(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置を示す断面図、
図2はこの誘導結合プラズマ処理装置に用いられるアンテナユニットを示す平面図である。この装置は、例えばFPD用ガラス基板上に薄膜トランジスターを形成する際のメタル膜、ITO膜、酸化膜等のエッチングや、レジスト膜のアッシング処理に用いられる。FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0024】
このプラズマ処理装置は、導電性材料、例えば、内壁面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる角筒形状の気密な本体容器1を有する。この本体容器1は分解可能に組み立てられており、接地線1aにより電気的に接地されている。本体容器1は、誘電体壁(誘電体窓)2により上下にアンテナ室3および処理室4に区画されている。したがって、誘電体壁2は処理室4の天壁として機能する。誘電体壁2は、Al
2O
3等のセラミックス、石英等で構成されている。
【0025】
誘電体壁2の下側部分には、処理ガス供給用のシャワー筐体11が嵌め込まれている。シャワー筐体11は例えば十字状に設けられており、誘電体壁2を下から支持する梁としての機能を有する。誘電体壁2は十字状のシャワー筐体11に対応して四分割されていてもよい。なお、上記誘電体壁2を支持するシャワー筐体11は、複数本のサスペンダ(図示せず)により本体容器1の天井に吊された状態となっている。
【0026】
このシャワー筐体11は導電性材料、望ましくは金属、例えば汚染物が発生しないようにその内面または外面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。このシャワー筐体11は電気的に接地されている。
【0027】
このシャワー筐体11には水平に伸びるガス流路12が形成されており、このガス流路12には、下方に向かって延びる複数のガス吐出孔12aが連通している。一方、誘電体壁2の上面中央には、このガス流路12に連通するようにガス供給管20aが設けられている。ガス供給管20aは、本体容器1の天井からその外側へ貫通し、処理ガス供給源およびバルブシステム等を含む処理ガス供給系20に接続されている。したがって、プラズマ処理においては、処理ガス供給系20から供給された処理ガスがガス供給管20aを介してシャワー筐体11内に供給され、その下面のガス吐出孔12aから処理室4内へ吐出される。
【0028】
本体容器1におけるアンテナ室3の側壁3aと処理室4の側壁4aとの間には内側に突出する支持棚5が設けられており、この支持棚5の上に誘電体壁2が載置される。
【0029】
アンテナ室3内には、高周波(RF)アンテナ13を含むアンテナユニット50が設けられている。高周波アンテナ13には、給電部51、給電線19、整合器14を介して高周波電源15が接続されている。また、高周波アンテナ13は絶縁部材からなるスペーサ17により誘電体壁2から離間している。そして、高周波アンテナ13に、高周波電源15から例えば周波数が13.56MHzの高周波電力が供給されることにより、処理室4内に誘導電界が生成され、この誘導電界によりシャワー筐体11から供給された処理ガスがプラズマ化される。なお、アンテナユニット50および給電部51については後述する。
【0030】
処理室4内の下方には、誘電体壁2を挟んで高周波アンテナ13と対向するように、矩形状のFPD用ガラス基板(以下単に基板と記す)Gを載置するための載置台23が設けられている。載置台23は、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。載置台23に載置された基板Gは、静電チャック(図示せず)により吸着保持される。
【0031】
載置台23は絶縁体枠24内に収納され、さらに、中空の支柱25に支持される。支柱25は本体容器1の底部を気密状態を維持しつつ貫通し、本体容器1外に配設された昇降機構(図示せず)に支持され、基板Gの搬入出時に昇降機構により載置台23が上下方向に駆動される。なお、載置台23を収納する絶縁体枠24と本体容器1の底部との間には、支柱25を気密に包囲するベローズ26が配設されており、これにより、載置台23の上下動によっても処理容器4内の気密性が保証される。また処理室4の側壁4aには、基板Gを搬入出するための搬入出口27aおよびそれを開閉するゲートバルブ27が設けられている。
【0032】
載置台23には、中空の支柱25内に設けられた給電線25aにより、整合器28を介して高周波電源29が接続されている。この高周波電源29は、プラズマ処理中に、バイアス用の高周波電力、例えば周波数が6MHzの高周波電力を載置台23に印加する。このバイアス用の高周波電力により生成されたセルフバイアスによって、処理室4内に生成されたプラズマ中のイオンが効果的に基板Gに引き込まれる。
【0033】
さらに、載置台23内には、基板Gの温度を制御するため、セラミックヒータ等の加熱手段や冷媒流路等からなる温度制御機構と、温度センサーとが設けられている(いずれも図示せず)。これらの機構や部材に対する配管や配線は、いずれも中空の支柱25を通して本体容器1外に導出される。
【0034】
処理室4の底部には、排気管31を介して真空ポンプ等を含む排気装置30が接続される。この排気装置30により、処理室4が排気され、プラズマ処理中、処理室4内が所定の真空雰囲気(例えば1.33Pa)に設定、維持される。
【0035】
載置台23に載置された基板Gの裏面側には冷却空間(図示せず)が形成されており、一定の圧力の熱伝達用ガスとしてHeガスを供給するためのHeガス流路41が設けられている。このように基板Gの裏面側に熱伝達用ガスを供給することにより、真空下において基板Gの温度上昇や温度変化を回避することができるようになっている。
【0036】
このプラズマ処理装置の各構成部は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)からなる制御部100に接続されて制御される構成となっている。また、制御部100には、オペレータによるプラズマ処理装置を管理するためのコマンド入力等の入力操作を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース101が接続されている。さらに、制御部100には、プラズマ処理装置で実行される各種処理を制御部100の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部102が接続されている。処理レシピは記憶部102の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、コンピュータに内蔵されたハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース101からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部102から呼び出して制御部100に実行させることで、制御部100の制御下で、プラズマ処理装置での所望の処理が行われる。
【0037】
次に、上記アンテナユニット50について詳細に説明する。
アンテナユニット50は、上述したように高周波アンテナ13を有しており、さらに、整合器14を経た高周波電力を高周波アンテナ13に給電する給電部51を有する。
【0038】
図2に示すように、高周波アンテナ13は、外側アンテナ131、中間アンテナ132、および内側アンテナ133を有し、これらは、プラズマ生成に寄与する誘導電界を生成する平面領域、具体的には平面状の額縁状領域141,142,143を有している。これら額縁状領域141,142,143は、誘電体壁2に面して基板Gに対向するように形成されている。また、額縁状領域141,142,143は同心状をなすように配置されており、全体として矩形基板Gに対応する矩形状平面を構成している。
【0039】
外側アンテナ131は、額縁状領域141の角部を構成する4つの第1のアンテナセグメント61と、辺中央部を構成する4つの第2のアンテナセグメント71との合計8個のアンテナセグメントで構成されており、全体として環状アンテナとなる多分割環状アンテナとして構成されている。
【0040】
第1のアンテナセグメント61は、
図3に示すように、導電性材料、例えば銅などからなるアンテナ線62を基板G(誘電体壁2)
の表面に直交する方向である縦方向が巻回方向となる縦巻きで、かつ巻回軸が基板Gの表面と平行になるような螺旋状に巻回して構成されており、誘電体壁2に面した平面部63がプラズマに寄与する誘導電界を生成する額縁状領域141の一部(角部)を構成している。平面部63においてはアンテナ線62が3本平行にかつ角部を形成するように配置されている。
【0041】
また、第2のアンテナセグメント71は、
図4に示すように、導電性材料、例えば銅などからなるアンテナ線72を基板G(誘電体壁2)
の表面に直交する方向である縦方向が巻回方向となる縦巻きで、かつ巻回軸が基板Gの表面と平行になるような螺旋状に巻回して構成されており、誘電体壁2に面した平面部73がプラズマに寄与する誘導電界を生成する額縁状領域141の一部(辺中央部)を構成している。平面部73においてはアンテナ線72が3本平行に配置されている。
【0042】
中間アンテナ132および内側アンテナ133は、いずれも渦巻き状の平面アンテナとして構成され(
図2では便宜上、同心状に描いている)、それぞれのアンテナが誘電体壁2に面して形成する平面全体が額縁状領域142および143を構成している。
【0043】
中間アンテナ132は、例えば
図5に示すように、導電性材料、例えば銅などからなる4本のアンテナ線81,82,83,84を巻回して全体が渦巻状となるようにした多重(四重)アンテナを構成している。具体的には、アンテナ線81,82,83,84は90°ずつ位置をずらして巻回され、プラズマが弱くなる傾向にある角部の巻数を辺の中央部の巻数よりも多くなるようにしている。図示の例では角部の巻数が2、辺の中央部の巻数が1となっている。このアンテナ線の配置領域が上記額縁状領域142を構成している、
【0044】
内側アンテナ133は、例えば
図6に示すように、導電性材料、例えば銅などからなる4本のアンテナ線91,92,93,94を巻回して全体が渦巻状となるようにした多重(四重)アンテナを構成している。具体的には、アンテナ線91,92,93,94は90°ずつ位置をずらして巻回され、プラズマが弱くなる傾向にある角部の巻数を辺の中央部の巻数よりも多くなるようにしている。図示の例では角部の巻数が3、辺の中央部の巻数が2となっている。このアンテナ線の配置領域が上記額縁状領域143を構成している。
【0045】
なお、中間アンテナ132、内側アンテナ133を多重アンテナで構成する場合には、アンテナ線の数は4本に限るものではなく、任意の数の多重アンテナであってよく、また、ずらす角度も90°に限るものではない。
【0046】
また、中間アンテナ132、内側アンテナ133は、
図7に示すように、1本のアンテナ線151を渦巻き状に巻回したものであってもよい。
【0047】
さらにまた、このような3つの環状アンテナを有するものに限らず、2つの環状アンテナおよび4つ以上の環状アンテナであってもよい。すなわち、アンテナセグメントを環状に配置した構造の環状アンテナの他に、1または2以上の単一の環状アンテナを設けた構造とすることができる。
【0048】
さらに、外側アンテナ131と同様の、アンテナセグメントを環状に配置した構造の多分割環状アンテナのみを1または2以上設けて高周波アンテナ13を構成してもよい。
【0049】
給電部51は、
図8に示すように、給電線19から分岐し、外側アンテナ131の8つのアンテナセグメント、中間アンテナ132、および内側アンテナ133に接続された10個の分岐ライン52を有している。これら分岐ライン52には、一つを除いて、インピーダンス調整手段としての可変コンデンサ53が設けられている。図示の例では、内側アンテナ133への分岐ライン52のみ可変コンデンサ53が設けられていない。したがって、可変コンデンサ53は合計9個設けられている。分岐ライン52は、外側アンテナ131の8つのアンテナセグメント、および中間アンテナ132、内側アンテナ133の端部に設けられた給電端子(図示せず)に接続されている。
【0050】
外側アンテナ131の8つのアンテナセグメントおよび中間アンテナ132については、これらと、これらに接続された可変コンデンサ53とにより、それぞれアンテナ回路を構成しており、内側アンテナ133は単独でアンテナ回路を構成している。そして、9個の可変コンデンサ53の容量を調節することにより、外側アンテナ131の8つのアンテナセグメントおよび中間アンテナ132を含むそれぞれのアンテナ回路のインピーダンスが制御され、その結果、外側アンテナ131の8つのアンテナセグメント、中間アンテナ132および内側アンテナ133を含むそれぞれのアンテナ回路に流れる電流を制御することができる。このようにこれらアンテナ回路に流れる電流を制御することにより、これらに対応するプラズマ制御エリアの誘導電界を制御してプラズマ密度分布をきめ細かく制御することができるようになっている。なお全てのアンテナ回路にコンデンサ53を設けてもよい。
【0051】
なお、外側アンテナ131に流す電流は、各アンテナセグメント毎に制御してもよいし、複数のアンテナセグメントをグループに分け、グループ毎に制御してもよい。
【0052】
以上の電流制御は、以下の第2の実施形態および第3の実施形態でも同様に行うことができる。
【0053】
次に、以上のように構成される誘導結合プラズマ処理装置を用いて基板Gに対してプラズマ処理、例えばプラズマエッチング処理を施す際の処理動作について説明する。
【0054】
まず、ゲートバルブ27を開にした状態で搬入出口27aから搬送機構(図示せず)により基板Gを処理室4内に搬入し、載置台23の載置面に載置した後、静電チャック(図示せず)により基板Gを載置台23上に固定する。次に、処理室4内に処理ガス供給系20から供給される処理ガスをシャワー筐体11のガス吐出孔12aから処理室4内に吐出させるとともに、排気装置30により排気管31を介して処理室4内を真空排気することにより、処理室内を例えば0.66〜26.6Pa程度の圧力雰囲気に維持する。
【0055】
また、このとき基板Gの裏面側の冷却空間には、基板Gの温度上昇や温度変化を回避するために、Heガス流路41を介して、熱伝達用ガスとしてHeガスを供給する。
【0056】
次いで、高周波電源15から例えば13.56MHzの高周波を高周波アンテナ13に印加し、これにより誘電体壁2を介して処理室4内に均一な誘導電界を生成する。このようにして生成された誘導電界により、処理室4内で処理ガスがプラズマ化し、高密度の誘導結合プラズマが生成される。このプラズマにより、基板Gに対してプラズマ処理として、例えばプラズマエッチング処理が行われる。
【0057】
この場合に、高周波アンテナ13は、上述のように、環状アンテナである外側アンテナ131、中間アンテナ132、内側アンテナ133を同心状に設けるとともに、外側アンテナ131は、プラズマの生成に寄与する誘導電界を生成する縁状領域141の、角部を構成する4つの第1のアンテナセグメント61と、辺中央部を構成する4つの第2のアンテナセグメント71との合計8個のアンテナセグメントで構成されているので、これらに対応するプラズマ制御エリアの誘導電界を制御することにより、プラズマ密度分布をきめ細かく制御することができる。
【0058】
ところで、外側アンテナ131を構成する第1のアンテナセグメント61および第2のアンテナセグメント71を従来アンテナとして用いてきた、アンテナ線を平面状に巻回してなる渦巻き状アンテナで構成すると、
図9に示すように、隣接する渦巻き状アンテナ171で誘導電界(高周波電流)が逆向きになることがあり、そのような場合には、誘導電界が互いに打ち消し合ってしまい、隣接する渦巻き状アンテナ171の間の領域Aにおいて誘導電界が非常に弱くなり、プラズマがほとんど生成されない領域となってしまう。
【0059】
これに対して、本実施形態では、第1のアンテナセグメント61および第2のアンテナセグメント71
は、アンテナ線を基板G(誘電体壁2)
の表面に直交する方向である縦方向が巻回方向となる縦巻きで、かつ巻回軸が基板Gの表面と平行になるような螺旋状に巻回して構成されているので、
図10に示すように、誘電体壁2に面したプラズマに寄与する誘導電界を生成する部分である平面部63および73の誘導電界(高周波電流)の向きが環状領域141に沿った一方向となり、誘導電界が打ち消し合う領域は存在しないため、渦巻き状アンテナを平面的に並べた場合に比べて効率が良いとともに、プラズマの均一性を高めることができる。また、中間アンテナ132および内側アンテナ133の誘導電界の向きも外側アンテナ131と同じであり、内側の領域においても誘導電界が打ち消し合う領域は存在しない。
【0060】
なお、第1のアンテナセグメント61および第2のアンテナセグメント71においては、
図11に模式的に示すように、アンテナ線62および72の平面部63および73の反対側の中空を這い回されている部分の誘導電界がプラズマの生成に寄与しないように、その部分のプラズマからの距離Bが平面部63および73におけるアンテナ線62および72のプラズマまでの距離Aの2倍以上であることが好ましい。
【0061】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図12は本発明の第2の実施形態のアンテナユニットに用いる高周波アンテナを構成するアンテナを示す平面図である。
上記第1の実施形態では、外側アンテナ131として、複数の縦巻螺旋状のアンテナセグメントを、その下面の平面部がプラズマ生成に寄与する誘導電界を生成する額縁状領域141を形成するように環状に配置した、多分割渦巻き状の環状アンテナとし、さらに環状アンテナである中間アンテナ132および内側アンテナ133を同心状に配置した高周波アンテナ13を有するアンテナユニット50を用いた例を示したが、本実施形態では、
図12に示すように、平行アンテナ181のみで高周波アンテナを構成している。すなわち、平行アンテナ181は、プラズマ生成に寄与する誘導電界を生成し、かつ誘電体壁2に面して基板Gに対向するように形成された矩形状平面領域182を有し、これら矩形状領域182を格子状のプラズマ制御領域に分け、これら領域のそれぞれに矩形状領域182の一部を構成するアンテナセグメント183を配置し、矩形状領域182においてアンテナ線が全て平行になるように、多分割平行アンテナとして構成されている。
【0062】
アンテナセグメント183は、
図13に示すように、導電性材料、例えば銅などからなるアンテナ線184を基板G(誘電体壁2)に交差する方向、例えば直交する方向、すなわち垂直方向に渦巻き状に巻回して構成されており、誘電体壁2に面した平面部185がプラズマの生成に寄与する誘導電界を生成する矩形状領域182の一部をなしている。平面部185においてはアンテナ線184が4本平行に配置されている。
【0063】
図12では、アンテナセグメント183を縦横4つずつの16分割タイプの例を示しているが、縦横2つずつの4分割タイプ、縦横3つずつの9分割タイプ、縦横5つずつの25分割タイプ、またはそれ以上に分割したものであってもよい。このように格子の目を細かくしてプラズマ制御領域を増やしていくことにより、よりきめ細かいプラズマ制御を実現することができる。
【0064】
このようにアンテナセグメント183の平面部185を格子状に配置して、
図12に示すように、アンテナセグメント183の誘導電界(高周波電流)の向きが全て同じとすることにより、従来の渦巻き状アンテナを並べた場合のような誘導電界が打ち消し合う領域は存在しない。このため、渦巻き状アンテナを並べた場合に比べて効率が良いとともに、プラズマの均一性を高めることができる。
【0065】
なお、平行アンテナ181としては、アンテナセグメント183を格子状に配置したものに限らず、単純に直線状に配置したものであってもよい。
【0066】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図14は本発明の第3の実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置を示す断面図である。
本実施形態では、第1の実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置の誘電体壁(誘電体窓)2の代わりに、非磁性の金属、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成された金属壁(金属窓)202が設けられている。他の構成は、基本的に第1の実施形態と同様に構成されている。そのため、
図14では
図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0067】
本実施形態では、金属壁202は格子状に分割されている。具体的には、
図15に示すように分割壁202a、202b、202c、202dに四分割されている。これら四つの分割壁202a〜202dは、支持棚5および支持梁として機能するシャワー筐体11の上に絶縁部材203を介して載置される。このように、四つの分割壁202a〜202dは、絶縁部材203を介して支持棚5およびシャワー筐体11の上に載置されることで、支持棚5、シャワー筐体11、および本体容器1から絶縁され、かつ、分割壁202a〜202dどうしも互いに絶縁される。
【0068】
第1の実施形態で用いた誘電体壁2は脆性材料、例えば石英で構成されているが、本実施形態で用いた金属壁は延性材料であるため、製作の際にそれ自体の大型化が容易であり、大型基板に対する対応が容易である。
【0069】
金属壁202を用いた場合のプラズマ生成原理は、誘電体壁2を用いた場合とは異なっている。すなわち、
図16に示すように、高周波アンテナ13に環状に流れる高周波電流I
RFより、金属壁202の上面(高周波アンテナ側表面)に誘導電流が発生する。誘導電流は表皮効果により金属壁202の表面部分にしか流れないが、金属壁202は、四つの分割壁202a〜202dに分割され、これらは支持棚5、支持梁であるシャワー筐体11、および本体容器1から絶縁されているため、金属壁202の上面、すなわち分割壁202a〜202dに流れた誘導電流は、それぞれ分割壁202a〜202dの側面に流れ、次いで、側面に流れた誘導電流は、分割壁202a〜202dの下面(処理室側表面)に流れ、さらに、分割壁202a〜202dの側面を介して、再度金属壁202の上面に戻り、渦電流I
EDを生成する。このようにして、金属壁202には、分割壁202a〜202dの上面(高周波アンテナ側表面)から下面(処理室側表面)にループする渦電流I
EDが生成される。このループする渦電流I
EDのうち、金属壁202の下面を流れた電流が処理室4内に誘導電界を生成し、この誘導電界により処理ガスのプラズマが生成される。
【0070】
高周波アンテナとしては、
図2に示すような、環状アンテナである外側アンテナ131、中間アンテナ132、内側アンテナ133を同心状に設けたものであっても、外側アンテナ131と同様の、アンテナセグメントを環状に配置した構造の環状アンテナのみで構成されたものであっても、
図12に示すような直線状のアンテナセグメント183を同一方向になるように配置した直線状アンテナ181のみを有するものであってもよい。
【0071】
高周波アンテナが環状アンテナで構成されている場合、金属壁202として一枚板を用いると、高周波アンテナによって金属壁202の上面に生成される渦電流I
EDは、金属壁202の上面をループするのみとなる。したがって、渦電流I
EDは金属壁202の下面には流れずプラズマは生成されない。このため、上述のように、金属壁202を複数の分割壁に分割するとともに互いに絶縁して、渦電流I
EDが金属壁202の下面に流れるようにする。
【0072】
一方、高周波アンテナが
図12のような直線状アンテナ181で構成されている場合には、金属壁202が一枚板であっても、その上面に生成された渦電流I
EDは、上面から側面を通って下面に至り、さらに側面を通って表面に戻るループ電流を生成するので、金属壁202の下面に誘導電界が生成され、プラズマを生成することができる。すなわち、複数に分割された金属壁であるか一枚板から成る金属壁であるかを問わず、一枚の金属板に対応するアンテナ電流が上面においてループ状に閉じず、横断するように流れればよい。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、縦巻螺旋状にした複数のアンテナセグメントを環状に配置した例、および直線状(マトリックス状)に配置した例を示したが、これに限らず、生成しようとするプラズマに応じて任意に配置することができる。また、上述したように、縦巻螺旋状にした複数のアンテナセグメントを配置してなるアンテナのみで高周波アンテナを構成してもよいし、縦巻螺旋状にした複数のアンテナセグメントを配置してなるアンテナと、他のアンテナを組み合わせて高周波アンテナを構成してもよい。
【0074】
さらに、上記実施形態では、各アンテナセグメントまたはアンテナの電流制御のためのインピーダンス調整手段として可変コンデンサを用いたが、可変コイル等の他のインピーダンス調整手段であってもよい。また、各アンテナセグメントまたはアンテナの電流制御のために、パワースプリッターを用いて電流を分配してもよい。さらに、各アンテナセグメントまたはアンテナの電流制御のために、アンテナセグメントまたはアンテナ毎に高周波電源を設けてもよい。
【0075】
さらにまた、上記実施形態では処理室の天井部を誘電体壁または金属壁で構成し、アンテナが処理室の外である天井部の誘電体壁または金属壁の上面に沿って配置された構成について説明したが、アンテナとプラズマ生成領域との間を誘電体壁または金属壁で隔絶することが可能であればアンテナが処理室内に配置される構造であってもよい。
【0076】
さらにまた、上記実施形態では本発明をエッチング処理に適用した場合について示したが、CVD成膜等の他のプラズマ処理装置に適用することができる。さらにまた、基板としてFPD用の矩形基板を用いた例を示したが、太陽電池等の他の矩形基板を処理する場合にも適用可能であるし、矩形に限らず例えば半導体ウエハ等の円形の基板にも適用可能である。