【実施例】
【0032】
実施例1〔米ゲル入りバウムクーヘン〕
下記の原料を用いてバウムクーヘンを製造した。
ローマッセ 100g
〔ローマジパン〕(アーモンド2:砂糖1のペースト)
水飴 60g
バター 600g
卵黄 800g
ラム酒 105g
グラニュー糖 900g
卵白 1400g
生クリーム 105g
小麦粉 600g
米 80g
水 240g
コーンスターチ 180g
バニラオイル 25g
ベーキングパウダー 32g
塩 8g
レモン果皮 15g
合計 5250g
【0033】
バウムクーヘンの製造手順は以下のとおりとした。
(1)攪拌容器にローマッセ、水飴、バター、生クリーム、バニラオイル及び塩を加えて泡立てた。
(2)米80gを水240g(3倍加水)と共に炊飯器(NP−NA10、象印マホービン株式会社)に入れてお粥モードで炊飯を行った。
(3)(2)で得られた糊化物の粗熱を取った後、ラム酒及びレモン果皮を加えてカッターミキサー(ロボクープ、Blixer R6 V.V.)を用いて攪拌(900rpm、2分)し、米ゲルを得た。
(4)米ゲルと卵黄を(1)に加え、カッターミキサーを用いて攪拌して乳化した(2000rpm、2分)。
(5)卵白にグラニュー糖を数回に分けながら加え泡立てた。
(6)(4)に(5)を加えて混ぜた。
(7)小麦粉、ベーキングパウダー及びコーンスターチを一緒に篩い、(6)に加えた。
(8)グラシン紙を巻きつけた回転するバウムクーヘンの心棒を(7)に浸した後、回しながら焼きこれを20回程度繰り返し太く焼き上げた。なお、必要に応じて、仕上げにフォンダンやチョコレートをかけてもよい。
(9)粗熱をさました後、心棒を抜き、幅4〜5cm程度に輪切りして、アルコール蒸散剤又は脱酸素剤などの日持ち向上剤と共にピロー包装した。
【0034】
比較例1〔通常のバウムクーヘン〕
下記の原料を用いてバウムクーヘンを製造した。
ローマッセ 100g
水飴 60g
バター 600g
卵黄 800g
ラム酒 105g
グラニュー糖 900g
卵白 1400g
生クリーム 105g
小麦粉 680g
コーンスターチ 180g
バニラオイル 25g
ベーキングパウダー 32g
塩 8g
レモン果皮 15g
合計 5010g
【0035】
バウムクーヘンの製造手順は以下のとおりとした。
(1)攪拌容器にローマッセ、水飴、バター、塩を加えて泡立てた。
(2)卵黄にグラニュー糖を20g取分けて加え、ラム酒、バニラオイル及びレモン果皮を入れ泡立てた。
(3)生クリームに卵白と残りのグラニュー糖を数回に分けながら加え泡立てた。
(4)(1)に(2)を加え混ぜた後、(3)を加え混ぜた。
(5)小麦粉とベーキングパウダー、コーンスターチを一緒に篩い、(4)に加えた。
(6)グラシン紙を巻きつけた回転するバウムクーヘンの心棒に(5)の生地を浸し、回しながら焼き、これを20回程度繰り返し太く焼き上げた。なお、必要に応じて、仕上げにフォンダンやチョコレートをかけてもよい。
(7)粗熱をさました後、心棒を抜き、幅4〜5cm程度に輪切りして、アルコール蒸散剤又は脱酸素剤などの日持ち向上剤と共にピロー包装した。
なお、香料、洋酒、膨張剤、塩、生クリーム、レモン果皮は必須材料では無い。
【0036】
実施例1及び比較例1の各バウムクーヘンを、以下の試験に供した。
【0037】
〔粘弾性(クリープ試験)〕
製造直後、1週間後及び2週間後の、実施例1のバウムクーヘンならびに比較例1のバウムクーヘンをそれぞれ、25mm×25mm×25mmの大きさに成形し、サンプルとした。
【0038】
直径55mmの円盤型プランジャを取り付けたクリープメータ(RE2−33005S、株式会社山電)を用い、荷重0.5N、荷重時間1分間でサンプルのクリープ試験を実施した。乾燥を防ぐために計測直前までサンプルをプラスチック製の密閉容器で保存した。
【0039】
特開2012−95578号公報の
図4に示す4要素フォークト粘弾性モデルを得られた時間−歪データに適用し、瞬間弾性率を算出した。このモデルにおける歪、時間、応力及び粘弾性係数の関係は、以下の式(1)のように表される。
【数1】
(ε:歪、t:時間、σ
0:応力、E
0:瞬間弾性率、E
1:遅延弾性率、η
1:遅延粘性率、η
N:永久粘性率。)
【0040】
粘弾性係数の算出には、統計解析ソフトJMP7(SAS Institute.Inc)を用いた。なお、瞬間弾性率は噛み始めの硬さの指標である。
【0041】
〔水分計測(炉乾法)〕
【0042】
粘弾性測定に用いたのと同じ各サンプルに含まれる水分を、炉乾法にて、130℃で3分間の条件で測定した。結果を
図2〜4に示す。
図2〜4中の**は、p<0.01において有意差があることを示す。
【0043】
〔官能評価〕
粘弾性測定に用いたのと同じ各サンプルの風味を、24名のパネラーが評価した。比較例1(対照)を、評点0(基準)とし、実施例1を、
図19に示すスコアで評価した。
【0044】
図1から明らかなとおり、比較例1の各サンプルと比較して実施例1のサンプルは、瞬間弾性率が低かった。
図2〜4から明らかなとおり、実施例1のサンプルの含水率は、比較例1の各サンプルと比較して有意に高かった。また、実施例1で得られたバウムクーヘンは、評点2.3(p<0.01で有意差あり)であり、比較例1で得られたバウムクーヘンと比べて、しっとり感を有し、なめらかな口当たりであり、保湿力が高いことが分かった。これらの結果は、本発明の添加材は、バウムクーヘンなど食品の本来の物性を改善することができることを示している。
【0045】
比較例1のように米ゲルを含まない従来のバウムクーヘンの、常温又は冷蔵で保存された際の賞味期限は、約1ヶ月である。一方、実施例1の米ゲルを含むバウムクーヘンも、常温又は冷蔵にて保存でき、1ヶ月を経過した後も品質を保持することができると予測される。
【0046】
実施例2〔米ゲルパン〕
以下に示す原料配合のパン生地を調製し、直捏法により食パン(小麦粉70%+米30%)を製造した。
強力粉(ミリオン) 700g
米(モミロマン) 300g
水 650g
砂糖 60g
塩 20g
スキムミルク 20g
ショートニング 50g
ドライイースト 10g
なお、水分は、米ゲルの調製において蒸発分を後で他の原料と共に加水した。
【0047】
米ゲルは以下のようにして調製した。米300gを水650gと共に炊飯器(NP−NA10、象印マホービン株式会社)に入れてお粥モードで炊飯を行った。得られた糊化物の粗熱を取った後、カッターミキサー(ロボクープ、BLIXER−5Plus)を用いて攪拌(1500rpm、3分)し、米ゲルを得た。
【0048】
食パンの製造手順は以下のとおりとした。
米ゲルを、上記の原料のうちショートニング以外の原料と共にボールに入れ、製パン用ミキサー(KTM−10、関東混合機工業株式会社)を用いて混合(ミキシング)した。ミキシングは、まず低速(150rpm)3分、中速(250rpm)1分で行い、次いでショートニングを追加した後、最終的にパン生地温度が27℃になるような条件で(すなわち、低速4分、中速1分)行った。
【0049】
次に、一次発酵を行った。一次発酵は、27℃、75%RHに設定したドウコンディショナー(NS−D923FA、パナソニック株式会社)内で行い、時間は80分間とした。
【0050】
さらに、パン生地を420gずつ4つに分割し、丸めを行った。その後、27℃、75%RHに設定したドウコンディショナー内で、25分間ベンチタイム(生地の寝かせ)をとった。加えて、圧延幅4.5mmに設定したモルダ(WR−01、株式会社オシキリ)でパン生地の圧延を行った。その後、内寸法で上底9cm、下底7cm、高さ8cm、奥行き19cmの台形型の食パン一斤型に、パン生地を詰め、38℃、85RH%に設定したホイロ槽(トークホイロ、戸倉商事株式会社)内で発酵を行った。発酵終了時を、パン生地上面がパン型のすりきりより1cm上に達した時点とした。その結果発酵時間は約50分であった。その後、オーブン(739 Shop Oven、Revent International AB)を用いて200℃で20分間焼成を行った。
【0051】
比較例2〔米粉パン〕
米の代わりに米粉(波里)を用いたほかは実施例2と同様にして、食パンを製造した(小麦粉70%+米粉30%)。
【0052】
比較例3〔小麦粉パン〕
米を配合せず、小麦粉の配合量を1000gとしたほかは、実施例2と同様にして食パンを製造した(小麦粉100%)。
【0053】
実施例2及び比較例2〜3の各食パンを、以下の試験に供した。
【0054】
〔粘弾性(クリープ試験)〕
実施例2及び比較例2〜3の食パン(ローフ)は乾燥を防ぐために、ポリエチレン製の袋に入れ室温で保存し、焼成終了後1、2、3日経過後に試験を行った。試験条件は、荷重0.15Nとしたほかは特開2012−95578号公報の実施例の粘弾性計測と同様の条件で計測し、得られた各粘弾性計測値をローフ全体の代表値とした。結果を
図5〜8に示す。瞬間弾性率は噛み始めの硬さの指標である。
【0055】
〔水分計測(炉乾法)〕
製造から1日後のサンプルに含まれる水分を、炉乾法にて、130℃で3時間の条件で測定した。
【0056】
図5〜8から明らかなとおり、比較例2〜3の食パンと比較して、実施例2の食パンはやわらかく、時間が経過しても硬さの変化が少なかった。なお、水分含量は3種類とも43%で同一であった。これらの結果は、本発明の添加材が、食パンなどの食品の本来の物性を改善することができることを示している。
【0057】
実施例3〔水産練り製品(米6%添加)の物性改善〕
真たら(以降、たらと称する。)の皮と骨を取り除き、冷水でゆすいだ後に氷水に10分晒した。水をキツく絞り、たらに対し、塩、米ゲルを添加し、フードプロセッサで3分(3〜10分)攪拌して粘りを出した。米ゲルは、たらの重量100%に対し、米6%、水10.8%となる量に相当する米ゲルを添加した。米ゲルは原料の重量比が上記のとおりとなるようにしたこと、及び攪拌時間を2分にしたことのほかは、実施例2と同様の条件で製造した。
【0058】
比較例4〔水産練り製品(片栗粉6%)の物性改善〕
米ゲルに代えて、片栗粉と水を添加した他は、実施例3と同様にして水産練り製品を調製した。片栗粉の添加量及び水の添加量はそれぞれ、たらの重量100%に対し、6%、10.8%とした。
【0059】
比較例5〔水産練り製品(小麦粉6%)の物性改善〕
米ゲルに代えて、小麦粉と水を添加した他は、実施例3と同様にして水産練り製品を調製した。小麦粉の添加量及び水の添加量はそれぞれ、たらの重量100%に対し、6%、10.8%とした。
比較例6〔水産練り製品(無添加)の物性改善〕
米ゲルに代えて、水を添加した他は、実施例3と同様にして水産練り製品を調製した。水の添加量は、たらの重量100%に対し10.8%とした。
【0060】
実施例3及び比較例4〜6の水産練り製品を、以下の試験に供した。
【0061】
〔粘弾性(クリープ試験)〕
製造翌日の、実施例3の水産練り製品ならびに比較例4〜6の水産練り製品をそれぞれ、15mm×15mm×10mmの大きさに成形し、サンプルとした。各サンプルの瞬間弾性率、遅延弾性率、遅延粘性率及び永久粘性率を、加重0.4N、φ55mmプランジャ、荷重時間1分間の条件で測定した。結果を
図9〜12に示す。
【0062】
〔官能検査〕
粘弾性測定に用いたのと同じ各サンプルを、10名のパネラーが実際に食して、その食感を評価した。
【0063】
図13〜16にそれぞれ、実施例3、比較例4〜6で得られる水産練り製品の外観を示す。
【0064】
図9〜16より、以下のことが分かる。比較例6(無添加)では、瞬間弾性率が比較的高く、それ以外の数値では低めの値であった。比較例6の官能検査ではパサパサ感が感じられたことも考慮すると、物性改良が必要なことが分かる。比較例5(小麦粉)では、4つの数値のいずれも高めであった。官能検査では硬すぎるという評価であり、4つの数値が高めであることと一致していた。比較例4(片栗粉)では、比較例5及び6と比較して粘弾性の各数値も比較的低めであり、官能検査ではパサパサ感は防止されていた。一方、実施例3(米ゲル)の数値は、比較例5及び6はもちろん、従来からの練り物用添加物である片栗粉(デンプン)を添加した比較例4よりもバランスがとれており、このことが他の実施例と比較した際、官能検査においてぷりぷり感を創りだし、新鮮な状態に近づけることができると考えられる。これらの結果は、本発明の物性改善剤は、えび、いか、たら等の水産練り製品、畜肉練り製品などの食品の本来の物性を改善することができることを示している。
【0065】
実施例4〔水産練り製品(えび+米4.5%)の物性改善〕
たらに代えてえびを用いたこと、えび100%に対して米4.5%(米ゲルの添加量としては12%)となるようにしたほかは、実施例4と同様にして水産練り製品を調製した。
図17に、得られた製品の外観を示す。
図18左から2番目にも、同様の条件得られた製品の外観を示す。
【0066】
実施例5〔水産練り製品(えび+米12%)の物性改善〕
えび100%に対して米12%(米ゲルの添加量としては30%)となるように添加したほかは、実施例4と同様にして水産練り製品を調製した。
図18左端に、得られた製品の外観を示す。
【0067】
比較例7〔水産練り製品(えび+片栗粉)の物性改善〕
たらに代えてえびを用いたほかは、比較例4と同様に片栗粉で水産練り製品を調製した。
図18左から3番目に、得られた製品の外観を示す。
【0068】
比較例8〔水産練り製品(えび+無添加)の物性改善〕
たらに代えてえびを用いたほかは、比較例6と同様に無添加で水産練り製品を調製した。
図18左から4番目に、得られた製品の外観を示す。
【0069】
図17〜18から明らかなとおり、材料をタラからえびに替えても、同様に水産練り製品は作成可能であり、タラと同様の物性の改善効果があった。また、物性を変えるには、実施例4と実施例5のように、(1)米ゲルの添加量を変える以外にも、(2)米ゲルの加水量を変える、(3)米ゲルの米の品種を変える、(4)米ゲルの加工条件を変える、など様々な方法で物性を変化させることが可能である。
【0070】
これらの結果は、本発明の物性改善剤は、えび、いか、たら等の水産練り製品、畜肉練り製品などの食品の本来の物性を改善することができることを示している。