特許第6011464号(P6011464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6011464
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】配線材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20161006BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20161006BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20161006BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H01B7/08
   H01B7/00 305
   H01B7/00 306
   H01B13/00 525Z
   H01B13/00 519
   H01B13/00 521
   H01M2/20 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-118478(P2013-118478)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-116285(P2014-116285A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-250495(P2012-250495)
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137855
【弁理士】
【氏名又は名称】沖川 寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀越 稔之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 巧
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢一
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−298017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 13/00
H01M 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が所定の厚み及び前記所定の厚み以上の幅を有する複数の導体が間隔を設けて前記幅の方向に並列に配置された状態で供給された幹部から前記導体を前記幅の方向又は前記幅の方向と交差する方向に曲げて分岐することで枝部を形成する工程と、
1対の被覆部材を重ね合わせて前記複数の導体の両端部が露出するように前記幹部及び枝部を被覆する工程と
を含
前記分岐することで枝部を形成する工程は、
弧状面とこれに続く第1の平坦面とを有する固定部材を用いて前記導体の側面を前記第1の平坦面に接触させて前記導体を固定する工程と、
第2の平坦面を有する可動部材を用いて前記第2の平坦面を前記導体の前記第1の平坦面に接触している側面と反対側の前記導体の側面に接触させ、前記可動部材を前記第1の平坦面との間に前記導体を挟んだ状態で前記固定部材の前記弧状面に沿って移動させて前記導体を曲げる工程と、
を含む、
配線材の製造方法。
【請求項2】
前記1対の被覆部材が互いに接触している領域を除去する工程をさらに含む、
請求項1記載の配線材の製造方法。
【請求項3】
前記導体は、矩形の断面形状を有する、
請求項1又は2記載の配線材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリントサーキット(FPC)等の配線材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や大型電子機器、大型メカトロニクス機器などに用いられる内部配線は、従来、筐体が大型であるが故に十分な配線スペースの確保が容易であったため、複数本のケーブルを束ねたワイヤハーネスを用いて、複雑な配線にも対応してきた。一方で、小型電子機器、小型メカトロニクス機器では、小さな筐体に複数の機能を持たせるために、配線スペースを極小にする必要がある。そのため、このような小型機器の内部配線には、フレキシブルプリントサーキット(FPC)等の小型のフィルム配線材が用いられている。
【0003】
近年、自動車用途や、大型メカトロニクス機器においても、機能の充実もさることながら、従来と同サイズ以下の機器構成が求められている。その結果、小型電子機器、メカトロニクス機器に用いられるようなフィルム配線材が、大型機器内配線としても求められるようになってきた。
【0004】
例えば、電気自動車やハイブリット自動車に搭載されるリチウムイオン二次電池モジュールは、内部に単電池セルを複数個配置し、隣り合う電池セルの電極端子間をバスバー等の接続部材で接続した構造となっている。リチウムイオン二次電池は、過度に充電すると、発熱する危険性があり、また過度に放電すると、電極材の溶解による充電、放電機能の低下が発生するため、数10mV程度の極めて高い精度の電圧制御が必要となる。そのため、各電池と接続する各バスバーは、各電極の電位を監視するための配線材を介して制御回路及び保護回路と接続されている。
【0005】
電圧監視用の配線材は、二次電池モジュールの大きさから、約0.5〜1m程度の長さとなる。また、この配線材は、回路基板から各バスバーまでの配線距離が異なることから複数の導体を有し、その複数の導体の束から導体が分岐する任意の配線パターンを形成する。
【0006】
また、リチウムイオン二次電池の大容量化と小型化の要請から電池セルの数が増加し、配線材の数が増える一方で、配線材が占める領域を減らす要求がある。また、この配線材は、任意パターンの配線が求められることから、FPC等が用いられる。FPCのような薄い配線材を用いることで、配線材が占める領域を小さくすることができるとともに、パターン形状を各バスバーの位置に適合するように予め形成することで電池モジュール組立の際の誤配線の防止や、接続のための配線材とバスバーとの位置決め作業を簡略化している。
【0007】
また、例えば、コピー、スキャナ等を一体化したデジタル複合機では、装置内の配線に加え、スキャナ読み取り機構などの可動部と制御回路との配線が必要となっている。このような配線材において、特にA0サイズ(84.1cm×118.9cm)対応の場合は、配線長は1mを超える場合がある。また、スキャナヘッドやインクジェットヘッドといった可動部側制御回路との配線は、可動範囲分の余裕を持たせるための長尺直線部分と制御回路へ分岐する枝部によって構成される。そのため、このようなデジタル複合機用の配線材として、前述の電圧監視用の配線材同様、任意パターンの配線が可能なFPC等が用いられる。
【0008】
配線材の一例であるFPCは、被覆部材であるポリイミドフィルムに銅箔を接着したフィルム基材に、フォトリソグラフィーによる配線パターン形成を行い、不要部分の銅をエッチング処理で除去する工程により製造される。
【0009】
FPCは、銅箔をエッチング処理して導体パターンを形成するため、銅材の無駄が多くなる。また、エッチング以外の材料(フォトレジスト、現像液、洗浄液等)が必要となる。特に、電圧監視用、デジタル複合機用の配線材の場合、配線パターンが電子回路のように複雑で高密度でなく、長尺な導体が分岐しているような単純構造であるほど、より材料の無駄が発生し、コストが増大する。
【0010】
また、従来の配線材は、数cm角の回路を形成するのが主であったが、電圧監視用、デジタル複合機用の配線材は、長さが約0.5〜1mもしくはそれ以上となるため、既存のフォトリソグラフィー装置では対応ができない。そのため、フォトリソグラフィー装置を大型化する必要が生じるので、配線材を製造するコストがさらに増大する。また、FPCは、銅箔を用いているので導体の厚みが非常に薄く、上記のように大サイズとなると導体抵抗が増大する。
【0011】
特許文献1に記載のフラットハーネス(配線材)は、断面が円形の銅線を所定の配線パターンに沿って同一平面状に敷設して両側から絶縁フィルムで被覆されたものであり、エッチング工程を含まずにフラットハーネスを製造することができる。
【0012】
特許文献2に記載のフラットハーネスは、第1のフラットケーブルとしてのリボンケーブルと、この第1のフラットケーブルの中間位置に接続部を介して接続された第2のフラットケーブルとしてのFPCとを備え、第1のフラットケーブルの一部の導体と、第2のフラットケーブルの一部の導体とが電気的に接続されたものである。この構成によれば、第2のフラットケーブルのみにFPCを用いることで大サイズのFPCを有しないフラットハーネスが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−157924号公報
【特許文献2】特開2002−203431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1に記載の配線材によると、断面が円形の導体を用いているため、配線材をさらに薄くした場合、導体の直径が小さくなることから、配線材の導体抵抗が上昇する。また、導体の本数を増やして配線材の導体抵抗の上昇を抑えることが可能であるが、導体を敷設する工程が増える。
【0015】
特許文献2に記載の配線材によると、リボンケーブルが分岐構造を作れないため、枝部にFPCを用いているが、リボンケーブルとFPCとを接続する工程が増える。また、リボンケーブルとFPCとを接続する接続部が厚くなる。
【0016】
そのため、本発明の目的は、配線材を薄くした場合でも導体抵抗の上昇を抑えるとともに、製造工程を簡略化することができる配線材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の配線材の製造方法を提供する。
【0019】
[]断面形状が所定の厚み及び前記所定の厚み以上の幅を有する複数の導体が間隔を設けて前記幅の方向に並列に配置された状態で供給された幹部から前記導体を前記幅の方向又は前記幅の方向と交差する方向に曲げて分岐することで枝部を形成する工程と、
1対の被覆部材を重ね合わせて前記複数の導体の両端部が露出するように前記幹部及び枝部を被覆する工程と
を含み、
前記分岐することで枝部を形成する工程は、
弧状面とこれに続く第1の平坦面とを有する固定部材を用いて前記導体の側面を前記第1の平坦面に接触させて前記導体を固定する工程と、
第2の平坦面を有する可動部材を用いて前記第2の平坦面を前記導体の前記第1の平坦面に接触している側面と反対側の前記導体の側面に接触させ、前記可動部材を前記第1の平坦面との間に前記導体を挟んだ状態で前記固定部材の前記弧状面に沿って移動させて前記導体を曲げる工程と
を含む、
線材の製造方法。
[]前記1対の被覆部材が互いに接触している領域を除去する工程をさらに含む、
前記[1]記載の配線材の製造方法。
[3]前記導体は、矩形の断面形状を有する、
請求項[1]又は[2]記載の配線材の製造方法
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、配線材を薄くした場合でも導体抵抗の上昇を抑えるとともに、製造工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る配線材の外観を示す斜視図である。
図2図2は、リールから導体を引き出す工程を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、導体を曲げる工程を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、各導体が分岐した状態を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、導体を被覆部材によって被覆する工程を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、被覆部材の除去部分を除去する工程を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、曲げ装置の概要を示し、(a)は、固定部材の斜視図、(b)は、可動部材の斜視図、(c)は、固定部材と可動部材を組み合わせた状態を示す斜視図である。
図8図8は、曲げ装置の動作を示し、(a)は、導体を曲げる前の状態を示す横断面図、(b)は、導体を曲げた後の状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0023】
[実施の形態の要約]
本実施の形態の配線材は、導体と、導体を被覆する被覆部材とを備える配線材において、断面形状が所定の厚み及び前記所定の厚み以上の幅を有する複数の導体が間隔を設けて前記幅の方向に並列に配置された幹部と、前記導体が前記幹部から前記幅の方向又は前記幅の方向と交差する方向に分岐した枝部と、前記複数の導体の両端部が露出するように前記幹部及び前記枝部を被覆する被覆部材とを備える。
【0024】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る配線材の外観を示す斜視図である。この配線材1は、所定の厚み及び所定の厚みより大きな幅を有する複数(本実施の形態では6本)の導体2が間隔を設けて導体2の幅の方向に並列に配置された幹部21と、導体2が幹部21から導体2の幅の方向に曲げられて分岐した枝部22と、複数の導体2の両端部20a、20bが露出するように幹部21及び枝部22を被覆する被覆部材3と、少なくとも1本(本実施の形態では6本)の導体2を導体2の幅の方向に分岐させる分岐部23とを備える。
【0025】
(導体)
幹部21は、導体2の一方の端部20aから分岐部23までの部分で構成される。枝部22は、分岐部23から導体2の他方の端部20bまでの部分で構成される。枝部22は、幹部21の外側に向かって他の枝部22や幹部21と重ならないように幹部21から分岐している。
【0026】
分岐部23は、幹部21の中心線21aとは別方向に分かれる導体2の部分を指す。分岐部23は、例えば各端部20bが幹部21の中心線21aから等距離に位置するように導体2の幅の方向、すなわち導体2を中心線21aに対して90度の角度の方向に曲げる。なお、分岐部23において導体2を曲げる角度は、90度に限定されず、導体2の幅の方向と交差する方向、例えば導体2の45度や135度等の任意の角度でもよい。
【0027】
導体2の材料には、例えば無酸素銅、タフピッチ銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル等が用いられる。また、導体表面には、ニッケルめっき、錫めっき等が施されていてもよい。また、導体2は、丸線を圧延して断面形状を矩形にしたものや、丸線に矩形ダイスを用いて引抜加工を行い、断面形状を矩形にしたもの等が用いられる。例えば、導体2は、銅からなり、その断面形状の厚みを0.2mm、幅を1mmの矩形とする。従来使用されていたFPCの銅箔は、厚みが35μm程度なので、本発明の導体2と比べて非常に導体抵抗が大きくなる。仮に、本発明の導体2と同程度の導体抵抗を有するように導体に銅箔を用いた配線材で実現しようとすると、導体の断面積を大きくするために銅箔の幅を約5.7mmにする必要があり、配線材の幅が非常に大きくなってしまう問題がある。したがって、本実施の形態によれば、導体2の断面形状を矩形とすることで銅箔を用いた導体に比べて導体抵抗を小さくすることができる。また、円形形状の導体と比べて同じ厚さの導体では、その断面積は、矩形形状のほうが大きいので導体2の導体抵抗を低減することができる。なお、導体2は、正方形の断面形状や側面、上面又は下面が弧状である断面形状を有するものでもよい。
【0028】
(被覆部材)
被覆部材3は、1対の被覆部材3A、3Bからなり、1対の被覆部材3A、3Bで複数の導体2を挟み、端部20a、20bが露出するように幹部21及び枝部22を被覆し、絶縁する。被覆部材3は、対向する面に塗布された図示しない接着剤により、導体2に接着される。なお、被覆部材3は、融着等の方法により幹部21、枝部22を被覆してもよい。
【0029】
被覆部材3は、例えば絶縁部材として一般的なポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート等が用いられる。接着剤としては、例えばエキポシ系接着剤等、ポリエステル系接着剤等が用いられる。
【0030】
(配線材の製造方法)
次に、配線材1の製造方法の一例について説明する。図2から図6は、配線材の製造方法を示す図であり、図2は、リールから導体を引き出す工程を模式的に示す斜視図、図3は、導体を曲げる工程を模式的に示す斜視図、図4は、各導体が分岐した状態を模式的に示す斜視図、図5は、導体を被覆部材によって被覆する工程を模式的に示す斜視図、図6は、被覆部材の除去部分を除去する工程を模式的に示す斜視図である。
【0031】
配線材1の製造方法は、断面形状が所定の厚み及び所定の厚みより大きい幅を有する導体2を収納する複数の溝4aを有するリール4を準備し、そのリール4から導体2が並列に配置された幹部21を供給する工程と、供給された幹部21から導体2を曲げ装置5で曲げて導体2の幅の方向に分岐し、枝部22を形成する工程と、被覆部材3A,3Bを巻き付けて収容する1対のロール6を準備し、ロール6から引き出した被覆部材3で導体2を被覆する工程と、1対の被覆部材3A、3Bが互いに接触した部分を除去する工程とを含む。
【0032】
(1)導体を供給する工程
図2に示すように、導体2が巻きつけられたリール4は、図示しない保持部材により保持されて導体2の幅の方向と平行に配置されている。
【0033】
配線材1を製造するには、先ず、図2に示すように、リール4から複数の導体2を導体2を曲げるのに必要な長さを引き出す。なお、リール4に複数の異なる導電材料を収納し、そのリール4から導電材料を引き出すことにより、異なる導体材料が混在する配線材1を製造してもよい。
【0034】
(2)導体を分岐する工程
次に、図3に示すように、後述する図7に示す曲げ装置5を用いて各導体2を曲げて導体2を分岐させる。なお、図3は、一部の曲げ装置5のみを図示している。図7は、曲げ装置の概要を示し、(a)は、固定部材の斜視図、(b)は、可動部材の斜視図、(c)は、固定部材と可動部材を組み合わせた状態を示す斜視図である。図8は、曲げ装置の動作を示し、(a)は、導体を曲げる前の状態を示す横断面図、(b)は、導体を曲げた後の状態を示す横断面図である。
【0035】
曲げ装置5は、図7(a)〜(c)に示すように、弧状面511a、及びこれに続く第1の平坦面511b及び平坦面511cを有する第1の突出部511と、第1の平坦面511bとの間に導体2の幅と同じ距離を有して設けられて導体2を固定する平坦面512aを有する第2の突出部512とが設けられた円柱状の固定部材51と、弧状面511aとの間に導体2を挟んだ状態で弧状面511aに沿って移動する、第2の平坦面521aが設けられた第3の突出部521を有する円柱状の可動部材52とを備える。固定部材51及び可動部材52は、同軸上に設置され、可動部材52が回転可能に固定部材51と組み合わされて接触する接触面510、520をそれぞれ有する。固定部材51は、図示しない支持部に支持される。可動部材52は、回転軸52aを有し、図示しない駆動部又は手動操作によって回転運動する。なお、図8では、導体2を時計回り方向に曲げる曲げ装置を示している。
【0036】
導体2を曲げるには、先ず、図7(a)に示すように、固定部材51の第1の突出部511の第1の平坦面511bを導体2の側面2aに接触させ、第2の突出部512の平坦面512aを導体2の側面2bに接触させて導体2を固定する。
【0037】
次に、図7(c)及び図8(a)に示すように、第1の平坦面511bが接触する導体2の側面2aと反対の側面2bが第2の平坦面521aに接触するように固定部材51と可動部材52とを組み合わせて接触面510、520を接触させる。
【0038】
次に、第2の平坦面521aが導体2の側面2bに接触している状態から、可動部材52を回転軸52aを中心に回転させ、図8(b)に示すように、第2の平坦面521aを、第2の平坦面521aと弧状面511aとの間に導体2を挟んだ状態で、弧状面511aに沿って移動させて導体2を例えば90度曲げる。すなわち、第2の平坦面521aが移動しながら導体2を弧状面511a及び平坦面511cに押し付けることで導体2が曲げられる。
【0039】
各導体2は、曲げ装置5により所望の角度に曲げられ、図4に示すように、幹部21と、枝部22を有する形状となる。なお、一部の導体2を曲げずに直線状のままとしてもよい。また、曲げ装置5は、弧状面511a及び平坦面511cの形状、及び可動部材52の回転角度の変更により導体2を曲げる角度を容易に変えることができる。
【0040】
(3)導体を被覆する工程
1対のロール6には、被覆部材3A、3Bが巻き付けられて収納されている。1対のロール6は、図5に示すように、導体2の幅の方向と平行になるように導体2の上方側及び下方側から図示しない保持部材により保持されている。
【0041】
次に、図5に示すように、リール4から導体2を供給しながら、1対のロール6から被覆部材3A、3Bを引き出す。被覆部材3A、3Bは、端部20aと端部20b、又は端部20bで囲まれた矩形の領域で重なり合い、導体2の端部20a、20bが露出するように導体2を被覆する。なお、1つのロール6から引き出された被覆部材3を折り返すことで導体2を被覆してもよい。
【0042】
(4)被覆部材を除去する工程
次に、図6に示すように、金型による打ち抜きや、カッター、レーザ等による切除方法で被覆部材3が互いに接触した除去部分3a〜3gを接着代を残して除去する。図7には、除去部分3aを除去する様子を示しているが、他の除去部分3b〜3gについても同様に除去する。
【0043】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(ア)断面形状が所定の厚み及び所定の厚み以上の幅を有する導体2を用いることで、配線材を薄くした場合でも導体抵抗の上昇を抑えることができる。
(イ)曲げ装置5で導体2を所望の角度に曲げて配線材1を分岐させることで、幹部21と枝部22との接続部を有しない配線材1が得られるので、幹部21と枝部22との接続工程を省略して配線材1の製造工程を簡略化することができる。
(ウ)導体2の断面形状が矩形であっても、曲げ装置5を用いることで導体2を容易に曲げることができる。
(エ)導体2の断面形状を矩形にすることにより、銅箔を使用した導体や断面形状が円形の導体と比べて導体抵抗を低減させることができる。
(オ)導体2をリール4から引き出し、曲げ装置5により導体2を分岐して配線材1を形成することにより、配線材1の製造工程でエッチング処理を省略でき、配線材1の製造工程を簡略化することができる。そのため、配線材1の製造コストを低減することができる。また、配線材1の寸法が配線パターン形成工程で用いられるフォトリソグラフィー装置の大きさに制約されないため、所望の長さの配線材1を容易に製造することができる。
(カ)被覆部材3の除去部分3a〜3gを除去する工程を経ることで、幹部21と枝部22の幅をそれぞれ導体被覆幅にすることができる。
【0044】
[変形例]
なお、本発明の実施の形態は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形、実施が可能である。例えば、複数の端部20bが中心線21aからそれぞれ異なる距離を有するように枝部22を設けてもよい。
【0045】
また、さらに厚みのある導体2を用いて、端部20a、20bを例えば接続部材のスルーホールに差し込むなどの構成とすることができる。
【0046】
また、配線材1は、曲げ装置5によって複数回曲げられた導体2を有するものとしてもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、枝部22は、幹部21の両側に形成されているが、枝部22は、幹部21の片側のみに形成されるものとしてもよい。
【0048】
上記実施の形態の製造方法は、本発明の要旨を変更しない範囲で工程の付加、削除、入替、置換等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば電圧監視配線材、電力輸送線路、信号線路、携帯電話、通信機器、情報端末機器、測定機器、家電機器等に適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 配線材
2 導体
2a、2b 側面
3 被覆部材
3A、3B 被覆部材
3a-3g 除去部分
4 リール
4a 溝
5 曲げ装置
6 ロール
20a,20b 端部
21 幹部
21a 中心線
22 枝部
23 分岐部
51 固定部材
52 可動部材
52a 回転軸
510、520 接触面
511 第1の突出部
511a 弧状面
511b 第1の平坦面
511c 平坦面
512 第2の突出部
512a 平坦面
521 第3の突出部
521a 第2の平坦面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8