(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱により硬化する熱硬化性樹脂と、活性エネルギー線照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂が、相互侵入高分子網目構造(IPN構造)を形成するように、前記活性エネルギー線硬化性樹脂と前記熱硬化性樹脂とをそれぞれ少なくとも1種類混合して、IMD(インモールド転写)層用樹脂を提供する工程と;
前記IMD層用樹脂をフィルム状の基材上に積層してIMD層を形成する工程と;
前記IMD層用樹脂を前記加熱して、架橋硬化する加熱工程と;
前記IMD層の前記基材と反対の側に、前記IMD層と前記IMD層上に積層される層との密着性を高める、硬化した熱硬化性樹脂を含有するアンカー層を積層する工程と;を備え、
前記IMD層と前記アンカー層に含まれる熱硬化性樹脂は、少なくとも1種類が同一の種類である、
インモールド成形用転写フィルムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、耐溶剤性、耐熱性、耐久性、耐ブロッキング性、成形性に優れ、ゲート流れの発生を抑制可能なインモールド成形用転写フィルムおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、IMD層に活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を混在させ、さらに熱乾燥工程で熱硬化性樹脂による架橋を施すことで、IMD層内に3次元網目構造が形成され、活性エネルギー線硬化前であっても耐溶剤性、耐熱性、耐久性、耐ブロッキング性に優れた転写フィルムが得られることを見出した。
また、耐熱層としてアンカー層を設けた場合、前記IMD層に含まれる熱硬化性樹脂を前記アンカー層にも加え、硬化させることで、IMD層/アンカー層の密着性を向上させることも見出した。
さらに、転写後の成形体に活性エネルギー線を照射してIMD層を架橋硬化させることで、相互侵入高分子網目構造(IPN構造)を形成し、最終的に耐溶剤性、耐熱性、耐久性に優れた成形品も得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の第1の態様に係るインモールド成形用転写フィルムは、例えば
図1(a)に示すように、インモールド成形体に転写される転写層11であって、転写後に活性エネルギー線を照射することにより硬化する転写層11と:フィルム状の基材L0とを備え;転写層11は、基材L0上に積層された、インモールド成形後に成形体の最表面に配置されるIMD層L2を有し;IMD層L2は、活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂をそれぞれ少なくとも1種類含む混合組成で構成される。
なお、「IMD層」とは、インモールド成形後に成形体の最表面に配置される層をいう。
【0011】
このように構成すると、IMD層は、活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂をそれぞれ含む。そのため、フィルムの製造工程での乾燥等により加熱されると、IMD層中に含まれる熱硬化性樹脂が硬化し、活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる前であっても、IMD層は、耐溶剤性、耐熱性、耐久性、耐ブロッキング性を有することができ、フィルムの成形性が向上する。
なお、「(xxx層)上に積層される」とは、直接xxx層に積層される場合に限らず、間接的に積層される場合であってもよい。例えば、「IMD層上に積層される層」は、直接IMD層に積層される層に限られず、間接的に積層される(他の層を介して積層される)層も含む。
【0012】
本発明の第2の態様に係るインモールド成形用転写フィルムは、上記本発明の第1の態様に係るインモールド成形用転写フィルムにおいて、例えば
図1(a)に示すように、転写層11は、転写前の加熱によりIMD層L2に含まれる熱硬化性樹脂が硬化した層である。
【0013】
このように構成すると、IMD層は、硬化した熱硬化性樹脂を含有する。その結果、インモールド成形において、IMD層を射出成形時にゲート流れが発生しない程度の硬度とすることができる。一方で、活性エネルギー線の照射は転写後なので、IMD層は、射出成形時に金型に追従するようなノビ(軟度)を有する。このように、IMD層の活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を硬化させる時期をずらすことにより、IMD層の硬度を調節することができる。すなわち、IMD層積層時には熱硬化性樹脂を硬化させ、IMD層にある程度の硬度や耐熱性を持たせる。これにより、射出成形時のIMD層のゲート流れを回避する。一方でIMD層は、硬化前の活性エネルギー線硬化性樹脂を含有するため、射出成形時のクラックの発生を抑制することができる。インモールド成形後には、活性エネルギー線照射により活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させ、IMD層の硬度をさらに向上させる。
【0014】
本発明の第3の態様に係るインモールド成形用転写フィルムは、上記本発明の第1の態様または第2の態様に係るインモールド成形用転写フィルムにおいて、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくともいずれか1種類を含む。
【0015】
このように構成すると、IMD層の耐熱性、密着性および加工適性等をさらに向上させることが可能となる。
エポキシ系樹脂は耐熱性、接着性、耐薬品性、メラミン系樹脂は耐熱性、硬度、透明性、ウレタン系樹脂は接着性、低温硬化性に優れており、適宜選択して使用することができる。
【0016】
本発明の第4の態様に係るインモールド成形用転写フィルムは、上記本発明の第1の態様〜第3の態様のいずれか1の態様に係るインモールド成形用転写フィルムにおいて、例えば
図1に示すように、IMD層は、表面改質成分を含む(
図1(a))、または、前記転写後の成形体の表面となる面に表面改質層L2a(
図1(b))を有する。
【0017】
このように構成すると、IMD層は、表面改質成分を含む、または、IMD層の表面となる面側に表面改質層を有する。そのため、IMD層自体の耐久性等をより向上させることができる。なお、IMD層に持たせたい表面改質機能により、表面改質成分、または表面改質層を構成する化合物を適宜選択すればよい。
【0018】
本発明の第5の態様に係るインモールド成形用転写フィルムは、上記本発明の第4の態様に係るインモールド成形用転写フィルムにおいて、前記表面改質成分、または、前記表面改質層は、シリコーン化合物、フッ素化合物およびフルオロシルセスキオキサンを含有する化合物から選ばれる1種以上を含む。
【0019】
このように構成すると、シリコーン化合物、フッ素化合物、フルオロシルセスキオキサンを含有する化合物の撥水・撥油効果により、IMD層に防汚機能を付与もしくは向上させることができる。
【0020】
本発明の第6の態様に係るインモールド成形用転写フィルムは、上記本発明の第1の態様〜第5の態様のいずれか1の態様に係るインモールド成形用転写フィルムにおいて、例えば
図1(a)に示すように、転写層11は、IMD層L2の基材L0と反対の側に積層され、IMD層L2とIMD層L2上に積層される層との密着性を高める、硬化した熱硬化性樹脂を含有するアンカー層L3を有し;IMD層L2とアンカー層L3に含まれる熱硬化性樹脂は、少なくとも1種類が同一の種類である。
【0021】
このように構成すると、インモールド成形用転写フィルムは、硬化した熱硬化性樹脂を含有するアンカー層を有する。アンカー層は耐熱性を有し、インモールド成形の射出成形時にゲート流れが生じるのを抑制することができる。また、アンカー層を有することにより、さらにIMD層上に層を積層する場合に、IMD層と当該層との密着性を向上させることができる。特に、アンカー層とIMD層が、それぞれ同一の熱硬化性樹脂を含有する場合、IMD層とアンカー層の密着性を向上させることができる。
【0022】
本発明の第7の態様に係るインモールド成形用転写フィルムは、上記本発明の第6の態様に係るインモールド成形用転写フィルムにおいて、例えば
図1(a)に示すように、転写層11は、さらにアンカー層L3上に積層された印刷層L4と;印刷層L4上に積層された接着層L5とを有する。
【0023】
このように構成すると、インモールド成形における転写層は、印刷層と接着層を有する。そのため、印刷層を用いて、射出成形される樹脂に様々なデザイン等を施すことができる。さらに、接着層により、印刷層と射出成形される樹脂との密着性を高めることができる。
【0024】
本発明の第8の態様に係るインモールド成形体の製造方法は、例えば
図3に示すように、本発明の第1の態様〜第7の態様のいずれか1の態様に係るインモールド成形用転写フィルムを基材L0側が金型側になるように、前記金型に重ねて配置する工程と;前記インモールド成形用転写フィルムにインモールド用の樹脂を射出する工程とを備える。
【0025】
このように構成すると、IMD層は、活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含有する。そのため、配置する工程および射出する工程の前に熱硬化性樹脂を硬化させておくことにより、IMD層の硬度および耐熱性を向上させることができ、射出する工程の際に生じるゲート流れを抑制することができる。さらにアンカー層を有する場合、アンカー層も熱硬化性樹脂を含有する。そのため、アンカー層も耐熱性を有し、射出する工程の際に生じるゲート流れを抑制することができる。
【0026】
本発明の第9の態様に係るインモールド成形用転写フィルムの製造方法は、例えば
図1(a)および
図2に示すように、活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とをそれぞれ少なくとも1種類混合して、IMD層L2用樹脂を提供する工程(S02)と;IMD層L2用樹脂をフィルム状の基材L0上に積層してIMD層L2を形成する工程(S02)と;IMD層L2用樹脂を加熱して、架橋硬化する加熱工程(S02)とを備える。
【0027】
このように構成すると、IMD層は、硬化した熱硬化性樹脂を含有する。インモールド成形の前に熱硬化性樹脂を硬化させておくことにより、IMD層の硬度および耐熱性を向上させ、射出成形の際に生じるゲート流れを抑制することができる。
【0028】
本発明の第10の態様に係るインモールド成形用転写フィルムの製造方法は、上記本発明の第9の態様に係るインモールド成形用転写フィルムの製造方法において、例えば
図1(a)および
図2に示すように、IMD層L2の基材L0と反対の側に、IMD層L2上に積層される層との密着性を高めるアンカー層L3を積層する工程(S03)を備える。
【0029】
このように構成すると、アンカー層を備えるので、さらにIMD層上に層を積層させる場合に、IMD層と当該層との密着性を向上させることができる。
【0030】
本発明の第11の態様に係るインモールド成形体の製造方法は、例えば
図3に示すように、上記本発明の第9の態様または第10の態様に係るインモールド成形用転写フィルムの製造方法で製造されたインモールド成形用転写フィルムを基材L0側が金型側になるように前記金型に重ねて配置する工程と;前記インモールド成形用転写フィルムにインモールド用の樹脂を射出する工程とを備える。
【0031】
このように構成すると、IMD層は、活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含有する。さらに、配置する工程および射出する工程の前に熱硬化性樹脂は硬化されている。よって、IMD層の硬度および耐熱性が向上し、射出する工程の際に生じるゲート流れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、IMD層が活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を含有するため、耐溶剤性、耐熱性、耐久性、耐ブロッキング性、成形性に優れ、ゲート流れの発生を抑制可能なインモールド成形用転写フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この出願は、日本国で2011年6月20日に出願された特願2011−136730号に基づいており、その内容は本出願の内容として、その一部を形成する。本発明は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実例は、本発明の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本発明の精神と範囲内で、当業者にとって明らかであるからである。出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0035】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0036】
[インモールド成形用転写フィルム]
図1(a)を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るインモールド成形用転写フィルムF10について説明する。なお、
図1(a)は多層に構成されたインモールド成形用転写フィルムF10の層構成を説明するものであり、各層の厚みは誇張されている。インモールド成形用転写フィルムF10は、基材としてのフィルム状の基材L0、離型層L1、IMD層L2、アンカー層L3、さらに印刷層L4と接着層L5を備える。
インモールド成形では、接着層L5の一方の面側(
図1(a)では接着層L5の上側)に樹脂等が射出成形される。
図3に示すように、樹脂等の射出成形後、インモールド成形用転写フィルムF10は、離型層L1とIMD層L2の境界面で分離される。転写層11(IMD層L2/アンカー層L3/印刷層L4/接着層L5)は、樹脂に転写され、残フィルム12(基材L0/離形層L1)は、分離され残される。
【0037】
[基材L0]
基材L0は、インモールド成形用転写フィルムF10製造時の支持体として機能する。基材L0には、フィルム状の高分子樹脂として各種のプラスチックフィルムを用いることができる。プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等の樹脂が挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン等が好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレートは、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等、およびフィルム表面の平滑性やハンドリング性に優れているためより好ましい。ポリカーボネートは、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、燃焼性に優れているためより好ましい。価格・入手の容易さをも考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
なお、基材L0に離型性能を持たせてもよい。離型性能を持たせることにより、基材L0から転写層11(IMD層L2等)を剥離しやすくすることができ、後述の離型層L1を省略することができる。
【0038】
基材L0の膜厚は、10〜100μmが好ましく、さらに好ましくは25〜50μmである。基材L0の膜厚が10μm以上であると基材の機械的強度を維持でき、インモールド成形用転写フィルムF10の各層の形成がし易い。また、膜厚が100μm以下であると、インモールド成形用転写フィルムF10の柔軟性を保つことができ、インモールド成形(特に金型への追従)に適する。
【0039】
[離型層L1]
離型層L1は、基材L0から転写層11(IMD層L2等)を剥離しやすくするための層である。なお、基材L0が離型性能を有する場合は、離型層L1を省略することができる。離型層L1の材料としては、例えば、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、パラフィン樹脂、尿素樹脂、繊維系樹脂等が挙げられる。転写層11との剥離安定性、転写層11への移行性を考慮した場合、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルブチル混合エーテル化メラミン樹脂等のメラミン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0040】
離型層L1の膜厚は、0.01〜5μmが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3μmである。離型層L1の膜厚が0.01μm以上であると、基材L0上に安定した離型性能を付与できる。また、膜厚が5μm以下であると、IMD層L2への移行もしくはIMD層L2の離型層L1への残留を防ぐことができる。
【0041】
離型層L1は、基材L0上に前記樹脂を主成分とする塗布液を塗布し、得られた塗膜を加熱し、乾燥および硬化させることで積層される。
塗布液は、前記樹脂および必要に応じて各種添加剤や溶媒を混合することにより得られる。塗布液中の樹脂成分の濃度は、例えば、ウェットコーティング法等の積層方法に応じた粘度に調整して適切に選択することができる。前記濃度は、例えば、5〜80重量%が好ましく、より好ましくは、10〜60重量%の範囲である。溶媒としては、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ブタノール、エチレングリコールモノエチルアセテート等を用いることができる。
なお、硬化性樹脂は、塗布液として用いることから、硬化前が液状であることが好ましい。
【0042】
積層には、塗布液を均一にコーティングするウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法としては、グラビアコート法やダイコート法等を用いることができる。グラビアコート法は、表面に凸凹の彫刻加工が施されたグラビアロールを塗布液に浸し、グラビアロール表面の凸凹部に付着した塗布液をドクターブレードで掻き落とし凹部に液を貯めることで正確に計量し、基材に転移させる方式である。グラビアコート法により、低粘度の液を薄くコーティングすることができる。ダイコート法は、ダイと呼ばれる塗布用ヘッドから液を加圧して押出しながらコーティングする方式である。ダイコート法により、高精度なコーティングが可能となる。さらに、塗布時に液が外気にさらされないため、乾きによる塗布液の濃度変化などが起こりにくい。その他のウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、ディッピング法、スプレーコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロッドコート法などを挙げることができる。積層は、これらの方法から必要とする膜厚に応じて適宜選択することができる。
さらに、ウェットコーティング法を用いることにより、毎分数十メートルのライン速度(例えば約20m/分)で積層できるため、大量に製造でき、生産効率を上げることができる。
【0043】
加熱により熱硬化性樹脂を硬化させる場合は、例えば、通常、80〜160℃、好ましくは120〜150℃の加熱温度で加熱すればよい。このとき、オーブンを用いた場合には、10〜120秒間加熱すればよい。
【0044】
[IMD層L2]
IMD層L2は、インモールド成形後の成形体の最表面に配置される層であり、表面保護層として機能する。IMD層L2は、活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂をそれぞれ含んで構成される。
本明細書において、活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線をいう。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線などの光エネルギー線が挙げられる。
【0045】
活性エネルギー線硬化性樹脂として好ましい例は、(メタ)アクリレートモノマー、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂などのラジカル重合が可能な不飽和結合を有する樹脂を挙げることができる。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。例えば、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、環状構造有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。環状構造有する(メタ)アクリレートの具体例には、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメタジ(メタ)アクリレート、テルペン骨格を有するモノおよびジ(メタ)アクリレートや、それぞれのエチレングリコールもしくはプロピレングリコールで変性した(メタ)アクリレートなどの光重合性モノマーなどが挙げられる。
【0047】
前記不飽和ポリエステル樹脂としては、多価アルコールと不飽和多塩基酸(および必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)を、重合性モノマーに溶解したものが挙げられる。
前記不飽和ポリエステルとしては、無水マレイン酸などの不飽和酸とエチレングリコールなどのジオールとを重縮合させて製造できる。具体的にはフマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの重合性不飽和結合を有する多塩基酸またはその無水物を酸成分とし、これとエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの多価アルコールをアルコール成分として反応させ、また、必要に応じてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物も酸成分として加えて製造されるものが挙げられる。
【0048】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、(1)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端カルボキシル基のポリエステルにα,β−不飽和カルボン酸エステル基を含有するエポキシ化合物を反応して得られる(メタ)アクリレート、(2)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端カルボキシル基のポリエステルに水酸基含有アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリレート、(3)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端水酸基のポリエステルに(メタ)アクリル酸を反応して得られる(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートの原料として用いられる飽和多塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物とフマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの重合性不飽和多塩基酸またはその無水物が挙げられる。さらに多価アルコール成分としては、前記不飽和ポリエステルと同様である。
【0049】
本発明に使用できるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、グリシジル基(エポキシ基)を有する化合物と、アクリル酸などの重合性不飽和結合を有するカルボキシル化合物のカルボキシル基との開環反応により生成する重合性不飽和結合を持った化合物(ビニルエステル)を、重合性モノマーに溶解したものが挙げられる。
前記ビニルエステルとしては、公知の方法により製造されるものであり、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、各種エポキシ樹脂をビスフェノール(例えばA型)またはアジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸(ハリダイマー270S:ハリマ化成(株))などの二塩基酸で反応させ、可撓性を付与してもよい。
原料としてのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよびその高分子量同族体、ノボラック型グリシジルエーテル類などが挙げられる。
【0050】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、更に水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって得ることができるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーが挙げられる。
前記ポリイソシアネートとしては、具体的には2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、バーノックD−750、クリスボンNK(商品名:大日本インキ化学工業(株)製)、デスモジュールL(商品名:住友バイエルウレタン(株)製)、コロネートL(商品名:日本ポリウレタン工業(株)製)、タケネートD102(商品名:三井武田ケミカル(株)製)、イソネート143L(商品名:三菱化学(株)製)などが挙げられる。
前記ポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどが挙げられ、具体的にはグリセリン−エチレンオキシド付加物、グリセリン−プロピレンオキシド付加物、グリセリン−テトラヒドロフラン付加物、グリセリン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−テトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−テトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記多価アルコール類としては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコールなどが挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されるものではないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、熱硬化性ポリイミドおよびシリコーン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルブチル混合エーテル化メラミン樹脂等のメラミン系樹脂、イソシアネート基を2個以上持ったポリイソシアネート化合物(O=C=N-R-N=C=O)と、水酸基を2個以上持ったポリオール化合物(HO-R'-OH)、ポリアミン(H
2N-R"-NH
2)、または水などの活性水素(-NH
2,-NH,-CONH-など)を持った化合物などとの反応により得ることができるウレタン系樹脂等が加工適性上好ましい。
エポキシ系樹脂は耐熱性、接着性、耐薬品性、メラミン系樹脂は耐熱性、硬度、透明性、ウレタン系樹脂は接着性、低温硬化性に優れており、適宜選択して使用することができる。
【0052】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線源により、好ましくは紫外線(UV)または電子線等を照射して硬化させることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂にUV照射させて用いる場合を説明する。活性エネルギー線硬化性樹脂は、光重合開始剤の存在下でUVを照射して重合させることにより硬化するものが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、各種のベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、フェニルケトン誘導体、オニウム塩光開始剤、有機金属光開始剤、金属塩カチオン光開始剤、光分解性オルガノシラン、潜在性スルホン酸、酸化ホスフィンなどが挙げられる。光重合開始剤の添加量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、1〜5重量部とすることが好ましい。
【0053】
熱硬化性樹脂は、所望の硬化温度(80〜160℃)、時間(30〜180秒)で迅速硬化させる必要がある。樹脂の種類に応じて、硬化反応開始剤や硬化反応促進剤を用いてもよい。例えば、エポキシ系樹脂の場合、脂肪族アミンや芳香族アミンのアミン類、ポリアミド樹脂、3級アミンおよび2級アミン、イミダゾール類、ポリメルカプタン、酸無水物類、ルイス酸錯体、メラミン系樹脂の場合、スルホン酸系触媒、ウレタン系樹脂の場合、有機金属系ウレタン化触媒と3級アミン系ウレタン化触媒等を挙げることができる。
【0054】
活性エネルギー線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の混合比は重量比で80:20から30:70の比率が好ましい。熱硬化性樹脂が20重量%以上であれば、耐熱性、耐溶剤性を発揮させることが可能となり、熱硬化性樹脂が70重量%以下であれば、インモールド成形(特に金型への追従)に適する。
【0055】
IMD層L2の膜厚は、0.1〜50μmが好ましく、さらに好ましくは1〜20μmである。IMD層L2の膜厚が0.1μm以上であると、熱硬化性樹脂の架橋構造が形成されやすくなるため、耐久性や耐薬品性の低下が起こりにくい。また、膜厚が50μm以下であると、溶媒乾燥時の残存溶媒量が多くなり、硬化後の塗膜の硬度や耐久性が不十分となることを回避できる。
【0056】
IMD層L2は、離型層L1上に前記樹脂を主成分とする塗布液を塗布し、得られた塗膜を加熱し、乾燥および硬化させることで積層される。塗布液は、前記樹脂以外に必要に応じて、ワックス、シリカ、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤等の各種添加剤や溶媒を混合させることができる。積層には、塗布液を均一にコーティングするウェットコーティング法を用いることが好ましい。
IMD層L2の形成では、加熱により熱硬化性樹脂を硬化させる条件を用いればよい。例えば、通常、80〜160℃、好ましくは120〜150℃の加熱温度で加熱すればよい。このとき、オーブンを用いた場合には、30〜180秒間加熱すればよい。加熱温度が低い場合や、加熱時間が短い場合は溶媒が残存し、熱硬化性樹脂の架橋硬化が不十分の可能性がある。また、加熱温度が高い場合や、加熱時間が長い場合は基材フィルムに熱ウェーブが発生する。樹脂の種類、混合比率に応じて適宜、適正な加工条件を選定することが好ましい。
【0057】
IMD層には、表面改質機能を持たせてもよい。例えば、シリコーン化合物、フッ素化合物、フルオロシルセスキオキサンを含有する化合物等の表面改質剤を用いて撥水・撥油機能や防汚機能を付与してもよい。有機系、無機系の低屈折率材料、高屈折材料を用いた低反射処理(AR処理)を施して、反射防止機能を付与してもよい。また、有機・無機粒子等を含有する防眩処理剤を用いて、防眩機能を付与してもよい。撥水・撥油性をさらに調整し、指紋の付着抑制・防止機能等を付与してもよい。IMD層の表面改質は、
図1(a)に示すように、IMD層L2の塗布液に表面改質機能を発現する化合物を添加してIMD層L2を形成することにより行なうことができる。または、
図1(b)に示すように、表面改質機能を発現する化合物を含む表面改質層L2aを形成して、表面改質層L2aを有するIMD層L2’を形成してもよい。表面改質機能を発現する化合物(樹脂等)は、要求する機能に合わせて適宜選択することが好ましい。
表面改質層を有するIMD層L2’を形成する場合は、まず、表面改質機能を発現する化合物を主成分とする塗布液を調製し、離型層L1上に塗布し、得られた塗膜を必要に応じて加熱・乾燥し、硬化させる(L2aの形成)。続いて、IMD層L2の塗布液を表面改質層L2a上に塗布し、得られた塗膜を加熱・乾燥し、硬化させる(L2bの形成)。このようにすると、転写時にインモールド成形用転写フィルムから基材L0と離形層L1が剥離して除去されるので、表面側に表面改質層L2aを有するIMD層L2’を形成することができる。
【0058】
IMD層に表面改質機能として防汚機能を付与する場合、汚れの付着を低減させる防汚剤を用いる方法がある。防汚剤には、シリコーン化合物、フッ素化合物、フルオロシルセスキオキサン、WO2008/072766およびWO2008/072765に記載されているフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
シリコーン化合物としては、BYK−UV3500、BYK−UV−3570(いずれもビックケミー社製)、TEGO Rad2100、2200N、2250、2500、2600、2700(いずれもデグサ社製)、X−22−2445、X−22−2455、X−22−2457、X−22−2458、X−22−2459、X−22−1602、X−22−1603、X−22−1615、X−22−1616、X−22−1618、X−22−1619、X−22−2404、X−22−2474、X−22−174DX、X−22−8201、X−22−2426、X−22−164A、X−22−164C(いずれも信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
フッ素化合物としては、ダイキン工業(株)製のオプツールDAC、オプツールDAC−HP、R−1110、R−1210、R−1240、R−1620、R−1820、R−2020、R−5210、R−5410、R−5610、R−5810、R−7210、R−7310、等を挙げることができる。
さらに、表面改質機能を発現する化合物は、例えば、下記式(I)に示される分子構造を有するフルオロシルセスキオキサン化合物や前記フルオロシルセスキオキサン化合物を含有する重合体(ホモポリマーまたはコポリマー)であってもよい。下記式(I)に示す化合物を用いて重合された重合体は、フッ素系のシリコーン化合物であるため、IMD層L2(L2’)に汚れの付着を低減させる機能を付与することができる。実施例5、6が示すように、実際に、高硬度化を図ることができるとともに、低表面自由エネルギー化により、防汚・耐指紋機能の付与に繋がる撥水・撥油性を向上させることができる。
【化1】
【0059】
表面改質機能を発現する化合物をIMD層L2の塗布液に添加する場合は、化合物を塗布液に直接添加するか、または化合物を有機溶媒に溶解した後塗布液に添加することが好ましい。添加量は、IMD層の形成に必要な樹脂(活性エネルギー線硬化性および熱硬化樹脂)の全体量に対して、0.1〜20重量%とすることが好ましい。表面改質機能を発現する化合物の割合が、20重量%以上であると、IMD層の形成に必要な樹脂の硬化性を阻害し、密着性の低下を招き易い。また0.1重量%以下であると、表面改質機能を十分に発現させることが難しい。
【0060】
表面改質層を有するIMD層L2’を形成する場合は、例えば、化合物を有機溶媒に溶解して別途塗布液を調製する。塗布には、塗布液を均一にコーティングするウェットコーティング法を用いることが好ましい。表面改質層L2aの塗布液は、塗布性を考慮した場合、化合物の含有量が約10〜80重量%となるように用いられることが好ましい。表面改質層L2aの膜厚は、0.01〜10μmが好ましい。膜厚が0.01μm以上であると、表面改質機能を発現させることが可能となる。また、膜厚が10μm以下であると、溶媒乾燥時の残存溶媒量が多くなり、硬化後の塗膜の硬度や耐久性が不十分となることを回避できる。
【0061】
[アンカー層L3]
図1(a)を参照して、アンカー層L3を説明する。アンカー層L3は、IMD層L2と、IMD層L2上に積層される層との密着性を向上させる(接着させる)ための層である。アンカー層L3の材料としては、例えば、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、熱硬化性ポリイミドおよびシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂や、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、塩化ゴム、ポリアミド樹脂、硝化綿樹脂、ポリアミド樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルブチル混合エーテル化メラミン樹脂等のメラミン樹脂、イソシアネート基を2個以上持ったポリイソシアネート化合物(O=C=N-R-N=C=O)と、水酸基を2個以上持ったポリオール化合物(HO-R'-OH)、ポリアミン(H
2N-R"-NH
2)、または水などの活性水素(-NH
2,-NH,-CONH-など)を持った化合物などとの反応により得ることができるウレタン樹脂等が加工適性上好ましい。
【0062】
アンカー層L3を複数の熱硬化性樹脂から構成してもよい。例えば、エポキシ系樹脂とウレタン系樹脂から構成する。アンカー層L3とIMD層L2のそれぞれにエポキシ系樹脂を含有させることにより、アンカー層L3とIMD層L2との密着性を向上させることができる。アンカー層L3と印刷層L4のそれぞれにウレタン系樹脂を含有させることにより、アンカー層L3と印刷層L4との密着性を向上させることができる。IMD層L2、アンカー層L3、印刷層L4の密着性を向上させることにより、層のはがれを防止し、耐久性に優れたフィルムを製造することができる。
また、ウレタン系樹脂を用いることにより、熱硬化性を有しながら層の伸縮性を維持することができる。よって、射出成形の際に金型に追従するようなノビ(軟度)を維持することができる。
【0063】
アンカー層にエポキシ系樹脂とウレタン系樹脂を用いた場合の好ましい混合比は重量比で5:95から50:50の比率が好ましい。エポキシ系樹脂が5重量%以上であれば、IMD層L2との密着性を向上させることが可能となり、エポキシ系樹脂が50重量%以下であれば、インモールド成形(特に金型への追従)に適する。
【0064】
アンカー層L3の膜厚は、0.1〜50μmが好ましく、さらに好ましくは0.5〜10μmである。アンカー層L3の膜厚が0.1μm以上であると、熱硬化性樹脂の架橋構造が形成されやすくなるため、耐久性や耐薬品性の低下が起こりにくい。また、膜厚が50μm以下であると、溶媒乾燥時の残存溶媒量が多くなり、耐ブロッキング性が不十分となることを回避できる。
【0065】
アンカー層L3は、IMD層L2上に前記樹脂を主成分とする塗布液を塗布し、得られた塗膜を加熱し、乾燥および硬化させることで積層される。塗布液は、前記樹脂以外に必要に応じて、ワックス、シリカ、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤等の各種添加剤や溶媒を混合させることができる。積層には、塗布液を均一にコーティングするウェットコーティング法を用いることが好ましい。
アンカー層L3の形成には、加熱により熱硬化性樹脂を硬化させる条件を用いればよい。例えば、通常、80〜160℃、好ましくは120〜150℃の加熱温度で加熱すればよい。このとき、オーブンを用いた場合には、30〜180秒間加熱すればよい。加熱温度が低い場合や、加熱時間が短い場合は溶媒が残存し、熱硬化性樹脂の架橋硬化が不十分の可能性ある。また、加熱温度が高い場合や、加熱時間が長い場合は基材フィルムに熱ウェーブが発生する。樹脂の種類、混合比率に応じて適宜、適正な加工条件を選定する。
【0066】
アンカー層L3には印刷層の劣化、変色等を防ぐ目的で、必要に応じて紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤を添加してもよい。
具体的には、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール類、ヒドロキシフェニルトリアジン類、ベンゾフェノン類、サリシレート類、シアノアクリレート類、または、トリアジン類等が挙げられる。また、紫外線安定剤として、ヒンダードアミン型光安定剤が挙げられる。さらに酸化防止剤として、フェノール系、硫黄系、リン酸系酸化防止剤が挙げられる。
前記添加剤の添加量は、アンカー層L3を形成する樹脂100重量部に対して、0.01〜20重量部とすることが好ましい。
【0067】
[印刷層L4/接着層L5]
図1(a)を参照して、印刷層L4/接着層L5を説明する。アンカー層L3上には、インモールド成形用転写フィルムF10に絵柄等の加飾を持たせるための印刷層L4、および、インモールド成形時に、射出成形される樹脂等に印刷層L4を接着させるための接着層L5が形成される。
また
図1(a)に示すように、基材L0の一方の面(
図1(a)では基材L0の下側)に、アンチブロッキングや帯電防止のための保護層L6を備えてもよい。保護層L6が、アンチブロッキング性を備えることにより、フィルムの製造過程において、ロールに巻き取った場合のブロッキングを抑制することができる。また、帯電防止性を備えることにより、フィルムの製造過程において、フィルムをロールから巻きだす際の剥離帯電を抑制することができる。
保護層L6を構成する材料としては、各種無機粒子、有機粒子、4級アンモニウム塩、シロキサン、界面活性剤等を含有するコート剤を用いればよい。
【0068】
[インモールド成形用転写フィルムの製造方法]
図1(a)および
図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るインモールド成形用転写フィルムの製造方法について説明する。本実施の形態では、離型層L1を積層し、保護層L6を省略する場合を説明している。しかし、基材L0が離型性を有する場合には、離型層L1も省略することができる。まず、基材L0の一方の面に離型層L1をウェットコーティング法により積層し、熱硬化させる。(S01)。次に、離型層L1上にIMD層L2をウェットコーティング法により積層し、熱硬化させる(S02)。次に、IMD層L2上にアンカー層L3をウェットコーティング法により積層し、熱硬化させる(S03)。さらにアンカー層L3上に印刷層L4を積層する(S04)。最後に、印刷層L4上に接着層L5を積層する(S05)。積層は、ウェットコーティング法により行われるため、毎分数十メートルのライン速度(例えば約20m/分)で積層でき、生産効率を上げることができる。工程S01〜S03では、ウェットコーティングごとに層を熱硬化させるので、塗布液の混合を避けつつ、各層を確実に形成することができる。なお、熱硬化は、後工程である射出成形に必要なノビを妨げない程度に行なうことが好ましい。
【0069】
製造されたインモールド成形用転写フィルムは、後述のインモールド成形(射出成形工程S06)において、転写層が射出成形される樹脂等に転写され、インモールド成形用転写フィルムから剥離される(残フィルムが残る)。このように、転写層と樹脂によりインモールド成形体が形成される。なお、転写された転写層には、IMD層面の硬化(S07)において、活性エネルギー線(例えばUV)が照射される。これにより含有する活性エネルギー線硬化性樹脂が硬化し、インモールド成形体最表面のIMD層の硬度をさらに向上させる。
【0070】
インモールド成形用転写フィルムの製造方法により製造されるインモールド成形用転写フィルムでは、IMD層L2は活性エネルギー線硬化性樹脂に熱硬化性樹脂を混合させて構成される。インモールド成形前の加熱(例えば乾燥時)によって、IMD層L2中に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させることにより、活性エネルギー線(例えばUV)照射前であっても、IMD層L2がある程度の硬度を有するようにする。
インモールド成形における射出成形では、樹脂がピンゲート(1点)もしくはバルブゲート(1点)で金型内に入り、樹脂が広がることによりインモールド成形体が得られる。射出成形の際、ある程度溶けた樹脂(260℃位)の当たる部分には、熱および圧力がかかる。そのため、その部分の層が流れるゲート流れが生じる。
本願のインモールド成形用転写フィルムでは、IMD層L2の熱硬化およびアンカー層L3の熱硬化により、このゲート流れを抑制する。一方で、IMD層L2は、硬化前の活性エネルギー線硬化性樹脂を含有するため、射出成形に必要な成形性(特に金型への追従性)を維持することができる。
このように、本願のインモールド成形用転写フィルムの製造方法は、成形性、耐熱性、耐久性、さらには、耐ブロッキング性、耐溶剤性の優れたインモールド成形用転写フィルムを得ることができる。
【0071】
図3に、インモールド成形用転写フィルムの使用例を示す。
[インモールド成形(射出成形工程S06)]
インモールド成形用転写フィルムの製造方法で製造されたインモールド成形用転写フィルム(IMDフィルムF10)を用いて、射出成形工程S06を説明する。なお、IMDフィルムF10は、保護層L6を有していない。
1.フィルム送り
基材PET側が金型(
図3では向かって左側の金型)側になるように、フィルム送り装置からIMDフィルムF10が供給され、金型に固定されたセンサーによって、IMDフィルムF10が所定位置まで誘導される。
2.吸引
IMDフィルムF10をクランプした後吸引し、金型の形状にする。
3.射出成形
金型を閉じ、樹脂を射出成形する。
4.転写
取り出しロボットが進入し、インモールド成形体(成形体13)が固定側より突き出される(転写層が残フィルム12から剥離し、樹脂に転写され、成形体13を構成する)。
[IMD層面の硬化(UV照射工程S07)]
IMD層面に活性エネルギー線を照射して、IMD層中の活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させる。
活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化させるためのUV照射による硬化法としては、UVランプ(例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ)から200〜400nmの波長のUVをIMD層に短時間(数秒〜数十秒の範囲内)照射すればよい。また、電子線照射による硬化法としては、300keV以下の自己遮蔽型の低エネルギー電子加速器から低エネルギー電子線をIMD層に照射すればよい。
【0072】
このように、本願のインモールド成形用転写フィルムを用いることにより、携帯電話端末やノートPC、デジタルカメラ等の筐体、その他家電製品や化粧品容器、さらには自動車部品加飾が可能となる。さらに、本願のインモールド成形用転写フィルムは、耐溶剤性、耐熱性、耐久性、耐ブロッキング性、成形性に優れており、より強力な表面保護が可能となる。
【実施例】
【0073】
本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお本発明は、以下の実施例によって限定されない。
【0074】
[インモールド成形用転写フィルムの形成1]
[実施例1]
<離型層の形成>
メラミン系離型コート剤((株)三羽研究所:ATOM BOND(商品名) RP−30、製品中約30重量%の樹脂成分を含む)32.5重量%、希釈溶媒としてトルエン/キシレン/2−ブタノン混合溶媒((株)三羽研究所:ATOM BOND(商品名) R−シンナー)64.9重量%、触媒としてパラトルエンスルホン酸エステル((株)三羽研究所:CP触媒)2.6重量%からなるコーティング液C1(樹脂成分濃度10重量%)を調製した。
得られたコーティング液C1を、R.D.スペシャリティーズ社製コーティングロッド(#6)を用いて、基材フィルムL0である三菱樹脂(株)製ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm、G440E)の易接着コート面上に塗布した。
得られた塗膜を、150℃の高温チャンバーで20秒間硬化と同時に乾燥させて、膜厚1μmの離型層L1を有するフィルムF1を得た。
なお、塗膜の膜厚は、(株)ニコン製デジマイクロ「MF−501+カウンタTC−101」にて、塗工面と未塗工面の膜厚を測定し、その膜厚差から算出した。
<IMD層の形成>
活性エネルギー線硬化性樹脂として、光開始剤入りUV反応性アクリル樹脂(DIC(株):UVTクリヤー(商品名) NSF−001、製品中約37重量%の樹脂成分を含む)56.0重量%、熱硬化性樹脂として、脂環型多官能エポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株):セロキサイド3150、エポキシ当量:180g/mol)9.0重量%、希釈溶媒として、2−ブタノン(MEK)34.5重量%、硬化剤としてカチオン重合開始剤(三新化学工業(株):サンエイド(商品名) SI−60)0.5重量%からなるコーティング液C2−1(樹脂成分濃度30重量%)を調製した。
得られたコーティング液C2−1を、R.D.スペシャリティーズ社製コーティングロッド(#16)を用いて、フィルムF1の離型層L1面上に塗布した。
得られた塗膜を、140℃の高温チャンバーで60秒間乾燥させ、膜厚4μmのIMD層L2−1を有するフィルムF2−1を得た。
フィルムF2−1は基材フィルムL0(PET)、離型層L1、IMD層L2−1の順に積層されたフィルム構成である。
【0075】
[実施例2]
IMD層の形成において、コーティング液C2−1に代えて、光開始剤入りUV反応性アクリル樹脂(DIC(株):UVTクリヤー(商品名) NSF−001)40.5重量%、脂環型多官能エポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株):セロキサイド3150、エポキシ当量:180g/mol)15.0重量%、2−ブタノン(MEK)43.6重量%、カチオン重合開始剤(三新化学工業(株):サンエイド(商品名) SI−60)0.9重量%からなるコーティング液C2−2(樹脂成分濃度30重量%)を使用し、IMD層L2−2を得た以外は実施例1と同様の操作を行い、基材フィルムL0(PET)、離型層L1、IMD層L2−2の順に積層されたフィルムF2−2を得た。
【0076】
[比較例1]
IMD層の形成において、コーティング液C2−1に代えて、光開始剤入りUV反応性アクリル樹脂(DIC(株):UVTクリヤー(商品名) NSF−001)81.0重量%、希釈溶媒として、2−ブタノン(MEK)19.0重量%からなるコーティング液C2−3(樹脂成分濃度30重量%)を使用し、IMD層L2−3を得た以外は実施例1と同様の操作を行い、基材フィルムL0(PET)、離型層L1、IMD層L2−3の順に積層されたフィルムF2−3を得た。すなわち、IMD層L2−3は、熱硬化性樹脂を含有していない。
【0077】
[試験1]
実施例1〜2および比較例1で得られたフィルム(F2−1〜F2−3)の物性を下記の方法にて測定した。
1)耐溶剤性試験
UV硬化前のフィルムのIMD層面に2−ブタノン(MEK)および酢酸エチルを滴下し、10分間静置後、キムワイプ(日本製紙クレシア製)で液滴を拭き取り、跡残りの有無を目視にて確認した。
評価基準:○ 跡残りなし、× 跡残りあり
2)ブロッキング試験
UV硬化前のフィルムを100mm×100mmにカットし、4枚重ね合わせ、2kgの分銅を載せ、恒温槽(アズワン製、NDH200)にて40℃、24時間、静置した。24時間後、サンプルを取り出し、IMD層の移行具合の模様跡を目視にて確認した。
評価基準:○ 跡残りなし、× 跡残りあり
3)動的粘弾性試験
UV硬化前のフィルムのIMD層のみを膜として取り出し、粘弾性測定解析装置((株)ユービーエム製、DVE−V4)を用いて、E’(貯蔵弾性率)が顕著に低下する温度領域を測定し、耐熱性の指標とした。
(サンプルサイズ:5mm×10mm、ステップ温度:2℃、昇温速度:5℃/min、基本周波数:10Hz、静荷重制御:自動静荷重、動的応力制御、100g、歪み制御:10μm、0.1%、自動調整、歪み波形:正弦波、加振状態:ストップ加振)
4)クラック発生伸度
UV硬化前のフィルムのIMD層面にアクリル樹脂系粘着テープ(日東電工(株)製、No.31B、テープ幅 25mm)を貼り付けた後、剥がすことで、テープ粘着面にIMD層が転写された試験片(幅25mm×長さ200mm)を作成した。作成した試験片を引張試験機((株)オリエンテック製、テンシロン RTM−250、最大荷重容量2.5kN)にて速度2mm/min、チャック間距離100mmの条件で引っ張り、クラックが入る距離を測定した。
クラック発生伸度は、以下の式から求めた。
(クラック発生距離−チャック間距離)/チャック間距離×100
5)全光線透過率
UV硬化前のフィルムのIMD層のみを膜として取り出し、日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH5000」を用いて、JIS K7361に基づき、全光線透過率を測定した。
6)ヘーズ
UV硬化前のフィルムのIMD層のみを膜として取り出し、日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH5000」を用いて、JIS K7136に基づき、ヘーズ値を測定した。
7)表面自由エネルギー
協和界面科学(株)製接触角計「DM500」を用いて、UV硬化前のフィルムのIMD層面の接触角を測定した。プローブ液体は、蒸留水(窒素・りん測定用、関東化学(株)製)とリン酸トリクレシル(99%、東京化成工業(株)製)の2種類の液体を使用し、測定値をKaelble−Uyの理論に従って表面自由エネルギーを算出した。
8)UV照射
実施例1〜2および比較例1で得られたフィルムのIMD層面側に、高圧水銀ランプ(H08−L41、定格 160W/cm、岩崎電気(株)製)が付属したコンベア式UV照射装置を用いて、照度200mW/cm
2、露光量1000mJ/cm
2で紫外線を照射し、紫外線硬化させた皮膜を得た。露光量は、照度計(UVPF−A1/PD−365、岩崎電気(株)製)で測定した。
9)鉛筆硬度測定
前記、UV照射後のフィルムのIMD層側を、表面性試験機 HEIDON Type:14W(新東科学(株)製)を用いて、JIS K5600に準じて測定を行った。
【0078】
【表1】
熱硬化性樹脂を含有するIMD層を有するフィルム(実施例1、実施例2)は、動的粘弾性試験結果およびクラック発生伸度結果から分かるように、耐熱性、および耐久性や成形性に繋がる膜の強度が大幅に改善されている。また、耐溶剤性、耐ブロッキング性も改善されており、フィルム製造時の加工適性も向上した。さらに表面自由エネルギー値の増加により、アンカー層を塗工する際の印刷適性も優れていることがわかる。
【0079】
[インモールド成形用転写フィルムの形成2]
[実施例3]
<アンカー層の形成>
ウレタン樹脂(DIC(株):UCシーラー(商品名) NA−001、製品中約30重量%の樹脂成分を含む)36.8重量%、ウレタン硬化剤(DIC(株):N−1、製品中約40重量%の樹脂成分を含む)7.4重量%、脂環型多官能エポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株):セロキサイド3150、エポキシ当量:180g/mol)6.0重量%、2−ブタノン(MEK)49.5重量%、カチオン重合開始剤(三新化学工業(株):サンエイド(商品名) SI−60)0.3重量%からなるコーティング液C3−1(樹脂成分濃度20重量%)を調製した。
得られたコーティング液C3−1を、R.D.スペシャリティーズ社製コーティングロッド(#9)を用いて、フィルムF2−1のIMD層面上に塗布した。
得られた塗膜を、140℃の高温チャンバーで60秒間乾燥させ、膜厚2μmのアンカー層L3−1を有するフィルムF3−1を得た。
フィルムF3−1は、基材フィルムL0(PET)、離型層L1、IMD層L2−1、アンカー層L3−1の順に積層されたフィルム構成である。すなわち、フィルムF3−1は、実施例1のフィルムF2−1上にアンカー層L3−1を積層したフィルムである。
【0080】
[実施例4]
アンカー層の形成において、フィルムF2−1に代えて、フィルムF2−2を使用し、アンカー層L3−1を得た以外は実施例3と同様の操作を行い、基材フィルムL0(PET)、離型層L1、IMD層L2−2、アンカー層L3−1の順に積層されたフィルムF3−2を得た。すなわち、フィルムF3−2は、実施例2のフィルムF2−2上にアンカー層L3−1を積層したフィルムである。
【0081】
[比較例2]
アンカー層の形成において、フィルムF2−1に代えて、フィルムF2−3を使用し、また、コーティング液C3−1に代えて、ウレタン樹脂(DIC(株):UCシーラー(商品名) NA−001)52.6重量%、ウレタン硬化剤(DIC(株):N−1)10.5重量%、2−ブタノン(MEK)36.9重量%からなるコーティング液C3−2(樹脂成分濃度20重量%)を使用しアンカー層L3−2を得た以外は実施例3と同様の操作を行い、基材フィルムL0(PET)、離型層L1、IMD層L2−3、アンカー層L3−2の順に積層されたフィルムF3−3を得た。すなわち、IMD層L2−3は熱硬化性樹脂を含まず、アンカー層L3−2はIMD層L2−3と同一の熱硬化性樹脂を含まない。フィルムF3−3は、比較例1のフィルムF2−3上にアンカー層L3−2を積層したフィルムである。
【0082】
[試験2]
実施例3〜4および比較例2で得られたフィルム(F3−1〜F3−3)の物性を試験1と同様の方法にて測定した。
1)耐溶剤性試験
UV硬化前のフィルムのアンカー層面に2−ブタノン(MEK)および酢酸エチルを滴下し、10分間静置後、キムワイプ(日本製紙クレシア製)で液滴を拭き取り、跡残りの有無を目視にて確認した。
評価基準:○ 跡残りなし、× 跡残りあり
2)ブロッキング試験
UV硬化前のフィルムを100mm×100mmにカットし、4枚重ね合わせ、2kgの分銅を載せ、恒温槽(アズワン製、NDH200)にて40℃、24時間、静置した。
24時間後、サンプルを取り出し、アンカー層の移行具合の模様跡を目視にて確認した。
評価基準:○ 跡残りなし、× 跡残りあり
3)動的粘弾性試験
UV硬化前のフィルムのアンカー層とIMD層で構成された膜を取り出し、粘弾性測定解析装置((株)ユービーエム製、DVE−V4)を用いて、E’(貯蔵弾性率)が顕著に低下する温度領域を測定し、耐熱性の指標とした。
(サンプルサイズ;5mm×10mm、ステップ温度;2℃、昇温速度;5℃/min、基本周波数;10Hz、静荷重制御;自動静荷重、動的応力制御、100g、歪み制御;10μm、0.1%、自動調整、歪み波形;正弦波、加振状態;ストップ加振)
4)クラック発生伸度
UV硬化前のフィルムのアンカー層面にアクリル樹脂系粘着テープ(日東電工(株)製、No.31B、テープ幅 25mm)を貼り付けた後、剥がすことで、テープ粘着面に転写層(IMD層+アンカー層)が転写された試験片(幅25mm×長さ200mm)を作成した。作成した試験片を引張試験機((株)オリエンテック製、テンシロン RTM−250、最大荷重容量2.5kN)にて速度2mm/min、チャック間距離100mmの条件で引っ張り、クラックが入る距離を測定した。
クラック発生伸度は、以下の式から求めた。
(クラック発生距離−チャック間距離)/チャック間距離×100
5)全光線透過率
UV硬化前のフィルムのIMD層とアンカー層からなる膜を取り出し、日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH5000」を用いて、JIS K7361に基づき、全光線透過率を測定した。
6)ヘーズ
UV硬化前のフィルムのIMD層とアンカー層からなる膜を取り出し、日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH5000」を用いて、JIS K7136に基づき、ヘーズ値を測定した。
7)表面自由エネルギー
協和界面科学(株)製接触角計「DM500」を用いて、UV硬化前のフィルムのアンカー層面の接触角を測定した。プローブ液体は、蒸留水(窒素・りん測定用、関東化学(株)製)とリン酸トリクレシル(99%、東京化成工業(株)製)の2種類の液体を使用し、測定値をKaelble−Uyの理論に従って表面自由エネルギーを算出した。
8)剥離力測定
UV硬化前のフィルムのアンカー層面に市販のセロハンテープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)CT−24、テープ幅24m)を貼り合わせ、2kgの圧着ローラーで1往復圧着し、圧着から30分後のフィルムの離型層とIMD層との剥離力を引張試験機((株)東洋精機製作所製、ストログラフ VES05D、最大荷重容量50N)にて測定した。
なお、剥離力測定値は、チャック間距離100mm、180度の角度で剥離速度300mm/minの条件で求められる剥離に要する力(N)をテープ幅(cm)で割った値(N/cm)とした。
【0083】
【表2】
熱硬化性樹脂を含有するIMD層およびアンカー層を有するフィルム(実施例3、実施例4)は、動的粘弾性試験結果およびクラック発生伸度結果から分かるように、耐熱性、および耐久性や成形性に繋がる膜の強度が大幅に改善されている。また、耐溶剤性、耐ブロッキング性も改善されており、フィルム製造時の加工適性も優れていることがわかる。
【0084】
[試験3]
実施例3〜4および比較例2で得られたフィルム(F3−1〜F3−3)に、下記に示した層を形成した後、射出成形テストを実施した。
1)印刷層および接着層の形成
実施例3〜4および比較例2で得られたフィルム(F3−1〜F3−3)のアンカー層面側に、#300メッシュの版が取り付けられたバッチ式スクリーン印刷機(MINOMAT−e、(株)ミノグループ製)を用いて、印刷層L4(VIC(Z)710ブラック、(株)セイコーアドバンス製、膜厚4μm)、接着層L5(JT−27ベースクリヤー、(株)セイコーアドバンス製、膜厚2μm)を順次積層させた。
2)射出成形テスト
前記、印刷層L4および接着層L5が塗工されたフィルムをバルブゲートタイプのインモールド成形用テスト金型が取り付けられた射出成形機(IS170 (i5)、東芝機械(株)製)にセットし、PC/ABS樹脂(LUPOY PC/ABS HI5002、LG化学製)を射出成形することで、転写された成形品を得た。
(射出条件:スクリュー径40mm、シリンダー温度250℃、金型温度(固定側、可動側)60℃、射出圧力160MPa(80%)、保圧力100MPa、射出速度60mm/秒(28%)、射出時間4秒、冷却時間20秒)
前記、得られた転写成形品のゲート部、深絞りコーナー部の外観を目視にて確認した。
ゲート部 評価基準:○ 樹脂・インキ流れなし、× 樹脂・インキ流れあり
深絞りコーナー部 評価基準:○ クラック発生なし、× クラック発生あり
3)UV照射
前記、得られた転写成形品の転写層面側に、高圧水銀ランプ(H08−L41、定格 160W/cm、岩崎電気(株)製)が付属したコンベア式UV照射装置を用いて、照度200mW/cm
2、露光量1000mJ/cm
2で紫外線を照射し、紫外線硬化させた皮膜を得た。露光量は、照度計(UVPF−A1/PD−365、岩崎電気(株)製)で測定した。
4)鉛筆硬度測定
前記、UV照射後の転写成形品の転写層側を、表面性試験機 HEIDON Type:14W(新東科学(株)製)を用いて、JIS K5600に準じて測定を行った。
5)密着性試験
前記、UV照射後の転写成形品を70℃の熱水に30分間浸漬させ、乾燥後、転写層側に1mm間隔で縦横それぞれ11本の切れ目を付け、100個のマス目を作り、市販のセロハンテープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)CT−24、テープ幅24m)をよく密着させ、90度手前方向に急激に剥がした際の、皮膜が剥離せずに残存した碁盤目の個数を表した。なお、この方法はJIS K5400に準拠している。
【0085】
【表3】
熱硬化性樹脂を含有するIMD層およびアンカー層を有するフィルム(実施例3、実施例4)は、射出成形時のゲート流れを防ぎ、かつ立体構造部のフィルム(膜)の追従性も改善され、成形性に優れていることがわかる。また、UV照射後は高硬度化が図られ、各層間の密着性も改善され耐久性にも優れていることがわかる。
【0086】
[インモールド成形用転写フィルムの形成3]
<重合体A−1の合成>
表面改質機能を発現する化合物(重合体A−1)を合成する。
窒素シールされたリフラックスコンデンサー、温度計、攪拌羽根およびセプタムが装着された四ツ口フラスコ(300ml)に、化学物質A(フルオロシルセスキオキサン化合物)(11.25g)、メチルメタクリレート(MMA、33.75g)および2−ブタノン(MEK、104.41g)を導入した。その後、オイルバスにて加温し、15分間還流させた後、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)/MEK溶液(10重量%、5.8683g)を投入し、重合を開始させた。5時間反応を行った後、AIBN/MEK溶液(10重量%、5.8683g)をさらに添加し、3時間熟成させた。ガスクロマトグラフィーにより、モノマー転化率が飽和に達したところを反応終点とし、目的とする重合体A−1のMEK溶液を得た。得られた重合体A−1のモノマー組成、フッ素濃度:F濃度、重量平均分子量:Mw、多分散指数:Mw/Mnは表4に示す通りであった。重量平均分子量、多分散指数はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、型番:アライアンス2695、ウォーターズ社製、カラム:Shodex GPC KF−804L x 2本(直列)、ガードカラム:KF−G)を用いて測定した。
【0087】
化学物質Aは、下記式(I)に示される分子構造を有する。
【化2】
【0088】
【表4】
【0089】
[実施例5]
<離型層の形成>
実施例1と同様の方法で、離型層L1を有するフィルムF1を得た。
<表面改質層を有するIMD層の形成>
まず、重合体A−1のMEK溶液を、R.D.スペシャリティーズ社製コーティングロッド(#6)を用いて、フィルムF1の離型層L1面上に塗布した。
得られた塗膜を、80℃の高温チャンバーで60秒間乾燥させ、膜厚2μmの表面改質層を得た。
次に、活性エネルギー線硬化性樹脂として、光開始剤入りUV反応性アクリル樹脂(DIC(株):UVTクリヤー(商品名) NSF−001、製品中約37重量%の樹脂成分を含む)56.0重量%、熱硬化性樹脂として、脂環型多官能エポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株):セロキサイド3150、エポキシ当量:180g/mol)9.0重量%、希釈溶媒として、2−ブタノン(MEK)34.5重量%、硬化剤としてカチオン重合開始剤(三新化学工業(株):サンエイド(商品名) SI−60)0.5重量%からなるコーティング液C2−1(樹脂成分濃度30重量%)を調製した。
得られたコーティング液C2−1を、R.D.スペシャリティーズ社製コーティングロッド(#16)を用いて、表面改質層面上に塗布した。
得られた塗膜を、140℃の高温チャンバーで60秒間乾燥させ、表面改質層を有する膜厚6μm(2μmは表面改質層)のIMD層L2−4を有するフィルムF2−4を得た。
<アンカー層の形成>
実施例3と同様の方法で、コーティング液C3−1を調製した。
得られたコーティング液C3−1を、R.D.スペシャリティーズ社製コーティングロッド(#9)を用いて、フィルムF2−4のIMD層面上に塗布した。
得られた塗膜を、140℃の高温チャンバーで60秒間乾燥させ、膜厚2μmのアンカー層L3−1を有するフィルムF3−4を得た。
すなわち、フィルムF3−4は、基材フィルムL0(PET)、離型層L1、IMD層L2−4、アンカー層L3−1の順に積層されたフィルム構成である。なお、IMD層L2−4は、表面改質層を有する層である。
【0090】
[実施例6]
<表面改質成分を含有するIMD層を備えたフィルムの形成>
表面改質層を形成しなかったこと、また、IMD層の形成において、C2−1に表面改質成分となる重合体A−1のMEK溶液をC2−1の樹脂成分濃度に対して1%添加したコーティング液C2−4を使用し、IMD層L2−5を得た以外は、実施例5と同様の操作を行い、フィルムF3−5を得た。
すなわち、フィルムF3−5は、基材フィルムL0(PET)、離型層L1、IMD層L2−5、アンカー層L3−1の順に積層されたフィルム構成である。なお、IMD層L2−5は、表面改質成分を含む層である。
【0091】
[試験4]
実施例3、5および6で得られたフィルム(F3−1、F3−4、F3−5)に、下記に示した層を形成した後、射出成形テストを実施した。
1)印刷層および接着層の形成
実施例3、5および6で得られたフィルム(F3−1、F3−4、F3−5)のアンカー層面側に、#300メッシュの版が取り付けられたバッチ式スクリーン印刷機(MINOMAT−e、(株)ミノグループ製)を用いて、印刷層L4(VIC(Z)710ブラック、(株)セイコーアドバンス製、膜厚4μm)、接着層L5(JT−27ベースクリヤー、(株)セイコーアドバンス製、膜厚2μm)を順次積層させた。
2)射出成形テスト
前記、印刷層L4および接着層L5が塗工されたフィルムをバルブゲートタイプのインモールド成形用テスト金型が取り付けられた射出成形機(IS170 (i5)、東芝機械(株)製)にセットし、PC/ABS樹脂(LUPOY PC/ABS HI5002、LG化学製)を射出成形することで、転写された成形品を得た。
(射出条件:スクリュー径40mm、シリンダー温度250℃、金型温度(固定側、可動側)60℃、射出圧力160MPa(80%)、保圧力100MPa、射出速度60mm/秒(28%)、射出時間4秒、冷却時間20秒)
前記、得られた転写成形品のゲート部、深絞りコーナー部の外観を目視にて確認した。
ゲート部 評価基準:○ 樹脂・インキ流れなし、× 樹脂・インキ流れあり
深絞りコーナー部 評価基準:○ クラック発生なし、× クラック発生あり
3)UV照射
前記、得られた転写成形品の転写層面側に、高圧水銀ランプ(H08−L41、定格 160W/cm、岩崎電気(株)製)が付属したコンベア式UV照射装置を用いて、照度200mW/cm
2、露光量1000mJ/cm
2で紫外線を照射し、紫外線硬化させた皮膜を得た。露光量は、照度計(UVPF−A1/PD−365、岩崎電気(株)製)で測定した。
4)表面自由エネルギー
協和界面科学(株)製接触角計「DM500」を用いて、前記、UV照射後の転写成形品の転写層側の接触角を測定した。プローブ液体は、蒸留水(窒素・りん測定用、関東化学(株)製)とリン酸トリクレシル(99%、東京化成工業(株)製)の2種類の液体を使用し、測定値をKaelble−Uyの理論に従って表面自由エネルギーを算出した。
5)鉛筆硬度測定
前記、UV照射後の転写成形品の転写層側を、表面性試験機 HEIDON Type:14W(新東科学(株)製)を用いて、JIS K5600に準じて測定を行った。
6)密着性試験
前記、UV照射後の転写成形品を70℃の熱水に30分間浸漬させ、乾燥後、転写層側に1mm間隔で縦横それぞれ11本の切れ目を付け、100個のマス目を作り、市販のセロハンテープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標)CT−24、テープ幅24m)をよく密着させ、90度手前方向に急激に剥がした際の、皮膜が剥離せずに残存した碁盤目の個数を表した。なお、この方法はJIS K5400に準拠している。
【0092】
【表5】
【0093】
IMD層が表面改質層を有するフィルム(実施例5)、およびIMD層が表面改質成分を含有するフィルム(実施例6)は、実施例3(表面改質層もしくは表面改質成分を有さないフィルム)に比べて、よりUV照射後の転写成形品において高硬度化が図ることができた。さらに、低表面自由エネルギー化により、防汚機能の付与に繋がる撥水・撥油性にも優れていることがわかる。
【0094】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0095】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。