(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面に示される部材等のサイズや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0029】
<第1実施形態>
[発光素子の構造の概要]
まず、第1実施形態に係る発光素子1の構造について、
図1及び
図2を参照して説明する。なお、
図2(b)は、破断線より下の部分は
図2(a)のA−A線における断面を示し、破断線より上の部分は
図2(a)のB−B線における断面を示す。
【0030】
本実施形態に係る発光素子1は、指向性の高い光線を発する素子であって、特定の方向に光線を出射する光線指向型の発光素子である。また、発光素子1は、発光構造部2を構成する半導体層の逆圧電効果(逆ピエゾ効果)を利用して、光線を出射する方向を変調するものである。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る発光素子1は、光を放射する発光構造部2と、発光構造部2から放射された光を特定の方向に出射させる出射方向特定部3と、を積層して構成されている。
【0031】
この発光構造部2は、LED構造を有する半導体結晶の積層体であり、p側電極24及びn側電極25を介して電力が供給されて発光する。また、発光構造部2の下面側には、X軸方向の両端(
図2(a)において左端及び右端)にそれぞれ下部絶縁層42a及び下部絶縁層42bを介して下部電極41a及び下部電極41bが設けられ、上面側には、Y軸方向の両端(
図2(a)において上端及び下端)にそれぞれ上部絶縁層43a及び上部絶縁層43bを介して上部電極44a及び上部電極44bが設けられている。これらの下部電極41a,41b及び上部電極44a,44bの間に適宜電圧を印加することで、逆圧電効果により発光構造部2の半導体結晶に歪が生じ、出射方向特定部3が載置された発光構造部2の上面が傾斜する。そして、この傾斜により、光の出射方向を変調する(変化させる)ものである。逆圧電効果による発光構造部2の上面の傾斜と光の出射方向の変調との関係については後記する。
【0032】
発光構造部2は、p型半導体層(第1半導体層)21と、発光層22と、n型半導体層(第2半導体層)23と、がこの順で積層され、p型半導体層21と電気的に接続するp側電極(第1電極)24と、n型半導体層23と電気的に接続するn側電極(第2電極)25とを備えて構成されている。発光構造部2は、陽極であるp側電極24と陰極であるn側電極25の間に所定のレベルの電圧パルスを印加することで、p型半導体層21に正孔が注入され、n型半導体層23に電子が注入され、発光層22で正孔と電子とが再結合して発光するLED素子である。p側電極24は、p型半導体層21の下面側の一部である中央部と接触するように設けられ、p型半導体層21との接触面が円形状となるように設けられている。また、n側電極25は、n型半導体層23の上面の一部と接触するように設けられている。
【0033】
本実施形態においては、n型半導体層23におけるキャリアである電子の移動度(キャリア移動度)は、p型半導体層21におけるキャリアである正孔の移動度(キャリア移動度)よりも十分に大きく、また発光層22におけるキャリアの再結合時間が、キャリアの拡散時間に比べて十分に短い半導体材料を用いて構成されている。このため、発光層22においては、電子と正孔とが再結合し、発光して消滅すると、移動度の大きな電子は速やかに補充される。一方、移動度の小さな正孔が補充されると、正孔と先に補充された電子とは即座に再結合し、発光して消滅する。このため、発光層22は、p側電極24とp型半導体層21との接触面の直上であって、当該接触面と略同じ平面形状の発光領域22aでキャリアの再結合が頻繁に生じて光を発光する。
【0034】
p型半導体層(第1半導体層)21は、p側電極24から注入されるキャリアである正孔を輸送する輸送層であり、下面の中央部に平面視で円形状に接触するp側電極24が設けられている。
n型半導体層(第2半導体層)23は、n側電極25から注入されるキャリアである電子を輸送する輸送層であり、上面の一部に接触するn側電極25が設けられている。また、n型半導体層23の上面には、出射方向特定部3が設けられており、発光層22の発光領域22aから放射された光を出射方向特定部3に導光する。n型半導体層23におけるキャリア移動度は、p型半導体層21におけるキャリア移動度よりも大きくなるように半導体材料が選択されている。
p型半導体層21及びn型半導体層23は、それぞれ単層構成とすることができるが、多層構造とすることもできる。
【0035】
発光層22は、p型半導体層21とn型半導体層23との間に設けられ、p型半導体層21を介して輸送されるキャリアである正孔と、n型半導体層23を介して輸送されるキャリアである電子とが再結合して発光する層である。発光層22は、p型半導体層21及びn型半導体層23におけるキャリア移動度と再結合時間との関係により、p側電極24とp型半導体層21との接触面の直上領域及びその近傍である発光領域22aが発光し、他の領域は発光しないように構成されている。
【0036】
また、半導体結晶の積層体である発光構造部2は、下面の左端及び右端に設けられた下部電極41a,41bと、上面の前端及び後端に設けられた上部電極44a,44bとの間に印加される電圧により生じる電界により、半導体結晶が逆圧電効果により上下方向に伸縮する。本実施形態では、例えば
図8に示すように、上下方向に伸縮する半導体結晶の左右端の厚さの差を変化させることで、基板40の上面(XY平面に平行な面)に対する発光構造部2の上面の傾斜角を変化させる。そして、発光構造部2の上面に設けられた出射方向特定部3を傾斜させることにより、光線の出射方向を変調する。なお、光線の出射方向を変調する原理については後記する。
【0037】
このように、LED素子及び圧電素子としての機能を発揮する半導体材料として、GaN(窒化ガリウム)系の化合物半導体を用いることができる。また、半導体材料として、一般式がIn
1−x−yGa
xAl
yN(但し、0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)で表されるGaN(窒化ガリウム)、InN(窒化インジウム)、AlN(窒化アルミニウム)の固溶体を用いることもできる。
特に、AlNは、この母体材料自身が有する歪が大きいため、GaNとの固溶体であるAlGaN系の半導体材料を用いることで、大きな逆圧電効果を得ることができる。
また、前記化学式において、組成(x、y)を調整することで、可視光のほぼ全域の波長の光を発光することができ、画像表示用の発光素子の半導体材料として好ましい。
【0038】
ここで、
図3を参照して、逆圧電効果について説明する。
ここでは、GaN結晶を例として説明する。GaN系の半導体結晶は、六方晶系の結晶構造を有し、結晶のc軸方向に成長した結晶である。また、発光素子1において、この半導体結晶は、c軸がZ軸に平行になるように設けられている。
【0039】
ここで、GaN結晶は、強いイオン性により分極電界が発生している。更に、このGaN結晶に電界が印加されると、水平方法(XY平面に平行な方向)の結晶の変形(引っ張り歪又は圧縮歪)により、上下方向(Z軸方向)に伸縮する。C面を主面とするサファイアなどの基板上にMOCVD(有機金属化学気相成長)法によりGaNをエピタキシャル成長させて作製したLEDでは、基板との界面がGa極性面となる結晶膜が成長する。
この場合、
図3(a)に示すように、−Z軸方向(GaN結晶の[000−1]方向)に電界Ezが印加されると、面内圧縮歪が生じて、c軸方向に引っ張り応力が作用してGaN結晶が伸張する。この電界Ezの向きとc軸方向の伸縮との関係は反転させることができる。すなわち、
図3(b)に示すように、電界Ezの向きを+Z軸方向(GaN結晶の[0001]方向)とすることで、面内引っ張り歪が生じて、c軸方向に圧縮応力が作用してGaN結晶が圧縮される。
【0040】
逆圧電効果によりGaN結晶が伸縮する要因は、GaNの結晶構造が六方晶系の対称性が低い結晶構造からなり、その結晶構造に中心対称性を含まないためと考えられる。このような対称性が低く、中心対称性を持たない結晶構造を有する結晶に圧力を加えた場合には、圧力によって分極が起こり、結晶表面には電荷が生じて、結晶内には前記したように電界が発生する(圧電効果)。伸縮歪の大きさはこの分極の大きさに比例する。同様の効果は、GaNの成長基板として用いられるサファイアにもある。逆圧電効果は、この圧電効果と表裏の関係の効果である。すなわち、逆圧電効果は、このような、中心対称性を持たない結晶に電界を印加した場合に、電界に比例した歪が生じる効果である。
【0041】
また、このような大きな分極歪が、GaN結晶からなる半導体層に、特にInNの量子井戸を有するLEDでは増強され、2〜10V程度の低い電圧で、大きな逆圧電効果を発現する。GaN結晶の水平方向(a軸)の格子定数は0.3189nmであり、InN結晶の同方向の格子定数は0.3548nmである。従って、両者の間の格子不整合が11%ある。この格子不整合によって、面内圧縮歪は更に増長されて、Z軸方向に電界Ezが印加されると、電界Ezによるc軸方向(Z軸方向)のGaNの伸縮が更に増強される。
GaNを用いたLEDの場合、InNの固溶比率によって異なるが、GaNとInNとのヘテロ結合部における電界強度は、10
8V/mに達する。この電界により電子と正孔とが引き離されるため、LEDの発光効率は低下するものの、大きな逆圧電効果を利用することができる。
【0042】
そこで、発光層22は、InNからなる量子井戸をヘテロ成長させることが好ましい。前記した効果を利用することで、2〜10V程度以下の低い電圧で結晶を伸縮させることができる。
また、AlGaNのa軸方向の格子定数はGaNの格子定数よりも小さいため、半導体層中にAlGaNとGaNとの接合構造を有するように構成することでも、大きな逆圧電効果を得ることができて好ましい。
【0043】
図1及び
図2に戻って、発光素子1の構成について説明を続ける。
発光領域22aは、発光層22の、p側電極24とp型半導体層21との接触面の直上領域及びその近傍に位置する領域である。前記したように、発光領域22aは、p型半導体層21及びn型半導体層23におけるキャリア移動度と再結合時間との関係により、発光層22において選択的に発光する領域である。
【0044】
p側電極(第1電極)24は、構造物3aの直下であって、p型半導体層21の下面に設けられ、p型半導体層21にキャリアを注入するための正電極である。p側電極24は、円柱形状をしており、その円形の上面がp型半導体層21の下面の一部と接触するように設けられている。p側電極24は、金属又はITO(インジウム・スズ酸化物)などの導電性化合物で構成される。また、p側電極24は、複数種類の導電材料を積層した多層構造としてもよい。
なお、p側電極24の形状は円柱状に限定されず、角柱状、針状、球状、半球状など、任意の形状とすることができる。また、p型半導体層21との接触面の形状は、円形状に限定されず、楕円形や多角形とすることもでき、接触面の形状及び大きさは、構造物3aの構造に応じて定めることができる。
【0045】
n側電極(第2電極)25は、n型半導体層23の上面の一部に設けられ、n型半導体層23にキャリアを注入するための負電極である。n側電極25は、n型半導体層23の一部と接触するように設けられればよく、上面の一部に限定されず、側面に設けたり、平面視で構造物3aが設けられた領域を除く上面の外縁部に設けたりしてもよい。何れにしても、n型半導体層23の上面に構造物3aを設ける上で、障害とならない箇所に設けることが好ましい。n側電極25は、前記したp側電極と同様に、金属や導電性化合物を用いて構成することができる。
【0046】
ここで、
図4を参照して、所望の発光領域22aの直径(用途によっては画素サイズ)を100μmとした場合の、p側電極24の許容し得る最大の直径の求め方について説明する。なお、平面視における発光領域22aの形状及びp側電極24の形状は円として説明するが、四角や楕円など、他の形状であっても同様にして求めることができる。
【0047】
図4に示すように、平面視におけるp側電極24の直径をLe、発光領域22aの直径をLp、発光構造部2の上面から出射する出射光の直径をLsとする。
前記したように、半導体としてGaNを用いた場合は、キャリア移動度と再結合時間との関係から、p側電極24の直径Leと、発光領域22aの直径Lpとは、略同じとなる(Lp≒Le)。発光領域22aから放射された光は、n型半導体層23を伝搬する際に広がりを生じるが、n型半導体層23から外部に放射される際に、n型半導体層23の屈折率(誘電率)と外部の屈折率とで決まる臨界角θcによる制限を受けるため、外部に取り出される光の直径も制限される。すなわち、臨界角θcよりも大きな入射角でn型半導体層23と外部との界面に入射する光は、界面で全反射するため外部には取り出されない。この臨界角θcとなるときの発光領域22aの直上領域からの広がりをwとする。また、n型半導体層23の厚さをdとする。
このとき、これらのパラメータの間には、式(1)の関係がある。
Ls=Lp+2w
=Lp+2d・tanθc …式(1)
【0048】
ここで、例えば、d=5μm、θc=19°とすると、外部に取り出される光の直径Lsは、Le+3.4μmとなる。従って、外部に取り出される光の直径Lsを100μmとするために、p側電極24の直径が93μmとすることが求められる。
【0049】
図1及び
図2に戻って、発光素子1の構成について説明を続ける。
出射方向特定部3は、発光構造部2の上面に設けられ、発光構造部2の発光層22が発光する光を、光の干渉作用を利用して発光素子1から出射する光の方向を特定する構造物3aを有している。本実施形態では、出射方向特定部3は、平坦面であるn型半導体層23の上面に構造物3aを有している。また、構造物3aは、所定領域を取り囲むように、3つの柱状部31,32,33を有し、少なくとも一つの柱状部のn型半導体層23の上面からの高さ(以下、単に「柱状部の高さ」という)が、他の柱状部の高さと異なり、これらすべての柱状部31,32,33の上面から光を射出する。そして、これらの柱状部31,32,33の上面から出射する光同士の干渉を利用して、特定の方向に強度を有するようにするものである。
【0050】
構造物3aは、発光構造部2の発光層22が発光する光を、光の干渉作用を利用して発光素子1から出射する光の方向を特定するものである。本実施形態においては、構造物3aは、横断面が円形状の3つの柱状部31,32,33から構成されている。なお、本実施形態においては、柱状部33が柱状部31,32よりも低いものとして説明する。
【0051】
柱状部31,32,33は、発光構造部2から入射される光を伝搬させ、それぞれの上面31a,32a(不図示),33aから出射する導光部材である。柱状部33の高さは、柱状部31,32の高さより低くなるように形成されている。柱状部31,32,33の上面31a,32a(不図示),33aから出射された光は干渉し合い、柱状部31,32,33の配置に応じた方向(n型半導体層23の上面に平行な平面内の方位、及びその平面に対する仰角)に強度を有する光線が出射方向特定部3から出射される。
なお、出射方向特定部3により光の出射方向を特定する原理の詳細については、後記する。
【0052】
出射方向特定部3は、入射される光に対して透光性を有する材料で構成することができる。例えば、SiO
2やAl
2O
3などの誘電体材料を用いることができる。また、n型半導体層23と同様の半導体材料を用いて構成することもできる。
また、本実施形態における出射方向特定部3は、n型半導体層23の上面に直接に柱状部31,32,33を設けるように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、n型半導体層23の上面に均一な厚さの層を土台として設け、構造物3aである柱状部31,32,33を、この土台の上面に設けるようにしてもよい。また、発光構造部2の上面に出射方向特定部3を設けるのではなく、発光構造部2の上部であるn型半導体層23の一部(例えば、n型バッファ層)を加工して、柱状部31,32,33を形成するようにしてもよい。
また、柱状部31,32,33は、円柱形状に限定されるものではなく、多角柱であってもよい。また、柱状部の数は、3本以上であればよく、例えば、6本とすることもできる。
【0053】
次に、
図5及び
図6を参照して、出射方向特定部3の構造物3aを構成する3つの柱状部31,32,33及び発光領域22aの形状と配置とについて説明する。
【0054】
(柱状部の間隔)
柱状部31,32,33は、発光素子1の発光領域22aから放出される光の波長λ
0程度以上の径を有する。ここで、波長λ
0は、自由空間における放射光の波長を示す。
図5及び
図6では柱状部31,32,33の平面視での形状を円形で示した。各柱状部31,32,33の太さは等しいものとした(半径をφとする)。柱状部31,32,33は、
図5に示すように、発光素子1の光の出射面において、所定の原点Mの周囲に均等な角度α(この例では、α=120度)の方位に、互いに間隔pだけ離間して配置されている。また、柱状部31,32,33の間隔pは、隣り合った柱状部31,32,33から出射される光が干渉可能な程度に設定されている。すなわち、柱状部31,32,33は、出射光の可干渉長以下であることが好ましい。なお、光の可干渉長は、光源である発光構造部2(
図1参照)が放射する光の発光スペクトルの中心波長と半値幅とに依存する。光源がLEDの場合は、例えば真空中において10〜数十μm程度の長さとなる。
【0055】
(複数の柱状部の配置の原点M)
図5に示した例では、所定の原点Mとは、発光構造部2(
図1及び
図2参照)の上面において3つの柱状部31,32,33により環状に取り囲まれた所定領域の中央に位置する点である。また、この原点は、柱状部33の中心O
3と、柱状部32の中心O
2と、柱状部31の中心O
1とから等距離にある点であり、中心O
1,O
2,O
3を頂点とする正三角形の重心のことである。ここで、3つの柱状部31,32,33は、円環状かつ均等に配置されることが好ましい。なお、柱状部31,32,33により取り囲まれた所定領域の形状やサイズは、柱状部31,32,33の直径とバランスを取りながら所望のものとして適宜設計できる。例えば柱状部31,32,33の直径が、発光波長λ
0の数波長程度分であれば、所定領域のサイズは、数分の1波長〜数波長程度とすることができる。
【0056】
また、原点Mと柱状部31,32,33の中心O
1,O
2,O
3とをそれぞれ結んだ線上にある、原点Mから柱状部31,32,33までの距離ρは、自由空間における放射光の波長λ
0以下、例えば、1/4〜1波長程度であることが好ましい。特に距離ρを、柱状部31,32,33の直径2φの1/4程度となるように設定すると、柱状部31,32,33の出射面である上面31a,32a,33a(
図7参照)から出射する光を互いに干渉させて良好に成形し、十分な強度の光線を出射することができるため好ましい。
【0057】
図7に示すように、柱状部31,32,33の内で、2つの柱状部31,32の、基準面である底部30の上面30aからの高さを、それぞれ基準となる高さHとする。そして、柱状部33の高さと他の柱状部31,32の高さとの差をδとするすると、柱状部33の高さは(H−δ)となる。本実施形態においては、光の干渉によって指向性の良好な光線に成形するためには、高さの差δは、柱状部31,32,33中における放射光の波長λ
1以下とすることが好ましく、波長λ
1の半分以下とすることがより好ましいことが、実験の結果として得られている。
【0058】
ここで、波長λ
1は、自由空間において波長λ
0の光が、柱状部31,32,33を光導波路として伝搬するときの波長である。一般に、半導体や誘電体などの誘電率は空気中(又は真空中)の誘電率よりも高いため、半導体や誘電体中を伝搬する際の光の速度は、空気中を伝搬する速度に比べて遅くなる。具体的には、空気中(又は真空中)の光の速度をc、柱状部31,32,33を構成する半導体や誘電体などの材料の屈折率をnとすると、柱状部31,32,33中を伝搬する光の速度は、c/nで与えられる。
【0059】
従って、波長λ
1は、波長λ
0の値を柱状部31,32,33の内部の屈折率nで除することにより求めることができる。例えば、発光構造部2(
図1参照)をGaN系の半導体で構成して波長λ
0が405nmの青色光を放射し、柱状部31,32,33を、屈折率n=2.6のGaNで構成する場合、柱状部31,32,33を伝搬する光の波長λ
1は、約156nmである。
また、以下の説明において、柱状部31,32,33によって出射方向を特定するに際して、機能の違いから、柱状部31,32を導波柱、柱状部33を制御柱と呼ぶことがある。
【0060】
(発光領域と柱状部との相互関係)
次に、
図6を参照(適宜
図1及び
図2参照)して、発光領域22aの寸法と、柱状部31,32,33の寸法との相互関係について説明する。
なお、以下の説明では、簡便のため、n型半導体層23及び出射方向特定部3は、同じ屈折率の材料で構成されているものとして説明する。異なる屈折率の材料で構成されている場合は、発光領域22aの寸法として、直径Lpに代えて、前記した式(1)で算出されるLsを用いるものとする。
【0061】
発光素子1は、前記したように、発光領域22aで発光した光が、n型半導体層23を介して柱状部31,32,33に入射し、柱状部31,32,33の内部を伝搬して、出射面である上面31a,32a,33aから出射した光の干渉によって光線を成形するものである。よって、柱状部31,32,33の上面31a,32a,33aから出射した光の干渉によって成形される光線の強度は、発光領域22aで発光した光が、柱状部31,32,33の内部に取り入れられる量によって変化する。そして、発光領域22aで発光した光が、柱状部31,32,33の内部に取り入れられる量が一定量より少ないと、柱状部31,32,33の上面31a,32a,33aから十分な強度の光が出射されず、これらの光の干渉によって明瞭な光線を成形することが困難となる。
【0062】
一方、柱状部31,32,33の上面31a,32a,33aから出射した光線の方向制御の任意性を向上させるためには、発光領域22aで発光し、柱状部31,32,33の入射せずに素子表面(n型半導体層23の上面)から漏れ出た光と、柱状部31,32,33に入射して上面31a,32a,33aから出射した光とが、余分な干渉を引き起こすことを抑制することが必要である。
【0063】
これらを両立するためには、発光領域22aと、柱状部31,32,33との間に、以下に説明する関係が成立するように、発光領域22aの寸法と柱状部31,32,33の寸法とを規定することが望ましい。
【0064】
図6に示すように、まず、3つの柱状部31,32,33のすべてを囲むように、柱状部31,32,33の外縁の一部に接するように描いた平面図形を想定する。ここでは、平面図形として、
図6において二点差線で示したように、柱状部31,32,33のすべてを囲む円形状の図形を想定する。この円の中心は、柱状部31,32,33の中心O
1,O
2,O
3を頂点とする正三角形の重心である原点Mと一致する(
図5参照)。ここで、柱状部31,32,33をすべて囲む最小の円の半径r
SOは、原点Mから柱状部31,32,33までの距離ρに、柱状部31,32,33の直径2φを加えたものとなる。
【0065】
従って、
図6に示すように、柱状部31,32,33をすべて囲む最小の円(二点差線で描画)の面積SOと、発光領域22a(破線で描画)の面積SLと、柱状部31,32,33の各面積SPとは、それぞれ式(2)〜式(4)により求めることができる。
SL = πΨ
2 …式(2)
SO = π(2φ+ρ)
2 …式(3)
SP = πφ
2 …式(4)
【0066】
ここで、式(2)におけるΨは、発光領域22aの半径である。
このとき、発光領域22aの面積SLと、柱状部31,32,33をすべて囲む最小の円の面積SOとの間に、式(5)の関係が成立することが望ましい。
SL ≦ SO …式(5)
【0067】
また、発光領域22aの面積SLと、柱状部31,32,33の各面積SPの総和である面積3SPとの間に、式(6)の関係が成立することが望ましい。
3SP ≦ SL …式(6)
【0068】
なお、式(6)において、面積SPに乗ずる数は、柱状部の設置数に応じて変わるものである。
よって、これらをまとめると、光線の明瞭性の向上と、光線の方向制御の任意性の向上とを両立させるためには、式(7)に示す関係が成立することが望ましい。
N×SP ≦ SL ≦ SO …式(7)
但し、Nは柱状部の設置数を示し、3以上の整数である。
【0069】
前記した式(7)に示したように、発光領域22aの面積SLを、柱状部31,32,33をすべて囲む最小の円の面積SO以下とすることで、発光領域22aで発光した光が、柱状部31,32,33以外の素子表面(n型半導体層23の上面)から漏れ出して、柱状部31,32,33の上面から出射した光と余分な干渉を引き起こすのを抑制することができるので、光線の方向制御の任意性を向上させることができる。
なお、平面視において、発光領域22aの面積SLは、前記したようにp側電極24の面積、より正確にはp側電極24の上面とp型半導体層21の下面とが接触する面積と同じであるとみなすことができる。
【0070】
また、式(7)に示したように、発光領域22aの面積SLを、柱状部31,32,33の各面積SPの総和である面積3SP以上とすることで、発光領域22aで発光した光のほとんどを柱状部31,32,33の内部に入射させることができる。このため、柱状部31,32,33の内部を伝搬して上面から出射される光の強度を高くすることができる。これによって、これらの光の干渉によって成形される光線の明瞭性を向上することができる。
【0071】
[発光素子の柱状部から出射される光の干渉の原理]
次に、発光素子1から出射される光線の方向を特定する原理である、発光素子1の柱状部31,32,33から出射される光の干渉の原理について
図7を参照しつつ、適宜数式を用いて説明する。なお、柱状部31及び柱状部32は高さが同じであるので、
図7及び数式を用いた説明では、簡便のため、高さの異なる2つの柱状部32と柱状部33とから出射される光の干渉を例に説明する。
【0072】
図7に示した発光素子1において、n型半導体層23の上面を基準の位置(高度h
0)とする。また、柱状部33の光の出射面である上面33aの位置を高度h
1、柱状部32の光の出射面である上面32aの位置を高度h
2とし、柱状部32と柱状部33との水平方向の間隔をpとする。また、柱状部32,33の中心軸から等距離の水平位置において、n型半導体層23の上面に垂直な軸方向(一点差線で描画)の所定地点Cの高度をh
3とする。このとき、柱状部32の高さH=h
2−h
0であり、柱状部33の高さ(H−δ)=h
1−h
0である。これより、柱状部32と柱状部33との高さの差δ=h
2−h
1である。
【0073】
図7に示すように、発光素子1において発光領域22aから放射された光は、高い柱状部32と低い柱状部33とに分岐してそれぞれの柱状部32,33の上面32a,33aから射出される。ここで、高い柱状部32を通る場合に、1つの光路(以下、光路Aという)として、柱状部32中の点A1と、柱状部32の上面32aの中心点A2とを経由して地点Cに達する光路を想定する。また、低い柱状部33を通る場合に、1つの光路(以下、光路Bという)として、柱状部33の上面33aの中心点B1と、点B1からδだけ高い位置B2とを経由して地点Cに達する光路を想定する。
【0074】
光路Aを通る光と光路Bを通る光とは、高度h
1までは屈折率が同じ媒質(出射方向特定部3)を同じ距離だけ進むので同位相のままである。このときの位相を初期位相θ
0とすると、光路Aでは点A1において位相はθ
0であり、光路Bでは点B1において位相はθ
0である。
【0075】
これら光路Aを通る光と光路Bを通る光とは、高度h
1から高度h
2まで異なる媒質を進む。このとき、光路Aでは媒質は柱状部32(例えば、半導体や誘電体)であり、光路Bでは媒質は空気である。一般に、半導体や誘電体の誘電率は空気中(又は真空中)より高いため、半導体や誘電体中を伝搬する際の光の速度は、空気中を伝搬する速度に比べて遅くなる。具体的には、大気中(又は真空中)の光の速度をc、半導体や誘電体の屈折率をnとすると、半導体や誘電体中の速度は、c/nで与えられる(例えばGaNであれば例えばn=2.6)。このため、半導体や誘電体からなる発光素子1中で発生した光を2つに分岐して、一方をそのまま大気中(又は真空中)に射出し、かつ、他方を半導体や誘電体中を伝搬させてから射出した場合、それら2つの光が射出された後に出会うと、光路が異なるため、光の位相は異なるようになる。従って、
図7に示した発光素子1からの光の自由空間中の波長をλ
0とし、光路Aでは高度h
1から高度h
2までの区間の半導体や誘電体中で位相がαだけ進むとすると、光路Aでは点A2において位相は式(8)で表される。
【0077】
また、光路Bでは高度h
1から高度h
2までの自由空間中で位相がβだけ進むとすると、光路Bでは点B2において位相は式(9)で表される。
【0079】
さらに高度h
2から高度h
3まで自由空間なので、光路Aを通る光と光路Bを通る光とは同じ媒質(自由空間)を進む。また、このとき、光路Aの点A2から点Cまでの距離と、光路Bの点B2から点Cまでの距離とは同じである。従って、光路Aを通る光の点A2における位相と、光路Bを通る光の点B2における位相との差は、点Cにおいても保存されることとなる。この位相差τは式(10)で表される。すなわち、柱状部32と柱状部33の高さの差δによって光路Aと光路Bとの位相差τを制御することができる。式(10)を変形すると、高さの差δは、式(11)で表される。
【0081】
そして、柱状部32を通る光は、柱状部33を通る光に比べて遅延するため、両者が混合されると、それら2つの光の波面とは全く異なる波面をもつ波が生成される。すなわち、柱状部32,33から放出される光の波面は互いに干渉し、これら2つの柱状部32,33の相対的な位置(3次元空間の位置)によって決定される方位(方向)に、光が射出されることになる。
【0082】
続いて、3次元空間の位置r
1にある波源としての柱状部32と、3次元空間の位置r
2にある波源としての柱状部33から射出された光の干渉について説明する。
位置r
1にある波源と、位置r
2にある波源とからそれぞれ射出された光によって、3次元空間の位置rに時刻tにおいて合成される光の強度I(r)は、次の式(12)で与えられる。
【0084】
式(12)において、光の干渉を表す第3項が存在するために、発光領域22aから射出された光が、2つの波源からそれぞれ射出された後に重畳されて、波面を変えて波の進行方向を変えることが可能となる。式(12)では、式(13)のγの実部を利用する。式(13)のE
*は、Eの複素共役であることを示す。γは、式(13)で示すように、0から1までの値をとり、2つの波源から射出された光が時間的・空間的にどのくらい相関を持っているのかを示している。よって、γは、次の式(14)〜式(16)のように場合分けすることができる。
【0086】
式(14)の場合を完全コヒーレント、式(15)の場合をインコヒーレント、式(16)の場合を部分的なコヒーレントと呼ぶ。ここでは、発光素子1として、LEDの光源を使用しているため、部分的なコヒーレントになっている。したがって、
図7に示した発光素子1においては、光の強度において、前記した式(12)の第3項の寄与が大きいため、光の進行方向を大きく曲げられる。
なお、柱状部32,33間の水平方向の間隔pが微小であるときには、光の進行方向が曲げられる大きさは、柱状部32と柱状部33との高さの差δが支配的な要因となる。
【0087】
図7では、簡単のため、高さの異なる2つの柱状部から出射される光の干渉による光線の方向について説明した。波源としての柱状部が3つある場合についても、前記した式(12)を拡張することが可能である。例えば、第1の柱状部31と第2の柱状部32との組み合わせを2つの波源として前記した式(12)を適用し、第2の柱状部32と第3の柱状部33との組み合わせを2つの波源として前記した式(12)を適用し、第3の柱状部33と第1の柱状部31との組み合わせを2つの波源として前記した式(12)を適用し、これら3つの組み合わせを加算することで、波源としての柱状部が3つある場合についての関係式を求めることができる。
【0088】
なお、
図7に示した出射方向は、出射方向特定部3から出射される光線の様子を説明するために模式的に示したものである。すなわち、
図7に示した柱状構造の場合に、常に短い方の柱状部側に傾斜して出射されることを示したものではない。出射方向がどの方向となるかは、柱の本数や配置、柱の間隔などにより異なり、長い柱状部側に傾いて出射される場合もある。
【0089】
図1及び
図2に戻って、発光素子1の構成について説明を続ける。
下部電極41a及び下部電極41bは、それぞれ下部絶縁層42a及び下部絶縁層42bを介して、発光構造部2の下面の左端及び右端に沿って設けられた帯状の電極である。
また、上部電極44a及び上部電極44bは、それぞれ上部絶縁層43a及び上部絶縁層43bを介して、発光構造部2の上面の前端及び後端に沿って設けられた帯状の電極である。下部電極41aと上部電極44aと、及び下部電極41bと上部電極44bとは、それぞれ発光構造部2を挟んで、一部が対向するように設けられている。
下部電極41a,41b及び上部電極44a,44bは、逆圧電効果を利用して発光構造部2の半導体結晶に歪を生じさせることで、発光構造部2の上面を傾斜させ、発光構造部2の上面に設けられた出射方向特定部3によって特定される光の出射方向を、発光構造部2の上面の傾斜角の分だけ変化させるための出射方向可変用の電極である。
【0090】
ここで、
図8を参照(適宜
図1及び
図2参照)して、光線の出射方向を変調する原理について説明する。なお、
図8においては、上部電極44a,44bの記載は省略している。
ここでは、発光構造部2の上面を、左右方向(X軸方向)に傾斜させる場合を例として、光線の出射方向の変調について説明する。
図8(a)に示すように、発光構造部2の下部電極41a,41bと上部電極44a,44b(
図2参照)との間に電圧が印加されない場合は、発光構造部2の上面は、基板40の上面(XY平面に平行な面)と平行である。このとき、出射方向特定部3によって特定される光線の出射方向が、発光構造部2の上面の法線に対してθxであるとする。
【0091】
次に、
図8(b)に示すように、下部電極41aと上部電極44a(
図2参照)との間に電圧を印加して、発光構造部2の右端部に上下方向に引っ張り応力が作用するように電界をかける。これによって、発光構造部2の上面は、右上がりに傾斜する。ここで、基板40の上面に対するこの傾斜角をφxとする。出射方向特定部3は、発光構造部2の上面の法線に対してθxの方向に光線を出射するため、基板40の上面の法線に対して、(θx+φx)の方向に光線が出射されることになる。
【0092】
また、
図8(c)に示すように、下部電極41bと上部電極44b(
図2参照)との間に電圧を印加して、発光構造部2の左端部に上下方向に引っ張り応力が作用するように電界をかける。これによって、発光構造部2の上面は、左上がりに傾斜する。ここで、基板40の上面に対するこの傾斜角を−φxとする。出射方向特定部3は、発光構造部2の上面の法線に対してθxの方向に光線を出射するため、基板40の上面の法線に対して、(θx−φx)の方向に光線が出射されることになる。
【0093】
以上のように、逆圧電効果を利用して、発光構造部2の上面を傾斜させることにより、これと連動して傾斜する出射方向特定部3から出射される光線の方向を変調することができる。
なお、本例では、電圧の印加のさせ方により、3方向に変調が可能であるが、印加電圧を細かく制御することで、更に多段階に変調することも可能である。逆に、左又は右に傾斜した2状態、すなわち、(θx+φx)と(θx−φx)との2段階に変調するようにしてもよい。この場合は、変調度は、左右の傾斜角の差である2φxとすることができる。
【0094】
また、本例では、左端又は右端の何れか一方に択一的に電圧を印加して伸張させるように構成した。発光構造部2の半導体結晶を伸張させる場合に印加する電圧(順方向のバイアス)に比べて、半導体結晶を圧縮させる場合に印加する電圧(逆方向のバイアス)は、高電圧を印加する必要がある。このため、伸張する側のみ電圧を印加することで、印加電圧を低圧化でき、また、伸張する方が圧縮する方よりも高速変調が可能である。
【0095】
また、伸張モードのみを利用する構成に限定されず、左端及び右端に同時に逆向きに電圧を印加するように構成してもよい。これにより、傾斜角をより多くすることができる。
また、左端又は右端の一方にのみ電極を設けて電圧を印加して、伸張又は/及び圧縮するように構成してもよい。
また、上部電極及び下部電極を、それぞれ平面視で四辺に分離して設け、X軸方向だけでなく、Y軸方向についても、光線の出射方向を変調するようにしてもよい。
【0096】
なお、本発明の発光素子1を、IP立体ディスプレイの画素として用いる場合は、前記した傾斜角φxは、0.1°程度以下であってもよく、0.3°程度以上であることが好ましい。
例えば、IP立体ディスプレイの要素画像が60×60画素相当の要素画素群であって、立体視が可能となる視野角を40°と想定した場合について考える。このとき、1つの発光素子1が出射方向を変調して、要素画像の隣接画素相当の刻みで、隣接する方向の光線を一定の角度刻みで出射する場合の角度ピッチ(角度分解能)は、
40°/60=0.66667°
となる。
【0097】
以上は、要素画像が60×60画素相当の要素画素群で構成されている場合であるが、更に要素画像が多画素相当の構成となる場合には、この角度分解能は更に細かくなる。すなわち、要素画素の画素数が1桁増えた600×600の要素画素群で構成されている場合、その角度ピッチ(角度分解能)は、
40°/600=0.06667°
となる。
このような多数の要素画素数相当のIP立体ディスプレイを構成する場合は、逆圧電効果を利用して、出射方向を角度分解能の刻みで連続的に変えながら、LEDの発光輝度についても連続的に輝度変調することになる。
【0098】
前記した例(要素画素が60×60画素相当)において、1つの発光素子1を左右に傾斜させることで出射方向を変調し、2つの出射方向の光線を出射するように構成する場合は、傾斜角の差(2φx)が0.66°となるようにすればよい。従って、傾斜角φx≒0.3°とすることができる。
なお、前記した傾斜角φxは一例を示すものであり、表示パネルからの観察距離や出射方向の密度に応じて、適宜定めることができる。
【0099】
なお、
図8に示した出射方向は、
図7に示した出射方向と同様に、出射方向特定部3から出射される光線の様子を説明するために模式的に示したものである。すなわち、
図8に示した柱状構造の場合に、常に短い方の柱状部側に傾斜して出射されることを示したものではない。出射方向がどの方向となるかは、柱の本数や配置、柱の間隔などにより異なり、長い柱状部側に傾いて出射される場合もある。
【0100】
[発光素子の動作]
次に、
図1及び
図2を参照して第1実施形態にかかる発光素子1の動作について説明する。
第1実施形態に係る発光素子1は、n側電極25及びp側電極24間に電力を供給することにより発光構造部2の発光層22が発光し、その光が出射方向特定部3に入射される。発光構造部2から出射方向特定部3に入射された光は、出射方向特定部3の構造物である柱状部31,32,33の構成によって特定される方向に出射される。また、下部電極41a,41b及び上部電極44a,44b間に電圧が印加されると、発光構造部2を構成する半導体層が逆圧電効果により印加された電圧に応じて変形する。そして、印加された電圧に応じて、発光構造部2の上面が傾斜し、これに連動して、出射方向特定部3が傾斜する。このとき、出射方向特定部3から出射される光線の方向は、出射方向特定部3が傾斜した分だけ変調される。
【0101】
[発光素子の製造方法]
次に、
図9から
図11を参照(適宜
図1及び
図2参照)して、本実施形態に係る発光素子の製造方法について説明する。
なお、本例では、発光構造部2として、GaN系の化合物半導体を用いてLED構造を形成する場合について説明する。
【0102】
(発光構造部準備工程)
まず、発光構造部準備工程において、
図9(a)に示すように、発光構造部2を準備する。
発光構造部2は、サファイア、GaN、AlN、GaAs、SiC、Si、ZnO等からなる基板50上に、例えば、MBE(分子線エピタキシー)法、MOCVD(有機金属化学気相成長)法などの成膜方法により、剥離層51、n型半導体層23、発光層22及びp型半導体層21を順次に積層して形成することができる。
【0103】
更に詳細に説明すると、n型半導体層23は、ノンドープのGaNなどからなる下地層(バッファ層)などを介してn型不純物であるSiをドープしたGaNからなる結晶を成長させて形成する。また、n型半導体層23は、例えば、GaNからなるn型コンタクト層とAlGaNからなるn型クラッド層との2層構造にして形成してもよい。なお、下地層は、基板1とn型半導体層23との材料の組み合わせによっては省略することもできる。
【0104】
発光層22は、n型半導体層23及びp型半導体層21の間に設けられ、n型半導体層23に、例えば、InGaNなどを積層して形成する。なお、発光層22としてInGaNからなる活性層を形成し、ダブルへテロ構造とすることもできるし、n型半導体層22とp型半導体層21との間に異なる材料の活性層を設けずに、n型半導体層23とp型半導体層21とを直接に接合し、このpn接合面(界面)を発光層22とした構造としてもよい。また、発光層3として、例えば、ノンドープのGaNからなる障壁層とノンドープのInN又はInGaNからなる井戸層とを交互に積層した量子井戸構造、好ましくは多重量子井戸構造の活性層を形成してもよい。
【0105】
p型半導体層21は、発光層22上に、p型不純物であるMgをドープしたGaNからなる結晶を成長させて形成する。p型半導体層21も、n型半導体層23と同様に、例えば、GaNからなるp型クラッド層とAlGaNからなるp型コンタクト層との2層構造にして形成してもよい。
なお、各半導体層において、格子不整合となる接合面を設けると、大きな逆圧電効果を利用することができるため好ましい。
【0106】
剥離層51は、後記する貼り合せ工程で、基板40と発光構造部2とを貼り合せた後に、後記する剥離工程で半導体層である発光構造部2を成長させるために用いた基板50を剥離するための層である。例えば、レーザリフトオフ法により基板50を剥離する場合には、例えば、n型半導体層23を形成する際の下地層を剥離層51とすることができる(例えば、参考文献1参照)。この剥離層51は、後記する剥離工程において、レーザ照射により分解され、基板50を発光構造部2から剥離することができる。
(参考文献1):特許第4653804号公報
【0107】
また、ケミカルリフトオフ法により基板50を剥離する場合には、剥離層51として、基板50上に、例えば、Crなどの金属層の窒化物の層を形成することができる(例えば、参考文献2参照)。この金属窒化物からなる剥離層51は、後記する剥離工程において、液剤を用いた化学エッチングにより除去され、基板50を発光構造部2から剥離することができる。ケミカルリフトオフ法は、レーザリフトオフ法に比べ、多数のウェハを同時に処理することができるために生産性が高く、また、剥離の際に半導体層に対するストレスが少なくクラックの発生が抑制されるために歩留まりが高い。
なお、金属窒化物からなる剥離層51は、基板50上にMOCVD法により形成することができる。また、他の方法として、基板50上にスパッタリング法や蒸着法などにより金属膜を成膜した後、この金属膜をアンモニア含有ガス雰囲気で1040℃以上の温度として窒化させて金属窒化物膜を形成することもできる。
(参考文献2):特開2009−54888号公報
【0108】
(下部絶縁層形成工程)
次に、下部絶縁層形成工程において、フォトリソグラフィ法によって、下部絶縁層42a,42bを形成する。
この工程においては、まず、
図9(b)に示すように、p型半導体層21の表面全体に絶縁層42を形成する。絶縁層42は、SiO
2やAl
2O
3などの絶縁材料を用いて、例えば、スパッタリング法やCVD法などにより形成することができる。
次に、
図9(c)に示すように、絶縁層42をパターニングするためのマスク52を形成する。マスク52は、フォトレジストを絶縁層42の表面に塗布し、所望の形状にUV光を照射した後、現像することで形成する。次に、
図9(d)に示すように、マスク52を用いて絶縁層42をp型半導体層21が露出するまでエッチングし、残った絶縁層42が、下部絶縁層42a,42bとなる。絶縁層42の絶縁材料としてSiO
2を用いる場合は、エッチング法として、例えば、HF(フッ化水素)やKOH(水酸化カリウム)の水溶液を用いたウェットエッチングや、SF
6,CHF
3ガスプラズマを用いたドライエッチングを用いることができる。
なお、本実施形態では、マスク52は、次工程であるp側電極形成工程において用いるため、ここでは除去しない。
【0109】
(p側電極形成工程)
次に、下部絶縁層形成工程において、リフトオフ法により、下部絶縁層42a,42bから露出したp型半導体層21の表面にp側電極24を形成する。
この工程においては、まず、
図9(e)に示すように、AlやCuなどの導電性材料を用いて導電層53を形成する。このとき、マスク52上にも導電層53が形成される。
次に、
図9(f)に示すように、マスク52上に形成された不要な導電層53とともにマスク52を除去することで、導電層53がパターニングされ、p側電極24が形成される。
【0110】
(下部電極形成工程)
次に、下部電極形成製工程において、リフトオフ法によって、下部絶縁層42a,42b上に下部電極41a,41bを形成する。
この工程では、まず、
図9(g)に示すように、p側電極24及びその周辺である下部絶縁層42a,42bの一部を被覆するマスク54を形成する。下部絶縁層42a,42bの一部まで被覆するのは、p側電極24と、この工程で形成される下部電極41a,41bとの短絡を防止するためである。マスク54は、フォトレジストをp側電極24及び下部絶縁層42a,42bの表面全体に塗布し、所望の形状にUV光を照射した後、現像することで形成する。次に、
図9(h)に示すように、下部絶縁層42a,42b及びマスク54上にAlやCuなどの導電層55を、例えば、蒸着法により形成する。そして、
図10(a)に示すように、マスク54上に形成された不要な導電層55とともにマスク54を除去することで、導電層55がパターニングされ、下部電極41a,41bが形成される。
【0111】
(貼り合せ工程)
次に、貼り合せ工程において、
図10(b)に示すように、下部電極形成工程までの工程で作製したp側電極24及び下部電極41a,41bが設けられた発光構造部2を、p型半導体層12側で基板40と貼り合せる。基板40は、基体40aに、発光構造部2と融着するための接合層40bが設けられている。基体40aは、ガラス板や、Cu,Alなどの金属板を用いることができる。また、接合層40bは、300℃程度で溶融する樹脂を用いることができる。貼り合せ工程では、基板40と基板50との間に圧力をかけながら300℃程度に加熱することでp側電極24及び下部電極41a,41bを備えた発光構造部2と基板40とを融着させる。
なお、基板40を、例えば、IP立体ディスプレイの表示パネルの基板として、複数の発光素子1を配列して支持する場合は、複数の発光素子1のp側電極24、下部電極41a,41bとそれぞれ電気的に接続するための配線パターンを設けるようにしてもよい。
【0112】
(剥離工程)
次に、剥離工程において、
図10(c)に示すように、基板50を、発光構造部2から剥離する。
前記したレーザリフトオフ法により剥離する場合は、剥離層51であるGaNの下地層に、例えば、近紫外光のエキシマレーザのナノ秒パルス照射をしてGaNを分解し、基板50を発光構造部2から剥離することができる。
また、前記したケミカルリフトオフ法により剥離する場合は、剥離層51である金属窒化物層を、液剤を用いて化学エッチングすることで除去し、基板50を発光構造部2から剥離することができる。例えば、金属窒化物がCrNの場合は、エッチング用の液剤として、過塩素酸と硝酸二セリウムアンモニウムの混合液を用いることができる。
その他に、ボイド剥離法を利用して基板50と発光構造部2とを剥離することもできる。ボイド剥離法とは、基板50と半導体層である発光構造部2との間の下地層として、微細なボイド(孔)を高密度に有し、機械強度の小さい層を剥離層51として形成し、半導体層形成し後の温度降下時に生じる熱応力を利用して、発光構造部2と基板50とを自然剥離させる方法である。
【0113】
また、貼り合せ工程及び剥離工程を行うことにより、発光構造部2は、基板50から基板40に転写され、基板40に近い下層側から順に、p型半導体層21、発光層22及びn型半導体層23が積層された構成となっている。
【0114】
(上部絶縁層形成工程)
次に、上部絶縁層形成工程において、
図10(d)に示すように、発光構造部2の最上層であるn型半導体層23上に、上部絶縁層43a,43b及び出射方向特定部3(
図1及び
図2参照)を形成するための層である、絶縁層43を形成する。絶縁層43は、SiO
2やAl
2O
3などの誘電体を用い、スパッタリング法やCVD法などにより形成することができる。
なお、
図10(d)から
図10(f)及び
図11(a)から
図11(f)においては、図に記載された破断線より上部は、
図2(b)と同様に、YZ平面(
図2参照)による断面を示す。
【0115】
(n側電極形成工程)
次に、フォトリソグラフィ法及びリフトオフ法を用いて、n型半導体層23の上面に電気的に接続されるn側電極25を形成する。
この工程では、まず、
図10(e)に示すように、絶縁層43をパターニングするための、n側電極25を形成する領域に開口を有するマスク56を形成する。マスク56は、フォトレジストを絶縁層43の表面に塗布し、所望の形状にUV光を照射した後、現像することで形成する。
【0116】
次に、
図10(f)に示すように、マスク56を用いて絶縁層43をn型半導体層23が露出するまでエッチングする。絶縁層43の絶縁材料としてSiO
2を用いる場合は、エッチング法として、例えば、HF(フッ化水素)やKOH(水酸化カリウム)の水溶液を用いたウェットエッチングや、SF
6,CHF
3ガスプラズマを用いたドライエッチングを用いることができる。
【0117】
次に、
図11(a)に示すように、AlやCuなどの導電性材料を用いて、導電層57を形成する。このとき、マスク56上にも導電層57が形成される。
次に、
図11(b)に示すように、マスク56上に形成された不要な導電層57とともにマスク56を除去することで、導電層57がパターニングされ、n側電極25が形成される。
【0118】
(出射方向特定部形成工程)
次に、出射方向特定部形成工程において、絶縁層43を加工して、出射方向特定部3を形成する。
出射方向特定部形成工程では、
図11(c)に示すように、FIB(Focused Ion Beam:集中イオンビーム)法などにより絶縁層43を加工して、出射方向特定部3の構造物である柱状部31,32,33(
図2参照)を形成する。また、出射方向特定部3の形成は、柱状部31,32,33を形成する領域をマスクし、他の領域をRIE(反応性イオンエッチング)などのドライエッチングや、薬液を用いたウェットエッチングを用いて形成することもできる。このとき、柱状部31,32を形成する領域に形成するマスクと、柱状部33に形成するマスクとの厚さを異なるようにし、一方のマスクがエッチングにより速く除去されるようにし、絶縁層43の一部がエッチングされるようにすることで、柱状部31,32と、柱状部33との高さを異なるように形成することができる。
また、出射方向特定部形成工程を行うことにより、
図11(c)に示すように、n型半導体層23の上面の端部に残った絶縁層43が、上部絶縁層43a,43bとなる。
【0119】
本実施形態では、出射方向特定部3は、絶縁層43を加工して形成するが、これに限定されるものではなく、上部絶縁層43a,43bを形成する工程とは別工程とし、GaN系半導体層を積層して加工するようにしてもよい。また、基板40に転写された後の発光構造部2の最上層に該当するn型半導体層23の一部を加工して出射方向特定部3を形成するようにしてもよい。
なお、SiO
2のように、GaN系の半導体材料からなるn型半導体層23よりも屈折率の小さい材料を用いて出射方向特定部3を形成する場合は、柱状部31,32,33の高さの精度を緩和することができる。
【0120】
(上部電極形成工程)
次に、上部絶縁層43a,44b上に、リフトオフ法により、上部電極44a,44bを形成する。
この工程では、まず、
図11(d)に示すように、n側電極25、出射方向特定部3及びこれらの周辺である上部絶縁層43a,43bの一部を被覆するマスク58を形成する。上部絶縁層43a,43bの一部まで被覆するのは、n側電極25と、この工程で形成される上部電極44a,44bとの短絡を防止するためである。マスク58は、フォトレジストをn側電極25、出射方向特定部3及び上部絶縁層43a,43bの表面全体に塗布し、所望の形状にUV光を照射した後、現像することで形成する。次に、
図11(e)に示すように、上部絶縁層43a,43b及びマスク58上に、AlやCuなどの導電性材料を用いて導電層59を、例えば、蒸着法により形成する。そして、
図11(f)に示すように、マスク54上に形成された不要な導電層59とともにマスク58を除去することで、導電層59がパターニングされ、上部電極44a,44bが形成される。
以上の工程により、発光素子1が完成する。
【0121】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る発光素子1は、表面に3個以上の柱状部を形成することで光の干渉効果により光線を成形できる。また、発光素子1は、出射方向特定部3における柱状部31,32,33の配置と、制御柱である柱状部33と導波柱である柱状部31,32との高さの差を適切に選んで形成することで、表示パネル面に対して垂直な方向を含む任意方向へ放射する光線を成形することが可能となる。また、発光素子1は、表面に柱状部31,32,33を形成するだけで光線の方向を制御できるため、その構造が簡単である。更に、下部電極41a,41bと上部電極44a,44bとを形成し、これらの電極間に電圧を印加することで、柱状部31,32,33が形成された発光素子1の表面を傾斜させて、光線の出射方向を変えることができる。
【0122】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る発光素子について、
図12を参照して説明する。
図12に示す第2実施形態に係る発光素子1Aは、
図1及び
図2に示した第1実施形態に係る発光素子1において、発光構造部2に代えて基板50上に形成された発光構造部2Aを備え、n側電極25に代えてn側電極25Aを備え、p側電極24に代えてp側電極24A及び透明電極24Aaを備え、上部電極44a,44b及び上部絶縁層43a,44bに代えて、それぞれ上部電極44Aa,44Ab及び上部絶縁層43Aa,44Abを備えて構成されている。
第2実施形態に係る発光素子1Aは、発光構造部2Aが、半導体層の成長基板である基板50上にn型半導体層23、発光層22及びp型半導体層21が積層された構成となっている。すなわち、第1実施形態と異なり、半導体の積層体を反転せず、基板50を剥離せずに用いるものである。
【0123】
このために、下部電極41a,42bは、下部絶縁層42a,42bを介して、基板50の下面に設けられている。また、n側電極25Aは、n型半導体層23の側面の一部に設けられている。なお、基板5としてサファイアなどの絶縁性基板を用いる場合は、下部絶縁層42a,42bは省略することができる。
また、p側電極24Aは、p型半導体層21の上面に、透明電極24Aaを介して設けられている。透明電極24Aaは、平面視で出射方向特定部3が設けられる領域に設けられ、金属等の電気良導体からなるp側電極24Aから供給される電流をp型半導体層21に拡散して、出射方向特定部3の直下の発光層22を良好に発光させるための電流拡散層である。透明電極24Aaは、ITOなどの透光性の導電材料を用いて形成することができる。
なお、透明電極24Aaを、p型半導体層21の上面のほぼ全面に設け、p側電極24Aは、平面視で、出射方向特定部3の構造物が設けられる領域を除く領域の透明電極24Aaの上面全域に設けるようにしてもよい。
【0124】
また、上部電極44Aa,44Abは、上部絶縁層43Aa,43Abを介して、発光構造部2Aの上面の左端及び右端に、Y軸方向に延伸する帯状に形成されている。すなわち、上部電極44Aa,44Abは、下部電極41a,41bと、ほぼ全面が対向するように配置されている。このため、発光構造部2の半導体層に効果的に電界を印加することができる。
なお、上部電極44Aa,44Abは、
図1及び
図2に示した第1実施形態における上部電極44a,44bと同様に、発光構造部2Aの上面の前端及び後端に、X軸方向に延伸するように設けてもよい。また、第1実施形態における上部電極44a,44bは、本実施形態における上部電極44Aa,44Abと同様に、発光構造部2の上面の左端及び右端に、Y軸方向に延伸するように設けてもよい。
なお、他の構成については、第1実施形態に係る発光素子1と同様であるから、同じ符号を付して説明は省略する。
【0125】
また、基板50として、発光構造部2Aを構成するGaN形半導体結晶と同じ六方晶系の、サファイアやGaN系半導体を用いると、基板50も逆圧電効果によって発光構造部2と同様に伸縮するため、出射方向の変調に寄与することができる。
なお、大きな逆圧電効果が得られる半導体層に効果的に電界を印加するためには、基板50は薄いほど好ましい。従って、製造工程において、半導体層を成長した後に、基板50の裏面を研磨して薄肉化することが好ましい。
なお、第2実施形態に係る発光素子1Aは、第1実施形態に係る発光素子1の製造方法において、貼り合せ工程で発光構造部2Aを基板50側で基板40と貼り合せ、基板50を剥離しないようにする。他の工程は、第1実施形態と同様であるから製造方法の説明は省略する。
【0126】
次に、第2実施形態にかかる発光素子1Aの動作について説明する。
第2実施形態に係る発光素子1Aは、n側電極25A及びp側電極24A間に電力を供給することにより発光構造部2Aの発光層22が発光し、その光が出射方向特定部3に入射される。発光構造部2Aから出射方向特定部3に入射された光は、出射方向特定部3の構造物である柱状部31,32,33(
図1及び
図2参照)の構成によって特定される方向に出射される。
また、下部電極41a,41b及び上部電極44Aa,44Ab間に電圧が印加されると、発光構造部2Aを構成する半導体層が逆圧電効果により変形する。そして、印加された電圧に応じて、発光構造部2Aの上面が傾斜し、これに連動して、出射方向特定部3が傾斜する。このとき、出射方向特定部3から出射される光線の方向は、出射方向特定部3が傾斜した分だけ変調される。
【0127】
<第3実施形態>
次に、
図13及び
図14を参照して、第3実施形態に係る発光素子について説明する。
図13及び
図14に示すように、第3実施形態に係る発光素子1Bは、
図1及び
図2に示した第1実施形態に係る発光素子1において、出射方向特定部3に代えて、出射方向特定部3Bを備えるものである。第1実施形態に係る発光素子1と同様の構成については、同じ符号を付して説明は適宜省略する。
なお、
図14(b)において、破断線より下部は
図14(a)のA−A線における断面を示し、破断線より上部は
図14(a)のB−B線における断面を示す。
【0128】
図13及び
図14に示すように、発光素子1Bは、構造物3Baとして、平坦な上面30Baにおいて所定領域を取り囲むように、3つ以上の孔(柱状凹部)を有し、少なくとも1つの孔の深さが他と異なり、これらすべての孔から光を射出する点に特徴がある。以下では、一例として発光素子1Bが3つの孔31B,32B,33Bを有し、孔33Bが孔31B,32Bよりも浅いものとして説明する。
【0129】
本実施形態に係る発光素子1Bは、出射方向特定部3Bとして、3つの柱状の凹部である孔(柱状凹部)31B,32B,33Bを構造物3Baとして有するものである。孔31B,32B,33Bは、第1実施形態における出射方向特定部3の柱状部31,32,33に代わる構造物である。前記したように、出射方向特定部3Bの上面30Baに対して、孔33Bの底面33Baの深さが、孔31B,32Bの底面31Ba,32Baの深さよりも浅く形成されている。
なお、本実施形態では、孔31B,32B,33Bの形状は、横断面が円形の円柱状としたが、これに限定されず、横断面が多角形、楕円などの他の形状の柱状とすることもできる。
【0130】
発光構造部2の発光領域22aから放射された光は、孔31B,32B,33Bに入射し、孔31B,32B,33Bの底面31Ba,32Ba,33Baから出射し、これらの出射光は干渉し合い、孔31B,32B,33Bの配置に応じた方向に強度を有する光線が出射方向特定部3Bから出射される。出射方向特定部3Bは、各孔31B,32B,33Bの深さを異なるようにし、その深さの差により、各孔31B,32B,33Bの底面31Ba,32Ba,33Baから出射する光に位相差を生じさせるものである。
なお、出射方向特定部3Bにより光の出射方向を特定する原理は、第1実施形態における出射方向特定部3と同様であるから、説明は省略する。また、発光構造部2の動作も、第1実施形態における発光構造部2と同様であるから、説明は省略する。
【0131】
また、平面視における発光領域22aと、孔31B,32B,33Bの配置との好ましい関係は、第1実施形態に係る発光素子1における発光領域22aと、柱状部31,32,33と同様である。すなわち、発光領域22aの面積をSL、孔31B,32B,33Bの面積をSP、孔31B,32B,33Bを含む外接円の面積をSOとすると、光線の明瞭性の向上と、光線の方向制御の任意性の向上を両立させるために、前記した式(7)の関係が成立することが望ましい。
但し、式(7)において、Nは孔の設置数を示すものとし、3以上の整数である。
【0132】
また、本実施形態に係る発光素子1Bは、第1実施形態に係る発光素子1の製造方法において、出射方向特定部形成工程において、柱状部31,32,33を形成する代わりに、孔31B,32B,33Bを形成するように絶縁層43(
図11(c)参照)を加工することで製造することができる。他の工程については、第1実施形態と同様であるから、説明は省略する。
【0133】
<第4実施形態>
[IP立体ディスプレイの概念]
次に、
図15を参照して、第4実施形態として、本発明の発光素子を用いたIP立体ディスプレイ(立体画像表示装置)について説明する。
図15(a)及び
図15(b)に示すように、本実施形態に係るIP立体ディスプレイは、第1実施形態に係る発光素子1を基板11上に多数並べることにより、IP方式のディスプレイであるIP立体ディスプレイ100を構成するものである。図示は省略するが、IP立体ディスプレイ100に対応したIP立体撮影装置がレンズ板を介して
図15(b)に示す円柱や立方体等の被写体を予め撮影した要素画像群を取得しておくことが、立体を表示(再生)するためには簡便であるが、多視点映像もしくは3次元モデルのレンダリング処理などによって作成し、IP立体ディスプレイ100における発光素子1の配列に合わせてデータを構成したものを用いても構わない。
【0134】
従来のIP方式のディスプレイでは、例えば液晶パネルに要素画像群を表示して、簡便には、撮影時と同様の要素レンズアレイの各要素レンズを介して各要素画像を投影し、それらを集積した像を、被写体に対応した立体再生像として観察することができる。
本発明によるIP立体ディスプレイ100の場合は、密集して配置された複数の発光素子1が1単位の要素画素群として要素画像を形成し、従来のIP立体ディスプレイの個々の要素レンズに相当する領域に、それぞれ対応する要素画素群(1つの単位構造)が並置される構造となる。
【0135】
ここで、要素画像とは、微小な光学レンズの集合体である要素レンズアレイを用いた従来のIP方式のディスプレイにおいて、1つの要素レンズに対応して投影される画像のことである。従来のIP方式のディスプレイにおいて1つの要素画像を構成する要素画素群の各画素から発せられる光線は、各画素位置と要素レンズの中心とを結ぶ方向に出射される。このため、1組の要素画素群を構成する各画素から発せられる光線は、それぞれ異なる方向に出射される。
【0136】
本発明では、従来のIP方式のディスプレイにおける要素レンズに代えて、画素として用いる発光素子1ごとに出射方向を設定するものである。そのために、
図15(a)に示したIP立体ディスプレイ100は、発光素子1ごとに、それぞれが定められた方向に光線を出射するように出射方向特定部3として柱状部31,32,33(
図1及び
図2参照)などの構造物が設置される。
また、本発明の発光素子1は、前記したように、下部電極41a,41bと上部電極44a,44b(
図1及び
図2参照)との間に電圧を印加することで、出射方向が変調できるように構成されている。
なお、前記したように、発光素子1を基板11上に多数並べることでIP立体ディスプレイ100を提供することが可能であるが、その際に発光素子1自体を基板11に対して傾斜させて配置することで、出射方向をより広範囲に設定することができる。
【0137】
ここで、1組の要素画素群は、ある画素位置におけるすべての方向に対応する光線を出射する画素の集合を示すものである。例えば、IP立体ディスプレイ100が、各要素画素群から出射する光線の方向数を、横(水平)方向に60、縦(垂直)方向に60とすると、全部で60×60=3600個の方向に対応した光線を出射することになる。
本発明の1つの発光素子1が、出射方向を変調して、2つの方向に光線を出射することができる場合は、1組の要素画素群当たりに、3600個の方向に光線を出射するために、3600/2=1800個の発光素子1を備えることでIP立体ディスプレイ100を実現することができる。1つの発光素子1が、更に多くの方向に変調可能な場合は、IP立体ディスプレイ100は、光線の全出射方向数を変調数で除した数の発光素子1を備えることで実現することができる。
【0138】
図15(b)は、ある観察点において、IP立体ディスプレイ100からこの観察点の方向に出射される光線の様子の一例を示したものである。観察点1では、各要素画素群の内でこの観察点1の方向に出射される光線(実線の矢印線)が集積され、例えば、円柱や立方体のような画像を観察することができる。また、観察点1の近傍の観察点2では、観察点1の方向に光線を出射する発光素子1から、他の方向に変調されて出射された光線(点線の矢印線)が集積され、その方向に対応する画像が観察される。
このように、発光素子1の出射方向を変調することで、出射方向数よりも少ない発光素子1により立体画像を投影することができる。
【0139】
なお、IP立体ディスプレイ100の発光素子1,1間、すなわち、画素間においては、互いに可干渉長以上の距離を持って配置されるため、異なる画素から出射された光の間で干渉波が生成されることはない。そのため、例えば、3つの画素から射出される光が合成される光の強度は、3つの画素から射出されたそれぞれの光の強度の単なる加算となる。つまり、画素間において合成される光の強度は、3つの画素を3つの波源とみなしたときに、前記した式(17)の第1項と第2項に相当する演算で求められることとなる。
【0140】
このような微細構造を有する発光素子1を多数個並べた表示パネルは、従来技術においてレンズ板と発光面とを接合させた装置と同じ働きを有するようになる。このようにして作成したIP立体ディスプレイ100においては、立体表示の解像度は、発光素子1の精細度にのみ依存し、光学系の解像度不足による映像ボケが生じない。また、発光素子1を用いたIP表示における視域角の最大値は、素子表面と垂直な方向に対する放射光の成す角(制御角)の最大値にのみ依存し、解像度と視域角とを独立に改善することが可能である。
【0141】
[IP立体ディスプレイの構成]
次に、
図16を参照して、本実施形態に係るIP立体ディスプレイ100の構成について詳細に説明する。
図16に示すように、本実施形態に係るIP立体ディスプレイ100は、表示パネル(表示素子)10と、発光制御部60と、出射方向制御部63とを備えて構成されている。IP立体ディスプレイ100は、外部の表示制御部70を介して入力される画像信号を、表示パネル10にIP方式の立体画像として表示する立体画像表示装置である。
【0142】
表示パネル(表示素子)10は、発光素子1を画素として、基板11上に2次元(
図16では、3×3)に配列して設けられており、IP方式の立体画像を表示する表示素子である。なお、基板11は、
図1及び
図2における基板40に代わるものであり、各発光素子1は、この共通基板11上に配列して設けられる。
基板11の表面には、列方向(縦方向)に配列された発光素子1ごとに、p側電極24と電気的に接続する配線用電極12と、下部電極41aと電気的に接続する配線用電極13aと、下部電極41bと電気的に接続する配線用電極13bとが設けられている。同じ列に属する発光素子1のp側電極24、下部電極41a及び下部電極41bは、それぞれ配線用電極12、配線用電極13a及び配線用電極13bを介して、導通している。
また、同じ行(横方向)に配列された発光素子1は、n側電極25同士が互いにワイヤ15で電気的に接続され、上部電極44a同士が互いにワイヤ14aで電気的に接続され、上部電極44b同士が互いにワイヤ14bで電気的に接続されている。
なお、ワイヤ14a,14b,15としては、例えば、金ワイヤやカーボンテープを用いることができる。
また、これらの電極間の接続は、ワイヤやテープに限定されず、多層配線基板に形成したAlやCuなどからなる金属配線パターンを用いて行うこともできる。
【0143】
また、列ごとに、p側電極24には配線用電極12を介して列選択部62から画像信号が列選択信号として入力され、各行ごとに、n側電極25には、各行の右端の発光素子1のn側電極25を介して行選択部61から走査信号が行選択信号として入力される。表示パネル10において、行選択信号が入力されたn側電極25と、列選択信号が入力された配線用電極12に接続された発光素子1が選択され、その発光時間(発光/非発光)が制御される。
【0144】
また、各発光素子1の下部電極41aには、配線用電極13aを介して、下部電極制御部64から出射方向を制御するための信号が入力され、下部電極41bには、配線用電極13bを介して、下部電極制御部64から出射方向を制御するための信号が入力される。
また、各発光素子1の上部電極44aには、左端の発光素子1の上部電極44aを介して、上部電極制御部65から出射方向を制御するための信号が入力され、上部電極44bには、左端の発光素子1の上部電極44bを介して、上部電極制御部65から出射方向を制御するための信号が入力される。表示パネル10において、下部電極41a,41bと上部電極44a,44bとの間に印加される電圧に応じて、発光素子1が出射する光線の方向が左右に変調される。
【0145】
発光制御部60は、行選択部61と列選択部62とを備え、外部の表示制御部70を介して入力される画像信号に基づいて、表示パネル10に画素として配置された発光素子1を順次選択し、その発光時間を制御するものである。
行選択部61は、表示制御部70から画像信号の行に同期した走査信号を入力し、その行に対応するn側電極(行電極)25に出力する。選択されたことを示す所定の電位(例えば0V)の行選択信号が入力された行が、発光時間を制御される対象となる。
列選択部62は、表示制御部70から画像信号を入力し、各列に対応する画像信号に分割して、各列に対応する配線用電極12に分割した画像信号を列選択信号として並行して出力する。
また、このときに列選択部62は、出射方向制御部63が発光素子1の出射方向を変更するタイミングに同期して、列選択信号として、2つの方向に対応する画像信号を時分割で切り替えて出力する。
【0146】
選択されたことを示す所定レベルの電位(例えば5V)の列選択信号が入力されている期間、発光素子1が発光する。従って、行選択信号が入力されている期間であって、所定のレベルの列選択信号が入力されている期間に発光素子1が発光し、それ以外の期間に発光素子1は非発光となる。列選択信号において所定レベルとなる期間を、画像信号中の対応する画素データに応じて増減することで、発光素子1の画素として表示する輝度を変調することができる。
【0147】
出射方向制御部63は、下部電極制御部64と上部電極制御部65とを備え、下部電極41a,41bと上部電極44a,44bとの間に印加する電圧を制御して、各発光素子1の出射方向を左右何れか寄りに傾斜した方向に変調するものである。このとき、出射方向制御部63は、表示制御部70から入力される同期信号に基づいて、発光制御部60が、各画素に対して出力する2つの方向についての画像信号の切り替えタイミングに同期して、出射方向が切り替わるように、下部電極41a,41bと上部電極44a,44bとの間に印加する電圧を制御する。
【0148】
下部電極制御部64は、各発光素子1の下部電極41aと電気的に接続された配線用電極13a、及び下部電極41bと電気的に接続された配線用電極13bに対して、下部電極41aと上部電極44aとの間、及び下部電極41bと上部電極44bとの間が、それぞれ所定の電圧となるように、所定レベルの信号(例えば、0V)を出力するものである。
上部電極制御部65は、各発光素子1の上部電極44a及び上部電極44bに対して、下部電極41aと上部電極44aとの間、及び下部電極41bと上部電極44bとの間がそれぞれ所定の電圧となるように、所定レベルの信号(例えば、4V)を出力するものである。
【0149】
例えば、下部電極41aの電位を0Vとし、上部電極44aを4Vとし、下部電極41bと上部電極44bとの間には電圧を印加しないようにすることで、発光素子1の発光構造部2(
図2参照)の左端には紙面に下向き(−Z軸方向)の電界が生じて半導体層が伸張される。その結果、出射方向特定部3は左上がりに傾くため、発光素子1の出射方向は右方向に変調される。
また、下部電極極41bの電位を0Vとし、上部電極44bを4Vとし、下部電極41aと上部電極44aとの間に電圧を印加しないようにすることで、発光素子1の発光構造部2(
図2参照)の右端には紙面に下向き(−Z軸方向)の電界が生じて半導体層が伸張される。その結果、出射方向特定部3は右上がりに傾くため、発光素子1の出射方向は左方向に変調される。
【0150】
表示制御部70は、画像信号を入力し、入力した画像信号を、列選択部62に出力すると共に、この画像信号に同期した走査信号を行選択信号として行選択部61に出力するものである。また、表示制御部70は、画素クロックなどの同期信号を出射方向制御部63にも出力し、発光制御部60における2つの方向についての画像信号の表示の切り替えタイミングと、出射方向制御部63における出射方向の切り替えタイミングとを同期させる。
【0151】
[IP立体ディスプレイの動作]
次に、引き続き
図16を参照して、本実施形態に係るIP立体ディスプレイ100の動作について説明する。
IP立体ディスプレイ100は、表示制御部70から、画像信号と共に画像信号の行に同期した走査信号を入力する。IP立体ディスプレイ100は、行選択部61によって、n側電極25を順次に選択して、表示制御部70から入力した走査信号を行選択信号として出力する。これと並行して、IP立体ディスプレイ100は、列選択部62によって、表示制御部70から入力される1行の画像信号を、列に対応するデータ信号に分割し、分割したデータ信号を、それぞれ対応する列の配線用電極12に出力する。また、このときIP立体ディスプレイ100は、列選択部62によって、1つの列について、2つの方向に対応する画像信号を入力して、これら2つの方向に対応するデータ信号に変換し、時分割で配線用電極12に出力する。
IP立体ディスプレイ100の表示パネル10において、行選択部61によって選択された行に属する各発光素子1は、列選択部62から入力されるデータ信号に応じて発光時間が制御される。
また、IP立体ディスプレイ100は、列選択部62により2つの方向に対応するデータ信号の出力を切り替えるタイミングに同期させて、出射方向制御部63によって、発光素子1の出射方向を左右の所定の方向から他方に切り替わるように下部電極41a,41bと上部電極44a,44bとの間に印加される電圧を切り替える。
これによって、各発光素子1は、2つの方向に対応する画像の画素を表示することができる。
【0152】
IP立体ディスプレイ100は、表示制御部70から次の行についての走査信号を入力すると、行選択部61によって次の行を選択する行選択信号を、対応するn側電極25に出力する。これと並行して、IP立体ディスプレイ100は、列選択部62によって、表示制御部70から入力される次の行の画像信号を、列に対応するデータ信号に分割し、分割したデータ信号を、それぞれ対応する列の配線用電極12に出力する。また、このときIP立体ディスプレイ100は、列選択部62によって、1つの列について、2つの方向に対応する画像信号を入力して2つに方向に対応するデータ信号に変換し、時分割で配線用電極12に出力する。これによって、次の行に属する発光素子1の発光時間が制御される。
以下、IP立体ディスプレイ100は、順次に選択する行を変えて、選択した行に属する発光素子1の発光時間を制御する。これを繰り返すことによって、IP立体ディスプレイ100は、表示制御部70を介して入力される画像信号を、表示パネル10から立体画像として投影することができる。
【0153】
なお、本実施形態では、第1実施形態に係る発光素子1を画素として用いたが、第2実施形態に係る発光素子1A、第3実施形態に係る発光素子1B又はこれらを変形した発光素子を画素として用いることもできる。
また、変調する出射方向は横方向に限定されず、縦方向又は横方向及び縦方向とすることもできる。また、変調数も3以上とすることも可能である。
更にまた、発光素子1ごとに下部電極41a,41bと上部電極44a,44bとの間に印加する電圧を変えることで、発光素子1ごとに出射方向の変調度(傾斜角)が異なるようにしてもよい。また、印加電圧を一定として、下部絶縁層42a,42b又は/及び上部絶縁層43a,43bの厚さを発光素子1ごとに変えて発光構造部2にかかる電界強度を変えることで、発光素子1ごとに変調度(傾斜角)が異なるようにしてもよい。
【0154】
[発光素子の利用可能性]
本発明の発光素子1,1A,1Bは、光線の成形と方向制御を必要とするデバイス一般に応用することが可能である。例えば、プロジェクタ用光源、空間光インターコネクションに用いる接続器、拡散板を必要としない照明用光源などに好適である。