(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照することにより、本実施の形態をより詳細に説明する。
【0013】
(ガラス基板)
本実施の形態のガラス基板の研磨方法を適用することができるガラス基板としては、特に制限はなく、例えば、TFT(Thin Film Transistor)用基板、PDP(Plasma Display Panel)用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用ガラス基板、磁気記録媒体用ガラス基板、カバーガラスなどの各種ガラス基板に適用することができる。
【0014】
また、本実施の形態のガラス基板の研磨方法を適用することができるガラス基板のガラス素基板は、フロート法、フュージョン法、リドロー法、プレス成形法などの方法により作製されるが、本実施の形態はこの点においても限定されない。
【0015】
なお、本実施の形態のガラス基板の研磨方法は、ガラス基板を化学強化した化学強化ガラスにも適用することができる。この場合において、ガラス素板を化学強化した後に、所望の用途向けに所定の寸法で切断した化学強化ガラスに適用しても良く、ガラス素板を所望の用途向けに所定の寸法に切断した後に、化学強化した化学強化ガラスに適用しても良い。ガラス素板を化学強化した後に、所望の用途向けに所定の寸法で切断する方法は、ガラス素板を所望の用途向けに所定の寸法に切断した後に、化学強化する方法と比して、通常、生産性が高いが、切断が技術的に困難であるという特徴を有する。
【0016】
本明細書では、一例として、ガラス素板を化学強化した後に、所望の用途向けに所定の寸法で切断した化学強化ガラスの例について説明する。
【0017】
化学強化ガラスとは、ガラスの表面をイオン交換し、圧縮応力が残留する表面層を形成させたガラスである。具体的には、ガラスの表面をイオン交換することにより、ガラスに含まれる小さなイオン半径のイオン(例えば、Liイオン、Naイオン)が、大きなイオン半径のイオン(例えば、Kイオン)に置換される。これにより、ガラスの表面に圧縮応力が残留し、ガラスの強度が向上する。
【0018】
図1に、化学強化後のガラス板の残留応力Sの厚さ方向分布を示す模式図を示す。
図1において、S1はガラス板の一方の面層(表面層と呼ぶ)の最大残留圧縮応力、S2は他方の面層(裏面層と呼ぶ)の最大残留圧縮応力(通常、S1=S2である)、D1は表面層の厚さ、D2は裏面層の厚さ、Dはガラス板の厚さ、Tは表面層と裏面層との間に存在する中間層の平均残留引張応力をそれぞれ示す。また、
図1における水平軸は、表面層を基準点(=0)とした場合の、板厚方向の距離を示している。
【0019】
図1に示すように、表面層や裏面層に残留する圧縮応力は、表面および裏面から内部に向けて徐々に小さくなる傾向にある。一方で、圧縮応力が残留する表面層および裏面層などを形成する反作用として、表面層と裏面層との間には、引張応力が残留する中間層が形成される。この時、中間層に残留する引張応力は、ほぼ一定となる。
【0020】
また、
図2に、化学強化後のガラス板を説明するための概略図を示す。より具体的には、
図2(a)は、化学強化後のガラス板の切断前の概略図であり、
図2(b)は、化学強化後のガラス板の切断後の概略図である。
【0021】
前述の
図1の説明及び
図2(a)から明らかであるように、化学強化後のガラス板は、表面層及び裏面層が圧縮応力層となっており、表面層と裏面層との間に存在する中間層が、引張応力層となっている。
【0022】
図2(b)に示した化学強化後のガラス板の切断後の概略図から明らかであるように、化学強化後のガラス板を切断した場合、引張応力層が切断面の表面に剥き出しとなる。切断後のガラス板の引張応力層に応力が作用する場合、通常よりも小さな力でも割れることがある。そのため、化学強化後のガラス板を切断する実施形態の場合は特に、後述する本実施形態のガラス基板の研磨方法により研磨を施し、十分な強度を持たせることが好ましい。
【0023】
(第1の研磨工程)
研磨砥石は、通常、研磨砥粒と該研磨砥粒を固定するボンドとを有する。第1の研磨工程では、後述する第2の研磨工程で使用する研磨砥石の研磨砥粒よりも、平均粒径が大きい研磨砥粒を有する研磨砥石を使用して研磨する。通常、第1の研磨工程で使用する研磨砥石の砥粒の平均粒径は5〜10μm(砥石番手において♯2000)以上である。
【0024】
第1の研磨工程で使用できる研磨砥石の砥粒の種類としては特に制限されず、例えば、酸化セリウム、酸化シリコン、ダイヤモンド、酸化クロム、酸化アルミニウム、ジルコニウム、シリコンカーバイドなどを使用することができる。
【0025】
また、第1の研磨工程で使用できるボンドの種類としては特に制限されず、例えば、ビトリファイドボンド、メタルボンド、レジンボンド、砥粒を固着して形成された電着砥石などを使用することができる。
【0026】
第1の研磨工程においては、上述した第1の研磨砥石を、ガラス基板の主表面又は端面(外周側面部、外周面取り部など)の形状に応じて、押し付ける力を変化させながら研磨を行う定寸研磨工程であることが好ましい。後述する第2の研磨工程で使用する研磨砥石の研磨砥粒よりも、平均粒径が大きい研磨砥粒を有する研磨砥石を使用する第1の研磨工程で、定寸研磨によりガラスの寸法を正確に研磨しておくことで、その後の第2の研磨工程の研磨において精密な寸法制御が必要無くなるため好ましい。なお、ここで言う外周側面部及び外周面取り部とは、ガラス板の外周側にある、ガラス板の主表面とは平行ではない全ての面のことを指し、その形状は、湾曲面であっても良い。また、第1の研磨工程において面取りと研磨を同時に実施しても構わない。
【0027】
(第2の研磨工程)
上記した第1の研磨工程に続いて、仕上げの工程として第2の研磨工程を実施する。
【0028】
第2の研磨工程で使用できる研磨砥粒の種類としては、平均粒径が0.5〜10μmの酸化セリウム砥粒と、平均粒径が0.5〜10μmのダイヤモンド砥粒とを混合した研磨砥粒と、を混合した砥粒が挙げられる。なお、研磨砥粒の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度測定装置などを使用して測定することができる。各砥粒の平均粒径を上記範囲とすることによって、第1の研磨工程で実施した面取り部及びガラス基板の端面の傷を除去し、十分な強度となるように研磨することが出来る。
【0029】
また、第2の研磨工程で使用できるボンドとしては、弾性率が20℃において2.5〜3GPaとなるポリイミド樹脂が挙げられる。なお、ボンドの弾性率は、例えば、動的粘弾性率測定装置などを使用して測定することができる。
【0030】
従来、第1の工程の面取り工程や粗い研磨工程の後、さらに強度を向上させるために、ブラシ研磨法や砥石を用いてさらに研磨する方法等が採用されてきた。しかしながら、ブラシ研磨法では、ガラス基板の搬送等が煩雑であるという問題点があった。一方、砥石を用いてさらに研磨する方法は、第1の工程後に砥石を交換するだけで実施可能であるが、処理時間が長くなり、実用的ではないという問題点を有していた。また、第1の研磨工程が実施されていないガラスに第2の研磨工程を行うと、砥石の寿命が極端に短くなってしまうため好ましくない。
【0031】
本発明の発明者は、弾性率が2.5〜3GPaとなるポリイミド樹脂をボンドとして用いた研磨砥石を使用することで、砥石を用いた研磨方法において、短時間にガラス基板の強度を向上させられることを見出した。具体的には、前述の研磨砥石を用いて研磨することで、曲げ強度が500MPa以上の強度を有するガラス基板を仕上げることが出来る。弾性率が前述した範囲より大きくなると、処理時間が長くなってしまい、前述した範囲より小さくなると、研磨砥石の寿命が短くなってしまい実用的ではないため好ましくない。また、研磨後に十分な強度を有するガラス基板が得られない可能性もある。
【0032】
ボンド中における、ダイヤモンド砥粒の含有量(V1)は、10vol%〜20vol%であることが好ましく、ボンド中における、酸化セリウム砥粒の含有量(V2)は、5vol%〜30vol%であることが好ましい。V1が10vol%未満の場合や、V2が5vol%未満の場合、十分な研磨量を確保することが出来ないことがあるため、化学的な反応で研磨を行う酸化セリウム砥粒と機械的に研磨を行うダイヤモンド砥粒を、それぞれ上記所定の範囲で含有することが好ましい。また、V1とV2との和が30vol%を超える場合、研磨砥石としての研磨性能が低下することがあるため、V1+V2≦30%とすることがより好ましい。
【0033】
第2の研磨工程においては、上述した第2の研磨砥石を、ガラス基板の主表面又は端面の形状に応じて、押し付ける力を変化させながら研磨を行う定寸研磨工程であっても良く、上述した第2の研磨砥石を一定の力でガラス基板の主表面又は端面に押し付けて研磨を行う定圧研磨工程であっても良い。
【0034】
なお、第2の研磨工程では、使用するガラス基板の種類にも依るが、ガラス基板の主表面又は端面の表面粗さRaが8nm以下となるまで、研磨を施すことが好ましい。
【0035】
(研磨ユニット)
次に、本実施形態の研磨方法を実施することができる研磨ユニットの例について説明する。しかしながら、本実施の形態では、ガラス基板を第1の研磨砥石を用いて研磨する第1の研磨工程と、前記第1の研磨砥石よりも平均粒径が小さい第2の研磨砥石を用いて前記ガラス基板を研磨する第2の研磨工程と、を有し、前記第2の研磨砥石は、平均粒径が0.5〜10μmの酸化セリウム砥粒及び平均粒径が0.5〜10μmのダイヤモンド砥粒を含む研磨砥粒と、弾性率が2.5〜3GPaであるポリイミド樹脂から成るボンドと、を含むものであれば、下記構成の研磨ユニットに限定されない。
【0036】
また、第1の研磨工程と第2の研磨工程とで、別の研磨装置を使用して研磨を施しても良く、第1の研磨工程後、第1の研磨砥石を第2の研磨砥石に変更して、同じ研磨装置で研磨を施しても良い。
【0037】
図3に、本実施形態の研磨装置の研磨ユニットの一例の概略図を示す。研磨ユニット100は、図示しない研磨装置本体の図示しない水平回動アームなどを介して、軸1に取り付けられている。軸1は、サーボモータ2によって回転駆動される。
【0038】
研磨ユニット100のハウジング3内には、軸受4が垂直方向に配置され、スピンドル5が軸支されている。
【0039】
スピンドル5の先端には、砥石6が取り付けられ、また、後端にはハウジングの外側に取り付けられた駆動モータ7の軸にプーリー8a、8b及びベルト9を介して結合されている。
【0040】
軸受4は、スライドガイド10を介して水平方向に摺動自在にハウジング3内に取り付けられる。また、軸受4は、図示しない空圧シリンダの伸縮などによって、水平方向に変位可能な構成であっても良い。ベルト9の側面には、この側面を押圧するテンショナー11が設けられている。軸受4の変位に伴って、テンショナー11は、ベルト9の掛渡し長さの変動分を吸収する構成になっている。
【0041】
(例1〜例8)
次に、ガラス板の外周面取り部を研磨する実施形態について、実施例を参照して説明する。なお、本実施例においては、ガラス板の外周面取り部を研磨する方法について説明するが、本実施の形態はこの点において限定されない。例えば、本実施形態の研磨方法は、ガラス基板の主表面や外周側面部などを研磨する方法などに応用することができる。
【0042】
例1〜例8における、第2の研磨工程で使用した研磨砥石の条件を、表1に示す。表1における例1が本実施形態の研磨方法の条件であり、例2〜例7は参考例の研磨方法の条件である。なお、表1における、砥石番手において、♯3000は平均粒径4〜8μmであり、♯2000は平均粒径5〜10μmであり、♯1000は平均粒径14〜22μmであり、ボンドの弾性率は21℃で測定を行った。
【0043】
また、表1において、例1〜例3の砥石は研磨砥粒1の含有量を20wt%、研磨砥粒2の含有量を5wt%とし、例4〜例8の砥石は研磨砥粒1の含有量を25wt%としている。
【0044】
【表1】
図4に、本実施形態の研磨方法を説明するための概略図を示す。より具体的には、
図4は、素板であるガラス板20の外周面取り部を研磨する方法を説明するための図であって、
図3の研磨砥石6周辺の概略図である。
【0045】
研磨砥石6の外周面31には、周方向に延びる環状の研削溝32が形成されている。研削溝32の壁面部は、砥粒部分に相当する。
【0046】
本実施形態では、先ず、第1の研磨工程で使用する研磨砥石6として、この後の第2の研磨工程で使用する研磨砥石の研磨砥粒よりも、平均粒径が大きい研磨砥粒を有する研磨砥石6を装着して、ガラス板20の外周面取り部を研磨した。具体的には、例1〜例8においては、平均粒径が14〜22μmのダイヤモンドの研磨砥粒と、ポリイミド及びメタルのボンドと、を有する研磨砥石を装着し、ガラス板20の外周面取り部を研磨した。
【0047】
研磨砥石6は、研磨砥石6の中心線を中心に回転されながら、ガラス板20の外縁に沿って相対的に移動され、ガラス板20の外周面取り部を研削溝32の壁面で研磨する。このとき、研磨砥石6を前記ガラス基板の形状に応じて押し付ける力を変化させながら研磨を行う定寸研磨で研磨を進行させることが好ましい。なお、研磨時には、水などの冷却液が使用されても良い。
【0048】
その後、研磨砥石6を、表1に示した研磨砥粒とボンドとを含む第2の研磨砥石6に変更した。
【0049】
第2の研磨工程でも、研磨砥石6は、研磨砥石6の中心線を中心に回転されながら、ガラス板20の外縁に沿って相対的に移動され、ガラス板20の外周面取り部を研削溝32の壁面で研磨する。このとき、研磨砥石6を前記ガラス基板の形状に応じて押し付ける力を変化させながら研磨を行う定寸研磨で研磨を進行させても良く、前記第2の研磨砥石を一定の力で前記ガラス基板に押し付けて研磨を行う定圧研磨で研磨を進行させても良い。なお、第2の研磨工程においても、研磨時には、水などの冷却液が使用されても良い。
【0050】
第2の研磨工程では、ガラス基板の表面粗さRaが好ましくは8nm以下となるまで、研磨を進行させ、研磨を終了する。
【0051】
(評価)
・曲げ強度
本実施形態において曲げ強度は、4点曲げ試験により測定した。具体的には、厚み0.7mm、幅50mm、長さ100mmの試験片の中央部にシェブロン型ノッチを形成した。テンシロン型強度試験装置を用いて、スパン30mmに支持した試験片のノッチ先端から安定破壊が起こるようにクロスヘッド速度1mm/分で曲げ試験を行った。なお、4点曲げ試験における上スパンは10mmとした。
【0052】
・算術平均表面粗さRa
ガラス基板の表面粗さは、触針式の表面粗さ計(Veeco社製Multimode V SPM−Nanoscope V controller)を用いて測定した。なお、測定値は、ガラス板から任意6箇所の表面粗さを測定し、その平均値で示した。
【0053】
例1から例8により得られたガラス基板における、上述の評価方法で評価した結果も表1に示している。
【0054】
表1より明らかであるように、本実施形態の研磨方法(例1)により、短い処理時間(研磨時間)で、十分な曲げ強度を有するガラス基板が得られた。
【0055】
一方、例2〜例5の参考例の研磨方法では、十分な曲げ強度を得るために要する処理時間(研磨時間)が長く、実用的ではないことがわかる。また、例6〜例8の研磨方法で得られるガラス基板は、表面粗さが粗く、曲げ強度も不足している。
【0056】
以上、本実施形態によると、ガラス基板を第1の研磨砥石を用いて研磨する第1の研磨工程と、前記第1の研磨砥石よりも平均粒径が小さい第2の研磨砥石を用いて前記ガラス基板を研磨する第2の研磨工程と、を有し、前記第2の研磨砥石は、平均粒径が0.5〜10μmの酸化セリウム砥粒及び平均粒径が0.5〜10μmのダイヤモンド砥粒を含む研磨砥粒と、弾性率が2.5〜3GPaであるポリイミド樹脂から成るボンドと、を含む、研磨方法によりガラス基板を研磨することにより、簡略な処理工程で、ガラス基板に十分な強度を持たせることができる。
【0057】
本出願は、2012年9月7日に日本国特許庁に出願された特願2012−197742号に基づく優先権を主張するものであり、特願2012−197742号の全内容を本出願に援用する。