特許第6010433号(P6010433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010433
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】基板載置台および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20161006BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H01L21/68 N
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-250809(P2012-250809)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-99519(P2014-99519A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】古屋 敦城
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳彦
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−022936(JP,A)
【文献】 特開2006−156938(JP,A)
【文献】 特開平09−107689(JP,A)
【文献】 特開平05−267436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内で処理ガスにより被処理基板に処理を施す基板処理装置において基板を載置する基板載置台であって、
被処理基板を載置する載置面を有する上部絶縁部材内に直流電圧が印加される吸着電極が設けられて構成された静電チャックを備えた載置台本体と、
前記載置台本体を温調する温調機構と、
前記載置台本体に被処理基板が載置されている際に、被処理基板の裏面側に伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給機構と
を具備し、
前記上部絶縁部材は、被処理基板の周縁部が載置される周縁載置部を有し、前記上部絶縁部材の前記周縁載置部より内側の内側部分は、その上面が前記周縁載置部よりも低く形成されており、被処理基板が載置された際に、被処理基板と前記内側部分の上面との間に前記伝熱ガスが供給される空間を有し、
前記吸着電極は、前記上部絶縁部材の前記周縁載置部に存在しないように設けられ、
前記周縁載置部は、前記処理ガスに起因してその上面に付着する副生成物がその上に載置された被処理基板の裏面に密着しないように形成された凹部を有しており、
前記凹部は、前記周縁載置部の上面の周方向に沿って設けられた複数の溝であることを特徴とする基板載置台。
【請求項2】
前記上部絶縁部材の前記内側部分から前記周縁載置部と同じ高さ位置まで延び、その上面で被処理基板を支持する基板支持部をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の基板載置台。
【請求項3】
前記複数の溝は、均等な間隔および幅で形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板載置台。
【請求項4】
前記周縁載置部の溝を含まない部分の幅は5mm以上であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の基板載置台。
【請求項5】
前記載置台本体は、導電体部分を有し、前記導電体部分にプラズマ生成用の高周波電力が供給されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の基板載置台。
【請求項6】
被処理基板に対して処理を施すための処理容器と、
前記処理容器内で基板を載置する基板載置台と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、
前記処理容器内を排気する排気機構と
を具備し、
前記基板載置台は、上記請求項1から請求項のいずれかの構成を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
前記基板載置台の前記載置台本体は、導電体部分を有し、前記導電体部分にプラズマ生成用の高周波電力を供給する高周波電源が接続され、
前記処理ガス供給機構は、前記処理容器の上部に前記基板載置台と対向して設けられた、前記処理ガスを前記処理容器内に吐出するためのシャワーヘッドを有し、
前記基板載置台と前記シャワーヘッドは一対の平行平板電極を構成し、前記高周波電源から供給された高周波電力により前記処理容器内に処理ガスのプラズマが形成されることを特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を載置する基板載置台およびそれを用いた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ(FPD)や半導体デバイスの製造過程においては、被処理基板に対して、エッチング、スパッタリング、CVD(化学気相成長)等のプラズマ処理が多用されている。
【0003】
このようなプラズマ処理を施すプラズマ処理装置としては、例えば、チャンバー内に一対の平行平板電極(上部および下部電極)を配置し、下部電極として機能する基板載置台に被処理基板を載置し、処理ガスをチャンバー内に導入するとともに、電極の少なくとも一方に高周波を印加して電極間に高周波電界を形成し、この高周波電界により処理ガスのプラズマを形成して被処理基板に対してプラズマ処理を施すものが知られている。
【0004】
このようなプラズマ処理装置においては、下部電極としての基板載置台に載置された被処理基板の温度がプラズマの熱により不均一に上昇すると、プラズマ処理の面内均一性の悪化やレジスト焼け等の製品不良につながる。このため、被処理基板が均一な温度分布となるように、基板載置台を温調するとともに、基板載置台と基板の間の空間にガスを満たして基板載置台の熱を伝達するようにしている。また、その空間の圧力を保つため、基板載置台の上面の外周部に、被処理基板の周縁部が載置されて密着される土手を設け、さらに、被処理基板の浮き、ずれを防ぐため、基板載置台の上面に静電チャック(ESC)を形成して被処理基板を静電吸着により固定している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−84924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、静電チャックは、絶縁部材の内部に設けられた吸着電極に直流電圧を印加することにより、吸着電極に存在する電荷とチャンバー内のプラズマの電荷との間のクーロン力により被処理基板を基板載置台表面に吸着固定するものであるが、例えば導電性副生成物が基板載置台(下部電極)の表面に付着していると、被処理基板と基板載置台との間に電子が入り込みやすく、電子が入り込むと、そのマイナス電荷と吸着電極のプラス電荷とが結合し、静電チャックの電圧をオフした際に逆に被処理基板が基板載置台の土手に吸着され、その後除電プロセスを実行しても電荷の除去が不十分となる。また、副生成物が土手の表面に付着することで、被処理基板と土手との間の隙間が副生成物で埋まり、基板と基板載置台の密着度が過度となり、被処理基板の吸着が一層助長される。このため、除電後に被処理基板をリフトアップして基板載置台から剥離する際に、吸着現象による基板の割れ、および残存する電荷や剥離帯電による素子の静電破壊(ESD)発生の原因となってしまう。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、被処理基板を剥離する際に被処理基板の吸着現象による基板の割れ、および残存する電荷や剥離帯電による素子の静電破壊が生じ難い基板載置台およびそれを用いた基板処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、処理容器内で処理ガスにより被処理基板に処理を施す基板処理装置において基板を載置する基板載置台であって、被処理基板を載置する載置面を有する上部絶縁部材内に直流電圧が印加される吸着電極が設けられて構成された静電チャックを備えた載置台本体と、前記載置台本体を温調する温調機構と、前記載置台本体に被処理基板が載置されている際に、被処理基板の裏面側に伝熱ガスを供給する伝熱ガス供給機構とを具備し、前記上部絶縁部材は、被処理基板の周縁部が載置される周縁載置部を有し、前記上部絶縁部材の前記周縁載置部より内側の内側部分は、その上面が前記周縁載置部よりも低く形成されており、被処理基板が載置された際に、被処理基板と前記内側部分の上面との間に前記伝熱ガスが供給される空間を有し、前記吸着電極は、前記上部絶縁部材の前記周縁載置部に存在しないように設けられ、前記周縁載置部は、前記処理ガスに起因してその上面に付着する副生成物がその上に載置された被処理基板の裏面に密着しないように形成された凹部を有しており、前記凹部は、前記周縁載置部の上面の周方向に沿って設けられた複数の溝であることを特徴とする基板載置台を提供する。
【0009】
上記第1の観点の基板載置台において、前記上部絶縁部材の前記内側部分から前記周縁載置部と同じ高さ位置まで延び、その上面で被処理基板を支持する基板支持部をさらに具備してもよい。
【0011】
記複数の溝は、均等な間隔および幅で形成されることが好ましい。前記周縁載置部の溝を含まない部分の幅は5mm以上であることが好ましい。
【0012】
前記載置台本体は、導電体部分を有し、前記導電体部分にプラズマ生成用の高周波電力が供給されてもよい。
【0013】
本発明の第2の観点では、被処理基板に対して処理を施すための処理容器と、前記処理容器内で基板を載置する基板載置台と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、前記処理容器内を排気する排気機構とを具備し、前記基板載置台は、上記第1の観点の構成を有することを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0014】
上記第2の観点の基板処理装置において、前記基板載置台の前記載置台本体は、導電体部分を有し、前記導電体部分にプラズマ生成用の高周波電力を供給する高周波電源が接続され、前記処理ガス供給機構は、前記処理容器の上部に前記基板載置台と対向して設けられた、前記処理ガスを前記処理容器内に吐出するためのシャワーヘッドを有し、前記基板載置台と前記シャワーヘッドは一対の平行平板電極を構成し、前記高周波電源から供給された高周波電力により前記処理容器内に処理ガスのプラズマが形成される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、静電チャックの吸着電極は、上部絶縁部材の周縁載置部に存在しないように設けられ、かつ周縁載置部は、処理ガスに起因してその上面に付着する副生成物がその上に載置された被処理基板の裏面に密着しないように形成された凹部を有している。このため、周縁載置部の導電性の副生成物に電荷が回りこんでも、それに結合する電荷が存在せず、また凹部の存在により周縁載置部と被処理基板との間の吸着力を低減することができるので、除電後に被処理基板をリフトアップして基板載置台から剥離する際に、吸着現象による被処理基板の割れ、および残存する電荷や剥離帯電による素子の静電破壊(ESD)発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の一例であるプラズマエッチング装置を示す断面図である。
図2図1のプラズマエッチング装置における基板載置台を示す断面図である。
図3図1のプラズマエッチング装置における基板載置台の一部分を示す平面図である。
図4】従来の基板載置台を示す断面図である。
図5】従来の基板載置台において、静電チャックにより基板を吸着した状態と吸着を解除した状態を示す模式図である。
図6】従来の基板載置台において、土手に導電性の副生成物が付着した状態で静電チャックにより基板を吸着した状態と吸着を解除した状態を示す模式図である。
図7】従来の基板載置台において、土手に基板を載置した状態を示す図であり、(a)は土手と基板の間の隙間が形成されている状態を示し、(b)は隙間が副生成物で埋まった状態を示す。
図8】本実施形態の基板載置台において、土手に導電性の副生成物が付着した状態で静電チャックにより基板を吸着した状態と吸着を解除した状態を示す模式図である。
図9】溝を形成した土手に基板を載置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の一例であるプラズマエッチング装置を示す断面図、図2図1のプラズマエッチング装置における基板載置台を示す断面図、図3は基板載置台の一部分を示す平面図である。
【0018】
図1に示すように、このプラズマエッチング装置1は、FPD用のガラス基板(以下、単に「基板」と記す)Gに対してエッチングを行う容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されている。FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。プラズマエッチング装置1は、被処理基板である基板Gを収容する処理容器としてのチャンバー2を備えている。チャンバー2は、例えば、表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなり、基板Gの形状に対応して四角筒形状に形成されている。
【0019】
チャンバー2内の底壁には、基板Gを載置するとともに、下部電極として機能する基板載置台4が設けられている。基板載置台4の詳細な構造は後述する。
【0020】
チャンバー2の上部または上壁には、チャンバー2内に処理ガスを供給するとともに上部電極として機能するシャワーヘッド11が、基板載置台4と対向するように設けられている。シャワーヘッド11は、内部に処理ガスを拡散させるガス拡散空間12が形成されているとともに、下面または基板載置台4との対向面に処理ガスを吐出する複数の吐出孔13が形成されている。このシャワーヘッド11は接地されており、基板載置台4とともに一対の平行平板電極を構成している。
【0021】
シャワーヘッド11の上面にはガス導入口14が設けられ、このガス導入口14には、処理ガス供給管15が接続されており、この処理ガス供給管15には、バルブ16およびマスフローコントローラ17を介して、処理ガス供給源18が接続されている。処理ガス供給源18からは、エッチングのための処理ガスが供給される。処理ガスとしては、ハロゲン系のガス、Oガス、Arガス等、通常この分野で用いられるガスを用いることができる。
【0022】
チャンバー2の底壁には排気管19が接続されており、この排気管19には排気装置20が接続され、図示しない圧力調整弁が設けられている。排気装置20はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、これによりチャンバー2内を排気して所定の減圧雰囲気まで真空引き可能なように構成されている。チャンバー2の側壁には、基板Gを搬入出するための搬入出口21が形成されているとともに、この搬入出口21を開閉するゲートバルブ22が設けられており、搬入出口21の開放時に、図示しない搬送手段によって基板Gがチャンバー2内外に搬入出されるように構成されている。
【0023】
また、プラズマエッチング装置1は、プラズマエッチング装置1の各構成部を制御するためのマイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えた制御部40を備えている。
【0024】
次に、基板載置台4の詳細な構造について図2,3を参照して説明する。
基板載置台4は、アルミニウム等の金属やカーボンのような導電性材料からなる基材4aと、基材4aとチャンバー2の底部との間に設けられた底部絶縁部材4bと、基材4aの上に設けられた上部絶縁部材4cと、基材4aの側壁を覆う側部絶縁部材4dとを有し、これらが基板Gの形状に対応して四角板状または柱状に形成された載置台本体を構成している。底部絶縁部材4b、上部絶縁部材4c、側部絶縁部材4dとしては、アルミナ等の絶縁性セラミックスを用いることができる。
【0025】
基材4aには、高周波電力を供給するための給電線23が接続されており、この給電線23には整合器24および高周波電源25が接続されている。高周波電源25からは例えば13.56MHzの高周波電力が基板載置台4に供給され、これにより、基板載置台4が下部電極として機能する。また、基材4aには、載置された基板Gの温度を調節するための温調手段として、冷却媒体を通流させる冷媒流路5が設けられている。
【0026】
基板載置台4の上部を構成する上部絶縁部材4cは、その上面の外周部に、基板Gの周縁部が載置されて密着される周縁載置部としての土手41が形成されている。上部絶縁部材4cの土手41よりも内側の内側部分42は、その上面が土手41の上面よりも低く形成されており、基板Gが載置された際に、基板Gと内側部分42の上面との間に空間7が形成される。空間7には下方から伸びる伝熱ガス流路26が接続されており、伝熱ガス流路26の他端には伝熱ガス供給機構27が接続されている。そして、伝熱ガス供給機構27から伝熱ガス流路26を介して空間7へ基板Gに対する熱伝達のための伝熱ガス、例えばHeガスが供給されるようになっている。
【0027】
空間7の内部には、内側部分42の上面から上方に伸びる複数の支持部材8が設けられている。土手41の上面と支持部材8の上面とは同じ高さ位置を有し、土手41の上面に周縁部が載置された基板Gの下面中央部を支持部材の上面で支持するようになっており、土手41の上面と支持部材8の上面とが基板Gの載置面を構成している。なお、本実施形態では支持部材8が円柱状の場合を示しているが、支持部材8は、空間7の全体に伝熱ガスが供給され、基板Gを支持することができる限り、格子状や扁平状等、他の種々の形状を採用することができる。また、支持部材8は1個でもよい。
【0028】
上部絶縁部材4cの内部には、基板Gの面内方向(すなわち水平方向)に沿って吸着電極31が設けられており、上部絶縁部材4cと吸着電極31とで基板Gを静電吸着するための静電チャック30が構成されている。吸着電極31は板状、膜状、格子状、網状等種々の形態をとることができる。また、吸着電極31は、その端部が土手41にかからないように設けられている。すなわち、上部絶縁部材4cの土手41に対応する部分には、吸着電極31が存在しないようになっている。吸着電極31には、給電線32を介して直流電源33が接続されており、吸着電極31に直流電圧が印加されるようになっている。吸着電極31への給電は、スイッチ34でオンオフ可能である。オフ状態では給電線32は接地される。
【0029】
土手41の上面には、後述するように、副生成物の付着による基板Gと土手41との間の吸着力を低減して過度の密着を解消する観点から、周方向に沿って1以上(本例の場合には2つ)の溝41aが形成されている。溝41aには伝熱ガスは流入しないようになっている。また、伝熱ガスの空間7からの漏れ量を低減する観点から、土手41の幅は、溝41aを除いた基板が載置される部分の幅の合計で5mm以上とすることが好ましい。また、溝41aを2以上とし溝41aを均等な間隔、幅で形成することがより好ましい。溝41aの深さは特に制限はないが、土手41が必要な強度を保つことができる範囲とすることが好ましい。このような溝41aを設けることに代えて、または溝41aを設けることに加えて、土手41の表面を粗くするなど、異なる形態の凹部を形成してもよい。
【0030】
基板載置台4には、基板Gの受け渡しを行うための複数のリフタピン(図示せず)が基板載置台4の上面(すなわち上部絶縁部材4cの上面)に対して突没可能に設けられており、基板Gの受け渡しは、基板載置台4の上面から上方に突出した状態のリフタピンに対して行われる。
【0031】
次に、以上のように構成されたプラズマエッチング装置1における処理動作について説明する。以下の処理動作は制御部40の制御のもとに行われる。
まず、排気装置20によってチャンバー2内を排気して所定の圧力とし、ゲートバルブ22を開放して搬入出口21から図示しない搬送手段によって基板Gを搬入し、図示しないリフタピンを上昇させた状態でその上に基板Gを受け取り、リフタピンを下降させることにより基板載置台4上に基板Gを載置させる。搬送手段をチャンバー2から退避させた後、ゲートバルブ22を閉じる。
【0032】
この状態で、圧力調整弁によりチャンバー2内の圧力を所定の真空度に調整するとともに、処理ガス供給源18から、処理ガス供給管15およびシャワーヘッド11を介して処理ガスをチャンバー2内に供給する。
【0033】
そして、高周波電源25から整合器24を介して基板載置台4(基材4a)に高周波電力を印加し、下部電極としての基板載置台と上部電極としてのシャワーヘッド11との間に高周波電界を生じさせてチャンバー2内の処理ガスをプラズマ化させる。この際に、直流電源33から静電チャック30の吸着電極31に直流電圧を印加することにより、基板Gはプラズマを介してクーロン力により基板載置台4に吸着固定される。
【0034】
このとき、冷媒流路5に所定の温度の冷却媒体が通流されて基板載置台4が温調され、伝熱ガス供給機構27から伝熱ガス流路26を介して基板G裏面側の空間7に伝熱ガスが供給され、基板載置台4の熱を基板Gに伝熱して基板Gの温度が制御される。
【0035】
この状態で、基板Gに対してプラズマ処理、本実施形態ではプラズマエッチング処理が進行する。
【0036】
処理終了後、高周波電源25をオフにするとともに、スイッチ34を接地側に切り替えて直流電源33からの直流電圧の印加を停止し、基板Gの静電吸着を解除する。そして、リフトピン(図示せず)により基板Gをリフトアップし、ゲートバルブ22を開けて搬送機構(図示せず)により処理後の基板Gを搬出する。
【0037】
ところで、図4に示すように、従来の基板載置台4′では、基板Gを確実に吸着するために、静電チャック30′の吸着電極31′を極力基板Gの端部に近い位置まで設けている。このような従来の基板載置台4′でも、土手41′の表面に副生成物が存在しない場合には、図5(a)の吸着電極31′に電圧を印加して吸着電極31′の表面と基板Gの表面に電荷が生じて基板がGが吸着している状態から、電圧の印加を停止すると、図5(b)に示すように、吸着電極31′から電荷が離れ、基板Gの表面の電荷も離れて基板Gの吸着が解除されるので、基板Gをリフトアップしたときに基板Gは問題なく基板載置台4′から剥離可能である。しかし、処理ガスをプラズマ化してプラズマ処理を行う場合、反応により副生成物が生じ、図6(a)に示すように、それが副生成物51として基板載置台4′の表面、特に土手41′の表面に付着する場合がある。その副生成物51が導電性の場合には、吸着電極31′に電圧を印加すると、副生成物51の表面に電荷が回り込み、吸着電極31′のその直下の部分の電荷と結合する。この状態で電圧の印加を停止しても、図6(b)に示すように、土手41′に付着した導電性の副生成物51の表面に回り込んだ電荷が除去されず、吸着電極31′の土手41′に対応する部分の電荷も残存したままとなり、土手41′の部分で基板Gが吸着したままとなる。
【0038】
また、従来は、図4に示すように、土手41′は、静電吸着の際に基板Gとの間の密着性および空間7からのリークを抑制することを重視して、十分な幅をもって形成されていた。しかし、微視的に見ると、図7(a)に示すように土手41′と基板Gとの間には隙間52が存在し、図7(b)に示すように、その隙間52がプラズマ処理による副生成物51で埋まると、副生成物51の作用により基板Gと土手41′との間が強固に密着してしまい、基板Gの吸着が一層助長される。
【0039】
従来は、このように、土手に41′に対応する部分の電荷の残留、および副生成物51による基板Gと土手41′との間の過度の密着により、基板Gをリフトアップして基板載置台4′から剥離する際に、吸着現象による基板の割れ、および残存する電荷や剥離帯電による素子の静電破壊(ESD)発生が生じていた。
【0040】
そこで、本実施形態では、静電チャック30の吸着電極31を土手41にかからないように設けて、上部絶縁部材4cの土手41に対応する部分に吸着電極31が存在しないようにし、かつ、土手41の上面に溝41aを形成している。
【0041】
吸着電極31を土手41にかからないように設けることにより、吸着電極31に電圧を印加して基板Gを吸着した際に、図8(a)に示すように、土手41に形成された導電性副生成物51の表面に電荷が回り込んでも、その直下部分に吸着電極31が存在しないのでその電荷に結合する電荷は存在せず、電圧の印加を停止すると、図8(b)に示すように、導電性の副生成物51の表面に回り込んだ電荷が残存せず、吸着電極31の電荷が全て除去され、電荷による基板Gの吸着は生じない。なお、吸着電極31は、物理的に土手41に対応する部分にわずかにはみ出していても、吸着電極31に存在する電荷と土手41(導電性副生成物)の上面に存在する電荷とが影響のある結合を形成しない限り、「吸着電極31が土手41に対応する部分に存在していない」状態に含まれる。
【0042】
また、図9に示すように、土手41の上面に溝41aを設けることにより、溝41aの部分では副生成物51が基板Gには吸着しないため、土手41の溝41aが存在しない部分で基板Gが副生成物51により吸着しても、その面積を小さくすることができる。このため、副生成物51の存在による基板Gの吸着力を低減することができる。
【0043】
これらにより、静電吸着力が十分解除されなかったり、基板Gと土手41とが副生成物により過度に吸着したりすることを回避することができ、除電後に基板Gをリフトアップして基板載置台4から剥離する際に、吸着現象による基板の割れ、および残存する電荷や剥離帯電による素子の静電破壊(ESD)発生を防止することができる。
【0044】
一方、吸着電極31が基板載置台4の土手41に対応する部分に存在しないことから、周縁部の基板保持力が低下して空間7からの伝熱ガスの漏れ量増大が懸念される。しかし、評価電極を用いて漏れ量調査を行った結果、吸着電極31が土手41に対応する部分に存在している場合が3.77sccmであったのに対し、吸着電極31が土手41に対応する部分に存在していない場合が3.8sccmであり、ほとんど差が見られなかった。このことから、吸着電極31が土手41に対応する部分に存在していない場合にも十分な基板保持力が得られることが確認された。
【0045】
また、土手41に副生成物による吸着を低減する溝41aを設けることにより、基板Gの吸着力は多少低下するが、土手41の基板Gに接触する部分の面積を確保することにより伝熱ガス漏れ量の増大等の悪影響はほとんど生じなくすることができる。
【0046】
例えば、土手41に周方向に沿って1本以上の溝41aを形成することにより、副生成物の付着による基板Gと土手41との間の吸着力を低減することができるが、この際に、伝熱ガス漏れ量が許容範囲になるように、土手41の溝41a以外の部分の幅を確保することが好ましく、そのような観点からは、土手41の幅は、溝41aを除いた基板が載置される部分の幅の合計で5mm以上とすることが好ましい。また、溝41aを2以上とし溝41aを均等な間隔、幅で形成することにより、副生成物の付着による基板Gと土手41との間の吸着力を低減する効果とリークを低減する効果の両方をより高めることができるので好ましい。すなわち、溝41aを均等な間隔、幅で設けることにより、単に基板−土手間の吸着力を低減できるのみならず、基板−土手間に副生成物が発生しても基板Gに対する付着力を均等に分散することができ、局所的な基板の吸着による基板や装置の破損を防止することができる。また、溝41aを複数設けることにより、高圧の内側から溝に至るたびに膨張(減圧)して低圧の外側に達するため、伝熱ガスの漏れ量をより低減することができる。さらに、副生成物の付着による基板Gと土手41との間の吸着力を低減するためには、このような溝41aを設けることに代えて、または溝41aを設けることに加えて、土手41の表面を粗くするなど、副生成物の基板Gへの吸着を回避できる他の形態の凹部を形成することも有効である。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を平行平板型プラズマエッチング装置に適用した例について説明したが、これに限らず、誘導結合型等の他のプラズマ生成手段を用いたものであってもよく、またプラズマエッチングに限らず、プラズマアッシング、プラズマCVD等の他のプラズマ処理装置に適用可能であり、さらに、プラズマ処理装置に限らず、基板を基板載置台に載置して処理する基板処理装置全般に適用可能である。また、上記実施形態ではFPD用のガラス基板に適用した例について説明したが、これに限らず、半導体基板等、他の基板に適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1;プラズマエッチング装置(基板処理装置)
2;チャンバー(処理容器)
4;基板載置台
4a;基材
4b;底部絶縁部材
4c;上部絶縁部材
4d;側部絶縁部材
5;冷媒流路
7;空間
8;支持部材
15:処理ガス供給管
18:処理ガス供給源
19:排気管
20:排気装置
21;搬入出口
25;高周波電源
26;伝熱ガス流路
27;伝熱ガス供給機構
30;静電チャック
31;吸着電極
33;直流電源
40;制御部
41;土手(周縁載置部)
42;内側部分
51;副生成物
52;隙間
G;基板
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9