(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
質量平均分子量が6万〜15万である樹脂を含有し、空気下において100℃の状態から5℃/分の昇温速度で熱質量測定を行ったときの30%熱質量減少温度が310℃以下であり、40%熱質量減少温度と20%熱質量減少温度の差が7℃以下である導光体予備成形物用樹脂組成物。
ヘリウム80質量%及び酸素20質量%を含有する擬似空気流下で、40℃の状態から5℃/分の昇温速度で加熱した際に発生する物質を光エネルギーによるイオン化法で質量分析を行なったときの質量電荷比m/z100を示すピークの中で最大のピークのピーク温度が310℃以下であり、ピーク温度半値幅が25℃以下である請求項1に記載の導光体予備成形物用樹脂組成物。
質量平均分子量が6万〜15万である樹脂及び窒素下において100℃の状態から5℃/分の昇温速度で熱質量測定を行ったときの90%熱質量減少温度が250℃以上650℃以下であるシリコーン化合物を含有する導光体予備成形物用樹脂組成物。
樹脂が、メタクリル酸メチル単位30〜100質量%及びその他の単量体単位0〜70質量%を含有する重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の導光体予備成形物用樹脂組成物。
請求項6又は8に記載の導光体予備成形物の少なくとも1つの端面を光入射端面とし、導光体予備成形物の2つの主面の一方を光出射面とし、他方の主面を裏面とする面光源装置用導光体であって、光出射面若しくは裏面の一部又は全体の領域に気泡を有する表面層が形成されている面光源装置用導光体。
請求項7又は9に記載の積層導光体予備成形物を構成する導光体予備成形物の少なくとも1つの端面を光入射端面とし、積層導光体予備成形物の2つの主面のうち導光体予備成形物側又は透光性シート側の主面を光出射面とする面光源装置用導光体であって、導光体予備成形物側の主面の一部又は全体の領域に気泡を有する表面層が形成されている面光源装置用導光体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
樹脂
本発明で使用される樹脂(以下、「本樹脂」という)は本発明の導光体予備成形物用樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」という)に含有されるものである。
【0017】
本樹脂の質量平均分子量(以下、「Mw」という)は6万〜15万である。Mwを6万〜15万とすることで、射出成形や押出成形において成形性を良好とすることができる。Mwの上限値は、10万以下が好ましい。
【0018】
本樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル単独重合体またはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物の共重合体が挙げられる。なかでも、メタクリル酸メチル単位30〜100質量%及びその他の単量体単位0〜70質量%を含有する重合体であることが好ましい。メタクリル酸メチル単位を30質量%以上とすることで、得られる導光体の透明性が向上する傾向にある。
【0019】
その他の単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸iso−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸iso−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル及びスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体が挙げられる。なお、これらその他の単量体は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本樹脂組成物
第1の本樹脂組成物は、質量平均分子量が6万〜15万である樹脂を含有し、空気下において100℃の状態から5℃/分の昇温速度で熱質量測定を行ったときの30%熱質量減少温度が310℃以下であり、40%熱質量減少温度と20%熱質量減少温度の差が7℃以下の値を示す。本樹脂組成物の30%熱質量減少温度が310℃以下であり、40%熱質量減少温度と20%熱質量減少温度の差が7℃以下であると、本樹脂組成物から得られるシートである導光体予備成形物(以下、「本導光体予備成形物」という)等の成形体(以下、「本成形体」という)のレーザー発泡性が良好となる。
【0021】
第1の本樹脂組成物は、本成形体のレーザー照射加工による表面発泡層の形成性の点で、表面に、ヘリウム80質量%及び酸素20質量%を含有する擬似空気流下で、40℃の状態から5℃/分の昇温速度で加熱した際に発生する物質を光エネルギーによるイオン化法で質量分析を行なったときの質量電荷比m/z100を示すピークの中で最大のピークのピーク温度が310℃以下であり、ピーク温度半値幅が25℃以下であるものが好ましい。
【0022】
m/z100ピーク温度及びピーク温度半値幅が上記の条件を満足する本樹脂組成物を使用することにより、レーザー照射加工により本導光体予備成形物の表面における発泡性が良好となり、光散乱性が良好となる傾向にある。
【0023】
レーザー照射加工により本導光体予備成形物の表面に良好な光散乱性を付与するためには、レーザー照射により本導光体予備成形物の表面に多くの発泡層を形成する必要がある。従って、より良好な発泡層の形成が可能な本成形体はレーザー照射加工時にはより多くの本導光体予備成形物の分解物ガスが発生する。
【0024】
本発明においては、本樹脂組成物に含有される樹脂としてメタクリル酸メチル単位30〜100質量%及びその他の単量体単位0〜70質量%を含有する重合体を使用する場合には、本樹脂組成物の分解物ガス成分としてメタクリル酸メチル成分を示す質量電荷比m/z100の検出状態を評価することにより本導光体予備成形物の表面における発泡層の形成状況を判断することができる。
【0025】
本発明においては、m/z100ピーク温度としては、レーザー照射加工時の分解物ガス発生の点で、200℃以上が好ましい。また、ピーク温度半値幅は、レーザー加工性の点で、1℃以上が好ましい。
【0026】
尚、本発明において、ピーク温度半値幅とは、質量電荷比m/z100を示すピークの中で最大のピークにおける最大検出量の50%以上の検出量となる温度領域を示す値をいう。
【0027】
第1の本樹脂組成物には、例えば、本樹脂の含有量が50質量%以上100質量%以下の樹脂組成物が挙げられるが、本樹脂100質量部に対して熱分解促進剤を0.0001〜1質量部、好ましくは0.0001〜0.5質量部含有する樹脂組成物を用いてもよい。
【0028】
上記熱分解促進剤としては、例えば、窒素下において100℃の状態から5℃/分の昇温速度で熱質量測定を行ったときの90%熱質量減少温度が250℃以上650℃以下であるシリコーン化合物(以下、「本シリコーン化合物」という)が好ましい。第1の本樹脂組成物中に本シリコーン化合物を含有することで、レーザー発泡性が良好となる傾向にある。
【0029】
本シリコーン化合物としては、例えば、ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。
【0030】
本シリコーン化合物の具体例としては、東レ・ダウコーニング(株)製のSH200 C FLUID 100CS(商品名)及び信越化学工業(株)製のKF96A−30CS(商品名)等が挙げられる。
【0031】
第1の本樹脂組成物中の本シリコーン化合物の含有量は、10,000質量ppm以下が好ましい。本シリコーン化合物の含有量が10,000質量ppm以下で本成形体の透明性が良好となる傾向がある。また、本樹脂組成物中の本シリコーン化合物の含有量は、50質量ppm以上が好ましい。本シリコーン化合物の含有量が50質量ppm以上で、本成形体の表面に光を散乱させるに十分な発泡が得られる傾向にある。
【0032】
また、第2の本樹脂組成物は、質量平均分子量が6万〜15万である樹脂と、窒素下において100℃の状態から5℃/分の昇温速度で熱質量測定を行ったときの90%熱質量減少温度が250℃以上650℃以下であるシリコーン化合物とを含有する。第2の本樹脂組成物中に本シリコーン化合物を含有することで、本成形体のレーザー発泡性が良好となる。
【0033】
なお、第2の本樹脂組成物で使用されるシリコーン化合物は、第1の本樹脂組成物において説明したものと同一であり、その含有量も同一の範囲が好適である。
【0034】
また、第2の本樹脂組成物において、本樹脂100質量部に対する本シリコーン化合物の含有量は、0.0001〜1質量部であることが好ましく、0.0001〜0.5質量部であることが更に好ましい。
【0035】
第1及び第2の本樹脂組成物(以下、単に「本樹脂組成物」という)には必要に応じて紫外線吸収剤、離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0036】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール,2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール,2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン,2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン,2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤及びフェニルサリシレート,4−t−ブチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用することができる。
【0037】
離型剤としては、例えば、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ステアリルアルコール等の高級アルコール及びステアリン酸等の高級脂肪酸が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用することができる。
【0038】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤及びフォスファイト系酸化防止剤が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併せて使用することができる。
【0039】
なお、本樹脂組成物は、例えば、本樹脂と、必要に応じて適宜選択される各種添加剤とを混合することにより調製できる。
【0040】
本樹脂組成物の質量分析において、本樹脂組成物の加熱には、例えば、熱質量分析計(TG:Thermogravimeter)及び示差熱熱質量同時測定装置(TG/DTA)を用いることができる。
【0041】
前述の条件で本樹脂組成物を加熱したときに発生する物質は本樹脂組成物の分解物である。
【0042】
分解物としては、例えば、本樹脂組成物に使用される樹脂の原料である単量体成分、二酸化炭素及び水が挙げられる。
【0043】
本発明において、質量電荷比m/z100のピーク温度及びピーク温度半値幅を測定する場合、上記の分解物は速やかに質量分析計(MS:Mass Spectrometer)へ導入される。
【0044】
本発明においては、本樹脂組成物の分解物を発生させる熱質量分析計と質量分析計をつなぐインターフェースで本樹脂組成物の分解物の吸着を抑制する点で、熱質量分析計と質量分析計の結合距離はできるだけ短い方が好ましく、(株)リガク製のThermoMass Photo(商品名)のように、熱質量分析計と質量分析計が一体となったものを使用するのが好ましい。
【0045】
熱質量分析計と質量分析計が一体となった装置では、熱質量分析計内で試料を加熱することによって発生した分解物ガスが質量分析計のイオン化室へ運ばれ、分解物ガスに光が照射されて光イオン化が行なわれる。生成されたイオンはイオン分離手段によって質量電荷比ごとに分離され、イオン検出手段によって検出され、質量電荷比ごとのイオン強度が求められる。
【0046】
本発明においては、本樹脂組成物の質量分析は、光エネルギーによる光イオン化法(PI:Photo Ionization)で実施される。
【0047】
光イオン化法は、分解物ガスに光を照射したときに光の電磁波エネルギーを吸収することによって分子をイオン化する方法で、加速電圧を用いて試料分子に衝撃を与えてイオン化する電子衝撃イオン化法(EI:Electron impact Ionization)よりイオン化エネルギーが低いために、分解物ガスの分解やフラグメントイオン化が起こりにくい点で好ましい。
【0048】
本発明において、イオン化に使用される光としては、質量電荷比m/z100のイオン化に適している点で、紫外線(波長10〜380nm)が好ましい。
【0049】
光源としては、重水素ランプ(121.567nm、h=10.2eV)が好ましい。
【0050】
本発明に使用される質量分析計としては、例えば、上述のガスをイオン化するイオン化部、発生したイオンを質量電荷比ごとに分離するイオン分離部及びイオン強度を検出するイオン検出部を有するものを使用することができる。
【0051】
イオン分離部におけるイオン分離手段としては、例えば、(1)四重極に印加する高周波電圧の周波数を変化させながらイオンを分離する四重極分離方式、(2)イオンを電場及び磁場中に通すことによって分離する電場方式、(3)イオンに所定の力を加えてイオンを飛行させて検出器に到達するまでの時間の差によってイオンを分離する飛行時間方式及び(4)四重極を応用したイオントラップ方式といった各種イオン分離方式を適用できる。
【0052】
導光体予備成形物
本発明の導光体予備成形物(以下、本導光体予備成形物という)は、本樹脂組成物から得られるシートである。なお、本発明において、シートは、厚さが50μm以上、30mm以下である。
【0053】
本導光体予備成形物は、本樹脂組成物を使用してシートを得た後に所望のサイズに切断して所要寸法のものを得ることができる。
【0054】
本発明においては、本樹脂組成物から得られる本成形体を使用して、本成形体をシート状に成形したものを使用することができる。
【0055】
シートの切断の際に、切断端面を鏡面に加工してもよい。
【0056】
切断の方法としては、例えば、ランニングソー、パネルソー及びレーザー光を用いる方法が挙げられる。
【0057】
切断端面の鏡面化には、サンドペーパーを用いる研磨方法、アルミナ等の公知の研磨剤で研磨する方法、切断端面にダイヤモンド刃を回転接触させるプラビューティー等の公知の方法を用いることができる。
【0058】
本樹脂組成物をシート状に成形する方法としては、例えば、押出成形法、射出成形法及び熱プレス成形法が挙げられる。
【0059】
本導光体予備成形物は、例えば、以下の方法により得ることができる。
【0060】
まず、本樹脂組成物のペレットを得る。ペレットを製造する方法としては、例えば、本樹脂を得るためのモノマーを含む原料中に熱分解促進剤を分散したものを重合して得られる本樹脂組成物を押出機に投入してペレットを得る方法及び樹脂と熱分解促進剤を混合したものを押出機に投入してペレットを得る方法が挙げられる。
【0061】
次いで、得られたペレットを用いて射出成形、押出成形、熱プレス成形等の成形方法によりシート状の導光体予備成形物を得る。
【0062】
積層導光体予備成形物
本発明の積層導光体予備成形物(以下、本積層導光体予備成形物という)は、本導光体予備成形物を別の透光性シートに積層した積層体である。
【0063】
別の透光性シートとは、本導光体予備成形物と異なる透光性シートであって、例えば、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、MS樹脂(メチルメタクリレート・スチレン共重合体樹脂)等のスチレン含有樹脂等の透明樹脂のシートが挙げられる。
【0064】
本積層導光体予備成形物の製造方法としては、例えば、本樹脂組成物のペレットと透光性シートの原料となる樹脂を同時に押出してシート状に成形する方法及び本導光体予備成形物と透光性シートを熱プレス成形して積層体とする方法が挙げられる。
【0065】
面光源装置用導光体及び面光源装置
次に、本発明による面光源装置用導光体及び面光源装置の実施形態につき、説明する。
【0066】
図1は本発明による面光源装置の一実施形態を示す模式的構成図であり、
図2はその面光源装置における導光体を示す模式的部分断面図である。
【0067】
以上のようにして得られた導光体予備成形物の主表面(導光体予備成形物が積層導光体予備成形物である場合には、積層導光体予備成形物を構成する導光体予備成形物の露出面からなる主表面)に対して、レーザー光照射による加工(レーザー照射加工)を行い、導光体予備成形物用樹脂組成物からなる導光体予備成形物主表面の表層部に
図2に示されているような気泡を有する表面層244を形成する。
【0068】
レーザー照射加工に使用されるレーザーとしては、導光体予備成形物の導光体予備成形物用樹脂組成物からなる表層部に対する加工効率の良いものを使用することが好ましく、例えば、炭酸ガスレーザー(CO
2レーザー)等の赤外レーザーが使用され、その波長は、例えば、9.3μmや10.6μmである。赤外レーザーを用いることにより、導光体予備成形物が照射されたレーザー光を効率的に吸収し、吸収した部位が加熱されるため、効率的なレーザー照射加工が可能となる。炭酸ガスレーザー照射加工装置としては、キーエンス社製CO
2レーザーマーカー ML−Z9520T(波長:9.3μm、平均出力:20W)が挙げられる。
【0069】
気泡を有する表面層244の縦断面形状(プロファイル)は、導光体予備成形物の主表面に対するレーザーの出力、走査速度、焦点位置(フォーカス位置)を変化させることで、容易に変化させることができる。
【0070】
図1に示されているように、本実施形態の面光源装置は、点状の一次光源としてのLED22と、該LEDから発せられる光を導光する板状の導光体24と、光拡散素子26と、第1の光偏向素子28と、第2の光偏向素子30と、光反射素子32とを備えている。
【0071】
導光体24は、
図1及び
図2における上下方向を厚み方向としており、紙面と垂直の方向に広がりをもっており、全体として矩形板状をなしている。導光体24は、4つの側端面を有しており、そのうちの1対の側端面のうちの一方が光入射端面241とされ、光入射端面241と対向するようにLED22が隣接配置されている。尚、本実施形態では導光体24が1つの光入射端面241を有するが、本発明は少なくとも1つの端面が光入射端面であればよいため、これに限定されるものではなく、所望により1対の側端面の双方、2対の側端面の全て、を光入射端面としてもよい。この場合、全ての光入射端面と対向するようにLEDが隣接配置される。なお、導光体予備成形物が積層導光体予備成形物である場合には、積層導光体予備成形物を構成する導光体予備成形物の4つの側端面のうち少なくとも1つの端面が光入射面である。
【0072】
導光体24の光入射端面241に略直交する2つの主表面のうちの一方である上面が光出射面242とされている。なお、導光体予備成形物が積層導光体予備成形物である場合、積層導光体予備成形物の主表面は、導光体予備成形物側と透光性シート側の2種類の主表面が考えられるが、本発明においては、導光体予備成形物側及び透光性シート側のどちらの主表面が光出射面であってもよい。本実施形態では該光出射面242は、平滑面(鏡面)からなるが、これに限定されるものではなく、光出射面にプリズム形状やマイクロレンズ形状等を付与することができる。
【0073】
尚、LED22は、複数設けられていてもよい。この場合、複数のLED22は、
図1の紙面と垂直の方向に適宜の間隔をもって配置され、それらから発せられる光の最大強度光の方向が互いに平行となるように配置するのが好ましい。
【0074】
導光体24の光出射面242と反対側の主面(裏面)243には、光出射機構が形成されている。なお、本発明の面光源装置用導光体においては、光出射面及び裏面のどちらの面に光射出機構が形成されていてもよいため、これに限定されるものではなく、導光体の光出射面に光出射機構を形成することもできる。但し、導光体予備成形物が積層導光体予備成形物である場合においては、光出射機構が形成される面が導光体予備成形物側の主面に限定される。光出射機構は、裏面243の一部の領域において形成された気泡を有する表面層244からなる。気泡を有する表面層244は、光出射面242または裏面243の法線の方向を含む断面(縦断面)が凹形状をなしている。
【0075】
気泡を有する表面層244が形成されている領域は、裏面243における複数のドット状領域からなる。このドット状領域の寸法は、たとえば、径が30〜1000μmであり、深さが0.1〜500μmである。また、気泡を有する表面層244は、厚みが1〜50μmであるのが好ましい。
【0076】
尚、気泡を有する表面層244が形成されている領域の形状は、以上のようなドット状に限定されるものではなく、ストライプ状領域すなわち線状または帯状の領域からなるものであってもよい。この場合においても、ストライプの延在方向と直交する断面(縦断面)の形状について、上記ドット状の場合の断面(縦断面)の形状についての説明が当てはまる。
【0077】
気泡を有する表面層244は、シート状の本導光体予備成形物を用いて、レーザー照射加工を行うことで、形成することができる。
【0078】
気泡を有する表面層244の縦断面形状(プロファイル)の変化は、後述のような製造方法において、導光体予備成形物の主表面に対するレーザーの出力、走査速度及び焦点位置(フォーカス位置)を変化させることで、実現することができる。
【0079】
気泡を有する表面層244は、多数の気泡を含んでおり、気泡内部は導光体材料とは屈折率が大きく異なる。かくして、気泡を有する表面層244は光の透過及び反射に対する不均一層として機能し、その光学的性質において光拡散層として機能する。これにより、光入射端面241に入射し、導光体内部を導光される光は、気泡を有する表面層244において拡散反射され、一部が光出射面242からの出射が許容される角度にて光出射面242へと向かい、光出射面242から出射する。
【0080】
導光体裏面243の一部の領域において気泡を有する表面層244が形成されているので、光出射面242からは、光出射面242の法線方向(
図1及び
図2における上下方向)及び光入射端面241と直交する方向の双方を含む面内の分布において幾分ブロードな指向性をもつ光が出射する。
【0081】
このような気泡を有する表面層244の機能は、気泡を有する表面層244の発泡状態に依存する。形成される気泡が小さすぎたり、単位面積あたりの気泡の数が少なすぎたりすると、良好な光拡散機能が得にくくなる。
【0082】
裏面243における気泡を有する表面層244の領域は、複数設けることができる。気泡を有する表面層244の領域がドット状である場合には、その分布は、たとえば、ランダム状、碁盤目状、千鳥状又は最密充填状のようにすることができる。気泡を有する表面層244の領域がストライプ状である場合には、その分布は、たとえば、平行縞状のようにすることができる。
【0083】
また、裏面243における気泡を有する表面層244は、一部の領域に形成されているが、本発明の面光源装置用導光体はこれに限定されるものではなく、気泡を有する表面層が光出射面の一部若しくは全部の領域又は裏面の全部の領域に形成される場合もある。但し、導光体予備成形物が積層導光体予備成形物である場合においては、光出射機構が形成される面が導光体予備成形物側の主面に限定されるため、導光体予備成形物側の主面の一部又は全部の領域に気泡を有する表面層が形成される。
【0084】
なお、導光体24の光出射機構としては、上記の様な裏面243に形成した気泡を有する表面層244と併用して、導光体24の内部に光拡散性微粒子を混入分散することで形成したものを用いることができる。また、光出射面242または裏面243にプリズム列、シリンドリカルレンズ列等の形状を付与してもよい。
【0085】
また、導光体24としては、
図1及び
図2に示されるような全体として一様な厚さ(裏面243の気泡を有する表面層244の凹形状を無視した場合の厚さ)の板状のものの他に、光入射端面241から反対端面の方へと次第に厚さが小さくなる様なくさび状のもの等の、種々の断面形状のものを使用することができる。
【0086】
導光体24の厚さは、例えば0.3〜30mmである。
【0087】
光拡散素子26は、導光体24の光出射面242上に配置されており、たとえば光拡散フィルムからなる。光出射面242から出射される光の指向性が所望の出射角度及び視野角を持つ場合においては、光拡散素子26を省略してもよい。
【0088】
第1の光偏向素子28は光拡散素子26上に配置されており、第2の光偏向素子30は第1の光偏向素子28上に配置されている。すなわち、第1の光偏向素子28と導光体の光出射面242との間に光拡散素子26が介在している。
【0089】
第1の光偏向素子28及び第2の光偏向素子30は、導光体24に近い側の入光面と、該入光面と反対側の出光面とを備えており、出光面は互いに平行に配列された複数のプリズム列を含んでなる。但し、第1の光偏向素子28と第2の光偏向素子30とでは、出光面の複数のプリズム列の延在方向が互いに直交している。
【0090】
本実施形態では、第1の光偏向素子28の出光面の複数のプリズム列の延在方向は光入射端面241と平行であり、第2の光偏向素子30の出光面の複数のプリズム列の延在方向は光入射端面241と垂直である。但し、これに限定されない。第1の光偏向素子28の出光面の複数のプリズム列の延在方向及び第2の光偏向素子30の出光面の複数のプリズム列の延在方向の双方が、光入射端面241に対して斜めで且つ互いに直交しているものであってもよい。
【0091】
第1の光偏向素子28及び第2の光偏向素子30の厚さは、例えば30〜350μmである。
【0092】
光出射面242から出射される光が所要の方向に分布のピークを持つような場合においては、第1の光偏向素子28及び第2の光偏向素子30を省略してもよい。また、光出射面242から出射される光または光拡散素子26から出射される光の角度分布が、光偏向を要することなく所要の用途(たとえば看板)での使用が可能となるような場合には、第1の光偏向素子28または第2の光偏向素子30を省略してもよい。
【0093】
光反射素子32としては、例えば表面に金属蒸着反射層を有するプラスチックシート(光反射シート)を用いることができる。尚、導光体24の光入射端面として利用される端面以外の端面にも反射部材を付することが好ましい。裏面243から出射される光の量が無視し得る程度に少ない場合においては、光反射素子32を省略してもよい。
【0094】
以上のようなLED22、導光体24、光拡散素子26、第1の光偏向素子28及び第2の光偏向素子30並びに光反射素子32からなる面光源装置の発光面(第2の光偏向素子30の出光面)上に、液晶表示素子を配置することにより液晶表示装置が構成される。液晶表示装置は、
図1における上方から液晶表示素子を通して観察者により観察される。
【0095】
なお、第2の光偏向素子30の出光面上に、第2の光拡散素子を隣接配置して、画像表示の品位低下の原因となるぎらつきや輝度斑等を抑止し、画像表示の品質を向上させることができる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明する。また、以下において各種評価は以下に示す方法により実施した。
【0097】
<質量平均分子量の測定>
樹脂の質量平均分子量は以下の測定により求めた。
樹脂10mgをテトラヒドロフラン(THF)10mL中に添加して一晩静置溶解させ、樹脂のTHF溶液を得た。次いで、樹脂のTHF溶液を試料として液体クロマトグラフィー(東ソー(株)製、商品名:HLC−8120)を用いて測定した。
測定に際し、ガードカラムには東ソー(株)製TSK guard column Sper H−Hを使用し、分離カラムには東ソー(株)製TSK−Gel Super HM−Hを2本直列に配列したものを使用した。使用溶媒はTHF、流量は0.6mL/分、検出器は示差屈折計、測定温度は40℃、及び注入量は10μLとした。標準ポリマーにはポリスチレンを使用した。
【0098】
<樹脂組成物の熱質量減少温度の測定>
樹脂組成物の熱質量減少温度の測定には、示差熱熱質量同時測定装置(TG/DTA:(株)リガク製 TG8120(商品名))を用いた。サンプル質量は5mgとし、低温揮発成分の影響を排除するため、20℃/分の昇温速度で100℃まで加熱後、10分間保持した。その後、5℃/分の昇温速度で650℃まで加熱しながら質量減少を測定し、100℃で10分保持後の質量を基準として、質量減少率が20%、30%及び40%となるときの温度をそれぞれ20%、30%及び40%熱質量減少温度とした。なお、測定はすべて空気雰囲気下で行った。
【0099】
<m/z100ピーク温度及びピーク温度半値幅>
(株)リガク製の示差熱天秤−光イオン化質量分析同時測定システム「Thermo Mass Photo(商品名)」を用いて、樹脂組成物についての質量分析を以下の条件で実施した。
試料室内の天秤の基準側に空のアルミ製カップを配置し、測定試料側に樹脂組成物の試片7mgを充填したアルミ製カップを配置した。
測定機器中に、ヘリウム80質量%及び酸素20質量%を含有する混合ガスである、擬似空気を300mL/分で流通させ、質量変化が安定したところで測定を開始した。
擬似空気流下、40℃の状態から5℃/分の速度で昇温し、発生する分解物ガス中の質量電荷比m/z100についてm/z100ピーク温度及びピーク温度半値幅の測定を実施した。分解物ガスのイオン化には光イオン化法を用いた。
【0100】
<シリコーン化合物の90%熱質量減少温度の測定>
シリコーン化合物の90%熱質量減少温度の測定には、示差熱熱質量同時測定装置(TG/DTA:(株)リガク製、商品名:TG8120)を用いた。サンプル質量を5mgとし、低温揮発成分の影響を排除するため、20℃/分の昇温速度で100℃まで加熱後、10分間保持した。その後、5℃/分の昇温速度で650℃まで加熱しながら質量減少を測定し、100℃で10分保持後の質量を基準として、質量減少率が90%となるときの温度を90%熱質量減少温度とした。なお、測定はすべて窒素雰囲気下で行った。
【0101】
<発泡層の状態>
樹脂成形体の表面に炭酸ガスレーザー((株)キーエンス製、商品名:ML−Z9520T(波長:9.3μm、平均出力:20W))を照射してレーザー加工処理を実施した。次いで、レーザー加工処理された箇所の正面及びその断面の状態を電子顕微鏡にて観察し、発泡層の有無を下記基準で目視評価した。
○:レーザー加工処理された箇所に多数の空隙が確認された。
×:レーザー加工処理された箇所には空隙がわずかに確認されるか全く確認されなかった。
【0102】
<輝度分布評価>
図3は面光源装置の光学特性の評価方法の説明図であり、輝度分布評価に用いた測定装置の一例の模式図が示される。この測定装置により、面光源装置用導光体Bを用いて構成された面光源装置の輝度分布を下記の方法により評価した。
定電流電源450により20mAで発光させたLED光源440(日亜化学工業(株)製LED NS2W123B(商品名)1灯)を被測定用の面光源装置用導光体Bの光入射端面402に、反射シート410(帝人デュポンフィルム(株)製UX(商品名、)厚み225μm)を光出射面(
図3における上面)の反対側の裏面(
図3における下面)に、それぞれ配置した。
輝度計460((株)トプコン製BM−7(商品名))を用い、光出射機構401を設けた部位を中心とした視野角2度のエリアの光出射面から出射される光の、面光源装置用導光体B内での導光方向(
図3における左右方向)と平行で導光体光出射面に垂直な面内での−90度から90度までの出射光角度における輝度分布を測定した。なお出射方向は、光出射面法線方向を0度、光出射機構401から見て光入射端面402の方向を−(マイナス)、その反対方向を+(プラス)とした。この測定結果に基づき、輝度分布の半値角度幅(度)を得た。
【0103】
<発光品位評価>
図3に示す測定装置を使用して以下の条件で、面光源装置用導光体Bを用いて構成された面光源装置の発光品位を下記の方法により評価した。
定電流電源450により20mAで発光させたLED光源440(日亜化学工業(株)製 LED NS2W123B(商品名)1灯)を被測定用の面光源装置用導光体Bの光入射端面402に、反射シート410(帝人デュポンフィルム(株)製 UX(商品名)、厚み225μm)を光出射面の反対側の裏面に、それぞれ配置した。
更に、
図3には示されていないが、
図1に示されるように、導光体光出射面(242)に隣接して光拡散素子としての拡散シート(26)並びに第1及び第2の光偏向素子としてのプリズムシート(28,30)を配置した。プリズムシートは、プリズム列形成面が面光源装置用導光体B(24)の光出射面(242)と反対側(上向き)に向く方向で配置した。すなわち、プリズムシート(28,30)は、面光源装置用導光体B(24)に近い側の入光面と、該入光面と反対側の出光面とを備えており、出光面は複数のプリズム列を含んでなる。拡散シート(26)としては、(株)きもと製LCDバックライト用高輝度拡散フィルム(商品名:ライトアップ100GM3)を、プリズムシート(28,30)としては、住友スリーエム(株)製輝度上昇フィルム(商品名:Vikuiti BEFII90/50)を用いた。第1のプリズムシート(28)をプリズム列と導光体光入射端面402(241)とが互いに平行になるように、第2のプリズムシート(30)をプリズム列と導光体内での導光方向とが互いに平行(すなわちプリズム列と導光体光入射端面402(241)とが互いに垂直)になるように、それぞれ配置した。
前述の輝度分布評価と同様にして、LED440を発光させ、レーザーエッチング加工により形成された凹部のドットが視認できるか否かを目視にて確認することで発光品位を評価した。
×:ドットが視認できた。
○:ドットが視認できず良好な面発光が得られた。
【0104】
[実施例1]
メタクリル樹脂のペレット(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットVH000、Mw:86,000、メタクリル酸メチル単位90質量%以上)に、熱分解促進剤として東レ・ダウコーニング(株)製ポリジメチルシロキサンSH200C FLUID 100CSを500質量ppm添加した後、(株)カワタ製スーパーミキサーSMV−20(商品名)を用い攪拌羽根回転数1,000rpmにて30秒攪拌し、添加剤混合ペレットを得た。さらにこの添加剤混合ペレットを用いて(株)池貝製二軸押出機PCM45(商品名)にてコンパウンド化を行い、樹脂組成物を得た。コンパウンド条件としては、押出時の温度条件C1を180℃、C2を235℃、C3を235℃、C4を235℃、C5を235℃、C6を240℃、ADを245℃及びDを245℃とした。また、吐出量を60kg/時間、スクリュー回転数を200rpm、フィーダー回転数を45rpm及びベント真空圧を−95kPa以下とし、押出されたストランドを水温55℃の水槽中にて冷却した後にいすず化工機(株)製SCF−150型ペレタイザー(商品名)を使用してペレタイズし、樹脂組成物を得た。
【0105】
次いで、得られた樹脂組成物を(有)ステック製SBD−150AS型除湿乾燥機にて温度80℃で24時間の乾燥を行った後に、ファナック(株)製 AUTOSHOT T Model 100D(商品名)を用い、射出成形することにより幅100mm、長さ100mm及び厚さ3mmの樹脂成形体を作製した。この時の金型温度を60℃とし、シリンダ温度としてC1を250℃、C2を250℃、C3を250℃及びC4を250℃とし、射出速度を20mm/秒、射出圧力(保圧)を70MPa、保圧時間を20秒、計量を30mm、冷却時間を30秒及びサイクルを45秒とした。
【0106】
成形時の歪が残留したままでレーザーエッチング加工を行った場合には、レーザー加工時の熱により成形時の歪の熱緩和が起こり、エッチング形状が不安定となるため、実際にエッジライトを行った際に輝度のムラが生じ易いことから、得られた成形品の成形時の歪を除去するためのアニール処理を行った後にアニール成形品を得た。アニール条件としては、外寸法100mm×100mm、内寸法80mm×80mm及び厚み3mmのステンレス板を2枚用いて成形品の上下面を挟み、更にステンレス板の周辺をクリップにて挟み固定した後に、熱風乾燥機中にて120℃にて16時間加熱し、更に130℃にて16時間の加熱を行った。
【0107】
得られたアニール成形品の100mm×100mmのステンレス板で挟んだ周辺部分を切断して得られた80mm×80mm×厚さ3mmの導光体予備成形物を使用して評価した結果を表1に示す。
【0108】
上記の導光体予備成形物から、
図4(b)に示すような、60mm×30mmの試験片を切り出した。
【0109】
次いで、試験片の光出射面310と対向する面(光出射面の反対側の面)に、炭酸ガスレーザー((株)キーエンス製、商品名:ML−Z9520T(波長:9.3μm、平均出力:20W))を用い、出力80%及び走査速度500mm/秒で、レーザー焦点位置を樹脂成形体の表面に合わせた条件にてレーザー照射加工し、
図4(b)及び(c)に示す光出射機構301を有する導光体を得た。導光体の評価結果を表1に示す。
【0110】
尚、レーザー照射加工で形成するパターンは、
図4(a)の拡大図に示すように、光入射端面と平行な方向に0.5mmピッチでドット形状を13個配列したパターンとした。また、レーザー照射加工する場所を光入射端面320から40mm及び試験片の側端面から15mmの位置を中心とした6.5mm×6.5mmのエリアとした。また光入射端面の反対側の端面には黒インキ塗布により遮光処理した。
【0111】
[実施例2]
メタクリル樹脂のペレット(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットVH000、Mw:86,000、メタクリル酸メチル単位90質量%以上)に、熱分解促進剤として東レ・ダウコーニング(株)製ポリジメチルシロキサンSH200C FLUID 100CSを100質量ppm添加した後、(株)カワタ製スーパーミキサーSMV−20(商品名)を用い攪拌羽根回転数1,000rpmにて30秒攪拌し、添加剤混合ペレットを得た。
【0112】
得られた添加剤混合ペレットを使用し、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0113】
得られた樹脂成形体の表面から厚さ120μmの部位をエンドミル(ユニオンツール(株)製、超硬エンドミルCPR2060−12(商品名))にて切り出して、厚さ120μmのシート(本導光体予備成形物)を用意した。また、メタクリル樹脂ペレット(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットVH000、Mw:86,000、メタクリル酸メチル単位90質量%以上)を用いて、実施例1と同様にして射出成形して得られた樹脂成形体(透明性シート)を用意した。次いで、これらをアズワン(株)製AH−2003(商品名)を用いて130℃、1トン及び30秒間の条件で熱プレスし、100mm×100mm×厚さ3.1mmの積層導光体予備成形物(本導光体予備成形物の厚さ120μm)を得た。
【0114】
得られた積層導光体予備成形物の熱分解促進剤を含むアクリル樹脂組成物を含有する層(本導光体予備成形物)に実施例1と同様にしてレーザー加工を施し、発泡層の状態を顕微鏡にて観察し評価した。結果を表1に示した。
【0115】
[比較例1]
メタクリル樹脂及び熱分解促進剤からなる樹脂組成物ペレットの代わりにメタクリル樹脂のペレット(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットVH000、Mw:86,000、メタクリル酸メチル単位90質量%以上)を使用する以外は実施例1と同様にして樹脂成形体及び導光体を得た。評価結果を表1に示す。
【0116】
[比較例2]
アクリルキャストシート(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリライトL000、厚み4mm、質量平均分子量61万、メタクリル酸メチル単位90質量%以上)を粉砕し、実施例1と同様の方法で射出成形を行った。しかしながら、分子量が高く流動性が悪いため、シート状の成形体を得ることが出来なかった。
【0117】
表1の評価結果から明らかなように、質量平均分子量が6万〜15万である樹脂を含有し、30%熱質量減少温度が310℃以下であり、40%熱質量減少温度と20%熱質量減少温度の差が7℃以下である樹脂組成物を表面に有する導光体予備成形物とすることでレーザー照射加工により表面発泡層が形成され、光散乱性の良好なパターンが形成できることがわかる。しかしながら、上記の条件から外れる樹脂成形体ではレーザー加工処理された箇所には空隙がわずかに確認されるか全く確認されず、良好な光拡散性を有するものは得られなかった。
【0118】
【表1】
【0119】
*1 射出成形性の評価に関し、「○」は射出成形できた場合を示し、「×」は射出成形できなかった場合を示す。
【0120】
[実施例3〜8並びに比較例3及び4]
メタクリル樹脂のペレット(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットVH000、メタクリル酸メチル単位90質量%以上)に対し、熱分解促進剤として表2に記載のシリコーン化合物を表2に記載の濃度になるように添加し、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0121】
得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の方法で射出成形後、アニール処理し、導光体予備成形物を得た。得られた導光体予備成形物を実施例1と同様の方法でレーザー加工し、導光体を得た。
【0122】
実施例3〜8並びに比較例3及び4において、添加したシリコーン化合物の種類、添加量(濃度[質量ベース])及び90%熱質量減少温度、得られた面光源装置用導光体Bの気泡を有する表面層の厚み及び輝度分布の半値角度幅、並びに面光源装置の発光品位評価結果を表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
なお、表2中に示されるシリコーン化合物の種類A〜Fは、以下の通りである。
A:信越化学工業(株)製ポリジメチルシロキサンKF96A−10CS
B:信越化学工業(株)製ポリジメチルシロキサンKF96A−20CS
C:信越化学工業(株)製ポリジメチルシロキサンKF96A−30CS
D:信越化学工業(株)製ポリジメチルシロキサンKF96A−50CS
E:東レ・ダウコーニング(株)製ポリジメチルシロキサンSH200C FLUID 100CS
F:信越化学工業(株)製ポリジメチルシロキサンKF96A−6CS
【0125】
面光源装置用導光体Bの凹部の表面および断面の観察結果(SEM写真)を
図5に示す。
【0126】
図5に示されるように、熱質量減少(TG/DTA)測定における90%熱分解温度が250℃以上650℃以下のシリコーン化合物を用いた実施例3〜8の面光源装置用導光体では、導光体の主表面にレーザーエッチングで形成した凹状の光出射機構部の表面に数μmオーダーの凹凸が観察され、断面には複数の気泡が傾斜面近傍に局在していることがわかる。すなわち、気泡を有する表面層は、ひび割れ状、陥没孔状または空洞内包状の微細構造を有するものであり、上記微細構造中に気泡を含むものである。
【0127】
一方、シリコーン化合物が添加されていない比較例3の面光源装置用導光体、及び、熱質量減少(TG/DTA)測定における90%熱分解温度が250℃未満のシリコーン化合物を用いた比較例4の面光源装置用導光体では、凹部表面において微細な凹凸が観察できるが、いずれもその断面には気泡は観察されず、気泡を有する表面層は形成されていないことがわかる。
【0128】
表2に示すとおり、凹部の表面に気泡を有する表面層を有する実施例3〜8の面光源装置用導光体では、広い半値角度幅を持ったブロードな輝度分布特性を有する。そのため、光学素子と組み合わせて面光源装置を構成した場合、気泡を有する表面層に対応する凹部ドットが視認されにくく品位の高い発光が得られる。
【0129】
これに対し、凹部の表面に気泡を有する表面層を有さない比較例3及び4の面光源装置用導光体では、半値角度幅が著しく狭く、指向性の強い出射パターンしか得られない。このため、実施例3〜8の面光源装置用導光体の場合と同様に光学素子と組み合わせて面光源装置を構成した場合、凹部ドットが視認されやすく、品位の高い発光を得ることができない。このドット透けを改善し、高い発光品位を得るためには、凹部ドットをより細かくより高密度に形成する必要があるため、結果的にレーザーエッチング加工に長時間を要し、生産性の低下を招く。
【0130】
以上の結果より、本発明の導光体予備成形物用樹脂組成物、導光体予備成形物、積層導光体予備成形物及び面光源装置用導光体を用いることより、高効率の光拡散機能を持った光出射機構が容易に得られ、これにより容易に高品位の面光源装置を得ることが可能となる。