場合、共重合が全く行われず収率とTOF結果が全く測定できなかった。したがって、極性若しくは非極性を有する溶媒であっても、溶液重合時に特定の溶媒が使用されなければポリアルキレンカーボネートが製造できないのを確認することができた。
【0058】
以上、本発明内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的技術は単に好ましい実施様態に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されるのではない点は明白である。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義されるというべきである。
図1
図2