(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、前記基板の上部に配置され、第2半導体層、活性層および第1半導体層が順に積層された半導体積層体と、前記基板と前記半導体積層体との間に配置された第1電極および第2電極とを備える発光素子であって、
前記半導体積層体には、前記第1半導体層、前記活性層および前記第2半導体層を貫通する孔部が形成され、
前記第1電極は、それぞれ前記第2半導体層および前記活性層を貫通して前記第1半導体層と接続される複数の突出部を有し、
前記孔部は、隣接する2つの突出部を結ぶ線上に該2つの突出部からの距離が等しくなるように設けられていることを特徴とする半導体発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る半導体発光素子について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、本発明を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、以下の説明では、同一の名称および符号については原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略することとする。
【0032】
<第1実施形態>
[半導体発光素子の構成]
本発明の第1実施形態に係る半導体発光素子1の構成について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0033】
半導体発光素子1は、
図1に示すように平面視すると、略矩形状に形成されている。また、半導体発光素子1は、
図2に示すように、上部が断面視で略台形状に形成されるとともに、当該断面台形状の上部の所定位置に半導体積層体19を貫通する孔部22が形成されている。また、半導体発光素子1は、
図2に示すように、所定厚さの平板の上に、略四角錐台が配置された形状を有している。また、半導体発光素子1の略台形状の上部は、
図1および
図2に示すように、当該半導体発光素子1の一端において、後記する第2電極17の外部接続部17cが形成される領域が切り欠かれている。
【0034】
半導体発光素子1は、ここでは
図2に示すように、基板11と、裏面接着層12と、基板側接着層13と、第1電極側接着層14と、第1電極15と、絶縁膜16と、第2電極17と、第1保護膜18と、半導体積層体19と、第2保護膜21とが積層された構造を有している。なお、
図2は、
図1のA−A’断面に相当するが、ここでは図示の便宜上、
図1において、A−A’断面上に3個設けられている孔部22を2個だけ図示し、同様に、A−A’断面上に3個ずつ設けられている第1電極15の突出部151および絶縁膜16の開口突出部161を1個ずつだけ図示している。
【0035】
(基板11)
基板11は、半導体積層体19が電極などの部材を介して貼り合わせられ、半導体積層体19などを支持するためのものである。基板11は、
図1および
図2に示すように、略矩形平板状に形成されている。また、基板11は、
図2に示すように、下面に裏面接着層12が形成され、上面に基板側接着層13が形成されている。この基板11の面積は特に限定されず、当該基板11上に積層される部材の大きさに応じて適宜選択される。また、基板11の厚さは、放熱性の観点から50μm〜500μmとすることが好ましい。
【0036】
基板11の具体例としては、Si基板の他、GaAsなどからなる半導体基板や、Cu,Ge,Niなどの金属材料、あるいは、Cu−Wなどの複合材料からなる導電性基板を挙げることができる。また、基板11としては、上記の他にもCu−Mo,AlSiC,AlSi,AlN,SiC,Cu−ダイヤなどの金属とセラミックの複合体なども利用することができる。なお、このような複合体は、例えばCu−W,Cu−Moの一般式をCu
xW
100−x(0≦x≦30),Cu
xMo
100−x(0≦x≦50)のようにそれぞれ示すことができる。
【0037】
ここで、基板11の一例としてSi基板を挙げたのは、安価でチップ化しやすいという利点があるためである。一方、前記したように基板11に導電性基板を用いると、基板11側からの電力供給が可能となるほか、放熱性に優れた素子とすることができるという利点がある。
【0038】
また、基板11は、例えばSi,Cu(Cu−W)などの材料で構成し、当該基板11と半導体積層体19との間に電極を設けるか、あるいは、半導体積層体19との間に光反射構造を設けることが好ましい。これにより、半導体発光素子1は、放熱性や発光特性を向上させることができる。
【0039】
(裏面接着層12)
裏面接着層12は、基板11と電気的に接続されており、かつ半導体発光素子1を例えば発光装置の実装基板(図示省略)に実装するための層である。裏面接着層12は、
図2に示すように、基板11の下面全域、すなわち基板11の基板側接着層13が形成されている面の反対側に形成されている。裏面接着層12の厚さは特に限定されず、所望の接合性および導電性に応じて適宜調整することができる。また、裏面接着層12の具体例としては、TiSi
2,Ti,Ni,Pt,Ru,Au,Sn,Alなどの金属を含む層やその積層構造で構成することができる。なお、裏面接着層12は、後記する基板側接着層13、第1電極側接着層14と同様の材料を使用することができるが、例えば導電性樹脂材料を使用してもよい。
【0040】
(基板側接着層13)
基板側接着層13は、基板11を第1電極側接着層14と接合し、かつ第1電極接着層14と基板11とを電気的に接続するための層である。基板側接着層13は、
図2に示すように、基板11の上面全域、すなわち基板11の裏面接着層12が形成されている面の反対側に形成され、基板と電気的に接続されている。裏面接着層12の厚さは特に限定されず、所望の接合性および導電性に応じて適宜調整することができる。また、基板側接着層13の具体例としては、Al,Al合金,TiSi,Si,Ti,Ni,Pt,Au,Sn,Pd,Rh,Ru,Inなどの金属を含む層やその積層構造で構成することができる。
【0041】
ここで、基板側接着層13は、密着層、バリア層、接合層を有することが好ましい。これにより、基板側接着層13は、接合のため機能と、第1電極15のような電流供給のための機能とを兼ねることができる。また、基板側接着層13を前記した金属の積層構造とする場合、第1電極側接着層14とAu−Au接合するために、最上面をAuで構成することが好ましく、例えば基板11側から順にTiSi
2/Pt/AuSn,TiSi
2/Pt/Au,Ti/Pt/Au,Ti/Ru/Auなどのように積層することができる。また、基板側接着層13と第1電極側接着層14の最表面をAuとし、接合面をAu−Au接合することで、熱に対する耐性を向上させることができるため、半導体発光素子1の信頼性を高めることができる。
【0042】
(第1電極側接着層14)
第1電極側接着層14は、第1電極15を基板側接着層13と接合し、かつ基板側接着層13と半導体積層体19とを電気的に接続するための層である。第1電極側接着層14は、
図2に示すように、第1電極15の下面全域に形成されている。第1電極側接着層14の厚さは特に限定されず、所望の接合性および導電性に応じて適宜調整することができる。また、第1電極側接着層14の具体例としては、前記した基板側接着層13と同様に、Al,Al合金,TiSi
2,Si,Ni,Ti,Pt,Au,Sn,Pd,Rh,Ru,Inなどの金属を含む層やその積層構造で構成することができる。
【0043】
ここで、第1電極側接着層14は、前記した基板側接着層13と同様に、密着層、バリア層、接合層を有することが好ましい。これにより、第1電極側接着層14は、接合のため機能と、第1電極15のような電流供給のための機能とを兼ねることができる。また、第1電極側接着層14を前記した金属の積層構造とする場合、基板側接着層13とAu−Au接合するために、最下面はAuで構成することが好ましく、例えば第1電極15側から順にTiSi
2/Pt/AuSn,TiSi
2/Pt/Au,Ti/Pt/Au,Ti/Ru/Auなどのように積層することができる。また、第1電極側接着層14と基板側接着層13の最表面をAuとし、接合面をAu−Au接合することで、熱に対する耐性を向上させることができるため、半導体発光素子1の信頼性を高めることができる。
【0044】
(第1電極15)
第1電極15は、第1半導体層19aに対して電流を供給するためのものである。第1電極15は、第1半導体層19aがn型半導体層である本実施形態においてはn側電極として機能する。第1電極15は、
図2に示すように、第1電極側接着層14の上面全域に形成され、後記する絶縁膜16を挟んで、第2電極17と対向するように配置されている。また、第1電極15は、後記する半導体積層体19よりも広い範囲に形成されている。すなわち、第1電極15は、半導体積層体19の面積よりも広い面積で形成されており、当該半導体積層体19の下面を超えた縁の部分に段差が形成されている。なお、前記した「半導体積層体19の面積」とは、ここでは
図1に示すように、半導体積層体19の下面の面積のことを意味している。
【0045】
第1電極15は、
図2に示すように、半導体積層体19の方向(ここでは上方向)に突出する複数の突出部151を備えており、当該突出部151を介して、第1半導体層19aと電気的に接続されている。この突出部151は、
図2に示すように断面視すると、それぞれ略台形状に形成されている。また、突出部151は、
図1および
図2に示すように、略円錐台形状に形成されており、略円錐形状の先端が切断された形状を有している。また、突出部151は、
図1に示すように平面視すると、真円状に形成されている。そして、突出部151は、ここでは
図1に示すように、後記する半導体積層体19の下部に25個形成されており、半導体積層体19と25箇所で接続されている。
【0046】
突出部151は、
図1に示すように、三角格子(千鳥格子)状に配列されている。これにより、半導体発光素子1は、複数の突出部151が小さい面積で分散配置されているため、広い発光面積を確保することができる。従って、半導体発光素子1は、電流密度を均一にしてVf(順方向電圧)を低減させることができ、均一発光が可能となる。
【0047】
突出部151は、
図2に示すように、後記する絶縁膜16、第1保護膜18、第2半導体層19bおよび活性層19cをそれぞれ貫通するように突出して形成され、先端が第1半導体層19aと接している。また、突出部151は、より具体的には
図2に示すように、第1保護膜18、第2半導体層19bおよび活性層19cを貫通して形成された貫通孔20内に挿通された絶縁膜16の開口突出部161内に挿入され、貫通孔20および開口突出部161を介して第1半導体層19aと接続されている。
【0048】
なお、突出部151は、先端の一部が開口突出部161から露出し、その露出した部分が第1半導体層19aと接触している。すなわち、突出部151は、
図2のB部に示すように、先端の上面と先端の外周面の2箇所で第1半導体層19aと接触している。これにより、半導体発光素子1は、例えば突出部151の先端の上面のみで第1半導体層19aと接触する場合と比較して、突出部151と第1半導体層19aとの接触面積が大きくなるため、第1半導体層19aに電流が広がりやすくなり、順方向電圧Vfが低減する。
【0049】
第1電極15の厚さは特に限定されず、所望の特性に応じて適宜調整することができる。なお、第1電極15の厚さとは、ここでは突出部151の高さと、突出部151以外の部分の膜厚のことを意味している。
【0050】
第1電極15の具体例としては、例えばNi,Pt,Pd,Rh,Ru,Os,Ir,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Co,Fe,Mn,Mo,Cr,W,La,Cu,Ag,Y,Al,Si,Auなどの金属またはこれらの酸化物あるいはこれらの窒化物により形成することができ、その他にも、ITO,ZnO,In
2O
3などの透明導電性酸化物からなる群から選択された少なくとも一種を含む金属、合金の単層膜または積層膜により形成することができる。また、第1電極15は、
図2に示すように、先端の位置では第1半導体層19aと接し、また貫通孔20の位置では絶縁膜16を介して半導体積層体19と隣接しているため、第1半導体層19aとのオーミック性接触を考慮するとともに、活性層19cから出た光を反射する材料を用いて形成することが好ましく、具体的にはAlおよびAl合金を用いて形成することが好ましい。
【0051】
(絶縁膜16)
絶縁膜16は、第1電極15と、第2電極17と、第2半導体層19bおよび活性層19cとを絶縁するためのものである。絶縁膜16は、
図2に示すように、第1電極15の突出部151の先端の上面と先端の外周面とを除いた、第1電極15の表面を全て覆うように形成されている。また、絶縁膜16は、第1電極15と、後記する第2電極17の配線部17aとの間に形成されている。
【0052】
絶縁膜16は、
図2に示すように、半導体積層体19の方向(ここでは上方向)に開口および突出する複数の開口突出部161を備えており、当該開口突出部161によって第1電極15の突出部151の外周面を覆っている。この開口突出部161は、
図2に示すように断面視すると、筒状に形成されている。また、開口突出部161は、より具体的には
図1および
図2に示すように、中空の略円錐台形状に形成されており、中空の略円錐形状の先端が切断された形状を有している。また、開口突出部161は、
図1に示すように平面視すると、真円状に形成されている。そして、開口突出部161は、後記する半導体積層体19の下部に25個形成されている。
【0053】
開口突出部161は、
図2に示すように、後記する第1保護膜18、第2半導体層19bおよび活性層19cを貫通するように突出して形成され、開口の先端が第1半導体層19aと接している。開口突出部161は、より具体的には、第1保護膜18、第2半導体層19bおよび活性層19cを貫通して形成された貫通孔20内に挿通されている。半導体発光素子1は、このような絶縁膜16を備えることで、第1電極15と第2電極17とが絶縁され、電極の立体的な構造が可能となっている。
【0054】
絶縁膜16の厚さは特に限定されず、所望の特性に応じて適宜調整することができる。また、絶縁膜16の具体例としては、例えばSi,Ti,V,Zr,Nb,Hf,Ta,Alからなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む酸化膜、窒化膜、酸化窒化膜などで構成することができ、特に、SiO
2,ZrO
2,SiN,SiON,BN,SiC,SiOC,Al
2O
3,AlN,AlGaNなどで構成することができる。また、絶縁膜16は、単一の材料の単層膜または積層膜で構成してもよく、異なる材料の積層膜で構成してもよい。さらに、絶縁膜16は、分布ブラッグ反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)膜で構成してもよい。
【0055】
(第2電極17)
第2電極17は、第2半導体層19bに対して電流を供給するためのものである。第2電極17は、第2半導体層19bがp型半導体層である本実施形態においてはp電極として機能する。第2電極17は、
図2に示すように、第2半導体層19bの下部に膜状に形成され、絶縁膜16を挟んで第1電極15と対向するように配置されている。第2電極17は、より具体的には、第2半導体層19bと接続される内部接続部17bと、内部接続部17bを介して第2半導体層19bに電気的に接続される配線部17aと、配線部17aと接続される外部接続部17cとから構成されている。
【0056】
配線部17aは、外部接続部17cからの電流を、内部接続部17bを介して後記する半導体積層体19の第2半導体層19bに供給するためのものである。配線部17aは、
図2に示すように、絶縁膜16の開口突出部161が設けられた領域を除く、第2半導体層19bの下面のほぼ全域に対応する領域に形成されている。また、配線部17aは、第2半導体層19bの下面全域に対応する領域から、半導体発光素子1の一端(ここでは右側)に露出するように形成されており、このように露出した配線部17a上には、後記する外部接続部17cが形成されている。
【0057】
配線部17aは、ここでは図示を省略したが、具体的には半導体積層体19の底面積とほぼ同様の面積からなる板状の部材で構成されており、
図2に示すように、絶縁膜16の開口突出部161が挿通される複数の開口部(符号省略)が当該開口突出部161と同心に形成されている。また、配線部17aは、後記する内部接続部17bと同様に、活性層19cからの光に対して反射率の高い材料で構成されることが好ましく、かつ、導電性の高い材料で構成されることが好ましい。
【0058】
内部接続部17bは、半導体積層体19とのオーミック接触性に優れ、活性層19cからの光を効率よく反射させるためのものである。内部接続部17bは、
図2に示すように、第1電極15の突出部151が設けられた領域と、第1保護膜18が設けられた領域とを除く、第2半導体層19bの下面のほぼ全域に形成されている。また、内部接続部17bの下面には、
図2に示すように、配線部17aが形成されている。
【0059】
第2半導体層19bの下面の面積に対して、70%以上の面積で構成されることが好ましく、さらに好ましくは80%以上の面積で構成される、さらにより好ましくは90%以上の面積で構成される。これにより、接触抵抗を低下させ、半導体発光素子1の駆動電圧を低減させることができる。特に、内部接続部17bを第2半導体層19bの面積に対して70%以上の面積で構成することで、活性層19cからの光を第2半導体層19bのほぼ全域で反射させることが可能となるため、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0060】
内部接続部17bは、ここでは図示を省略したが、具体的には半導体積層体19の底面積とほぼ同様の面積からなる板状の部材で構成されており、
図2に示すように、後記する第1保護膜18を介して、絶縁膜16の開口突出部161が挿通される複数の開口部(符号省略)が当該開口突出部161と同心に形成されている。
【0061】
内部接続部17bは、半導体積層体19からの光を反射させる材料として、Al,RhおよびAgから選択された少なくとも一種を含む金属、合金の単層膜または積層膜により形成することが好ましく、その中でもAgまたはAg合金を含む金属膜により形成することがより好ましい。例えば、内部接続部17bを積層膜により形成する場合には、半導体積層体19側がAgとなるように、基板11側から順に積層されたPt/Ti/Ni/Agなどが挙げられる。なお、内部接続部17bは、マイグレーション防止のために、カバー電極となる別の金属含有層で側面と下側(基板11側)が完全に被覆された構成であってもよい。なお、半導体発光素子1は、
図2に示すように、内部接続部17bの下部に配線部17aが配置され、内部接続部17bの側面が第1保護膜18で覆われているため、これらがマイグレーション防止としての役割も担っている。
【0062】
外部接続部17cは、第2電極17において、外部電源と接続するためのパッド電極として機能するものである。外部接続部17cは、
図1に示すように、基板11の上部における第1保護膜18に露出するように設けられている。外部接続部17cは、より具体的には、
図2に示すように、配線部17a上に設けられ、第1保護膜18を貫通して形成されている。
【0063】
外部接続部17cは、半導体発光素子1の角部以外の領域に設けることが好ましく、ここでは
図1および
図2に示すように、半導体発光素子1の一端に配置されている。なお、外部接続部17cは、例えば半導体積層体19を挟むように、半導体発光素子1の一端のみならず他端にも配置することが好ましい。すなわち、外部接続部17cは、基板11の上部における第1保護膜18上に複数設けられ、半導体発光素子1の一端および他端に対向して配置されることが好ましい。これにより、半導体発光素子1は、基板11の一端および他端に外部接続部17cがそれぞれ設けられることで、基板11の一端および他端の位置から半導体積層体に電流が均等に注入される。
【0064】
また、外部接続部17cは、
図1に示すように、平面視で当該外部接続部17cの周囲に、孔部20が配置されている。これにより、半導体発光素子1は、電流が最も集中しやすい外部接続17c部の周囲に孔部が配置されることによって、発光強度の高い領域からの光が取り出されるため、光出力が向上する。
【0065】
また、外部接続部17cは、
図1に示すように、基板11の上部における少なくとも一端で露出している。これにより、半導体発光素子1は、外部接続部17cに接続される図示しない導電性ワイヤができるだけ素子上方を遮らないようにすることができるため、導電性ワイヤによる光吸収を軽減することができ、光出力が向上する。
【0066】
外部接続部17cは、
図1に示すように、半円状に形成されているとともに、
図2に示すように、第1保護膜18上に所定の高さで形成されている。また、外部接続部17cは、ここでは図示を省略したが、その上面に導電性ワイヤなどで外部電源と接続するためのバンプが形成される。
【0067】
なお、外部接続部17cは、外部接続用の導電性ワイヤが発光を遮ることを考慮すると、
図1に示すように、半導体発光素子1の周縁領域に配置するほうが好ましいが、例えば半導体発光素子1の中央領域に設置しても構わない。また、外部接続部17cの大きさ、形状、個数および位置は特に限定されず、半導体発光素子1の大きさや半導体積層体19の大きさおよび形状に応じて適宜調整することができる。
【0068】
第2電極17の厚さは特に限定されず、所望の特性に応じて適宜調整することができる。また、第2電極17の配線部17aおよび外部接続部17cの具体例としては、例えばNi,Pt,Pd,Rh,Ru,Os,Ir,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Co,Fe,Mn,Mo,Cr,W,La,Cu,Ag,Y,Al,Si,Auなどの金属またはこれらの酸化物あるいはこれらの窒化物により形成することができ、その他にも、ITO,ZnO,In
2O
3などの透明導電性酸化物からなる群から選択された少なくとも一種を含む金属、合金の単層膜または積層膜により形成することができる。
【0069】
(第1保護膜(光反射部材)18)
第1保護膜18は、
図2に示すように、内部接続部17bと同層に配置され、当該内部接続部17bと外部接続部17cとの間、および、内部接続部17bと絶縁膜16の開口突出部161との間をそれぞれ満たすように形成されている。また、第1保護膜18は、
図2に示すように、半導体積層体19の外側に露出する絶縁膜16の上面を覆うように形成されている。また、第1保護膜18は、
図2に示すように、配線部17aおよび第2保護膜21の間と、配線部17aおよび第2半導体層19bの間と、絶縁膜16および第2半導体層19bの間と、絶縁膜16および第2保護膜21の間とに設けられている。この第1保護膜18は、ここでは活性層19cから放出された光の一部を反射するための光反射部材として機能させることができ、例えば樹脂にTiO
2などの光拡散材を含有させた白樹脂や、分布ブラッグ反射鏡膜などから構成することができる。また、第1保護膜18に、光反射部材としてSiO
2などの透光性絶縁膜を用いることもでき、透光性絶縁膜が形成された前記各部材との界面で光を反射することができる。また、第1保護膜18の厚さは特に限定されず、所望の特性に応じて適宜調整することができる。
【0070】
このような第1保護膜18は、
図2に示すように、後記する孔部22の底部に設けられていることが好ましい。これにより、半導体発光素子1は、例えば活性層19cから放出された光が孔部22の内周面から出射された後に孔部22の底部に向かって進行した場合であっても、第1保護膜18によって反射されるため、光の取り出し効率が向上する。
【0071】
(半導体積層体19)
半導体積層体19は、半導体発光素子1における発光部を構成するものである。半導体積層体19は、
図2に示すように、基板11の上部に配置されている。また、半導体積層体19と基板11との間には、基板側接着層13、第1電極側接着層14、第1電極15、絶縁膜16、第2電極17および第1保護膜18が配置されている。そして、半導体積層体19は、具体的には
図2に示すように、第2電極17の内部接続部17b上および第1保護膜18上に形成されているとともに、第1電極15の突出部151および絶縁膜16の開口突出部161によって、複数個所が貫かれた状態となっている。なお、前記した「貫かれた状態」とは、ここでは
図2に示すように、突出部151および開口突出部161によって、半導体積層体19の第2半導体層19bおよび活性層19cが完全に貫通されており、かつ、半導体積層体19の第1半導体層19aの一部がえぐられた状態のことを意味している。
【0072】
半導体積層体19は、第2半導体層19b、活性層19cおよび第1半導体層19aが下からこの順に積層された構造を有している。この第1半導体層19a、第2半導体層19bおよび活性層19cの具体的構成は特に限定されず、InAlGaP系、InP系、AlGaAs系、これらの混晶、GaN系などの窒化物半導体のいずれかであってもよい。なお、窒化物半導体としては、GaN,AlNもしくはInN,またはこれらの混晶であるIII−V族窒化物半導体(In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X,0≦Y,X+Y≦1))が挙げられる。さらに、III族元素は、一部または全部にBを用いてもよく、V族元素は、Nの一部をP,As,Sbで置換した混晶であってもよい。これらの半導体層は、通常、n型およびp型のいずれかの不純物がドーピングされている。
【0073】
ここで、第1半導体層19aとは、n型またはp型半導体層を指し、第2半導体層19bとは、第1半導体層19aとは異なる導電型、すなわちp型またはn型半導体層を指している。半導体発光素子1は、ここでは好ましい形態として、第1半導体層19aがn型半導体層で構成され、第2半導体層19bがp型半導体層で構成されており、第2半導体層19bよりも第1半導体層19aの抵抗を低くすることで、第1電極15に接続された第1半導体層19a中を電流が拡散しやすくなり、半導体積層体19を流れる電流の集中をより緩和することができる。
【0074】
半導体積層体19を構成する第1半導体層19aおよび第2半導体層19bは、それぞれ単層構造でもよいが、MIS接合、PIN接合又はPN接合を有したホモ構造、ヘテロ構造またはダブルへテロ構造などの積層構造であってもよい。また、半導体発光素子1は、
図2に示すように、第1半導体層19a(n型半導体層)と第2半導体層19b(p型半導体層)との間に活性層19cを設け、当該活性層19cが発光部となる素子でもよく、あるいは、第1半導体層19a(n型半導体層)と第2半導体層19b(p型半導体層)とが直接接して発光部となる素子でもよい。なお、半導体積層体19を構成する第1半導体層19a、第2半導体層19bおよび活性層19cのそれぞれの厚さは特に限定されず、所望の特性に応じて適宜調整することができる。
【0075】
半導体積層体19には、
図2に示すように、第1半導体層19a、活性層19cおよび第2半導体層19bを貫通する孔部22が複数形成されている。この孔部22を形成することで、
図2に示すように、当該孔部22内に活性層19cが露出した状態となっている。また、孔部22の底部は、
図2に示すように具体的には第1保護膜18の上面によって構成されている。そして、孔部22は、
図1に示すように平面視すると、開口断面形状が真円状に形成されており、半導体積層体19に23個形成されている。なお、孔部22の個数および大きさ(面積)は、当該孔部22を形成することによる光出力の増加および駆動電圧の増加のバランスを考慮して適宜調整する。
【0076】
なお、孔部22は、
図1に示すように、断面が円形状に形成される以外にも、例えば多角形状に形成されても構わない。すなわち、半導体発光素子1は、所望の特性に応じて、半導体積層体19に様々な断面形状の孔部22を設けることができる。なお、前記した「円形状または多角形状」は、完全な円形状または多角形状のみならず、当該円形または多角形が崩れない範囲内で凹凸が形成された円形状または多角形状も含んでいる。
【0077】
ここで、孔部22は、
図1に示すように、2つの突出部151を結ぶ線上に設けられるとともに、2つの突出部151までの距離が等しい構成とすることが好ましい。また、孔部22は、
図1に示すように、基板11の上部において、平面視で前記した第1電極15の突出部151と行列方向に交互に設けられていることが好ましい。すなわち、孔部22は、
図1に示すように、それぞれ突出部151の間に設けられている。これにより、半導体発光素子1は、電流が集中しやすい第1電極15の突出部151近傍と比較して、電流密度および発光強度が低くなる傾向がある突出部151間の位置に孔部22を配置することで、光取り出し効率をより一層向上させ、発光分布を均一にすることができる。なお、前記した「行列方向」とは、例えば
図1に示すように、半導体発光素子1の平面視の形状を矩形状とした場合において、当該半導体発光素子1の辺に沿った方向のことを意味している。
【0078】
また、半導体積層体19の側面および孔部22の内周面は、
図2に示すように、テーパ状に傾斜して形成されることが好ましい。すなわち、半導体積層体19の側面および孔部22の内周面には、
図2に示すように順テーパ状の傾斜が設けられている。これにより、半導体発光素子1は、活性層19cから放出された光が半導体積層体19のテーパ状の側面や孔部22の内周面から出射されやすくなり、光の取り出し効率が向上する。
【0079】
また、半導体積層体19の上面、すなわち第1半導体層19aの上面は、
図2に示すように、粗面化されて凹凸部が形成されていることが好ましい。これにより、半導体発光素子1は、活性層19cから放出された光が半導体積層体19の凹凸状の上面で拡散されて出射されるため、光の取り出し効率が向上する。
【0080】
半導体積層体19には、
図1および
図2に示すように、複数の貫通孔20が形成されている。この貫通孔20は、第2半導体層19b、活性層19cおよび第1半導体層19aが部分的に除去されて形成されたものであり、第2半導体層19bおよび活性層19cが円形状に貫通して形成され、内部に絶縁膜16の開口突出部161および第1電極15の突出部151が挿通されている。
【0081】
貫通孔20は、
図1および
図2に示すように、開口突出部161の外形に対応して、それぞれ略円錐台形状に形成されている。また、貫通孔20は、
図1に示すように平面視すると、開口断面形状が真円状に形成されている。そして、貫通孔20は、半導体積層体19に25個形成されている。なお、このように貫通孔20を真円状に形成することで、半導体積層体19における発光に寄与しない領域を最小化することができる。
【0082】
(第2保護膜21)
保護膜21は、半導体積層体19を埃、塵の付着などによる電流のショートや物理的ダメージから保護するための層である。第2保護膜21は、
図2に示すように、半導体積層体19の側面および上面の縁を覆うように形成されている。なお、第2保護膜21は、半導体積層体19の上面を全て覆うように形成しても構わない。
【0083】
第2保護膜21の厚さは特に限定されず、所望の特性に応じて適宜調整することができる。また、第2保護膜21の具体例としては、絶縁膜16および第1保護膜18と同様に、例えばSi,Ti,V,Zr,Nb,Hf,Ta,Alからなる群から選択された少なくとも一種の元素を含む酸化膜、窒化膜、酸化窒化膜などで構成することができ、特に、SiO
2,ZrO
2,SiN,SiON,BN,SiC,SiOC,Al
2O
3,AlN,AlGaNなどで構成することができる。また、第2保護膜21は、単一の材料の単層膜または積層膜で構成してもよく、異なる材料の積層膜で構成してもよい。
【0084】
以上のような構成を備える半導体発光素子1は、半導体積層体19を貫通する孔部22を形成することで、当該孔部22の内周面に活性層19cが露出するため、孔部22を通じて光が取り出される。また、半導体発光素子1は、例えば半導体積層体19を複数の領域に分割するのではなく、孔部22を形成することで、半導体積層体19における発光に寄与しない領域の発生を最小限に止めることができるため、発光面積が最大となる。
【0085】
従って、半導体発光素子1によれば、半導体積層体19に孔部22を形成して発光面積を最大化することで、発光強度が向上するとともに駆動電圧が低減されるため、発光効率を高めることができる。
【0086】
[半導体発光素子の製造方法]
以下、本発明の第1実施形態に係る半導体発光素子1の製造方法について、
図3〜
図5を参照(構成については
図1および
図2参照)しながら説明する。なお、以下で参照する
図3〜
図5は、前記した
図2と同様に、
図1のA−A’断面に相当する断面図であり、孔部22を2個だけ、貫通孔20、第1電極15の突出部151および絶縁膜16の開口突出部161をそれぞれ1個だけ図示し、その他を省略している。
【0087】
半導体発光素子1の製造方法は、まず
図3(a)に示すように、サファイア基板Sb上に第1半導体層19a、活性層19cおよび第2半導体層19bからなる半導体積層体19を結晶成長させ、第2半導体層19b上の所定領域に、例えばスパッタリングを利用して第2電極17の内部接続部17bを形成する。次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図3(b)に示すように、第2半導体層19b上における内部接続部17b間に、例えばスパッタリングを利用して第1保護膜18を形成する。次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図3(c)に示すように、内部接続部17b上および第1保護膜18上の所定領域に、例えばスパッタリングを利用して配線部17aを形成する。
【0088】
次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図3(d)に示すように、例えばドライエッチングによって第1保護膜18、第2半導体層19b、活性層19cおよび第1半導体層19aを部分的に除去して貫通孔20を形成する。この貫通孔20は、前記したように、第1電極15の突出部151および絶縁膜16の開口突出部161を挿通するためのものである。次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図3(e)に示すように、配線部17a上、第1保護膜18上および貫通孔20内に、例えばスパッタリングを利用して絶縁膜16を形成する。次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図3(f)に示すように、例えばドライエッチングによって貫通孔20の底部に形成された絶縁膜16を所定深さまで除去して第1半導体層19aを露出させる。
【0089】
次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図4(a)に示すように、絶縁膜16上および貫通孔20内に、例えばスパッタリングを利用して第1電極15を厚めに形成する。次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図4(b)に示すように研磨、例えばCMP( Chemical Mechanical Polishing)によって第1電極15を平坦化する。次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図4(c)に示すように、平坦化した第1電極15上に、例えばスパッタリングを利用して第1電極側接着層14を形成する。
【0090】
次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図4(d)に示すように、基板側接着層13が形成された基板11を用意し、
図4(e)に示すように、基板11の基板側接着層13と第1電極側接着層14とを貼り合わせる。次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図4(f)に示すように、レーザーリフトオフ法によって、サファイア基板Sb側からレーザー光を照射してサファイア基板Sbと半導体積層体19(具体的には第1半導体層19a)との界面を分解し、サファイア基板Sbを剥離する。
【0091】
次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図5(a)に示すように、半導体積層体19の所定領域を第1保護膜18が露出するまで、例えばドライエッチングによってエッチングし、内周面が順テーパ状に傾斜した複数の孔部22を形成する。また、ここでは
図5(a)に示すように、半導体積層体19の周縁領域についても第1保護膜18が露出するまでエッチングを行い、半導体積層体19の側面を順テーパ状に形成する。
【0092】
次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図5(b)に示すように、半導体積層体19の上面を、例えばウェットエッチングによってエッチングして粗面化し、凹凸部を形成する。次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図5(c)に示すように、半導体積層体19から露出した第1保護膜18を、例えばウェットエッチングによってエッチングして配線部17aを露出させる。次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図5(d)に示すように、露出した配線部17a上に外部接続部17cを形成する。
【0093】
次に、半導体発光素子1の製造方法は、
図5(e)に示すように、半導体積層体19の側面に、例えばスパッタリングを利用して第2保護膜21を形成する。そして、半導体発光素子1の製造方法は、
図5(f)に示すように、最後に基板11の下面に、例えばスパッタリングを利用して裏面接着層12を形成する。以上の工程により、
図1に示すような半導体発光素子1を製造することができる。
【0094】
<第2実施形態>
[半導体発光素子の構成]
本発明の第2実施形態に係る半導体発光素子1Aの構成について、
図6および
図7を参照しながら説明する。ここで、半導体発光素子1Aは、
図6および
図7に示すように、孔部22A、第1電極15Aの突出部151Aおよび絶縁膜16Aの開口突出部161Aの構成以外は、前記した第1実施形態に係る半導体発光素子1と同様の構成を備えている。従って、以下では、前記した半導体発光素子1と重複する構成について説明を省略する。なお、
図7は、
図6のC−C’断面に相当するが、ここでは図示の便宜上、
図6において、C−C’断面上に4個設けられている貫通孔20A、孔部22A、第1電極15Aの突出部151Aおよび絶縁膜16Aの開口突出部161Aを1個ずつだけ図示している。
【0095】
半導体発光素子1Aは、
図6および
図7に示すように、孔部22Aおよび第1電極15Aの突出部151Aが、基板11の上部において、平面視で同じ位置に設けられていることを特徴としている。すなわち、孔部22Aおよび第1電極15Aの突出部151Aは、基板11の厚み方向において同じ位置に設けられている。第1電極15Aの突出部151Aは、
図7に示すように断面視すると、それぞれ略円錐状に形成されており、中心に凹部152Aが形成されている。また、突出部151Aは、
図7に示すように、凹部152Aの周囲が円筒状に突出しており、当該円筒の先端部分が孔部22Aの周りの第1半導体層19aと接触している。
【0096】
また、突出部151Aは、
図6に示すように平面視すると、真円状に形成され、半導体積層体19の下部に25個形成されている。これにより、第1電極15Aと半導体積層体19とは、25箇所で接続されている。そして、突出部151Aは、
図6に示すように、四角格子(正方格子)状に配置されている。
【0097】
一方、孔部22Aは、
図6に示すように平面視すると、開口断面形状が真円状に形成され、半導体積層体19に25個形成されている。また、孔部22Aは、
図6に示すように、突出部151Aと同様に四角格子状に配置されており、当該突出部151Aと同じ位置に同じ個数だけ形成されている。そして、孔部22Aと突出部151Aとは、
図7に示すように、孔部22Aの中心と前記した突出部151Aの凹部152Aの中心とが一致するように配置されており、凹部152A内に孔部22Aの底部が位置している。なお、絶縁膜16Aの開口突出部161Aは、
図7に示すように、突出部151Aの側面と凹部152A内とに形成されている。
【0098】
以上のような構成を備える半導体発光素子1Aは、電流の集中しやすい第1電極15A上に孔部22Aが形成されることで電流拡散が均一化するとともに、発光強度の比較的高い第1電極15A周辺の領域から積極的に光が取り出されるため、光出力が向上する。また、半導体発光素子1Aは、第1電極15A上に孔部22Aを形成することで、例えば半導体積層体を溝などによって分割する場合と比較して、必要以上に活性層を取り除く必要がなくなるため、孔部22Aの形成に伴う光出力の低下も軽減される。
【0099】
[半導体発光素子の製造方法]
以下、本発明の第2実施形態に係る半導体発光素子1Aの製造方法について、
図8〜
図10を参照(構成については
図6および
図7参照)しながら説明する。なお、以下で参照する
図8〜
図10は、前記した
図7と同様に、
図6のC−C’断面に想到する断面図であり、孔部22A、貫通孔20A、第1電極15Aの突出部151Aおよび絶縁膜16Aの開口突出部161Aをそれぞれ1個だけ図示し、その他を省略している。
【0100】
半導体発光素子1Aの製造方法は、まず
図8(a)に示すように、サファイア基板Sb上に第1半導体層19a、活性層19cおよび第2半導体層19bからなる半導体積層体19を結晶成長させ、第2半導体層19b上の所定領域に、例えばスパッタリングを利用して第2電極17の内部接続部17bを形成する。次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図8(b)に示すように、第2半導体層19b上における内部接続部17b間に、例えばスパッタリングを利用して第1保護膜18Aを形成する。次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図8(c)に示すように、内部接続部17b上および第1保護膜18A上の所定領域に、例えばスパッタリングを利用して配線部17aを形成する。
【0101】
次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図8(d)に示すように、例えばドライエッチングによって第1保護膜18A、第2半導体層19b、活性層19cおよび第1半導体層19aを部分的に除去して複数の貫通孔20Aを形成する。次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図8(e)に示すように、配線部17a上、第1保護膜18A上および貫通孔20A内に、例えばスパッタリングを利用して絶縁膜16Aを形成する。次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図8(f)に示すように、例えばドライエッチングによって貫通孔20Aの底部に形成された絶縁膜16Aを所定深さまで除去して第1半導体層19aを露出させる。
【0102】
次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図9(a)に示すように、絶縁膜16A上および貫通孔20A内に、例えばスパッタリングを利用して第1電極15Aを厚めに形成する。次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図9(b)に示すように研磨、例えばCMPによって第1電極15Aを平坦化する。次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図9(c)に示すように、平坦化した第1電極15A上に、例えばスパッタリングを利用して第1電極側接着層14を形成する。
【0103】
次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図9(d)に示すように、基板側接着層13が形成された基板11を用意し、
図9(e)に示すように、基板11の基板側接着層13と第1電極側接着層14とを貼り合わせる。次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図9(f)に示すように、レーザーリフトオフ法によって、サファイア基板Sb側からレーザー光を照射してサファイア基板Sbと半導体積層体19(具体的には第1半導体層19a)との界面を分解し、サファイア基板Sbを剥離する。
【0104】
次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図10(a)に示すように、半導体積層体19の所定領域を第1保護膜18Aが露出するまで、例えばドライエッチングによってエッチングし、内周面が順テーパ状に傾斜した孔部22Aを形成する。また、ここでは
図10(a)に示すように、半導体積層体19の周縁領域についても第1保護膜18Aが露出するまでエッチングを行い、半導体積層体19の側面を順テーパ状に形成する。
【0105】
次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図10(b)に示すように、半導体積層体19の上面を、例えばウェットエッチングによってエッチングして粗面化し、凹凸部を形成する。次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図10(c)に示すように、半導体積層体19から露出した第1保護膜18Aを、例えばウェットエッチングによってエッチングして配線部17aを露出させる。次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図10(d)に示すように、露出した配線部17a上に外部接続部17cを形成する。
【0106】
次に、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図10(e)に示すように、半導体積層体19の上面および側面に、例えばスパッタリングを利用して第2保護膜21を形成する。そして、半導体発光素子1Aの製造方法は、
図10(f)に示すように、最後に基板11の下面に、例えばスパッタリングを利用して裏面接着層12を形成する。以上の工程により、
図6に示すような半導体発光素子1Aを製造することができる。
【0107】
以上、本発明に係る半導体発光素子およびその製造方法について、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【0108】
例えば、前記した半導体発光素子1は、
図1に示すように、孔部22と突出部151とが、基板11の上部において平面視で行列方向に交互に設けられている構成としたが、例えば
図11に示すように、孔部22と突出部151とが斜め方向に交互に設けられている構成としても構わない。すなわち、
図11に示す半導体発光素子1Bは、孔部22と突出部151とがそれぞれ四角格子状に配置されており、かつ、孔部22と突出部151とが上下および左右方向に重ならないように配置されている。一方、半導体発光素子1Bは、孔部22と突出部151とが斜め方向に交互に並んでいる。これにより、半導体発光素子1Bは、前記した半導体発光素子1と同様に、電流が集中しやすい第1電極15の突出部151近傍と比較して、電流密度および発光強度が低くなる傾向がある突出部151間の位置に孔部22を配置することで、光取り出し効率をより一層向上させ、発光分布を均一にすることができる。なお、前記した「斜め方向」とは、例えば
図1に示すように、半導体発光素子1の平面視の形状を矩形状とした場合において、当該半導体発光素子1の対角線方向のことを意味している。
【0109】
また、前記した半導体発光素子1,1Aは、メッキによって半導体積層体19上にメッキ部材を形成し、当該メッキ部材を基板11や基板側接着層13として利用することもできる。あるいは、半導体発光素子1は、基板11自体を設けない構成でもよく、例えば基板11を備えていない半導体発光素子1を、図示しない発光装置の載置部や基台上に直接実装しても構わない。
【0110】
また、前記した半導体発光素子1,1Aは、
図1および
図6に示すように、貫通孔20,20Aと、第1電極15,15Aの突出部151,151Aと、絶縁膜16,16Aの開口突出部161,161Aとが、平面視でそれぞれ真円状に形成されていたが、これらの平面視における形状は真円状に限らず、楕円状、多角形状、線状または曲線状などの任意の形状とすることができるとともに、形状が統一されていなくても構わない。また、貫通孔20,20A、突出部151,151Aおよび開口突出部161,161Aは、複数が一つに結合されたような形状であってもかまわない。なお、貫通孔20,20A、突出部151,151Aおよび開口突出部161,161Aは、面積が小さすぎると順方向電圧Vfが高くなるおそれがあるため、例えば真円状よりも少し面積の大きい楕円形状や直線状の形状とすることもできる。なお、貫通孔20,20A、突出部151,151Aおよび開口突出部161,161Aの形状を例えば楕円形状にすると、半導体積層体19の形状に応じて、これらの距離を揃えることができるため、発光状態を均一にすることができる。
【0111】
また、前記した半導体発光素子1は、
図2に示すように、略円錐台形状に形成された突出部151の側面に段差や凹凸部が形成されていない構成について説明したが、この「略円錐台形状」には、例えば
図12に示す突出部151Bのように、側面に段差(あるいは凹凸部)が形成され、上方向に徐々に縮径するような形状も含まれる。
【0112】
なお、貫通孔20,20A、突出部151,151Aおよび開口突出部161,161Aの大きさ、個数および位置は特に限定されず、半導体積層体19の大きさおよび形状に応じて適宜調整することができる。例えば、貫通孔20,20A、突出部151,151Aおよび開口突出部161,161Aは、
図1および
図6に示すような配置に限らず、線対称配置、点対称配置、あるいは、距離が不均一な配置であってもよい。
【0113】
また、前記した半導体発光素子1,1Aは、
図2および
図7に示すように、半導体積層体19の側面および孔部22,22Aの内周面に順テーパ状の傾斜が設けられていたが、逆テーパ状の傾斜が設けられるようにしても構わない。これにより、半導体発光素子1,1Aは、活性層19cから放出された光が半導体積層体19の側面(具体的には内部の側面)および孔部22,22Aの外周面で反射され、半導体発光素子1,1Aの上方に光賀取り出される。
【0114】
また、前記した半導体発光素子1,1Aは、
図2および
図7に示すように、半導体積層体19の側面および孔部22,22Aの内周面に順テーパ状の傾斜が設けられていたが、このようなテーパ状の傾斜が設けられていない構成であってもよい。
【0115】
また、前記した半導体発光素子1,1Aは、
図2および
図7に示すように、半導体積層体19の上面(第1半導体層19aの上面)に凹凸部が形成されていたが、半導体積層体19の上面のみならず、側面も粗面化されて凹凸部が形成されていることがより好ましい。すなわち、半導体発光素子1は、
図13(a)および
図13(b)に示すように、半導体積層体19の上面に凹凸部が形成されているのみならず、半導体積層体19の側面の外周方向に沿って凹凸部が形成され、半導体積層体19の側面の外周方向に凹部と凸部が交互に形成されている。ここで、
図13(a)は、半導体積層体19を垂直方向に切断して横から断面視したものを示しており、
図13(b)は、半導体積層体19を水平方向に切断して上から断面視したものを示している。これにより、半導体発光素子1,1Aは、活性層19cから放出された光が半導体積層体19の凹凸状の側面で拡散されて出射されるため、光の取り出し効率がさらに向上する。なお、
図13では、半導体発光素子1,1Aの第2保護膜21(
図2および
図7参照)は図示を省略している。
【0116】
また、半導体発光素子1,1Aは、
図14(a)に示すように、半導体積層体19の上面および周囲の外周方向のみならず、半導体積層体19の周囲の上下方向に沿って凹凸部が形成された構成としても構わない。すなわち、
図14(a)に示す半導体発光素子1,1Aは、半導体積体19の側面の上下方向に凹部と凸部が交互に形成されている。これにより、半導体発光素子1は、活性層19cから放出された光が半導体積層体19の凹凸状の側面でより多く拡散されて出射されるため、光の取り出し効率がさらに向上する。なお、
図14(a)では、半導体発光素子1,1Aの第2保護膜21(
図2および
図7参照)は図示を省略している。
【0117】
また、前記した半導体発光素子1,1Aは、
図2および
図7に示すように、第1半導体層19aの上面に凹凸部が一様に同じ高さおよび深さで形成されていたが、例えば
図14(b)に示すように、高低差h1を有する大きな凹凸と、高低差h2を有する小さな凹凸からなる高さの異なる凹凸が重畳した凹凸部を第1半導体層19aに形成してもよい。これにより、半導体発光素子1,1Aは、活性層19cから放出された光がより大きな方向に拡散するため、光の取り出し効率がさらに向上する。
【0118】
ここで、第1半導体層19aに、
図14(b)に示すような凹凸部を形成する場合は、電流の拡散を妨害しないように、同図に示すように、第1電極15,15Aの突出部151,151Aおよび絶縁膜16,16Aの開口突出部161,161Aを、高低差h1を有する凹凸の凸部に合わせて配置するとともに、高低差h1を有する凹凸の幅d1よりも、第1電極15,15Aの突出部151,151Aの幅d2を小さく形成することが好ましい。
【0119】
また、前記した半導体発光素子1,1Aは、
図2および
図7に示すように、孔部22,22Aの内周面がテーパ状に傾斜されていたが、例えば
図15および
図16に示すように、このようなテーパ状の傾斜が設けられていない構成であってもよい。すなわち、変形例に係る半導体発光素子1Cは、
図15に示すように、孔部22Bの内周面が垂直に形成され、孔部22Bが上下に一定の径で形成されている。また、変形例に係る半導体発光素子1Dは、
図16に示すように、孔部22Cの内周面が垂直に形成され、孔部22Cが上下に一定の径で形成されている。これにより、半導体発光素子1C,1Dは、前記した半導体発光素子1,1A,1Bと同様に、活性層19cから放出された光が孔部22B,22Cの内周面からから出射されやすくなり、半導体積層体19にこのような孔部22B,22Cを形成しない場合と比較して、光の取り出し効率が向上する。
【0120】
また、前記した半導体発光素子1,1Aは、
図2および
図7に示すように、孔部22,22Aの内周面に凹凸部が形成されていなかったが、例えば
図17に示すように、孔部22,22Aの内周面に所定深さの凹凸部が形成されている構成であってもよい。これにより、半導体発光素子1,1Aは、活性層19cから放出された光が凹凸部によってより拡散するため、光の取り出し効率がさらに向上する。なお、このような凹凸部は、前記した半導体発光素子1C,1D(
図15および
図16参照)における垂直の孔部22B,22Cの内周面に設けても構わない。