(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックハニカム体の製造方法において、前記当接部の前記主軸に直交する断面積に対する前記当接面の面積の割合が、30〜100%であることを特徴とするセラミックハニカム体の製造方法。
請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックハニカム体の製造方法において、前記当接面が10〜500μmの表面粗さ(最大高さRz)を有することを特徴とするセラミックハニカム体の製造方法。
請求項1〜6のいずれかに記載のセラミックハニカム体の製造方法において、前記除去加工は、周速1〜10 m/sで回転させたセラミックハニカム体を、軸方向に送り量0.1〜1 mm/revで送りながら切削することにより行うことを特徴とするセラミックハニカム体の製造方法。
請求項1〜8のいずれかに記載のセラミックハニカム体の製造方法において、前記外周部を除去加工した後のセラミックハニカム体の外周面に、コート材を塗布してセラミックハニカム構造体とする工程をさらに有することを特徴とするセラミックハニカム体の製造方法。
請求項1〜11のいずれかに記載のセラミックハニカム体の製造方法において、前記セラミックハニカム体の外周部を工具で除去加工する前に、前記セラミックハニカム体の第1の端面及び第2の端面の外縁部を面取りすることを特徴とするセラミックハニカム体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の態様を説明する。ただし、本発明は、以下の実施の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられてもよい。
【0026】
[1]セラミックハニカム体の製造方法
セラミックハニカム体を製造する本発明の方法は、(a)セラミック原料に、バインダー、水、必要に応じて造孔剤等を混合し、混練してセラミック坏土を得る工程、(b)得られたセラミック坏土を、押出成形用金型を通じて押出成形し、外周部と、隔壁により囲まれてた軸方向に延びる多数の流通孔とを有するハニカム構造の成形体を得る工程、(c)得られた成形体を熱風乾燥炉、マイクロ波乾燥炉等で乾燥させ、乾燥体を得る工程、(d)乾燥したセラミックハニカム体に、所定長さとなるように、かつ両端面がほぼ平面となるように切断加工を行う工程、(e)切断したセラミックハニカム体を旋盤に保持し、回転させながら、前記外周部を除去加工する工程、及び(f)外周部を除去加工したセラミックハニカム体を焼成炉により所定温度下で加熱し、バインダー等の除去及び焼成を行い、焼成済みのセラミックハニカム体を得る工程を有する。焼成済みのセラミックハニカム体は、所定長さとなるように、かつ両端面がほぼ平面となるようにさらに切断加工しても良い。なお、上記の方法では、前記外周部の除去加工は焼成前のセラミックハニカム体に対して行っているが、焼成後のセラミックハニカム体に対して行ってもよい。
【0027】
さらに外周部を除去加工したセラミックハニカム体の外周面に、コート材を塗布する工程を追加しても良いし、焼成前又は焼成後に、両端面に開口するセルの一方の端部又は他方の端部を交互に目封止する工程を追加しても良い。
【0028】
(1)セラミック原料
セラミック原料としては、コーディエライト、コーディエライト化原料、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素-コーディエライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。これらの中でも、コーディエライト化原料が好ましい。コーディエライト化原料とは、焼成によりコーディエライトとなる原料を意味し、42〜56質量%のSiO
2、30〜45質量%のAl
2O
3、及び12〜16質量%のMgOからなる化学組成となるように配合されたセラミックス原料である。具体的にはタルク、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及びシリカの中から選ばれた複数の無機原料を上記化学組成となるような割合で含むものが挙げられる。
【0029】
(2)外周部の除去加工
セラミックハニカム体の外周部の除去加工は、焼成前又は焼成後のセラミックハニカム体を旋盤の主軸上に回転自在に保持し、前記保持されたセラミックハニカム体を、前記主軸を中心として回転させ、前記回転するセラミックハニカム体の外周部を工具で切削することにより行う。
【0030】
前記旋盤は、前記主軸上に配置された、第1の固定治具と、前記第1の固定治具にほぼ対向する第2の固定治具とを有し、
前記第1の固定治具及び第2の固定治具は、互いに対向する側の端部に、前記セラミックハニカム体の端面の外形より小さい外形を有する当接部と、前記当接部の端面に形成され、前記主軸に直交するほぼ平坦な当接面とを有し
前記セラミックハニカム体の保持は、前記第1及び第2の固定治具の前記当接面を、それぞれ前記セラミックハニカム体の両端面に、前記セラミックハニカム体の中心軸が前記旋盤の主軸と一致するように当接させ、前記セラミックハニカム体をその両端面で押圧して行う。
【0031】
(a)セラミックハニカム体の保持
図2(a)及び
図2(b)は、主軸Zが水平方向になるように配置された旋盤30を用いてセラミックハニカム体10の外周部12を除去加工する態様を示す。隔壁により囲まれた軸方向に延びる多数の流通孔を有するセラミックハニカム体10を、旋盤30の主軸上に配置された固定治具21、22によって回転自在に保持する。旋盤30は、主軸Z上に配置された、第1の固定治具21と、前記第1の固定治具21にほぼ対向するように、心押し台35に取り付けられた第2の固定治具22とを有している。前記第1の固定治具21及び第2の固定治具22の、互いに対向する側の端部には、それぞれ前記セラミックハニカム体10の軸方向端面5a、5bの外形より小さい外形を有する当接部210及び当接部220を有しており、前記当接部210及び当接部220の端面には、それぞれ前記主軸Zに直交するほぼ平坦な当接面211及び当接面221が形成されている。
【0032】
前記セラミックハニカム体10の保持は、前記第1及び第2の固定治具21、22の当接部210、220の端面に形成された当接面211、221に、それぞれセラミックハニカム体10の両端面5a、5bを、セラミックハニカム体10の中心軸が前記主軸Zとほぼ一致するように当接させ、前記心押し台35に取り付けられた第2の固定治具22を前記他方の固定治具21方向に移動させながら加圧し、前記固定治具21、22の当接面211、221で前記セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを押圧して行う。
【0033】
上述のセラミックハニカム体10を両端面5a、5bから押圧保持する方法は、セラミックハニカム体10の端部をチャック装置で直接把持固定する従来の方法とは異なり、加工後にセラミックハニカム体10の端部のチャックした未加工の箇所を切断する工程が不要となり、歩留り良くセラミックハニカム体10を製造することができるとともに、加工時の負荷によるセラミックハニカム体10の保持部分の破損が起こりにくい。
【0034】
(b)除去加工
両端面5a、5bを押圧保持された前記セラミックハニカム体10を前記固定治具21、22とともに主軸Z周りに回転させ、送り台42上に固定された工具41を送りねじ43によって軸と平行な方向に移動させながら、回転しているセラミックハニカム体10の外周部12に当ててその除去加工を行う。
【0035】
セラミックハニカム体10の外周部12を加工する際、前記固定治具21、22の当接部210、220が、前記セラミックハニカム体10の端面5a、5bの外形よりも小さい外形を有しているので、工具41を、セラミックハニカム体10の第1の端面5aから第2の端面5bまでの全長にわたって送ることができ、セラミックハニカム体10の全ての外周面を加工することが可能となる。
【0036】
セラミックハニカム体10は多孔質の隔壁からなるセル構造を有しており脆性が高いため、第1の端面5aから第2の端面5bに向かって工具41を送りながら外周部12の除去加工を行った場合、加工が終了する際(前記工具41が第2の端面5bに近づいたとき)に前記第2の端面5bの周縁部が破損される場合がある。そのような破壊を回避するために、加工の方向を途中で逆転させてセラミックハニカム体10の第1の端面5a及び第2の端面5bの両方から加工が開始されるようにしてセラミックハニカム体10外周部12の除去加工を行うのが好ましい。
【0037】
すなわち、
図10(a)に示すように、第1の固定治具21の当接面211及び第2の固定治具22の当接面221に、それぞれセラミックハニカム体10の第2の端面5a及び第1の端面5bを、セラミックハニカム体10の中心軸が旋盤30の主軸Zとほぼ一致するように当接させて、セラミックハニカム体を回転自在にその両端面で押圧保持し、
前記保持されたセラミックハニカム体10を、前記主軸Zを中心軸として回転させ、
工具41を、前記回転する前記セラミックハニカム体10の第1の端面5bから第2の端面5aに向けて送りながら、第2の端面5aから1 mm以上手前の位置まで除去加工した後、第2の端面5a側の端部に未加工の外周部12aを残して前記工具41の送りを停止するとともに前記セラミックハニカム体10の回転を停止し、
前記セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを押圧保持している前記第1の固定治具21及び第2の固定治具22の保持を解除して、前記セラミックハニカム体10を前記旋盤30から取り外し、
前記旋盤30から取り外したセラミックハニカム体10を、
図10(b)に示すように、第1の端面5bと第2の端面5aとを逆にして、すなわち前記第1の固定治具21の当接面211及び第2の固定治具22の当接面221にそれぞれセラミックハニカム体10の第1の端面5b及び第2の端面5aを当接させて、セラミックハニカム体10の中心軸が旋盤30の主軸Zとほぼ一致するように、その両端面5a、5bで回転自在に押圧保持し、
前記保持されたセラミックハニカム体10を、前記主軸Zを中心として回転させ、
前記工具14を、回転する前記セラミックハニカム体10の第2の端面5aから第1の端面5bに向けて送りながら、前記未加工の外周部12aを除去加工するのが好ましい。
【0038】
また他の方法として、
図10(a)に示すように、工具41を、回転するセラミックハニカム体10の第1の端面5bから第2の端面5aに向けて送りながら、第2の端面5aから1 mm以上手前の位置まで除去加工した後、第2の端面5a側の端部に未加工の外周部12aを残して前記工具41の送りを停止し、
送り台42を主軸Zに対して垂直方向に動かして前記工具41をセラミックハニカム体10から回避させ、
図10(c)に示すように、セラミックハニカム体10の第2の端面5a側へ工具41を移動させ、回転するセラミックハニカム体10の第2の端面5aから第1の端面5bに向けて前記工具41を送りながら、未加工の外周部12aを除去加工する方法が挙げられる。
【0039】
前記セラミックハニカム体10の外周部12を工具14で除去加工する前に、前記セラミックハニカム体10の第1の端面5b及び第2の端面5aの外縁部を面取りすることにより、加工が終了する際の端面の周縁部の破損の発生をさらに抑えることができる。
【0040】
なお本発明においてセラミックハニカム体の外周部の除去加工に用いられる旋盤は、いわゆる汎用の旋盤である必要はなく、回転する主軸にセラミックハニカム体を装着してセラミックハニカム体の外周部を工具を用いて加工できる構造のものであればどのようなものでも良い。また主軸の方向は、水平方向、鉛直方向、水平と鉛直の中間の方向などいずれでも良い。
【0041】
工具としては、研削工具、切削工具等を用いることができる。研削工具としては、アルミナ質系砥粒、炭化珪素質系砥粒、ダイヤモンド砥粒の砥石等の材種、切削工具としては、超硬合金、セラミック、ダイヤモンド、ダイヤモンド焼結体、CBN焼結体等の材種のバイトを用いることができる。
【0042】
(c)当接部の構造
ここで、当接部210、220が、当接するセラミックハニカム体10の端面5a、5bの外形よりも小さい外形を有しているとは、例えば、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、当接部210(220)の軸方向に直交する断面がほぼ円である場合、前記当接部210(220)の断面が、セラミックハニカム体10の端面5a(5b)の直径よりも小さい直径を有しているということである。すなわち、当接部210(220)の軸方向に直交する断面の面積Aに対する、セラミックハニカム体10の端面5a(5b)の面積Bの割合A/Bが、1未満であることを意味する。このとき、前記当接部210の軸方向に直交する断面の中心が、旋盤の主軸上にあるのが好ましい。また前記当接部210の軸方向に直交する断面の外形は、当接面211、221の外形にほぼ等しいのが好ましい。
【0043】
当接部210、220の軸方向に直交する断面の形状は、
図5(b)に示すような円形に限らず、例えば、
図5(c)に示す四角形、
図5(d)に示す六角形、その他様々な形状とすることが可能である。このように当接部210、220の軸方向に直交する断面の形状が円形でなく多角形である場合、当接部210、220が、当接するセラミックハニカム体10の端面5a、5bの外形よりも小さい外形を有しているとは、前記多角形を内部に含む最小の円が、セラミックハニカム体10の端面5a、5bの直径よりも小さい直径を有しているということである。すなわち、前記多角形を内部に含む最小の円の面積Aに対する、セラミックハニカム体10の端面5a、5bの面積Bの割合A/Bが、1未満であることを意味する。セラミックハニカム体10が固定治具21、22に確実に保持されるためには、前記割合A/Bは、0.3以上であるのが好ましく、0.5以上であるのがさらに好ましい。
【0044】
当接部210、220が、当接するセラミックハニカム体10の端面5a、5bの外形よりも小さい外形を有していれば、固定治具21、22の当接部210、220ではない部位は、前記セラミックハニカム体10の端面5a、5bの外形よりも、必ずしも小さい外形を有している必要はない。例えば、
図4(a)に示すように、固定治具21、22の当接部210、220ではない部位が、当接部210、220の外形よりも大きい外形を有していても良い。また
図4(b)に示すように、固定治具21、22の当接部210、220ではない部位が、当接部210、220の外形よりも小さい外形を有していても良い。
【0045】
当接部210、220は、前記固定治具21、22から分離可能に構成することもできる。例えば、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、セラミックハニカム体10の端面5a、5bに当接するほぼ平坦な当接面211、221を有し、セラミックハニカム体10の端面5a、5bの外形よりも小さい外形を有する当接部210、220を固定治具21、22と分離可能な別部材とし、固定治具21、22にボルト、ねじ、ぐぎ、接着等で固定させるようにしてもよい。このように分離可能な別部材とすることにより、当接部210、220を固定治具21、22と異なる材質にすることができ、セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを押圧した際の、セラミックハニカム体10の保持部分の破損を効果的に防止することができる。セラミックハニカム体10の保持部分の破損を効果的に防止するためには、当接部210、220が、例えば、樹脂、木材等の非金属物質からなるのが好ましく、特に樹脂からなるのが好ましい。
【0046】
固定治具21、22が、セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを確実に保持するためには、当接部210、220の軸方向に直交する断面の面積Aに対する、前記当接面211、221の面積Cの割合が30〜100%であるのが好ましい。前述したように、前記当接部210、220の軸方向に直交する断面の外形は、当接面211、221の外形にほぼ等しいのが好ましいので、面積Aに対する面積Cの割合を30〜100%とするためには、例えば、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、当接面211に凹部24を設けることにより可能である。このとき、
図6(a)の斜線部が当接面211の面積Cである。この面積割合(面積C/面積A)は、好ましくは50〜100%であり、さらに好ましくは70〜100%である。
【0047】
セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを確実に保持するためには、セラミックハニカム体10の端面5a、5bに当接する前記当接面211、221の表面粗さ(最大高さRz)が、10〜500μmであるのが好ましい。前記表面粗さが10μm未満の場合、セラミックハニカム体10の端面5a、5bの保持が不十分となって、加工時の負荷でセラミックハニカム体10がずれて、保持部分が破損する場合がある。一方、前記表面粗さが500μmを超えると、セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを押圧保持する際に、セラミックハニカム体10の端面5a、5bに負荷がかかり、端面5a、5bが破損する場合がある。前記表面粗さは、好ましくは50〜400μmであり、さらに好ましくは、80〜350μmである。
【0048】
(d)主軸が鉛直方向の旋盤
前記旋盤30を用いて150 mm以上の外径及び150 mm以上の長さを有する大型のセラミックハニカム体10を加工する場合、その自重を支えるためには、セラミックハニカム体10を保持する力をより大きくする必要がある。しかしながら、セラミックハニカム体10の両端面5a、5bにかける圧力を高くしすぎると、前記端面5a、5bが破損してしまう場合がある。そこで、例えば
図7(a)に示すように、主軸がほぼ鉛直方向になるように旋盤50を構成し、セラミックハニカム体10を軸方向がほぼ鉛直方向になるように配置することにより、比較的低い押圧力でも、前記大型のセラミックハニカム体10を確実に保持することが可能となる。このような主軸がほぼ鉛直方向の旋盤50を用いた加工方法について以下に詳細に説明する。
【0049】
旋盤50は、主軸Zがほぼ鉛直方向であり、主軸Z上に配置された、第1の固定治具21と、上部固定部55に取り付けられ、前記第1の固定治具21にほぼ対向する第2の固定治具22とを有する。前記第1の固定治具21及び第2の固定治具22は、互いに対向する側の端部に、セラミックハニカム体10の端面5a、5bの外形より小さい外形を有する当接部210、220と、前記当接部210、220の
端面に形成され、前記主軸に直交するほぼ平坦な当接面211、221とを有している。
【0050】
前記セラミックハニカム体10の保持は、前記第1及び第2の固定治具21、22の前記当接面211、221を、それぞれ前記セラミックハニカム体10の両端面5a、5bに、前記セラミックハニカム体10の中心軸が前記旋盤50の主軸Zとほぼ一致するように当接させ、前記上部固定部55に取り付けられた第2の固定治具22を鉛直方向に移動させながら加圧することにより、セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを押圧して行う。
【0051】
両端面5a、5bを押圧保持された前記セラミックハニカム体10を前記固定治具21、22とともに主軸Z周りに回転させ、送り台62上に固定された工具61を送りねじ63によって主軸Zと平行な方向に移動させながら、回転しているセラミックハニカム体10の外周部12に当ててその除去加工を行う。
【0052】
このように、主軸Zがほぼ鉛直方向の旋盤50を使用することにより、150 mm以上の外径及び150 mm以上の長さを有する大型のセラミックハニカム体10であっても、比較的低い押圧力で、セラミックハニカム体10の両端面5a、5bをより確実に保持することができるので、外周部12の除去加工時に大きな負荷がかかった場合でも、セラミックハニカム体10の保持部分の破損を防止することができる。また比較的小さな圧力でもセラミックハニカム体10をより確実に保持することができるため、加工時の負荷によるセラミックハニカム体10のずれが起こりにくくなり、加工中にセラミックハニカム体10がずれて外周面が破損してしまうようなトラブルが防止できる。さらに、セラミックハニカム体10の第1の端面5aから第2の端面5bまで外周部12を全面にわたって除去加工できるので、チャック部を切断除去するといった工程が不要であり、歩留り良くセラミックハニカム体10を製造することができる。
【0053】
(e)位置決め治具
第1の固定治具21の当接部210の当接面211に、前記セラミックハニカム体10面5aを当接させた後、前記セラミックハニカム体10の中心軸と、前記旋盤の主軸Zとをほぼ一致させることで、セラミックハニカム体10の外周部を精度よく加工することができる。セラミックハニカム体10の中心軸と、旋盤の主軸Zとは、
図8(a)に示すような、主軸Zと直交し、主軸Zを通る軸(図のX軸)上に配置された位置決め治具81、82を用いて簡単に一致させることができる。前記位置決め治具81(82)は、軸がX軸方向に一致するように配置された棒状部材81c(82c)と、前記棒状部材81c(82c)の先端から、X軸に対してそれぞれ角度θで二股にひらいた接触部材81a及び接触部材81b(接触部材82a及び接触部材82b)とからなり、位置決め治具81及び位置決め治具82が、セラミックハニカム体10を挟んでそれぞれの二股部(接触部材81a、81b及び接触部材82a、82b)が互いに対向するようにX軸方向に移動可能に配置されており、前記接触部材81a、81b、82a、82bをセラミックハニカム体10の外周面に4点で接触させて、セラミックハニカム体10を固定することができる。
【0054】
セラミックハニカム体10の中心軸ZHと旋盤の主軸Zとを一致させるには、あらかじめセラミックハニカム体10の中心軸ZHが主軸Zに一致するときのセラミックハニカム体10の外周面の位置をその外径寸法から算出し、前記接触部材81a、81b及び前記接触部材82a、82bがその外周面の位置に一致するように前記位置決め治具81、82の停止位置を設定しておく。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、中心軸ZHが旋盤の主軸Zと一致しない状態で載置されたセラミックハニカム体10に、
図8(c)に示すように、一方の位置決め治具81を近づけ、あらかじめ設定した停止位置までX軸に沿って移動させて固定する。このとき前記セラミックハニカム体10の初期位置によっては、前記接触部材81a、81bの移動にともなって一緒に移動させてもよい。
【0055】
次いで、
図8(d)に示すように、もう一方の位置決め治具82を、あらかじめ設定した停止位置に向けてX軸に沿って移動させながら、接触部材82a、82bによって前記セラミックハニカム体10を移動させる。位置決め治具82をX軸方向に移動させているときに、接触部材82a、82bのいずれかがセラミックハニカム体10に接触することにより、セラミックハニカム体10をX軸に沿って移動させるとともに、Y軸方向にも移動させるので、X軸方向のずれ及びY軸方向のずれが矯正される。前記位置決め治具82を、あらかじめ設定した停止位置まで移動させることにより、セラミックハニカム体10は前記接触部材81a、81b及び接触部材82a、82bによって4点で固定され、セラミックハニカム体10の中心軸ZHと旋盤の主軸Zとがほぼ一致する。
【0056】
(f)除去加工条件
セラミックハニカム体10の外周部12の除去加工は、セラミックハニカム体10を周速1〜10 m/sで回転させ、軸方向の送り量0.1〜1 mm/revで送りながら切削することによって行うのが好ましい。周速が1 m/s未満の場合、外周部12の除去加工が十分に行えず未加工部が残る場合があり、一方10 m/sを超えると、加工時にセラミックハニカム体10の端面5a、5bにかかる負荷が大きくなり、セラミックハニカム体10の保持部分が破損する場合がある。送り量が0.1 mm/rev未満の場合、加工に時間を要するので効率が悪く、一方1 mm/revを超えると、加工時の負荷が大きくなり、セラミックハニカム体10の保持部分が破損する場合がある。
【0057】
本発明の方法は、未焼成のセラミックハニカム乾燥体の外周部の加工、及び焼成済みのセラミックハニカム体の外周部の加工の両方に適用することができる。焼成済みのセラミックハニカム体は、未焼成のセラミックハニカム体に比べて成形体中に存在していたバインダーが消失して強度が低下するため、外周部を旋盤加工する際にセラミックハニカム体の保持部分に破損が発生しやすい。特に高気孔率のハニカム体の場合、その傾向が顕著になる。従って、本発明の方法は、特に焼成済みのセラミックハニカム体及び高気孔率のハニカム体に対して適用したときにより効果的である。
【0058】
(3)その他の工程
外周部が除去加工されたセラミックハニカム体の外周面に、コート材を塗布し、乾燥、必要に応じて焼成することで、セラミックハニカム構造体とすることができる。コート材は、セラミックス原料、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナ、バインダー、水、必要に応じて分散剤等を混練して、ペースト状にしたものを使用することができる。セラミックス原料は、セラミックハニカム体と同材質であっても良いが、異なる材質であっても良い。例えば、セラミックス原料として、コーディエライト、アルミナ、ムライト、シリカ、チタン酸アルミ等が使用できる。また、コート材には、セラミックス原料に加えて、セラミックス繊維を含んでも良く、さらに無機バインダーや有機バインダーを含んでも良い。
【0059】
外周部を除去加工されたセラミックハニカム体の流通孔の一方の端部又は他方の端部を目封止材で交互に目封止し、焼成して、セラミックハニカム体の外周面に前記コート材を塗布し、セラミックハニカムフィルタとすることができる。前記目封止の形成及び焼成は、前記外周部を除去加工する前に行ってもよい。前記目封止材は、セラミックス原料、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナ、バインダー、水、必要に応じて分散剤等で構成することができ、セラミックス原料は、コーディエライト、アルミナ、ムライト、シリカ、チタン酸アルミ等が使用できる。また、セラミックハニカム体と同材質であっても良いが、異なる材質であっても良い。
【0060】
外周部を除去加工したときに、
図9(a)に示すように、最外周に位置する流通孔4a及びそれよりも内部に位置する所定数の流通孔4bの一方の端部が、外周面11aに開口した構造を有するセラミックハニカム体10において、
図9(b)に示すように、前記外周面11aにコート材を塗布し外周壁11を形成しても良い。このような構造を有する場合、最外周の流通孔4a及びそれよりも内部方向に位置する所定数の流通孔4bの一方の端部が、前記外周壁11により遮蔽され、それにより断熱効果を発揮し、運転開始からの温度上昇時間が短縮され、触媒を担持した時に短時間で触媒活性を高くすることができる。
【0061】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
[2]実施例
実施例1
(a)セラミックハニカム体の製造
カオリン、タルク、シリカ及びアルミナ粉末を調整し、50質量%のSiO
2、36質量%のAl
2O
3、及び14質量%のMgOを含むコージェライト生成原料粉末とし、この原料粉末にバインダーとして合計で8質量%のメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加し、さらに潤滑剤、並びに造孔材として7.0質量%の発泡済み樹脂(平均粒子径:40μm)を添加し、乾式で十分混合した後、水を添加して十分な混練を行い、可塑化したセラミック杯土を作製した。このセラミック杯土を、押出成形し、所定長さに切断して、外径125 mm及び長さ150 mmのハニカム構造を有する成形体を作製し、マイクロ波乾燥機で20分間乾燥して乾燥済みのセラミックハニカム体を得た。
【0063】
(b)外周部の除去加工
得られたセラミックハニカム体10の外周部12の除去加工を、
図2(a)及び
図2(b)に示す旋盤30(旋盤A)で以下のようにして行った。前記旋盤Aは、その主軸Z上に配置された、第1の固定治具21と、前記第1の固定治具21に対向するように、心押し台35に取り付けられた第2の固定治具22とを有し、前記第1の固定治具21及び第2の固定治具22の、互いに対向する側の端部には、それぞれ前記主軸Zに直交するほぼ平坦な当接面211及び当接面221が形成された当接部210及び当接部220を有している。前記当接部210及び当接部220は、軸方向断面が直径90 mmの円形(
図5(a)及び
図5(b)を参照)であり、材質は鋼であり、前記当接部210、220に対する前記当接面211、221の割合が100%であり、前記当接面211、221の表面粗さ(最大高さRz)が200μmであった。
【0064】
前記当接部210、220の当接面211、221に、それぞれセラミックハニカム体10の第2の端面5a及び第1の端面5bを、セラミックハニカム体10の中心軸が前記主軸Zとほぼ一致するように当接させ、心押し台35に取り付けられた第2の固定治具22によって加圧することにより、セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを押圧保持した。この保持したセラミックハニカム体10を、5 m/sの周速で主軸Z周りに回転させ、送り台42上に固定された超硬バイト(工具41)を2 mmの切込み量及び0.5 mm/revの送り量で送りながら、前記第1の端面5bから第2の端面5aまでの全長にわたって前記セラミックハニカム体10の外周部12の除去加工を行った。
【0065】
加工終了後、セラミックハニカム体10を固定治具21、22から取り外し、セラミックハニカム体10の保持部分の破損の有無、外周面の破損の有無、及び歩留りの評価を行った。
【0066】
評価後のセラミックハニカム体10を、焼成炉で8日間のスケジュールで最高温度1410℃で焼成し、焼成済みのセラミックハニカム体10の除去加工された外周面に、コーディエライト粉末と、バインダーと、水とからなるコート材を、厚さ1 mmでコートし、乾燥してセラミックハニカム構造体とした。
【0067】
セラミックハニカム体10の保持部分の破損の有無は、加工後のセラミックハニカム体10の端面5a、5bを目視して確認し、
破損が生じていないものを「優(◎)」、
0.5 mm未満の破損が生じていたものを「良(○)」、
0.5 mm以上1 mm未満の破損が生じていたものを「可(△)」、及び
1 mm以上の破損が生じていたものを「不可(×)」
として評価した。結果を表1に示す。
【0068】
セラミックハニカム体10の外周面の破損の有無は、加工後のセラミックハニカム体10の外周面を目視して確認し、
破損が生じていないものを「優(◎)」、
0.5 mm未満の破損が生じていたものを「良(○)」、
0.5 mm以上1 mm未満の破損が生じていたものを「可(△)」、及び
1 mm以上の破損が生じていたものを「不可(×)」
として評価した。結果を表1に示す。
【0069】
歩留りは、外周加工前のセラミックハニカム体10の質量に対して、加工完了後のセラミックハニカム体10の質量の割合を歩留りとし、
歩留りが95%以上であった場合を「優(◎)」、
歩留りが90%以上95%未満であった場合を「良(○)」、及び
歩留りが90%未満であった場合を「不可(×)」
として評価した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例2〜7
実施例1と同様にして乾燥済みのセラミックハニカム体10を作製し、
図3(a)及び
図3(b)に示す旋盤30(旋盤B)を用いて、当接部210、220の部材及び加工条件(周速及び送り量)を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、乾燥済みのセラミックハニカム体10の外周部12を除去加工した。ここで用いた旋盤Bは、固定治具21、22とは別体の当接部210、220が、前記固定治具21、22にボルトで固定されており、当接部210、220のみを取り替えることができ、それ以外の構造については実施例1で使用した旋盤Aと同様である。加工終了後、実施例1と同様の評価を行い、さらに実施例1と同様にして焼成及び外周面へのコート材の塗布を行い、セラミックハニカム構造体を作製した。
【0071】
実施例8〜10
実施例1と同様に、乾燥済みのセラミックハニカム体10を作製し、この乾燥体を焼成炉で8日間のスケジュールで最高温度1410℃で焼成し、焼成済みのセラミックハニカム体10を得た。この焼成済みのセラミックハニカム体10の外周部12を、当接部210、220の部材及び加工条件(周速及び送り量)を表1に示すように変更した以外は、実施例2〜7と同様にして除去加工した。なお実施例9で用いた当接部材は、軸方向断面が四角形であり(
図5(c)を参照)、実施例10で用いた当接部材は、軸方向断面が六角形であった(
図5(d)を参照)。加工終了後、実施例1と同様の評価を行い、さらに実施例1と同様にして焼成及び外周面へのコート材の塗布を行い、セラミックハニカム構造体を作製した。
【0072】
実施例11
実施例10と同様に焼成済みのセラミックハニカム体10を作製し、以下に詳述するように、加工の方向を途中で逆転させてセラミックハニカム体10の第1の端面5a及び第2の端面5bの両方から加工が開始されるように変更した以外は実施例10と同様にして、前記焼成済みのセラミックハニカム体10の外周部12を除去加工した。
【0073】
まず実施例1と同様にして前記セラミックハニカム体10を保持し、表1に示す加工条件(周速及び送り量)で、
図10(a)に示すように、前記第1の端面5bから第2の端面5aに向けて超硬バイト(工具41)を送りながら外周部12の除去加工を開始し、第2の端面5aから5 mm手前の位置まで除去加工した後、第2の端面5a側の端部に未加工の外周部12aを5 mm残して前記超硬バイト(工具41)の送りを停止するとともに前記セラミックハニカム体10の回転を停止し、前記セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを押圧保持していた前記第1の固定治具21及び第2の固定治具22の保持を解除して、前記セラミックハニカム体10を前記旋盤30から取り外した。次に、
図10(b)に示すように、の第1の端面5bと第2の端面5aとを逆にして、すなわち前記第1の固定治具21の当接面211及び第2の固定治具22の当接面221にそれぞれセラミックハニカム体10の第1の端面5b及び第2の端面5aを当接させて、セラミックハニカム体10の中心軸が旋盤30の主軸Zとほぼ一致するように、その両端面5a、5bで回転自在に押圧保持し、前記主軸Zを中心として前記セラミックハニカム体10を回転させ、回転する前記セラミックハニカム体10の第2の端面5aから第1の端面5bに向けて、前記と同条件で前記超硬バイト(工具41)を送りながら前記未加工の外周部12aを除去加工した。
【0074】
加工終了後、実施例1と同様の評価を行い、さらに実施例1と同様にして焼成及び外周面へのコート材の塗布を行い、セラミックハニカム構造体を作製した。
【0075】
実施例12
実施例10と同様に焼成済みのセラミックハニカム体10を作製し、セラミックハニカム体10の方向を加工途中で逆転させる代わりに、以下に詳述するように、超硬バイト(工具41)の送り方向を加工途中で逆転させ、セラミックハニカム体10の第1の端面5a及び第2の端面5bの両方から加工が開始されるようにした以外は実施例11と同様にして、前記焼成済みのセラミックハニカム体10の外周部12を除去加工した。
【0076】
まず実施例11と同様にして、表1に示す加工条件(周速及び送り量)で、
図10(a)に示すように、前記第1の端面5bから第2の端面5aに向けて超硬バイト(工具41)を送りながら外周部12の除去加工を開始し、第2の端面5aから5 mm手前の位置まで除去加工した後、第2の端面5a側の端部に未加工の外周部12aを5 mm残して前記超硬バイト(工具41)の送りを停止した。次に、送り台42を主軸Zに対して垂直方向に動かして工具41をセラミックハニカム体10から回避させ、
図10(c)に示すように、セラミックハニカム体10の第2の端面5a側へ工具41を移動させ、回転するセラミックハニカム体10の第2の端面5aから第1の端面5bに向けて、前記と同条件で前記超硬バイト(工具41)を送りながら、未加工の外周部12aを除去加工した。
【0077】
加工終了後、実施例1と同様の評価を行い、さらに実施例1と同様にして焼成及び外周面へのコート材の塗布を行い、セラミックハニカム構造体を作製した。
【0078】
実施例13
押出成形により作製したハニカム構造を有する成形体の大きさを外径270 mm及び長さ300 mmとした以外は、実施例1と同様にして乾燥済みのセラミックハニカム体10を得た。得られたセラミックハニカム体10の外周部12の除去加工を、
図7(a)に示す主軸が鉛直方向である旋盤50(旋盤C)を用いて、以下のようにして行った。
【0079】
旋盤50(旋盤C)は、主軸Zがほぼ鉛直方向であり、主軸Z上に配置された、第1の固定治具21と、上部固定部55に取り付けられ、前記第1の固定治具21にほぼ対向する第2の固定治具22とを有する。前記第1の固定治具21及び第2の固定治具22は、互いに対向する側の端部に、セラミックハニカム体10の端面5a、5bの外形より小さい外形を有する当接部210、220と、前記当接部210、220の
端面に形成され、前記主軸に直交するほぼ平坦な当接面211、221とを有している。前記当接部210及び当接部220は、軸方向断面が直径200 mmの円形であり、材質は鋼であり、前記当接部210、220に対する前記当接面211、221の割合が100%であり、前記当接面211、221の表面粗さ(最大高さRz)が200μmであった。
【0080】
前記当接部210、220の当接面211、221に、それぞれセラミックハニカム体10の第2の端面5a及び第1の端面5bを、セラミックハニカム体10の中心軸が前記旋盤50(旋盤C)の主軸Zとほぼ一致するように当接させ、前記上部固定部55に取り付けられた第2の固定治具22を鉛直方向に移動させながら加圧することにより、セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを押圧保持した。この保持したセラミックハニカム体10を、5 m/sの周速で主軸Z周りに回転させ、送り台62上に固定された超硬バイト(工具61)を2 mmの切込み量及び0.5 mm/revの送り量で送りながら、前記第1の端面5bから第2の端面5aまでの全長にわたって前記セラミックハニカム体10の外周部12の除去加工を行った。
【0081】
なお乾燥済みのセラミックハニカム体10を旋盤に保持する際の、前記セラミックハニカム体10の位置決めは、
図8(a)に示すような位置決め治具81、82を用いて以下のようにして行った。まずセラミックハニカム体10の外径寸法(270 mm)から、その中心軸ZHが主軸Zに一致するときのセラミックハニカム体10の外周面の位置を算出し、前記接触部材81a、81b及び前記接触部材82a、82bがその外周面の位置に一致するように前記位置決め治具81、82の停止位置を設定した。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、中心軸ZHが旋盤の主軸Zと一致しない状態で載置されたセラミックハニカム体10に、
図8(c)に示すように、一方の位置決め治具81を近づけ、あらかじめ設定した停止位置までX軸に沿って移動させて固定した。
【0082】
次いで、
図8(d)に示すように、もう一方の位置決め治具82を、X軸に沿って移動させながら、接触部材82a、82bによって前記セラミックハニカム体10を移動させた。位置決め治具82をX軸方向に移動させているときに、接触部材82a、82bのいずれかがセラミックハニカム体10に接触することにより、セラミックハニカム体10をX軸に沿って移動させるとともに、Y軸方向にも移動させるので、X軸方向のずれ及びY軸方向のずれが矯正された。前記位置決め治具82を、あらかじめ設定した停止位置まで移動させることにより、セラミックハニカム体10は前記接触部材81a、81b及び接触部材82a、82bによって4点で固定され、セラミックハニカム体10の中心軸ZHと旋盤の主軸Zとがほぼ一致した。
【0083】
加工終了後、実施例1と同様の評価を行い、さらに実施例1と同様にして焼成及び外周面へのコート材の塗布を行い、セラミックハニカム構造体を作製した。
【0084】
実施例14〜19
図7(b)に示す主軸が鉛直方向である旋盤50(旋盤D)を用いて、当接部210、220の部材及び加工条件(周速及び送り量)を表1に示すように変更した以外は、実施例13と同様にして乾燥済みのセラミックハニカム体10を作製し、その外周部12の除去加工を行った。ここで用いた旋盤Dは、固定治具21、22とは別体の当接部210、220が、前記固定治具21、22にボルトで固定されており、当接部210、220のみを取り替えることができ、それ以外の構造については実施例13で使用した旋盤Cと同様である。加工終了後、実施例1と同様の評価を行い、さらに実施例1と同様にして焼成及び外周面へのコート材の塗布を行い、セラミックハニカム構造体を作製した。
【0085】
実施例20〜22
実施例13と同様に、乾燥済みのセラミックハニカム体10を作製し、この乾燥体を焼成炉で8日間のスケジュールで最高温度1410℃で焼成し、焼成済みのセラミックハニカム体10を得た。この焼成済みのセラミックハニカム体10の外周部12を、当接部210、220の部材及び加工条件(周速及び送り量)を表1に示すように変更した以外は実施例14〜19と同様にして除去加工した。なお実施例21で用いた当接部材は、軸方向断面が四角形であり(
図5(c)を参照)、実施例22で用いた当接部材は、軸方向断面が六角形であった(
図5(d)を参照)。加工終了後、実施例1と同様の評価を行い、さらに実施例1と同様にして焼成及び外周面へのコート材の塗布を行い、セラミックハニカム構造体を作製した。
【0086】
実施例23
実施例22と同様に焼成済みのセラミックハニカム体10を作製し、以下に詳述するように、加工の方向を途中で逆転させてセラミックハニカム体10の第1の端面5a及び第2の端面5bの両方から加工が開始されるように変更した以外は実施例22と同様にして、セラミックハニカム体10の外周部12を除去加工した。
【0087】
まず実施例13と同様にして前記セラミックハニカム体10を保持し、表1に示す加工条件(周速及び送り量)で、
図11(a)に示すように、前記第1の端面5bから第2の端面5aに向けて超硬バイト(工具61)を送りながら外周部12の除去加工を開始し、第2の端面5aから5 mm手前の位置まで除去加工した後、第2の端面5a側の端部に未加工の外周部12aを5 mm残して前記超硬バイト(工具61)の送りを停止するとともに前記セラミックハニカム体10の回転を停止し、前記セラミックハニカム体10の両端面5a、5bを押圧保持していた前記第1の固定治具21及び第2の固定治具22の保持を解除して、前記セラミックハニカム体10を前記旋盤30から取り外した。次に、
図11(b)に示すように、の第1の端面5bと第2の端面5aとを逆にして、すなわち前記第1の固定治具21の当接面211及び第2の固定治具22の当接面221にそれぞれセラミックハニカム体10の第1の端面5b及び第2の端面5aを当接させて、セラミックハニカム体10の中心軸が旋盤30の主軸Zとほぼ一致するように、その両端面5a、5bで回転自在に押圧保持し、前記主軸Zを中心として回転させ、回転する前記セラミックハニカム体10の第2の端面5aから第1の端面5bに向けて、前記と同条件で前記超硬バイト(工具61)を送りながら前記未加工の外周部12aを除去加工した。
【0088】
加工終了後、実施例1と同様の評価を行い、さらに実施例1と同様にして焼成及び外周面へのコート材の塗布を行い、セラミックハニカム構造体を作製した。
【0089】
実施例24
実施例22と同様に焼成済みのセラミックハニカム体10を作製し、セラミックハニカム体10の方向を加工途中で逆転させる代わりに、以下に詳述するように、超硬バイト(工具41)の送り方向を加工途中で逆転させ、セラミックハニカム体10の第1の端面5a及び第2の端面5bの両方から加工が開始されるようにした以外は実施例23と同様にして、前記焼成済みのセラミックハニカム体10の外周部12を除去加工した。
【0090】
まず実施例23と同様に、表1に示す加工条件(周速及び送り量)で、
図11(a)に示すように、前記第1の端面5bから第2の端面5aに向けて超硬バイト(工具61)を送りながら外周部12の除去加工を開始し、第2の端面5aから5 mm手前の位置まで除去加工した後、第2の端面5a側の端部に未加工の外周部12aを5 mm残して前記超硬バイト(工具61)の送りを停止した。次に、送り台62を主軸Zに対して垂直方向に動かして工具61をセラミックハニカム体10から回避させ、
図11(c)に示すように、セラミックハニカム体10の第2の端面5a側へ工具61を移動させ、回転するセラミックハニカム体10の第2の端面5aから第1の端面5bに向けて、前記と同条件で前記超硬バイト(工具
61)を送りながら、未加工の外周部12aを除去加工した。
【0091】
加工終了後、実施例1と同様の評価を行い、さらに実施例1と同様にして焼成及び外周面へのコート材の塗布を行い、セラミックハニカム構造体を作製した。
【0092】
比較例1
全長170 mmの長さに成形した以外は、実施例1と同様にして、乾燥済みのセラミックハニカム体10を作製し、125 mmの外径及び170 mmの長さを有する乾燥済みのセラミックハニカム体10を得た。
【0093】
図12(a)に示す旋盤90(旋盤E)を用いて、得られた乾燥済みセラミックハニカム体10の外周部12の除去加工を行った。前記旋盤Eの主軸Z上に配置された外爪スクロールチャック91によりセラミックハニカム体10の一方の端部を把持し、セラミックハニカム体10を前記旋盤Eに固定した。固定したセラミックハニカム体10を、5 m/sの周速で主軸Z周りに回転させ、送り台上に固定された超硬バイト(図示せず)を2 mmの切込み量及び0.5 mm/revの送り量で送りながら、セラミックハニカム体10の外周部12の除去加工を行った。
【0094】
外周部12の除去加工後、チャック91で固定されていた側の端部を端面から20 mmの位置Aで切断し、125 mmの外径及び150 mmの長さを有するセラミックハニカム体10とした。加工終了後、実施例1と同様の評価を行った。
【0095】
比較例2
比較例1と同様にして作製した乾燥済みのセラミックハニカム体10を焼成炉で8日間のスケジュールで最高温度1410℃で焼成を行い、125 mmの外径及び170 mmの長さを有する焼成済みのセラミックハニカム体10を得た。
【0096】
図12(a)に示す旋盤Eを用いて、比較例1と同様に得られた焼成済みのセラミックハニカム体10の外周部12の除去加工を行った。
【0097】
外周部12の除去加工後、チャック91で固定されていた側の端部を端面から20 mmの位置Aで切断し、125 mmの外径及び150 mmの長さを有するセラミックハニカム体10を得た。加工終了後、実施例1と同様の評価を行った。
【0098】
比較例3
実施例1と同様にして作製した乾燥済みのセラミックハニカム体10を、焼成炉で8日間のスケジュールで最高温度1410℃で焼成し、焼成済みのセラミックハニカム体10を得た。旋盤Aを用いて、当接部210、220を外形が直径150 mmの円形の部材に変更した以外は実施例1と同様にしてセラミックハニカム体10の外周部12の除去加工を行った。加工終了後、実施例1と同様の評価を行った。
【0099】
表1
注(1) 当接部材の軸方向に直交する断面の外形である。
注(2) 断面の外形を内部に含む最小の円の直径である。
【0100】
表1(続き)
注(3) 当接部の軸方向に直交する断面の面積Aに対する当接面の面積Cの割合(C/A)である。
【0102】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜24は、セラミックハニカム体をチャック装置で一方の端部を固定して保持する代わりに、固定治具により両端面を押圧して保持したので、外周部の除去加工時にかかる負荷が分散され、セラミックハニカム体の保持部分の破損の発生が低く抑えられ歩留りが良好であった。一方、比較例1及び比較例2は、セラミックハニカム体の端部をチャック装置で固定して保持したため、セラミックハニカム体の保持部分の破損が発生し、さらに歩留りも非常に悪かった。比較例3は、当接部材の当接面の外形が、セラミックハニカム体の外形よりも大きいため、セラミックハニカム体の外周部を加工する際、セラミックハニカム体の端部近くの除去加工ができなかったため、未加工部分を切断する必要があり、歩留りが悪くなった。