(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動機構は、前記第1洗浄部材及び第2洗浄部材を、基板の洗浄時に当該第1洗浄部材及び第2洗浄部材の並び方向に交差する方向に移動するように制御されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の基板洗浄装置の実施の形態として、半導体デバイスの回路が形成されたウエハWの表面を下側に向ける一方、回路が形成されていない裏面を上側に向け、洗浄部材を利用してこの裏面を洗浄する洗浄装置1の構成について
図1〜
図5を参照しながら説明する。
【0013】
図1に示すように、洗浄装置1は、筐体10内に、ウエハWを保持する回転自在なスピンチャック2と、ウエハWの上面に洗浄液を供給するノズル3と、ウエハWの上面を洗浄する洗浄部材(第1洗浄部材41及び第2洗浄部材42)と、洗浄液を受けるためのカップ27と、を設けた構造となっている。筐体10には、開閉自在なシャッタ12を備えたウエハWの搬入出口11が設けられている。
【0014】
スピンチャック2は、円板状の回転プレート21と、回転プレート21の周縁部に設けられ、ウエハWを保持するチャック部22と、を備えている。回転プレート21の底面側中央部には、上下方向に伸びる回転軸23が連結され、この回転軸23の基端部には、回転プレート21を鉛直軸周りに回転させる回転駆動部24が設けられている。回転駆動部24は例えば、モータにより構成される。スピンチャック2は本例の基板保持部に相当し、回転軸23や回転駆動部24は回転機構に相当している。
【0015】
図2に示すように、チャック部22は、回転プレート21の周縁部において略等間隔で例えば3箇所に配置されている。チャック部22は、ウエハWを保持する保持ピン221と、ウエハWの保持位置と解除位置との間で保持ピン221を移動させる作動片223と、が回転軸222を介して連結された構造となっている。
【0016】
保持ピン221の上端部には、ウエハWの周端部を保持するための凹部が形成されており、保持ピン221は、この凹部を回転プレート21の径方向内側へ向けて配置される。保持ピン221の基端部は、回転軸222を介して回転プレート21に取り付けられ、作動片223は、この回転軸222から回転プレート21の径方向、内側へ向けて斜め下方へと伸び出している。
【0017】
回転軸222は、保持ピン221の上端部が回転プレート21の径方向内側へ向けて移動する方向に付勢されており、この付勢力によりウエハWの側周面を押さえて回転プレート21の上方位置にウエハWを水平に保持する。各作動片223の下方位置には、支持板252を介して昇降機構253に連結された押上部材251が設けられている。この押上部材251を上昇させて、作動片223を押し上げ、回転軸222周りに保持ピン221を回転させて、回転プレート21の径方向外側へ向けて移動させることにより、ウエハWの保持状態を解除する(
図7)。
【0018】
図1に示すように、回転駆動部24や押上部材251等は、上面が開口したカバー26に収容されており、押上部材251はこの開口を介してカバー26から突没して作動片223を押し上げる。また、押上部材251によって押し上げられて移動する作動片223との干渉を避けるため、回転プレート21には不図示の溝部が設けられている。
【0019】
カップ27は、スピンチャック2の周囲を囲むように設けられており、回転するウエハWから振り飛ばされた洗浄液を受け止め、不図示の回収ラインを介して洗浄液を回収する。本例のカップ27はその上部側が昇降自在に構成されており、ウエハWの搬入出時に搬入出口11を介して外部の搬送アームが進入する際に、下方側へと退避することができる(
図7)。
【0020】
スピンチャック2に保持されたウエハWの上方には、ウエハWの上面に純水などの洗浄液を供給するノズル3が設けられている。このノズル3には、ノズルアーム(図示せず)を介して、ノズル駆動部(図示せず)が連結されており、ウエハWの上方においてノズル3を略水平方向に移動させることができる。ノズル3は開閉弁32が介設された洗浄液供給ライン31を介して洗浄液供給源33に接続されており、開閉弁32の開閉により洗浄液の給断が行われる。
【0021】
第1洗浄部材41、第2洗浄部材42は、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方側に位置するように支持アーム43に支持されている。各洗浄部材41、42は、例えばPVA(ポリビニルアルコール)やPP(ポリプロピレン)などの樹脂により形成された略円形柱状のスポンジや、あるいはナイロンブラシにより構成されている。
【0022】
支持アーム43は、筐体10内に略水平に設けられた直線状のガイドレール44に沿って移動自在に構成され、例えばボールねじ機構などによって構成されたスキャン駆動部48に連結されている。これにより支持アーム43は、
図2に示すようにスピンチャック2に保持されたウエハWの中央部にて第1洗浄部材41、第2洗浄部材42をウエハWに接触させる位置(P1)から、ウエハWの周縁部にて洗浄部材41、42をウエハWに接触させる位置(P2)、さらに、ウエハWの周縁外方の退避位置(P3)まで支持アーム43を移動させることができる。
【0023】
ここでスピンチャック2上のウエハWを回転させながら、支持アーム43をP1からP2まで移動させたとき、第1洗浄部材41や第2洗浄部材42とウエハWとが接触する領域が、洗浄の行われる洗浄領域となる。例えば位置P2は、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42が保持ピン221と接触しない位置に設定される。
【0024】
また本例では、
図2に示すように、支持アーム43が位置P1にあるとき、第1洗浄部材41がウエハWの中心と重なる位置に配置されるように、第1洗浄部材41は支持アーム43に支持されている。また、支持アーム43が位置P2にあるとき、各洗浄部材41、42が、いずれもウエハWの周縁部の曲線に沿って配置されるように、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42はウエハWの周方向に所定距離離れた状態で支持アーム43に支持されている。
【0025】
図3に示すように、支持アーム43の基端部には、スピンチャック2に保持されたウエハWに対して、支持アーム43を昇降させるアーム昇降機構45が設けられている。アーム昇降機構45と支持アーム43とは、支持部材46を介して連結されている。アーム昇降機構45が支持部材46を昇降させることにより、支持アーム43が昇降する。アーム昇降機構45は、スライダ47を介してスキャン駆動部48と連結されている。そして、スキャン駆動部48により支持アーム43は、支持部材46、アーム昇降機構45及びスライダ47と共に、ガイドレール44に対して横方向に移動可能に構成されている。これら支持アーム43、支持部材46、アーム昇降機構45やスライダ47は、本例の移動機構に相当する。
【0026】
次に、第1洗浄部材41及び第2洗浄部材42を回転させるための回転機構について説明する。
図3に示すように、支持アーム43の上面には、第1洗浄部材41及び第2洗浄部材42を回転させるための、例えばモータからなる回転駆動部500がそれぞれ設けられている。回転駆動部500には駆動プーリ502を備えた駆動軸501が連結される一方、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42には受動プーリ504を備えた第1回転軸503、第2回転軸507が連結されている。これら駆動プーリ502及び受動プーリ504には、無端状のベルト505が巻き掛けられており、回転駆動部500の駆動力が第1洗浄部材41、第2洗浄部材42へと伝達されて第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を回転させる。
【0027】
さらに、第1洗浄部材41及び第2洗浄部材42は、ウエハW面内の位置に応じてこれら第1洗浄部材41及び第2洗浄部材42を各々独立して昇降させる昇降機構を備えている。
図4は、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を昇降させる昇降機構の構成例を示している。駆動プーリ502の駆動力を受けて回転する受動プーリ504は、回転筒511に固定されており、回転筒511は、当該受動プーリ504と一体になって回転する。
【0028】
さらにこの回転筒511の内側には、当該回転筒511と一体となって回転可能なように、上述の第1回転軸503、第2回転軸507がスプライン嵌合している。これらの第1、第2回転軸503、507の下端には、各々第1、第2洗浄部材41、42が設けられている一方、上端には、これら第1、第2回転軸503、507を回転自在、且つ、上下方向に移動自在に保持する昇降駆動部51が設けられている。
【0029】
この昇降駆動部51により、第1、第2回転軸503、507を上下方向へ移動せることにより、第1、第2洗浄部材41、42を上下に移動させることができる。第1、第2洗浄部材41、42の移動量は、後述の制御部6からの制御信号に基づいて調節され、予め設定されたホームポジションから、例えば上下方向に数mmずつ移動することができる。
【0030】
回転筒511は、軸受部512を介して回転自在に支持アーム43に保持され、回転筒511が突出する支持アーム43の下側は、カバー部材515により覆われている。
なお、
図4は、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の昇降機構の一構成例を示したものであり、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を各々独立して予め設定された位置に昇降させる機能を備えていれば、昇降機構の構成はこの例に限定されるものではない。
【0031】
また、ウエハ洗浄装置1には、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42のスキャン位置を把握する機構が設けられている。スキャン位置の把握は、例えば筐体10の内壁などに各第1洗浄部材41、第2洗浄部材42までの距離を計測する光学センサを設け、検出された第1洗浄部材41、第2洗浄部材42までの距離に基づいて、ウエハW上の位置を把握してもよい。また、カメラなどによりウエハWの上方側から支持アーム43を撮像することにより、支持アーム43に支持されている第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の位置を把握してもよい。この他、スキャン駆動部48を駆動させて移動する支持アーム43のスキャン速度や移動時間、またボールねじ機構を利用している場合には、ボールねじの回転量などより、基準位置からの移動量を計算し、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の位置を把握してもよい。
【0032】
さらに
図5に示すように洗浄装置1は、その全体の動作を統括制御する制御部6と接続されている。制御部6は例えばCPU61と記憶部62とを備えたコンピュータからなり、記憶部62には洗浄装置1の作用、即ちスピンチャック2へのウエハWの受け渡しや回転するウエハWに洗浄液を供給して第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を用いて洗浄を行う動作についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0033】
ここで、本例の制御部6は、回転するウエハWの一面である上面の高さ位置が、ウエハWの撓みによってスキャン方向に変化するとき、既述の昇降機構を利用して第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を昇降させ、ウエハWに加える押圧力を一定に保つ機能を備えている。以下、当該機能の詳細について説明する。
【0034】
図6に模式的に示すように、洗浄中のウエハWには、保持ピン221がウエハWを固定する力や第1洗浄部材41、第2洗浄部材42からウエハWに加わる押圧力など、種々の力が加わる。これらの力を受けると、ウエハWが撓んで凹面が形成され、例えばウエハWの中央部と周縁部との間で、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42のスキャン方向に、ウエハWの上面の高さ位置がサブミリメートル〜数ミリメートル程度、変化してしまうことがある。
【0035】
このような状態のウエハWに、
図2に示すように互いに離れた位置に並んで配置された第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を同じ高さ位置に配置すると、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42によるウエハWに対する押圧力がスキャンするにつれて変化してしまい、ウエハWの面内で均一な処理結果が得られないおそれがある。
【0036】
そこで本例の洗浄装置1は、ウエハWの上面の高さ位置を第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の各々のスキャン位置に応じて特定し、高さ位置情報64として予め記憶部62に記憶している。ウエハWの上面の高さ位置は、例えば有限要素法を利用した応力解析などにより、シミュレーションで求めることが可能である。洗浄中のウエハWの上面の高さ位置を決定する変数としては、ウエハWの直径や厚さ、洗浄部材41、42からウエハWに加わる押圧力、単位時間当たりのウエハWの回転数などを挙げることができる。
【0037】
高さ位置情報64の具体的な内容としては、例えば予め設定した基準線からのウエハWの上面までの高さ方向の距離を、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の各スキャン経路に沿って特定した曲線の情報を記憶してもよいし、これらの曲線を近似した近似式を記憶してもよい。また、例えばウエハW面内の各位置とその位置における基準線からの高さ方向の距離とを対応付けた凹曲面の情報を記憶してもよい。これらウエハWの上面の高さ位置を示す曲線や曲面の情報は、基板上面の高さ位置に関する情報に相当する。
【0038】
記憶部62には、設定部65によって設定された高さ位置情報64が記憶されている。高さ位置情報64に基づいて第1洗浄部材41、第2洗浄部材42のスキャン位置に応じた第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の高さ位置が決定され、高さ位置制御プログラム63は、決定された高さ位置に合わせて第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を昇降させる。
【0039】
第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の高さ位置は、ウエハWの上面から各洗浄部材41、42まで(例えば各洗浄部材41、42を保持する保持部511bの下端まで)の距離が略一定となる。この距離は、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42がウエハWを押圧する押圧力が予め設定された範囲内の値となるように(以下、便宜上、「押圧力が揃うように」という)設定される。
【0040】
上述の構成を備えた洗浄装置1の作用について説明する。例えば
図7に示すように、洗浄装置1は第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を退避位置(
図2の位置P3)まで退避させると共に、保持ピン221を解除位置に移動させ、またカップ27を下方側に移動させた状態で待機している。
洗浄装置1の外部では不図示のキャリア内に、回路が形成された表面を上側に向けた状態でウエハWが収容されており、ウエハWはキャリアから取り出された後、不図示の反転装置にて上下が反転される。
【0041】
こうして回路が形成されていない裏面を上側に向けたウエハWは、外部の搬送アームによって筐体10内に搬入され、回転プレート21の上方位置まで搬送された後、保持位置まで移動した保持ピン221に受け渡される。
【0042】
ウエハWを受け渡した搬送アームが筐体10外へ退避し、シャッタ12が閉じられたら、ウエハWを鉛直軸周りに回転させ、ノズル3からの洗浄液の供給を開始する。ウエハWに供給された洗浄液は、遠心力の作用を受けてウエハWの上面全体に広がり、ウエハWの上面に洗浄液の液膜が形成される。
【0043】
洗浄液の供給と並行して、退避位置に退避していた支持アーム43をウエハWの中央部の上方(
図2の位置P1)まで移動させ、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を回転させながらこれら支持アーム43を降下させ、液膜が形成されたウエハWに第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を接触させて洗浄を開始する。
【0044】
このとき
図6を用いて説明したように、ウエハWの上面には撓みによる凹面が形成されている。第1洗浄部材41、第2洗浄部材42は水平方向に互いに離れた位置に配置されている。このため第1洗浄部材41、第2洗浄部材42のスキャン位置における、ウエハWの上面の高さ位置は互いに異なっている。そこで、高さ位置制御プログラム63が実行され、洗浄の条件に対応して記憶されている高さ位置情報64に基づき、各第1洗浄部材41、第2洗浄部材42のスキャン位置における洗浄部材41、42の高さ位置を独立して調節する。これにより第1洗浄部材41と第2洗浄部材42がウエハWに加える押圧力を揃えることができる。
【0045】
ここで、
図8、
図9には、ウエハWを上側から見た平面図に、第1洗浄部材41が通過するスキャン経路に沿って伸びる直線A−A’と、第2洗浄部材42が通過するスキャン経路に沿って伸びる直線B−B’とを示してある。直線A−A’はウエハWの中心を通過する直線であり、直線B−B’はウエハWの中心から離れた位置を直線A−A’と平行に伸びる直線である。また、ウエハWの平面図の下方側には、直線A−A’、B−B’の各断面におけるウエハWの上面の高さ位置の変化の様子を示してある。これらの図において、Z軸は、ウエハWの上面の高さ位置が最も低い点からの高さ方向の距離を示しており、R軸はウエハWの中心を通過する直線A−A’上におけるウエハWの中心からの距離を示している。また、R’軸は、直線B−B’と、位置P1にある支持アーム43の中心線との交点を0点としたとき、当該0点からの距離を示している。
【0046】
続いて、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42にてウエハWの洗浄を行いながら、支持アーム43をウエハWの周縁部(
図2の位置P2)まで移動させ、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42をスキャンさせる(
図9)。このとき、第1洗浄部材41が通過する直線A−A’上のスキャン経路と、第2洗浄部材42が通過する直線B−B’上のスキャン経路とでは、ウエハWの上面の高さ位置やその変化率が互いに相違する。
【0047】
そこで、洗浄装置1は支持アーム43を位置P1からP2まで移動させるときに各第1洗浄部材41、第2洗浄部材42が通過する各スキャン位置(第1洗浄部材41については、
図8の0点から
図9のr
s1点までの各位置、第2洗浄部材42については、
図8の−r
0点から
図9のr
s2点までの各位置)におけるウエハWの上面の高さ位置情報64に基づき、各第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の高さ位置を調節する。具体的には、スキャン中の支持アーム43の位置に応じて各第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の位置におけるウエハWの上面の高さ位置を特定し、その結果に基づいてウエハWの上面から第1洗浄部材41、第2洗浄部材42までの距離が一定となるように昇降動作を行う。これにより、第1、第2洗浄部材41、42がウエハWに加える押圧力を揃えることができる。
【0048】
こうして、支持アーム43が、位置P2に到達した後、支持アーム43を上昇させ、ウエハWの上方側へ第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を移動させてウエハWの洗浄を停止する。そして、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の回転を停止させると共に、支持アーム43を退避位置P3まで移動させる。
【0049】
一方で、回転しているウエハWには、ノズル30からの洗浄液の供給が継続され、ウエハWの上面のリンス処理が行われる。所定時間リンス処理行った後、洗浄液の供給を停止し、ウエハWの回転数を上昇させて、ウエハWの上面に残っている洗浄液を振り切るスピン乾燥を行う。スピン乾燥を終えた後、ウエハWの回転を停止させる。ウエハWは、筐体10内に進入した搬送アームに受け渡され、反転装置にて反転されると共に搬入時とは反対の経路で搬送され、洗浄が行われたウエハWの裏面を下側へ向けた状態でキャリアに収容される。
【0050】
本実施の形態に関わる洗浄装置1によれば以下の効果がある。洗浄装置1には複数の第1洗浄部材41、第2洗浄部材42が設けられているので、1つの洗浄部材を用いて2度スキャンした場合と同様の洗浄効果を1度のスキャンで得ることができる。このため、ウエハWの上面全体からパーティクルを効率良く除去することができ、ウエハWの洗浄時間を短縮することができる。
【0051】
また、第1洗浄部材及び第2洗浄部材の位置におけるウエハWの上面の高さ位置に応じてこれら第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を独立して昇降させるので、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42がウエハWに与える押圧力を揃え、ウエハWの面内で均一な処理を行うことができる。
【0052】
ここでウエハWの上面の高さ位置を特定するための洗浄の条件は、洗浄の期間中、一定である場合に限らず、洗浄の途中で変更してもよい。例えば、
図10(a)は、第1洗浄部材41がウエハWの中央からr’点まで移動した後、ウエハWの回転数を上昇させたときのウエハWの上面の高さ位置の変化を示しており、
図10(b)は、r’’点以降、回転数を低下させたときの変化を模式的に示している。
【0053】
このような場合であっても、回転数の変化に対応したウエハWの上面の高さ位置を特定し、この高さ位置に応じて第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を昇降させることにより、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42がウエハWに加える押圧力を揃えることができる。ここで、
図10(a)、(b)に示すウエハWの上面の高さ位置は、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42のスキャンの途中で回転数が変化することを考慮した高さ位置情報64を予め作成し、これを記憶しておいてもよいし、変更前後の回転数に応じた複数の高さ位置情報64を記憶しておき、回転数の変更に合わせて高さ位置情報64の読み出し先を切り替えることにより取得してもよい。また、スキャンの途中で変更される洗浄の条件は、ウエハWの回転数に限らず、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の押圧力などであってもよい。
【0054】
さらに、ウエハWの上面の高さ位置の変化は、シミュレーションによって求める場合に限られない。例えば
図11に示すように、光学カメラ7により焦点位置の変化を観察してウエハWの上面の高さ位置を求め、これに基づき高さ位置情報64を作成してもよい。このように実測値に基づいてウエハWの上面の高さ位置を求める場合には、予め実測した値を処理条件毎に高さ位置情報64として記憶しておく。ウエハWの洗浄の際には処理条件が一致する高さ位置情報64を読み出した結果に基づいて第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を昇降させてもよい。また、各ウエハWの洗浄の開始前に実測を行い、この実測値に基づいて第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を昇降させてもよい。
【0055】
このほか、ウエハWを保持する手法は、ウエハWの周端部を保持ピン221にて保持するスピンチャック2を用いる場合に限定されない。例えば
図12に示すように、ウエハWの下面を吸着保持するスピンチャック2aを利用してもよい。ウエハWの吸着保持は、半導体デバイスの回路が形成されたウエハWの表面を上側に向け、この表面を第1洗浄部材41、第2洗浄部材42により洗浄する場合などに採用される。例えば
図12に示した例においては、ウエハWの下側中央部がスピンチャック2aにて保持されることにより、
図6に示した例とは反対方向にウエハWが撓んでいる。
【0056】
また、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42のスキャン方向は、直線方向に限られない。例えば支持アーム43を、旋回自在に構成し、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42のうち少なくとも1つがウエハWの中心を通るように円弧状にスキャンを行ってもよい。また、スキャンの経路についても、ウエハWの中央部から周縁部へとウエハWの半径と略一致する経路を設定する場合に限られない。例えばウエハWの一端側の周縁部から、中央部を経由して他端側の周縁部へと第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を移動させる経路をスキャンしてもよい。
【0057】
上述のようにスキャン方向を変化させる場合に替えて、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の並べ方を
図2に示した状態から変化させてもよい。例えばスキャン方向に沿って、第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を並べる場合が挙げられる。この場合には、各第1洗浄部材41、第2洗浄部材42は共通のスキャン経路上を移動することになるが、各第1洗浄部材41、第2洗浄部材42が離れて配置されていることにより、その位置におけるウエハWの上面の高さ位置が互いに異なる。そこで、各第1洗浄部材41、第2洗浄部材42の位置におけるウエハWの上面の高さ位置に応じて第1洗浄部材41、第2洗浄部材42を独立して昇降させることにより、これらの第1洗浄部材41、第2洗浄部材42がウエハWに加える押圧力を揃えることができる。
【0058】
さらにまた、
図1〜
図9に示した例では2個の洗浄部材(第1洗浄部材41、第2洗浄部材42)を設けた例を示しているが、支持アーム43に設ける洗浄部材は3個以上であってもよい。これらの洗浄部材のうちの2つの洗浄部材に着目すると、一方が第1洗浄部材41、他方が第2洗浄部材42に相当している。