(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンボス状構造は、前記基板載置面を突出させて突出部を形成し、該突出部の上面に前記被膜層が形成されて成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の静電チャック。
前記エンボス状構造は、前記基板載置面を平面とし、該平面上に前記被膜層により突出部を形成することにより成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の静電チャック。
前記被膜層は、前記基板載置面における該基板載置面から前記基板を持ち上げるために設けられたリフターピンが昇降する開口を囲む領域に形成されていることを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
前記基板載置面は、上層と、下層と、該上層及び下層に挟持された静電電極板とを有する前記静電チャックの前記上層の上部表面であり、前記上層及び下層はフッ素含有ガスに対する耐性を有する誘電体からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の静電チャック。
前記基板載置面は、上層と、下層と、該上層及び下層に挟持された静電電極板とを有する前記静電チャックの前記上層の上部表面であり、前記上層及び下層はフッ素含有ガスに対する耐性を有する誘電体からなることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の静電チャック。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)をはじめとするFPD(Flat Panel Display)の製造工程において、ガラス基板をはじめとする各種基板に対しプラズマ処理を施す基板処理装置が知られている。
【0003】
このような基板処理装置においては、処理室(以下、「チャンバ」という。)内でガラス基板(以下、単に「基板」という。)を支持する基板載置台と、該基板載置台と処理空間を隔てて対向するように配置された上部電極とを有し、下部電極として機能する基板載置台にプラズマ生成用の高周波電力(RF)を印加すると共に、処理空間に処理ガスを導入してプラズマを生成させ、生成したプラズマを用いて基板載置台の基板載置面に載置された基板に対して所定のプラズマ処理が施される。
【0004】
基板載置台の基板載置面を形成する静電チャックは、通常、上層及び下層を形成する絶縁層としてのアルミナ(Al
2O
3)層と、該アルミナ層からなる上層及び下層の間に配置された静電電極板とから主として構成されている。従って、基板にプラズマ処理を施す際、静電チャックのアルミナからなる上層に基板が載置され、アルミナ層と基板の裏面とが当接することになる。
【0005】
ここで、ガラスとアルミナとは帯電列が離れているために、ガラスからなる基板を静電チャックから持ち上げる際に剥離帯電が生じ易くなり、基板は剥離帯電によって負に帯電する。このようにして基板に発生した負電荷に起因して、静電気放電(Electric Static Discharge)によって基板表面に形成された回路の素子が破壊されたり、基板表面にパー
ティクル等の汚染物質が吸着するという問題がある。また、ガラスからなる基板がアルミナ層上に載置されるので、両者の硬度差に起因して基板の裏面に傷がつくという問題もある。
【0006】
このような基板載置台に載置される基板の損傷、基板への汚染物質の付着等を防止するための技術として、例えば上層及び下層をガラス層で形成し、その間に静電電極板を配置させた静電チャックが提案されている(例えば、「特許文献1」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような上層及び下層をガラス層で形成した静電チャックは、従来の構成材料を大幅に変更するものであり、従来品のアルミナ層で形成した場合と同等の耐電圧性能を保つことが難しく、しかもガラスはフッ素含有ガスにより腐食されるため、静電チャックのフッ素含有ガスに対する耐性を確保することが困難になるという問題がある。
【0009】
本発明の課題は、基板表面に形成された回路の素子の破壊及び基板への汚染物質の付着を防止し、且つ基板裏面の損傷を防止することができると共に、既設の装置に対しても容
易に適用することができる静電チャックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1記載の静電チャックは、フッ素含有ガスから生じるプラズマを用いて
ガラス基板に処理を施す基板処理装置の処理室内において前記
ガラス基板を載置する基板載置台上に基板載置面を形成する静電チャックであって、
前記静電チャックに載置された前記ガラス基板を前記静電チャックから持ち上げる際の剥離帯電の発生を防止するために、前記基板載置面に前記
ガラス基板の裏面の構成材料と同じ
ガラス材からなり、前記
ガラス基板の裏面に当接する被膜層が形成され、前記被膜層の厚さは0.1μm〜100μmであることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の静電チャックは、請求項1記載の静電チャックにおいて、前記基板載置面には、外周部と、該外周部に囲まれた領域に存在する島部分とが突出した突出部となるエンボス状構造が形成されており、前記被膜層は、前記外周部に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の静電チャックは、請求項2記載の静電チャックにおいて、前記被膜層は、さらに、前記島部分に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の静電チャックは、請求項2又は3記載の静電チャックにおいて、前記エンボス状構造は、前記基板載置面を突出させて突出部を形成し、該突出部の上面に前記被膜層が形成されて成ることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の静電チャックは、請求項2又は3記載の静電チャックにおいて、前記エンボス状構造は、前記基板載置面を平面とし、該平面上に前記被膜層により突出部を形成することにより成ることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の静電チャックは、請求項1記載の静電チャックにおいて、前記被膜層は、前記基板載置面における該基板載置面から前記基板を持ち上げるために設けられたリフターピンが昇降する開口を囲む領域に形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の静電チャックは、請求項1記載の静電チャックにおいて、前記被膜層は、前記基板載置面の全面に亘って形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の静電チャックは、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の静電チャックにおいて、前記被膜層はガラスで形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の静電チャックは、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の静電チャックにおいて、前記基板載置面は、上層と、下層と、該上層及び下層に挟持された静電電極板とを有する前記静電チャックの前記上層の上部表面であり、該上層及び下層はフッ素含有ガスに対する耐性を有する誘電体からなることを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の静電チャックは、請求項1記載の静電チャックにおいて、前記基板載置面には、外周部と、該外周部に囲まれた領域に存在する島部分とが突出した突出部となるエンボス状構造が形成されており、前記被膜層は前記島部分に形成され、前記外周部は耐プラズマ性材料から構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の静電チャックは、請求項10記載の静電チャックにおいて、前記島部分は前記被膜層のみによって形成されることを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の静電チャックは、請求項10記載の静電チャックにおいて、前記島部分は前記基板載置面を突出させて突出部を形成し、該突出部の上面に前記被膜層が形成されることを特徴とする。
【0022】
請求項13記載の静電チャックは、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の静電チャックにおいて、前記被膜層はガラスで形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項14記載の静電チャックは、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の静電チャックにおいて、前記基板載置面は、上層と、下層と、該上層及び下層に挟持された静電電極板とを有する前記静電チャックの前記上層の上部表面であり、前記上層及び下層はフッ素含有ガスに対する耐性を有する誘電体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基板載置面に基板の裏面の構成材料と同じ材料からなり、且つ基板の裏面に当接する被膜層が形成されているので、静電チャックに載置された基板を当該静電チャックから持ち上げる際に生じ易い剥離帯電を防止して、基板表面に形成された回路の素子の破壊及び基板への汚染物質の付着を防止し、且つ基板裏面の損傷を防止することができ、しかも既設の装置に対しても容易に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る静電チャックを備えた基板載置台が適用される基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。この基板処理装置は、例えば、液晶表示装置製造用のガラス基板に所定のプラズマ処理を施すものである。
【0028】
図1において、基板処理装置10は、例えば1辺が数mの矩形のガラスからなる基板Gを収容するチャンバ11を有し、該チャンバ11内部の図中下方には基板Gを載置する載置台(サセプタ)12が配置されている。サセプタ12は、例えば、表面がアルマイト処理されたアルミニウムからなる基材13で構成されており、基材13は絶縁部材14を介してチャンバ11の底部に支持されている。基材13は断面凸型を呈しており、上部には静電電極板44を内蔵した静電チャック40が設置され、その上部平面は基板Gを載置する基板載置面41となっている。
【0029】
基板載置面41の周囲を囲むようにシールド部材としてのシールドリング15が設けられており、シールドリング15は、例えばアルミナ等の絶縁性セラミックスで構成されている。
【0030】
静電電極板44には直流電源17が接続されており、静電電極板44に正の直流電圧が印加されると、基板載置面41に載置された基板Gにおける静電電極板44側の面(以下、「裏面」という。)には負電荷が誘起され、これによって静電電極板44及び基板Gの裏面の間に電界が生じ、該電界に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、基板Gが基板載置面41に吸着保持される。
【0031】
基材13の内部には、基材13及び基板載置面41に載置された基板Gの温度を調節するための温度調節機構(図示省略)が設けられている。この温度調節機構に、例えば、冷却水やガルデン(登録商標)等の冷媒が循環供給され、該冷媒によって冷却された基材13は基板Gを冷却する。
【0032】
基材13の周囲には、シールドリング15と基材13との当接部を含む側面を覆うサイドシール部材としての絶縁リング18が配置されている。絶縁リング18は絶縁性のセラミックス、例えばアルミナで構成されている。
【0033】
チャンバ11の底壁、絶縁部材14及び基材13を貫通する貫通孔に、昇降ピン(リフターピン)21が昇降可能に挿通されている。リフターピン21は基板載置面41に載置される基板Gの搬入及び搬出時に作動するものであり、基板Gをチャンバ11内に搬入する際又はチャンバ11から搬出する際には、基板載置面41に設けられた開口21aを通じてサセプタ12の上方の搬送位置まで上昇し、それ以外のときには基板載置面41内に埋設状態で収容されている。
【0034】
基板載置面41には、図示省略した複数の伝熱ガス供給孔が開口している。複数の伝熱ガス供給孔は伝熱ガス供給部(図示しない)に接続され、伝熱ガス供給部から伝熱ガスとして、例えばヘリウム(He)ガスが基板載置面41及び基板Gの裏面の間隙に供給される。基板載置面41及び基板Gの裏面の間隙に供給されたヘリウムガスはサセプタ12の
熱を基板Gに効果的に伝達する。
【0035】
サセプタ12の基材13には、高周波電力を供給するための高周波電源23が整合器24を介して接続されている。高周波電源23からは、例えばプラズマ生成用の高周波電力が印加され、サセプタ12は下部電極として機能する。整合器24は、サセプタ12からの高周波電力の反射を低減して高周波電力のサセプタ12への印加効率を最大にする。
【0036】
基板処理装置10では、チャンバ11の内側壁とサセプタ12の側面とによって側方排気路26が形成される。この側方排気路26は排気管27を介して排気装置28に接続されている。排気装置28としてのTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(ともに図示省略)はチャンバ11内を真空引きして減圧する。具体的には、DPはチャンバ11内を大気圧から中真空状態(例えば、1.3×10Pa(0.1Torr)以下)まで減圧し、TMPはDPと協働してチャンバ11内を中真空状態より低い圧力である高真空状態(例えば、1.3×10
−3Pa(1.0×10
−5Torr)以下)まで減圧する。なお、チャンバ11内の圧力はAPCバルブ(図示省略)によって制御される。
【0037】
チャンバ11の天井部分には、サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド30が配置されている。シャワーヘッド30は内部空間31を有するとともに、サセプタ12との間の処理空間Sに処理ガスを吐出する複数のガス孔32を有する。シャワーヘッド30は接地され上部電極として機能し、下部電極として機能するサセプタ12と共に一対の平行平板電極を構成している。
【0038】
シャワーヘッド30は、ガス供給管36を介して処理ガス供給源39に接続されている。ガス供給管36には、開閉バルブ37及びマスフローコントローラ38が設けられている。また、チャンバ11の側壁には基板搬入出口34が設けられており、この基板搬入出口34はゲートバルブ35により開閉可能となっている。そして、このゲートバルブ35を介して処理対象である基板Gが搬入出される。
【0039】
基板処理装置10では、処理ガス供給源39から処理ガス導入管36を介して処理ガスが供給される。供給された処理ガスは、シャワーヘッド30の内部空間31及びガス孔32を介してチャンバ11の処理空間Sへ導入される。導入された処理ガスは、高周波電源23からサセプタ12を介して処理空間Sへ印加されるプラズマ生成用の高周波電力によって励起されてプラズマとなる。プラズマ中のイオンは、基板Gに向かって引きこまれ、基板Gに対して所定のプラズマエッチング処理を施す。
【0040】
基板処理装置10の各構成部品の動作は、基板処理装置10が備える制御部(図示省略)のCPUがプラズマエッチング処理に対応するプログラムに応じて制御する。
【0041】
次に、
図1の基板処理装置10における基板載置台12の基板載置面を形成する本発明に係る静電チャックについて説明する。
【0042】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る静電チャックの構成を示す断面図である。この静電チャックには、基板として液晶表示装置製造用のガラス基板が載置される。
【0043】
図2において、静電チャック40aは、サセプタ12の構成部材である基材13上に配置されており、絶縁性のセラミックであるアルミナ(Al
2O
3)からなる上層42及び同じくアルミナ(Al
2O
3)からなる下層43と、上層42及び下層43に挟持されるようにその間に配置されたメタル層からなる静電電極板44とから主として構成されている。上層42の上部表面は基板載置面41となり、該基板載置面41には、該基板載置面41に載置される基板Gの裏面と同じ材質からなる被膜層(以下、「最上層」という。)45aが設けられている。最上層45aは、基板Gの裏面と当接する。
【0044】
基板Gはガラス製であり、その裏面もガラスからなる。これに対応して、最上層45aはガラスで形成されている。
【0045】
最上層45aを基板Gの裏面の構成材料と同じガラス材で形成することによって剥離帯電が防止される。
【0046】
本実施の形態において、剥離帯電が防止されるメカニズムは、以下のように考えられる。一般に、当接している2つの部材を剥離させる際、両者の帯電列の差に起因した静電気が発生する。このような現象を剥離帯電という。従って、基板Gの裏面の構成材料と、該基板Gが載置される静電チャック40aの基板載置面としての最上層45aの構成材料における帯電列の差を限りなく少なくすること、好ましくは零にすることによって剥離帯電の発生を抑制できる。そこで、本実施の形態においては、静電チャック40aの最上層45aの構成材料として、該静電チャック40aに載置される基板Gの裏面の構成材料と同じ材料、すなわちガラス材を適用することにより、両者の帯電列の差をなくし、これによって、静電チャック40aに載置された基板Gを当該静電チャック40aから持ち上げる際の剥離帯電の発生を効果的に防止している。
【0047】
なお、最上層45aの周囲には、最上層45aと、該最上層45aに載置される基板Gの裏面との間に供給される温度伝達媒体としてのヘリウムガスの流通路46が設けられている。
【0048】
このような構成の静電チャック40aは、
図1の基板処理装置10に組み込まれ、基板Gに対して所定のプラズマエッチング処理を施す際、該基板Gをその裏面で支持する。
【0049】
本実施の形態によれば、上層42の基板載置面41に、基板Gの裏面と同じ材質であるガラス材からなる最上層45aを設けたので、基板Gの裏面の帯電列と最上層45aの帯電列とを同じにすることができ、静電チャック40aに載置された基板Gを当該静電チャック40aから持ち上げる際に生じ易い剥離帯電を防止することができる。これにより、基板Gが負に帯電することによる、静電気放電に起因する基板Gの表面に形成された回路の素子の破壊を防止し、或いは基板Gへの汚染物質の付着を防止することができる。また、基板Gの裏面の構成材料と、最上層45aの構成材料が同じガラスからなることによって、基板Gの裏面とこれに当接する最上層45aとの構成材料における硬度差がなくなり、硬度差に起因する基板の裏面の損傷を防止することができる。
【0050】
本実施の形態において、静電チャック40aの最上層45aの構成材料としてガラス材を適用したが、基板Gの裏面の構成材料であるガラスと帯電列が近い材質、例えば石英、ポリアミド等を適用することもできる。石英及びポリアミドは、ガラスと帯電列が近いので、最上層45aの構成材料として適用してもガラス基板Gとの間で剥離帯電の発生を抑制することができる。
【0051】
本実施の形態において、最上層45aの厚さは、例えば10μm〜100μmであり、この最上層45aは、例えば、ガラス材の溶射、コーティング、ガラス板の接着、ガラス板の接着後の部分的剥離等、公知の方法によって形成される。
【0052】
本実施の形態において、静電チャック40aの上層42及び下層43は、誘電体であるアルミナで形成されている。アルミナは、フッ素含有ガス、例えばSF
6、CF
4等から生じるプラズマ(フッ素系プラズマ)に対する耐性があるので、プラズマエッチング処理を繰り返しても静電チャック40aが消耗することがない。なお、最上層45aだけでなく、上層42及び下層43をガラス材で形成すると、マイクロクラック等が発生し易く、静電チャック40aとしての絶縁性を確保することが困難となる。また、ガラス基板の処理には多くフッ素含有ガスが用いられるので、上層42及び下層43がガラス材で形成されているとフッ素ガスから生成されたプラズマに露出している部分が損傷を受ける。従って、最上層45aにのみガラス材を用い、上層42及び下層43はフッ素系プラズマに対し耐性のあるアルミナなどを用いることが好ましい。
【0053】
本実施の形態において、最上層45aは、基板載置面41全体に設けられているが、これに限定されるものではない。
【0054】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る静電チャックの構成を示す断面図である。この静電チャック40bが、
図2の静電チャック40aと異なる点は、基板Gの裏面と静電チャック40bの上層42の表面である基板載置面41との当接面積を小さくするために、基板載置面41の外周部(以下、「土手部」という。)で囲まれた部分がエンボス状に形成されており、この土手部のみにガラス材からなる最上層45bを設けた点である。
【0055】
なお、エンボス状とは、例えば、碁盤目状に配置された平面視円形又は矩形などの図形の複数の凸状の島部分と、該島部分を囲む凹部とで構成される部分の形状であり、言い換えれば、何がしかの平面図形が浮き彫り状となっている状態をいう。
【0056】
本実施の形態によれば、剥離帯電が発生し易い基板載置面41の周囲である土手部にガラス材からなる最上層45bを設けたので、基板載置面41の土手部と基板Gの裏面とが同じの帯電列を有するようになり、土手部における剥離帯電の発生を防止することができ、これによって、基板Gが負に帯電することによる基板Gの表面に形成された回路の素子の破壊及び基板Gへの汚染物質の付着を防止することができる。
【0057】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る静電チャックの構成を示す断面図である。この静電チャック40cが
図3の静電チャック40bと異なる点は、基板載置面41の土手部と、土手部で囲まれたエンボス状の島部分との両方の表面にガラス材からなる最上層45cを設けた点である。
【0058】
図4において、静電チャック40cの上層42の基板載置面41はエンボス状に加工され、その土手部の表面にはガラス材からなる最上層45c1が形成されており、且つ土手部で囲まれたエンボス状の島部分の表面にはガラス材からなる最上層45c2が形成されている。
【0059】
本実施の形態によれば、静電チャック40cの最上層45cと基板Gの裏面の材質を同じとし、且つ最上層45cを、土手部に形成された最上層45c1と、該土手部によって囲まれたエンボス状の島部分に形成された最上層45c2とで構成したので、基板が載置される最上層45cと基板Gの裏面とにおける構成材料に帯電列の差がなくなり、且つ基板Gの裏面と最上層45cとの接触面積が小さくなる。これによって、剥離帯電の発生をより確実に防止することができ、基板Gが帯電することによる基板表面に形成された回路の素子の破壊、基板へのパーティクル付着等を回避することができる。
【0060】
本実施の形態において、最上層45cの厚さは、例えば、0.1μm〜10μmと比較的薄く、例えばコーティング法によって容易に形成することができる。従って、既設の装置の静電チャックに対して事後的に適用して最上層45cを付加することができ、LCDの製造現場においても十分対応することができる。なお、ガラス材からなる最上層45cは、静電チャック40cに載置されるガラスからなる基板Gの裏面と静電チャック40cのアルミナからなる上層42との直接接触を防止するためのものである。
【0061】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る静電チャックの構成を示す断面図である。この静電チャック40dは
図4で示した第3の実施形態に係る静電チャック40cと同様に土手部分に囲まれたエンボス状を形成するものであるが、
図4の静電チャック40cと異なる点は、上層42の基板載置面41を平面とし、上層42上に、ガラス材からなり、基板載置面41の土手部を構成する最上層45d1を設け、且つ土手部で囲まれた領域に存在するエンボス状の島部分としてガラス材からなる最上層45d2を設けた点である。
図5中の最上層45dは最上層45d1と最上層45d2で構成されている。
【0062】
本実施の形態によっても、基板Gを持ち上げた際に発生し易い剥離帯電を防止して基板Gへのパーティクル等の汚染物質の付着、基板表面に形成された回路の素子の破壊等を防止することができ、また基板Gの裏面への損傷を防止することができる。
【0063】
本実施の形態において、最上層45dの厚さは、例えば10μm〜100μmであり、この最上層45dは、例えば、ガラス材の溶射、コーティング、ガラス板の接着、ガラス板の接着後の部分的剥離等、公知の方法によって形成される。
【0064】
図6は、本発明の第5の実施の形態に係る静電チャックの構成を示す平面図である。この静電チャックは、基板載置面におけるリフターピンが昇降する開口の近傍にガラス材からなる最上層を設けたものである。
【0065】
図6において、この静電チャック40eは、処理室11内に基板Gを搬入する際又は処理室11から基板Gを搬出する際、基板Gを基板載置面の上方で支持するために設けられたリフターピン21を有するものであり、該リフターピン21が昇降する開口21aの周辺部にガラス材からなる最上層45eが設けられている。
【0066】
静電チャックの基板載置面に載置された基板Gを基板載置面から持ち上げる際、基板Gと基板載置面とが最も最初に剥離する部分は基板Gを持ち上げるリフターピン周辺部であり、このリフターピン周辺部で剥離帯電が生じ易い。
【0067】
本実施の形態においては、このような事情に鑑み、リフターピン21が昇降する開口21aの周辺部にガラス材からなる最上層45fが設けられている。
【0068】
本実施の形態によれば、剥離帯電が発生し易いリフターピン21が昇降する開口21aの周辺部に基板Gの裏面の構成材料と同じガラス材からなる最上層45eを設けたので、リフターピン21によって基板Gを基板載置面から持ち上げる際の剥離帯電を効果的に防止することができ、これによって基板Gの帯電を防止して、基板G表面に形成された回路の素子の破壊及び基板Gへの汚染物質の付着等を防止することができる。
【0069】
上述した第2の実施の形態乃至第5の実施の形態に係る静電チャックでは、基板載置面41の土手部の全部又は一部にガラス材が適用されたが、基板Gに施されるプラズマエッチング処理に用いられるプラズマがフッ素イオン及びフッ素ラジカルを含有するフッ素系プラズマである場合、例えば、SF
6、CF
4等から生じるプラズマを主成分とする場合、該フッ素系プラズマによって土手部がエッチングされて消耗することがある。
【0070】
本発明の第6の実施の形態では、これに対応して、基板載置面41の土手部をフッ素プラズマに対して耐性のある絶縁性セラミックス、例えば、アルミナやイットリアで構成する。
【0071】
図7は、本発明の第6の実施の形態に係る静電チャックの構成を示す断面図である。
【0072】
この静電チャック40eが、第2の実施の形態係る
図3の静電チャック40bと異なる点は、土手部47(外周部)が上層42及び下層43と同様にアルミナ、若しくはイットリアで形成され、土手部で囲まれたエンボス状の島部分(以下、「エンボス部分」という。)48(突出部)がガラス材のみで形成される点である。
【0073】
図7において、静電チャック40eの基板載置面41においてプラズマが触れうる箇所に形成された土手部47はフッ素プラズマに対して耐性のあるアルミナやイットリアで構成されるので、基板Gの表面に施されるプラズマエッチング処理に用いられるプラズマが 反応性の高いフッ素プラズマを主成分とする場合であっても、土手部47が消耗するのを防止することができる。
【0074】
また、基板Gの裏面の大部分が接するエンボス部分48が基板Gの裏面の構成材料と同じであるガラス材からなるので、剥離帯電を防止するだけでなく、基板Gの裏面において基板載置面41との硬度差に起因する微小傷が発生するのを抑制することができ、もって、当該微小傷を原因とする液晶表示装置の表示不具合を防止することができる。なお、微小傷の発生抑制の観点からは、エンボス部分48をガラス材と同等の硬度又は以下の硬度を有する材料で構成してもよく、例えば、窒化ホウ素、酸化ニッケル、チタン酸アルミニウム等で構成してもよい。
【0075】
さらに、静電チャック40eでは、エンボス部分48がガラス材のみで形成されるので、ガラス材の配置箇所、例えば、塗布箇所を変更するだけでエンボス部分48の形成箇所を変更することができ、もって、エンボス部分48の配置の自由度を向上させることができる。
【0076】
なお、本実施の形態では土手部47は絶縁性セラミックスで形成されるため、基板Gの周縁部における裏面には多少、微小傷が発生するおそれがあるが、当該基板Gの周縁部は液晶表示装置における表示面の周縁部に該当し、TFTアレイが形成される範囲の外であるため、当該微小傷が液晶表示装置の表示品質へ影響を与える可能性は殆どない。
【0077】
図8は、
図7の静電チャックの第1の変形例の構成を示す断面図である。
【0078】
図8において、静電チャック40fは、絶縁性セラミックスで形成された土手部47と、主として絶縁性セラミックスで形成されて上面にガラス材からなる最上層45c3が形成されるエンボス部分48とを備える。
【0079】
静電チャック40fでは、静電チャック40eと異なり、エンボス部分48が全てガラス材で形成されることがなく、上面にガラス材からなる最上層45c3が形成されるだけなので、ガラス材からなる層を薄くすることができ、もって、当該層をコーティング法等の簡便な方法によって形成することができる。なお、最上層45c3は、コーティング法だけでなく、例えば、ガラス材の溶射、薄板ガラス板の接着、ガラス板の接着後の研磨による部分的剥離等の公知の方法によって形成されてもよい。
【0080】
図9は、
図7の静電チャックの第2の変形例の構成を示す断面図である。
【0081】
図9において、静電チャック40gは、絶縁性セラミックスで形成された土手部47と、ガラス材からなる1枚の平板状の裏面当接部49とを備える。裏面当接部49は基板載置面41に配置されてその周縁を土手部47によって囲まれている。静電チャック40gに基板Gが載置される際、基板Gの裏面は土手部47及び裏面当接部49へ当接する。
【0082】
また、
図10は、
図7の静電チャックの第3の変形例の構成を示す断面図である。
【0083】
図10において、静電チャック40hは、絶縁性セラミックスで形成された土手部47と、ガラス材からなる平板状の裏面当接部50とを備える。裏面当接部50も、裏面当接部49と同様に、その周縁を土手部47によって囲まれており、熱伝達ガスの流路となる多数のトレンチ(溝)51が形成されている。静電チャック40hに基板Gが載置される際、基板Gの裏面は土手部47及び裏面当接部50へ当接する。
【0084】
静電チャック40g及び静電チャック40hでも、基板Gの裏面の大部分が接する裏面当接部49,50が基板Gの裏面の構成材料と同じであるガラス材からなるので、剥離帯電を防止するだけでなく、基板Gの裏面において基板載置面41との硬度差に起因する微小傷が発生するのを抑制することができる。
【0085】
以上、本発明を上記各実施の形態を用いて詳細に説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。