(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010511
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】研磨パッドの表面粗さ測定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20161006BHJP
B24B 37/11 20120101ALI20161006BHJP
B24B 37/34 20120101ALI20161006BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20161006BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20161006BHJP
B24B 49/18 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
H01L21/304 622F
H01L21/304 621D
H01L21/304 622M
B24B37/00 C
B24B37/00 X
B24B37/00 A
B24B49/12
B24B49/18
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-172218(P2013-172218)
(22)【出願日】2013年8月22日
(65)【公開番号】特開2015-41700(P2015-41700A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年3月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 尚典
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−88128(JP,A)
【文献】
特開2005−347568(JP,A)
【文献】
特表2013−544664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
B24B 37/11
B24B 37/34
B24B 49/12
B24B 49/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドの表面粗さの測定方法であって、レーザー顕微鏡を用いて研磨パッド表面の画像を取得する工程と、取得した画像内から算出した研磨パッドの平均高さより高さの大きな領域のみを選択する工程と、選択された領域のみから表面粗さを算出する工程と、からなることを特徴とする研磨パッドの表面粗さ測定方法。
【請求項2】
前記領域選択工程において、500μm2以下の面積の領域を選択することを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの表面粗さ測定方法。
【請求項3】
前記画像取得工程において取得される画像の面積が、100000μm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの表面粗さ測定方法。
【請求項4】
前記領域選択工程において、取得した画像内から平均高さより高さの大きな領域のみを複数選択することを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの表面粗さ測定方法。
【請求項5】
前記表面粗さを求める工程では、複数個所の算出領域で各々得られた表面粗さを平均して表面粗さを求めることを特徴とする請求項4に記載の研磨パッドの表面粗さ測定方法。
【請求項6】
前記算出される表面粗さは、算術平均粗さ;Ra、二乗平均平方根粗さ;Rq、粗さ曲線の最大谷深さ;Ry、粗さ曲線の最大山高さ;Rp、最大高さ粗さ;Rzの内の少なくとも一種類であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの表面粗さ測定方法。
【請求項7】
前記算出される表面粗さは、算術平均粗さ;Ra、二乗平均平方根粗さ;Rq、のうちの少なくとも一種類であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの表面粗さ測定方法。
【請求項8】
前記領域選択工程では、全体高さの上位30パーセント以内の高さに属する領域から選択されることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの表面粗さ測定方法。
【請求項9】
レーザー顕微鏡により設定される基準点上の平面を基準平面としたとき、研磨パッドの高さは、基準平面から研磨パッド表面までの相対的な高さであることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの表面粗さ測定方法。
【請求項10】
レーザー顕微鏡を用いて研磨パッド表面の画像を取得する工程と、取得した画像内から算出した研磨パッドの平均高さより高さの大きな領域のみを選択する工程と、選択された領域のみから表面粗さを算出する工程と、からなる研磨パッドの表面粗さ測定方法により測定された研磨パッドの表面粗さに基づいて、CMPによる研磨性能を予測することを特徴とするCMP方法。
【請求項11】
予測した研磨性能に基づいて、研磨条件、ドレッシング条件の少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項10に記載のCMP方法。
【請求項12】
予測した研磨性能に基づいて、研磨パッド、ドレッサーの少なくとも一方の寿命を予測することを特徴とする請求項10に記載のCMP方法。
【請求項13】
予測した研磨性能に基づいて、研磨条件を調整し、調整した研磨条件で基板を研磨することを特徴とする請求項10に記載のCMP方法。
【請求項14】
レーザー顕微鏡により設定される基準点上の平面を基準平面としたとき、研磨パッドの高さは、基準平面から研磨パッド表面までの相対的な高さであることを特徴とする請求項10に記載のCMP方法。
【請求項15】
レーザー顕微鏡を用いて研磨パッド表面の画像を取得する工程と、取得した画像内から算出した研磨パッドの平均高さより高さの大きな領域のみを選択する工程と、選択された領域のみから表面粗さを算出する工程と、からなる研磨パッドの表面粗さ測定方法により測定された研磨パッドの表面粗さが予め設定した表面粗さとなるように研磨パッド表面のドレッシング条件を選択することを特徴とするCMP方法。
【請求項16】
請求項15に記載のCMP方法であって、前記ドレッシング条件は、ドレッサーのタイプ、ドレッシング時の荷重、ドレッシング時の回転数のうち、少なくとも一つが条件として選択されることを特徴とするCMP方法。
【請求項17】
選択したドレッシング条件で研磨パッド表面をドレッシングし、ドレッシングされた研磨パッドにより基板を研磨することを特徴とする請求項15に記載のCMP方法。
【請求項18】
レーザー顕微鏡により設定される基準点上の平面を基準平面としたとき、研磨パッドの高さは、基準平面から研磨パッド表面までの相対的な高さであることを特徴とする請求項15に記載のCMP方法。
【請求項19】
研磨パッド表面の画像を取得するレーザー顕微鏡と、取得した画像内から算出した研磨パッドの平均高さより高さの大きな領域のみを選択し、選択された領域のみから表面粗さを算出する画像処理ユニットとからなることを特徴とする研磨パッドの表面粗さ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板の研磨に用いられる研磨パッドの表面粗さを測定する研磨パッドの表面粗さ測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化・高密度化に伴い、回路の配線がますます微細化し、多層配線の層数も増加している。回路の微細化を図りながら多層配線を実現しようとすると、下側の層の表面凹凸を踏襲しながら段差がより大きくなるので、配線層数が増加するに従って、薄膜形成における段差形状に対する膜被覆性(ステップカバレッジ)が悪くなる。したがって、多層配線にするためには、このステップカバレッジを改善し、然るべき過程で平坦化処理しなければならない。また光リソグラフィの微細化とともに焦点深度が浅くなるため、半導体デバイスの表面の凹凸段差が焦点深度以下に収まるように半導体デバイス表面を平坦化処理する必要がある。
【0003】
従って、半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学的機械研磨(CMP(Chemical Mechanical Polishing))である。この化学的機械的研磨は、研磨装置を用いて、シリカ(SiO
2)やセリア(CeO
2)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッドに供給しつつ半導体ウエハなどの基板を研磨パッドに摺接させて研磨を行うものである。
【0004】
上述したCMPプロセスは、研磨パッドを有する研磨テーブルと、半導体ウエハ(基板)を保持するためのキャリア又はトップリング等と称される基板保持装置とを備えた研磨装置を用いて、基板保持装置により基板を保持しつつ基板を研磨パッドに対して所定の圧力で押圧して、基板上の絶縁膜や金属膜を研磨している。
【0005】
基板の研磨を行なうと、研磨パッドの表面には砥粒や研磨屑が付着し、また、研磨パッドの表面形状や状態が変化して研磨性能が劣化してくる。このため、基板の研磨を繰り返すに従い、研磨速度が低下し、また、研磨むらが生じてしまう。そこで、劣化した研磨パッドの表面形状や状態を再生するために、ドレッサーを用いて研磨パッドのドレッシング(目立て)を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−260185号公報
【特許文献2】特開2005−333121号公報
【特許文献3】米国特許公開第2005−0239380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、CMPプロセス中には研磨パッドのドレッシング(目立て)を行っているが、そのドレッシング条件は主に経験則によって決められ、研磨パッドの表面を定量的に評価した上で、最適なドレッシング条件にするドレッシング方法を採用していなかった。
また、研磨パッドの表面粗さの測定方法は、レーザー顕微鏡を用いて、算術平均粗さ(Ra)や二乗平均平方根粗さ(Rq)に代表される表面粗さ指標を求めるが、CMP研磨性能との関連性は乏しかった。
例えば、特開2005−260185号公報(特許文献1)、特開2005−333121号公報(特許文献2)、米国特許公開第2005−0239380号公報(特許文献3)では、研磨パッドの一部の表面粗さを規定しているが、表面粗さの測定方法が明示されておらず、本発明者らが確認したところ、測定手法を工夫しなければ、研磨性能と関連性の強い表面粗さ指標は得られないことがわかった。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、研磨性能と強い関連性を示す研磨パッドの表面粗さ指標を測定することができる研磨パッドの表面粗さ測定方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、研磨パッドの表面粗さ測定方法で得られた表面粗さ指標に基づいてCMPプロセスを行うことができるCMP方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、研磨パッドの表面粗さの測定方法であって、レーザー顕微鏡を用いて研磨パッド表面の画像を取得する工程と、取得した画像内から
算出した研磨パッドの平均高さより高さの大きな領域のみを選択する工程と、選択された領域のみから表面粗さを算出する工程と、からなることを特徴とする研磨パッドの表面粗さ測定方法である。
本発明によれば、研磨パッドの表面粗さを算出する領域の選択は、レーザー顕微鏡で取得した画像面内から、高さの大きな領域を選択する。選択の基準の一つとして、研磨パッド表面の断面形状から数値演算により自動的に平均高さを求め、その平均高さより高さが大きい領域を算出領域として選択する。研磨パッド表面のうちごく表面の表面粗さが研磨性能を左右すると考えられるため、より限定された領域のみを算出対象領域として選択することができる。表面粗さ算出領域が選択されたら、これらの算出領域のみから表面粗さを求める。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記領域選択工程において、500μm
2以下の面積の領域を選択することを特徴とする。
本発明者らの実験によれば、選択領域の面積が小さい方が、表面粗さと研磨性能との相関が強いことが分かっており(
図4参照)、したがって、本発明は、相関係数≧0.8程度を目安とし、選択面積を500μm
2以下とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記画像取得工程において取得される画像の面積が、100000μm
2以下であることを特徴とする。
本発明者らの実験によれば、取得画像の面積が小さい方が、表面粗さと研磨性能との相関が強いことが分かっており(
図5参照)、したがって、本発明は、取得画像面積を100000μm
2以下とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記領域選択工程において、取得した画像内から平均高さより高さの大きな領域のみを複数選択することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記表面粗さを求める工程では、複数個所の算出領域で各々得られた表面粗さを平均して表面粗さを求めることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記算出される表面粗さは、算術平均粗さ;Ra、二乗平均平方根粗さ;Rq、粗さ曲線の最大谷深さ;Ry、粗さ曲線の最大山高さ;Rp、最大高さ粗さ;Rzの内の少なくとも一種類であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記算出される表面粗さは、算術平均粗さ;Ra、二乗平均平方根粗さ;Rq、のうちの少なくとも一種類であることを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記領域選択工程では、全体高さの上位30パーセント以内の高さに属する領域から選択されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、レーザー顕微鏡により設定される基準点上の平面を基準平面としたとき、研磨パッドの高さは、基準平面から研磨パッド表面までの相対的な高さであることを特徴とする。
本発明の第2の態様は、レーザー顕微鏡を用いて研磨パッド表面の画像を取得する工程と、取得した画像内から
算出した研磨パッドの平均高さより高さの大きな領域のみを選択する工程と、選択された領域のみから表面粗さを算出する工程と、からなる研磨パッドの表面粗さ測定方法により測定された研磨パッドの表面粗さに基づいて、CMPによる研磨性能を予測することを特徴とする
CMP方法である。
本発明の方法により得られた研磨パッドの表面粗さは、研磨速度と相関関係があることが確認できたので、研磨パッドの表面粗さから、研磨性能を見積もることができる。すなわち研磨パッドの表面粗さを算出し研磨速度を予測することができる。
【0015】
本発明の
好ましい態様は
、予測した研磨性能に基づいて、研磨条件、ドレッシング条件の少なくとも一方を調整することを特徴とするCMP方法である。
本発明の
好ましい態様は
、予測した研磨性能に基づいて、研磨パッド、ドレッサーの少なくとも一方の寿命を予測することを特徴とするCMP方法である。
本発明の好ましい態様は、予測した研磨性能に基づいて、研磨条件を調整し、調整した研磨条件で基板を研磨することを特徴とするCMP方法である。
本発明の好ましい態様は、レーザー顕微鏡により設定される基準点上の平面を基準平面としたとき、研磨パッドの高さは、基準平面から研磨パッド表面までの相対的な高さであることを特徴とするCMP方法である。
【0016】
本発明の第
3の態様は、レーザー顕微鏡を用いて研磨パッド表面の画像を取得する工程と、取得した画像内から
算出した研磨パッドの平均高さより高さの大きな領域のみを選択する工程と、選択された領域のみから表面粗さを算出する工程と、からなる研磨パッドの表面粗さ測定方法により測定された研磨パッドの表面粗さが予め設定した表面粗さとなるように研磨パッド表面のドレッシング条件を選択することを特徴とするCMP方法である。
本発明の好ましい態様は、上記CMP方法であって、前記ドレッシング条件は、ドレッサーのタイプ、ドレッシング時の荷重、ドレッシング時の回転数のうち、少なくとも一つが条件として選択されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、選択したドレッシング条件で研磨パッド表面をドレッシングし、ドレッシングされた研磨パッドにより基板を研磨することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、レーザー顕微鏡により設定される基準点上の平面を基準平面としたとき、研磨パッドの高さは、基準平面から研磨パッド表面までの相対的な高さであることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、研磨パッド表面の画像を取得するレーザー顕微鏡と、取得した画像内から算出した研磨パッドの平均高さより高さの大きな領域のみを選択し、選択された領域のみから表面粗さを算出する画像処理ユニットとからなることを特徴とする研磨パッドの表面粗さ測定装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、研磨性能と強い関連性を示す研磨パッドの表面粗さを測定することができる。また、測定した表面粗さから研磨速度等の研磨性能を見積もることができる。
また、本発明によれば、見積もられた研磨性能に基づいて、研磨時間などの研磨条件や研磨パッドのドレッシング条件を調整して、望ましい研磨性能を得るCMP方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明に係る研磨パッドの表面粗さ測定方法を実施する研磨装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)はレーザー顕微鏡で得られた画像であり、
図2(b)は
図2(a)において破線で示した箇所における研磨パッド表面の断面形状を示す図である。
【
図3】
図3は、表面粗さ(Ra)と研磨速度(RR)との関係を示す測定データの表及びグラフである。
【
図4】
図4は、表面粗さと研磨速度との間の相関係数と表面粗さを算出するために選択される領域の面積との関係を示す表及びグラフである。
【
図5】
図5は、表面粗さと研磨速度との間の相関係数とレーザー顕微鏡で得られた画像の面積との関係を示す表及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る研磨パッドの表面粗さ測定方法の実施形態について
図1乃至
図5を参照して詳細に説明する。なお、
図1から
図5において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明に係る研磨パッドの表面粗さ測定方法を実施する研磨装置の全体構成を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨テーブル1と、研磨対象物である半導体ウエハ等の基板Wを保持して研磨テーブル1上の研磨パッド2に押圧するトップリング10とを備えている。研磨テーブル1は、テーブル軸1aを介してその下方に配置される研磨テーブル回転モータ(図示せず)に連結されており、テーブル軸1aの回りに回転可能になっている。研磨テーブル1の上面には研磨パッド2が貼付されており、研磨パッド2の表面が基板Wを研磨する研磨面2aを構成している。研磨パッド2には、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)製のSUBA800、IC1000、IC1000/SUBA400(二層クロス)等が用いられている。SUBA800は繊維をウレタン樹脂で固めた不織布である。IC1000は硬質の発泡ポリウレタンであり、その表面に多数の微細な孔(ポア)を有したパッドであり、パーフォレートパッドとも呼ばれている。研磨テーブル1の上方には研磨液供給ノズル3が設置されており、この研磨液供給ノズル3によって研磨テーブル1上の研磨パッド2に研磨液(スラリー)が供給されるようになっている。
【0021】
トップリング10は、トップリングシャフト11に接続されており、トップリングシャフト11は、トップリングヘッド12に対して上下動するようになっている。トップリングシャフト11の上下動により、トップリングヘッド12に対してトップリング1の全体を上下動させ位置決めするようになっている。トップリングシャフト11は、トップリング回転モータ(図示せず)の駆動により回転するようになっている。トップリングシャフト11の回転により、トップリング1がトップリングシャフト11の回りに回転するようになっている。
【0022】
図1に示すように、トップリング10は、その下面に半導体ウエハなどの基板Wを保持できるようになっている。トップリングヘッド12はトップリングヘッドシャフト(図示せず)を中心として旋回可能に構成されており、下面に基板Wを保持したトップリング10は、トップリングヘッド12の旋回により基板の受け渡し位置と研磨テーブル1の上方との間で移動可能になっている。トップリング10は、下面に基板Wを保持して基板Wを研磨パッド2の表面(研磨面)に押圧する。このとき、研磨テーブル1およびトップリング10をそれぞれ回転させ、研磨テーブル1の上方に設けられた研磨液供給ノズル3から研磨パッド2上に研磨液(スラリー)を供給する。研磨液には砥粒としてシリカ(SiO
2)やセリア(CeO
2)を含んだ研磨液が用いられる。このように、研磨液を研磨パッド2上に供給しつつ、基板Wを研磨パッド2に押圧して基板Wと研磨パッド2とを相対移動させて基板上の絶縁膜や金属膜等を研磨する。絶縁膜としてはSiO
2が挙げられる。金属膜としてはCu膜、W膜、Ta膜、Ti膜が挙げられる。
【0023】
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2をドレッシングするドレッシング装置20を備えている。ドレッシング装置20は、ドレッサーアーム21と、ドレッサーアーム21に回転自在に取り付けられたドレッサー22とを備えている。ドレッサー22の下部はドレッシング部材22aにより構成され、ドレッシング部材22aは円形のドレッシング面を有しており、ドレッシング面には硬質な粒子が電着等により固定されている。この硬質な粒子としては、ダイヤモンド粒子やセラミック粒子などが挙げられる。ドレッサーアーム21内には、図示しないモータが内蔵されており、このモータによってドレッサー22が回転するようになっている。ドレッサーアーム21は図示しない昇降機構に連結されており、この昇降機構によりドレッサーアーム21が下降することでドレッシング部材22aが研磨パッド2の研磨面2aを押圧するようになっている。研磨テーブル1、トップリング10、ドレッシング装置20等の各装置類は、制御装置(図示せず)に接続されており、制御装置により研磨テーブル1の回転速度、トップリング10の回転速度および研磨圧力、ドレッシング装置20のドレッサー22の荷重や揺動速度等が制御されるようになっている。また、制御装置は、研磨パッドの表面粗さに基づいて予測された研磨性能に基づいて研磨条件及びドレッシング条件を調整することができる制御部を備えている。
【0024】
図1に示すように、研磨テーブル1上の研磨パッド2の上方には、レーザー光を研磨パッド2の表面に照射し研磨パッド2の表面で反射散乱した反射光を受光する光学系ユニット30が設置されている。光学系ユニット30は、研磨テーブル1の外側に配置され光学系ユニット30で受光した反射光を画像化して研磨パッド2の表面粗さを測定する画像処理ユニット31に接続されている。光学系ユニット30および画像処理ユニット31は、レーザー顕微鏡を構成している。
【0025】
図1に示すように構成された研磨装置において、研磨パッド2の表面粗さを測定する際、光学系ユニット30および画像処理ユニット31からなるレーザー顕微鏡を用いて研磨パッド2の表面の画像を取得し、得られた画像中、研磨パッドの高さの大きな部分を選択し、選択された部分のうち所定の面積を有する領域のみから表面粗さを求める。ここでいう研磨パッドの高さは、レーザー顕微鏡により設定される基準点上の平面を基準平面(ゼロ平面)とし、基準平面から研磨パッド表面までの相対的な高さをいう。表面粗さは、対象物の表面の微細な凹凸を表現する幾何量である。レーザー顕微鏡で取得する画像の領域は、研磨パッドが有する空孔よりも大きな領域で、また高さの大きな部分を十分に選択することができる大きさとする。具体的には、表面粗さを求めるために選択される研磨パッドの領域の面積は、25〜1000μm
2、更に望ましくは50〜500μm
2であり、このような面積を有する領域を十分に選択できるようにするために、レーザー顕微鏡により取得する画像全体の研磨パッドの領域面積は、5000〜500000μm
2、更に望ましくは10000〜100000μm
2である。当然、最適な選択領域および画像全体の面積は、研磨パッドが有する空孔の大きさによって変わるので、適宜研磨パッドの種類に応じて変更することができる。研磨パッドの空孔の大きさは、例えばダウケミカル社製のIC1000パッドでは、4000〜3000μm
2程度の面積の空孔を有している。
【0026】
一般に、研磨パッドの表面粗さは、測定箇所によってばらつきが大きいため、取得画像面内から複数箇所の研磨パッド高さの大きな領域を選択し、選択した複数箇所のうち所定の面積より大きな面積を有する領域に限定して、例えば10箇所の研磨パッド高さの大きな領域を選択する。選択された各領域で求めた表面粗さを平均して、取得画像全体の表面粗さとして代表させることが望ましい。
得られる表面粗さは、算術平均粗さ;Ra、二乗平均平方根粗さ;Rq、粗さ曲線の最大谷深さ;Rv、粗さ曲線の最大山高さ;Rp、最大高さ粗さ;Rzなどが挙げられる。本発明者らは、その内、算術平均粗さRaおよび二乗平均平方根粗さRqが、特に研磨性能と強い関連性を示すことを明らかにしている。
【0027】
図2にレーザー顕微鏡による画像及び破線で示した部分における断面形状を示す。
図2(a)はレーザー顕微鏡で得られた画像であり、
図2(a)において破線で示した箇所における研磨パッド表面の凹凸を示す断面形状を
図2(b)に示している。
研磨パッドの表面粗さを算出する領域の選択は、レーザー顕微鏡で取得した画像面内から、高さの大きな領域を選択する。選択の基準の一つとして、研磨パッド表面の断面形状から数値演算により自動的に平均高さを求め、その平均高さより高さが大きい領域を算出領域として選択する。
図2(b)において示される平均高さの線より上にある部分が選択される。研磨パッド表面のうちごく表面の表面粗さが研磨性能を左右すると考えられるため、より限定された領域のみを算出対象領域として選択することができる。例えば、画像に現れる高さの全体のうち上位30%以内に入る領域、更には上位10%以内に入る領域を算出領域として選択することができる。
図2(a)における断面をとる位置を上下方向に任意間隔で移動することができる。また、算出対象領域を選択する工程において、取得した画像内から平均高さより高さの大きな領域を複数選択して、複数の表面粗さ算出領域を設定することも可能である。
【0028】
上述のように表面粗さ算出領域が選択または設定されたら、これらの算出領域のみから表面粗さを求める。さらに複数の算出領域でそれぞれ得られた表面粗さを平均して表面粗さを求める。
表面粗さは、算術平均粗さ;Ra、二乗平均平方根粗さ;Rq、粗さ曲線の最大谷深さ;Rv、粗さ曲線の最大山高さ;Rp、最大高さ粗さ;Rzなどで表すことが可能である。研磨パッドの研磨性能との関連性を重視すると、表面粗さを、算術平均粗さRaまたは二乗平均平方根粗さRqで表すことが好ましい。
【0029】
本発明者らは、このようにして得られた表面粗さは、研磨性能と強い関連性を示すことを見出した。
図3は、表面粗さ(Ra)と研磨速度(RR)との関係を示す測定データの表及びグラフである。研磨速度の単位はnm/minである。
図3の表に示すデータは、4種類の研磨速度で研磨するときの、研磨パッド表面の表面粗さ及び標準化した表面粗さであり、それぞれレーザー顕微鏡で得られた画像の全領域を対象にして算出した値と高さの大きな部分のみを選択して算出した値とを示している。ここでは、高さの大きな部分として、平均の高さより大きい部分のみを選択している。表に示すデータのうち、標準化した表面粗さをグラフに示す。グラフにおいて丸で示される点は、全領域で表面粗さを求めた場合のデータを示し、四角で示される点は高さの高い領域だけを選択して表面粗さを求めた場合のデータを示している。
図3のグラフから、高さの高い領域だけを選択して表面粗さを求めた場合は、表面粗さと研磨速度との間には表面粗さが大きくなる程研磨速度も高くなるという一定の関係が見られる。全領域で表面粗さを求めた場合の表面粗さと研磨速度との相関係数は0.39であったが、高さの高い領域だけを選択して表面粗さを求めた場合の相関係数は0.96であり、この1に近い0.96の値からもきわめて強い相関があるということが言える。
【0030】
次に、
図4に、表面粗さと研磨速度との間の相関係数と表面粗さを算出するために選択される領域の面積との関係を表及びグラフで示す。ここでは、高さの大きな部分として、高さ全体のうちの上位30%の部分のみを選択している。表に示した表面粗さを算出するために選択される領域の面積(Area)と、表面粗さと研磨速度との間の相関係数(R2)をグラフに示している。
図4から明らかなように表面粗さ算出のために選択される領域が狭い程、相関係数は1に近づいている。選択される領域の面積は1000μm
2以下で相関関係があると考えられるが、面積が小さい程相関関係があるため選択される領域の面積は500μm
2以下が好ましい。
図4には、選択領域の面積が25μm
2の場合の相関係数が約0.937であることが示されているが、選択領域の面積の下限値としては、数〜10μm
2が考えられる。
【0031】
図5に、表面粗さと研磨速度との間の相関係数とレーザー顕微鏡で得られた画像の研磨パッド面積との関係を表及びグラフで示す。ここでは、取得した画像全体を対象にして相関係数を出している。表にはレーザー顕微鏡の倍率、取得画像の面積(Area)及び表面粗さと研磨速度との間の相関係数(R2)を示し、表中の取得画像の面積(Area)と相関係数(R2)をグラフに示している。
図5から明らかなようにレーザー顕微鏡で得られた画像の面積が狭いほうが相関係数は1に近づいているので、画像取得の研磨パッド領域面積は100000μm
2以下が好ましい。
【0032】
上述のように本発明の方法により得られた研磨パッドの表面粗さは、研磨速度と相関関係があることが確認できたので、研磨パッドの表面粗さから、研磨性能を見積もることができる。すなわち研磨パッドの表面粗さを算出し研磨速度を予測することができる。
また見積もられた研磨性能に基づいて、研磨時間などの研磨条件や研磨パッドのドレッシング条件を調整して、望ましい研磨性能を得るCMP方法を提供することができる。
研磨パッド表面粗さと研磨速度との間には、例えば研磨パッド表面粗さが大きくなると研磨速度は大きくなるというような強い相関関係がある。一方、研磨パッド表面粗さとドレッシング条件との間にも、例えばドレッシング荷重を大きくすると研磨パッド表面粗さが大きくなるというような相関関係がある。このような研磨パッドの表面粗さが関係する複数の相関関係を利用して、研磨条件やドレッシング条件などを調整する。例えば、研磨パッド表面粗さと研磨速度との間の相関関係に基づいて研磨パッド表面粗さから研磨速度を予想する。続いて、予想された研磨速度と所望の研磨速度との比較を行い、所望の研磨速度に対して予想された研磨速度に過不足がある場合には、研磨パッド表面粗さとドレッシング条件との間の相関関係に基づいて、ドレッシング条件(ドレッシング荷重)を調整する。ドレッシング条件を調整することにより研磨速度の過不足分を調整して所望の研磨速度で基板(ウエハ)を研磨することができる。
また連続で基板(ウエハ)を研磨処理する際、こうして得られた表面粗さは徐々に変化していき、やがて所望の研磨性能が得られなくなる。このような状態は、研磨用消耗部材が寿命を迎えたことを示すので、上記の方法で求められた表面粗さに基づいて、研磨パッドやドレッサーの寿命を推し量ることにも適用することができる。
更に、上記の方法で求められた表面粗さが、予め設定した好適な表面粗さの範囲内となるよう、研磨パッド表面のドレッシング条件を選択することができる。選択できるドレッシング条件としては、ドレッサーのタイプ(番手や砥粒形状)、ドレッシング時の荷重、ドレッシング時の回転数などが挙げられる。
また、上記の方法で測定された研磨パッドの表面粗さに基づいて、CMPによる研磨性能を予測し、予測した研磨性能に基づいて研磨条件及びドレッシング条件を調整する制御部を研磨装置に設けている。
【0033】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 研磨テーブル
2 研磨パッド
10 トップリング
11 トップリングシャフト
12 トップリングヘッド
20 ドレッシング装置
21 ドレッサーアーム
22 ドレッサー
30 光学系ユニット
31 画像処理ユニット