(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6010941
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】気密ケース入り熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 35/10 20060101AFI20161006BHJP
H01L 35/32 20060101ALI20161006BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
H01L35/10
H01L35/32 Z
H01L35/32 A
H02N11/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-58580(P2012-58580)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-191801(P2013-191801A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110180
【弁理士】
【氏名又は名称】阿相 順一
(72)【発明者】
【氏名】地主 孝広
(72)【発明者】
【氏名】石島 善三
(72)【発明者】
【氏名】神戸 満
【審査官】
安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−349351(JP,A)
【文献】
特開2003−298125(JP,A)
【文献】
特開2011−238693(JP,A)
【文献】
特開平08−097472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/00−34
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体と、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の高温熱源側の面に設置され、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体を電気的に直列に接続する高温側電極部、並びに前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の低温熱源側の面に設置され、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体を電気的に直列に接続する低温側電極部とを含む熱電変換モジュールと、
前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の高温熱源側に位置する高温側ケース半体と、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の低温熱源側に位置する低温側ケース半体との二部材で構成され、前記熱電変換モジュールを減圧下で収納する気密ケースと、
前記熱電変換モジュールの、前記低温側電極部の末端と接続され、前記少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体において生成した電力を前記気密ケースの外部に取り出すためのリード線と、
前記気密ケース内で、前記熱電変換モジュールと隣接し、前記リード線が延在する箇所において、前記低温側電極部及び前記高温側ケース半体の底面と接するように配設されたスペーサ部材とを具え、
前記スペーサ部材は、セラミック部材からなり、かつ、前記リード線を通過させるための、一端面が開放された空隙が形成されており、前記スペーサ部材は、前記空隙に前記リード線を収納して前記低温側電極部と接するように配設されていることを特徴とする、気密ケース入り熱電変換モジュール。
【請求項2】
少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体と、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の高温熱源側の面に設置され、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体を電気的に直列に接続する高温側電極部、並びに前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の低温熱源側の面に設置され、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体を電気的に直列に接続する低温側電極部とを含む熱電変換モジュールと、
前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の高温熱源側に位置する高温側ケース半体と、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の低温熱源側に位置する低温側ケース半体との二部材で構成され、前記熱電変換モジュールを減圧下で収納する気密ケースと、
前記熱電変換モジュールの、前記低温側電極部の末端と接続され、前記少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体において生成した電力を前記気密ケースの外部に取り出すためのリード線と、
前記気密ケース内で、前記熱電変換モジュールと隣接し、前記リード線が延在する箇所において、前記低温側電極部及び前記高温側ケース半体の底面と接するように配設されたスペーサ部材とを具え、
前記スペーサ部材は、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の少なくとも一方を構成する熱電半導体及び追加の金属製スペーサ部材を含み、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の少なくとも一方を構成する熱電半導体に、前記リード線を通過させるための、一端面が開放された空隙が形成されており、前記スペーサ部材は、前記空隙に前記リード線を収納して前記低温側電極部と接するとともに、前記追加の金属製スペーサ部材を介して前記高温側電極部と接するように配設されていることを特徴とする、気密ケース入り熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記追加の金属製スペーサ部材は、前記高温側電極部と同じ材料及び同じ厚さに構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の気密ケース入り熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記低温側ケース半体は可撓性を呈し、前記高温側ケース半体は非可撓性を呈することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の気密ケース入り熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種産業機器及び自動車などの廃熱を熱源とする、気密ケース入り熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱電変換モジュール(以下、「モジュール」と略す場合がある)は、複数のp型熱電半導体及びn型熱電半導体の上下面、すなわち高温熱源側の面及び低温熱源側の面に電極を配設して電気回路を構成し、さらに上記電極の外側両面にセラミックスなど電気絶縁板を備える構造が一般的である。
【0003】
熱電変換モジュールは、上記電極によって電気的に接続され、互いに対をなすp型熱電半導体及びn型熱電半導体の上下面に温度差を与えることによって発電するため、高温側の電気絶縁板は熱膨張し、当該電気絶縁板の周辺部の電極を外側に移動させるとともに、熱電半導体の高温側も外側に移動させる。しかしながら、低温側の電気絶縁板は熱膨張しないので、当該電気絶縁板の周辺部の電極及び熱電半導体の低温側は外側に移動させられることはない。このため、熱電半導体及びその上下の電極にはせん断応力が作用し、脆弱な熱電半導体を破壊したり、熱電半導体及び電極間の接合面で剥離を生じたりする場合がある。
【0004】
このような問題は特に自動車や産業廃熱などを想定した使用温度500℃以上の高温用熱電変換モジュールにおいて重大である。
【0005】
上記問題を克服するためのモジュール型式として、両面スケルトン型モジュールがある。この構造では、高温側及び低温側の電極板及び熱電半導体は共に熱膨張により自由に変位可能なため、モジュールの耐久性向上を図ることができる。しかしながら、このモジュールでは、上述のような電気絶縁板を有さず、電極板のみで熱電半導体を互いに結合する構造であるため、本来的に強度が弱く壊れやすいという欠点がある。
【0006】
このような問題に対処すべく、上述した両面スケルトン型モジュールを減圧下に保持された気密ケース内に収納したような気密ケース入りの熱電変換モジュールが開発されている(特許文献1及び2参照)。このようなモジュールにおいては、加熱面又は冷却面の一方にプレス成形した薄肉の可撓性容器を採用し、他方に剛性のある金属製の容器または板を採用し、両者で構成される容器の内部空間内に上記モジュールを例えば絶縁性の薄膜や薄板を介して収容する。
【0007】
このような構造においては、薄肉の可撓性容器が内部を真空または減圧したことにより外部からの大気圧で加圧されモジュールを押さえつける。一方でモジュールは剛性のある金属製の容器または板に密着することで補強される。したがって、両面スケルトン型モジュールでも上記の各種気密ケースに収納することで、十分な強度を維持することができる。またモジュールを押さえつけることにより、モジュールと剛性のある金属製の容器または板及び薄肉の可撓性容器との接触面における接触熱抵抗が低減され、モジュール本体に大きな温度差を与えることができるメリットがある。
【0008】
しかしながら、気密ケース入りの両面スケルトン型モジュールにおいても以下に示すような問題がある。
【0009】
図1は、両面スケルトン型モジュールの一例を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す両面スケルトン型モジュールを可撓性容器及び非可撓性の金属製容器に減圧下収納した、従来の気密ケース入り熱電変換モジュールの一例を示す断面図である。また、
図3は、従来の気密ケース入り熱電変換モジュールの他の例を示す断面図である。なお、
図2及び
図3は、
図1のI−I線に沿って切った状態の断面を表し、簡略化のため、気密ケース入り熱電変換モジュールの一部について記載している。
【0010】
図1に示すように、両面スケルトン型モジュール10は、互いに対をなすp型熱電半導体11及びn型熱電半導体12が互いに隣接するようにしてマトリックス状に配設されており、隣接するp型熱電半導体11及びn型熱電半導体12の低温側(低温熱源側)が低温側電極13によって電気的に直列に接続されており、隣接するp型熱電半導体11及びn型熱電半導体12の高温側(高温熱源側)が高温側電極14によって電気的に直列に接続されている。また、高温側電極14の末端にはリード線15が接続されている。この高温側電極14とリード線15との接続は一般にろう材等の接合材により為されている。
【0011】
図2に示す気密ケース入り熱電変換モジュール20は、
図1に示す両面スケルトン型モジュール10が、低温側ケース半体を構成する可撓性容器21及び高温側ケース半体を構成する金属製の容器22内に収納されて構成されている。また、金属製の容器22の外方にはリード線15と連続するようにして貫通電極23が設けられている。なお、貫通電極23は、熱電変換モジュール20で生成した電力を外部に取り出すための電極端子として機能する。
【0012】
可撓性容器21及び金属製容器22で構成される気密ケースの内部は減圧されるので、可撓性容器21によって両面スケルトン型モジュール10は金属製容器22に対して押さえつけられ、両面スケルトン型モジュール10と、可撓性容器21及び金属製容器22との接触面における接触熱抵抗が低減される。一方、金属製容器22によって気密ケース入り熱電変換モジュール20の強度を保持することができる。
【0013】
しかしながら、
図2に示す構成の気密ケース入り熱電変換モジュール20では、金属製容器22が加熱されることによってリード線接合部が高温になり、接合材の融点以下でも接合強度が低下し、リード線が脱落する恐れがある。また、接合材が溶融しない場合であっても接合材の強度が低下するため、当該高温型電極14の末端に接続したリード線15が剥離する場合がある。
【0014】
図3に示す気密ケース入り熱電変換モジュール30は、
図1に示す両面スケルトン型モジュール10と異なり、リード線15が低温側電極13の末端に接続された両面スケルトン型モジュール10’が、低温側ケース半体を構成する可撓性容器21及び高温側ケース半体を構成する金属製の容器22内に収納されて構成されている。
【0015】
この場合も、可撓性容器21及び金属製容器22で構成される気密ケースの内部は減圧されるので、可撓性容器21によって両面スケルトン型モジュール10’は金属製容器22に対して押さえつけられ、両面スケルトン型モジュール10’と、可撓性容器21及び金属製容器22との接触面における接触熱抵抗が低減される。一方、金属製容器22によって気密ケース入り熱電変換モジュール30の強度を保持することができる。
【0016】
しかしながら、
図3に示す構成の気密ケース入り熱電変換モジュール30では、可撓性容器21の外方から大きな圧力が負荷されるので、可撓性容器21及び低温側電極13が変形し、特に低温側電極13の、p型熱電半導体11(若しくはn型熱電半導体12)から突出し、リード線15と接続されている箇所に下向きの圧力が加わる傾向がある。したがって、特に最も左方に位置し、リード線15と隣接するp型熱電半導体13(若しくはn型熱電半導体12)においては、熱電半導体が破壊されたり、低温側電極13との接合部が剥離する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第4829552号
【特許文献2】特開2011−238693号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、両面スケルトン型モジュールを減圧下の気密ケースに収納した気密ケース入り熱電変換モジュールにおいて、リード線及び電極間、熱電半導体及び電極間の剥離を抑制し、耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成すべく、本発明は、
少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体と、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の高温熱源側の面に設置され、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体を電気的に直列に接続する高温側電極部、並びに前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の低温熱源側の面に設置され、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体を電気的に直列に接続する低温側電極部とを含む熱電変換モジュールと、
前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の高温熱源側に位置する高温側ケース半体と、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の低温熱源側に位置する低温側ケース半体との二部材で構成され、前記熱電変換モジュールを減圧下で収納する気密ケースと、
前記熱電変換モジュールの、前記低温側電極部の末端と接続され、前記少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体において生成した電力を前記気密ケースの外部に取り出すためのリード線と、
前記気密ケース内で、前記熱電変換モジュールと隣接し、前記リード線が延在する箇所において、前記低温側電極部及び前記高温側ケース半体の底面と接するように配設されたスペーサ部材とを具え、
前記スペーサ部材は、セラミック部材からなり、かつ、前記リード線を通過させるための、一端面が開放された空隙が形成されており、前記スペーサ部材は、前記空隙に前記リード線を収納して前記低温側電極部と接するように配設されていることを特徴とする、気密ケース入り熱電変換モジュールに関する。
また、本発明は、
少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体と、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の高温熱源側の面に設置され、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体を電気的に直列に接続する高温側電極部、並びに前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の低温熱源側の面に設置され、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体を電気的に直列に接続する低温側電極部とを含む熱電変換モジュールと、
前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の高温熱源側に位置する高温側ケース半体と、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の低温熱源側に位置する低温側ケース半体との二部材で構成され、前記熱電変換モジュールを減圧下で収納する気密ケースと、
前記熱電変換モジュールの、前記低温側電極部の末端と接続され、前記少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体において生成した電力を前記気密ケースの外部に取り出すためのリード線と、
前記気密ケース内で、前記熱電変換モジュールと隣接し、前記リード線が延在する箇所において、前記低温側電極部及び前記高温側ケース半体の底面と接するように配設されたスペーサ部材とを具え、
前記スペーサ部材は、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の少なくとも一方を構成する熱電半導体及び追加の金属製スペーサ部材を含み、前記p型熱電半導体及び前記n型熱電半導体の少なくとも一方を構成する熱電半導体に、前記リード線を通過させるための、一端面が開放された空隙が形成されており、前記スペーサ部材は、前記空隙に前記リード線を収納して前記低温側電極部と接するとともに、
前記追加の金属製スペーサ部材を介して前記高温側電極部と接するように配設されていることを特徴とする、気密ケース入り熱電変換モジュールに関する。
【0020】
本発明によれば、少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体と、これら熱電半導体の高温熱源側の面に設置され、熱電半導体を電気的に直列に接続する高温側電極部、及び熱電半導体の低温熱源側の面に設置され、熱電半導体を電気的に直列に接続する低温側電極部とを含む、いわゆる両面スケルトン型熱電変換モジュールを減圧下の気密ケースに収納する気密ケース入り熱電変換モジュールにおいて、気密ケース内で、熱電変換モジュールと隣接し、上記両面スケルトン型熱電変換モジュールに対するリード線が延在する箇所で、低温側電極部及び高温側ケース半体の底面と接するようにスペーサ部材を配設している。
【0021】
したがって、例えば金属製容器等の高温側ケース半体が高温側熱源で過度に加熱されることによって、高温側電極部が変形してしまうような状況においても、少なくとも一対のp型熱電半導体及びn型熱電半導体において生成した電力を気密ケースの外部に取り出すためのリード線を低温側電極部に接続するようにしているので、高温側電極部の変形によって、リード線の、低温側電極部との接合が取れてしまうようなことがない。
【0022】
また、低温側電極部及び前記高温側ケース半体の底面と接するようにスペーサ部材が配設されているので、高温側電極部自体の変形をも抑制することができる。
【0023】
さらに、例えば可撓性容器等の低温側ケース半体に外方から大きな圧力が負荷された場合においても、上記スペーサ部材を低温側電極部及び高温側ケース半体の底面と接するように配設しているので、低温側ケース半体及び低温側電極部が変形し、低温側電極部の、p型熱電半導体又はn型熱電半導体から突出した部分に下向きの圧力が加わって、低温側電極部が上向きに湾曲して変形してしまうことがない。したがって、低温側電極部とp型熱電半導体又はn型熱電半導体との接合部における剥離を防止し、接触熱抵抗の低減を図ることができる。
【0025】
本発明では、スペーサ部材には、リード線を通過させるための、一端面が開放された空隙が形成されており、スペーサ部材は、
この空隙にリード線を
収納して低温側電極部と接するように配設している。この場合も、上記スペーサ部材を、リード線が上記空隙内に収まるようにして配設することにより、スペーサ部材を低温側電極部と十分な接触面積を確保して配設することができる。したがって、上述したスペーサ部材の配設による作用効果をより効果的に奏することができる。
【0026】
また、熱電変換モジュールにおいては、p型熱電半導体及びn型熱電半導体以外の箇所に熱源からの熱が流入すると、当該熱電半導体における熱電変換効率が低下する。しかしながら、本例においては、スペーサ部材中に空隙が形成されており、当該スペーサ部材の熱伝導率が減少する。したがって、スペーサ部材を設けたことによる熱電変換モジュールの熱電変換効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上、本発明によれば、リード線及び電極間、熱電半導体及び電極間の剥離を抑制し、耐久性を向上させた、両面スケルトン型モジュールを減圧下の気密ケースに収納した気密ケース入り熱電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】両面スケルトン型モジュールの一例を示す斜視図である。
【
図2】従来の気密ケース入り熱電変換モジュールの一例を示す断面図である。
【
図3】従来の気密ケース入り熱電変換モジュールの他の例を示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態で用いる両面スケルトン型モジュールであり、
図4(a)は斜視図、
図4(b)は断面図である。
【
図5】第1の実施形態における気密ケース入り熱電変換モジュールの断面図である。
【
図6】
図5に示す熱電変換モジュールに使用されているスペーサ部材の断面図である。
【
図7】第2の実施形態における気密ケース入り熱電変換モジュールに使用するスペーサ部材の断面図である。
【
図8】同じく、第2の実施形態における気密ケース入り熱電変換モジュールに使用するスペーサ部材の断面図である。
【
図9】第3の実施形態における気密ケース入り熱電変換モジュールの断面図である。
【
図10】
図9に示す熱電変換モジュールに使用されているスペーサ部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の気密ケース入り熱電変換モジュールの詳細並びにその他の特徴について、実施の形態に基づいて説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
図4は、本実施形態における両面スケルトン型モジュールであり、
図5は
図4に示す両面スケルトンモジュールを用いた気密ケース入り熱電変換モジュールの断面図である。
図6は、
図4に示す両面スケルトンモジュール及び
図5に示す熱電変換モジュールに使用されているスペーサ部材のII-II線に沿った断面図である。なお、
図4に示す両面スケルトンモジュール10’は、
図1に示す両面スケルトン型モジュール10と異なり、リード線15が低温側電極13の末端に接続される。
【0031】
図5に示す本実施形態の機密ケース入り熱電変換モジュールは、上記の両面スケルトン型モジュール10’を可撓性容器及び非可撓性の金属製容器に減圧下収納した状態を示すものである。また、簡略化のため、気密ケース入り熱電変換モジュールの一部について記載している。
【0032】
なお、
図1〜
図3に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては、同一の符号を用いている。
【0033】
図1に示す両面スケルトン型モジュール10と同様に、両面スケルトン型モジュール10’も、互いに対をなすp型熱電半導体11及びn型熱電半導体12が互いに隣接するようにしてマトリックス状に配設されており、隣接するp型熱電半導体11及びn型熱電半導体12の低温側(低温熱源側)が低温側電極13によって電気的に直列に接続されており、隣接するp型熱電半導体11及びn型熱電半導体12の高温側(高温熱源側)が高温側電極14によって電気的に直列に接続されている。また、低温側電極13の末端にはリード線15が接続されている。
【0034】
p型熱電半導体11及びn型熱電半導体12は熱伝導率が低く、高温側及び低温側で大きな温度差を得、熱電変換(ゼーベック効果)により大きな電位差を生成する材料から構成することが好ましく、例えば、Bi−Te系,Pb−Te系,Si−Ge系,あるいはMg−Si系等の半導体材料から構成する。
【0035】
低温側電極13及び高温側電極14は、耐熱性及び機械的強度に優れるとともに、比較的高い導電性を示すことが要求され、例えば、Mo,Cu,W,Ti,Niおよびこれらの合金あるいはステンレス鋼などから構成することができる。
【0036】
リード線15は、電気的良導体、例えばCu,Ag,Auおよびこれらの合金等から構成することができる。リード線15は、高温側電極14の末端に接合材によって固定されている。
【0037】
図4に示す気密ケース入り熱電変換モジュール40は、両面スケルトン型モジュール10’が、低温側ケース半体を構成する可撓性容器21及び高温側ケース半体を構成する金属製の容器22内に収納されて構成されている。
図4に示すように、この気密ケース入り熱電変換モジュール40は、リード線15が低温側電極13の末端に接合材を用いて接続されている。
【0038】
可撓性容器21及び金属製容器22で構成される気密ケースの内部は減圧されるので、可撓性容器21によって両面スケルトン型モジュール10は金属製容器22に対して押さえつけられ、両面スケルトン型モジュール10’と、可撓性容器21及び金属製容器22との接触面における接触熱抵抗が低減される。一方、金属製容器22によって気密ケース入り熱電変換モジュール40の強度を保持することができる。
【0039】
もし、低温側ケース半体を高温側ケース半体と同様に金属製容器とした場合、これらで構成される気密ケース内に熱電変換モジュール10’を収納すると、低温側ケース半体によって両面スケルトン型モジュール10’は金属製容器22に対して押さえつけられることがないので、両面スケルトン型モジュール10’と、金属製容器21及び金属製容器22との接触面における接触熱抵抗の低減を図ることができない。
【0040】
同様に、高温側ケース半体を、低温側ケース半体と同じ可撓性容器とした場合、気密ケース入り熱電変換モジュール40の強度を十分に保持することができない。
【0041】
また、可撓性容器21は薄い(例えば、0.1mm程度)金属シートから構成する。金属製容器22は、十分な厚さを有し、剛性に富む金属材料から構成する。具体的には、それぞれステンレス鋼等から構成する。
【0042】
本実施形態では、可撓性容器21及び金属製容器22からなる気密ケース内で低温側電極13に接合材で接合されたリード線15が存在する箇所において、低温側電極13及び金属製容器22の底面と接するようにスペーサ部材41を配設している。
【0043】
したがって、リード線15を低温側電極部13に接続するようにしているので、リード線15の、低温側電極部13との接合が剥離することがない。また、低温側電極部13及び金属製容器22の底面と接するようにスペーサ部材41を配設しているので、可撓性容器に低温側電極13が押さえつけられて、これと熱電半導体との接合面に無理な力が作用して、本接合面で当該電極と熱電半導体が剥離することを防げる。なお、リード線を取り付けた末端の電極2個を薄肉の可撓性容器に接触させると、可撓性容器に当該電極が押さえつけられて、当該電極と熱電半導体との接合面に無理な力が作用して、本接合面で当該電極と熱電半導体が剥離する恐れがある。
【0044】
また、
図6に示すように、本実施形態では、スペーサ部材41の上部に、リード線15を貫通させるための
溝部(空隙)41Aを形成している。
【0045】
なお、リード線15の線径は数ミリのオーダであるため、溝部41Aの幅及び高さも、数ミリのオーダであって、リード線15を収納できるような大きさとする。
【0046】
また、本実施形態では、スペーサ部材41に形成した溝部41Aの断面形状を半円弧状としているが、リード線15を収納できればその形状は特に限定されず、加工のし易さの観点から適宜設定することができる。
【0047】
さらに、スペーサ部材41の大きさも上述した作用効果を奏することができれば、その大きさ及び形状は特に限定されるものではない。
【0048】
また、スペーサ部材41はセラミック部材から構成することが好ましい。セラミック部材は高い強度を有するため、スペーサ部材41が上述した作用効果を奏するために適した部材である。また、セラミック部材は、金属部材等に比較して熱伝導率が低い。したがって、スペーサ部材41に対する熱源からの熱の流入を抑制することができる。すなわち、スペーサ部材41をセラミック部材から構成することにより、その低い熱伝導率に起因して、スペーサ部材41への熱の流入を抑制することができるので、スペーサ部材41を設けたことによる両面スケルトン型熱電変換モジュール10’、すなわち気密ケース入り熱電変換モジュール40の熱電変換効率の低下を抑制することができる。
【0049】
上記セラミック部材としては、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)
、チッ化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、ジルコニア(ZrO
2)など汎用のものから構成することができる。なお、これらセラミック材料は、その製造方法等に依存して熱伝導率等が変化するが、p型熱電半導体11及びn型熱電半導体12を構成する熱電半導体の熱伝導率が数W/mK程度であるので、上記セラミック材料も熱電半導体の熱伝導率と同等あるいはそれ以下であることが好ましい。
【0050】
また、本実施形態では、両面スケルトン型熱電変換モジュール10’において、p型熱電半導体11を末端に位置させ、リード線15と接合させているが、n型熱電半導体12を末端に位置させ、リード線15と接合させることもできる。この場合は、スペーサ部材61を配設することによって、低温側電極13とn型熱電半導体12との接合部における剥離を防止し、接触熱抵抗の低減を図ることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
図7及び
図8は、気密ケース入り熱電変換モジュールに使用されるスペーサ部材の断面図である。
【0052】
図7に示すスペーサ部材61は、一端面が開放された断面が矩形状の空隙が形成されており、
図8に示すスペーサ部材71は、一端面が開放された断面が半楕円状の空隙が形成されている。
【0053】
これらのスペーサ部材61及び71を、例えば
図5に示す気密ケース入り熱電変換モジュール40に対して使用する場合、スペーサ部材61及び71の空隙61A及び71A内にリード線15が収納するようにして配設する。これにより、スペーサ部材61及び71は、リード線15を介して低温側電極13と接するように配設することができる。
【0054】
したがって、スペーサ部材81及び91を低温側電極13と十分な接触面積を確保して配設することができるので、可撓性容器21の外方から大きな圧力が負荷され、可撓性容器21及び低温側電極13が変形し、低温側電極13の、p型熱電半導体11から突出した部分に下向きの圧力が加わっても、低温側電極13及び金属製容器22の底面と接触するようにして配設したスペーサ部材61及び71により、上記変形を抑制することができる。したがって、低温側電極13とp型熱電半導体11との接合部における剥離を防止できる。
【0055】
(第3の実施形態)
図9は、本実施形態における気密ケース入り熱電変換モジュールの断面図であり、
図10は、
図9に示す熱電変換モジュールに使用されているスペーサ部材のIII-III線に沿った断面図である。
【0056】
図9に示す本実施形態の気密ケース入り熱電変換モジュール80は、
図5に示す第1の実施形態における気密ケース入り熱電変換モジュール80において、スペーサ部材81が両面スケルトン型モジュール10’を構成するp型熱電半導体11及びn型熱電半導体12の少なくとも一方と同じ熱電半導体を含むとともに、高温側電極部14と同じ材料及び同じ厚さの金属製のスペーサ部材83を介して金属製容器22の底面と接するように配設されている点で相違する。
【0057】
第1の実施形態で説明したように、両面スケルトン型熱電変換モジュール10’を構成するp型熱電半導体11及びn型熱電半導体12以外の箇所に熱源からの熱が流入すると熱電変換モジュールの出力低下に繋がる。
【0058】
しかしながら、本実施形態では、スペーサ部材81を、p型熱電半導体11及びn型熱電半導体12の少なくとも一方を構成する熱電半導体を含むようにしている。上述したように、熱電半導体は、熱伝導率が低いため、上述したセラミック部材を用いた場合と同様に、スペーサ部材81に対する熱源からの熱の流入を抑制することができ、両面スケルトン型熱電変換モジュール10’、すなわち気密ケース入り熱電変換モジュール80の発電電力の低下を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、スペーサ部材81を上記熱電半導体から構成するとともに、高温側電極部14と同じ材料及び同じ厚さの金属製のスペーサ部材83を別途設け、この金属製スペーサ部材83を介して金属製容器22の底面と接するようにしている。したがって、金属製容器22が高温となり、p型熱電半導体11及びn型熱電半導体12、並びに高温側電極部14が金属製容器22からの熱エネルギーを吸収して膨張するような場合であっても、スペーサ部材81及び金属製スペーサ部材83も、p型熱電半導体11及びn型熱電半導体12、並びに高温側電極部14と同様の構成を採っているので、上記熱エネルギーを吸収して同程度に膨張するようになる。
【0060】
なお、本実施形態では、金属製スペーサ部材83を、高温側電極部14と同じ材料及び厚さに構成しているが、同様の材料及び形態のものであれば、必ずしも高温側電極部14と同じ材料及び厚さに構成する必要はない。
【0061】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10,10’ 両面スケルトン型熱電変換モジュール
11 p型熱電半導体
12 n型熱電半導体
13 低温側電極
14 高温側電極
15 リード線
20,80 気密ケース入り熱電変換モジュール
21 可撓性容器
22 金属製容器
23 貫通電極
41,61,71,81 スペーサ部材
41A,81A スペーサ部材の
溝部(空隙)
61A,71A スペーサ部材の空隙
83 金属製スペーサ部材