(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補助電極部は、前記回転テーブルに対して独立して熱膨張収縮するために、その内壁面及び天井面に対して各々隙間が形成されるように前記回転テーブルの内部空間に配置され、
前記内部空間には、前記回転テーブルの耐圧を向上させるために、当該内部空間の天井面及び床面の間を互いに接続する支柱が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
前記補助電極部は、前記回転テーブルに対して独立して熱膨張収縮するために、その内壁面及び天井面に対して各々隙間が形成されるように前記回転テーブルの内部空間に配置され、
前記回転テーブルには、前記回転テーブルの耐圧を向上させるために、前記内部空間と当該回転テーブルの外部との間の雰囲気を連通させるための通気路が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
前記回転テーブルと前記バイアス電極部との間の隙間におけるプラズマの発生を阻止するために、プラズマ阻止用ガスを当該隙間に供給するためのプラズマ阻止用ガス供給部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
前記回転テーブルと前記バイアス電極部との間の隙間におけるプラズマの発生を阻止するために、プラズマ阻止用ガスを当該隙間に供給するための工程を行うことを特徴とする請求項10または11に記載の成膜方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態の基板処理装置を成膜装置に適用した例について、
図1〜
図9を参照して説明する。この装置は、
図1〜
図4に示すように、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有すると共に例えば石英などの絶縁体により構成された回転テーブル2と、を備えており、ウエハWに対して成膜処理及びプラズマ改質処理を行うように構成されている。そして、この成膜装置は、後で詳述するように、ウエハWの表面に例えば数十から百を超えるアスペクト比を持つ凹部が形成されていても、プラズマをウエハW側に引き込むことにより、当該凹部の深さ方向におけるプラズマ改質の度合いが揃うように構成されている。続いて、この成膜装置の主要部であるバイアス電極部120について詳述する前に、装置の各部について以下に説明する。
【0018】
真空容器1は、天板11及び容器本体12を備えており、天板11が容器本体12から着脱できるように構成されている。天板11の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために、窒素(N2)ガスを分離ガスとして供給するための分離ガス供給管51が接続されている。
図1中13は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリングである。
【0019】
真空容器1の底面部14の上方側には、
図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられており、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを成膜温度例えば300℃に加熱するようになっている。
図1中71aはヒータユニット7の側方側に設けられたカバー部材、7aはこのヒータユニット7の上方側を覆う覆い部材である。また、底面部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が周方向に亘って複数箇所に設けられている。
【0020】
回転テーブル2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22によって、鉛直軸周りこの例では時計周りに回転自在に構成されている。
図1中23は回転軸22を鉛直軸周りに回転させる駆動部(回転機構)であり、20は回転軸22及び駆動部23を収納するケース体である。このケース体20は、上面側のフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、このケース体20には、回転テーブル2の下方領域に窒素ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管72が接続されている。真空容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、回転テーブル2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aをなしている。
【0021】
回転テーブル2の表面部には、
図3〜
図4に示すように、ウエハWを落とし込んで保持するために、円形の凹部24が基板載置領域として設けられており、この凹部24は、当該回転テーブル2の回転方向(周方向)に沿って複数箇所例えば5箇所に形成されている。回転テーブル2の下面は、
図5及び
図9に示すように、各々の凹部24の底面と回転テーブル2の下面との間の寸法(回転テーブル2の板厚寸法)hができるだけ小さくなるように、回転テーブル2と同心円状にリング状に窪んでバイアス電極部120を収納するための凹部である溝部2aをなしている。前記板厚寸法hは、例えば6mm〜20mmとなっている。後述のバイアス電極部120は、この溝部2a内に当該バイアス電極部120の上面が位置するように配置される。尚、
図5は、回転テーブル2を下側から見た斜視図を示している。
【0022】
凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる6本のノズル31、32、34、41、42、43が真空容器1の周方向に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これら各ノズル31、32、34、41、42、43は、例えば真空容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。この例では、後述の搬送口15から見て時計周り(回転テーブル2の回転方向)にプラズマ発生用ガスノズル34、分離ガスノズル41、クリーニングガスノズル43、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の処理ガスノズル32がこの順番で配列されている。尚、クリーニングガスノズル43について、
図3以外では図示を省略している。
【0023】
処理ガスノズル31、32は、夫々第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部をなし、プラズマ発生用ガスノズル34はプラズマ発生用ガス供給部をなしている。また、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。尚、
図2及び
図3はプラズマ発生用ガスノズル34が見えるように後述のプラズマ処理部80及び筐体90を取り外した状態、
図4はこれらプラズマ処理部80及び筐体90を取り付けた状態を表している。また、
図2については回転テーブル2についても取り外した状態を示している。
【0024】
各ノズル31、32、34、41、42は、流量調整バルブを介して夫々以下の各ガス供給源(図示せず)に夫々接続されている。即ち、第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含む第1の処理ガス例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスなどの供給源に接続されている。第2の処理ガスノズル32は、第2の処理ガス例えばオゾン(O3)ガスと酸素(O2)ガスとの混合ガスの供給源(詳しくはオゾナイザーの設けられた酸素ガス供給源)に接続されている。プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばアルゴン(Ar)ガスと酸素ガスとの混合ガスからなるプラズマ発生用ガスの供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスである窒素ガスのガス供給源に各々接続されている。クリーニングガスノズル43は、クリーニングガス(例えばフッ素(F2)ガス、塩素(Cl2)ガスあるいはフッ素及び塩素を含むガス(ClF3)など)の供給源に接続されている。これらガスノズル31、32、34、41、42の例えば下面側には、ガス吐出孔33が各々形成されており、このガス吐出孔33は、回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所に例えば等間隔に配置されている。クリーニングガスノズル43は、回転テーブル2の外縁よりも僅かに中心部領域C側にて開口している。
【0025】
第1の処理ガスノズル31の上方側には、当該ノズル31から吐出されるガスをウエハWに沿って通流させるためのノズルカバー(フィン)31aが配置されている。このノズルカバー31aは、ノズル31の長さ方向に亘って当該ノズル31の外壁面に沿うように形成されると共に、平面で見た時に概略扇状となるように、左右両側の端部31b、31bが水平方向に伸び出している。そして、この端部31b、31bにおける外周側の部位が回転テーブル2の外周端に沿うように下方側に向かって各々屈曲している。このノズルカバー31aは、真空容器1の天板11及び既述の覆い部材7aによって支持されている。
【0026】
処理ガスノズル31、32の下方領域は、夫々第1の処理ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域(成膜領域)P1及びウエハWに吸着した第1の処理ガスの成分と第2の処理ガスとを反応させるための第2の処理領域P2となる。プラズマ発生用ガスノズル34の下方側の領域は、後述するように、ウエハWに対してプラズマ改質処理を行うための改質領域S1となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、
図3及び
図4に示すように、概略扇形の凸状部4が設けられており、分離ガスノズル41、42は、この凸状部4内に収められている。従って、分離ガスノズル41、42における回転テーブル2の周方向両側には、各処理ガス同士の混合を阻止するために、前記凸状部4の下面である低い天井面が配置され、この天井面の前記周方向両側には、当該天井面よりも高い天井面が配置されている。凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、下方側に向かって直角に屈曲している。
【0027】
次に、既述のプラズマ処理部80について説明する。このプラズマ処理部80は、
図1及び
図6に示すように、金属線からなるアンテナ83をコイル状に巻回して構成されており、平面で見た時に回転テーブル2の中央部側から外周部側に亘ってウエハWの通過領域を跨ぐように配置されている。このアンテナ83は、
図4に示すように、回転テーブル2の半径方向に沿って伸びる帯状の領域を囲むように概略8角形をなしている。また、このアンテナ83は、整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に接続されると共に、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように配置されている。即ち、既述のプラズマ発生用ガスノズル34の上方側における天板11は、平面的に見た時に概略扇形に開口しており、例えば石英などからなる筐体90によって気密に塞がれている。この筐体90は、周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出すと共に、中央部が真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成されており、この筐体90の内側に前記アンテナ83が収納されている。
図1中11aは、筐体90と天板11との間に設けられたシール部材であり、91は、筐体90の周縁部を下方側に向かって押圧するための押圧部材である。また
図1中86は、プラズマ処理部80と整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極である。
【0028】
筐体90の下面は、当該筐体90の下方領域への窒素ガスやオゾンガスなどの侵入を阻止するために、
図1に示すように、外縁部が周方向に亘って下方側(回転テーブル2側)に向かって垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部92をなしている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、既述のプラズマ発生用ガスノズル34が収納されている。
【0029】
筐体90とアンテナ83との間には、
図1、
図4及び
図6に示すように、上面側が開口する概略箱型のファラデーシールド95が配置されており、このファラデーシールド95は、導電性の板状体である金属板により構成されると共に接地されている。このファラデーシールド95の底面には、アンテナ83において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させるために、スリット97が形成されている。このスリット97は、アンテナ83の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように形成されており、アンテナ83に沿うように周方向に亘って当該アンテナ83の下方位置に設けられている。ファラデーシールド95とアンテナ83との間には、これらファラデーシールド95とアンテナ83との絶縁を取るために、例えば石英からなる絶縁板94が介在している。
【0030】
続いて、本発明のバイアス電極部120について詳述する。このバイアス電極部120は、プラズマ処理部80にて発生するプラズマをウエハW側に引き込むためのものであり、回転テーブル2の裏面側において当該回転テーブル2に接触しないように、また真空容器1内に対して絶縁を取りつつ気密に配置されている。即ち、
図1及び
図7に示すように、プラズマ処理部80の下方側における真空容器1の底面部14には、開口部121が形成されており、この開口部121は、平面で見た時にアンテナ83の配置された領域と同じか当該領域よりも大きな楕円形状となるように開口している。そして、この開口部121内には、平面で見た時に開口部121と同様に楕円形状となるように形成された絶縁部材122が配置されており、この絶縁部材122は、下方側が開口すると共に中空の概略円筒形に形成されている。この絶縁部材122の下端側外周端は、外側に向かって周方向に亘ってフランジ状に伸び出しており、この下端側外周端の上面側に周方向に沿って設けられたO−リングなどのシール部材123によって、真空容器1の底面部14に気密に接触している。この絶縁部材122と回転テーブル2との間の領域を「プラズマ非励起領域」S2と呼ぶと、絶縁部材122の上面部の概略中央部には、当該プラズマ非励起領域S2に対して後述のプラズマ阻止用ガスを吐出するために、当該絶縁部材122を上下方向に貫通するガス吐出口124が形成されている。この例では、絶縁部材122は、例えば石英により構成されている。
【0031】
絶縁部材122の内部には、既述のバイアス電極部120が配置されており、このバイアス電極部120は、絶縁部材122よりも一回り小さく形成されている。即ち、バイアス電極部120は、絶縁部材122の内周面に倣うように、下端側が開口すると共にこの下端側外周端がフランジ状に伸び出す概略円筒形状をなしており、ニッケル(Ni)や銅(Cu)などの導電部材により構成されている。そして、このバイアス電極部120における下端側外周端は、真空容器1の底面部14に接触しないように、絶縁部材122の外端部よりも内側に位置するように配置されており、当該下端側外周端の上面側に設けられたO−リングなどのシール部材125によって、絶縁部材122に対して気密に配置されている。従って、バイアス電極部120は、回転テーブル2に接触しないように(非接触となるように)、また真空容器1に対して電気的に絶縁されるように配置されている。
【0032】
このバイアス電極部120の概略中央部には、既述の絶縁部材122のガス吐出口124の配置位置に対応するように、当該バイアス電極部120を上下に貫通する貫通口126が形成されている。この貫通口126の下方側には、
図1に示すように、既述のプラズマ非励起領域S2に対してプラズマ阻止用ガスを供給するために、導電部材により構成されたガス供給路127が気密に設けられている。このガス供給路127を構成する流路部材には、プラズマをウエハW側に引き込むための負のバイアス電圧印加部128が接続されている。このバイアス電圧印加部128は、具体的には例えば周波数が50kHz〜40MHz及び出力電力が500〜5000Wの高周波電源129と整合器130とにより構成されている。
【0033】
ここで、プラズマ非励起領域S2に既述のプラズマ阻止用ガスを供給する理由について説明する。バイアス電極部120は、回転テーブル2に接触しないように配置されており、またウエハWに対して電気的に絶縁されている。従って、ウエハWへのバイアス電圧は、後述するように、絶縁部材122、プラズマ非励起領域S2及び回転テーブル2を介して、バイアス電極部120から非接触で静電誘導により印加される。そのため、プラズマ非励起領域S2においてプラズマが発生すると、当該プラズマ非励起領域S2を介して静電誘導が起こらなくなってしまうおそれがある。また、プラズマ非励起領域S2にてプラズマが発生すると、高周波電源129からバイアス電極部120に供給される電力の一部あるいは大部分が無駄に消費されてしまう。そこで、プラズマ非励起領域S2におけるプラズマの発生を阻止するために、当該プラズマ非励起領域S2に対して、回転テーブル2の下方側の他の領域の雰囲気(窒素雰囲気)よりも活性化しにくいガスを供給している。また、高真空になる程プラズマが発生しやすくなることから、プラズマ非励起領域S2におけるガス圧力について、前記他の領域や改質領域S1よりも高圧雰囲気となるように、プラズマ阻止用ガスの流量を設定している。更に、高周波電源129の周波数について、プラズマ処理部80における高周波電源85の周波数よりも低くしていることからも、プラズマ非励起領域S2におけるプラズマの発生が阻止される。プラズマ阻止用ガスは、例えば酸素ガス、塩素(Cl2)ガスあるいはフッ素(F2)ガスなどであり、この例では酸素ガスである。
【0034】
バイアス電極部120の下方側には、例えば石英などの絶縁体により構成されると共に概略円板状に形成された封止部材131が配置されている。この封止部材131の外周端は、真空容器1の底面部14とバイアス電極部120の外周端との間において、上方側の絶縁部材122に向かって周方向に亘って起立している。従って、真空容器1に絶縁部材122、バイアス電極部120及び封止部材131を下方側からこの順番で挿入すると共に、この封止部材131を底面部14に対して例えば図示しないボルトなどによって固定すると、真空容器1に対して絶縁部材122が気密に接触する。また、絶縁部材122に対してバイアス電極部120が気密に接触する。更に、封止部材131によって、バイアス電極部120と真空容器1との間が電気的に絶縁される。そして、
図9の下側に拡大して示すように、回転テーブル2の下面側の溝部2a内に絶縁部材122の上面が位置すると共に、回転テーブル2上のウエハWとバイアス電極部120とが面内に亘って平行になる。これら回転テーブル2の下面と絶縁部材122の上面との間の離間寸法tは、例えば0.5mm〜3mmとなる。
図8は、真空容器1を下側から見た平面図を示しており、封止部材131は、アンテナ83が巻回された領域に対応する位置において、当該領域よりも大きくなるように形成されている。尚、
図7では、シール部材123、125については描画を省略している。
【0035】
回転テーブル2の外周側において当該回転テーブル2よりも僅かに下位置には、リング状のサイドリング100が配置されており、このサイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように2箇所に排気口61、62が形成されている。言い換えると、真空容器1の底面部14に2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100に、排気口61、62が形成されている。これら2つの排気口61、62のうち一方及び他方を夫々第1の排気口61及び第2の排気口62と呼ぶと、第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31と、当該第1の処理ガスノズル31よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第2の排気口62は、プラズマ発生用ガスノズル34と、当該プラズマ発生用ガスノズル34よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。
【0036】
第1の排気口61は、第1の処理ガス及び分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、第2の処理ガス及び分離ガスに加えて、プラズマ発生用ガスを排気するためのものである。そして、筐体90の外縁側におけるサイドリング100の上面には、当該筐体90を避けてガスを第2の排気口62に通流させるための溝状のガス流路101が形成されている。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、
図1に示すように、各々バタフライバルブなどの圧力調整部65の介設された排気管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0037】
天板11の下面における中央部には、
図3などに示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域Cにおいて第1の処理ガスと第2の処理ガスとが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されている。このラビリンス構造部110は、回転テーブル2側から天板11側に向かって周方向に亘って垂直に伸びる第1の壁部111と、天板11側から回転テーブル2に向かって周方向に亘って垂直に伸びる第2の壁部112と、を回転テーブル2の半径方向に交互に配置した構成を採っている。
【0038】
真空容器1の側壁には、
図2〜
図4に示すように、図示しない外部の搬送アームと回転テーブル2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。また、この搬送口15を臨む位置における回転テーブル2の下方側には、回転テーブル2の貫通口を介してウエハWを裏面側から持ち上げるための昇降ピン(いずれも図示せず)が設けられている。
【0039】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部200が設けられており、この制御部200のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部201から制御部200内にインストールされる。
【0040】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、ゲートバルブGを開放して、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。各々のウエハWの表面には、
図10に示すように、溝やホールなどからなる凹部10が形成されており、この凹部10のアスペクト比(凹部10の深さ寸法÷凹部10の幅寸法)は、例えば数十から百を超える大きさになっている。次いで、ゲートバルブGを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2を例えば2rpm〜240rpmで時計周りに回転させる。そして、ヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃程度に加熱する。
【0041】
続いて、処理ガスノズル31、32から夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを吐出すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34からプラズマ発生用ガスを吐出する。また、プラズマ非励起領域S2に対して、当該領域S2のガス圧力が改質領域S1よりも陽圧(高圧)となるように、プラズマ阻止用のガスを吐出する。即ち、回転テーブル2と絶縁部材122との間の離間寸法tが極めて小さく、従ってプラズマ非励起領域S2にガスを供給すると、このガスが当該プラズマ非励起領域S2から排出されにくくなるので、このプラズマ非励起領域S2が陽圧となる。このプラズマ阻止用ガスは、回転テーブル2の下方側を通流して排気口62から排気される。
【0042】
また、分離ガスノズル41、42から分離ガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72からも窒素ガスを所定の流量で吐出する。そして、圧力調整部65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整する。また、プラズマ処理部80及びバイアス電極部120に対して夫々高周波電力を供給する。
【0043】
第1の処理領域P1では、
図11に示すように、ウエハWの表面に第1の処理ガスの成分が吸着して吸着層300が生成する。次いで、第2の処理領域P2において、
図12に示すように、ウエハW上の吸着層300が酸化されて、薄膜成分であるシリコン酸化膜(SiO2)の分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物である反応層301が形成される。この反応層301には、例えば第1の処理ガスに含まれる残留基のため、水分(OH基)や有機物などの不純物が残る場合がある。
【0044】
プラズマ処理部80では、高周波電源85から供給される高周波電力により、
図13に模式的に示すように、電界及び磁界が発生する。これら電界及び磁界のうち電界は、ファラデーシールド95により反射あるいは吸収(減衰)されて、真空容器1内への到達が阻害される。一方、磁界は、ファラデーシールド95にスリット97を形成しているので、このスリット97を通過して、筐体90の底面を介して真空容器1内の改質領域S1に到達する。
【0045】
従って、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、磁界によって活性化されて、例えばイオン(アルゴンイオン:Ar
+)やラジカルなどのプラズマが生成する。既述のように、回転テーブル2の半径方向に伸びる帯状体領域を囲むようにアンテナ83を配置していることから、このプラズマは、アンテナ83の下方側において、回転テーブル2の半径方向に伸びるように概略ライン状となる。このプラズマにウエハWが接触すると、反応層301の改質処理が行われることになる。具体的には、プラズマがウエハWの表面に衝突することにより、反応層301から水分や有機物などの不純物が放出されたり、反応層301内の元素の再配列が起こって当該反応層301の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。
【0046】
ここで、バイアス電極部120に対して高周波電源129から高周波電力を供給しているある瞬間を見ると、
図13に示すように、当該バイアス電極部120には負の直流電圧が印加されていると言える。即ち、バイアス電極部120に対して高周波電源129より発生したプラズマから電子が供給されて、当該バイアス電極部120は負に帯電している。そして、既述のようにこれらバイアス電極部120とウエハWとが非接触となっており、また電気的に絶縁されている。また、非励起領域S2では、既述のようにプラズマの発生が阻止されている。そのため、バイアス電極部120の上方側にウエハWが到達すると、バイアス電極部120の負の直流電圧によって、当該ウエハWには静電誘導により厚み方向における電荷の偏りが生じる。即ち、ウエハW内部の電子は、前記負の直流電圧の斥力によって、ウエハWの表面側に移動する。この電子の移動量(ウエハWの表面側の帯電量)は、ウエハWに対してバイアス電極部120の上面が平行となるように配置していることから、ウエハWの面内に亘って揃う。
【0047】
一方、バイアス電極部120に対して高周波電源129から高周波電力を供給している別の瞬間を見ると、当該バイアス電極部120には正の直流電圧が印加されていると言える。そのため、バイアス電極部120に対して、高周波電源129から正の電荷(陽子)が移動しようとする。しかし、既述のように高周波電源129では13.56MHzもの高周波を使用しており、正の直流電圧と負の直流電圧とが高速で切り替わっている。従って、バイアス電極部120に正の直流電圧が印加される時間(高周波電源129から印加される極性が維持される時間)は、1÷(1356万)秒程度と極めて短い。そして、電子と比べて陽子の質量が3桁程度も大きく、従って陽子は電子よりも移動しにくい。そのため、高周波電源129からバイアス電極部120に陽子が到達する前に、当該高周波電源129の極性が切り替わり、一方電子は直ぐにこのバイアス電極部120に到達するため、結果としてバイアス電極部120は、負に帯電したままとなる。
【0048】
従って、ウエハの表面の負の電荷によって、改質領域S1における正のイオン具体的にはアルゴンイオンがウエハW側に引き寄せられるので、当該ウエハWの近傍には高密度のプラズマが形成される。こうして
図14に示すように、既述の凹部10のアスペクト比が大きくても、即ち凹部10の深さ寸法が大きくても、当該凹部10の底面までに亘ってプラズマが進入する。そのため、既述の改質処理は、ウエハWの面内に亘って、且つ凹部10の深さ方向に亘って均等に行われる。その後、回転テーブル2の回転を続けることにより、吸着層300の吸着、反応層301の生成及び反応層301の改質処理がこの順番で多数回に亘って行われて、反応層301が積層されて薄膜が形成される。この薄膜は、面内に亘って、且つ凹部10の深さ方向に亘って緻密で均質な膜質となる。尚、
図13及び
図14では、プラズマ処理部80、バイアス電極部120及びウエハWについて模式的に示している。
【0049】
以上の一連のプロセスを行っている間、筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、各ガスは、筐体90を避けるように、当該ガス流路101を通って排気される。また、筐体90の下端側周縁部に突起部92を設けていることから、当該筐体90内への窒素ガスやオゾンガスの侵入が抑えられる。
【0050】
更に、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に窒素ガスを供給しているので、第1の処理ガスと第2の処理ガス及びプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気される。また、回転テーブル2の下方側にパージガスを供給しているため、回転テーブル2の下方側に拡散しようとするガスは、前記パージガスにより排気口61、62側へと押し戻される。
【0051】
上述の実施の形態によれば、各処理ガスノズル31、32に対して回転テーブル2の回転方向に離間させてプラズマ処理部80を設けると共に、回転テーブル2の下方側にてプラズマ処理部80を臨む位置に、当該回転テーブル2に接触しないようにバイアス電極部120を設けている。そして、このバイアス電極部120にバイアス電圧印加部128からバイアス電圧を印加している。そのため、ウエハWに対して非接触でバイアス電圧を印加できるので、プラズマ(アルゴンイオン)を当該ウエハW側に引き込むことができる。従って、ウエハWの近傍に高密度のプラズマを形成できることから、ウエハWの表面にアスペクト比の大きな凹部10が形成されていても、当該凹部10の深さ方向に亘ってプラズマ改質処理を均等に行うことができ、膜質の均一性に優れた薄膜を形成できる。
【0052】
また、回転テーブル2の下面側に溝部2aを設けると共に、プラズマ非励起領域S2の離間寸法tを極めて小さくすることにより、回転テーブル2上のウエハWに対してバイアス電極部120を近接配置している。そのため、高周波電源129からそれ程大きな電力を供給しなくても、ウエハW側にプラズマを引き込むことができる。更に、ウエハWの近傍に高密度のプラズマを形成できることから、ノズル31、32、41、42などが周方向に配置されている間の狭い領域であっても、良好にプラズマ改質処理を行うことができる。言い換えると、平面で見た時の真空容器1の直径寸法を抑えながら、即ち装置の大型化を抑えながら、反応層301の成膜処理と共に当該反応層301のプラズマ改質処理を行うことができる。従って、本発明は、既述の凹部10が形成されているウエハWだけでなく、このような凹部10が形成されていない平坦なウエハWに対しても適用できる。
【0053】
ここで、以上説明した成膜の他の例について説明する。
図15及び
図16は、回転テーブル2の下面側に溝部2aを設けずに、各々の凹部24の下方側における当該回転テーブル2の内部に、板状の補助電極部140を配置した例を示している。各々の補助電極部140は、平面で見た時に凹部24よりも一回り大きく形成されると共に、補助電極部140の中心位置が当該凹部24の中心位置と揃うように配置されている。具体的には、補助電極部140は、平面で見た時にウエハWの直径寸法(300mm)よりも10mm〜50mm程度大きい寸法となるように形成されている。補助電極部140は、回転テーブル2が絶縁体により構成されていることから、バイアス電極部120及び当該回転テーブル2上のウエハWに対して各々電気的に絶縁されている。補助電極部140の厚み寸法dは、例えば0.5mm〜10mmとなっている。また、補助電極部140は、カーボン(C)などの導電材により構成されている。回転テーブル2の下面と絶縁部材122の上面との間の離間寸法は、例えば0.5mm〜5mm程度となっている。
【0054】
このように補助電極部140を設けると、
図17に模式的に示すように、バイアス電極部120と補助電極部140との間で静電誘導が起こる。具体的には、補助電極部140の下面側には正の電荷が偏析すると共に、当該補助電極部140の上面側には負の電荷が偏析する。従って、この補助電極部140とウエハWとの間においても静電誘導が同様に起こり、ウエハWの表面側には負の電荷が偏析する。そのため、既述の例と同様にウエハW側にプラズマ(アルゴンイオン)を引き寄せることができるので、補助電極部140の厚み寸法の分だけバイアス電極部120とウエハWとをいわば近接させることができると言える。従って、補助電極部140を設けない場合と比べて、あるいはバイアス電極部120とウエハWとを大きく離間させる場合と比べて、バイアス電極部120に対して高周波電源129からそれ程大きな電力値を供給せずに済む。また、回転テーブル2に溝部2aを設けずに済むため、当該溝部2aを設けた場合と比べて、回転テーブル2の強度が向上する。
【0055】
このような補助電極部140としては、各々の凹部24の下方側に設けることに代えて、既述の溝部2aと同様に、これら凹部24の下方位置を跨ぐように回転テーブル2の回転方向に沿ってリング状に形成しても良い。また、補助電極部140は、回転テーブル2上のウエハWとバイアス電極部120との間に設けていれば良く、回転テーブル2に埋設することに代えて、
図18に示すように、凹部24内に配置しても良い。この場合には、ウエハWは、凹部24内において補助電極部140の上方側に積層される。更に、補助電極部140としては、回転テーブル2の下面側に貼設しても良い。尚、この補助電極部140を回転テーブル2に設けると共に、当該回転テーブル2の下面側に溝部2aを形成しても良い。
【0056】
また、真空容器1に対してバイアス電極部120を電気的に絶縁するために、当該真空容器1とバイアス電極部120との間に絶縁部材122を配置したが、
図19に示すように、回転テーブル2とバイアス電極部120との間にはこの絶縁部材122が配置されないようにしても良い。具体的には、真空容器1の底面部14とバイアス電極部120の下端側周縁部との間に、当該バイアス電極部120を囲むようにリング状に形成された絶縁部材122を配置しても良い。回転テーブル2とバイアス電極部120との間の寸法は、既述の離間寸法tと同じ寸法に設定される。この場合には、絶縁部材122の厚み寸法の分だけ回転テーブル2に対してバイアス電極部120を近接させることができるので、高周波電源129からバイアス電極部120に供給する電力値を抑えることができる。
【0057】
更に、バイアス電極部120について、概略円筒状に形成することに代えて、板状に形成しても良い。この場合には、
図20に示すように、バイアス電極部120を下方側から支持するための突起状の支持部142を例えば絶縁部材122の内部領域に周方向に沿って複数箇所に設けて、これら支持部142と絶縁部材122の上面との間にバイアス電極部120を配置しても良い。バイアス電極部120を板状に形成することにより、既述の効果に加えて以下の効果が得られる。
【0058】
即ち、バイアス電極部120に高周波電源129から高周波電力を供給すると、当該バイアス電極部120とウエハWとの間だけでなく、バイアス電極部120と例えば真空容器1の側壁部との間で静電誘導が起ころうとする。従って、バイアス電極部120に供給した電力の一部がいわば無駄になってしまう。そこで、バイアス電極部120を板状に形成することにより、言い換えるとバイアス電極部120の周囲における導電部材(真空容器1の側壁部や底面部14などの各部材やウエハW)のうちウエハWに対してだけ対向面部を設けることにより、エネルギー損失を抑制できる。
図20中500は、バイアス電極部120と絶縁部材122との間をシールするためのO−リングなどのシール部材である。
【0059】
更にまた、
図21に示すように、回転テーブル2を導電部材例えば炭化シリコン(SiC)などにより構成しても良い。この場合には、回転テーブル2がバイアス電極部120及び真空容器1に対して電気的に絶縁されるように、バイアス電極部120が回転テーブル2の下方側に離間して配置されると共に、コア部21が例えばセラミックスや石英などの絶縁体により構成される。このように回転テーブル2を導電部材により構成すると、バイアス電圧は、回転テーブル2全体に印加されて、ウエハWに伝達される。
【0060】
また、ウエハWに対して非接触でバイアス電圧を印加するバイアス電極部120を設けることに代えて、
図22に示すように、回転テーブル2に直接バイアス電圧を印加しても良い。具体的には、回転テーブル2、コア部21及び回転軸22が各々導電部材により構成されており、この回転軸22の下方側には、スリップリング機構150が設けられている。即ち、回転軸22と駆動部23との間には、回転軸22と共に鉛直軸周りに回転自在の導電軸151が配置されており、この導電軸151は、外周面が被給電面として構成されている。そして、この導電軸151の外周面に対して摺動しながら給電するために、回転軸22に沿って上下方向に伸びる給電部材152が当該回転軸22に隣接配置されており、この給電部材152は、下端部がケース体20により支持されている。また、給電部材152の上端部は、導電体により構成されると共に、バイアス電圧印加部128(高周波電源129)が接続されており、導電軸151側には同様に導電体からなるブラシなどの摺動給電部153が設けられている。
図22中154は、給電部材152及び駆動部23とケース体20との間に設けられた絶縁体である。
【0061】
この構成の装置においては、鉛直軸周りに回転する導電軸151に対して、摺動給電部153が摺動しながらバイアス電圧印加部128から給電すると、回転軸22、コア部21及び回転テーブル2を介して、ウエハWにバイアス電圧が印加される。尚、
図21及び
図22のように、回転テーブル2の全体に対してバイアス電圧を印加すると、プラズマ処理部80の下方領域だけでなく各領域P1、P2、Dの下方側のウエハWに対してもバイアス電圧が印加される。そのため、高周波電源129から過剰な電力を供給していると言えることから、既述のようにウエハWに対して非接触でバイアス電圧を印加することが好ましい。
【0062】
また、プラズマ非励起領域S2に対してプラズマ阻止用ガスを供給するにあたって、
図23に示すように、バイアス電極部120の上面側に、ガス供給路127に連通すると共に回転テーブル2の半径方向に伸びるスリット状の窪み150を設けても良い。この場合には、この窪み150に沿うように、既述のガス吐出口124を複数箇所に形成しても良い。
【0063】
更に、プラズマ阻止用ガスとしては、バイアス電極部120の下方側からガス吐出口124を介して供給することに代えて、
図24に示すように、真空容器1の側壁から中心部領域Cに向かって水平に伸びるプラズマ阻止用ガスノズル510を設けても良い。このプラズマ阻止用ガスノズル510は、バイアス電極部120よりも回転テーブル2の回転方向上流側の位置において、回転テーブル2の下面よりも僅かに下位置に配置される。この場合には、プラズマ阻止用ガスは、回転テーブル2の半径方向に亘って、既述のプラズマ非励起領域S2に対して供給される。
【0064】
このプラズマ阻止用ガスノズル510を設ける場合には、当該プラズマ阻止用ガスノズル510から吐出するガスが前記プラズマ非励起領域S2を経由して排気口62に向かうように、即ちノズル510から直接排気口62に向かうことを抑えるようにしても良い。具体的には、ノズル510の下方側において当該ノズル510の長さ方向に亘って伸びる板状のガス流規制部材(図示せず)を配置する。そして、このガス流規制部材を回転テーブル2の回転方向下流側に向かって延伸させて、この延伸部分に絶縁部材122よりも一回り大きな開口部を形成して、この開口部内に絶縁部材122を配置(収納)する。また、ガス流規制部材におけるノズル510よりも回転テーブル2の回転方向上流側の部位、中心部領域C側の部位及び真空容器1の側壁側の部位を回転テーブル2に向かって夫々上方側に屈曲させて、ノズル510から吐出するガスがガス流規制部材に沿って絶縁部材122に向かって下流側に通流するように構成する。更に、前記延伸部分の上面について、絶縁部材122におけるノズル510に対向する部位以外の領域(回転テーブル2の回転方向下流側、中心部領域C側及び真空容器1の側壁側)が回転テーブル2の下面に近接するように形成する。こうしてノズル510から吐出するガスは、前記延伸部分と絶縁部材122との間のごく小さな隙間領域と、非励起領域S2とを通流することになる。従って、ノズル510におけるガス吐出孔33は、回転テーブル2の回転方向上流側あるいは下流側を向くように形成される。
【0065】
更に、平面で見た時に、バイアス電極部120をアンテナ83の配置領域に対応するように楕円形状に形成することに代えて、
図25に示すように、例えば当該配置領域を跨ぐように円状にしても良い。また、バイアス電極部120と共にアンテナ83を円状に巻回しても良いし、あるいはバイアス電極部120を円状に形成すると共にアンテナ83を凸状部4と同様に概略扇状に巻回しても良い。尚、
図25は、真空容器1を下方側から見た平面図を示している。
【0066】
更にまた、以上述べた各例では、プラズマ処理部80としてアンテナ83を巻回して誘導結合型のプラズマ(ICP:Inductively coupled plasma)を発生させたが、容量結合型のプラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を発生させるようにしても良い。この場合には、
図26に示すように、プラズマ発生用ガスノズル34に対して回転テーブル2の回転方向下流側に、一対の電極160、160が平行電極として配置される。これら電極160、160は、真空容器1の側壁から気密に挿入されており、電極160、160間においてプラズマ発生用ガスがプラズマ化される。
図26中161は、これら電極160、160における真空容器1の側壁側の基端部に設けられた支持部である。
【0067】
以上の各例では、バイアス電圧印加部128として高周波電源129を例に挙げたが、この高周波電源129に代えて、負の直流電圧を印加する直流電源部を設けても良い。更に、プラズマ改質に用いるプラズマの電荷が負の場合には、回転テーブル2上のウエハWに対して正のバイアス電圧を印加しても良い。
【0068】
回転テーブル2と絶縁部材122あるいはバイアス電極部120との間の離間寸法tは、大きすぎるとプラズマをウエハW側に引き込むために必要な電力値が大きくなりすぎ、一方小さすぎるとこれら回転テーブル2と絶縁部材122やバイアス電極部120とが衝突するおそれがあることから、既述の範囲内に設定することが好ましい。
【0069】
以上説明したシリコン酸化膜を成膜するにあたって用いる第1の処理ガスとしては、以下の表1の化合物を用いても良い。尚、以下の各表において、「原料Aエリア」とは、第1の処理領域P1を示しており、「原料Bエリア」とは、第2の処理領域P2を示している。また、以下の各ガスは一例であり、既に説明したガスについても併せて記載している。
【0071】
また、表1の第1の処理ガスを酸化するための第2の処理ガスとしては、表2の化合物を用いても良い。
(表2)
尚、この表2における「プラズマ+O2」や「プラズマ+O3」とは、例えば第2の処理ガスノズル32の上方側に既述のプラズマ処理部80を設けて、これら酸素ガスやオゾンガスをプラズマ化して用いることを意味している。
【0072】
また、既述の表1の化合物を第1の処理ガスとして用いると共に、表3の化合物からなるガスを第2の処理ガスとして用いて、シリコン窒化膜(SiN膜)を形成しても良い。
(表3)
尚、この表3における「プラズマ」についても、表2と同様に「プラズマ」の用語に続く各ガスをプラズマ化して用いることを意味している。
【0073】
更に、第1の処理ガス及び第2の処理ガスとして表4の化合物からなるガスを各々用いて、炭化シリコン(SiC)膜を成膜しても良い。
(表4)
【0074】
更にまた、上に挙げた表4の第1の処理ガスを用いて、シリコン膜(Si膜)を成膜しても良い。即ち、
図27に示すように、この場合には第2の処理ガスノズル32が設けられておらず、回転テーブル2上のウエハWは、第1の処理領域(成膜領域)P1と改質領域S1とを分離領域Dを介して交互に通過することになる。そして、第1の処理領域P1においてウエハWの表面に第1の処理ガスの成分が吸着して吸着層300が形成されると、回転テーブル2によって回転する間に、ヒータユニット7の熱によってウエハWの表面にて吸着層300が熱分解を起こして水素や塩素などの不純物が脱離していく。従って、吸着層300の熱分解反応によって反応層301が形成されていく。
【0075】
しかしながら、回転テーブル2が鉛直軸周りに回転していることから、回転テーブル2上のウエハWが第1の処理領域P1を通過した後、改質領域S1に至るまでの時間、即ち吸着層300から不純物を排出するための時間は極めて短い。そのため、改質領域S1に到達する直前のウエハWの反応層301には、依然として不純物が含まれている。そこで、改質領域S1において例えばアルゴンガスのプラズマをウエハWに供給することにより、反応層301から不純物が除去されて、良好な膜質の反応層301が得られる。こうして領域P1、S1を交互に通過させることにより、反応層301が多層積層されてシリコン膜が成膜される。従って、本発明において「プラズマ改質処理」とは、反応層301から不純物を除去して当該反応層301の改質を行う処理の他に、吸着層300を反応(熱分解反応)させるための処理も含まれる。
シリコン膜のプラズマ処理に用いるプラズマ発生用ガスとしては、ウエハWに対してイオンのエネルギーを与えるプラズマを発生させるガスが用いられ、具体的には既述のアルゴンガスの他に、ヘリウム(He)ガスなどの希ガスあるいは水素ガスなどが用いられる。
【0076】
また、シリコン膜を形成する場合には、第2の処理ガスとして表5のドープ材を用いて、ホウ素(B)やリン(P)を当該シリコン膜にドープしても良い。
(表5)
【0077】
また、以下の表6に示す化合物からなるガスを第1の処理ガスとして用いると共に、既述の第2の処理ガスを用いることにより、金属酸化膜、金属窒化膜、金属炭化膜あるいはHigh−k膜(高誘電率膜)を形成しても良い。
(表6)
【0078】
また、プラズマ改質用ガスあるいは当該プラズマ改質用ガスと共に用いるプラズマイオン注入ガスとしては、以下の表7の化合物からなるガスのプラズマを用いても良い。
(表7)
尚、この表7において、酸素元素(O)を含むプラズマ、窒素元素(N)を含むプラズマ及び炭素元素(C)を含むプラズマについては、酸化膜、窒化膜及び炭化膜を成膜するプロセスだけに夫々用いても良い。
【0079】
また、以上説明したプラズマ改質処理は、回転テーブル2が回転する度に、即ち反応層301を成膜する度に行ったが、例えば10〜100層の反応層301を積層する度に行っても良い。この場合には、成膜開始時には高周波電源85、129への給電を停止しておき、回転テーブル2を反応層301の積層数分だけ回転させた後、ノズル31、32へのガスの供給を停止すると共に、これら高周波電源85、129に対して給電してプラズマ改質を行う。その後、再度反応層301の積層とプラズマ改質とを繰り返す。更にまた、既に薄膜が形成されたウエハWに対してプラズマ改質処理を行っても良い。この場合には、真空容器1内には、各ガスノズル31、32、41、42は設けられずに、プラズマ発生用ガスノズル34、回転テーブル2及びバイアス電極部120などが配置される。このように真空容器1内でプラズマ改質処理だけを行う場合であっても、バイアス電極部120によって凹部10内にプラズマ(イオン)を引き込むことができるので、当該凹部10の深さ方向に亘って均一なプラズマ改質処理を行うことができる。
【0080】
更にまた、ウエハWに対して行うプラズマ処理としては、改質処理に代えて、処理ガスの活性化を行っても良い。具体的には、既述の第2の処理ガスノズル32にプラズマ処理部80を組み合わせると共に、当該ノズル32の下方側にバイアス電極部120を配置しても良い。この場合には、ノズル32から吐出する処理ガス(酸素ガス)がプラズマ処理部80にて活性化されてプラズマが生成し、このプラズマがウエハW側に引き込まれる。従って、凹部10の深さ方向に亘って、反応層301の膜厚や膜質を揃えることができる。
【0081】
このように処理ガスをプラズマ化する場合であっても、処理ガスのプラズマ化と共に、既述のプラズマ改質処理を行っても良い。また、処理ガスをプラズマ化する具体的なプロセスとしては、既述のSi−O系の薄膜の成膜以外にも、例えばSi−N(窒化シリコン)系の薄膜に適用しても良い。このSi−N系の薄膜を成膜する場合には、第2の処理ガスとして窒素(N)を含むガス例えばアンモニア(NH3)ガスが用いられる。
【0082】
ここで、既述の補助電極部140の配置レイアウトについて、回転テーブル2が置かれる雰囲気や当該回転テーブル2の耐圧強度と共に説明を加えておく。既述の
図15のように回転テーブル2に補助電極部140を埋設するにあたり、当該回転テーブル2(石英)と補助電極部140(カーボンや銅などの導電体)とでは熱膨張収縮率が互いに異なる。従って、補助電極部140は、
図28に示すように、実際には当該補助電極部140が埋設される回転テーブル2の内部領域210よりも一回り小さくなるように形成されている。即ち、これら補助電極部140と回転テーブル2との間に隙間領域を設けておかないと、真空容器1の昇降温を行う時、補助電極部140や回転テーブル2の熱膨張収縮によってこれら補助電極部140及び回転テーブル2の少なくとも一方が破損してしまうおそれがある。そこで、補助電極部140と回転テーブル2との間には、隙間領域が形成されている。
【0083】
具体的に回転テーブル2の製造方法について説明すると、
図28では、回転テーブル2は、例えば既述の内部領域210をなす窪み部分2bが上面側に形成された円板型の下側部材2cと、同様に円板型に形成された上側部材2dとにより構成されている。そして、窪み部分2bの内部に補助電極部140を配置すると共に、これら部材2c、2dを互いに溶接することにより、回転テーブル2が形成される。
【0084】
従って、例えば大気雰囲気にて前記溶接を行うと、内部領域210は大気雰囲気となる。このように内部領域210が大気雰囲気に設定された回転テーブル2を真空容器1内に配置すると共に、当該真空容器1を既述の成膜圧力(真空雰囲気)に設定すると、回転テーブル2の外側(真空容器1の内部)と当該回転テーブル2の内部領域210との間において大きな圧力差が生じる。そのため、回転テーブル2の厚み寸法(板厚寸法)jについて、このような圧力差によって当該回転テーブル2が破損しないように、即ち回転テーブル2が前記圧力差で生じる応力に耐えるように、ある程度厚めに設定しておく必要がある。
【0085】
一方、回転テーブル2の溶接を真空雰囲気にて行うと、内部領域210は真空雰囲気となる。この場合には、成膜雰囲気では真空容器1内と内部領域210との間では大きな圧力差は生じないが、例えば装置のメンテナンスを行う時などにおいて、真空容器1内は大気雰囲気に戻される。そのため、真空容器1内が大気雰囲気に設定される時には、回転テーブル2の内部領域210と当該回転テーブル2の外側とにおいて大きな圧力差が生じる。
【0086】
そのため、回転テーブル2に補助電極部140を埋設するのであれば、内部領域210を大気雰囲気及び真空雰囲気のいずれに設定したとしても、回転テーブル2を中実に構成する場合と比べて、当該回転テーブル2の厚み寸法jをある程度厚めに設定せざるを得ない。従って、回転テーブル2上のウエハWに対して、バイアス電極部120を電気的に近づけるという補助電極部140の目的からすると、
図28のように回転テーブル2を形成することはあまり得策ではないと言える。
【0087】
そこで、以下に述べる各例では、回転テーブル2上のウエハWとバイアス電極部120との間に補助電極部140を設けながら、更には回転テーブル2の耐圧強度を確保しながら、当該回転テーブル2の厚み寸法jを例えば5mm〜20mmもの小さい寸法に抑えている。具体的には、
図29及び
図30に示すように、回転テーブル2の表面における各ウエハWが載置される部位(既述の凹部24の形成領域)の各々に、ウエハWや補助電極部140の厚み寸法よりも深い寸法の凹部600を形成する。そして、各々の凹部600の底面に、例えば石英などからなるピン状の突起部601を支柱として複数箇所に配置する。この例では、平面で見た時に凹部600の中央部に突起部601を一つ配置すると共に、当該突起部601を周方向に亘って囲むように例えば9箇所に突起部601を配置している。各々の突起部601の高さ寸法は、補助電極部140の厚み寸法dよりも大きくなるように、且つこれら突起部601間で揃うように設定する。
【0088】
また、補助電極部140に各突起部601が貫挿されるように、各突起部601の配置レイアウトに対応するように当該補助電極部140を上下に貫通する貫通口602を複数箇所この例では10箇所に形成する。更に、この補助電極部140の上方側に、例えば石英などからなる円板状の蓋体603を配置すると共に、ウエハWを収納する凹部24を当該蓋体603の表面に形成する。こうして凹部600の内部に補助電極部140及び蓋体603をこの順番で収納すると共に、回転テーブル2と蓋体603とを例えば真空雰囲気あるいは大気雰囲気にて互いに例えば溶接すると、蓋体603の下面部が各々の突起部601により支持される。従って、このように回転テーブル2を構成すると、回転テーブル2の耐圧強度を確保しつつ、回転テーブル2の厚み寸法jを小さくしながら、当該回転テーブル2に補助電極部140を埋設できる。尚、蓋体603と回転テーブル2とを互いに溶接することに加えて、蓋体603と突起部601の各々とを互いに溶接しても良い。また、補助電極部140に突起部601が貫通する貫通口602を設けることに代えて、当該補助電極部140を導電体からなる複数の部材(例えば金属片や金属粉末など)により構成して、互いに隣接する部材間に突起部601を配置しても良い。
【0089】
図31は、回転テーブル2に突起部601を設けることに代えて、内部領域210と回転テーブル2の外部例えば回転テーブル2の側面側の領域とを互いに連通させる通気路610を形成した例を示している。即ち、既述の
図28で説明したように、内部領域210を気密に構成すると共に、当該内部領域210と回転テーブル2の外部の領域との間で圧力差が生じる場合には、この圧力差に応じて回転テーブル2に応力が加わる。
【0090】
そこで、
図31では、前記圧力差が生じないように、あるいは圧力差がそれ程大きくならないようにしている。具体的には、通気路610の一端側は、内部領域210の内面のうち補助電極部140が接触しない部位例えば側周面における上端側の位置にて開口している。そして、通気路610の他端側は、内部領域210へのガスの回り込みを抑えるために、既述のように回転テーブル2の側壁面にて開口している。この通気路610の開口径は、例えば直径寸法が1.5mm以下となっている。尚、通気路610について、回転テーブル2の下面側にて開口させても良い。
【0091】
従って、このように構成された回転テーブル2を用いてウエハWの成膜処理を行う場合には、真空容器1内を真空雰囲気に設定すると、通気路610を介して内部領域210内の雰囲気が排気される。一方、メンテナンスなどを行う時に真空容器1内が大気雰囲気に戻されると、通気路610を介して真空容器1の外部の雰囲気が内部領域210に流入する。こうして内部領域210の内外での圧力差の発生が抑制されるので、回転テーブル2の耐圧強度を確保しながら、当該回転テーブル2の厚み寸法jを小さくすると共に、回転テーブル2に補助電極部140を埋設できる。通気路610の他端側については、回転テーブル2の側周面にて開口させても良い。このような通気路610を設けるにあたり、この通気路610と共に既述の突起部601を配置しても良い。
【0092】
また、
図32は、補助電極部140を回転テーブル2に埋設することに代えて、当該回転テーブル2の下面側にて熱膨張収縮自在に配置した例を示している。具体的には、回転テーブル2における各々の凹部24の下方側の部位は、上方側に向かって例えば円形状に窪んで収納部615をなしており、この収納部615に補助電極部140が下方側から収納されている。この補助電極部140の上面側周縁部は、周方向に亘って外側に向かって水平に伸び出してフランジ部617をなしている。また、補助電極部140の外側には、例えば石英により構成された概略環状の抑え部材616が配置されており、補助電極部140の外周側における回転テーブル2の下面部は、この抑え部材616が入り込めるように、当該補助電極部140の周方向に沿って環状に窪んでいる。そして、
図33に示すように、収納部615に補助電極部140を収納すると共に、抑え部材616とフランジ部617及び回転テーブル2とを互いに例えば溶接することにより、補助電極部140が回転テーブル2に一体的に配置される。
【0093】
更に、
図34は、既述のように補助電極部140を回転テーブル2の下面側に配置するにあたり、補助電極部140について、例えば石英などの誘電体や絶縁体などからなる本体部材621と、当該本体部材621の外面に沿って形成された電極膜622とにより構成した例を示している。即ち、本体部材621は、電極膜622によって被覆されている。この場合であっても、電極膜622を介してウエハWにバイアス電圧が印加されるので、既述の各例と同様の効果が得られる。
【0094】
このように本体部材621の表面に電極膜622を形成する場合には、当該本体部材621の上面側(ウエハW側における本体部材621の表面)だけに形成しても良い。また、以上の
図32〜
図34のように補助電極部140あるいは電極膜622が真空容器1内にて露出しないように、
図35に示すように、これら補助電極部140や電極膜622の下方側に石英などからなる絶縁板623を配置しても良い。
【0095】
ここで、
図36〜
図38は、既述の
図32〜
図34のように回転テーブル2の下面側に補助電極部140を配置した場合において、回転テーブル2の厚み寸法jを既に説明した値に設定した時、回転テーブル2に加わる負荷(応力)をシミュレーションした結果を示している。このシミュレーションでは、回転テーブル2の回転数を300rpmに設定すると共に、ウエハWの加熱温度を600℃に設定した。
【0096】
その結果、回転テーブル2の上面側(
図36、
図37)及び裏面側(
図38)のいずれについても、回転テーブル2に加わる応力は、最大でも2.8MPa程度であり、石英の耐圧強度である50MPaを大きく下回っていた。尚、
図37は、
図36において応力が最も大きくなっていた部位(回転テーブル2の外周側)を拡大している。
【0097】
また、
図32〜
図34における補助電極部140は、少なくとも表面が導電体により構成されていて、当該回転テーブル2の上方側にて各ガスが供給される領域と回転テーブル2の下方側の領域を介して接触している。従って、例えば装置のクリーニングを行う時、例えばノズル43から供給されるクリーニングガス(例えばフッ素(F2)ガス、塩素(Cl2)ガスあるいはフッ素及び塩素を含むガス(ClF3)など)が回転テーブル2の側周面を回り込んで補助電極部140に接触すると、当該補助電極部140が浸食されるおそれがある。そこで、以下のように、クリーニングガスが補助電極部140側に回り込むか否かについてもシミュレーションを行った。
【0098】
具体的には、ヒータユニット7に積層された覆い部材7aや絶縁部材122の上方側1mmにおけるクリーニングガス濃度についてシミュレーションを行った。このシミュレーションにおいて、分離ガスノズル41からクリーニングガスを1slmにて真空容器1内に供給すると共に、他のガスについては種々の流量に設定した窒素ガスを用いるものとした。また、回転テーブル2の回転数については、5rpm(
図39(a))、20rpm(
図39(b))、60rpm(
図39(c))及び120rpm(
図39(d))に設定すると共に、いずれの例についても反時計周りに回転テーブル2を回転させるものとした。また、覆い部材7aや絶縁部材122と回転テーブル2との間の領域における隙間寸法を3mm以下に設定すると共に、当該領域に対して13slm程度のガス(例えば窒素ガス)をガス吐出口124から供給するものとした。それ以外のシミュレーション条件については各例で同じ条件を用いた。
その結果、
図39に示すように、回転テーブル2の回転数をいずれの例のように設定しても、補助電極部140へのクリーニングガスの回り込みが確認されなかった。
【0099】
更に、
図40は、
図39と同様に、回転テーブル2の回転数を5rpm(
図40(a))、20rpm(
図40(b))、60rpm(
図40(c))及び120rpm(
図40(d))に設定すると共に、回転テーブル2の上方側1mmの位置におけるクリーニングガスの濃度分布をシミュレーションした結果を示している。更にまた、
図41は、回転テーブル2の回転数を5rpm(
図41(a))、20rpm(
図41(b))、60rpm(
図41(c))及び120rpm(
図41(d))に設定すると共に、ノズルカバー31aの上方側1mm(回転テーブル2の上方側7mm)の位置におけるクリーニングガスの濃度分布をシミュレーションした結果を示している。これら
図40及び
図41のいずれの例についても、クリーニングガスは分離ガスノズル41の近傍位置に拡散している。従って、クリーニングガスは、補助電極部140へは向かわずに排気口61、62に向かって速やかに排気されると考えられる。
【0100】
以上述べたように、回転テーブル2上のウエハWとバイアス電極部120との間に補助電極部140を設けるにあたり、当該回転テーブル2に埋設することに代えて、
図42に示すように、回転テーブル2の下面側に金属膜625を例えばスパッタなどにより成膜しても良い。
【0101】
また、回転テーブル2の下面側に補助電極部140を形成するにあたり、回転テーブル2の上方側から落とし込むようにしても良い。具体的には、
図43及び
図44に示すように、回転テーブル2におけるウエハWが載置される領域に、平面で見た時にウエハWの直径寸法よりも大きな寸法の貫通口631を各々形成する。そして、この貫通口631に補助電極部140を落とし込み、当該補助電極部140の外周縁と貫通口631の内周縁とを互いに係止させる。また、例えば石英からなる円板型の板状体632について、平面で見た時に補助電極部140よりも一回り大きくなるように形成すると共に、ウエハWを載置するための凹部24を当該板状体632の表面に形成する。次いで、板状体632を補助電極部140の上方側に積層すると共に、板状体632の外周縁と補助電極部140の上方側における貫通口631の内周端と互いに係止させる。こうして
図43の下側に拡大して示すように、板状体632の上面と回転テーブル2の上面との高さ位置が互いに揃う。このような例についても、既述の各例と同様の効果が得られる。
【0102】
図44における633は、回転テーブル2に対して補助電極部140や板状体632の位置決め及び滑り止めを行うためのピンであり、補助電極部140や板状体632における周縁部においてピン633に対応する位置に形成された切り欠き部644と夫々互いに係止するように構成されている。即ち、ウエハWに対して成膜処理を行うにあたり、回転テーブル2が鉛直軸周りに回転すると共に、回転テーブル2上のウエハWが回転テーブル2に形成された図示しない貫通口を介して昇降ピンによって昇降する。そのため、回転テーブル2に対して補助電極部140や板状体632からなる部材が位置ずれしないようにしておかないと、回転テーブル2と前記部材とが摺動したり、あるいはウエハWの昇降動作ができなくなったりするおそれがある。そこで、補助電極部140及び板状体632が回転テーブル2に対して摺動や位置ずれしないように、これらピン633及び切り欠き部644を位置決め機構として形成している。尚、このような位置決め機構は、既述の
図15、
図28及び
図31〜
図35の補助電極部140についても設けられている。また、
図44では、回転テーブル2の一部を切り欠いて描画している。
【0103】
図45〜
図47は、
図43〜
図44のように補助電極部140を配置した場合について、既述の例と同様に回転テーブル2に加わる応力をシミュレーションした結果を示している。回転テーブル2の表面側(
図45及び
図46)及び裏面側(
図47)のいずれについても、回転テーブル2の厚み寸法jを既述のように設定しても、当該回転テーブル2には石英の耐圧強度を超える応力が加わらないことが分かった。具体的には、このシミュレーションでは、回転テーブル2に加わる応力の最大値は7.8MPaとなっていた。尚、
図46は、
図45における回転テーブル2の外周縁付近を拡大している。
【0104】
ここで、バイアス電極部120の配置場所や回転テーブル2を構成する材料の好ましい例について説明する。バイアス電極部120と、真空容器1内におけるプラズマとの間では、以上の説明から分かるように静電容量が形成される。具体的には、これらバイアス電極部120とプラズマとの間には、プラズマのシースの容量Cp、回転テーブル2の容量Ct及び回転テーブル2とバイアス電極部120との間の隙間領域により形成される容量Csが介在している。従って、バイアス電極部120に対してある任意の値の高周波電力を供給した時、プラズマをウエハW側に引き込もうとする力をできるだけ強くするためには、容量Ctと容量Csとの合成容量をなるべく大きくすることが好ましい。即ち、前記容量Ct、Csを構成する部位には大きな電圧が加わらないように構成することが好ましい。静電容量は、一般的に以下の式(1)で表される。
C1=ε×S÷k ・・・・(1)
C1:コンデンサの容量値、ε:誘電率、S:コンデンサの表面積、k:コンデンサを構成する一対の対向電極間の距離
【0105】
従って、大きな容量値C1を得たい場合には、距離kを小さく、誘電率εを大きくすれば良いことが分かる。各容量値Ct、Csに対応させて具体的に説明すると、回転テーブル2については、板厚寸法をなるべく薄くすると共に、誘電率の高い材料(例えば水晶、アルミナ(Al2O3)、あるいは窒化アルミ(AlN)などの誘電体)により構成することが好ましい。回転テーブル2とバイアス電120との間の領域については、当該領域の離間寸法をできるだけ小さく、即ち回転テーブル2に対してバイアス電極120をできるだけ近接させることが好ましい。従って、既述の絶縁部材122についても板厚寸法を薄くすることが好ましい。また、回転テーブル2とバイアス電極120との間の領域(非励起領域S2)に対して誘電率の大きなガスを供給したり、当該領域の圧力を調整することによって誘電率を大きくしたりしても良い。具体的には、回転テーブル2の下面側に対して誘電率の大きなガスを供給する場合には、前記領域の圧力は高い方が好ましい。一方、回転テーブル2の下面側に対して誘電率の小さなガスを供給する場合には、前記領域の圧力は低い方が好ましい。
【0106】
ここで、回転テーブル2の板厚寸法を薄くするにあたり、実際の板厚寸法を薄くすると、当該回転テーブル2の強度が弱くなってしまう。そこで、既に詳述したように、回転テーブル2の内部に補助電極部140を配置して、電気的に見た時の板厚寸法を薄くすることが好ましい。この補助電極部140を構成する材質としては、例えば銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミ(Al)、カーボン(C)、シリコン(Si)などからなる導電材(金属からなる導電体や半導体)の少なくとも1種類が挙げられる。
【0107】
補助電極部140の形状としては、回転テーブル2とバイアス電極120との間における異常放電(プラズマ)の発生を抑制するために、当該補助電極部140の側周面に階段状の段部700を周方向に沿って形成すると共に、この段部700を上下方向に複数箇所に設けることが好ましい。即ち、補助電極部140の側周面について、垂直面が上下方向に亘って連続的に長く形成されていると、異常放電が発生しやすくなってしまう。そこで、前記垂直面がいわば間欠的に形成されるように、
図48に示すように、互いに上下に隣接する垂直面同士の間に段部700を形成することが好ましい。
【0108】
従って、補助電極部140は、上側から下側に向かって縮径する概略円錐形状の導電部材について、高さ方向におけるある位置にて水平方向に切断すると共に、当該位置よりも上側の部位(直径寸法の大きい部位)となっている。そして、この補助電極部140が埋設される回転テーブル2の内部領域210の内壁面は、この補助電極部140に対して隙間領域を介して対向すると共に、当該補助電極部140の外周面に沿うように、同様に上側から下側に向かって階段状に縮径している。このように補助電極部140に段部700を形成することにより、回転テーブル2とバイアス電極120との間で電界が形成される領域について、平面で見た時の面積が小さくなるので、この点からも異常放電が起こりにくくなる。
【0109】
既述のバイアス電極120は、平面で見た時に補助電極部140の下面部と重なり合う位置において、当該下面部と大きさが揃うように形成されている。
図48中701は、補助電極部140が収納される内部領域210の上端面を塞ぐと共にウエハWの載置領域(凹部24)を形成するための蓋体である。
このように補助電極部140の外周面を上側から下側に向かって縮径するように構成するにあたり、当該外周面に複数の段部700を形成することに代えて、この外周面が上側から下側に向かって直線的に縮径するようにテーパー状に形成しても良い。
【0110】
更に、
図49は、補助電極部140について、内部領域210における上方側に配置された上側電極板705と、当該上側電極板705に対して下方側に離間するように配置された下側電極板706とにより構成した例を示している。これら電極板705、706は、例えばウエハWの外縁と同心円状となるように各々形成されている。また、回転テーブル2の回転方向から見た時における上側電極板705の水平方向の長さ寸法L1は、ウエハWの長さ寸法(300mm)と同じかそれ以上となるように設定されている。そして、回転テーブル2の回転方向から見た時における下側電極板706の長さ寸法L2は、前記長さ寸法L1よりも短くなるように形成されている。バイアス電極120は、平面で見た時に、この下側電極板706と重なり合うように、且つ当該バイアス電極120の大きさが下側電極板706の大きさと揃うように形成されている。
【0111】
また、これら電極板705、706の間には、電極板705、706同士を互いに電気的に接続するために、導電材からなる棒状の支持柱707が例えば複数箇所に配置されている。更に、これら電極板705、706の間において支持柱707の周囲の領域には、回転テーブル2を構成する材質(例えば石英)と熱膨張収縮率がほぼ同じ化合物からなる補強部材708が配置されている。即ち、補強部材708は、概略円板状をなしており、支持柱707が配置される領域には当該補強部材708を上下に貫通する貫通口が形成されている。この例では、補強部材708は、石英により構成されている。
【0112】
このように補強部材708を配置した理由について、以下に説明する。回転テーブル2の内部領域210に補助電極部140を配置するにあたり、これら回転テーブル2と補助電極部140とは互いに熱膨張収縮率が異なる。従って、これら回転テーブル2の内壁面と補助電極部140との間には、既述のように隙間領域を設けざるを得ない。従って、回転テーブル2の内部にはいわば余分な(不必要な)空洞を形成することになるので、このような空洞を形成しない場合と比べて、当該回転テーブル2の強度が弱くなってしまう。
【0113】
そこで、電極板705、706同士を上下に離間させると共に、これら電極板705、706の間に補強部材708を配置して、この補強部材708の熱膨張収縮率を回転テーブル2の熱膨張収縮率と揃えている。従って、回転テーブル2の内壁面と補強部材708の側周面との間には隙間領域を設ける必要がないか、あるいは回転テーブル2の内面と補助電極部140(電極板705、706)との間の隙間領域よりも小さな容積で済む。そのため、補強部材708を設けない場合と比べて、回転テーブル2の強度を向上させることができる。
【0114】
更に、補助電極部140(上側電極板705)によってウエハWの面内に亘って静電結合を形成しながら、補助電極部140の下面部(下側電極板706)を上側電極板705よりも小さくしている。従って、既述のように回転テーブル2とバイアス電極120との間における異常放電を抑制することができる。また、回転テーブル2の回転方向において互いに隣接する補助電極部140、140同士の間の離間距離を稼ぐことができるので、これら補助電極部140、140間における異常放電についても抑制できる。
【0115】
ここで、以上説明した各例では、補助電極部140とバイアス電極120との間で静電結合を形成するにあたり、当該バイアス電極120について、回転テーブル2の下方側に配置したが、回転テーブル2の側方側に配置しても良い。
図50は、このような構成を模式的に表しており、バイアス電極120は、回転テーブル2の側周面に沿うように円弧状に形成されると共に、当該側周面に近接配置されている。そして、回転テーブル2の内部には、このバイアス電極120に対向するように、回転テーブル2の外周面に沿って円弧状に形成された対向電極部710が埋設されており、この対向電極部710は、補助電極部140に電気的に接続されている。
図50中712は、インダクタである。尚、
図50では、回転テーブル2を破線で示している。
【0116】
このようにバイアス電極120を回転テーブル2の側方側に配置した場合の具体的な装置について説明すると、
図51及び
図52に示すように、当該バイアス電極120は、平面で見た時に、改質領域S1よりも回転テーブル2の外周縁側にて当該回転テーブル2の側面部に対して隙間領域を介して配置されている。そして、バイアス電極120は、例えば石英などの絶縁体からなる保持部材711の内部に埋設されており、回転テーブル2の側周面に近接配置されるように、当該保持部材711を介して真空容器1の内壁面に支持されている。尚、
図51は、回転テーブル2を水平方向に切断した様子を示している。
【0117】
バイアス電極120を回転テーブル2の側面側に配置した場合には、バイアス電極120と対向電極部710との間において静電結合が形成されると共に、当該対向電極部710を介して補助電極部140とウエハWとの間においても同様に静電結合が形成されて、既述の各例にて説明したようにウエハWにイオンが引き込まれる。
【0118】
ここで、回転テーブル2の下方側にバイアス電極部120を非接触で配置する場合において、当該バイアス電極120の好ましい高さ位置について説明する。回転テーブル2に対してバイアス電極120を離間させて配置するにあたって、回転テーブル2とバイアス電極120とが離間しすぎていると、この非励起領域S2にてプラズマ(異常放電)が発生してしまうおそれがある。従って、前記異常放電を抑制するためには、回転テーブル2に対してバイアス電極部120をできるだけ近づけた方が良いことは当然である。しかしながら、真空容器1内の加熱温度に応じて、回転テーブル2の熱膨張量が変わるので、バイアス電極部120の最適な高さ位置は、処理レシピ毎にまちまちになると言える。また、例えば真空容器1内の真空度に応じて、前記異常放電の起こりやすさが変わる。更に、回転テーブル2の回転数(回転テーブル2のぶれやすさ)、回転テーブル2の下面の加工精度などによっても、バイアス電極部120の最適な高さ位置が異なる場合がある。
【0119】
そこで、バイアス電極部120について、昇降自在に構成することが好ましい。
図53は、このような例を示しており、ガス供給路127を構成する流路部材は、真空容器1の下方側において昇降機構720に接続されている。
図53中721はガス供給路127と真空容器1の底面との間を気密に密閉するためのベローズである。尚、バイアス電極部120の上方側に既述の絶縁部材122を設けて、当該バイアス電極部120と共に昇降自在に構成しても良いし、あるいはバイアス電極部120の表面に例えば石英などの絶縁材を用いてコーティング膜を形成しても良い。
【0120】
以下の表8は、回転テーブル2の下面とバイアス電極部120の上面との間の離間距離及びバイアス電極部120に供給する高周波電力値を種々変えて、これら回転テーブル2とバイアス電極部120との間の領域におけるプラズマの発生状態(電圧)を確認した結果を示している。表8において、薄い灰色を付した部位は条件によっては非励起領域S2にてプラズマが発生した結果、濃い灰色を付した部位は前記領域S2にプラズマが発生した結果を示している。また、白色(灰色以外の場所)は、領域S2にはプラズマが発生しなかった結果を示している。
【0122】
尚、この表8の実験には、アンテナ83に供給する高周波電力を1500Wに設定すると共に、バイアス電極部120には周波数が40MHzの高周波電源129を接続した。また、回転テーブル2の下方側に供給するガスとしては、ArガスとO2ガスとの混合ガス(Ar:700sccm、O2:70sccm)を用いた。
【0123】
この結果、回転テーブル2とバイアス電極部120との間の離間寸法が小さい程、非励起領域S2ではプラズマが発生しにくくなることが分かった。また、バイアス用の高周波電力値が小さくなる程、異常放電が抑制されることが分かった。
また、バイアス電極部120に接続する高周波電源129の周波数について、3.2MHzに設定したところ、以下の表9に示すように、同様の結果が得られた。
【0125】
また、このようにバイアス電極部120を昇降自在に構成するにあたり、回転テーブル2とバイアス電極部120との間の領域(非励起領域S2)に対して不活性ガスを導入することによって、当該領域S2を真空容器1の内部雰囲気よりも高圧にしても良い。また、図示しない真空ポンプから伸びる排気路を当該領域S2にて開口させて、この領域S2を真空容器1の内部領域よりも低圧に設定しても良い。
【0126】
以上説明したバイアス電極部120あるいは補助電極部140は、平面で見た時に円形状に形成することに代えて、四角形状、扇型形状あるいは櫛形形状に形成しても良い。そして、このような形状のバイアス電極部120や補助電極部140について、例えば回転テーブル2の中央部から外周部に向かって低くなるようにあるいは高くなるように傾斜させても良い。即ち、ウエハWに対するプラズマ処理の度合いが面内に亘って揃うように、バイアス電極部120や補助電極部140の形状を適宜設定しても良い。
【0127】
更に、回転テーブル2上のウエハWに対してバイアス用の高周波電力を非接触で給電する手法としては、
図1などの例ではバイアス電極部120とウエハWとの間における静電誘導を利用したが、このような静電誘導に代えて、誘導電磁場共鳴(磁気共鳴)を利用しても良い。誘導電磁場共鳴を利用してウエハWに給電する機構を模式的に
図54に示すと、共通する共鳴周波数で共振する一対のコイル731、732同士を互いに近接させると共に、これらコイル731、732が巻回される軸方向を互いに揃える(一列に並べる)。そして、一方(給電側)のコイル731に対して高周波電力を供給すると、これらコイル731、732同士が互いに共鳴し合い、他方(受電側)のコイル732に対して非接触で高周波電力が供給される。
【0128】
既述の成膜装置にこの誘導電磁場共鳴を適用した構成について、
図55に模式的に示すと、給電側のコイル731については、例えばアンテナ83の下方位置にて回転軸22を臨む位置(ケース体20の内部)に配置する。この給電側のコイル731が巻回される軸方向については、回転軸22側を向くように、且つ水平方向を向くように配置する。一方、受電側のコイル732については、給電側のコイル731と同じ高さ位置にて、回転軸22の回転方向に沿って当該回転軸22の側周面に5箇所に配置する。そして、これら5つの受電側のコイル732が巻回される軸方向については、回転軸22の回転中心から見て外周側を向くように、且つ水平方向を向くように各々配置する。
【0129】
また、これら5つの受電側のコイル732について、各々のコイル732が給電側のコイル731側を向いた時、アンテナ83の下方側に位置するウエハWに当該コイル732が夫々接続されるように、各ウエハWに個別に接続する。こうしてアンテナ83の下方側の領域(給電側のコイル731に対向する領域)に位置する受電側のコイル732には給電され、一方他の4つの受電側のコイル732には給電されない構成となる。従って、回転軸22の回転に伴って、5つのウエハWに対して周方向に沿って順番にバイアス電圧が個別に印加される。尚、
図55では、5つの受電側のコイル732のうち2つのみ描画している。後述の
図56も同様である。
【0130】
各々の受電側のコイル732を各ウエハWに個別に配線する手法の一例について、以下に列挙する。具体的には、回転テーブル2におけるウエハWの裏面との接触面に、受電側のコイル732の両端部のうち一方の端部から伸びる導電路733の先端部を露出させても良い。あるいは、前記導電路733の先端部に接続される導電板(図示せず)を凹部24内に配置して、当該導電板上に各ウエハWを載置しても良い。
図56は、受電側のコイル732を各ウエハWに個別に配線する構成として、既述の補助電極140を利用した例を示している。即ち、各受電側のコイル732は、回転軸22の内部及び回転テーブル2の内部を引き回された導電路733を介して補助電極140に各々接続されている。そして、補助電極140とウエハWとの間において、既に詳述したように、静電誘導を介して給電が行われる。
【0131】
図55及び
図56における734は、受電側のコイル732をアースに接続するために回転軸22の下端部に設けられた軸受け部である。この軸受け部734は、スリップリング、ロータリーコネクタあるいは導通ベアリングなどであり、回転軸22の回転中においても、各受電側のコイル732の両端部のうちウエハW側とは別の端部をアースに接続するように構成されている。また、
図55における735は可変容量コンデンサまたは容量固定コンデンサであり、
図56ではこのコンデンサ735について描画を省略している。尚、
図56では、回転軸22、コア部21及び回転テーブル2は、各々石英などの絶縁体により構成されている。
【0132】
以上説明した誘導電磁場共鳴を利用することにより、各ウエハW毎に個別に給電回路が形成される。そのため、互いに隣接するウエハW同士に跨ってバイアス電圧が印加されることを抑制できるので、
図50などで説明したように、異常放電を抑えることができる。また、高周波電源129としてMHz帯(例えば13.56MHz)もの高周波を利用する場合には、例えば数十Hz程度の周波数帯を利用する場合と比べて、コイル731、732の巻回面積が小さく済む。具体的には、各コイル731、732の巻回軸方向から見た時のこれらコイル731、732の面積は、数十mm角程度で済む。従って、MHz帯の高周波電源129を使用して誘導電磁場共鳴によって給電する場合には、各ウエハWに給電する機構(コイル731、732)を小型化できる。
【0133】
そのため、コイル731、732が小型で済むことから、これらコイル731、732について、回転軸22側に設けることに代えて、以下のように配置しても良い。即ち、
図57に示すように、給電側のコイル731については、平面で見た時にアンテナ83に対して回転テーブル2の外周側に離間した位置にて、回転テーブル2の側周面を臨む位置に配置する。一方、受電側のコイル732については、回転テーブル2の内部において当該回転テーブル2の側周面に対向する位置に配置する。即ち、
図50に示したレイアウトを利用してコイル731、732を配置していると言える。このような構成であっても、同様の効果が得られる。受電側のコイル732のアース側の端子は、既述のように、回転軸22の下端側に設けられた軸受け部734を介して接地される。
【0134】
以上の誘導電磁場共鳴を利用した例では、回転テーブル2上の5枚のウエハWに個別に高周波電力を供給したが、既述の
図22に示すように、回転軸22、コア部21及び回転テーブル2を各々導電体により構成して、これら5枚のウエハWに対して一括して給電しても良い。
また、プラズマ中のイオンをウエハW側に引き込む構成としては、バイアス電極部120とウエハWとの間に静電誘導を発生させる代わりに、例えばバイアス電極部120とファラデーシールド95とを容量結合させて、これらバイアス電極部120とファラデーシールド95との間における電位差を利用しても良い。
更に、誘導電磁場共鳴では、コイル731、732同士をそれ程近接させなくても給電が可能であることから、給電側のコイル731については、ケース体20の外側に配置しても良い。